説明

縦型炉装置

【課題】 熱処理容器内の全域を素早く均一な温度に昇温することができ、熱処理容器内に収納された複数枚の処理基板の全てに対して均一な熱処理を短時間で行うことができるようにする。
【解決手段】縦型炉装置10は、第1のヒータ2の内側面21、収納部12の内側面13、隔壁14、第2のヒータ3の外側面31を、平面視において互いに相似形である正方形状に形成し、互いの中心位置を一致させて備えている。ボート4は、収納部12内の第1のヒータ2及び第2のヒータ3からの距離が互いに等しい4箇所のそれぞれで、処理基板Wの主面を内側面13及び隔壁14の外側面に平行にして処理基板Wを10枚ずつ搭載している。処理基板Wは、第1のヒータ2が発生する熱によって外側面の全面を略均一に加熱され、第2のヒータ3が発生する熱によって内側面の全面を略均一に加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハやガラス基板等の処理基板が底面から搬入出される熱処理容器を備えた縦型炉装置に関し、特に熱処理容器に収納された複数枚の処理基板の互いの温度差を小さくするための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
処理基板を所定温度に加熱する熱処理装置として、処理基板が底面から搬入出される熱処理容器を備えた縦型炉装置が用いられている。縦型炉装置は、熱処理容器、ヒータ、ボート、昇降手段を備えている。
【0003】
熱処理容器は、例えば石英チューブであり、底面が開放している。ヒータは、熱処理容器の側面を包囲して配置され、熱処理容器内を加熱する。ボートは、複数枚の処理基板を水平方向又は垂直方向に並べて搭載する。昇降手段は、ボートに搭載された処理基板を熱処理容器内に搬入出するために、熱処理容器に対してボートを昇降させる。
【0004】
縦型炉装置は、熱処理容器内に収納された処理基板が、熱処理容器の外側に配置されたヒータのみによって加熱されるため、熱処理容器の温度は、水平面内で不均一になり易い。この結果、熱処理容器内に搬入された複数枚の処理基板の間で温度差を生じる場合や、各処理基板における温度分布が均一にならない場合を生じる。
【0005】
そこで、従来の縦型炉装置では、熱処理容器の底面を塞ぐ蓋体とボートとの間に発熱体ユニットを備え、熱処理容器の外側だけでなく内側にも発熱体を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この構成により、熱処理容器内の温度が安定するまでの時間を短縮するとともに、熱処理容器内の温度の均一性を向上することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−156005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明では、熱処理容器の内部にも発熱体が配置されるため、熱処理容器内が外側からだけでなく内側からも加熱される。しかし、発熱ユニットは蓋体とボートとの間に配置されているため、発熱体ユニットによって熱処理容器の下部を加熱することはできるが、熱処理容器の上下方向における中央部や上部を加熱することはできない。特に、熱処理容器の上下方向及び水平方向の中央部が他の部分よりも低温になり易く、熱処理容器内に収納された複数枚の処理基板のうち、水平方向又は垂直方向の中央部に位置する処理基板の中心部分を十分に加熱することができない。このため、水平方向又は垂直方向の中央部に位置する処理基板に対しても全面に均一な処理を行おうとすると、処理時間が長時間化する問題がある。
【0008】
この発明の目的は、主面を略垂直にして収納された複数枚の処理基板における上下方向の全域に対向する第1及び第2のヒータを熱処理容器の外側及び内側に配置し、熱処理容器内の全域を素早く均一な温度に昇温することができ、熱処理容器内に収納された複数枚の処理基板の全てに対して均一な熱処理を短時間で行うことができる縦型炉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る縦型炉装置は、複数枚の処理基板を熱処理容器の底面側から内部に搬入出するものであり、熱処理容器、第1のヒータ、第2のヒータ、ボート及び昇降手段を備えている。
【0010】
熱処理容器は、水平面内における中央部に配置された中空部と、水平面内における中空部の周囲を全周にわたって隔離して包囲するとともに下面側から処理基板が搬入出される収納部と、を有する。第1のヒータは、熱処理容器の外側を包囲し、収納部に搬入された処理基板の上下方向の全域に対向する。第2のヒータは、中空部内に収納され、収納部に搬入された処理基板の上下方向の全域に対向する。ボートは、水平面内における複数の位置であって第1及び第2のヒータからの距離が互いに等しい複数の位置のそれぞれで複数枚の処理基板を水平方向に並べて搭載する。昇降手段は、処理基板が熱処理容器の下方に露出した露出位置と処理基板が収納部内に収納された収納位置との間でボートを昇降させる。
【0011】
この構成により、熱処理容器内に収納された複数枚の処理基板は、第1のヒータによって熱処理容器の外側から加熱されるとともに、第2のヒータによって熱処理容器の中心側からも加熱される。ボートに搭載された複数枚の処理基板のうち、熱処理容器の水平面内における外側に位置する処理基板は主に第1のヒータによって加熱され、熱処理容器の水平面内における中心側に位置する処理基板は主に第2のヒータによって加熱される。この結果、複数枚の処理基板の全てが、比較的早期に所定温度に加熱される。
【0012】
この構成において、収納部の内側面及び中空部の外側面を3つ以上の平面で構成し、ボートが水平面内における3箇所以上である複数の位置のそれぞれで処理基板の主面を平面のそれぞれに平行にして複数枚の処理基板を搭載するものとし、第1及び第2のヒータが複数の位置のそれぞれに搭載された処理基板の主面に平行な放熱面を備えるものとすることが好ましい。収納部の水平面内における複数の位置のそれぞれでボートに搭載された処理基板の全面を均一に加熱することができる。
【0013】
また、収納部の内側面及び中空部の外側面を平面視において同心円形状を呈するものとし、ボートが複数の位置のそれぞれに搭載した処理基板を水平面内で同心円形状の中心軸回りに回転させる回転手段を備えたものとすることもできる。収納部の水平面内において第1のヒータ及び第2のヒータの発熱量が均一でない場合にも、水平面内における複数の位置のそれぞれでボートに搭載された処理基板の全面を略均一に加熱することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、熱処理容器内の全域を素早く均一な温度に昇温することができ、熱処理容器内に収納された複数枚の処理基板の全てに対して均一な熱処理を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)及び(B)は、この発明の第1の実施形態に係る縦型炉装置の側面断面図及び平面断面図である。
【図2】(A)及び(B)は、この発明の第2の実施形態に係る縦型炉装置の側面断面図及び平面断面図である。
【図3】この発明の第3の実施形態に係る縦型炉装置の側面断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、この発明の第4及び第5の実施形態に係る縦型炉装置の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(A)及び(B)は、この発明の第1の実施形態に係る縦型炉装置の側面断面図及び平面断面図である。第1の実施形態に係る縦型炉装置10は、一例として40枚の処理基板Wを熱処理容器1の底面側から内部に搬入出するものであり、熱処理容器1、第1のヒータ2、第2のヒータ3、ボート4、昇降手段5を備えている。
【0017】
熱処理容器1は、一例として平面視において正方形状を呈する石英チューブである。熱処理容器1は、中空部11、収納部12を有している。熱処理容器1は、下端のフランジ部をヒータベース6とチューブホルダ8との間にパッキン8Aを介して挟持されている。中空部11は、熱処理容器1内の水平面内における中央部に配置されている。収納部12は、水平面内における中空部11の周囲を全周にわたって隔壁14で隔離して包囲するように配置されている。隔壁14は、一例として石英チューブで構成されている。収納部12内には、下面側から処理基板Wが搬入出される。
【0018】
第1のヒータ2は、一例として平面視において正方形状を呈し、ヒータベース6の上面に固定されている。第1のヒータ2は、熱処理容器1の外側を包囲し、収納部12に搬入された処理基板Wの上下方向の全域に対向する発熱部2Aを備えている。
【0019】
第2のヒータ3は、一例として平面視において正方形状を呈している。第2のヒータ3は、中空部11内に収納され、収納部12に搬入された処理基板Wの上下方向の全域に対向するヒータ3Aを備えている。
【0020】
ボート4は、水平面内における複数の位置であって第1のヒータ2及び第2のヒータ3からの距離が互いに等しい4箇所のそれぞれで10枚ずつの処理基板Wを水平方向に並べて搭載する。
【0021】
昇降手段5は、ボート4に搭載された処理基板Wが熱処理容器1の下方に露出した露出位置と収納部12内に収納された収納位置との間で、ボート4をフロア7とともに昇降させる。
【0022】
熱処理容器1内に収納された処理基板Wは、第1のヒータ2によって熱処理容器1の外側から加熱されるとともに、第2のヒータ3によって熱処理容器1の中心側からも加熱される。ボート4に搭載された処理基板Wのうち、熱処理容器1の水平面内における外側に位置する処理基板Wは主に第1のヒータ2によって加熱され、熱処理容器1の水平面内における中心側に位置する処理基板Wは主に第2のヒータ3によって加熱される。
【0023】
縦型炉装置10では、第1のヒータ2の内側面21、収納部12の内側面13、隔壁14、第2のヒータ3の外側面31は、平面視において互いに相似形である正方形状を呈しており、中心位置を一致させて配置されている。また、熱処理容器1は、隔壁14を含めて均一な厚さにされている。ボート4は、収納部12内で第1のヒータ2及び第2のヒータ3からの距離が互いに等しい4箇所のそれぞれで、処理基板Wの主面が内側面13及び隔壁14の外側面に平行となるように10枚ずつの処理基板Wを搭載している。
【0024】
したがって、ボート4の各位置に搭載されている10枚の処理基板Wは、第1のヒータ2が発生する熱によって外側面の全面を略均一に加熱され、第2のヒータ3が発生する熱によって内側面の全面を略均一に加熱される。この結果、熱処理容器1内の全域を素早く均一な温度に昇温でき、熱処理容器1内に収納された40枚の処理基板Wの全てが比較的早期に所定温度に加熱され、40枚の処理基板Wの全てに対して均一な熱処理を短時間で行うことができる。
【0025】
なお、第1のヒータ2の内側面21、収納部12の内側面13、隔壁14、第2のヒータ3の外側面31は、平面視において互いに相似形である正3角又は正5角以上の多角形状とすることができる。
【0026】
また、第2のヒータ3による処理基板Wの加熱状態を処理基板Wの内側面の全面について均一にするためには、隔壁14の各面、及び第2のヒータ3が有する発熱部3Aの発熱面31の面積をできるだけ大きくすることが好ましい。
【0027】
但し、処理基板Wの内側面の全面に対する加熱状態の均一性が高い状態に維持されることを条件に、必ずしも隔壁14又はヒータ3を平面視において第1のヒータ2の内側面21及び収納部12の内側面13と相似形にする必要はなく、例えば円形としてもよい。
【0028】
図2(A)及び(B)は、この発明の第2の実施形態に係る縦型炉装置の側面断面図及び平面断面図である。第2の実施形態に係る縦型炉装置100は、縦型炉装置10と同様に、一例として40枚の処理基板Wを熱処理容器1の底面側から内部に搬入出するものであり、熱処理容器101、第1のヒータ102、第2のヒータ103、ボート104及び昇降手段105を備えている。
【0029】
縦型炉装置100は、熱処理容器101が平面視において円形を呈する点で縦型炉装置10と異なる。これに伴って第1のヒータ102が有する発熱部102Aの内側面(放熱面)、収納部112の内側面113、隔壁114、第2のヒータ103が有する発熱部103A外側面(放熱面)は、平面視において互いに相似形である円形を呈するとともに中心位置を一致させて配置されている。
【0030】
縦型炉装置100では、ボート104が回転体110の円盤部に載置されている。回転体110の筒状部の外周面及び内周面は、パッキン(又は好ましくは磁気シール)41及び42を介してそれぞれフロア107の内側面及び隔壁114の下端部に全周にわたって接触する。回転体110の下端部には、プーリ43が外嵌している。
【0031】
縦型炉装置100は、モータ40を備えている。モータ40は、この発明の回転手段であり、回転軸にプーリ44が固定されている。プーリ43及びプーリ44には、ベルト45が張架されている。モータ40の回転は、プーリ43,44及びベルト45を介して回転体110に伝達され、熱処理中にボート104を回転体110とともに熱処理容器101の中心軸回りに回転させる。第1のヒータ102及び第2のヒータ103において円周方向の発熱量が均一でない場合でも、ボート104に搭載された処理基板Wの全てを均一に加熱することができる。
【0032】
図3は、この発明の第3の実施形態に係る縦型炉装置の側面断面図である。第3の実施形態に係る縦型炉装置200は、熱処理容器201に隔壁214を一体的に成形し、第2のヒータ3を支柱60を介して第1のヒータ2の上面から吊り下げた点で、縦型炉装置10と相違しており、その他の構成は縦型炉装置10と同様である。
【0033】
隔壁214は、熱処理容器201の上面に開放しており、第1のヒータ2の上面から吊り下げられた第2のヒータ3が隔壁214によって形成された中空部211内に上方から挿入されている。
【0034】
この構成によっても、収納部212内に下面側から収納された図示しない処理基板の全てを第1のヒータ2が有する発熱部2A及び第2のヒータ3が有する発熱部3Aによって均一に加熱することができる。
【0035】
図4(A)及び(B)は、この発明の第4及び第5の実施形態に係る縦型炉装置の平面断面図である。第4の実施形態に係る縦型炉装置300は、互いに相似形の正方形状を呈する第2のヒータ303及び隔壁314を備え、収納部312内で処理基板Wを回転させない点で、第2の実施形態に係る縦型炉装置100と相違している。
【0036】
縦型炉装置300においても、ボート304の4箇所のそれぞれで最も外側に搭載された処理基板Wの外側面が第1のヒータ302の発熱体302Aに熱処理容器301を挟んで対向し、最も内側に搭載された処理基板Wの内側面が第2のヒータ303の発熱体303Aに隔壁314を挟んで対向する。この結果、ボート304に搭載された複数の処理基板Wの全てが全面について均一な状態に加熱される。
【0037】
第5の実施形態に係る縦型炉装置400は、互いに相似形の正三角形状を呈する第2ヒータ403及び隔壁414を備え、収納部412内で処理基板Wを回転させない点で、第2の実施形態に係る縦型炉装置100と相違している。
【0038】
縦型炉装置300においても、ボート404の4箇所のそれぞれで最も外側に搭載された処理基板Wの外側面が第1のヒータ402の発熱体402Aに熱処理容器401を挟んで対向し、最も内側に搭載された処理基板Wの内側面が第2のヒータ403の放熱面のそれぞれに隔壁414を挟んで対向する。この結果、ボート404に搭載された複数の処理基板の全てが全面について均一な状態に加熱される。
【0039】
なお、上記第4及び第5の実施形態においても、もちろん収納部312及び412のそれぞれの内部で、ワークW、第2のヒータ303及び隔壁314、並びにワークW、第2のヒータ403及び隔壁414を、それぞれ一体的に回転させることもできる。
【0040】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1−熱処理容器
2−第1のヒータ
3−第2のヒータ
4−ボート
5−昇降装置
10−縦型炉装置
11−中空部
12−収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内における中央部に配置された中空部と、前記水平面内における前記中空部の周囲を全周にわたって隔離して包囲するとともに下面側から処理基板が搬入出される収納部と、を有する熱処理容器と、
前記熱処理容器の外側を包囲する第1のヒータであって前記収納部に搬入された処理基板の上下方向の全域に対向する第1のヒータと、
前記中空部内に収納された第2のヒータであって前記収納部に搬入された処理基板の上下方向の全域に対向する第2のヒータと、
前記水平面内における複数の位置であって前記第1のヒータ及び前記第2のヒータからの距離が互いに等しい複数の位置のそれぞれで複数枚の処理基板を水平方向に並べて搭載するボートと、
処理基板が前記熱処理容器の下方に露出した露出位置と前記処理基板が前記収納部内に収納された収納位置との間で前記ボートを昇降させる昇降手段と、
を備えた縦型炉装置。
【請求項2】
前記収納部の内側面及び前記中空部の外側面は、3つ以上の平面で構成され、
前記ボートは、前記水平面内における3箇所以上である複数の位置のそれぞれで、処理基板の主面を前記平面のそれぞれに平行にして複数枚の処理基板を搭載し、
前記第1及び第2のヒータは、前記複数の位置のそれぞれに搭載された処理基板の主面に平行な放熱面を備えた請求項1に記載の縦型炉装置。
【請求項3】
前記収納部の内側面及び前記中空部の外側面は、平面視において同心円形状を呈し、
前記ボートは、前記複数の位置のそれぞれに搭載した処理基板を前記水平面内で前記同心円形状の中心軸回りに回転させる回転手段を備えた請求項1に記載の縦型炉装置。
【請求項4】
前記第1のヒータ、前記熱処理容器、前記中空部及び前記第2のヒータが、平面視において互いに相似形を呈するとともに中心位置を一致させて配置された請求項1乃至3の何れかに記載の縦型炉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−177653(P2010−177653A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21963(P2009−21963)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】