説明

繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた繊維強化複合材料

【課題】繊維強化複合材料用のマトリックス樹脂として、高い剛性と耐熱性を同時に示す繊維強化複合材料を与えることのできるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】成分(A)シリカ微粒子、成分(B)2官能エポキシ樹脂、成分(C)多官能エポキシ樹脂および成分(D)アミン型硬化剤を必須成分として含み、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の量が10〜70質量部であり、成分(B)に含まれる成分(B1)エポキシ当量が200以上の2官能エポキシ樹脂の量が15質量部以下である繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた繊維強化複合材料に関する。本発明は、特に、航空機用構造材料をはじめとして、自動車用途、船舶用途、スポーツ用途、その他の一般産業用途に好適な繊維強化複合材料を得るためのエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて得られるプリプレグおよび繊維強化複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維とマトリックス樹脂硬化物とからなる炭素繊維強化複合材料は、その優れた力学物性などから、航空機、自動車、産業用途に幅広く用いられている。近年、その使用実績を積むに従い、繊維強化複合材料の適用範囲はますます拡がってきている。かかる複合材料を構成するマトリックス樹脂には、含浸性や耐熱性に優れる熱硬化性樹脂が用いられることが多く、熱硬化性樹脂には、成形性に優れること、高温環境にあっても高度の機械強度を発現することが必要とされる。このような熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラニン樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が使用されているが、中でもエポキシ樹脂は、耐熱性、成形性に優れ、炭素繊維複合材料にしたときに高度の機械強度が得られるため、幅広く使用されている。
【0003】
従来の炭素繊維強化複合材料においては、繊維方向の引張強度は良好であるが、炭素繊維は繊維状であり繊維径が極めて小さいため、繊維方向に圧縮されると繊維の座屈および/またはせん断により繊維の破壊を起こしやすく、繊維方向の圧縮強度が低いことから、圧縮強度の向上が強く望まれている。一方で、繊維強化複合材料の圧縮強度を向上させるためにはマトリックス樹脂の剛性を高めるのが効果的であることが知られている。そのため、繊維の座屈および/またはせん断による繊維の破壊を抑制し圧縮強度を向上させるため、マトリックス樹脂の弾性率を向上させる試みが行われている。
【0004】
また、高温環境において高い機械強度を発現させるためには、マトリックス樹脂の耐熱性を高めることが有効であることが知られている。マトリックス樹脂の耐熱性を高くするためには架橋密度を上げることが必要であるが、架橋密度を高めると、あるレベルまでは樹脂剛性も向上するが、架橋密度が高くなりすぎると硬化樹脂中の自由体積が増え樹脂剛性が高くなりにくいことが知られている。そのためマトリックス樹脂の高い剛性と耐熱性を両立させることは、これまで非常に困難であるとされていた。
【0005】
しかるに、特許文献1には、エポキシ樹脂をマトリクッスとし圧縮系の機械特性に優れるプリプレグおよび繊維強化複合材料が開示されている。しかし、特許文献1の樹脂組成物では、マトリックス樹脂の剛性はまだ十分であるとはいえず、マトリックス樹脂の更なる剛性改善が望まれている。
【0006】
また、特許文献2にはマトリックスとしてベンゾオキサジン樹脂を主体とする樹脂組成物を用いた、室温乾燥下のみならず、湿熱環境下においても高い機械強度を発現するプリプレグおよび繊維強化複合材料が開示されている。しかしながら、特許文献2の樹脂組成物では、粘度調整のためにエポキシ樹脂を多量に添加するため、ベンゾオキサジン樹脂自体が有する高い剛性が損なわれ、十分な樹脂剛性を得ることは困難である。
【0007】
【特許文献1】特開平8−259713号公報
【特許文献2】特開2006−233188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、繊維強化複合材料用のマトリックス樹脂として、高い剛性と耐熱性を同時に示す繊維強化複合材料を与えることのできるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、以下の構成からなる本発明の樹脂組成物によって課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、成分(A)シリカ微粒子、成分(B)2官能エポキシ樹脂、成分(C)多官能エポキシ樹脂および成分(D)アミン型硬化剤を必須成分として含み、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の量が10〜70質量部であり、成分(B)に含まれる成分(B1)エポキシ当量が200以上の2官能エポキシ樹脂の量が15質量部以下である繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、上記繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を用いて得られるプリプレグおよび繊維強化複合材料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繊維強化複合材料用のマトリックス樹脂として用いたときに高い剛性と耐熱性を同時に示す繊維強化複合材料を与えるエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0014】
本発明に用いられる成分(A)はシリカ微粒子である。シリカ微粒子の配合量は、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、10〜70質量部である。シリカ微粒子の配合量が、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、10質量部以上であれば、樹脂組成物の剛性を高めることができる。好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは45質量部以上である。一方、シリカ微粒子の配合量を多くしすぎると樹脂組成物の比重が大きくなり、またエポキシ樹脂に対する分散性が悪くなる。シリカ微粒子の配合量を成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して70質量部以下にすることにより、樹脂組成物の比重を抑えることができ、またシリカ微粒子のエポキシ樹脂に対する分散性を良くすることができる。より好ましくは50質重量部以下である。
【0015】
繊維強化複合材料用のマトリックス樹脂として使用する場合、シリカ微粒子が成分(B)および成分(C)のエポキシ樹脂中に高度に分散していることが重要である。繊維強化複合材料を製造するためには、強化繊維に樹脂組成物を含浸させるが、その際シリカ微粒子が成分(B)および成分(C)のエポキシ樹脂中に高度に分散していない場合、分散せずに凝集したシリカ微粒子が強化繊維に濾しとられるいわゆるフィルトレート現象が発生することがある。このフィルトレート現象が発生した繊維強化複合材料は靭性や耐熱性などの物性の低下や、繊維強化複合材料の一部に樹脂がいきわたらない「樹脂枯れ」などの外観不良を引きおこす。
【0016】
具体的には成分(B)および成分(C)に分散したシリカ微粒子の2次粒子径が1000nm以下であれば、上記のフィルトレート現象が発生しないので好ましい。より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。2次粒子径は、樹脂組成物の硬化物断面をTEMなどの顕微鏡にて観察することにより測定することができるが、簡易的には1000nmスケールの観察ができる光学顕微鏡を用いて確認することもできる。具体的には、硬化物の断面を観察してシリカ微粒子の凝集体が無ければ、少なくとも光学顕微鏡にて判別可能な粒子径以上の凝集体が存在しないと判断できる。シリカ微粒子が凝集せず、単分散している際には、単分散粒子の粒子径が1000nm以下であれば良く、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0017】
このような、シリカ微粒子が成分(B)および成分(C)のエポキシ樹脂中に高度に分散した状態を得る手段としては、様々な手法をとることができる。第1の方法としては、シリカ微粒子と成分(B)および成分(C)を機械的に分散させる方法である。これはシリカ微粒子および成分(B)および成分(C)を押し出し機、ニーダー、3本ロールミルなどの分散機にかけて分散させる方法である。その際、添加物として分散剤を添加すると分散効果が高くなるため好ましい。第2の方法としては、シリカ微粒子としてエポキシ樹脂中に分散したコロイダルシリカを用いる方法である。エポキシ樹脂中に分散したコロイダルシリカはシリカ微粒子が凝集することなく、ほぼ単独でエポキシ樹脂中に分散しているため、このようなコロイダルシリカ分散エポキシ樹脂を配合するだけで、シリカ微粒子が高度に分散したエポキシ樹脂組成物を得ることができるため、分散工程が非常に簡略化でき、非常に好ましい。
【0018】
このようなコロイダルシリカ分散エポキシ樹脂としては、ナノレジン社製のNanopoxシリーズとして、Nanopox F400、Nanopox F430、Nanopox F440、Nanopox F520、Nanopox F630、Nanopox F640、Nanopox E400、Nanopox E430、Nanopox E440、Nanopox E520、Nanopox E630、Nanopox E640、日産化学工業社製のLENANOCシリーズとしてLENANOC Eなどが挙げられるが、エポキシ樹脂中にコロイダルシリカが分散したものであればよく、これらの商品に限られるものではない。
【0019】
シリカ微粒子の形状としては特に制限は無いが、アスペクト比が高くなると、シリカ微粒子を配合した樹脂組成物にチキソトロープ性がでてくるため、配合量を高くすることができなくなる。球状であればこのようなチキソトロープ性は出にくく、シリカ微粒子の配合量を高めることができるため好ましい。
【0020】
シリカ微粒子の粒径としては特に制限はないが、100nm以下であると強化繊維に含浸させる際に、フィルトレート現象が発生しないため好ましい。より好ましくは50nm以下である。
【0021】
本発明で用いられる成分(B)は2官能のエポキシ樹脂である。2官能のエポキシ樹脂としては、粘度調整や靭性向上などの目的のために、成分(B1)エポキシ当量が200以上の2官能エポキシ樹脂を含むことができる。成分(B1)の配合量が成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して15質量部以下であれば、樹脂組成物の剛性を高くすることができる。好ましくは12質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0022】
成分(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、オキサジゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂などを用いることができる。このような構造のエポキシ樹脂の中でも、官能基がメタ位やオルト位に配合した樹脂を用いると、エポキシ樹脂組成物の剛性を高めることができるため非常に好ましいが、エポキシ基を分子中に2個持つエポキシ樹脂であればどのような構造であっても良く、これらのエポキシ樹脂に限定されるものではない。
【0023】
成分(C)は多官能エポキシ樹脂である。成分(C)を成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して60質量部以上配合すると、エポキシ樹脂組成物の剛性と共に耐熱性を高くすることができるため好ましい。より好ましくは70質量部以上である。
【0024】
成分(C)としては、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを用いることができるが、エポキシ基を分子中に2個よりも多く持つエポキシ樹脂であればどのような構造であっても良く、これらのエポキシ樹脂に限定されるものではない。
【0025】
好ましい成分(C)としては、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を用いることで、エポキシ樹脂組成物の剛性と共に耐熱性を高くすることができる。また、このような構造のエポキシ樹脂の中でも、官能基がメタ位やオルト位に配合した樹脂を用いると、エポキシ樹脂組成物の剛性を高めることができるためより好ましい。
【0026】
成分(D)はアミン型の硬化剤である。アミン型の硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミンなど、およびそれらの異性体、変成体を用いることができる。これらの中でもジシアンジアミドはプリプレグの保存性に優れるため特に好ましい。また、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好な硬化物を与えるため、本発明には最も適している。特に、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンは硬化物の剛性を高くすることができるため最適である。
【0027】
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために、適当な硬化助剤を組み合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体を硬化助剤として組み合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に三級アミンを硬化助剤として組み合わせる例、ジアミノジフェニルスルホンにイミダゾール化合物、フェニルジメチルウレア(PDMU)などのウレア化合物、三フッ化モノエチルアミン、三塩化アミン錯体などのアミン錯体を硬化助剤として組み合わせる例がある。
【0028】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、添加剤として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーからなる群から選ばれた1種以上の樹脂を添加することができる。この添加剤は、マトリックス樹脂組成物の靭性を向上させ、かつ、粘弾性を変化させて、粘度、貯蔵弾性率およびチキソトロープ性を適正化する役割がある。添加剤として用いられる熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーまたはエラストマーは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよりポリエーテルスルホンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂の一群がより好ましく用いられる。耐熱性に優れることから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどが特に好ましく使用される。また、これらの熱可塑性樹脂が熱硬化性樹脂との反応性の官能基を有することは、靭性向上および硬化樹脂の耐環境性維持の観点から好ましい態様である。特に好ましい官能基としては、カルボキシル基、アミノ基および水酸基などが挙げられる。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂を強化繊維に含浸させ、加熱により硬化させることにより繊維強化複合材料を得ることができる。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物と組み合わせる強化繊維には制限は無く、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、ボロン繊維、スチール繊維などを、トウ、クロス、チョップドファイバー、マットなどの形態で使用できる。
【0033】
これらの強化繊維のうち、炭素繊維や黒鉛繊維は比弾性率が良好で軽量化に大きな効果が認められるので本発明には好ましい。また、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維または黒鉛繊維を用いることができるが、引張強度3500MPa以上、引張弾性率190GPa以上の炭素繊維または黒鉛繊維が特に好ましい。
【0034】
また、繊維強化複合材料の用途にも制限は無く、テニスラケット、ゴルフシャフトなどの汎用品に使用できるが、本発明の樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は繊維方向の圧縮強度に優れることから、特に航空機用部品への使用に最適である。
【0035】
繊維強化複合材料の製造方法としては、プリプレグと呼ばれるシート状の成形中間体に加工して、オートクレーブ成形、シートラップ成形、プレス成形などの成形方法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームにエポキシ樹脂組成物を直接含浸させて成形物を得るRTM、VaRTM、フィラメントワインディリング、RFIなどの成形法を用いることができるが、これらの成形方法に限られるものではない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
樹脂組成物の調製
各原料を単に計量し、ガラスフラスコにて70℃で加熱混合することによって樹脂組成物を得た。
【0038】
加熱硬化樹脂板の作製
得られた樹脂組成物を2mm厚のポリテトラフルオロエチレンのスペーサーを挟んだ2枚のガラス(2mm厚)の間に注入し、180℃、2時間の硬化条件で加熱硬化させ、加熱硬化樹脂板を得た。
【0039】
樹脂板の曲げ弾性率の測定
得られた樹脂板を試験片(長さ60mm×幅8mm×厚み2mm)に加工し、3点曲げ冶具(圧子、サポートとも3.2mmR、サポート間距離32mm)を設置したインストロン社製万能試験機を用いて曲げ特性を測定した。荷重負荷速度を2mm/分とした。
【0040】
耐熱性の測定
得られた樹脂板を試験片(長さ55mm×幅12.5mm×厚み2mm)に加工し、TAインストルメンツ社製レオメーターARES−RDAを用いて、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分で、logG’を温度に対してプロットし、logG’の平坦領域の近似直線と、G’が転移する領域の近似直線との交点から求まるガラス転移温度をG’Tgとして記録した。
【0041】
実施例1〜11および比較例1〜6
上記のようにして、表1に示す原料組成(部は質量部を示す)からなるエポキシ樹脂組成物を調製し、次いで硬化樹脂版を作成し、この硬化樹脂板の物性測定を行った。エポキシ樹脂組成物の含有成分(部は質量部を示す)および硬化樹脂板の物性の評価結果を表2に示す。
【0042】
配合に用いた原料の詳細を下記に示す。
Nanopox E430:エポキシ樹脂中にシリカ微粒子がコロイダル分散した、シリカ微粒子配合エポキシ樹脂、成分60%がエポキシ当量200eq/g以下のビスフェノール型エポキシ樹脂(2官能)、ナノレジン社製
JER4004P:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能)、エポキシ当量880eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
JER1002:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能)、エポキシ当量650eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
JER1009:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能)、エポキシ当量28500eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
JER807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能)、エポキシ当量168eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
JER828:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能)、エポキシ当量189eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
ELM−100:パラアミノクレゾール型エポキシ樹脂(3官能)、エポキシ当量107eq/g、住友化学社製
JER630:パラアミノフェノール型エポキシ樹脂(3官能)、エポキシ当量97eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
JER604:テトラグリジシルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(4官能)、エポキシ当量120eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
EPPN502H:トリフェニルメタンノボラック型エポキシ樹脂(官能基数は3よりも大きい)、エポキシ当量168eq/g、日本化薬社製
JER1031S:ノボラック型エポキシ樹脂(4官能)、エポキシ当量200eq/g、ジャパンエポキシレジン社製
3,3’−DDS:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、アミン型硬化剤、日本合成化工社製
PES5003P:ポリエーテルスルホン、熱可塑性樹脂、住友化学社製
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
表2からわかるように、実施例1〜11でそれぞれ得られた樹脂組成物は非常に高い弾性率を持ち、耐熱性も非常に高かった。
一方、比較例1〜6で得られた硬化樹脂板は何れも低い弾性率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上に詳細に説明したように、本発明のプリプレグ用樹脂組成物は、硬化後のマトリックス自体の剛性ならびに耐熱性が高く、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として適している。よって、本発明は産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)シリカ微粒子、成分(B)2官能エポキシ樹脂、成分(C)多官能エポキシ樹脂および成分(D)アミン型硬化剤を必須成分として含み、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の量が10〜70質量部であり、成分(B)に含まれる成分(B1)エポキシ当量が200以上の2官能エポキシ樹脂の量が15質量部以下である、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
成分(C)の量が、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、60質量部以上である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
成分(C)がアミノフェノール型エポキシ樹脂である請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
成分(C)がアミノクレゾール型エポキシ樹脂である請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物と強化繊維に含浸させ、硬化させて得られる繊維強化複合材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物と強化繊維からなるプリプレグ。
【請求項7】
請求項6記載のプリプレグを硬化させて得られる繊維強化複合材料。

【公開番号】特開2009−292866(P2009−292866A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145037(P2008−145037)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】