説明

繊維複合材料からプロファイルを製造する方法

本発明は、特に航空機産業及び航空宇宙分野における、以下の工程を有する、繊維複合材料からプロファイルを製造する方法を提供する。特に予め含浸させた繊維材料からなる予備ファブリック(3)を、まず、真空バッグ(7)で被覆する。その後、支持要素(17、18)を、被覆した予備ファブリック(3)上に置き、これを支持する。その後、真空バッグ(7)に真空(PI)を与える。次に、予備ファブリック(3)は、特にオートクレーブ内で、熱の作用の下で硬化されプロファイルとなる。特許請求する方法によれば、支持要素(17、18)は、真空バッグ(7)によって、長手方向(8)において予備ファブリック(3)から機械的に切り離されており、これにより、支持要素(17、18)を、予備ファブリック(3)に対して長手方向(8)に移動させることが可能となるため、非常に費用のかかる36ニッケルスチールの代わりに、好ましい材料、特にアルミニウムから支持要素(17、18)を形成することができ、好都合である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維複合材料からプロファイルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明、及び本発明の基となる問題は、どのようなプロファイルの製造にも当てはまるが、航空機のストリンガに関してこれらを詳細に説明する。
【0003】
出願人に既知である、プロファイル、例えばストリンガの製造方法によれば、まず、繊維複合材料からなる予備ファブリックを積層装置に載置する。その後、前記予備ファブリックを支持する支持要素が前記予備ファブリック上に配置され、このようにして、予備ファブリックを、製造すべき所望のストリンガ形状に保持する。しかる後、前記予備ファブリックは、前記支持要素とともに真空バッグで被覆され、前記真空バッグは真空にさらされる。最後に、内部に前記予備ファブリックを有する真空バッグと前記支持要素からなる構成物を、オートクレーブ内で、加圧及び加熱により硬化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維複合材料、特に炭素繊維が含まれるものは、熱膨張係数が非常に低い。したがって、前記予備ファブリックをこれに直接接触して支持している前記支持要素も、熱膨張係数が非常に低い材料から形成しなくてはならず、そうしなければ、前記予備ファブリックは、前記支持要素との相互作用により、望ましくないひずみを受けることになるだろう。熱膨張係数が非常に低い材料、例えば36ニッケルスチールは非常に高価である。さらに、前記支持要素は、製造すべきプロファイルの形状に応じた非常に独特の形状を有していなければならない。36ニッケルスチールからなる支持要素の場合、36ニッケルスチールは非常に硬いため、今度は、非常に複雑な機械的処理が必要となる。特に、長手方向に曲がるタイプのプロファイルである流線形のプロファイルの製造においては、その支持要素の機械的処理にかかる費用が非常に高い。
【0005】
したがって、本発明の目的は、特に、上述した非常に費用のかかる支持要素を用いずに達成される、繊維複合材料からプロファイルを製造する改良された方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法により達成される。
【0007】
これによれば、特に、航空宇宙部門における、以下の工程からなる、繊維複合材料からプロファイルを製造する方法が提供される。まず、予備ファブリックが真空バッグで被覆される。その後、少なくとも1つの支持要素が、前記被覆された予備ファブリック上に配置されてこれを支持する。その後、前記真空バッグが真空にさらされる。さらに、その後、前記予備ファブリックを硬化させてプロファイルを形成する。
【0008】
本発明の基礎となる目的は、前記少なくとも1つの支持要素と前記予備ファブリックが真空バッグの両側に配置されている場合、該真空バッグにより、前記予備ファブリックに対する前記少なくとも1つの支持要素の移動が可能になるという理解にある。したがって、これにより、前記予備ファブリックのひずみを引き起こす可能性のある、前記予備ファブリックと前記少なくとも1つの支持要素との機械的相互作用が避けられる。この結果、経済的な材料、例えば、機械によって簡単に所望の形状にすることもできるアルミニウムシートやチタンシートを前記支持要素の材料として用いることができる。あるいは、プラスチック材料製の支持要素、特にプラスチック材料からなる押出成形プロファイルも可能である。このようにして、既知の方法に比べ非常に経済的な、繊維複合材料からプロファイルを製造する方法が提供される。特に、流線形のプロファイルをこのようにして製造でき、有利である。
【0009】
本発明の有利な発展形態及び実施形態は、下位クレームに挙げられる。
【0010】
本明細書中で用いられる「予備ファブリック」という語は、あらゆる種類の繊維材料、特に繊維織布、繊維織物又は繊維フェルトを意味すると理解される。繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維又はアラミド繊維として形成することができる。前記繊維材料は、すでに予め樹脂マトリックスを含浸させてあることが好ましい。しかしながら、同様に、前記予備ファブリックを被覆し、前記少なくとも1つの支持要素を配置した後に、例えば注入工程によって、前記繊維材料にだけ樹脂マトリックスを浸透させ、その後硬化させてプロファイルを形成するようにすることも可能である。前記樹脂マトリックスは、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る方法の好ましい発展形態によれば、前記少なくとも1つの支持要素は、アルミニウム又はスチール、特にアルミニウムシート又はスチールシートから形成される。もちろん、アルミニウムはあらゆるアルミニウム合金を含む。アルミニウム及びスチールは比較的安価であり、機械によって簡単に所望の形状をした支持要素に加工することもでき、これにより、費用をさらに低減することが可能となる。
【0012】
特に、シート状金属からなる支持要素は、流線形のプロファイルを製造するために簡単に曲げることができる。
【0013】
本発明に係る方法のさらに好ましい発展形態によれば、前記予備ファブリックは、ウェブを備えて構成されており、特にL形状のプロファイルとして構成される2つの支持要素が、その間で前記ウェブを支持するように、前記被覆された予備ファブリック上に配置される。尚、前記L形状のプロファイルの長手軸は、前記予備ファブリックの長手軸に対して概ね平行に延びている。前記予備ファブリックのウェブは、寸法安定性が比較的不安定であるため、両側で支持する必要がある。
【0014】
本明細書中で用いられる、構成要素の「長手軸」という語は、該構成要素の断面がごくわずかしか変化しない軸を意味すると理解される。
【0015】
本発明に係る方法のさらに好ましい発展形態によれば、前記2つの支持要素は、ゴム製屋根型プロファイル、2つの三角形プロファイルとこれらを接続する接着テープ、クランプ及び/又は追加真空バッグにより、互いに対して保持される。本明細書中で用いられる「ゴム製屋根型プロファイル」という語は、支持面と、該支持面に形成された窪みを有する弾性プロファイルを意味すると理解され、この窪みはゴム製屋根型プロファイルの長手方向に延びている。前記窪み、特に溝は、前記プロファイルのウェブを、前記支持要素の、前記ウェブを支持する部分とともに弾性的に受けるように構成されている。前記ゴム製屋根型プロファイルは、特に、T型プロファイルの製造に適している。前記支持要素を単に相対的に相互固定することにより、熱膨張係数が高い要素が2つの相互に不動の点でそれぞれ固定されている場合にこれらに生じるテンションが回避される。一般に、ゴム製屋根型プロファイル、接着テープを備えた三角形プロファイル、クランプ及び真空バッグは、現在使われている、重い36ニッケルスチール製の用具に比べて扱いが非常に簡単である。
【0016】
さらに好ましい発展形態によれば、前記被覆された予備ファブリックは、前記少なくとも1つの支持要素とともに、追加真空バッグで被覆され、この場合、前記追加真空バッグ内に印加される真空は、前記真空バッグ内の真空以下に設定される。本明細書中で用いられる「真空」という語は、大気圧と、真空バッグ内を支配している絶対圧の差値を意味すると理解される。上記発展形態は、前記真空バッグは、前記予備ファブリックにしっかりと置かれており、硬化後の繊維複合材料の材料特性に悪い影響を及ぼすかもしれない、その内部を支配する圧力による前記第2の真空バックの方向への変形が生じないことを挙げている。
【0017】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る方法の状態を示している。
【図2】図2は、本発明の追加の実施形態に係る方法の状態を示している。
【図3】図3は、本発明の追加の実施形態に係る方法の状態を示している。
【図4】図4は、本発明の追加の実施形態に係る方法の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図中では、別途指示しない限り、同一の参照番号は、同一の又は機能的に同等の構成要素を示す。
【0020】
図1は、T型ストリンガとして構成されるプロファイルの製造のための構成物1の断面図である。
【0021】
前記構成物1は、積層装置2を有し、その上には、いずれの場合もL形状の断面を有する2つのパーツ4、5とこれらの間に配置されるブレード6からなる、T形状の断面を有する予備ファブリック3が配置される。
【0022】
本実施形態によれば、前記予備ファブリック3は、エポキシ樹脂マトリックスを予め含浸させた、即ち、前記エポキシ樹脂マトリックスは硬化されていない状態である、炭素繊維織布からなる。前記予備ファブリック3は、長手軸8に沿って、紙面に対して概ね垂直に延びている。前記予備ファブリック3は、流線形に構成することもできる。
【0023】
前記予備ファブリックは、封止手段11、12により前記積層装置2から封止された真空バッグ7で被覆される。前記真空バッグ7の内部13を支配しているのは、真空P1、即ち、大気14を支配する圧力P0よりも低い圧力である。
【0024】
前記予備ファブリック3のウェブ15は、図1に示す位置に、ゴム製屋根型プロファイル16及び2つの支持要素17、18により保持される。
【0025】
前記支持要素17、18は、それぞれ、L形状の断面を有するアルミニウムシートから形成される。前記支持要素17、18は、前記真空バッグ7に対して、前記長手方向8にスライドしながら変位できるように配置され、前記支持要素17及び18の部分22、23は、前記ストリンガのウェブ15を支持し、前記支持要素17及び18の部分24、25は、前記予備ファブリック3の2つの足部26及び27上に置かれる。
【0026】
前記ゴム製屋根型プロファイル16は、前記長手方向8に延びる窪み31を有しており、該窪み31の側面32、33の間で、前記ウェブ15を、前記部分22、23とともに受ける。前記支持要素17、18の前記部分24及び25上で、前記ゴム製屋根型プロファイルが、前記窪み31の側面32、33に対して概ね垂直に延びる支持面34、35で支持されている。
【0027】
前記ゴム製屋根型プロファイル16は、前記支持要素17、18の部分22、23及び前記ウェブ15の上方で逆さまにされて弾性的に広げられ、このようにしてこれらの支持要素17、18を互いに対して固定し、この結果、前記ストリンガのウェブ15は、図1に示すように、その形状が保持される。尚、前記側面32、33は、前記支持要素17及び18の部分22及び23に対してわずかな弾性圧を生む。
【0028】
前記構成物1は、その後、好ましくはオートクレーブ内で、熱にさらされる(及び圧力にもさらされ得る)。これにより、前記予備ファブリック3が硬化されてT型ストリンガが製造される。
【0029】
図2の構成物40は、前記ゴム製屋根型プロファイル16の代わりに、2つの三角形プロファイル41、42及びこれらを接続する接着テープ43を用いている点のみが、図1の構成物と異なる。前記三角形プロファイル41、42は、ゴム材料から形成されていることが好ましく、前記支持要素17、18に係合し、前記接着テープ43と協力してこれらを適所に保持する。
【0030】
図3の構成物50においては、図1の実施形態に係るゴム製屋根型プロファイル16の代わりに、クランプ51が設けられおり、このクランプ51は、わずかな力で、前記支持要素17及び18の部分22、23を前記予備ファブリック3のウェブ15に押し付けており、このために、前記クランプ51の反り部52は弾性材料から形成されていることが好ましい。
【0031】
図4の構成物60においては、図1の実施形態に係るゴム製屋根型プロファイル16の代わりに、追加真空バッグ61が設けられおり、この真空バッグ61は、その内部62に、前記予備ファブリック3を、前記真空バッグ7及び前記支持要素17、18とともに受ける。前記追加真空バッグ61の内部62は真空P2が支配する。前記真空P1を前記真空バッグ7の内部13に、前記真空P2を前記真空バッグ61の内部62に、例えば、それぞれ真空ポンプ(図示せず)に接続されたホース63、64により印加することができる。
【0032】
前記真空P1及びP2には、以下の関係が当てはめられる。
P1≧P2
例えば、P1=100kPa、P2=25kPa、P1及びP2は大気圧P0に対して計測される。
【0033】
図4に係る実施形態において、前記真空バッグ61は、支配している真空P1及びP2によって、前記支持要素17、18を前記ウェブ15に押し付けてこれを支持している。
【0034】
図1乃至図4に係る実施形態に共通しているのは、前記予め含浸した予備ファブリック3の代わりに、いずれの場合も、前記支持要素17、18を配置した後、前記構成物1、40、50及び60にそれぞれ熱及び/又は圧力を印加する前に、樹脂マトリックスを浸透させることができる、乾燥した繊維材料を何時でも用いることができることである。
【0035】
複数の実施形態を基に本発明を説明してきたが、これらに限定されず、多くの異なる方法で変更することが可能である。
【0036】
本発明は、特に航空宇宙部門における、以下の工程からなる、繊維複合材料からプロファイルを製造する方法を提供する。まず、特に予め含浸した繊維材料からなる予備ファブリックを真空バッグで被覆する。その後、前記被覆された予備ファブリック上に支持要素を配置してこれを支持する。しかる後、前記真空バッグを真空にさらす。さらに、その後、特にオートクレーブ内で、熱効果の下、前記予備ファブリックを硬化させてプロファイルを製造する。本発明に係る方法において、前記支持要素は、長手方向において、前記真空バッグによって前記予備ファブリックと機械的に切り離されており、これにより、前記支持要素を、前記予備ファブリックに対して、長手方向に移動させることが可能となるため、非常に費用のかかる36ニッケルスチールの代わりに、好ましい材料、特にアルミニウムから前記支持要素を形成することができ、好都合である。
【符号の説明】
【0037】
1 構成物
2 積層装置
3 予備ファブリック
4 パーツ
5 パーツ
6 ブレード
7 真空バッグ
8 長手方向
11 封止手段
12 封止手段
13 内部
14 大気
15 ウェブ
16 ゴム製屋根型プロファイル
17 支持要素
18 支持要素
22 部分
23 部分
24 部分
25 部分
26 足部
27 足部
31 窪み
32 側面
33 側面
34 支持面
35 支持面
40 構成物
41 三角形プロファイル
42 三角形プロファイル
43 接着テープ
50 構成物
51 クランプ
52 反り部
60 構成物
61 追加真空バッグ
62 内部
63 ホース
64 ホース
P0 大気圧
P1 真空バッグ7内の圧力
P2 追加真空バッグ61内の圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に航空宇宙部門における、繊維複合材料からプロファイルを製造する方法であって、
T形状の断面を有して構成され、ウェブ(15)及び足部(26、27)を備えた予備ファブリック(3)を真空バッグ(7)で被覆する工程と、
L形状の断面を有して構成された2つの支持要素(17、18)を、これらが前記真空バッグ(7)に対して、長手方向(8)にスライドしながら変位することができ、前記支持要素(17、18)の部分(22、23)が前記予備ファブリック(3)のウェブ(15)を支持し、前記支持要素(17、18)の部分(24、25)が前記予備ファブリック(3)の足部(26、27)上に置かれるように、前記被覆された予備ファブリック(3)上に、これを支持するために配置する工程と、
前記真空バッグ(7)に真空(P1)を印加する工程と、
前記長手方向(8)に延びる窪み(31)を有するゴム製屋根型プロファイル(16)を、前記予備ファブリック(3)のウェブ(15)が、前記支持要素(17、18)の、前記ウェブ(15)を支持する部分(22、23)とともに、前記窪み(31)の側面の間で受けられ、前記ゴム製屋根型プロファイル(16)の、前記側面に対して垂直に延びる支持面が、前記支持要素(17、18)の、前記足部(26、27)上に位置する部分(24、25)上に置かれるように、前記支持要素(17、18)上で逆さまにし、これを弾性的に広げ、前記支持要素(17、18)を互いに対して固定する工程と、
前記予備ファブリック(3)を硬化させてプロファイルを形成する工程とからなるプロファイル製造方法。
【請求項2】
前記2つの支持要素(17、18)は、アルミニウム又はスチール、特にアルミニウムシート又はスチールシートから形成されることと特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−507738(P2011−507738A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540085(P2010−540085)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065114
【国際公開番号】WO2009/083318
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509203120)エアバス オペラツィオンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (67)
【Fターム(参考)】