説明

羽子板ボルトの製造方法及び羽子板ボルト

【課題】素材が無駄にならず、素材の使用量に比して固定板部に形成した固定孔の周囲が肉厚となる羽子板ボルトの製造方法及び羽子板ボルトを提供すること。
【解決手段】丸鋼棒の一端に雄ネジ部を有し、他端に扁平な固定板部5を有する羽子板ボルトの製造方法であって、固定板部に対する一回目のプレスにより、固定板部5の一部に素材を周囲に押し退けて薄くした凹部15を形成する。次いで、二回目のプレスにより、その凹部15の底を打ち抜いて固定孔7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽子板ボルトの製造方法及び羽子板ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋において交差する2本の構造材を接合する接合具として、ボルト部の頭部に扁平な固定板を設けて成る羽子板ボルトが知られている。
羽子板ボルトを製造するには、ボルト部に別体の固定板を溶接して取り付けることがあるが、溶接作業は面倒で大量生産には適していない。
一方、特許文献1に記載の羽子板ボルトは、ボルト部の端部を圧平状にしてプレート部を形成し、プレート部に締付けボルトの貫通孔を形成してある。しかし、扁平なプレート部を一度で打ち抜いて貫通孔を形成すると、貫通孔の面積とプレート部の厚みを乗じた容積の素材がそのまま打ち抜かれて無駄になる。この事態は、引っ張り強度を高めるためにプレート部を厚くするほど、無駄になる素材も増える。
【0003】
【特許文献1】特開2007−211910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貫通孔を形成するために打ち抜く部分は不用部分であるが、従来は捨て去られてしまう素材を有効に利用すべきである。本発明は、捨て去られていた素材を貫通孔(固定孔)の周囲を補強することに使用し、素材を無駄にせず、かつ、固定孔の周囲が肉厚となる羽子板ボルトの製造方法及び羽子板ボルトの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、丸鋼棒の一端部に雄ネジ部を設け、他端部に扁平な固定板部を設けて成る羽子板ボルトに関する。製造方法として、前記の扁平な固定板部の一部を一回目のプレスにより、素材を周辺に押し退けて底部を薄くした凹部を形成する。次いで、二回目のプレスにより、この凹部の底を打ち抜いて固定孔を形成する。
このように製造した羽子板ボルトでは、凹部を形成するために押し退けられた素材によって、固定孔の周辺が肉厚となる。
凹部をその断面における最大径部分と同径に打ち抜いて、打ち抜き面が垂直な固定孔を形成すると良い。
平面楕円形の凹部を形成し、その底を平面楕円形に打ち抜いて固定孔を形成することがある。平面楕円形の固定孔に、固定用ボルトの頭部下面に設けた楕円形の回り止め突起を係合する。
【発明の効果】
【0006】
1回目のプレスにより凹部を形成するとき、素材を周辺に押し退け、固定孔の周囲を肉厚とするので、引っ張り強度が高まる。
また、固定孔は1回目のプレスにより薄くした凹部の底を打ち抜くので、打ち抜きによって無駄になる鋼の量が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1及び図2は、本発明に係る羽子板ボルト1を示す。
羽子板ボルト1は、丸鋼棒2の一端部に雄ネジ部3を設け、他端部を屈曲して傾斜部4を形成し、さらに、傾斜部4の先端に扁平な固定板部5を設けて成る。固定板部5の中央部分は薄肉部6となっており、薄肉部6の中央に固定孔7を形成してある。
固定孔7は、図3及び図4に示す固定用ボルト8を挿通するためのものであり、平面楕円形としてある。固定用ボルト8の頭部9の下面には、楕円形の回り止め突起10を形成してあり、この回り止め突起10を固定孔7に係合することにより、固定用ボルト8の可動を規制する。従って、固定用ボルト8の頭部9に手が届き難い場合でも、容易に締付けることができる。
【0008】
羽子板ボルト1は次のように製造する。
予め、丸鋼棒2の一端部に雄ネジ部3を形成し、プレス成形により、丸鋼棒2の他端部を屈曲させて傾斜部4を形成すると共に、その先端を圧潰して扁平な固定板部5を形成しておく。
次に、一回目のプレスを行なう。この工程に用いるパンチ11は、図5に示すように、薄肉部6を形成するための先端面12と、その中央に設けた楕円形の段部13を有する。先端面12の前後端部及び段部13の先端周縁部はテーパー面となっている。
【0009】
ダイ14の上に載置した固定板部5を、パンチ11によって押圧すると、段部13によって鋼素材が周囲に押し退けられて薄くなり、この部分に凹部15が形成される。凹部15はパンチの段部13により周壁がテーパー面に形成されるので、底に近づくほど径小で、平面楕円形の穴となる。
そして、凹部15の周辺はダイ14とパンチ11の先端面12とで挟まれて薄肉部6となる。この薄肉部6には、パンチの段部13で押し退けられた凹部15の容積に相当する量の鋼素材が進入するので、その分厚く形成することができる。つまり、凹部15の容積に相当する量の鋼素材が進入する分を見込んで段部13と先端面12との段差を大きく形成しておく。
なお、一回目のプレスでは、凹部15の底(段部13の先端)から固定板部5の下面(ダイ14の上面)までの距離が1.5mm程度となるよう押圧する。
【0010】
次いで、図6に示すように、二回目のプレスにより、凹部15の底を打ち抜いて固定孔7を形成する。二回目のプレスに使用するパンチ11’の先端部は、凹部15の断面における最大径部分、即ち、凹部15の上面開口部と同径の楕円柱16となっている。ダイ14’上に載せた固定板部5の凹部15をこのパンチ11’で打ち抜くと、側面が垂直な平面楕円形の固定孔7を穿つことができる。このとき、凹部15の下方には1.5mm程度の厚みしかないので、打ち抜きによって無駄になる鋼の量は非常に少なくて済む。
また、固定孔7の周辺は、同じ直径の丸鋼棒を用いるとして、扁平な固定板部に固定孔を一度のプレスで貫通形成する場合に比べて肉厚となり、引っ張り強度が高まる。
【0011】
なお、固定孔7の形状は、固定用ボルトの回り止め突起の形状に応じて様々な変形例が考えられ、例えば、角形、角取りした長方形、周縁に切込みを入れた円形等とすることができるが、周縁に加わる力が分散し、切れ目が発生し易い角の無い楕円形が最も適している。
また、固定板部の形状及び固定孔の数は適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】羽子板ボルトの平面図。
【図2】羽子板ボルトの側面図。
【図3】固定用ボルトの下面図。
【図4】固定用ボルトの側面図。
【図5】一回目のプレス工程を示す断面図。
【図6】二回目のプレス工程を示す断面図。
【符号の説明】
【0013】
1 羽子板ボルト
2 丸鋼棒
3 雄ネジ部
4 傾斜部
5 固定板部
6 薄肉部
7 固定孔
8 固定用ボルト
9 頭部
10 回り止め突起
11,11’ パンチ
12 先端面
13 段部
14,14’ ダイ
15 凹部
16 楕円柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸鋼棒の一端部に雄ネジ部を設け、他端部に扁平な固定板部を設けて成る羽子板ボルトの製造方法であって、あらかじめ扁平に成形してある固定板部の一部を、一回目のプレスにより、素材を周辺に押し退けて薄くした凹部を形成し、次いで、二回目のプレスにより、その凹部の底を打ち抜いて固定孔を形成することを特徴とする羽子板ボルトの製造方法。
【請求項2】
一回目のプレスにより形成した凹部をその断面における最大径部分と同径に打ち抜いて、打ち抜き面が垂直な固定孔を形成する請求項1に記載した羽子板ボルトの製造方法。
【請求項3】
一回目のプレスにより形成した凹部を平面楕円形とし、その底を平面楕円形に打ち抜いて固定孔を形成する請求項2に記載した羽子板ボルトの製造方法。
【請求項4】
丸鋼部の一端部に雄ネジ部を設け、他端部に扁平な固定板部を設けて成る羽子板ボルトにおいて、固定板部の一部に、素材を周辺に押し退けて薄くした凹部を形成してから、凹部の底を打ち抜いて形成した固定孔を設け、固定孔の周辺を肉厚にしてあることを特徴とする羽子板ボルト。
【請求項5】
固定孔の打ち抜き面が垂直である請求項4に記載した羽子板ボルト。
【請求項6】
固定孔が平面楕円形である請求項5に記載した羽子板ボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−148767(P2009−148767A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326317(P2007−326317)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(398041764)株式会社カナイ (27)
【Fターム(参考)】