説明

耐震対応縦型炉及びその稼働方法

【課題】 耐震対応縦型炉及びその稼働方法に関し、小規模な機構により大きな振動に対する耐震性を向上させる。
【解決手段】 ヒーターユニット受けに振動時にヒーターユニットを浮上させるガス浮上機構を設け、ボートユニット受けに振動時にボートユニットを浮上させるガス浮上機構を設けるとともに、ヒーターユニットの上部に、ヒーターユニットの横方向の揺れを制御する磁気的揺れ制御機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震対応縦型炉及びその稼働方法に関するものであり、例えば、地震や外部からの揺れから縦型熱処理炉の破壊を小規模な機構により防止するための手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、縦型炉は、熱処理炉及びボートエレベーター部を備えた搬送部が本体筐体に対して固定されており、地震や建設作業等に伴う外部からの振動(揺れ)が直接伝わる構造となっている。したがって、地震の発生や建設作業等に伴って振動が発生した場合に、振動は装置全体に伝わり、ウェーハがセットされたボートが倒れたり、セットされたウェーハが飛び出したりする。
【0003】
ここで、図13を参照して従来の縦型炉を説明する。図13は従来の縦型炉の概念的構成図であり、ここでは、縦型炉を構成する炉芯部、ボート部及びエレベーター部のみを説明する。
【0004】
縦型炉は、ウェーハの搬送部(図示は省略)、ボート部100、ボート部100を炉に装着するエレベーター部110、熱処理を行う炉芯部120により構成されている。炉芯部120は、ヒーター121、均熱管122、アウター管123、インナー管124で構成されヒーターユニットベース125に固定されている。
【0005】
また、エレベーター部110は、昇降機構111とエレベーターベース112が設けられており、このエレベーターベース112の上にウェーハがセットされたボート部100が搭載される。
【0006】
また、ボート部100は、ウェーハがセットされるボート101と保温筒102を備えており、ボート101は保温筒102を介してキャップ103に固定される。エレベーター部110を上昇させてボート部100を炉心管120の内部に装着すると、エレベーター部110のみが下降して、熱処理が開始されることになる。
【0007】
地震災害が発生した場合は、揺れによりウェーハの落下やボート倒れが発生し、倒れたボート101により炉内部のインナー管124やアウター管123などの石英部品を破損する。石英部品等が破損した場合には、製造ラインを停止する必要があり、それに伴って、時間的・金額的損失が発生するという問題がある。特に、石英部品は、納期的にも長期間要し、設備復旧においてはキーになる項目である。
【0008】
このような振動に対応するために、振動に伴う装置全体の揺れをカバーするために本体筐体の床面に振動吸収するためのコロ等を利用した耐震用ユニットを利用する場合もある。そのほとんどがこのような振動(揺れ)を抑える方法であり、外部に専用の耐震用ユニットを追加するが、装置の設置状況により大きさの制約がある。
【0009】
即ち、本体筐体の床面に設置する耐震ユニットは、既設の設置面積よりも大きくなり、また、原動ラインの取り込み方法も変更する必要があるため、全ての装置に設置できるとは限らないという問題がある。
【0010】
また、縦型炉を構成する部品レベルで振動に強い形状や材料に変更する場合もある。しかし、インナー管やアウター管等の石英部品については、強度を上げる工夫にも製作限界があり、それほど大きな振動に耐えることはできない。
【0011】
そこで、縦型炉の耐震性を高めるために、幾つかの提案がなされている。例えば、ボートと炉口蓋のクリアランスを無くし、転倒しそうになった場合は蓋と接触させることが提案されている。或いは、処理炉であるヒーターユニットに緩衝材を導入する方法も提案されており、インナー管やアウター管等の石英部品を接触させて押さえ込み、重量物であるヒーターユニット内部に緩衝材を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−098610号公報
【特許文献2】特開2002−093795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上述の提案では、大きな振動(揺れ)には十分に耐えられる効果はほとんど得られないという問題がある。
【0014】
したがって、本発明は、小規模な機構により大きな振動に対する耐震性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
開示する一観点からは、ウェーハ収容管を内部に収容するヒーターユニットを有する炉芯部と、前記ウェーハ収容管内に挿入されるウェーハを格納するボートを備えたボートユニットを有するボート部と、前記ボート部を上下動させるエレベーター部と、揺れ検出機構と、前記炉芯部、前記ボート部、前記エレベーター部及び前記揺れ検出機構を格納する筐体とを備え、前記炉芯部は、前記ヒーターユニットを固定するヒーターユニット固定部材と、前記ヒーターユニット固定部材をロック機構によって固定するヒーターユニット受けを備えるとともに、前記ヒーターユニット受けは、ガスの導入により前記ヒーターユニットを浮上させるガス浮上機構を備え、前記ボート部は、前記ボートユニットを固定するボートユニット固定部材と、前記ボートユニット固定部材をロック機構により固定するボートユニット受けを備えるとともに、前記ボートユニット受けは、ガスの導入により前記ボートユニットを浮上させるガス浮上機構を備え、前記炉芯部は、その上部に前記ヒーターユニットの横方向の揺れを制御する磁気的揺れ制御機構を備えていることを特徴とする耐震対応縦型炉が提供される。
【0016】
また、開示する別の観点からは、耐震対応縦型炉がスタンバイ時或いは処理中に前記揺れ検出機構が、予め設定した揺れ以上の揺れを検出した場合に、前記ロック機構による前記ヒーターユニット固定部材の固定を解除し、前記ヒーターユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ヒーターユニットを浮上させるとともに、前記ロック機構によるボートユニット固定部材の固定を解除し、前記ボートユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ボートユニットを浮上させ、且つ、前記磁気的揺れ制御機構を作動させることを特徴とする耐震対応縦型炉の稼働方法が提供される。
【0017】
また、開示するさらに別の観点からは、耐震対応縦型炉がスタンバイ時或いは処理中に地震情報或いは地震計によるP波或いはS波の振幅が予め設定した震度以上であることを検出した場合に、前記ロック機構による前記ヒーターユニット固定部材の固定を解除し、前記ヒーターユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ヒーターユニットを浮上させるとともに、前記ロック機構によるボートユニット固定部材の固定を解除し、前記ボートユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ボートユニットを浮上させ、且つ、前記磁気的揺れ制御機構を作動させることを特徴とする耐震対応縦型炉の稼働方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
開示の耐震対応縦型炉及びその稼働方法によれば、小規模な機構により大きな振動に対する耐震性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の耐震対応縦型炉の構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態の耐震対応縦型炉の振動発生時における浮上状態の説明図である。
【図3】本発明の実施例1の耐震対応縦型炉の炉芯部の概略的構成図である。
【図4】本発明の実施例1の磁気的揺れ制御機構の概念的構成図である。
【図5】本発明の実施例1の耐震対応縦型炉のボート部の概略的構成図である。
【図6】炉芯部とボート部の合体状態の説明図である。
【図7】浮上状態の説明図である。
【図8】ヒーターユニット浮上時の磁気的揺れ制御機構の動作の説明図である。
【図9】揺れ検出器の概念的構成図である。
【図10】揺れ検出器の動作の説明図である。
【図11】本発明の実施例1の耐震対応縦型炉の処理シーケンスである。
【図12】本発明の実施例2の耐震対応縦型炉に設ける磁気的揺れ制御機構の概念的構成図である。
【図13】従来の縦型炉の概念的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態の耐震対応縦型炉を説明する。耐震対応縦型炉は、ヒーターユニット11を有する炉芯部10と、ウェーハ収容管13内に挿入されるウェーハを格納するボート22を備えたボートユニット21を有するボート部20と、ボート部20を上下動させるエレベーター部30を備えている。エレベーター部30は、ロード時及びアンロード時のみにボート部20に連結される。また、装置全体を収容する筐体(図示は省略)には揺れ検出機構32を設けており、通常は揺れを大きく検出できる筐体の天井部に配置する。
【0021】
炉芯部10は、ヒーター12及びウェーハ収容管13を備えたヒーターユニット11を固定するヒーターユニット固定部材14を備えており、ヒーターユニット固定部材14はロック機構16によりヒーターユニット受け15に固定される。また、ヒーターユニット受け15は装置全体を収容する筐体(図示は省略)に接続するヒーターベース31に支持・固定されている。
【0022】
ヒーターユニット11の上部にはヒーターユニット11の横方向の揺れを制御する磁気的揺れ制御機構17を備えている。磁気的揺れ制御機構17は、ヒーターユニット11の外周に固定された第1制御部材18と筐体に固定された第2制御部材19からなり、その一方が磁場発生部材からなり、他方が磁性体からなる。磁場発生部材は少なくとも4個の磁場発生ユニットを備えており、円周上に等間隔で配置される。なお、ウェーハ収容管13はアウター管と、アウター管内に収容されるインナー管からなり、アウター管の外側には均熱管が配置される。
【0023】
また、ヒーターユニット受け15は、ガスの導入によりヒーターユニット11を浮上させるガス浮上機構を備えており、外部から大きな振動を受けた場合には、ロック機構16を退避させるとともに、ガス浮上機構によりヒーターユニット11を浮上させる。この時、磁気的揺れ制御機構17も同時に作動して、磁気浮上と同じ原理によりヒーターユニット11を静止させるよう各磁場発生ユニットによる磁場を制御する。なお、導入するガスは典型的には空気である。
【0024】
ボート部20は、ボートユニット21を固定するボートユニット固定部材24を備えており、ボートユニット固定部材24はロック機構26によってボートユニット受け25に固定される。なお、ボートユニット21は、ボート22の下部に通常は保温筒23を備えている。
【0025】
また、ボートユニット受け25は、ガスの導入によりボートユニット21を浮上させるガス浮上機構を備えており、外部から大きな振動を受けた場合には、ロック機構26を退避させるとともに、ガス浮上機構によりボートユニット21を浮上させる。なお、導入するガスは典型的には空気である。また、ボートユニット受け25とボートユニット固定部材24とには、磁性体と磁場発生部材からなる磁気的揺れ制御機構を設けても良い。
【0026】
図2(a)に示すように、ボート部20が炉芯部10内に収容された状態で地震などの外部からの揺れを揺れ検出機構32により検出した場合には、ロック機構16を退避させるとともに、ガス浮上機構によりヒーターユニット11を浮上させる。この時、磁気的揺れ制御機構17も同時に作動してヒーターユニット11を静止させるよう各磁場発生ユニットによる磁場を制御する。
【0027】
また、図2(b)に示すように、それと同時に、ロック機構26を退避させるとともに、ガス浮上機構によりボートユニット21を浮上させる。磁気的揺れ制御機構を備えている場合には、磁気的揺れ制御機構を作動させて、ボートユニット21の横方向の揺れを制御する。
【0028】
一般的なヒーターユニット11の重量は200kg〜300kgであり、ボートユニット21の重量は50kg〜100kgであるので、ガス圧力を5kg/cm程度とすることで十分に浮上させることは可能である。
【0029】
磁気的揺れ制御機構を構成する磁性体が磁性を失わないように、炉芯部10の上部及び下部には、水冷等を利用した冷却機構を配置しておき、磁性体の温度がキュリー点を超えないように冷却する。
【0030】
このように、本発明の実施の形態においては、所定値以上の振動を検出した場合に、ウェーハが処理されるヒーターユニット11及びボートユニット21を磁気とガスを利用し分離・浮上させて、外部から受ける振動や揺れの大きさや方向を吸収している。したがって、搬送されたボート22にセットされたウェーハの飛び出しや落下を防止することができる。
【0031】
揺れ検出機構32は、地震や外部の振動を検出するものであり、地震の場合には、P波やS波の大きさにより、ガス浮上機構及び磁気的揺れ制御機構からなる分離・浮上機構を作動させるようにしても良い。なお、現在の縦型炉は、震度3〜4で150GAL程度までは、現状の本体固定やボートの倒れ防止機構で対処できるので、例えば、震度3以上に相当する振動を検出した場合に、分離・浮上機構を作動させるように設定する。
【実施例1】
【0032】
次に、図3乃至図11を参照して、本発明の実施例1の耐震対応縦型炉及びその稼働方法を説明する。図3は、本発明の実施例1の耐震対応縦型炉の炉芯部の概略的構成図であり、図3(a)概略的断面図であり、図3(b)は概略的平面図である。炉芯部40は、ヒーター42、インナー管44及びアウター管45からなるウェーハ収容管43、及び、均熱管46を備えたヒーターユニット41を備えている。ヒーターユニット41はヒーターユニット固定ブロック47に固定され、ロック機構49によりヒーターユニット受け48に固定される。なお、ロック機構49は円周上に等間隔で4個以上配置されていれば良く、ここでは、90°毎に4個配置した。
【0033】
ヒーターユニット受け48は、エアー配管50が設けられており、先端のエアー吹出口51からエアーを噴き出すことにより、ヒーターユニット41をヒーターユニット固定ブロック47とともに浮上させる。なお、エアー浮上に必要なエアー圧力は、ヒーターユニット41の重量が200kg〜300kgであれば、5kg/cmで十分であり、エアー配管50としては、1/4インチ配管或いは3/8インチ配管を用いる。また、ヒーターユニット受け48は、装置全体を収容する筐体(図示は省略)に接続するヒーターベース83に支持・固定されている。
【0034】
ヒーターユニット41の上部には、磁気的揺れ制御機構52を設ける。図4に示すように、この磁気的揺れ制御機構52は、ヒーターユニット41の外周部に巻きつけられた磁性体ベルト53と、その周囲に等間隔で配置された4個の磁場発生器54からなる。磁性体ベルト53は、ここでは、直径70cm、幅100mm、厚さ5mmとし、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、或いは、フェライトからなる。また、磁場発生器54と磁性体ベルト53との間隔は100mmであり、磁場発生器54は筐体に固定される。
【0035】
ヒーターユニット41の上部には、磁性体ベルト53が磁性を失わないように、液冷管(図示は省略)を配管して、磁性体ベルト53の温度が磁性体のキュリー点を超えないように、例えば、100℃以下になるように冷却する。
【0036】
図5は、本発明の実施例1の耐震対応縦型炉のボート部の概略的構成図であり、図5(a)は概略的断面図であり、図5(b)は概略的平面図である。ボート部60は、ウェーハを収容するボート62と保温筒63とからなるボートユニット61を備えている。ボートユニット61はボートユニット固定ブロック64に固定され、ロック機構66によりキャップを兼ねるボートユニット受け65に固定される。なお、ロック機構66は円周上に等間隔で4個以上配置されていれば良く、ここでは、90°毎に4個配置した。
【0037】
また、ボートユニット受け65側にも磁気的揺れ制御機構67を設ける。この磁気的揺れ制御機構67は、ボートユニット受け65の内周面に埋め込まれた磁場発生器68と、ボートユニット固定ブロック64の外周面に巻き付けられた磁性体ベルト69からなる。なお、磁場発生器68は、ここではボートユニット受け65の内周面に等間隔で4個配置した。
【0038】
ヒーターユニット41の下部にも、磁性体ベルト69が磁性を失わないように、液冷管(図示は省略)を配管して、磁性体ベルト69の温度が磁性体のキュリー点を超えないように、例えば、100℃以下になるように冷却する。
【0039】
ボートユニット受け65は、エアー配管70が設けられており、先端のエアー吹出口71からエアーを噴き出すことにより、ボートユニット61をボートユニット固定ブロック64とともに浮上させる。なお、エアー浮上に必要なエアー圧力は、ボートユニット61の重量が50kg〜100kgであれば、5kg/cmで十分であり、エアー配管50としては、1/4インチ配管或いは3/8インチ配管を用いる。
【0040】
図6は、炉芯部とボート部の合体状態の説明図であり、図6(a)が合体前の構成図であり、図6(b)は合体後の構成図であり、図6(c)は合体部の拡大図である。図6(a)に示すように、炉芯部40とボート部60とを熱処理のために合体させる場合には、ボート部60をエレベーター部80に設けたエレベーターベース81上に支持・固定する。
【0041】
図6(b)に示すように、合体時には昇降機構82を動作させてエレベーターベース81を上昇させて、ボートユニット61をウェーハ収容管43の内部に挿入すると共に、ボートユニット受け65をキャップとして炉芯部40を封止する。合体が終了すると、昇降機構82を動作させてエレベーターベース81を下降させて処理を開始する。
【0042】
図6(c)に示すように、ヒーターユニット固定ブロック47の内部に設けられたボートユニットロック機構55の先端部に設けたロック爪56を回転させて、ボートユニット受け65の底部を抱え込む。次いで、ボートユニットロック機構55をモーター或いは自己保持がたエアーシリンダーで上昇させて、ボート部60をヒーターユニット固定ブロック47に密着させる。
【0043】
図7は、浮上状態の説明図である。図7(a)はヒーターユニット41の浮上状態の説明図であり、ここでは、図示を簡単にするために、ヒーター部40のみを示している。設定以上の揺れが発生した場合には、ロック機構49をスライドさせてロック機構49によるロック状態を解除してヒーターユニット固定ブロック47をフリーにする。それと同時に、エアー吹出口51から空気を吹き出してヒーターユニット41をヒーターユニット固定ブロック47とともに浮上させる。実際には、図6(c)に示すように、ヒーターユニット固定ブロック47とボートユニット受け65とは、ボートユニットロック機構55により互いに固定されているので、ヒーターユニット固定ブロック47はボートユニット受け65と一緒に浮上する。
【0044】
図7(b)は、ボートユニット61の浮上状態の説明図であり、設定以上の揺れが発生した場合には、ロック機構66をスライドさせてロック機構66によるロック状態を解除してボートユニット固定ブロック64をフリーにする。それと同時に、エアー吹出口71から空気を吹き出してボートユニット61をボートユニット固定ブロック64とともに浮上させる。
【0045】
この時、磁場発生器68に通電して磁場を発生させて磁性体ベルト69に作用させて、ボートユニット固定ブロック64を押し出す力で均衡を取って揺れを制御するようにしても良い。なお、非結合状態においては、ヒーターユニット41及びボートユニット61の浮上は行われない。
【0046】
図8はヒーターユニット浮上時の磁気的揺れ制御機構の動作の説明図である。振動が発生した場合、筐体に固定された磁場発生器54は筐体と共に揺れるが、各磁場発生器54に発生する磁場の強度を後述する揺れ検出器によって検出した揺れ方向と揺れの大きさを相殺するように制御して、ヒーターユニット41がほぼ静止するように制御する。図8(a)は筐体が図の右側に傾いた状態を示し、図8(b)は筐体が左側に傾いた状態を示している。
【0047】
図9は、揺れ検出器の概念的構成図であり、図9(a)は概念的断面図であり、図9(b)はエアー吹出口の概念的説明図であり、図9(c)はエアー吹出口から吹き出す風量分布図である。図9(a)に示すように、揺れ検出器90は、エアー吹出口92を設けた皿状部材91と、皿状部材91の内部に収容された検出体93と、検出体93の動きを撮像するエリアイメージセンサ94を備えている。この揺れ検出器90は、検出感度を高めるために、筐体の天井部に固定する。検出体93としては、アルミ板等の板状の金属片を用いる。
【0048】
図10は、揺れ検出器の動作の説明図であり、図10(a)に示すように、揺れがない場合には、検出体93は皿状部材91の中心にあり、エリアイメージセンサ94で検出体93の位置を検出する。図10(b)に示すように、揺れが発生して皿状部材91とエリアイメージセンサ94がともに図において右側に移動しても、検出体93は浮上しているので移動しない。したがって、エリアイメージセンサ94からみた場合には、検出体93は左側に移動したように見えるので、中心位置からのズレ量と速度を撮像画像から演算して求める。図10(c)に示すように、揺り戻す方向でも同様に、ズレ量と速度とを計測する。
【0049】
図11は、本発明の実施例1の耐震対応縦型炉の処理シーケンスである。地震情報等の外部信号或いは装置内に置かれた地震計が、予め定めた振幅或いは震度以上であった場合、各部位に揺れ制御信号を送信する。地震情報を利用する場合には、P波を用いても良いし、S波を用いても良い。また、装置内に置かれた地震計としては、揺れ検出器90自体を用いても良い。
【0050】
揺れ検出器90では、検出体93の相対的な移動をエリアイメージセンサ94で検出して、検出体93の移動方向、ズレ量、及び、移動速度を計測する。
炉芯部10の下部では、ロック機構49をスライドさせてロック機構49によるロック状態を解除してヒーターユニット固定ブロック47をフリーにする。それと同時に、エアー吹出口51から空気を吹き出してヒーターユニット41をヒーターユニット固定ブロック47とともに浮上させる。
炉芯部10の上部では、揺れ検出器90の検出出力に応じて磁場発生器54に通電して磁場を発生させて磁気的揺れ制御機構52を作動させて、浮上した状態のヒーターユニット41を静止状態にする。
【0051】
また、ボート部60の下部では、ロック機構66をスライドさせてロック機構66によるロック状態を解除してボートユニット固定ブロック64をフリーにする。それと同時に、エアー吹出口71から空気を吹き出してボートユニット61をボートユニット固定ブロック64とともに浮上させる。
また、磁場発生器68に通電して磁場を発生させて磁性体ベルト69に作用させて、ボートユニット固定ブロック64を押し出す力で均衡を取って揺れを制御する。
【0052】
このような制御を振動が終了するまで継続する。振動が終了した場合は、揺れ検出器90で振動がないことを確認し、エアー吹出口51からの空気の流量を徐徐に低減してヒーターユニット41をヒーターユニット受け48上に下降させる。次いで、ロック機構49を中心方向にスライドさせて、ヒーターユニット固定ブロック47をヒーターユニット受け48に固定する。
【0053】
ボート部60では、揺れ検出器90で振動がないことを確認し、エアー吹出口71からの空気の流量を徐徐に低減してボートユニット61をボートユニット受け65上に下降させる。次いで、ロック機構66を中心方向にスライドさせて、ボートユニット固定ブロック64をボートユニット受け65に固定する。
【0054】
このように、本発明の実施例1においては、予め設定した震度以上の振動を検出した場合に、ヒーターユニット及びボートユニットをエアー浮上させる。また、同時に、磁気的揺れ制御機構を作動させて、ヒーターユニットを水平面内で静止した状態に保持するので、
縦型炉でもっとも破損しやすい石英部品やボートにセットされた製品に伝わる揺れ(振動)を軽減または無くすことができる。それによって、地震などの揺れによる損害を最小限にすることができ装置の早期復旧や製品損害の軽減に期待できる。
【実施例2】
【0055】
次に、図12を参照して、本発明の実施例2の耐震対応縦型炉を説明するが、ヒーターユニットの上部に設ける磁気的揺れ制御機構が異なるだけで、他の構造は上記の実施例1の耐震対応縦型炉と同じであるので、磁気的揺れ制御機構のみを説明する。
【0056】
図12は、本発明の実施例2の耐震対応縦型炉に設ける磁気的揺れ制御機構の概念的構成図であり、図12(a)は概念的側面図であり、図12(b)は概念的平面図である。図12に示すように、磁気的揺れ制御機構57は、ヒーターユニット41の外周部に巻きつけられるように一体化され等間隔で配置された4個の磁場発生器58と、その周囲を囲むように配置された磁性体ベルト59とからなる。磁性体ベルト59と磁場発生器58との間隔は100mmであり、磁性体ベルト59は筐体に固定される。
【0057】
本発明の実施例2においても、ヒーターユニットをエアー浮上させた状態で磁気的揺れ制御機構57を作動させることによって、ヒーターユニットを水平面内で静止した状態に保持することができる。
【0058】
ここで、実施例1及び実施例2を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1)ウェーハ収容管を内部に収容するヒーターユニットを有する炉芯部と、前記ウェーハ収容管内に挿入されるウェーハを格納するボートを備えたボートユニットを有するボート部と、前記ボート部を上下動させるエレベーター部と、揺れ検出機構と、前記炉芯部、前記ボート部、前記エレベーター部及び前記揺れ検出機構を格納する筐体とを備え、前記炉芯部は、前記ヒーターユニットを固定するヒーターユニット固定部材と、前記ヒーターユニット固定部材をロック機構によって固定するヒーターユニット受けを備えるとともに、前記ヒーターユニット受けは、ガスの導入により前記ヒーターユニットを浮上させるガス浮上機構を備え、前記ボート部は、前記ボートユニットを固定するボートユニット固定部材と、前記ボートユニット固定部材をロック機構により固定するボートユニット受けを備えるとともに、前記ボートユニット受けは、ガスの導入により前記ボートユニットを浮上させるガス浮上機構を備え、前記炉芯部は、その上部に前記ヒーターユニットの横方向の揺れを制御する磁気的揺れ制御機構を備えていることを特徴とする耐震対応縦型炉。
(付記2)前記磁気的揺れ制御機構は、前記ヒーターユニットの外周に固定された第1制御部材と、前記筐体に固定された第2制御部材とからなり、前記第1制御部材及び前記第2制御部材の一方が磁場発生部材からなり、前記第1制御部材及び前記第2制御部材の他方が磁性体からなる付記1に記載の耐震対応縦型炉。
(付記3)前記磁場発生部材が少なくとも4個の磁場発生ユニットからなり、前記複数個の磁場発生ユニットが円周上に等間隔で配置されるとともに、前記磁性体が、円環状の磁性体ベルトであることを特徴とする付記1に記載の耐震対応縦型炉。
(付記4)前記ボートユニット固定部材と前記ボートユニット受けの一方に磁場発生部材を設けるとともに、前記ボートユニット固定部材と前記ボートユニット受けの他方に磁性体を設けたことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1に記載の耐震対応縦型炉。
(付記5)前記揺れ検出機構は、ガス浮上機構と、前記ガス浮上機構により浮上する検出体と、前記検出体の揺れを検出する撮像手段とを備えていることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1に記載の耐震対応縦型炉。
(付記6)付記1に記載の耐震対応縦型炉の稼働方法であって、前記耐震対応縦型炉がスタンバイ時或いは処理中に前記揺れ検出機構が、予め設定した揺れ以上の揺れを検出した場合に、前記ロック機構による前記ヒーターユニット固定部材の固定を解除し、前記ヒーターユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ヒーターユニットを浮上させるとともに、前記ロック機構によるボートユニット固定部材の固定を解除し、前記ボートユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ボートユニットを浮上させ、
且つ、前記磁気的揺れ制御機構を作動させることを特徴とする耐震対応縦型炉の稼働方法。
(付記7)付記1に記載の耐震対応縦型炉の稼働方法であって、前記耐震対応縦型炉がスタンバイ時或いは処理中に地震情報或いは地震計によるP波或いはS波の振幅が予め設定した震度以上であることを検出した場合に、前記ロック機構による前記ヒーターユニット固定部材の固定を解除し、前記ヒーターユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ヒーターユニットを浮上させるとともに、前記ロック機構によるボートユニット固定部材の固定を解除し、前記ボートユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ボートユニットを浮上させ、且つ、前記磁気的揺れ制御機構を作動させることを特徴とする耐震対応縦型炉の稼働方法。
(付記8)
前記磁気的揺れ制御機構は、前記ヒーターユニットの外周に固定された第1制御部材と、前記筐体に固定された第2制御部材とからなり、前記第1制御部材及び前記第2制御部材の一方が複数個の磁場発生ユニットを備えた磁場発生部材からなり、前記第1制御部材及び前記第2制御部材の他方が磁性体からなり、前記磁気的揺れ制御機構を作動させる際に、浮上している前記ヒーターユニットが静止するように、前記個々の磁場発生ユニットに流す電流を制御することを特徴とする付記6または付記7に記載の耐震対応縦型炉の稼働方法。
【符号の説明】
【0059】
10,40 炉芯部
11,41 ヒーターユニット
12,42 ヒーター
13,43 ウェーハ収容管
14 ヒーターユニット固定部材
15,48 ヒーターユニット受け
16,49 ロック機構
17,52,57,67 磁気的揺れ制御機構
18 第1制御部材
19 第2制御部材
20,60 ボート部
21,61 ボートユニット
22,62 ボート
23,63 保温筒
24 ボートユニット固定部材
25,65 ボートユニット受け
26,66 ロック機構
30,80 エレベーター部
31,83 ヒーターベース
32 揺れ検出機構
44 インナー管
45 アウター管
46 均熱管
47 ヒーターユニット固定ブロック
50,70 エアー配管
51,71 エアー吹出口
53,59,69 磁性体ベルト
54,58,68 磁場発生器
55 ボートユニットロック機構
56 ロック爪
64 ボートユニット固定ブロック
81 エレベーターベース
82 昇降機構
90 揺れ検出器
91 皿状部材
92 エアー吹出口
93 検出体
94 エリアイメージセンサ
100 ボート部
101 ボート
102 保温筒
103 キャップ
110 エレベーター部
111 昇降機構
112 エレベーターベース
120 炉芯部
121 ヒーター
122 均熱管
123 アウター管
124 インナー管
125 ヒーターユニットベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ収容管を内部に収容するヒーターユニットを有する炉芯部と、
前記ウェーハ収容管内に挿入されるウェーハを格納するボートを備えたボートユニットを有するボート部と、
前記ボート部を上下動させるエレベーター部と、
揺れ検出機構と、
前記炉芯部、前記ボート部、前記エレベーター部及び前記揺れ検出機構を格納する筐体と
を備え、
前記炉芯部は、前記ヒーターユニットを固定するヒーターユニット固定部材と、前記ヒーターユニット固定部材をロック機構によって固定するヒーターユニット受けを備えるとともに、
前記ヒーターユニット受けは、ガスの導入により前記ヒーターユニットを浮上させるガス浮上機構を備え、
前記ボート部は、前記ボートユニットを固定するボートユニット固定部材と、前記ボートユニット固定部材をロック機構により固定するボートユニット受けを備えるとともに、
前記ボートユニット受けは、ガスの導入により前記ボートユニットを浮上させるガス浮上機構を備え、
前記炉芯部は、その上部に前記ヒーターユニットの横方向の揺れを制御する磁気的揺れ制御機構を備えていることを特徴とする耐震対応縦型炉。
【請求項2】
前記磁気的揺れ制御機構は、前記ヒーターユニットの外周に固定された第1制御部材と、前記筐体に固定された第2制御部材とからなり、前記第1制御部材及び前記第2制御部材の一方が複数個の磁場発生部材からなり、前記第1制御部材及び前記第2制御部材の他方が磁性体からなる請求項1に記載の耐震対応縦型炉。
【請求項3】
前記ボートユニット固定部材と前記ボートユニット受けの一方に磁場発生部材を設けるとともに、前記ボートユニット固定部材と前記ボートユニット受けの他方に磁性体を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐震対応縦型炉。
【請求項4】
請求項1に記載の耐震対応縦型炉の稼働方法であって、
前記耐震対応縦型炉がスタンバイ時或いは処理中に前記揺れ検出機構が、予め設定した揺れ以上の揺れを検出した場合に、
前記ロック機構による前記ヒーターユニット固定部材の固定を解除し、前記ヒーターユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ヒーターユニットを浮上させるとともに、
前記ロック機構によるボートユニット固定部材の固定を解除し、前記ボートユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ボートユニットを浮上させ、
且つ、前記磁気的揺れ制御機構を作動させることを特徴とする耐震対応縦型炉の稼働方法。
【請求項5】
請求項1に記載の耐震対応縦型炉の稼働方法であって、
前記耐震対応縦型炉がスタンバイ時或いは処理中に地震情報或いは地震計によりP波或いはS波の振幅が予め設定した震度以上であることを検出した場合に、
前記ロック機構による前記ヒーターユニット固定部材の固定を解除し、前記ヒーターユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ヒーターユニットを浮上させるとともに、
前記ロック機構によるボートユニット固定部材の固定を解除し、前記ボートユニット受けに設けたガス浮上機構にガスを導入して前記ボートユニットを浮上させ、
且つ、前記磁気的揺れ制御機構を作動させることを特徴とする耐震対応縦型炉の稼働方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−138460(P2012−138460A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289634(P2010−289634)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】