説明

育毛剤

本発明は、クロメン化合物を有効成分として含有する、優れた育毛作用を有する育毛剤を提供する。並びに、本発明は、該育毛剤を含有し、優れた育毛作用を有する育毛用外用剤、育毛用経口剤及び育毛用食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、クロメン化合物を有効成分として含有する育毛剤に関する。また、該育毛剤を含有する育毛用外用剤、育毛用経口剤並びに育毛用食品に関する。
【背景技術】
近年、ストレスの増加や食生活の変化など様々な社会環境の変化によって、薄毛や抜け毛で悩む男女の数は増加しているといわれている。このため、育毛剤への期待や社会的要求が高まってきている。これまでにも、薄毛や抜け毛の原因を取り除くため、あるいは、薄毛や抜け毛の原因の影響を軽減するために、各種薬剤を配合した育毛剤が検討されてきた。例えば、毛根への血流量を改善するためのセンブリエキス又は酢酸トコフェロールや、頭皮代謝改善のためのヒノキチオールなどの薬剤を配合した育毛剤が、脱毛症の予防および治療のために用いられている。しかし、薄毛や抜け毛は、遺伝的素因、ストレス、食生活の変化や老化などの様々な要因が複雑に絡まって生じると考えられている。このため、従来の育毛剤のように、血行促進や頭皮代謝改善のための薬剤を配合するだけでは満足のいく脱毛防止効果や発毛効果は得られない(Fragrance Journal、Vol.21、No.9、pp.37−42、1993参照)。
一方、クロメン化合物は、従来から、抗菌作用や抗高血圧作用を有する化合物として知られている。例えば、特開昭57−28080号公報には、エゾムラサキツツジから単離されたダウリクロメン酸およびその誘導体が、抗菌剤又は平滑筋弛緩剤として有用である旨が開示されている。特開昭58−201776号公報、特開昭59−093076号公報、特開昭59−219277号公報、特開昭59−219278号公報、及び特開昭61−012685号公報には、クロメン化合物が抗高血圧作用を有する旨が開示されている。特開昭63−130590号公報には、クロメン化合物が、過酸化脂質生成阻害作用を有する旨が開示されている。特開平01−199957号公報には、クロメン化合物が創傷治療、抗アレルギー作用を有する旨が開示されている。また、特表平05−506844号公報には、クロメン誘導体が、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症及びこれらに起因する各種疾患の予防治療薬として有用である旨が開示されている。また、クロメン化合物であるmethylripariochromene Aは、急性毒性が試験され、毒性がないことが報告されている(富山県薬事研究所年報、No.1997(25)、pp.23−35、1998参照)。このように、クロメン化合物は、薬剤において利用可能な、安全性の高い物質として検討されている。しかし、クロメン化合物の育毛作用については、これまで何ら明らかにされていない。
【発明の開示】
本発明の主な目的は、脱毛防止、発毛促進等の優れた育毛作用を有する育毛剤を提供すること、並びに該育毛剤の有用な利用形態を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するクロメン化合物が、優れた育毛作用を有することを見出し、これを更に発展させて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、構造式(1)で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分とする育毛剤、並びに該育毛剤を含有してなる外用剤、経口剤及び食品を提供する。
項1.下記構造式(1):

[式中のR、Rは、それぞれ−H、−OH、又は−OR基を表す(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す)。R、Rは、それぞれ−H、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、Rは、それぞれ−H、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Xは、−CH(OH)R、又は−C(=O)Rを表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。]
で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する育毛剤。
項2.構造式(1)で表されるクロメン化合物が、メチルリパリオクロメンA(methylripariochromene A(6−Acetyl−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))、アセトバニロクロメン(acetovanillochromene(6−Acetyl−8−methoxy−2,2−dimethylchromene))、及びオルソクロメンA(orthochromene A(6−(1−Hydroxyethyl)−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))からなる群から選ばれるクロメン化合物である項1に記載の育毛剤。
項3.項1〜2のいずれかに記載の育毛剤を含有する育毛用外用剤。
項4.項1〜2のいずれかに記載の育毛剤を含有する育毛用経口剤。
項5.項1〜2のいずれかに記載の育毛剤を含有する育毛用食品。
項6.以下の工程(i)(ii)を含む、下記構造式(1):

[式中のR、Rは、それぞれ−H、−OH、又は−OR基を表す(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す)。R、Rは、それぞれ−H、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、Rは、それぞれ−H、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Xは、−CH(OH)R、又は−C(=O)Rを表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。]
で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する育毛剤の製造方法:
(i)シソ科オルソシフォン属に属する植物、キク科ユーパトリウム属に属する植物及びキク科ステビア属に属する植物からなる群から選ばれる1以上の植物に溶媒を接触させて、クロメン化合物を含有する抽出物を取得する工程、
(ii)(i)で得られた抽出物から、構造式(1)で表されるクロメン化合物を単離する工程。
項7.構造式(1)で表されるクロメン化合物が、メチルリパリオクロメンA(methylripariochromene A(6−Acetyl−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))、アセトバニロクロメン(acetovanillochromene(6−Acetyl−8−methoxy−2,2−dimethylchromene))、及びオルソクロメンA(orthochromene A(6−(1−Hydroxyethyl)−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))からなる群から選ばれるクロメン化合物である項6に記載の育毛剤の製造方法。
項8.下記構造式(1):

[式中のR、Rは、それぞれ−H、−OH、又は−OR基を表す(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す)。R、Rは、それぞれ−H、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、Rは、それぞれ−H、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Xは、−CH(OH)R、又は−C(=O)Rを表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。]
で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する育毛剤の有効量を毛組織に接触させる工程を有する、育毛方法。
発明の詳細な説明
以下、本発明について更に詳しく説明する。
なお、本明細書においては、特に断らない限り「%」は「重量%」を表すものとする。
クロメン化合物
本発明における育毛剤において、有効成分となる化合物は、下記構造式(1)で表されるクロメン化合物である。
構造式(1):

構造式(1)において、
、Rは、それぞれ−H、−OH、又は−OR基を表す。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。アルキル基には、直鎖状、分岐鎖状のいずれのものも包含される。−ORには、例えば、−OCH、−OCHCH、−OCHCHCH、−OCHCHCHCH等が含まれる。
、Rは、それぞれ−H、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。アルキル基には、直鎖状、分岐鎖状のいずれのものも包含される。炭素数1〜4のアルキル基には、例えば、−CH、−CHCH、−CH(CH等が含まれる。
、Rは、それぞれ−H,炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。アルキル基には、直鎖状、分岐鎖状のいずれのものも包含される。炭素数1〜4のアルキルには、例えば、−CH、−CHCH、−CH(CH等が含まれる。置換基を有してもよいフェニル基には、置換基を有するフェニル基、置換基を有さないフェニル基のいずれも包含される。そして置換基には、例えば、炭素数1〜4のアルキル基等が含まれる。具体的に、置換基を有してもよいフェニル基には、例えば、−C、−CCHなどが含まれる。
Xは、−CH(OH)R、又は−C(=O)Rを表す。
は、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。アルキル基には、直鎖状、分岐鎖状のいずれのものも包含される。炭素数1〜4のアルキル基には、例えば、−CH、−CHCH、−CH(CH等が含まれる。置換基を有してもよいフェニル基には、置換基を有するフェニル基、置換基を有さないフェニル基のいずれも包含される。そして置換基には、例えば、炭素数1〜4のアルキル基等が含まれる。具体的に、置換基を有してもよいフェニル基には、例えば、−C、−CCHなどが含まれる。
Xが−C(=O)Rである化合物には、例えば、R=−OCH、R=−OCH、R=−CH、R=−CH、R=−H、R=−H、R=−CHであるmethylripariochromene A(メチルリパリオクロメンA)(6−Acetyl−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene)(6−アセチル−7,8−ジメトキシ−2,2−ジメチルクロメン)、又はR=−H、R=−OCH、R=−CH、R=−CH、R=−H、R=−H,R=−CHであるacetovanillochromene(アセトバニロクロメン)(6−Acetyl−8−methoxy−2,2−dimethylchromene)(6−アセチル−8−メトキシ−2,2−ジメチルクロメン)などが含まれる。
また、Xが−CH(OH)Rである化合物には、例えば、R=−OCH、R=−OCH、R=−CH、R=−CH、R=−H、R=−H、R=−CHであるorthochromene A(オルソクロメンA)(6−(1−Hydroxyethyl)−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene)(6−(1−ヒドロキシエチル)−7,8−ジメトキシ−2,2−ジメチルクロメン)などが含まれる。
このうち、メチルリパリオクロメンAが特に好ましい。
クロメン化合物の製法
本発明に用いられるクロメン化合物は、公知の方法に従って合成して得ることができる。また、クロメン化合物を含む植物から、例えば抽出などの操作を用いて単離して得ることもできる。
合成方法
本発明のクロメン化合物は、公知の方法に従って適宜合成して得ることができる。例えば、メチルリパリオクロメンAは、以下のような合成経路により得ることができる。

上記と同様の合成方法において、所望の置換基を有する中間物を用い、又は適当な官能基を適宜導入することによって、構造式(1)で表される各種置換基を有するクロメン化合物を得ることができる。
斯くして得られる化合物は、例えば、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの器具を用いて、溶解、抽出、分液、傾斜、濾過、濃縮、蒸留、昇華、又は結晶化などの方法を単独で又は組み合わせて、適宜精製することができる。
植物からの単離方法
本発明のクロメン化合物は、クロメン化合物を含有する植物から、抽出などの操作を用いて単離することにより得ることもできる。
クロメン化合物を含有する植物には、例えば、シソ科オルソシフォン属、キク科ユーパトリウム属又はキク科ステビア属に属する植物などが含まれる。
シソ科オルソシフォン属に属する植物には、例えば、ネコノヒゲ(オルソシフォン アリスタツス(ブルメ)ミク(Orthosiphon aristatus(Blume)Miq.))、オルソシフォン グランディフルロス ボルド(Orthosiphon grandiflorus Bold.)、オルソシフォン ルビクンデュス ベント(Orthosiphon rubicundus Benth.)、オルソシフォン スピカツス ベント(Orthosiphon spicatus Benth.)及びオルソシフォン スタミネウス ベント(Orthosiphon stamineus Benth.)などが含まれる。
また、キク科ユーパトリウム属に属する植物には、例えば、ユーパトリウム リパリウム リゲル(Eupatorium riparium Regel)などが含まれる。
また、キク科ステビア属に属する植物には、例えば、ステビア セラタ カブ(Stevia serrata Cav)などが含まれる。
抽出に使用する植物の部位は特に限定されない。例えば、茎、葉、花などの地上部、根などの地下部、又は全草などを使用することが出来る。このうち、特に地上部を使用することが好ましい。
抽出する材料は、上記植物の原料植物の生をそのまま或いは乾燥品として用いることができる。またこれらを粉砕して使用してもよい。
上記抽出材料の生又は乾燥品を、必要に応じて細切した後、適当な溶媒を用いて抽出操作を行った後、適宜分離精製を行って、本発明のクロメン化合物を単離することができる。
抽出方法は特に限定されない。例えば、バッチ法、パーコレーション法、還流法などの公知の方法を用いることができる。
抽出溶媒も適宜設定することができる。例えば、水、各種有機溶媒、あるいはそれらの混合溶媒などを用いることができる。各種有機溶媒には、例えば、メタノールやエタノール等の低級アルコール、クロロホルム、酢酸エチル、及び/又はn−ヘキサンなどが含まれる。
抽出溶媒の比率は特に限定されないが、植物の生または乾燥物(必要に応じて細切したもの)1重量部に対して抽出溶媒2〜1000重量部程度が適当である。
抽出温度は、室温、加温下のいずれでもよく、例えば、室温〜80℃程度の温度範囲とすることができる。
抽出操作も適宜設定することができる。例えば、室温〜80℃程度の温度範囲で約1〜10時間、穏やかな条件で撹拌しながら行ってもよい。また、抽出材料を円筒に詰め、溶媒を上から滴加して行ってもよい。
育毛剤
本発明の育毛剤は、上記構造式(1)で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する。本発明の育毛剤に含有されるクロメン化合物は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
本発明の育毛剤は、上記のように合成して又は植物から単離して得たクロメン化合物を、そのまま利用するか、或いは、担体として使用することのできる素材と混合し、次いで、粉末状、塊状、液状等の各種形態に加工するなどの調製を適宜行なうことによって、製造される。
より詳細に、本発明の育毛剤は、植物から単離して得たクロメン化合物を用いる場合、次の工程(i)(ii)を含む方法により、製造できる。
工程(i):シソ科オルソシフォン属に属する植物、キク科ユーパトリウム属に属する植物及びキク科ステビア属に属する植物からなる群から選ばれる1以上の植物に溶媒を接触させて、クロメン化合物を含有する抽出物を取得する工程。
工程(ii):工程(i)で得られた抽出物から、構造式(1)で表されるクロメン化合物を単離する工程。
製剤化する場合には、工程(i)(ii)の後に、更に、
工程(iii):工程(ii)で単離したクロメン化合物をそのまま利用するか、或いは、担体として使用することのできる素材と混合して、製剤化する工程を、適宜加えてもよい。
上記育毛剤の製造方法において、構造式(1)で表されるクロメン化合物には、例えば、メチルリパリオクロメンA(methylripariochromene A(6−Acetyl−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))、アセトバニロクロメン(acetovanillochromene(6−Acetyl−8−methoxy−2,2−dimethylchromene))、及びオルソクロメンA(orthochromene A(6−(1−Hydroxyethyl)−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))などが含まれる。
本発明の育毛剤には、必要に応じて、所望の添加剤を適宜配合することができる。
また、本発明の育毛剤は、例えば、錠剤、散剤又はカプセル剤などの剤型に適宜調製できる。
本発明の育毛剤の有効量を毛組織に接触させることにより、育毛を行なうことができる。別言すると、本発明の育毛方法は、本発明の育毛剤の有効量を毛組織に接触させる工程を有する方法である。
本発明の育毛剤を毛組織に接触させる方法は、特に限定されず、例えば、本発明の育毛剤を含有する外用剤として、該外用剤を毛組織に塗布するなどの方法で行なってもよい。
有効量は、接触方法や、適用対象の年齢や性別などの条件に応じて、適宜設定し得る。
毛組織の種類も特に限定されず、例えば、頭皮や皮膚などの生体組織や、毛母細胞などの生体細胞が含まれる。
本発明の育毛方法を行なうことにより、脱毛防止作用、発毛及び/又は養毛促進作用等の育毛効果が奏される。
育毛用外用剤
本発明の育毛用外用剤は、本発明の育毛剤を含有する外用剤である。本発明の育毛用外用剤は、本発明の育毛剤をそのまま、又は外用剤に用いられる公知の成分と適宜混合して、製剤化することにより得ることができる。
本発明の育毛用外用剤の剤型は特に限定されない。例えば、液状、乳状、クリーム状など、頭皮又は皮膚に適用しうるいずれの剤型にも調製することができる。また、本発明の育毛用外用剤は、トニック、ローション、軟膏などの剤型として適宜調製できる。
本発明の育毛用外用剤には、本発明の育毛剤のほか、発毛又は養毛促進効果を高めるための他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、ミノキシジル、ジアゾキシド、各種抗男性ホルモン剤(例えば、オキセンドロン、4−アンドロステン−3,17−ジオン−17−サイクリックエチレンケタール誘導体など)、ニコチン酸及びその誘導体、塩化カルブロニウム、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、冬虫夏草エキス、朝鮮ニンジンエキス、センブリエキス、トウガラシエキス、セファランチン、プラセンタエキス、エチニルエストラジオール、塩化カルプロニウム、感光素、またはその他ビタミン類及びアミノ酸などから選ばれる1種又は2種以上を配合することができる。
更に、通常の育毛用外用剤に用いられる添加剤、例えば、ヒノキチオール、ヘキサクロロフェン、フェノール、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ウンデシレン酸、トリクロロカルバニリド及びビチオノールなどの抗菌剤、メントールなどの清涼剤、サリチル酸、亜鉛及びその誘導体、乳酸及びそのアルキルエステルなどの薬剤、オリーブ油、スクワラン、流動パラフィン、イソプロピルミリステート、高級脂肪酸、高級アルコールなどの油分、その他界面活性剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、エタノール、水、保湿剤、増粘剤及び可溶化剤などから選ばれる1種又は2種以上を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
本発明の育毛用外用剤におけるクロメン化合物の配合量は、育毛用外用剤全体に対し、0.0001〜10重量%程度、好ましくは0.001〜5重量%程度である。
育毛用経口剤
本発明の育毛用経口剤は、本発明の育毛剤を含有する経口剤である。本発明の育毛用経口剤は、本発明の育毛剤をそのまま、又は経口剤に用いられる公知の成分と適宜混合して、製剤化することにより得ることができる。
本発明の育毛用経口剤の剤型は特に限定されず、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、溶剤などの剤型として利用することができる。
本発明の育毛用経口剤には、本発明の育毛剤のほか、発毛及び/又は養毛促進効果を高めるための成分を更に配合することができる。発毛及び/又は養毛促進効果を高めるための成分には、例えば、フィナステリド、セファランチンなどが含まれる。
更に、本発明の育毛用経口剤には、通常経口剤に用いられる成分、例えば、栄養素、賦形剤、防腐剤、乳化剤及び可溶化剤などから選ばれる1種又は2種以上を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
本発明の育毛用経口剤におけるクロメン化合物の配合量は、育毛用経口剤全体に対し、0.001〜50重量%程度、好ましくは0.005〜20重量%程度である。
また、本発明の育毛用経口剤の摂取量は、成人一人当たりの一日の摂取量として、通常、クロメン化合物の量で、0.0001〜5g程度、好ましくは0.001〜1g程度である。
育毛用食品
本発明の育毛用食品は、本発明の育毛剤を含有する食品である。本発明の育毛用食品は、本発明の育毛剤をそのまま用いて、又は適宜公知の食材又は食品と混合して、食品に加工することにより得ることができる。
本発明の食品の形態は特に限定されない。また、本発明の食品は、常法に従って適宜調製できる。例えば、本発明の育毛剤を適当な食材又は食品と混合したものを、粉末状、塊状、液状、シロップ状、ゼリー状などの各種形態に加工して調製することができる。また、本発明の育毛剤を、粉末状、塊状、液状、シロップ状、ゼリー状などの各種形態の食材又は食品に、常法に従って配合して、調製することもできる。
本発明の食品の具体例としては、例えば、清涼飲料水、ジュース、茶類などの飲料(ドリンク剤)、粉末ジュース、粉末スープなどの粉末飲料、クッキー、ビスケット、シリアル、チューインガム、キャンディー、グミ、タブレット、ウェハース、せんべいなどの菓子類などが挙げられる。
本発明の食品には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常食品に用いられる他の成分を配合することができる。他の成分には、例えば、各種栄養素、動植物成分、賦形剤、増量剤、甘味料、香味剤、着色剤、防腐剤、乳化剤、可溶化剤、多価アルコールおよびそのエステル誘導体、有機酸および無機酸およびその塩類、水溶性高分子などが含まれる。
本発明の育毛用食品におけるクロメン化合物の配合量は、育毛用食品全体に対し、0.0001〜5重量%程度、好ましくは0.001〜2重量%程度である。
また、本発明の育毛用食品の摂取量は、成人一人当たりの一日の摂取量として、通常、クロメン化合物の量で0.00001〜0.5g程度、好ましくは0.0001〜0.1g程度である。
本発明の育毛剤は、構造式(1)で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する。該クロメン化合物は、脱毛防止作用、発毛促進作用等の優れた育毛作用を奏する。またクロメン化合物は安全性の高い物質でもある。このため、本発明の育毛剤は、安全性が高く、かつ優れた育毛作用を有する育毛剤として好適に利用される。
また、本発明の育毛剤を含有してなる育毛用外用剤、育毛用経口剤及び育毛用食品も、安全性が高く、かつ脱毛防止作用、発毛促進作用等の優れた育毛作用を有する外用剤、経口剤及び食品として、好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実験例1:クロメン化合物の取得
クロメン化合物の取得及び同定は、渋谷らの文献(Chem.Pharm.Bull.,47(5),695−698,1999)に記載の方法に従って行った。具体的には、以下のように行った。
シソ科オルソシフォン属の植物であるクミスクチンの乾燥葉800gを、沸騰水で抽出し、抽出液を取得した。得られた抽出液を、クロロホルム及び水を溶媒として溶媒分画を行って、クロロホルム可溶部及び水可溶部を得た。クロロホルム可溶部及び水可溶部は、クミスクチン乾燥葉に対して、それぞれ2.3%及び25%の割合で得られた。クロロホルム可溶部を、シリカゲルオーブンカラムクロマトグラフィー(カラム(SiO)、溶媒(クロロホルム:メタノール=100:1→メタノール))、次いでHPLC(カラム(YMC−Pack SIL、(YMC社)、溶媒(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1)を用いて分離精製し、メチルリパリオクロメンA(methylripariochromene A)、オルソクロメンA(orthochromene A)、アセトバニロクロメン(acetovanillochromene)の3種のクロメン化合物を単離した。
各化合物の同定は、H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、IR及びUVスペクトル、比旋光度を調べることにより、行った。
各化合物の単離量は、クミスクチン乾燥葉に対して、メチルリパリオクロメンA(methylripariochromene A)が0.63%、オルソクロメンA(orthochromene A)が0.02%、アセトバニロクロメン(acetovanillochromene)が0.03%となった。
試験例1:培養毛母細胞の増殖に対する作用試験
マウスの毛組織を採取し、谷垣らの方法で、無血清培地で毛母細胞を培養した(谷垣ら(1990)、Arch.Dermatol.Res.282:402−407)。実験例1で取得した各クロメン化合物を、培地(ケラチノサイトSFM(ギブコ社製))に溶解して1又は10μg/mlの濃度になるように調製した。
毛母細胞の培養開始後1日目に、前記クロメン化合物を含む培地に交換した。
6日間培養した後、毛母細胞をシャーレより剥離し、細胞数を求めた。各クロメン化合物の効果は、対照群(無血清培地のみで培養した群)の細胞数を100%とした場合の相対的割合で表した。結果を表1に示す。

表1の結果に示されるように、クロメン化合物は、毛母細胞の優れた増殖促進効果を有することが確認された。
実施例1:外用剤の調製
以下の配合割合に従い、常法によりヘアトニックを製造した。

実施例2:外用剤の調製
以下の配合割合に従い、常法によりヘアローションを製造した。

実施例3:外用剤の調製
以下の配合割合に従い、常法によりヘアクリームを製造した。

実施例4:経口剤の調製
以下の配合割合に従い各成分を混合して、常法に従って糖衣錠を調製した。

実施例5:食品の調製
以下の配合割合に従い各成分を混合して、常法に従ってタブレットを調製した。

実施例6:食品の調製
以下の配合割合に従い各成分を混合して、常法に従って飲料を調製した。

【産業上の利用可能性】
本発明の育毛剤は、脱毛防止用、発毛及び/又は養毛促進用等の用途に好適に利用することができる。
また、本発明の育毛剤を含有してなる育毛用外用剤、育毛用経口剤及び育毛用食品も、脱毛防止用、発毛及び/又は養毛促進用等の用途に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1):

[式中のR、Rは、それぞれ−H、−OH、又は−OR基を表す(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す)。R、Rは、それぞれ−H、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、Rは、それぞれ−H、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Xは、−CH(OH)R、又は−C(=O)Rを表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。]
で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する育毛剤。
【請求項2】
構造式(1)で表されるクロメン化合物が、メチルリパリオクロメンA(methylripariochromene A(6−Acetyl−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))、
アセトバニロクロメン(acetovanillochromene(6−Acetyl−8−methoxy−2,2−dimethylchromene))、及びオルソクロメンA(orthochromene A(6−(1−Hydroxyethyl)−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))からなる群から選ばれるクロメン化合物である請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の育毛剤を含有する育毛用外用剤。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれかに記載の育毛剤を含有する育毛用経口剤。
【請求項5】
請求項1〜2のいずれかに記載の育毛剤を含有する育毛用食品。
【請求項6】
以下の工程(i)(ii)を含む、下記構造式(1):

[式中のR、Rは、それぞれ−H、−OH、又は−OR基を表す(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す)。R、Rは、それぞれ−H、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、Rは、それぞれ−H、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Xは、−CH(OH)R、又は−C(=O)Rを表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。]
で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する育毛剤の製造方法:
(i)シソ科オルソシフォン属に属する植物、キク科ユーパトリウム属に属する植物及びキク科ステビア属に属する植物からなる群から選ばれる1以上の植物に溶媒を接触させて、クロメン化合物を含有する抽出物を取得する工程、
(ii)(i)で得られた抽出物から、構造式(1)で表されるクロメン化合物を単離する工程。
【請求項7】
構造式(1)で表されるクロメン化合物が、メチルリパリオクロメンA(methylripariochromene A(6−Acetyl−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))、
アセトバニロクロメン(acetovanillochromene(6−Acetyl−8−methoxy−2,2−dimethylchromene))、及びオルソクロメンA(orthochromene A(6−(1−Hydroxyethyl)−7,8−dimethoxy−2,2−dimethylchromene))からなる群から選ばれるクロメン化合物である請求項6に記載の育毛剤の製造方法。
【請求項8】
下記構造式(1):

[式中のR、Rは、それぞれ−H、−OH、又は−OR基を表す(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す)。R、Rは、それぞれ−H、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、Rは、それぞれ−H、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Xは、−CH(OH)R、又は−C(=O)Rを表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。]
で表されるクロメン化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する育毛剤の有効量を毛組織に接触させる工程を有する、育毛方法。

【国際公開番号】WO2005/027904
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514146(P2005−514146)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014311
【国際出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】