説明

脚式移動ロボット

【課題】 足部に設けられる床反力検出器の小型化・軽量化が可能な脚式移動ロボットを提供する。
【解決手段】 6軸力センサの中心Pbは、ロボットの起立静止状態において平面視で板バネ部S1〜S4の底面側に設けられた接地領域のうちの最遠点までの距離が最小となる位置Pa上に設けられており、平面視で6軸力センサの中心Pbから各板バネ部S1,S2,S3,S4の底面の接地領域それぞれの最遠点までの距離L1,L2,L3,L4が等しくなっている。そして足首関節の中心Pcは、平面視で位置Paに対して後方にオフセットしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚式移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
脚式移動ロボット、特に脚式移動ロボットの足部構造に関する技術として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の脚式歩行ロボットの足部は、脚部の端部に足首関節を介して連結されており、上から順に、床反力を検出する6軸力センサ(床反力検出器)と、衝撃吸収機能を有するゴムブッシュを備えたバネ機構体と、足底フレームと、足底プレートと、ソールと、から構成される。
足首関節の中心は、床面に接地する足部の底面、すなわち接地領域に対して後方かつ内側にオフセット(偏倚)している。そして、床反力検出器は、その中心(ここでは、Z軸感度中心線と一致する。)が平面視で足首関節の中心と同位置となるように設けられ、接地領域から入力される床反力を、バネ機構体を介して検出する。このように、床反力検出器を接地領域に近い足部に設けることによって床反力の検出精度を高めつつ、バネ機構体によって着地時の衝撃の影響を低減可能な構成となっている。
【特許文献1】特開2003−71776号公報(段落0047、0053〜0055、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、脚式歩行ロボットにおいては、移動のスピード(歩行、走行)を高めることが望まれている。脚式歩行ロボットが高速で移動する場合に、脚部に大きな慣性力が生じる。かかる慣性力を小さくするために、脚部の末端側、すなわち足部の軽量化が望まれている。特に、足部に設けられる床反力検出器の小型化・軽量化が望まれている。
【0004】
本発明は、前記した背景に鑑み創案されたものであり、足部に設けられる床反力検出器の小型化・軽量化が可能な脚式移動ロボットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の脚式移動ロボットは、上体と、前記上体に第一の関節を介して連結された脚部と、前記脚部の端部に第二の関節を介して連結された足部と、を備えた脚式移動ロボットであって、前記足部は、床面に接地する接地領域を下端部に有する足平部と、前記足平部を介して前記床面から作用する床反力を検出する床反力検出器と、を備え、前記第二の関節の中心Pcは、平面視で前記一または複数の接地領域のうちの最遠点までの距離が最小となる位置Paに対してオフセットしており、前記床反力検出器の中心Pbは、前記第二の関節の中心Pcよりも平面視で前記位置Paに近くなるように設けられていることを特徴とする。
【0006】
この位置Paは、一または複数の接地領域の最小外接円の中心と言い換えることもできる。このようにすることで、床反力検出器の中心Pbを平面視で第二の関節の中心Pcと同じ位置に設けた場合よりも、床反力検出器に入力される床反力の大きさを抑えることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、足部に設けられた床反力検出器の小型化・軽量化が可能となり、高速移動に適した脚式移動ロボットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、本発明の脚式移動ロボットの構成を自律移動可能な2足移動ロボットに適用した場合を例にとり、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお、位置、方向等に関する表現は、2足移動ロボットの前後方向にX軸、左右方向にY軸、上下方向にZ軸をとり、2足移動ロボットが起立姿勢をとった状態を基準として説明する。
【0009】
<2足移動ロボットR>
まず、本発明の2足移動ロボットについて図1を参照して説明する。図1は、本発明に係る2足移動ロボットを示す側面図である。
図1に示すように、2足移動ロボット(以下、単に「ロボット」ともいう)Rは、人間と同じように2本の脚部R1(1本のみ図示)により起立、移動(歩行、走行等)し、上体R2、2本の腕部R3(1本のみ図示)および頭部R4を有し、自律して移動するロボットである。そして、ロボットRは、これら脚部R1、上体R2、腕部R3および頭部R4の動作を制御する制御装置搭載部R5を背負う形で背中(上体R2の後方)に備えている。
【0010】
<脚部R1の関節構造>
続いて、ロボットRの脚部R1の関節構造について図2を参照して説明する。図2は、図1の脚部の関節構造を示す模式図である。
図2に示すように、ロボットRは、左右それぞれの脚部R1に6個の関節11R(L)〜16R(L)を備えている。左右12個の関節は、股部に設けられた脚回旋用(Z軸まわり)の股関節11R,11L(右側をR、左側をLとする。以下同じ。)、股部のロール軸(X軸)まわりの股関節12R,12L、股部のピッチ軸(Y軸)まわりの股関節13R,13L、膝部のピッチ軸(Y軸)まわりの膝関節14R,14L、足首のピッチ軸(Y軸)まわりの足首関節15R,15L、および、足首のロール軸(X軸)まわりの足首関節16R,16Lから構成されている。そして、脚部R1の下には足部17R,17Lが取り付けられている。
【0011】
すなわち、脚部R1は、股関節11R(L),12R(L),13R(L)、膝関節14R(L)および足首関節15R(L),16R(L)を備えている。股関節11R(L)〜13R(L)と膝関節14R(L)とは大腿リンク21R,21Lで、膝関節14R(L)と足首関節15R(L),16R(L)とは下腿リンク22R,22Lで連結されている。
なお、股関節11R(L)〜13R(L)が特許請求の範囲における「第一の関節」の一例であり、足首関節15R(L),16R(L)が特許請求の範囲における「第二の関節」の一例である。
【0012】
脚部R1は、股関節11R(L)〜13R(L)を介して上体R2に連結されている。図2では、脚部R1と上体R2との連結部を上体リンク23として簡略化して示す。また上体R2には、傾斜センサ24が設置されており、上体R2のZ軸(鉛直軸)方向に対する傾きおよび角速度を検出する。また、各関節を駆動する電動モータには、その回転量を検出するロータリエンコーダ(図示せず)が設けられる。
【0013】
このような構成により、脚部R1は左右の足について合計12の自由度を与えられ、歩行中にこれらの6*2=12個の関節を適宜な角度で駆動することで、足(脚部R1および足部17)全体に所望の動きを与えることができ、任意に3次元空間を歩行させることができる(この明細書で「*」は乗算を示す)。
【0014】
なお、図2に示すように、足首関節15R(L),16R(L)の下方には公知の6軸力センサ52が設けられ、ロボットRに作用する外力のうち、床面からロボットRに作用する床反力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzとを検出する。これら6軸力センサ52、傾斜センサ24等が検出した床反力、モーメント、傾き、角速度等に関する信号が制御装置搭載部R5内に設けられた制御ユニット25に伝えられ、ロボットRの姿勢、動作等の制御に利用される。制御ユニット25は、メモリ(図示せず)に格納されたデータおよび入力された検出信号に基づいて関節駆動制御値を算出し、前記した関節を駆動する。
【0015】
<ロボットRの足部17>
ロボットRの足部17R(L)は、足首関節15R(L),16R(L)を介して脚部R1の端部(床面側)に取り付けられており、6軸力センサ52および足平部材61を備えている。左足(左の脚部R1および足部17L)と右足(右の脚部R1および足部17R)とは左右対称であるため、以下、必要のない場合にはR,Lを外して説明する。
【0016】
<実施形態>
まず、本発明の実施形態に係るロボットRの足部17について図3ないし図5を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態に係る2足移動ロボットの足部を示す正面図である。図4は、本発明の実施形態に係る2足移動ロボットの足部を示す側面図である。図5は、本発明の実施形態に係る2足移動ロボットの足部を示す底面図である。図3ないし図5の脚部R1および足部17は、図1に示すロボットRの外装部分を適宜取り除いた状態として示されている。なお、図3ないし図5には、ロボットRの左足(左の脚部R1および足部17L)が示されている。
【0017】
≪ロボットRの足首関節≫
ここで、図3および図4を参照し、ロボットRの足首関節15,16について簡単に説明する。ロボットRの足首関節15,16は、十字軸41を下腿リンク22および足部17の第一台座部51に連結することによって構成されている。
十字軸41は、Y軸を回動軸線とする軸41aと、X軸を回動軸線とする軸41bとを十字状に組み合わせた部材である。軸41aの両端部は、下腿リンク22によって回動可能に支持されている。また、軸41bの両端部は、第一台座部51によって回動可能に支持されている。すなわち、軸41aが足首関節15に相当し、軸41bが足首関節16に相当する。
【0018】
また、下腿リンク22の斜め後ろには、第一ロッド31および第二ロッド32が設けられている。第一ロッド31は、下腿リンク22の右斜め後方に設けられており、十字軸36を介して第一台座部51と連結されている。第二ロッド32は、下腿リンク22の左斜め後方に設けられており、十字軸37を介して第一台座部51と連結されている。これら第一ロッド31および第二ロッド32は、その上方(例えば、下腿リンク22、大腿リンク21等)に設けられた電動モータの回転によって生じた駆動力が減速機を介して伝えられることによって上下方向に進退し、足首関節15,16を動かし、また所定角度に維持する構成となっている。
【0019】
例えば、足部17の爪先部分を浮かせたい場合には、第一ロッド31および第二ロッド32を下に進出させ、足部17の踵部分を浮かせたい場合には、第一ロッド31および第二ロッド32を上に退行させる。また、足部17の左右のいずれかを浮かせたい場合には、浮かせたい側のロッドを上に退行させ、他方のロッドを下に進出させる。かかる第一ロッド31および第二ロッド32の動作は、前記した制御ユニット25によって制御される。
【0020】
≪ロボットRの足部17≫
図3ないし図5に示すように、ロボットRの足部17は、上(足首関節側)から順に、第一台座部51と、6軸力センサ52と、第二台座部53と、足平部材61と、を備えている。
【0021】
第一台座部51は、足部17の上部に設けられた部材であり、足首関節15,16と連結される部材である。
【0022】
6軸力センサ52は、前記したように3方向の床反力並進力および3方向の床反力のモーメントを検出する装置であり、各部品が筐体内に収められている(ユニット化)。本実施形態において、第一台座部51と6軸力センサ52とは複数のボルト(図示せず)により固定されている。この6軸力センサ52の出力は、ハーネスを介して前記制御ユニット25に入力される。
この6軸力センサ52が、特許請求の範囲における「床反力検出器」の一例である。
【0023】
第二台座部53は、6軸力センサ52の下方、すなわち6軸力センサ52と足平部材61との間に設けられた部材であり、6軸力センサ52と足平部材61とを互いに固定するための部材である。本実施形態において、6軸力センサ52と第二台座部53とは複数のボルト(図示せず)により固定され、第二台座部53と足平部材61とは複数のボルト(図示せず)により固定されている。このように、6軸力センサ52と足平部材61とを第二台座部53を介して固定する構成としたので、足部17の構造の簡略化、軽量化が達成される。なお、足部17の各部材の組付構造は前記したものに限定されない。
【0024】
足平部材61は、第二台座部53の下方に取り付けられた部材であり、床面と接地する足平部の主要部分を構成している。この足平部材61が特許請求の範囲における「足平部」の一例である。
この足平部材61は、板バネ本体62、第一中間部材63、第一足底部材64、第二中間部材65および第二足底部材66を備えている。
板バネ本体62は、撓みつつロボットRの自重を支持する部分であり、主に基部62aと、基部62aからのびるバネ部62bと、から構成される。本実施形態において、板バネ本体62は、バネ部62bの基端部が基部62aに連結された形状に一体成形された部材である。
基部62aは、平板形状を有しており、第二台座部53の底面に沿う形状を有している。後記するバネ部62bの基端部が、この基部62aに連結されており、バネ部62bは、基部62aとの連結部分を基端部とした板バネとして機能する。
バネ部62bは、基部62aの端部から、角度θ(図4参照)で下向きにのびるバネ部分である。本実施形態では、4個のバネ部62b1,62b2,62b3,62b4があり、バネ部62b1,62b2は基部62aから前方(爪先方向)にのびており、バネ部62b3,62b4は基部62aから後方(踵方向)にのびている。これら各バネ部62b1,62b2,62b3,62b4は、同一形状、同一強度、同一性能(弾性率)とすることが望ましい。
角度θは、最大床反力Fzが作用した際に基部62aが床面に接地しない最小の角度に設定されていることが望ましい。ここでいう最大床反力Fzは、例えば、ロボットRが最高速度で走行し片足で接地した際に作用する反力である。かかる設定により、バネ部62b(62b1〜62b4)の弾性力によってロボットRの自重を支持しつつ、基部62aが接地して6軸力センサ52に悪影響を与えることを防ぐことができる。
【0025】
この板バネ本体62は、バネ部62bが板バネとして機能することが可能な素材であればよく、例えば、金属部材(鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金等)から形成されていてもよい。特に、繊維で強化された複合部材(繊維強化プラスチック等)から形成されている場合には、所望の強度や剛性を得つつ板バネ本体62の軽量化を図ることができる。この際、強化用繊維の繊維方向をバネ部62bの基端部から先端部へ向かう方向(長手方向)と一致させることによって、バネ部62bの強度を確保することができる。
また、各バネ部62bの繊維方向を変えることによって異方性を持たせ、各バネ部62bのバネ特性を変えることもできる。
強化用繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、金属繊維等が好適である。
この板バネ本体62は、一体成形された部材であることが望ましい。1個の基部62aに複数のバネ部62b(本実施形態では4個)が取り付けられた構成を有する板バネ本体62を一体成形することによって、さらなる部品点数の削減、および足部の構造の簡略化が可能となる。
【0026】
第一中間部材63は、バネ部62bの底面の接地領域に対応する部分、すなわち下端部側(本実施形態では先端部側と同一)に取り付けられた減衰部材であり、接地時に生じるバネ部62bの振動を減衰させる機能を有している。この第一中間部材63は減衰機能を備えた素材から形成されたものであればよく、例えば、発泡樹脂等から形成されたものが好適である。また、第一中間部材63の代わりの減衰手段として、液圧を利用したダンパ装置等を設置する構成であってもよい。このダンパ装置は、第一中間部材63と併用可能である。
【0027】
第一足底部材64は、第一中間部材63の底面に取り付けられた部材であり、足平部材61の下端部に位置し、移動時に実際に床面に接地する部材である。この第一足底部材64は、床面との間に発生する摩擦抵抗により滑り止めの機能を発揮する部材である。この第一足底部材64は滑り止め機能を備えた素材から形成されたものであればよく、例えば、ゴムから形成されたものが好適である。この第一足底部材64の底面が、特許請求の範囲における「接地領域」である。
【0028】
第二中間部材65は、バネ部62bの底面の中間部分に取り付けられた減衰部材であり、後記する第二足底部材66が接地した際に生じるバネ部62bの振動を減衰させる機能を有している。この第二中間部材65は第一中間部材63と同様に、減衰機能を備えた素材から形成されたものであればよく、例えば発泡樹脂等から形成されたものが好適である。
【0029】
第二足底部材66は、第二中間部材65の底面に取り付けられた部材であり、前記した第一足底部材64と同様に、床面との間に発生する摩擦抵抗により滑り止めの機能を発揮する部材である。この第二足底部材66は、第一足底部材64よりも上方に位置している。
【0030】
本実施形態において、4個の板バネ部S1,S2,S3,S4は、それぞれバネ部62bから構成されている。さらに詳しくは、板バネ部S1は、バネ部62b1から構成され、板バネ部S2は、バネ部62b2から構成され、板バネ部S3はバネ部62b3から構成され、板バネ部S4はバネ部62b4から構成されている。そして各板バネ部S1,S2,S3,S4の先端に設けられた第一足底部材64が接地した際には、これら各板バネ部S1,S2,S3,S4が弾性変形しつつ、弾性変形した状態の各板バネ部S1,S2,S3,S4によってロボットRの自重、詳しくはロボットRのバネ部62bよりも上部の構造による荷重全体を支持する構成となっている。そのため、簡易な構成でありながらロボットRの自重を支持し、さらに床反力による衝撃を吸収することができる。また、衝撃吸収能を高めることによって、ロボットRの移動(歩行、走行)速度を高めることが可能となる。
【0031】
また、ゴムブッシュ等が不要となり、足部17の軽量化が可能となる。かかる軽量化により、脚部R1にかかる慣性力が小さくなるので、高速移動に適した構造となる。
【0032】
また、各板バネ部S1,S2,S3,S4および基部62aは、平面視略H字状に配置されている。かかる構成により、接地領域が前側および後側に2箇所ずつ配置され、かつそれぞれ前後にのびるように配置された各板バネ部S1,S2,S3,S4のバネ特性が前後方向の荷重制御に適しているので、かかる足平構造は、2足移動の制御や、前後の接地領域によって踏ん張り、ロボットRの荷重中心を前後方向に移動させる制御に適している。また、板バネ部S1,S2および板バネ部S3,S4の各組が先端部に向かってやや開くように設けられているので、ロボットRが左右に傾いて荷重が左右方向へずれた場合であっても踏ん張りが効く。
【0033】
また、床面形状に凹凸がある場合等には、各板バネ部S1〜S4のうちのいずれかが浮いた(接地していない)状態となることが考えられる。このような場合には、板バネ部S1〜S4の曲げバネ特性(ロール剛性、ピッチ剛性)が非線形的に変化してしまう。そのため、制御ユニット25は、6軸力センサ52からの信号等に基づいて、全ての板バネ部S1〜S4が接地して撓むように目標足平位置姿勢を修正し、ロボットRが目標床反力を発生させるような姿勢をとるように制御している。かかる目標足平位置姿勢の修正量は、6軸力センサ52の検出値から推測した板バネ部の浮き具合に応じて非線形演算で算出される。
【0034】
ここで、図5を参照して、接地領域のうちの最遠点までの距離が最小となる位置Paと、6軸力センサの中心Pbと、足首関節の中心Pcとの関係について説明する。
本実施形態において、6軸力センサの中心Pb(ここでは、6軸力センサ52のZ軸方向感度中心と一致する。)は、接地領域(ここでは、複数の接地領域)のうちの最遠点までの距離が最小となる位置Pa、詳しくは、ロボットRの起立静止状態において板バネ部S1〜S4の底面側に設けられた接地領域のうちの、平面視(図5では底面視)での最遠点までの距離が最小となる位置(接地領域の中心ともいう。)Pa(以下、単に「位置Pa」と記載する。)の上方に設けられている。本実施形態では、各板バネ部S1,S2,S3,S4の底面の接地領域それぞれの最遠点までの距離L1,L2,L3,L4が等しくなっている。
かかる構成によると、移動時に6軸力センサ52に作用する荷重の最大値を抑えることができ、6軸力センサ52の小型化が可能である。また、6軸力センサ52を足部17に設け、接地領域に近づけたことにより、床反力およびモーメントのより正確な測定が可能となる。
【0035】
なお、接地領域が正多角形状に配置されている場合には、各接地領域から6軸力センサ52までの距離が等しくなるように6軸力センサ52を配置することになる。また、6軸力センサ52に変えて、少なくとも1軸の床反力またはモーメント(例えば、Z軸方向の床反力の並進力Fz)を検出する床反力検出器を用いる構成であってもよい。
【0036】
また、本実施形態において、足首関節の中心Pcは、平面視で位置Paに対してオフセットしている。ここでは、軸41aおよび軸41b(図3参照)の交点が足首関節の中心Pcに相当する。この足首関節の中心Pcは、位置PaよりもロボットRの後方に設けられている。このように足首関節15,16が足平部材61の接地領域に対して後方にオフセットしている理由については後記する。
なお、足首関節の中心Pcは、さらに足平部材61の接地領域の内側(ロボットRの中心側)にもオフセットしている構成であってもよい。足首関節の中心Pcを内側にオフセットすることにより、隣接する足部17R,17Lの足平部材61同士の干渉を防ぎ、かつ接地面積を確保してロボットRの姿勢の安定性を維持することができる。
【0037】
また、本実施形態において、6軸力センサの中心Pbが位置Pa上に設けられるようにしたが、6軸力センサの中心Pbは、少なくとも平面視で足首関節の中心Pcよりも位置Paに近くなるように設けられていればよい。言い換えると、6軸力センサの中心Pbは、平面視で位置Paを中心とし、位置Paと足首関節の中心Pcとを結ぶ線分r1を半径とする円C1の内部にあればよい。例えば、線分r1上に6軸力センサの中心Pbが位置する構成であってもよい。かかる構成であっても、移動時に6軸力センサ52に作用する荷重の最大値を抑えることができ、6軸力センサ52の小型化が可能である。特に、6軸力センサの中心Pbが位置Pa上にある場合には、6軸力センサ52の小型化という効果を最大に発揮することができる。
【0038】
また、図4に示すように、板バネ部S1〜S4の下端部(先端部)は、足首関節15,16から離れるにつれて上に向かって反る形状を有しており、その底面に設けられた第一足底部材64も同様の形状を有している。これは、かかるロボットRの歩行の制御が、踵部分から接地して爪先部分で蹴り上げるようになっているため、接地時および蹴り上げ時に接地する面積を大きくし、床面との間の摩擦力を確保することを可能とするためである。また、接地領域を面で確保できるので、ロボットRの姿勢の安定化にもつながる。
【0039】
続いて、足首関節15,16が足平部材61の接地領域の後方にオフセットしている理由について、ロボットRが高速移動(走行)する場合を例にとり説明する。図6は、本発明の実施形態に係る2足移動ロボットが高速移動する場合を説明する模式図であり、(a)は足首関節が足平部に対して後方にオフセットしている図、(b)は足首関節が足平部の前後方向中心に位置している図である。なお、図6(b)において、図6(a)と同様の部分には「’」を付加した符号を用いる。
図6(a)に示すように、足首関節15,16は、足平部材61に対して後方にオフセット(偏倚)している。この場合には、足首関節15’,16’から足平部材61の接地部分の前方先端までの距離Laが長くなる(La>La’)。ロボットRが高速移動(走行)する場合には、膝関節14を深く折り曲げ、足平部材61の爪先部分に床反力Fが集中する状態が生じる。このとき、膝関節14に生じるモーメントは、F*Lbとなる。一方、図6(b)に示すように、足首関節15’,16’が、足平部材61’の前後方向中心に位置している場合に膝関節14’に生じるモーメントは、F’*Lb’となる。ここで、Lb<Lb’であるので、F=F’とするとF*Lb<F’*Lb’が成立する。これは、高速移動時に膝関節14を駆動(屈曲)した場合において、足首関節15,16を足平部材61に対して、膝関節14の足平部材61に対する相対移動方向(本実施形態では前方)と反対方向(本実施形態では後方)にオフセットさせた場合に成立する。そして、足首関節15,16の足平部材61に対する後方へのオフセット量を大きくすると、高速移動時における膝関節14にかかる負担をより小さく抑えることができることを意味している。
【0040】
<変形例>
続いて、ロボットRの足平部の接地領域と、足首関節の中心と、6軸力センサの中心との位置関係の変形例について、前記実施形態との相違点を中心に説明する。図7は、本発明の変形例に係る2足移動ロボットの足部および足首関節を示す模式側面図である。図8ないし図11は、本発明の変形例に係る2足移動ロボットの接地領域、足首関節および6軸力センサの位置関係を説明する模式平面図である。
【0041】
図7に示すように、変形例に係る足部117は、足平部材61の代わりに足平部材161を備えている。図7に示すように、足平部材161は、平面状の剛性部材からなる足平本体部162と、足平本体部162の底面に設けられたゴム等からなる足底部材164と、を備えている。その接地領域は、足平本体部162の底面と略同一形状であり、X軸方向を長手方向とする長方形状となっている(図8参照)。すなわち、足平部161は、一の接地領域を有している。6軸力センサ52は、足平部材161の上方に設けられており、足平部材161から入力される床反力を検出する。ここで、特許文献1に記載の脚式歩行ロボットのように、足平部材161と6軸力センサ52との間にバネ機構体(ゴムブッシュ等)を設ける構成であってもよい。足首関節15,16は、6軸力センサ52の上方に設けられている。
【0042】
図8は、足首関節の中心Pcが、接地領域(ここでは、一の接地領域)のうちの最遠点までの距離が最小となる位置Paに対して後方にオフセットしている例を示す。かかる状態において、6軸力センサの中心Pbは、平面視で位置Paと足首関節の中心Pcとを結ぶ線分r2上に位置している。
なお、6軸力センサの中心Pbは、前記した例に限定されず、平面視で位置Paを中心とし、線分r2を半径とする円C2内(円周上を除く)であればよく、円C2のうち、足首関節の中心Pcを円弧の中央とする半円C2a内(直径部分を含み、円弧上を除く)であることがさらに望ましく、この半円C2aのうち、線分r2に近くなることがさらに望ましい。さらに、6軸力センサの中心Pbは、線分r2上(足首関節の中心Pcを除く)であることが望ましく、線分r2上のうち、位置Paに近い方がさらに望ましい。
【0043】
図9ないし図11は、足首関節の中心Pcが、位置Paに対して後方かつ内側にオフセットしている例を示す。
図9に示す変形例は、6軸力センサの中心PbがY軸方向(ロボットRの左右方向)のみ、位置Paに近づく場合である。6軸力センサの中心Pbは、位置Paから後方(X軸マイナス方向)にのびる線分a1に対して足首関節の中心Pcから下ろした垂線a2上(足首関節の中心Pcを除く)に位置している。
図10に示す変形例は、6軸力センサの中心PbがX軸方向(ロボットRの前後方向)のみ、位置Paに近づく場合である。6軸力センサの中心Pbは、位置Paから内側(Y軸マイナス方向)にのびる線分a3に対して足首関節の中心Pcから下ろした垂線a4上(足首関節の中心Pcを除く)に位置している。
図11に示す変形例は、6軸力センサの中心PbがX軸方向、Y軸方向の双方において、共に位置Paに近づく場合である。特に図11においては、6軸力センサの中心Pbが平面視で位置Paと足首関節の中心Pcとを結ぶ線分r3上(足首関節の中心Pcを除く)に位置する場合を示している。
なお、6軸力センサの中心Pbは、前記した例に限定されず、平面視で位置Paを中心とし、線分r3を半径とする円C3内(円周上を除く)であればよく、円C3のうち、足首関節の中心Pcを円弧の中央とする半円C3a内(直径部分を含み、円弧上を除く)であることがさらに望ましく、この半円C3aのうち、線分r3に近くなることがさらに望ましい。さらに、6軸力センサの中心Pbは、線分r3上(足首関節の中心Pcを除く)であることが望ましく、線分r3上のうち、位置Paに近い方がさらに望ましい。
【0044】
前記した変形例において、6軸力センサの中心Pbの位置Paに対するオフセット(偏倚)の方向や距離は、円C2,C3内(円周上を除く)において適宜変更可能であるが、6軸力センサの中心Pbは平面視で足平部材161の接地領域内に設けられることが望ましい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、ロボットRは、図示した2足移動ロボットに限定されず、1本のみの脚部を備えた脚式移動ロボットまたは3本以上の脚部を備えた脚式移動ロボットであってもよい。
また、足平部(足平部材)の素材、形状、機能等も前記したものに限定されず、床反力検出器も前記した6軸力センサ52に限定されない。すなわち、本発明は、接地領域を有する足平部(足平部材)と第二の関節(足首関節)との間に床反力検出器を設けたあらゆる脚式移動ロボットに適用可能である。
また、接地領域の数、形状、配置等についても前記したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る2足移動ロボットを示す側面図である。
【図2】図1の脚部の関節構造を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る2足移動ロボットの足部を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る2足移動ロボットの足部を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る2足移動ロボットの足部を示す底面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る2足移動ロボットが高速移動する場合を説明する模式図である。
【図7】本発明の変形例に係る2足移動ロボットの足部および足首関節を示す模式側面図である。
【図8】本発明の変形例に係る2足移動ロボットの接地領域、足首関節および6軸力センサの位置関係を説明する模式平面図である。
【図9】本発明の変形例に係る2足移動ロボットの接地領域、足首関節および6軸力センサの位置関係を説明する模式平面図である。
【図10】本発明の変形例に係る2足移動ロボットの接地領域、足首関節および6軸力センサの位置関係を説明する模式平面図である。
【図11】本発明の変形例に係る2足移動ロボットの接地領域、足首関節および6軸力センサの位置関係を説明する模式平面図である。
【符号の説明】
【0047】
11R,11L 関節(股関節、第一の関節)
12R,12L 関節(股関節、第一の関節)
13R,13L 関節(股関節、第一の関節)
15R,15L,15 関節(足首関節、第二の関節)
16R,16L,16 関節(足首関節、第二の関節)
17R,17L,17,117 足部
51 第一台座部
52 6軸力センサ(床反力検出器)
53 第二台座部
61,161 足平部材(足平部)
Pa 接地領域のうちの最遠点までの距離が最小となる位置
Pb 6軸力センサの中心(床反力検出器の中心)
Pc 足首関節の中心(第二の関節の中心)
R 2足移動ロボット(脚式移動ロボット)
R1 脚部
R2 上体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上体と、前記上体に第一の関節を介して連結された脚部と、前記脚部の端部に第二の関節を介して連結された足部と、を備えた脚式移動ロボットであって、
前記足部は、床面に接地する一または複数の接地領域を下端部に有する足平部と、前記足平部を介して前記床面から作用する床反力を検出する床反力検出器と、を備え、
前記第二の関節の中心(Pc)は、平面視で前記一または複数の接地領域のうちの最遠点までの距離が最小となる位置(Pa)に対してオフセットしており、
前記床反力検出器の中心(Pb)は、前記第二の関節の中心(Pc)よりも平面視で前記位置(Pa)に近くなるように設けられていることを特徴とする脚式移動ロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−68872(P2006−68872A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257697(P2004−257697)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】