説明

脱亜鉛装置および脱亜鉛方法

【課題】炉内において均一な加熱を実現し、確実な脱亜鉛を可能とする脱亜鉛装置および脱亜鉛方法を提供する。
【解決手段】 スクラップ鋼板41を投入するための投入口を有し、誘導加熱するための誘導加熱炉10と、誘導加熱容器10の外周に巻回された誘導加熱コイル20と、誘導加熱炉10の内壁13に埋設され、炉内の温度を計測する熱電対31と、熱電対31の検出温度に基づいて、誘導加熱コイル20へ供給する電力又は電流を制御する電源制御装置30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛メッキ鋼板を加熱して亜鉛を蒸発させて除去する誘導加熱方式の脱亜鉛装置および脱亜鉛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳物業界においては、スクラップ鋼板を溶解して鋳鉄の原材料とする割合が増えており、再利用されるスクラップ鋼板の代表的なものに亜鉛メッキ鋼板がある。スクラップ鋼板の溶解手段としては電気炉溶解法が常用されているが、これにより亜鉛メッキ鋼板を溶解する場合には種々の問題がある。例えば、亜鉛メッキ鋼板をそのまま溶解すると、亜鉛が炉の耐火物を浸透通過して加熱コイルを損傷させ、溶解設備の寿命を縮めることになって保全費を増加させてしまう。また、亜鉛は沸点が低くて蒸発しやすく、亜鉛蒸気による作業環境の悪化を招いたり、亜鉛が製品に混入されて品質を劣化させてしまったりすることもある。
【0003】
このような問題に対して、亜鉛メッキ鋼板の溶解前に予め亜鉛を溶融分離させる前処理を施すことが一般的に行われており、種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、加熱コイルに通電して亜鉛メッキ鋼板を誘導加熱して亜鉛を溶融させるとともに、溶融した亜鉛の一部が蒸発して生じる亜鉛華を材料排出口から外部に排気する誘導加熱式脱亜鉛装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−83676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、加熱筒の中央部分に位置する亜鉛メッキ鋼板にまで熱が行きわたらず、亜鉛の除去が不十分かつ亜鉛が酸化された状態で誘導溶解炉に搬送され、亜鉛が製品に混入してしまうおそれがある。特に、処理中の亜鉛は大気に触れると酸化しやすく、歪な形状をした鋼板屑表面で酸化亜鉛が生成されると、酸化亜鉛の粉末が蓄積されてしまい、篩にかけたり振動を加えたりしても容易に除去できなくなるという問題がある。さらに、酸化亜鉛の昇華点は約1725℃で、鉄の融点(約1535℃)をも超えており、上記装置で酸化亜鉛を揮発除去することは困難である。
【0007】
また、鋼板屑は、加熱コイルに近いるつぼ内壁付近に位置するものが局所的に加熱される。この状態が継続すると、高温部と低温部との温度差が大きくなって一部の鋼板屑が溶融してしまい、耐火物を劣化させて装置運用に支障をきたすおそれがある。したがって、鋼板屑を誘導炉で加熱するに際しては、炉内の均熱化を図ることが要求されることになる。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、炉内において均一な加熱を実現し、確実な脱亜鉛を可能とする脱亜鉛装置および脱亜鉛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る脱亜鉛装置は、亜鉛メッキ鋼板を投入するための投入口を有する加熱炉と、前記加熱炉の外周に巻回され、加熱電源に接続された加熱コイルと、前記加熱炉の内壁に埋設され、加熱炉内の温度を計測する温度センサと、前記温度センサの検出温度に基づいて、前記加熱コイルへ供給する電力を一定値に制御する又は前記加熱コイルへ供給する電流を一定値に制御する電源制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
これによれば、誘導加熱炉の内壁に埋設した温度センサで炉内の温度を計測し、その温度に基づいて加熱コイルへ供給する電力または電流を制御することによって、過電流を抑制して局所加熱の発生を防止するので、炉内の均熱化を図ることができる。
【0011】
ここで、前記内壁の温度センサは、加熱炉内壁の異なる位置に複数埋設されているとするのが好ましい。
【0012】
これによれば、炉内の様々な位置で温度計測をするので、炉内のさらなる均熱化が実現可能となる。
【0013】
さらに、前記加熱炉の内部に立設された棒体を備えるとし、前記棒体は中空状であり、棒体の内側に加熱炉内の温度を計測する温度センサを備えるとするのがより好ましい。
【0014】
これによれば、炉内の中央付近の温度を計測することが可能となる。
【0015】
また、前記電源制御手段は、前記内壁の温度センサと前記棒体の温度センサのうち、いずれかが予め設定した温度を検出したときに、電力又は電流を制御するとしてもよい。
【0016】
これによれば、予め設定した温度を検知したときに制御を行うので、炉内で高温となった箇所における局所加熱を防止することができる。
【0017】
さらに、本発明は、亜鉛メッキ鋼板を加熱して亜鉛を蒸発させて除去する脱亜鉛方法であって、亜鉛メッキ鋼板を投入するための投入口を有する加熱炉に亜鉛メッキ鋼板と炭素含有材料とを投入し、前記加熱炉の外周に巻回され、加熱電源に接続された加熱コイルによる亜鉛メッキ鋼板の誘導加熱で投入された亜鉛メッキ鋼板の亜鉛を蒸発させて除去し、前記投入された炭素含有材料を容器内の酸素と反応させて一酸化炭素ガスを発生させることによって容器内を還元雰囲気として亜鉛の酸化を抑制し、前記加熱炉の内壁に、加熱炉内の温度を計測する温度センサを埋設して、温度センサの検出温度に基づいて、前記加熱コイルへ供給する電力を一定値に制御する又は前記加熱コイルへ供給する電流を一定値に制御する脱亜鉛方法として実現することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明に係る脱亜鉛装置および脱亜鉛方法によれば、誘導加熱炉の内壁に埋設された温度センサで炉内の温度を計測して、計測した温度に基づいて加熱コイルへ供給する電力または電流を制御する。この制御によって、過電流が抑制されて、炉内の亜鉛屑鋼板が局所加熱されるのを防止することが可能となり、炉内の均熱化を図ることができ、ひいては、効率的に亜鉛を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】脱亜鉛装置の概略を示す図である。
【図2】脱亜鉛装置内部を部分的に示す図である。
【図3】第2実施形態に係る脱亜鉛装置の概略を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る脱亜鉛装置内部を部分的に示す図である。
【図5】炉内の均熱状態を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る脱亜鉛装置および脱亜鉛方法について図を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、脱亜鉛装置の概略を示す図であり、図2は、脱亜鉛装置内部を部分的に示す図である。
【0022】
脱亜鉛装置1は、亜鉛メッキ鋼板を加熱して亜鉛を蒸発させる誘導加熱式の脱亜鉛炉であり、誘導加熱炉10及び誘導加熱コイル20を備えている。
【0023】
誘導加熱炉10は、スクラップ鋼板41を加熱するための容器である。この誘導加熱炉10は、上部にスクラップ鋼板41と炭素含有材料42とを投入するための投入口を備えており、投入後の加熱処理によって発生する亜鉛蒸気等が容器上部から漏出しないようにするとともに投入口から装置内へ空気が入ることで投入口付近のスクラップ鋼板41に酸化亜鉛を発生させないようにするために、容器上部を密閉する容器蓋11を備えている。また、加熱処理後のスクラップ鋼板を排出するために容器を傾動させる傾動機構12も備えている。
【0024】
誘導加熱コイル20は、誘導加熱炉10の外周に巻回されており、誘導加熱の電源制御装置30に接続されている。電源制御装置30から誘導加熱コイル20へ通電すると、投入口から誘導加熱炉10内へ投入されたスクラップ鋼板41が誘導加熱されることとなる。
【0025】
電源制御装置30は、誘導加熱コイル20に通電するための電源であるとともに、出力する電力又は電流の制御装置としても機能する。誘導加熱電源としては、0.5〜5kHzの高周波電源装置を用いるものとし、制御装置としては、PLL(Phase-Locked Loop)方式等の回路によって、出力する電力を一定の値に制御する、又は、出力する電流を一定の値に制御する。なお、ここでは、誘導加熱電源と制御装置を一体にした構成を示しているが、それぞれ別個の装置としてもよいし、制御装置を脱亜鉛装置1が備える構成とすることも可能である。
【0026】
さらに、誘導加熱炉10の内壁13には、熱電対31を備えている。熱電対31は、炉内の温度を検出して電源制御装置30に出力する温度センサである。誘導加熱炉10の炉内に熱電対を挿入してスクラップ鋼板41の温度を直接計測することにすると、鋼板屑の投入や搬出のときに熱電対が引っ掛って作業性を悪化させたり、熱電対を損傷させてしまったりするおそれがあるため、熱電対31は内壁13の表層近くに埋め込むようにするのが好ましい。また、熱電対31の先端部には、確実に温度検知できるようにするため、加熱されやすい磁性体ブロックを固定するのが好ましい。この熱電対31で計測された温度に基づいて、電源制御装置30は出力制御を行う。
【0027】
スクラップ鋼板41から亜鉛を除去するにあたっては、まず鉄の磁気変態点(「キュリー点」又は「A2変態点」ともいう。)である約770℃まで昇温させて炉内の均熱化を図った後に、α鉄からγ鉄へのA3変態点である約910℃まで昇温させて、炉内を900〜1000℃で均熱化させるのが亜鉛除去の効率の点で優れている。上記範囲内の温度で炉内の均熱化を図るためには、キュリー点付近までの昇温において炉内温度を均熱化させておくことが重要である。ところで、スクラップ鋼板41がキュリー点付近まで加熱されると、その部分の電気抵抗が急激に上がるため、その箇所に集中していた電流の流れが、キュリー点に達していない他の箇所に一斉に移り、一時的に過電流となる箇所が生じる。そのため、電源制御装置30は、熱電対31からキュリー点に達した温度検出の出力を受けると、電流値が急上昇しないように電圧を下げて電力を一定値に保持する制御を行うことにより、炉内のスクラップ鋼板41の温度差拡大を抑制する。すなわち、出力する電力を一定とするために電圧を調整することで、電流が暴走しないようにしてキュリー点に到達した箇所の局所加熱を防ぎ、炉内全体がキュリー点以上となるように均熱化を図る。予め電流を一定値にする制御によっても同様の効果を得ることができる。つまり、出力する電流を一定の値に制御しておいて、炉内の温度状態に応じて電圧を調整することで、炉内全体がキュリー点以上となるように均熱化を図ることができる。反対に、予め電圧を一定値にする制御としてもよい。つまり、出力する電圧を一定の値に制御しておいて、炉内の温度状態に応じて電流を調整することで、炉内全体がキュリー点以上となるように均熱化を図るとしてもよい。
【0028】
なお、図2では、熱電対31を相対する位置に複数埋設している例を示している。このような場合、いずれか一方の熱電対31がキュリー点を超える温度を計測すれば、電源制御装置30は電力又は電流の制御を行うようにすればよい。
【0029】
このように構成される誘導加熱炉10内にスクラップ鋼板41を投入して加熱処理を施す。このとき、炉内へはスクラップ鋼板41と共に炭素含有材料42も投入される。炉内に炭素含有材料42を投入することにより、炉内部を還元雰囲気として酸化亜鉛の発生を減少させることができる。
【0030】
また、誘導加熱炉10は、マグネシアなどのセラミックスを材質として用いてもよいし、ステンレス(例えば、SUS310)などのメタル容器としてもよい。メタル容器は、セラミックスよりも耐摩耗性に優れており、運転保守の点で有利である。ただ、メタル容器の場合は局所加熱による溶融や劣化、加熱炉内側とスクラップ鋼板41との導通によるスパークの発生が懸念されるため、これを防止するために炉の内壁としては炉壁耐火物(キャスタブル)や絶縁断熱材(例えば、雲母など)を用いるのが好ましい。
【0031】
このように、脱亜鉛装置1は、誘導加熱炉10の内壁13に埋設した熱電対31で炉内の温度を計測し、計測した温度に基づいて電源制御装置30が誘導加熱コイルへ供給する電力または電流を制御することにより、過電流を抑制して局所加熱の発生を防止するので、炉内の均熱化を実現可能であり、ひいては、効率的な脱亜鉛を実現することができる。また、炉内にスクラップ鋼板41だけでなく炭素含有材料42も投入し、装置上部を密閉する容器蓋11を備えていることにより、炉内を還元雰囲気として酸化亜鉛の発生を抑制することができる。
【0032】
次に、第2実施形態に係る脱亜鉛装置について説明する。
【0033】
図3は、第2実施形態に係る脱亜鉛装置の概略を示す図であり、図4は、第2実施形態に係る脱亜鉛装置内部を部分的に示す図である。
【0034】
脱亜鉛装置2は、中空パイプ50を備えている点で、上記脱亜鉛装置1と異なる。なお、上記脱亜鉛装置1と同じ構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
中空パイプ50は、誘導加熱炉10内に立てられる中空状の棒体である。中空パイプ50は、亜鉛蒸気の排出口となる孔をあけて削孔部、すなわちスリット51が形成されており、装置下部からパイプ内を吸気し、スリット51から装置内部の亜鉛蒸気やダストを中空パイプ50内を介して外部へ排出するようになっている。この中空パイプ50は、誘導加熱されやすい素材、すなわち、誘導加熱に対する親和性を有する素材で構成されており、容器内部の温度上昇に伴いパイプ自体も熱を帯びる。この中空パイプ50の伝熱により、パイプ近傍のスクラップ鋼板41を加熱するので、容器内の熱が届きにくい箇所に投入されたスクラップ鋼板41の加熱を促進させることができる。すなわち、800℃以上の熱を帯びたパイプは、その伝熱によって、炉内のスクラップ鋼板41を炉の内側から加熱するので、誘導加熱されにくい炉の中央部分に投入されたスクラップ鋼板の加熱を促進させ、装置内の鋼板全体の昇温速度向上に寄与する。なお、中空パイプ50として使用されるステンレスは、例えば、オーステナイト系ステンレス(SUS310)、オーステナイト−フェライト2相系ステンレス(SUS329)やフェライト系ステンレス(SUS430)である。
【0036】
また、図4に示すように、この中空パイプ50も熱電対32を備えている。熱電対32は、炉の中央付近の温度を検出して電源制御装置30へ出力する。熱電対32は、中空パイプ50の外側に配置すると炉内に突き出てしまい、上記同様に作業性の悪化や熱電対の損傷を招くので、中空状の中空パイプ50の内側に沿うように配置するのが好ましい。
【0037】
この熱電対32を備えることにより、炉内の温度状況がより詳細に把握できるようになるので、炉内均熱化のための制御に資することとなる。特に、炉内の中央付近は、キュリー点を超えると放熱が少ないために温度が高くなる傾向にあるので、この位置で熱電対32が温度計測をすることにより、炉内の均熱化をより確実に行うことができるようになる。
【0038】
なお、図4では、熱電対31と向き合うように中空パイプ50の内側に熱電対32が埋設されている例を示している。このような場合も、内壁13側の熱電対31か中空パイプ50側の熱電対32のいずれか一方がキュリー点を超える温度を計測すれば、電源制御装置30は電力又は電流の制御を行うようにすればよい。
【0039】
このように、脱亜鉛装置2によれば、誘導加熱炉10の内壁13に埋設した熱電対31と中空パイプ50に配設された熱電対32とによって炉内の温度を計測し、計測した温度に基づいて電源制御装置30が誘導加熱コイルへ供給する電力または電流を制御するので、より精度高く炉内の均熱化を図ることができる。
【0040】
また、誘導加熱炉10内に立設された中空パイプ50は、加熱処理によってスクラップ鋼板41から除去される油分や水分、亜鉛蒸気の他に、投入された炭素含有材料42の炭素が容器内の酸素と反応して発生させる一酸化炭素ガスや炭酸ガスを吸気して外部へ排出するので、炉内は低酸素状態となり、溶融した亜鉛の酸化を防ぐことができる。それだけでなく、パイプそのものが熱を帯びるので、炉内部から熱が伝わりにくい箇所に投入されたスクラップ鋼板41へ加熱することができる。
【0041】
本発明に係る脱亜鉛装置による脱亜鉛処理時の炉内温度の状況を説明する。
【0042】
図5は、炉内の均熱状態を説明するためのグラフであり、誘導加熱コイルへ供給する電力を一定の値に制御した場合の炉内の温度状態を示している。図中の実線は、誘導加熱炉内壁に埋設された熱電対で計測した炉外周付近の温度推移である。図中の破線は、中空パイプに配設された熱電対で計測した炉中央付近の温度推移である。また、図中の一点鎖線は誘導加熱コイルに供給される電流値であり、図中の二点鎖線は誘導加熱コイルに供給される電力値である。
【0043】
加熱を開始してから出力する電力は一定に制御されている。炉外周付近の温度がキュリー点付近まで上昇したところで、過電流を防止するために供給する電力を0にし(経過時間で13〜17分付近)、炉中央付近の温度が上昇して炉外周と炉中央との温度差が縮小してから再び出力する電力を一定に制御している(経過時間で17〜24分付近)。炉内の温度が目標とする910℃付近に達した後は、徐々に出力する電力を下げて炉内温度を維持している。このグラフから、出力する電力を調整してキュリー点付近までの昇温において炉外周の温度と炉中央の温度を揃えることが、その後の炉内温度の均熱化に効果的であることを読み取ることができる。
【0044】
以上、本発明に係る脱亜鉛装置および脱亜鉛方法について、各実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0045】
例えば、上記各実施の形態で示した熱電対を配設する位置は、これに限定されるものではなく、炉内の一箇所のみで計測するとしてもよいし、複数個所で計測することとし、各位置における温度差に応じて制御装置における制御を行うようにしてもよい。
【0046】
また、ここでは一つの加熱コイルを用いているが、複数の加熱コイルを用いることとしてもよい。複数の加熱コイルを使用し、熱電対を炉内の複数個所に配設すれば、加熱コイルごとに電力又は電流の制御が可能となり、炉内のさらなる均熱化を実現することができる。
【0047】
さらに、上記実施形態では、1本の中空パイプを容器中心に立設するとしているが、容器内部であれば中心でなくてもよく、複数本のパイプを立設することとしてもよい。複数本のパイプを立設して、それぞれに熱電対を配設すれば、より多くの箇所で炉内温度の計測が可能となるので、炉内の均熱化をさらに向上させる制御が可能となる。また、中空パイプを合金鋼製としたが、誘導加熱されるものであれば合金鋼に限られるものではなく、合金元素が添加されていない鉄や炭素鋼、炭化珪素やカーボンなどを用いてもよい。さらに、スリットを形成していないパイプを立てて、炉内の温度計測、急速昇温及び均熱化を実現することとし、炉内の亜鉛蒸気等は容器上部に開口部を設けて、そこから排気する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る脱亜鉛装置は、亜鉛メッキがされたスクラップ鋼板の亜鉛除去装置として好適である。
【符号の説明】
【0049】
1,2 脱亜鉛装置
10 誘導加熱炉
11 容器蓋
12 傾動機構
13 内壁
20 誘導加熱コイル
30 電源制御装置
31,32 熱電対
41 スクラップ鋼板
42 炭素含有材料
50 中空パイプ
51 スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛メッキ鋼板を投入するための投入口を有する加熱炉と、
前記加熱炉の外周に巻回され、加熱電源に接続された加熱コイルと、
前記加熱炉の内壁に埋設され、加熱炉内の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサの検出温度に基づいて、前記加熱コイルへ供給する電力を一定値に制御する又は前記加熱コイルへ供給する電流を一定値に制御する電源制御手段とを備える
ことを特徴とする脱亜鉛装置。
【請求項2】
前記内壁の温度センサは、加熱炉内壁の異なる位置に複数埋設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の脱亜鉛装置。
【請求項3】
さらに、前記加熱炉の内部に立設された棒体を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱亜鉛装置。
【請求項4】
前記棒体は中空状であり、棒体の内側に加熱炉内の温度を計測する温度センサを備える
ことを特徴とする請求項3記載の脱亜鉛装置。
【請求項5】
前記電源制御手段は、前記内壁の温度センサと前記棒体の温度センサのうち、いずれかが予め設定した温度を検出したときに、前記加熱コイルへ供給する電力又は電流を制御する
ことを特徴とする請求項4記載の脱亜鉛装置。
【請求項6】
亜鉛メッキ鋼板を加熱して亜鉛を蒸発させて除去する脱亜鉛方法であって、
亜鉛メッキ鋼板を投入するための投入口を有する加熱炉に亜鉛メッキ鋼板と炭素含有材料とを投入し、
前記加熱炉の外周に巻回され、加熱電源に接続された加熱コイルによる亜鉛メッキ鋼板の誘導加熱で投入された亜鉛メッキ鋼板の亜鉛を蒸発させて除去し、
前記投入された炭素含有材料を容器内の酸素と反応させて一酸化炭素ガスを発生させることによって容器内を還元雰囲気として亜鉛の酸化を抑制し、
前記加熱炉の内壁に、加熱炉内の温度を計測する温度センサを埋設して、温度センサの検出温度に基づいて、前記加熱コイルへ供給する電力を一定値に制御する又は前記加熱コイルへ供給する電流を一定値に制御する
ことを特徴とする脱亜鉛方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−195908(P2011−195908A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65097(P2010−65097)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000225027)特殊電極株式会社 (26)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】