説明

自動ドア開閉制御装置、自動ドアの開閉制御方法及び自動ドア開閉制御装置を備えた自動ドア

【課題】ドア本体の不要な開閉動作や誤動作を低減するとともに、実用的な処理時間内にドア本体の開閉動作を行うことができるパッシブ型の自動ドア開閉制御装置を提供する。
【解決手段】自動ドア開閉制御装置は、電子カメラと、利用波長以外の波長を排除する光学フィルターと、低周波を排除する周波数フィルターと、進入物体をブリットとして処理する手段と、ブリットを時系列に処理する手段と、ブリットの移動方向のベクトルを演算する手段と、ベクトルが自動ドアに向かうか否かを判定する手段と、自動ドアに向かう信号と判定した場合には自動ドアの開閉駆動装置に開放信号を送出する手段と、所定のエリアにブリットが存在しない場合には自動ドアの開閉駆動装置に閉鎖信号を送出する手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドアの開閉制御の応答特性を向上させる自動ドア開閉制御装置、自動ドアの開閉制御方法及び自動ドア開閉制御装置を備えた自動ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されている自動ドアの多くは、自動ドアの進入エリアに、複数の近赤外光ビーム等のアクティブセンサを配置して検知エリアを設定し、進入物体による反射受光変動を検知することにより、開閉の信号を発生させ、ドア本体の開閉制御を行っていた。この手法を、アクティブ法といい、この手法を用いた自動ドアをアクティブ型の自動ドアという。これに対して、近年、自動ドアの進入エリアに、電子カメラの撮像エリアを設定し、電子カメラの映像信号に基づいて画像処理で物体を認識する、いわゆる、パッシブセンサを用いて、進入物体の移動を検知、判別してドア本体の開閉制御を行うことが提案されている。この手法を、パッシブ法といい、この手法を用いた自動ドアをパッシブ型の自動ドアという。
【0003】
パッシブ型の自動ドアとして、例えば、特許文献1では、画像処理装置と、駆動装置を制御する駆動制御装置とを備える自動ドア装置を開示している。画像処理装置は、監視エリア内で撮像された物体の、位置、移動方向、移動速度の情報を把握し、該物体がドア本体を通過しようとしていると判断した場合には、駆動制御装置は、画像処理装置によって把握された物体の情報に基づいて駆動装置を制御し、ドア本体を開閉移動させることを開示している。また、非特許文献1では、カメラからの画像から画像認識処理により物体の特徴量を抽出し、その特徴量から物体の移動ベクトルを算出してドア本体の開閉制御を行う自動ドアを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−225874号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】西元丈志著、「画像処理を利用した高精度な自動ドアの開閉制御方式の研究」、[online]、2005年3月、早稲田大学大学院情報生産システム研究科システムLSI分野システムLSI応用部門 池永研究室、[2009年10月検索]、インターネット(http://www.waseda.jp/sem-ikenaga/content/research%20files/research-nishimoto.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アクティブ型の自動ドアは、進入物体の検知から自動ドアの開閉に至るまでの時間は短く実用的であるが、エリア内に進入した物体に対して無条件に開閉信号を発生させるため、例えば、自動ドアと平行に移動する物体であっても誤認識により不必要にドア本体を開けるといった問題があった。また、一旦開けたドア本体は、タイマーによって一定時間経過後に閉められるため、検知エリアに物体が存在しなくても開けた状態で維持され、空調等で無駄な電力が消費されるといった問題もあった。その点、パッシブ型の自動ドアは、物体の移動を判別して自動ドアの開閉を制御するため、ドア本体の誤認識を抑えることができる利点がある。
【0007】
しかし、従来のパッシブ型の自動ドアは、カメラの撮像エリア内に進入物体を検知しても、その物体の抽出から物体の移動を判別するまでの処理時間が長いために、自動ドアの開閉に至るまでにある程度の時間を要して実用的でないといった問題がある。
【0008】
特許文献1や非特許文献1に用いられる電子カメラは、光学的な機能(Optical Function)として、広角で焦点域の広いバリフォーカルであるものが用いられている。このため、この電子カメラは、ほぼ全域で結像することができるが、可視域及び近赤外域におよぶ広範な波長域をカバーするため、その電子カメラの結像性能は劣っている。そのため、特許文献1や非特許文献1では、多くの結像性能の改良処理を事後的に実施しており、これが、物体の抽出から物体の移動を判別するまでの処理時間を長くする原因の1つに挙げられる。
【0009】
また、従来のパッシブ型の自動ドアは、電子カメラの撮像エリア内の進入物体以外の光学情報(例えば、照明の蛍光灯や屋外の広告灯等の反射光)を排除する工夫が必要であり、そのための処理をも考慮する必要がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ドア本体の誤認識を低減するパッシブ型自動ドアの利点を生かしつつ、実用的な処理時間内にドア本体の開閉動作を行うことができる、パッシブ型の自動ドア開閉制御装置、自動ドアの開閉制御方法及び自動ドア開閉制御装置を備えた自動ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る自動ドア開閉制御装置は、画角及び結像距離の空間撮像域を所定のエリアとするレンズを含む電子カメラと、利用波長以外の波長を排除する光学フィルターと、撮像電子信号の空間周波数の低周波を排除する周波数フィルターと、周波数フィルターによって濾過された信号を進入物体とみなしてブリットとして処理する手段と、適時計時後ブリットを等時間間隔で時系列に処理する手段と、ブリットの移動方向のベクトルを演算する手段と、ベクトルが自動ドアに向かうか否かを判定する手段と、自動ドアに向かう信号と判定した場合には自動ドアの開閉駆動装置に開放信号を送出する手段と、所定のエリアにブリットが存在しない場合には自動ドアの開閉駆動装置に閉鎖信号を送出する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第1の発明に係る自動ドア開閉制御装置は、パッシブ法を用いて開閉制御するため、誤認識が抑えられ、ドア本体の不要な開閉動作を低減できる。また、第1の発明に係る自動ドア開閉制御装置は、画像の情報量を最小限に抑えて、進入物体をブリットとして簡単な処理をするだけであるため、実用的な処理時間内にドア本体の開閉動作を行うことができる。
【0013】
第1の発明に係る自動ドア開閉制御装置は、移動する物体を認識してその対応処理を判断するパッシブセンサとして、様々な分野に用いることができる。例えば、エレベータのドア挟み込み防止に用いることができる。具体的には、この自動ドア開閉制御装置を、エレベータの外部扉天井部と籠内天井部とにそれぞれ設置し、エレベータの外部又は籠内のどちらか一方にしか物体が存在せず、その物体の扉方向の移動がないと判断したときにエレベータの扉を閉めるように制御する。
【0014】
第2の発明に係る自動ドアの開閉制御方法は、電子カメラで画像を入力する入力工程S1と、画像から物体を抽出する抽出工程S2、S3と、抽出された物体の特徴点を算出する特徴点算出工程S4と、入力工程S1と、抽出工程S2、S3と、特徴点算出工程S4とをこの順で複数回繰り返し、時系列で物体の特徴点を複数取得する取得工程S5と、取得された複数の物体の特徴点を基に、物体の移動方向のベクトルを算出するベクトル算出工程S6と、ベクトルを基に、物体が、自動ドアの出入り口に移動しているか判定する移動判定工程S7と、判定と自動ドアの開閉状態を基に、自動ドアの開閉を指示する開閉指示工程S9a、S9bとを含むことを特徴とする。
【0015】
抽出工程S2、S3から特徴点算出工程S4では、カラー画像よりも情報量が少ない白黒の濃淡の画像(以下、「グレー画像」という。)から、ハイパスフィルター等の周波数フィルターで物体を抽出し、さらに、情報量の少ない白黒の2値画像に処理して、物体の特徴点である重心を算出する。このように、抽出工程S2、S3から特徴点算出工程S4では、扱う情報量を少なくし、簡単な処理とすることで、処理の時間を従来のパッシブ法よりも短くすることができる。
【0016】
第2の発明に係る自動ドアの開閉制御方法は、画像の情報を少なくして、簡単な処理により、物体の抽出、ブリットの算出、物体の移動ベクトルの算出及び物体が自動ドアの方向に移動しているかを判定するため、処理時間を短くでき、実用的な処理時間内にドア本体の開閉動作を行うことができる。さらに、この方法を実施するための演算部やメモリ等の必要スペックも低く抑えられるため、ワンチップのハードウェアに組み込むことができる。
【0017】
第3の発明に係る自動ドアは、開閉移動するドア本体11と、ドア本体11を開閉移動させる駆動装置12と、ドア本体11の開閉方向の両端に配置される外枠13と、ドア本体11を収納する収納スペース14とを備える。そして、駆動制御装置は、第1の発明に係る自動ドア開閉制御装置10によって、ドア本体11を開閉移動させることを特徴とする。
【0018】
第3の発明に係る自動ドアは、パッシブセンサとして、第1の発明に係る自動ドア開閉制御装置を用いるため、誤認識が抑えられ、ドア本体の不要な開閉動作を低減できる。また、第3の発明に係る自動ドアは、画像の情報量を最小限に抑えて、進入物体をブリットとして簡単な処理をするだけであるため、画像の入力からドア本体の開閉までの処理時間を、従来のパッシブ型の自動ドアよりも短時間にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の自動ドア開閉制御装置によれば、誤認識が抑えられ、ドア本体の不要な開閉動作を低減できるとともに、カメラの撮像エリア内に進入した物体が自動ドアに接近するとほぼ同時に、自動ドアの開閉動作が開始されるため、実用的な処理時間内にドア本体の開閉動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の自動ドア開閉制御装置の概略の一例を示す図。(a)は自動ドア開閉制御装置の正面の方向から見た図、(b)は(a)のA−Aの方向から見た図、(c)は(a)のB−Bの方向から見た図。
【図2】本発明の自動ドア開閉制御装置の処理の概要を説明する図。
【図3】本発明の自動ドア開閉制御装置のブロックの一例を示す図。
【図4】本発明の自動ドアの開閉制御方法の手順の一例を示す図。
【図5】物体の入力画像の一例を示す図。
【図6】図5の画像から物体を抽出する一例を示す図。(a)は物体の運動前を示す図、(b)は物体の運動後を示す図。
【図7】図6の画像から物体の重心を算出する一例を示す図。(a)は物体の運動前を示す図、(b)は物体の運動後を示す図。
【図8】図7の画像から物体の移動方向のベクトルを算出する一例を示す図。
【図9】本発明の自動ドアの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明者らは、画像の情報を必要最小限に抑え、その画像の処理を簡易化してハードウェア内に組み込むことにより、パッシブ型であっても、自動ドアの開閉制御の応答特性を従来に比べて著しく向上させることができた。以下、その自動ドア開閉制御装置、自動ドアの開閉制御方法及び自動ドア開閉制御装置を備えた自動ドアについて説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の自動ドア開閉制御装置の概略の一例を示す図である。図1(a)は、自動ドア開閉制御装置の正面の方向から見た図であり、図1(b)は、図1(a)のA−Aの方向から見た図であり、図1(c)は図1(a)のB−Bの方向から見た図である。図1(a)では、自動ドア開閉制御装置10は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ1と、電源入力端子5から入力された電気を自動ドア開閉制御装置10全体に供給する電源2と、CCDカメラ1から入力される画像を処理する画像演算部3と、開閉信号出力端子6から自動ドアの開閉駆動装置(図示無し)に開閉信号を送信する扉開閉制御部4と、取付金具7とを備える。
【0023】
CCDカメラ1は、利用波長以外の波長を排除する光学フィルターと、光学レンズと、撮像素子であるCCDセンサと、映像処理回路等のDSP(Digital Signal Processor)とを備える。CCDカメラ1は、その画角が従来の広角レンズよりも小さく、単焦点型のものが用いられる。CCDカメラ1の空間撮像距離は、一般的な自動ドアの大きさに鑑みて、CCDカメラのレンズから、例えば、0.5[m]〜5.0[m]である。空間撮像距離とは、所定の画像の鮮鋭度を得るためのレンズからの距離をいう。この空間撮像距離は、自動ドアの大きさによって適宜変更できる。CCDカメラ1では、結像性能を改善するために、光学フィルターにより利用波長の帯域を狭くする。DSPは、フラッシュメモリを内蔵したマイクロコンピュータ(以下、「フラッシュマイコン」という。)であってもよく、さらに、周波数フィルターを備えてもよい。CCDカメラ1から出力する画像は、自動ドア開閉制御装置10のセンサとして使用するため、カラー画像である必要はなく、カラー画像よりも情報量が少ないグレー画像であることが好ましい。
【0024】
画像演算部3は、画像処理装置と、演算処理装置とを備える。画像処理装置は、撮像電子信号の空間周波数の低周波を排除する周波数フィルターを備える。画像処理装置は、集積回路(Integrated Circuit、以下、「IC」という。)で構成されるが、演算処理装置に画像処理のプログラムを備えて実施してもよい。演算処理装置は、中央演算処理装置(Central Processing Unit、CPU)と、プログラム等を記憶する記憶装置とを備え、例えば、フラッシュマイコン等を用いることができる。演算処理装置では、周波数フィルターによって濾過された信号を進入物体とみなしてブリットとして処理する手段と、適時計時後ブリットを等時間間隔で時系列に処理する手段と、ブリットの移動方向のベクトルを演算する手段と、ブリットの移動方向のベクトルが自動ドアに向かうか否かを判定する手段とを備える。演算処理装置の各手段は、各プログラムを中央演算処理装置で実行することにより実施されるが、それらをICで構成して実施しもよい。
【0025】
CCDカメラ1の空間結像エリアに進入した物体の空間周波数は、高い周波数であり、その物体以外の空間周波数は低い周波数である。そのため、CCDカメラ1から入力される画像を、ハイパスフィルター等の周波数フィルターで処理することにより、物体のみの撮像電子信号にし、物体を抽出することができる。
【0026】
ブリットとは、画像中の点を意味し、具体的には、CCDカメラ1から入力される画像から抽出された物体の特徴点、例えば、重心である。ブリットは、CCDカメラ1から入力される画像を周波数フィルターで処理した後、平滑して求めてもよい。このような処理は、ICで構成することができ、リアルタイムでブリットを求めることができる。
【0027】
画像演算部3は、このブリットを時系列で複数算出し、その複数のブリットから物体の移動方向のベクトルを算出する。そして、その移動方向のベクトルから自動ドアに向かうか否かを判定して、扉開閉制御部4にその判定結果を送信する。画像演算部3では、画像情報量を最小限に抑えて、かつ、簡単な演算処理しか行わないため、小型のハードウェアに組み込んで実現することができる。
【0028】
上記のように画像演算部3を構成すると、CCDカメラ1から入力される画像から、1秒間に複数回のブリットを得ることができる。そして、ブリットの移動方向のベクトルが自動ドアに向かうか否かの判定までの処理時間は、例えば、1秒以内にすることができる。
【0029】
扉開閉制御部4は、自動ドア開閉駆動装置への出力装置として、画像演算部3のブリットの移動方向のベクトルが自動ドアに向かうと判定した場合に自動ドアの開閉駆動装置に開放信号を送出する手段と、所定のエリアにブリットが存在しない場合等に自動ドアの開閉駆動装置に閉鎖信号を送出する手段とを備える。例えば、扉開閉制御部4は、画像演算部3から受信する信号と自動ドアの開閉状態に応じてリレー制御により、自動ドアの開閉駆動装置に開放信号又は閉鎖信号を送出する。扉開閉制御部4は、ブリットの移動方向のベクトルを基に自動ドアの開閉制御信号を送信するため、誤作動を少なくすることができる。
【0030】
図1(b)では、自動ドア開閉制御装置10は、撮像位置調整機構8を備える。撮像位置調整機構8は、CCDカメラ1の向きや位置の微調整を行う。図1(c)では、自動ドア開閉制御装置10は、調整用監視映像信号出力端子9を備える。調整用監視映像信号出力端子9は、画像演算部3の保守として利用され、画像演算部3のプログラムや設定の変更時に使用される。
【0031】
図2は、本発明の自動ドア開閉制御装置の処理の概要を説明する図である。なお、矢印は、画像等の信号の流れを示す。自動ドア開閉制御装置10は、光学レンズ1aと、CCDセンサ1bと、DSP1cとを有するCCDカメラ1と、画像処理装置3aと、演算処理装置3bとを有する画像演算部3と、扉開閉制御部4である出力装置とを備える。演算処理装置3bは、中央演算処理装置3bcと、プログラム等を記憶する記憶装置3bmとを備える。CCDカメラ1は、光学レンズ1aを、光学フィルターと、単焦点レンズとで構成している。そして、CCDカメラ1では、光軸Oaと、画角Vaと、焦点距離D1と、焦点深度D2とを調整して、CCDカメラ1で進入物体を検知する空間結像エリアA1と、CCDカメラ1で検知しない空間非結像エリアA2とを設定する。このとき、CCDカメラ1の空間撮像距離は、光学レンズ1aから空間結像エリアA1の範囲内までの距離となる。単焦点型レンズは、カメラに広く用いられている焦点域の広いバリフォーカル型レンズとは異なり、固有の焦点深度域を有する。単焦点型レンズを用いると、空間結像エリアA1を任意に設定することができ、CCDカメラ1から取り込まれる画像を鮮明にするといった後処理を、バリフォーカル型レンズを用いたときよりも軽減することができる。
【0032】
自動ドア開閉制御装置10では、まず、空間結像エリアA1内を、光学レンズ1aを介してCCDセンサ1bで電気信号に変換し、その電気信号をDSP1cでデジタル化する。そして、デジタル化して得た画像を画像処理装置3aに送信する。画像処理装置3aでは、受信した画像から空間周波数の低周波を排除して物体を抽出し、その画像を演算処理装置3bに送信する。そして、演算処理装置3bでは、物体の移動方向のベクトルを算出して、その移動方向のベクトルから物体が自動ドアに向かうか否かを判定し、その判定結果を扉開閉制御部4である出力装置に送信する。そして、出力装置は、その判定結果と自動ドアの開閉状態とを基に、自動ドアの開閉駆動装置に開放信号又は閉鎖信号を送出する。
【0033】
図3は、本発明の自動ドア開閉制御装置のブロックの一例を示す図である。なお、各ブロックを繋ぐ実線は、電線や信号線を示す。図3では、自動ドア開閉制御装置10は、撮像位置調整機構8により調整されるCCDカメラ1と、電源入力端子5から入力された電気を自動ドア開閉制御装置10全体に供給する電源2と、調整用監視映像信号出力端子9により画像演算部3と、開閉信号出力端子6から自動ドアの開閉駆動装置(図示無し)に開閉信号を送信する扉開閉制御部4とを備える。
【0034】
電源2は、CCDカメラ1と、画像演算部3と、扉開閉制御部4とに電気的にそれぞれ接続され、電気を供給する。CCDカメラ1は、光学レンズ1aと、CCDセンサ1bと、DSPと、光学フィルターとを備える。そして、CCDカメラ1は、画像演算部4に電気的に接続され、画像演算部3に対して画像を送信する。画像演算部3は、扉開閉制御部4に電気的に接続され、扉開閉制御部4に対して物体が自動ドアに向かうか否かの判定結果を送信する。扉開閉制御部4は、自動ドアの開閉駆動装置(図示無し)に電気的に接続され、自動ドアの開閉駆動装置に対して自動ドアの開閉信号を送信する。このような信号の流れを1秒以内に行うことにより、自動ドアの開閉駆動装置の制御を直ちに行う。
【0035】
第1の実施形態は、画像演算部3が簡易な構成であるため、装置全体を小型にすることができる。また、第1の実施形態では、画像の情報量を減少させ、その画像の処理を簡易化してハードウェア内に組み込むことにより、自動ドアの開閉制御の応答特性を従来に比べて著しく向上させることができる。また、物体の移動方向のベクトルを基に自動ドアの開閉を制御するため、誤作動を少なくすることができる。
【0036】
第1の実施形態では、扉開閉制御部4である出力装置から自動ドアの開閉駆動装置に開閉信号を送信しているが、単に開閉信号を送信する用途だけでなく、出力装置に他の機器と接続する出力端子を備えてもよい。このようにすると、その出力端子から、進入する物体の移動方向、位置や速度等の情報やそれらの情報から他の機器を制御する信号を出力するパッシブセンサとして用いることもできる。
【0037】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の自動ドアの開閉制御方法の手順の一例を示す図である。図4では、自動ドアの開閉制御方法は、まず、CCDカメラ等で自動ドアの前に設定した撮像エリア内の画像を入力する(ステップS1)。そして、その画像に対して、利用波長以外の波長を排除し、空間周波数の低周波を排除して物体を抽出する(ステップS2)。そして、撮像エリア内に物体が存在しているかどうか判定する(ステップS3)。
【0038】
物体が存在していないと判定した場合、自動ドアが開いているかどうか判定し(ステップS8b)、自動ドアが開いていると判定した場合は、自動ドアの開閉駆動装置に閉鎖信号を送信して(ステップS9b)終了し、自動ドアが開いていないと判定した場合は、その後終了する。
【0039】
物体が存在していると判定した場合、その抽出された物体の特徴点である重心、つまり、ブリットを算出する(ステップS4)。そして、そのブリットを時系列に複数個算出するまでステップS1〜ステップS4を繰り返す(ステップS5)。そして、そのブリットから、物体の移動方向のベクトルを算出する(ステップS6)。具体的には、ある時点での物体のブリットとその時点より以前のブリットとの相対的な位置の差を算出することにより、物体の移動方向のベクトルが得られる。そして、その物体が自動ドアに移動しているかどうか判定する(ステップS7)。これは、物体の移動方向のベクトルと、物体と自動ドアとの相対的な位置関係から判定することができる。ステップS1〜ステップS7までの処理は、扱う画像の情報量が少なく、簡単な処理であるため、ワンチップのハードウェアに組み込むことができ、その処理は、1秒以内で行うことができる。
【0040】
物体が自動ドアに移動していると判定した場合、自動ドアが開いているかどうか判定し(ステップS8a)、自動ドアが開いていないと判定した場合は、自動ドアの開閉駆動装置に開放信号を送信して(ステップS9a)終了し、自動ドアが開いていると判定した場合は、その後終了する。また、物体が自動ドアに移動していないと判定した場合も、その後終了する。
【0041】
以下、画像を用いて、画像からブリット、物体の移動方向ベクトルの算出の手順を説明する。なお、各処理を判りやすくするために、以下では、各処理における運動前後の画像を用いて説明している。
【0042】
図5は、物体の入力画像の一例を示す図である。ただし、図5の画像は、単焦点レンズを用いた画像ではなく、各処理の説明用として焦点域の広いバリフォーカル型レンズを用いた画像である。実際の単焦点レンズを用いた画像では、特に、対象とする物体が、図5の画像よりも鮮明なものとなる。そのため、単焦点レンズを用いた画像では、画像を鮮明にするといった後処理を、バリフォーカル型レンズを用いる場合よりも軽減することができ、対象とする物体の抽出を正確に効率良く実施することができる。図5(a)は、物体の運動前を示す図であり、図5(b)は、物体の運動後を示す図である。CCDカメラ1により、図5に示されるグレー画像を取得し、それを周波数フィルターで処理する。
【0043】
図6は、図5の画像から物体を抽出する一例を示す図である。図6(a)は、物体の運動前を示す図であり、図6(b)は、物体の運動後を示す図である。CCDカメラ1から取得された画像は、周波数フィルターを経由することにより物体が抽出され、図6に示されるように物体が抽出された白黒の2値画像にまで処理される。
【0044】
図7は、図6の画像から物体の重心を算出する一例を示す図である。図7(a)は、物体の運動前を示す図であり、図7(b)は、物体の運動後を示す図である。図6の白黒の2値画像から、図7に示すように物体の重心C1、C2を算出する。
【0045】
図8は、図7の画像から物体の移動方向のベクトルを算出する一例を示す図である。図8に示すように、図7(a)と図7(b)の画像を重ね合わせて、物体の重心C1とC2の相対的な位置の差を算出し、物体の移動方向のベクトルPとする。この物体の移動方向のベクトルPと、物体の位置と自動ドアとの相対的な位置の情報から、物体が自動ドアに移動しているかどうか判定する。
【0046】
第2の実施形態では、画像の情報を少なくして、簡単な処理により、物体の抽出、ブリットの算出、物体の移動ベクトルの算出及び物体が自動ドアの方向に移動しているかを判定するため、短時間で自動ドアの開閉制御を行うことができる。さらに、この方法を実施するための演算部やメモリ等の必要スペックも低く抑えられるため、ワンチップのハードウェアに組み込むことができる。
【0047】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の自動ドアの一例を示す図である。なお、矢印は、自動ドアの開く方向を示している。図9では、自動ドア20は、第1の実施形態の自動ドア開閉制御装置10と、開閉移動するドア本体11と、ドア本体11を開閉移動させる駆動装置12と、ドア本体11の開閉方向の両端に配置される外枠13と、ドア本体11を収納する収納スペース14とを備える。自動ドア20は、壁15の一部に埋設される。自動ドア20は、片開きであり、ドア本体11は、壁15に沿って開閉移動するが、自動ドア20が両開きであったり、ドア本体11が手前方向や後ろ方向に開閉移動したりしてもよい。
【0048】
ドア本体11は、上端部と下端部とに複数のローラを配設している。駆動装置12は、ドア本体11を移動させるモータを備え、自動ドア開閉制御装置10からの開放又は閉鎖信号を受信することにより、モータを回転させてドア本体11を開閉させる。自動ドア20は、自動ドア開閉制御装置10を備えることにより、第1の実施形態と同様の効果を期待できる。
【0049】
第3の実施形態は、第1の実施形態の自動ドア開閉制御装置を備えることにより、従来よりも省スペースで設置することができる。さらに、第3の実施形態は、従来のパッシブ法を用いた自動ドアよりも誤認識が抑えられ、ドア本体の不要な開閉動作を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る自動ドア開閉制御装置は、簡単な構成で、進入する物体を、正確に短時間で把握できるパッシブセンサとして用いることができるため、これを、様々な分野で用いられる従来のアクティブセンサに代えて用いると、不要な動作や誤動作を低減できる。例えば、エレベータに利用すれば、挟み込みの防止を行うことができる。そのため、利用分野の拡大を期待でき、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0051】
1 CCDカメラ
1a 光学レンズ
1b CCDセンサ
1c DSP(Digital Signal Processor)
2 電源
3 画像演算部
3a 画像処理装置
3b 演算処理装置
3bc 中央演算処理装置
3bm 記憶装置
4 扉開閉制御部
5 電源入力端子
6 開閉信号出力端子
7 取付金具
8 撮像位置調整機構
9 調整用監視映像信号出力端子
10 自動ドア開閉制御装置
11 ドア本体
12 駆動装置
13 外枠
14 収納スペース
15 壁
20 自動ドア
A1 空間結像エリア
A2 空間非結像エリア
C1、C2 重心(ブリット)
D1 焦点距離
D2 焦点深度
Oa 光軸
P 物体の移動方向のベクトル
Va 画角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画角及び結像距離の空間撮像域を所定のエリアとするレンズを含む電子カメラと、
利用波長以外の波長を排除する光学フィルターと、
撮像電子信号の空間周波数の低周波を排除する周波数フィルターと、
前記周波数フィルターによって濾過された信号を進入物体とみなしてブリットとして処理する手段と、
適時計時後前記ブリットを等時間間隔で時系列に処理する手段と、
前記ブリットの移動方向のベクトルを演算する手段と、
前記ベクトルが自動ドアに向かうか否かを判定する手段と、
自動ドアに向かう信号と判定した場合には自動ドアの開閉駆動装置に開放信号を送出する手段と、
所定のエリアにブリットが存在しない場合には自動ドアの開閉駆動装置に閉鎖信号を送出する手段と
を備えることを特徴とする自動ドア開閉制御装置。
【請求項2】
電子カメラで画像を入力する入力工程(S1)と、
前記画像から物体を抽出する抽出工程(S2、S3)と、
前記抽出された物体の特徴点を算出する特徴点算出工程(S4)と、
前記入力工程と、前記抽出工程と、前記特徴点算出工程とをこの順で複数回繰り返し、
時系列で前記物体の特徴点を複数取得する取得工程(S5)と、
前記取得された複数の物体の特徴点を基に、
前記物体の移動方向のベクトルを算出するベクトル算出工程(S6)と、
前記ベクトルを基に、前記物体が、
自動ドアの出入り口に移動しているか判定する移動判定工程(S7)と、
前記判定と前記自動ドアの開閉状態を基に、
前記自動ドアの開閉を指示する開閉指示工程(S9a、S9b)と
を含むことを特徴とする自動ドアの開閉制御方法。
【請求項3】
開閉移動するドア本体と、
前記ドア本体を開閉移動させる駆動装置と、
前記ドア本体の開閉方向の両端に配置される外枠と、
前記ドア本体を収納する収納スペースと
を備えた自動ドアであって、
前記駆動制御装置は、請求項1記載の自動ドア開閉制御装置によって、
前記ドア本体を開閉移動させる
ことを特徴とする自動ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−157712(P2011−157712A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19471(P2010−19471)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(309039196)セルコ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】