説明

自動変速機のセレクトアシスト装置

【課題】 自動変速機のセレクトアシスト装置において、自動的なNレンジ位置への切換えにより燃費を向上させることができる自動変速機のセレクトアシスト装置を提供すること。
【解決手段】 作動位置を検出する位置センサ62と、車両が停止したことを判断する停止判断部37を備え、コントロールユニット22は、作動位置がDレンジ位置で、且つ車両が停止した場合に、セレクトレバー2の操作入力無しで、Dレンジ位置からNレンジ位置へ切換えを行う停止切換制御部38を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機を備えた車両において、ドライバのセレクトレバー操作力を補助する自動変速機のセレクトアシスト装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機のセレクトレバーは、ロッドやケーブル等の操作力伝達手段を介して自動変速機のマニュアルバルブと機械的に連結されている。セレクトレバーに入力されるドライバの操作力は、操作力伝達手段を介してマニュアルバルブに伝達され、操作量に応じてレンジ位置が切り換えられる(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この従来技術にあっては、セレクトレバーの長さに起因して形状が大きくなるため、設置場所に制約が多く、車室内におけるレイアウト自由度が低いものであった。
【0003】
一方、セレクトレバーとマニュアルバルブとが電気的に接続された、いわゆるシフトバイワイヤ技術を用いたものが知られている。この従来技術は、マニュアルバルブを作動するアクチュエータを設け、セレクトレバーの回動操作を電気信号に変化してアクチュエータを駆動することにより、レンジ位置を切り換えるものである(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この従来技術にあっては、アクチュエータの採用によってセレクトレバーを短く設計でき、前者の従来技術と比較してレイアウト自由度は高くなる。ところが、セレクトレバーとマニュアルバルブとが機械的に連結していないため、フェール時にレンジ切り換えが不能となる。
【0004】
これに対して、セレクトレバーとレンジ位置切り換え装置の機械的連結によりレンジ切り換えを可能としつつ、セレクトレバーの小型化によるレイアウト自由度の拡大を図ることができ、しかも要求に応じたセレクトレバー操作力特性を得ることができる自動変速機のセレクトアシスト装置がある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−323559号公報
【特許文献2】特開2003−97694号公報
【特許文献3】特開2005−133797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車両においては、フットブレーキもしくは、パーキングブレーキをかけた状態で、Dレンジ位置を維持しても車両としては停車状態にし、この停車状態を長時間維持することが可能であった。
しかしながら、アクセルを踏まない状態でもDレンジ位置にしておくことは、クリープにより駆動力を少しではあるが車輪に伝達し続ける状態であり、燃費の低下をまねくものであり好ましくないものであった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、自動変速機のセレクトアシスト装置において、自動的なNレンジ位置への切換えにより燃費を向上させることができる自動変速機のセレクトアシスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の自動変速機のセレクトアシスト装置では、セレクトレバーと自動変速機のセレクト位置切換装置とがセレクト操作力伝達系により連結され、前記セレクト操作力伝達系にはドライバによるセレクト操作力をアシストするアシストアクチュエータが設けられ、アシストアクチュエータに対してアシスト力を変化させる制御指令を出力するアシスト制御手段を備える自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記セレクト位置切換装置の作動位置を検出する作動位置検出手段と、車両が停止したことを判断する停止判断手段とを備え、前記アシスト制御手段は、作動位置がDレンジ位置で、且つ車両が停止した場合に、セレクトレバーの操作入力無しで、Dレンジ位置からNレンジ位置へ切換えを行う停止切換制御手段を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、自動変速機のセレクトアシスト装置において、自動的なNレンジ位置への切換えにより停車時の燃費を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の自動変速機のセレクトアシスト装置を実現する実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例の自動変速装置の構成を示す側面図、図2はアシストアクチュエータの細部構造を示す要部斜視図である。
【0011】
第1実施例の自動変速装置は、セレクト機構部1と、コントロールケーブル8と、アシストアクチュエータ9と、コントロールケーブル18と、自動変速機19と、コントロールユニット(アシスト力制御手段)22とを主要な構成としている。
【0012】
前記セレクト機構部1は、ドライバにより操作されるセレクトレバー2を有し、例えば、運転席脇のセンタクラスタ3に設けられている。セレクトレバー2の上端には、セレクト操作時にドライバが把持するためのセレクトノブ4が付設されている。セレクトレバー2は、支点軸5を中心として回動操作され、従来の一般的なセレクトレバーよりも250mm短い100mmに設定されている。
【0013】
前記セレクトレバー2の下端部には、セレクトレバージョイント7を介してプッシュプル式のコントロールケーブル8が接続されている。コントロールケーブル8は、入力レバージョイント11を介してアシストアクチュエータ9の入力レバー10と回動自在に接続されている。すなわち、セレクトレバー2の回転運動が直線運動に変換され、セレクトレバー2の操作により発生した操作力が入力レバー10に伝達される。
【0014】
前記入力レバー10は、回動可能に設けられた出力軸12を介して出力レバー13と連結されている。出力軸12には、ウォームギア14が設けられており、このウォームギア14は、減速機構を備えた電動モータ15のモータ出力軸16と噛み合っている。
【0015】
前記出力レバー13には、出力レバージョイント17を介してプッシュプル式のコントロールケーブル18が接続されている。コントロールケーブル18は、自動変速機19の制御アーム20と接続されている。すなわち、コントロールケーブル18により出力レバー13の回転運動が直線運動に変換され、ドライバの操作力と電動モータ15の駆動力との合成力が自動変速機19の制御アーム20に伝達される。
【0016】
前記出力軸12には、入力レバー10とウォームギア14との間に生じるゆがみ(ねじれ)を検出するトルクセンサ(入力操作力検出手段)21が設けられている。このトルクセンサ21により検出された操作力信号は、図外の増幅アンプにより信号増幅され、コントロールユニット22にワイヤハーネス23を介して伝達される。トルクセンサ21の検出信号により、セレクトレバー操作における操作力が推定可能となる。
【0017】
前記ウォームギア14には、位置検出のための接触子24が取り付け固定されている。この接触子24がウォームギア14と一体に回動し、図示しない基板に印刷されたカーボン抵抗と電気的に接触することにより、セレクトレバー2のストローク角度に応じた電圧信号をコントロールユニット22に出力する。この接触子24とカーボン抵抗とからポテンショメータ(広い意味でセレクト位置検出手段であり、狭い意味で操作位置検出手段である)25が構成されている。
【0018】
このポテンショメータ25は、セレクトレバー2がPレンジ位置で停止しているときの角度及びLレンジ位置を基点角度として、セレクトレバー2のストローク角度を随時検出する。
【0019】
前記コントロールユニット22は、検出されたセレクトレバー2のストローク角度と、ドライバの操作力とに基づいて目標アシスト力を設定し、電動モータ15の出力をPWM制御する。
図3は自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットのブロック図である。
前記セレクト機構部1において、レンジ切り換え操作されたセレクトレバー2のストローク変化は、コントロールケーブル8を介してアシストアクチュエータ9のポテンショメータ25へ入力される。ポテンショメータ25では、セレクトレバー2の操作量に応じたストローク角度が検出され、ストローク角度信号としてコントロールユニット22へ出力される。
【0020】
また、セレクトレバー2の操作力は、コントロールケーブル8を介してアシストアクチュエータ9のトルクセンサ21へ入力される。トルクセンサ21では、セレクトレバー2の操作力が検出され、操作力信号としてコントロールユニット22へ出力される。
【0021】
ポジション・操作開始・方向判別ブロック33では、ストローク角度信号に基づいて、現在のセレクトレバー2のストローク角度を判定する。また、ストローク角度信号とストローク角度信号の微分値および操作力信号から、セレクトレバー2の操作開始、操作方向、操作速度および操作加速度を判別し、目標テーブルブロック34へ出力する。
【0022】
目標テーブルブロック34では、ストローク角度信号と、ポジション・操作開始・方向判別ブロック33によって求められたセレクトレバー2の操作方向等から、セレクトレバー2のストローク角度に応じた目標操作反力が算出され、加算器35へ出力される。
【0023】
ここで、セレクトレバー2のストローク角度によって、目標操作反力は異なるため、目標テーブルブロック34には、ストローク角度毎の目標操作反力がテーブル化して格納されている。
加算器35は、操作力信号と目標操作反力の偏差を算出し、算出結果をFB制御部36へ出力する。
【0024】
FB制御部36は、操作力信号と目標操作反力の偏差に比例ゲインを乗じる(比例出力)。さらに、操作力信号と目標操作反力の偏差に積分ゲインを乗じる(積分出力)。そして、比例出力と積分出力の和であるフィードバックアシスト力をモータ駆動制御部39へ出力する。
【0025】
停止判断部37は、入力される車速信号から車両の停止を判断し、判断結果を停止切換制御部38へ出力する。車速信号は車両に設けられる検出器または車両装置から得られるものとする。例として、ブレーキコントローラやボディコントローラを挙げておく。
【0026】
停止切換制御部38は、車両が停止されている場合であって、セレクト切換え操作がない場合に、Dレンジ位置からNレンジ位置への自動的な切換えを行う駆動指令値を出力する。なお、車両から方向指示情報を入力し、方向指示操作がある際には、切換えを行わないようにする。方向指示情報は、車両に設けられる検出器または車両装置から得られるものとする。例として、ボディコントローラを挙げておく。
【0027】
モータ駆動制御部(アシスト力制御部に相当)39は、目標アシスト力に基づいて、電動モータ15を駆動する。
【0028】
次に、作用を説明する。
[アシスト制御作用について]
本実施例1の自動変速機のセレクトアシスト装置では、ポテンショメータ25でセレクトレバーの操作位置を読み込むことにより、ディテント特性、つまり操作位置に対して必要な操作トルクの特性を設定し、これを目標トルクとする。
【0029】
次に、トルクセンサ21により、セレクトレバー2に入力される操作トルクを検出し、目標トルクと検出トルクの偏差を補うようにアシスト力を演算してアシストアクチュエータ9を作動させる。
【0030】
これにより、操作は軽い操作で行うことができるようになり、より理想的な操作フィーリングに近いものが得られる。
また、アシストアクチュエータ9によりアシスト力が付加されるため、セレクトレバーの短縮化、セレクト部の小型化を行うことができる。
【0031】
これに加えて、セレクトレバー2と自動変速機19は、従来と同様にケーブルで接続されていることになり、フェール時には、操作として重くなるものの、セレクトレバーの操作によりレンジ位置の切り換えを行うことができる。
【0032】
[停止時自動切換作用]
図4に示すのは、実施例1の自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットで実行される停止時切換処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0033】
ステップS11では、ND切替フラグが0でないかどうかを判断し、0でないならばステップS16へ進み、0であるならばステップS12へ進む。
【0034】
ステップS12では、走行状態からの停止を検知したかどうかを判断し、停止を検知したならばステップS14へ進み、停止を検知しないならばステップS13へ進む。
【0035】
ステップS13では、通常のアシスト処理を行う。
【0036】
ステップS14では、Dレンジ位置で且つ車両のウインカーがオフの状態であるかどうかを判断し、条件成立ならばステップS15へ進み、条件不成立ならばステップS13へ進む。
【0037】
ステップS15では、ND切替フラグを1にセットする。
【0038】
ステップS16では、ND自動シフト処理を行う。
【0039】
[ND自動シフト処理]
図5に示すのは、図4のフローチャートのステップS16のND自動シフト処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0040】
ステップS21では、ND自動切替フラグが1にセットされているかどうかを判断し、1ならばステップS25へ進み、1でないならばステップS22へ進む。
【0041】
ステップS22では、ND自動切替フラグが2にセットされているかどうかを判断し、2ならばステップS23へ進み、2でないならば処理を終了する。
【0042】
ステップS23では、アシストアクチュエータの制御値としてのPWMデューティ比を、シフト目標位置をNレンジ位置、現在値をDレンジ位置として、目標位置までの駆動指令値を演算する。
【0043】
ステップS24では、ステップS23で演算した駆動指令値としてのPWMデューティ比にさらにゲインKaを乗じて、出力する駆動指令値を演算する。
【0044】
ステップS25では、現在の作動位置がNレンジ位置かどうかを判断し、Nレンジ位置ならばステップS27へ進み、Nレンジ位置でないならばステップS26へ進む。
【0045】
ステップS26では、現在の作動位置がDレンジ位置かどうかを判断し、Dレンジ位置ならばステップS28へ進み、Dレンジ位置でないならば処理を終了する。
【0046】
ステップS27では、レンジ切替先をNレンジ位置にする。
【0047】
ステップS28では、レンジ切替先をNレンジ位置にする。
【0048】
ステップS29では、ND自動切替フラグを2にセットする。
【0049】
[停止時自動切換作用]
実施例1の自動変速機のセレクトアシスト装置を搭載した車両が、一時的な目的地などに到着し、停車すると、停止判断部37が、車速から車両の停止を検知する(ステップS12)。すると、次に、現在の作動位置がDレンジ位置で、且つウインカーがオフであるかを判断する(ステップS14)。この判断により、もし、車両が交差点で左折、または右折待ちの状態で、Nレンジへの切換えが成されないようにして、スムーズな車両走行ができるようにする。
【0050】
車両がDレンジ位置で、且つウインカーがオフならば、ND自動切替フラグを1にセットし、ND自動シフト処理を行う(ステップS15→S16)。
ND自動シフト処理では、Dレンジ位置が維持されていることをさらに判断し(ステップS26)、ND自動切替フラグを2にセット(ステップS29)する。
【0051】
このフラグが2にセットされたことにより、Dレンジ位置からNレンジ位置への自動的な駆動指令値が演算され(ステップS23,S24)、出力される。
例えば、ステップS23では、通常アシストの際に必要な駆動指令値を演算し、ステップS24では、それにゲインを乗じて自動的に切換えるための駆動指令値を演算する。これらの処理は、停止切換制御部38により行われ、モータ駆動制御部39へ駆動指令値を出力することになる。
【0052】
これによって、車両が停車中にDレンジ位置からNレンジ位置へドライバの操作なく、自動的にレンジ位置を切換える。
よって、クリープトルクの伝達がないNレンジ位置にすることによりエンジン負荷が減少する(エンジン負荷が減少すると燃料噴射量が減少する)とともに、通常エンジンのアイドル回転目標値がDレンジよりNレンジが低い設定になっているため、車両の燃費向上に寄与することができる。
【0053】
なお、セレクトレバー2への操作により、アシスト制御起動の際には、この停止時切替処理を解除すればよい。
【0054】
また、ドライバがNレンジ位置へ切換えることを意識する必要がないため、燃費向上作用を、ドライバへの運転負荷を増加させることなく行うことができる。
【0055】
次に効果を説明する。
本実施の形態の自動変速機のセレクトアシスト装置にあっては、次に列挙する効果を得ることができる。
【0056】
(1)セレクトレバー2は従来のセレクトレバーよりも車室内空間への突出量が150mm程度少なく、さらに、セレクトレバー2と制御アーム20はコントロールケーブル8,18を介して連結されているため、従来品よりも車室内レイアウトの自由度が大きく、インストルメントパネル等、車室内の任意箇所にセレクトレバー2を設定できる。
また、セレクトレバー2と制御アーム20がコントロールケーブル8,18によって機械的に連結されているため、アシストアクチュエータ9やコントロールユニット22がフェールした場合でも、ドライバは手動でレンジ位置を切り換えることができる。
【0057】
また、作動位置を検出する位置センサ62と、車両が停止したことを判断する停止判断部37を備え、コントロールユニット22は、作動位置がDレンジ位置で、且つ車両が停止した場合に、セレクトレバー2の操作入力無しで、Dレンジ位置からNレンジ位置へ切換えを行う停止切換制御部38を備えたため、自動的なNレンジ位置への切換えにより停車時の燃費を向上させることができる。
【実施例2】
【0058】
実施例2は、スイッチを設けて、Nレンジ位置への切換許可とDレンジ位置への復帰を行うようにした例である。
構成を説明する。
図6は実施例2の自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットの制御ブロック図である。
スイッチ40は、ドライバからの操作入力を検知し、検知結果を停止切換制御部38へ出力する。
その他構成は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
次に作用を説明する。
[停止時自動切換作用]
図7に示すのは、実施例2の自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットで実行される停止時切換処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。なお、図4と同様の処理については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0060】
ステップS31では、スイッチ40による入力があったかどうかを判断し、入力があるならばステップS32へ進み、入力がないならばステップS13へ進む。
【0061】
ステップS32では、車両が停止中かどうかを判断し、停止中ならばステップS15へ進み、停止中でないならばステップS13へ進む。
【0062】
ステップS33では、ND自動シフト処理を行う。
【0063】
[ND自動シフト処理]
図8に示すのは、図7のフローチャートのステップS33のND自動シフト処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。なお、図5と同様の処理については、同じ符号を付し説明を省略する。
【0064】
ステップS41では、レンジ切替先をDに設定する。
また、実施例2においては、ステップS23、S24で処理されるシフト目標位置と現在位置は、現在位置をDレンジ位置とし、目標位置をNレンジ位置とする場合と、現在位置をNレンジ位置とし、目標位置をDレンジ位置とする場合があるものとする。
【0065】
[停止時自動切換作用]
実施例2では、車両が停止し、Dレンジ位置の場合に、スイッチ操作がされた(ステップS31)ならば、Nレンジ位置への自動的な切換えを行う。
そのため、ドライバの意思で、切換えが可能な場合と切換えが不可な場合を選択するため、ドライバの意思が反映されるようにして、ドライバが違和感を感じないようにできる。
【0066】
また、Nレンジ位置の場合に、スイッチ操作がされた(ステップS31)ならば、Dレンジ位置への自動的な復帰となる切換えを行う(ステップS25→S41)。そのため、ドライバがDレンジ位置に変更したい場合には、セレクト操作より手軽なスイッチ40の操作で、Dレンジ位置へ復帰するようにし、より使い勝手をよくできる。
【0067】
効果を説明する。実施例2の自動変速機のセレクトアシスト装置にあっては、上記(1)の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2)スイッチ40を設けて、セレクト操作をすることなくNレンジ位置とDレンジ位置を交互に切換えるため、より使い勝手のよい自動変速機のセレクトアシスト装置にすることができる。
(他の実施の形態)
【0068】
図9は実施例1の自動変速機のセレクトアシスト装置の他の例の構成を示す側面図である。
実施例1の他の例では、セレクト部100、アシストアクチュエータ200、コントローラ22、コントロールケーブル400、自動変速機19を主要な構成としている。
セレクト部100は、セレクトレバー2、セレクトノブ4、第1回転部130(第1連結部材に相当する)、チェック機構部1400、ウォームホイール160、第2回転部170(第2連結部材に相当する)、ケーブル取付レバー180、支点軸190からなる。
【0069】
セレクトレバー2は、運転席から操作可能な位置に設けられ、セレクトレバー2の先端には、セレクト操作時にドライバが把持するためのセレクトノブ4が付設されている。セレクトレバー2は、第1回転部130に取り付けられ、第1回転部130は支点軸190を中心に回動操作される。結果的にセレクトレバー2は、回動操作可能となる。セレクトレバー2は、従来の一般的なセレクトレバーよりも250mm短い100mmに設定されている。
【0070】
さらに、支点軸190には、回転自在に第2回転部170を設ける。第2回転部170は、第1回転部130と同軸となるが、相対回転可能な構造にする。
第2回転部170の一端側には、ウォームホイール160を設け、このウォームホイールと反対側には、ケーブル取付レバー180を設ける。このケーブル取付レバー180にコントロールケーブル400の端部を取り付け、反対側の端部を自動変速機19の制御アーム20に取り付ける。
同じ回転軸(支点軸190)に対して相対回転が可能な第1回転部130と第2回転部170において、第1回転部130には、円周方向に対して所定の長さである遊び溝131を設ける。第2回転部170には、遊び溝131内に位置するよう突起171を設ける。これにより、第1回転部130と第2回転部170の相対回転は遊び溝131の間を突起171が移動できる範囲となる。(第1回転部130の遊び溝131と第2回転部170の突起171で相対変位許容連結機構である遊び連結機構を構成する)
【0071】
アシストアクチュエータ200は電動モータであり、その出力軸には、ウォーム210を設けて、ウォームホイール160と係合させてウォームギアを構成し、アシストアクチュエータ200により第2回転部170を回転駆動させる構造にする。
さらに、支点軸190の部分には、固定部材に対する第1回転部130のストローク角度を検出する位置センサと、固定部材に対する第2回転部170のストローク角度を検出する位置センサとからなる位置センサ60を設ける。
つまり、位置センサ60は、操作位置の検出値と作動位置の検出値の差分を相対変位量として出力する。なお、作動位置は別に出力するようにして、シフトロックソレノイド36の駆動制御に用いるようにする。
【0072】
さらに、第1回転部130のセレクトレバー2の反対側には、チェック機構部140を設けている。チェック機構部1400は、第1回転部130から外周側に突出させたピン141と、ピン141に係合する溝部142からなる。ピン141は詳細には図示しないが内部から先端を突出方向にバネで付勢する構造である。このピン141の先端を溝部142に係合させる。溝部142は、5つのレンジ(P・R・N・D・L)に対応した谷部142aを形成するよう波形状にしたものである(図には、省略して4つの溝を示している)。このチェック機構部1400により、選択されたセレクト位置が保持されるようにし、操作を伴わない例えば車両の振動等に起因する意図しないレンジセレクトの入力を防止する。
【0073】
コントロールユニット22(アシスト制御手段に該当する)は、検出された相対位置に基づいて、アシストアクチュエータ200の指令値を設定し、電動モータの出力デューティ比をPWM制御する。
【0074】
この実施例の他の例では、第1回転部130と第2回転部170が、許容遊び量を持ちつつ係合し、セレクトレバー2の操作による第1回転部130の動きにアシストアクチュエータ200による第2回転部170の動きを追従させることにより、通常の状態では、シフトバイワイヤと同様の動作を行う。
さらに、フェール時には、セレクトレバー2を、非連結状態の位置範囲を超えて操作すれば、その操作方向において、可動量つまり遊び量がなくなり、連結状態となって、コントロールケーブル400を介して、その操作力によって、自動変速機19の制御アーム20を操作することができる。
このような自動変速機のセレクトアシスト装置であってもよい。
以上、本発明の実施の形態を実施例1、実施例2に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成はこれら実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例1では、セレクトレバー2の入力操作力を検出する入力操作力検出手段としてトルクセンサ21を用いたが、電動モータ15への供給電流値や電動モータ15の回転数等から入力操作力を推定する構成としてもよい。
【0075】
実施例1では、セレクトレバー2と自動変速機19の制御アーム20をコントロールケーブル8,18で連結する構成を示したが、セレクトレバー2の操作力を制御アーム20に伝える操作力伝達手段は任意であり、ロッドやリンケージを用いた構成としてもよい。
セレクトレバー2の形状や大きさは任意であり、指先で操作可能なスイッチ形状としてもよい。また、目標操作反力特性も、セレクトレバー2の形状に応じて良好な操作特性が得られる特性に変更する。
【0076】
実施例では、車両の停止を車速から判断したが、さらにアクセルオフやエンジン回転数などの判断を入れるようにしてもよい。
Dレンジ位置は、複数段階で変速範囲が異なる複数のレンジ位置からなるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1の自動変速機の構成を示す側面図である。
【図2】アシストアクチュエータの細部構造を示す要部斜視図である。
【図3】自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットのブロック図である。
【図4】実施例1の自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットで実行される停止時切換処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートのステップS16のND自動シフト処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例2の自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットの制御ブロック図である。
【図7】実施例2の自動変速機のセレクトアシスト装置のコントロールユニットで実行される停止時切換処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートのステップS33のND自動シフト処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施例1の自動変速機のセレクトアシスト装置の他の例の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 セレクト機構部
2 セレクトレバー
3 センタクラスタ
4 セレクトノブ
5 支点軸
7 セレクトレバージョイント
8 コントロールケーブル
9 アシストアクチュエータ
10 入力レバー
11 入力レバージョイント
12 出力軸
13 出力レバー
14 ウォームギア
15 電動モータ
16 モータ出力軸
17 出力レバージョイント
18 コントロールケーブル
19 自動変速機
20 制御アーム
21 トルクセンサ
22 コントロールユニット
23 ワイヤハーネス
24 接触子
25 ポテンショメータ
33 ポジション・操作開始・方向判別ブロック
34 目標テーブルブロック
35 加算器
36 FB制御部
37 停止判断部
38 停止切換制御部
39 モータ駆動制御部
40 スイッチ
100 セレクト部
130 第1回転部
131 遊び溝
140 チェック機構部
141 ピン
142 溝部
160 ウォームホイール
170 第2回転部
171 突起
180 ケーブル取付レバー
190 支点軸
200 アシストアクチュエータ
210 ウォーム
400 コントロールケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレクトレバーと自動変速機のセレクト位置切換装置とがセレクト操作力伝達系により連結され、前記セレクト操作力伝達系にはドライバによるセレクト操作力をアシストするアシストアクチュエータが設けられ、アシストアクチュエータに対してアシスト力を変化させる制御指令を出力するアシスト制御手段を備える自動変速機のセレクトアシスト装置において、
セレクト位置を検出するセレクト位置検出手段と、
車両が停止したことを判断する停止判断手段と、
を備え、
前記アシスト制御手段は、作動位置がDレンジ位置で、且つ車両が停止した場合に、セレクトレバーの操作入力無しで、Dレンジ位置からNレンジ位置へ切換えを行う停止切換制御手段を備えた、
ことを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−309353(P2007−309353A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136537(P2006−136537)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】