説明

自動変速機制御装置

【課題】自動変速機が必要なタイミングで適正な液圧を摩擦要素に加え、部品点数が少なく小型の自動変速機制御装置を提供する。
【解決手段】電磁弁20、22は前進油路210から分岐した油路220、222のライン圧を制御してクラッチ4、クラッチ6に加える。高圧選択弁30、32は、摩擦要素に加わる油圧を制御する電磁弁20、22を含む複数の電磁弁の出力圧から最大圧を選択し油路234に加える。この最大圧は、油路234から分岐した最大圧油路236によりライン圧制御弁70に導入されている。ポンプ50は可変容量のベーンポンプである。ライン圧制御弁70は、ポンプ50の吐出圧と高圧選択弁30、32が選択した最大圧とを受圧し、ポンプ50の吐出量を可変制御する容量制御ピストン64に加える制御圧とポンププ50の吐出圧とを調圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速機構を液圧制御する自動変速機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機の変速機構を構成するクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素に加わる油圧を制御することにより、摩擦要素を係合または解放して変速段を切り替える自動変速機制御装置が知られている(例えば、特許文献1から3参照。)。
特許文献1では、入力圧調整バルブとしての電磁弁によりプライマリバルブの入力圧を調圧し、プライマリバルブが生成するライン圧を制御している。このように、特許文献1では、ライン圧を生成するためにプライマリバルブとプライマリバルブを制御する専用の電磁弁とが必要であるから、ライン圧を生成するための部品点数が増加し、製造コストの上昇および体格の大型化という問題が生じる。
【0003】
特許文献2では、摩擦要素にそれぞれ加わる印加圧を電磁弁により制御し、これら電磁弁の出力圧のうちから選択した最高の出力圧を、ライン圧を生成するライン圧制御弁の指令圧にしている。この構成によれば、ライン圧制御弁が生成するライン圧を制御するための専用の電磁弁が不要になる。
しかしながら、特許文献2のように、ポンプが吐出する作動流体の吐出量を調整して指令圧に応じたライン圧を生成するライン圧制御弁を使用する構成では、内燃機関の高回転時においてポンプから吐出される多量の作動流体を処理するために、ライン圧制御弁が大型化するという問題がある。さらに、多量の作動流体をライン圧制御弁に導入するために、ポンプからライン圧制御弁に作動油を導入する油路面積が大きくなり、ライン圧制御弁およびその周囲の油路部材が大型化するという問題がある。
【0004】
また、特許文献1、2では、ポンプの吐出量はエンジン回転数によってほぼ決定されるので、エンジン回転数によっては、自動変速機の要求流量に対してポンプの吐出量が不足または過剰になることがある。その結果、自動変速機に必要とされるタイミングで適正な液圧を摩擦要素に加えることができないという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献3のように、可変容量のベーンポンプを使用し、エンジン回転数に関わらずポンプの吐出量を可変に制御することが考えられる。
しかしながら、特許文献3では、可変容量のベーンポンプの偏心量を増減してベーンポンプの吐出量を可変制御するために電磁弁および減圧弁等からなる油圧アクチュエータが必要になるので、部品点数が増加し製造コストが増加するという問題が生じる。また、可変容量のベーンポンプの偏心量を制御する電磁弁と、自動変速機の摩擦要素に加わる印加電圧を制御する電磁弁との応答性のばらつきにより、可変容量のベーンポンプの偏心量を制御しても、自動変速機に必要とされるタイミングで適正な油量を供給することができないことがある。その結果、自動変速機に必要とされるタイミングで適正な液圧を摩擦要素に加えることができないという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−254420号公報
【特許文献2】特開2005−127435号公報
【特許文献1】特開平5−312250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、自動変速機が必要なタイミングで適正な液圧を摩擦要素に加え、部品点数が少なく小型の自動変速機制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1から9に記載の発明によると、ポンプの吐出圧に基づいて複数の摩擦要素に加わる液圧を制御する複数の電磁制御手段の出力圧から最大圧が選択される。そして、調圧手段は、選択された最大圧に応じて、ポンプから吐出される作動流体の吐出圧ならびにポンプの吐出量を可変にする可変手段を液圧駆動する。
この構成によれば、ポンプの吐出圧を制御する調圧手段に指令圧を加える専用の電磁弁が不要である。また、ポンプの吐出量を可変にする可変手段に加える液圧を調圧手段が制御するので、ポンプの吐出量を可変制御するための専用の電磁弁が不要である。これにより、摩擦要素に加わる液圧であるライン圧を生成する液圧回路の部品点数が減少するので、自動変速機制御装置が小型化し、製造コストが低下する。
【0009】
また、複数の電磁制御手段の出力圧から選択された最大圧に応じてポンプの吐出量が可変に制御されるので、ポンプの吐出圧を制御する調圧手段が処理する作動流体量は減少する。これにより、調圧手段および調圧手段に接続する流路を形成する流路部材を小型化できる。
また、ライン圧と、ポンプの吐出量を可変にする可変手段に加える液圧とを同じ調圧手段が制御するので、摩擦要素の係合および解放等の自動変速機で必要とされる作動流体量に応じて適正なタイミングでポンプの吐出量を増減できる。これにより、自動変速機に必要とされるタイミングで適正な液圧を摩擦要素に加えることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明によると、電磁制御手段の出力圧を制御する液圧制御手段は、変速段の切り替えを開始するときに電磁制御手段の出力圧が一時的に上昇するように制御する。液圧制御手段が電磁制御手段の出力圧を一時的に上昇するように制御すると、電磁制御手段の出力圧から選択される最大圧が速やかに上昇し、最大圧の上昇に応じてポンプからの吐出量も増加する。これにより、係合時間を短縮する所謂「クラッチ充填作動」を行う変速段の切替開始時において、摩擦要素に加わる液圧を適正なタイミングで速やかに上昇できる。これにより、変速段の切替時間を短縮できる。
【0011】
請求項5に記載の発明によると、液圧制御手段は、ロックアップクラッチの係合を開始するとき、電磁制御手段の出力圧が一時的に上昇するように制御するので、前述した摩擦要素の係合時と同様に、ロックアップクラッチが速やかに係合する。
請求項6に記載の発明によると、液圧制御手段は、作動流体の温度が所定温度よりも低いとき、電磁制御手段の出力圧が上昇するように制御する。液圧制御手段が電磁制御手段の出力圧を上昇するように制御すると、電磁制御手段の出力圧から選択される最大圧が上昇し、最大圧の上昇に応じてポンプからの吐出量も増加する。これにより、低温のために作動流体の粘性が高い場合に、摩擦要素に加わる液圧を速やかに上昇できる。
【0012】
請求項7に記載の発明によると、液圧制御手段は、エンジン回転数が所定回転数よりも低いとき、電磁制御手段の出力圧が上昇するように制御する。液圧制御手段が電磁制御手段の出力圧を上昇するように制御すると、電磁制御手段の出力圧から選択される最大圧が上昇し、最大圧の上昇に応じてポンプからの吐出量も増加する。これにより、エンジン回転数が所定回転数よりも低いために内燃機関により駆動されるポンプの吐出量が減少する場合に、摩擦要素に加わる液圧を速やかに上昇できる。
【0013】
請求項8に記載の発明によると、ポンプの吐出量を可変にする可変手段の作動速度を作動低下手段で低下させることにより、ポンプの吐出量が急激に増減することを防止する。
請求項9に記載の発明によると、ポンプが作動流体を吐出する吐出回路にリリーフ弁が設置されている。ポンプの吐出圧が所定圧を超えるときにリリーフ弁が作動するので、吐出回路の圧力が所定圧を超えることを防止できる。これにより、ポンプの吐出圧が加わる回路部品の損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の自動変速機制御装置を図1に示す。リバースクラッチ(Rev)2、クラッチ(CL)4、クラッチ(CL)6、および図示しない他のクラッチ、ブレーキは、油圧により係合または解放されて変速段を切り替える摩擦要素である。
【0015】
(自動変速機制御装置10)
マニュアルバルブ12のスプール14は、車両の運転者等がシフトレバー16で走行レンジを選択することにより移動し、ライン圧油路200と前進油路210、あるいはライン圧油路200と後進油路212との連通を切り替える。ライン圧油路200には、ポンプ50で加圧された作動油が吐出される。そして、ライン圧油路200から分岐した出力油路202により、ライン圧制御弁70にポンプ50の吐出圧が導入されている。油路220、222は、リバースクラッチ2を除き前進レンジの変速段に応じて係合する摩擦要素毎に前進油路210から分岐している。後進油路212は、リバースクラッチ2に接続している。
【0016】
シフトレバー16で前進(D)レンジが選択されると、ライン圧油路200と前進油路210とが連通し、シフトレバー16で後進(R)レンジが選択されると、ライン圧油路200と後進油路212とが連通する。後進油路212に作動油が供給されると、リバースシフト弁34が作動し油路234と油路240とが連通することにより、ライン圧制御弁70のランド74のスプリング82側の端面に油圧が加わる。すると、前進レンジが選択され油路234と油路240とが連通しないときよりも、ライン圧制御弁70のスプール72はスプリング82が荷重を加える方向に移動し、ライン圧油路200と連通するライン圧制御弁70の出力油路202の油圧が上昇する。その結果、後進レンジが選択されているときのライン圧油路200のライン圧は、前進レンジが選択されているときのライン圧油路200のライン圧に比べて上昇する。つまり、シフトレバー16で後進レンジが選択されリバースクラッチ2に加わる油圧は、シフトレバー16で前進レンジが選択されクラッチ4、6等に加わる油圧よりも高くなる。
【0017】
電磁制御手段としての電磁弁20、22は前進油路210から分岐した油路220、222のライン圧を制御し、電磁弁20、22の出力圧を通路224、226からクラッチ4、クラッチ6に加える。電磁弁20、22は、デューティ比または駆動電流の電流値により制御され、クラッチ4、クラッチ6に加える油圧を制御する。ダンパ24、26は、通路224、226の圧力脈動を低減するとともに、変速段の切替時におけるクラッチ4、クラッチ6のクラッチ室の圧力のオーバーシュートおよびアンダーシュートを防止する緩衝手段として機能する。
【0018】
選択手段としての高圧選択弁32は、図示しない他のクラッチにおいて高圧選択弁で選択された油圧が加わる油路232と、電磁弁22で制御された油圧をクラッチ6に加える油路226とのうち高圧側の油圧を選択し油路230に加える。選択手段としての高圧選択弁30は、油路230と、電磁弁20で制御された油圧をクラッチ4に加える油路224とのうち高圧側の油圧を選択し油路234に加える。つまり、油路234の油圧は、リバースクラッチ2を除く他の摩擦要素に加わる電磁弁20、22および図示しない他の電磁弁の出力圧から選択された最大圧となっている。この最大圧は、油路234から分岐した最大圧油路236によりライン圧制御弁70に導入されている。
【0019】
液圧制御手段としての電子制御装置(Electronic Control Unit;ECU)40は、エンジン運転状態に基づいて電磁弁20、22を制御し、電磁弁20、22がクラッチ4、クラッチ6に加える油圧を制御する。
ポンプ50は可変容量式のベーンポンプであり、カムリング52の内部にロータ54が回転自在に収容されている。ベーン56は、ロータ54に放射状に設置されており、ロータ54の回転にともない半径方向に往復移動する。カムリング52は、ロータ54に対し支持軸58を軸として偏心可能な構成となっている。ロータ54に対してカムリング52が偏心する偏心量に応じて、ポンプ50の加圧容量、つまりポンプ50の吐出量が増減する。
【0020】
スプリング62は、カムリング52の一方の周方向に向けてカムリング52に設けた突部60に荷重を加える。可変手段としての容量制御ピストン64には、制御油路204を通りライン圧制御弁70で制御された制御圧が加わる。容量制御ピストン64は、制御油路204の制御圧に応じてスプリング62の荷重と反対方向に突部60を押す。カムリング52は、スプリング62と容量制御ピストン64とから受ける力が釣り合う位置まで支持軸58を軸としてロータ54に対して偏心する。制御油路204に設けた作動低下手段としての絞り66は、ライン圧制御弁70から容量制御ピストン64に加わる制御圧が急激に変化することを防止し、容量制御ピストン64の作動速度を低下する。
【0021】
内燃機関の回転にともないロータ54が回転すると、ロータ54に対するカムリング52の偏心量に応じて各ベーン56が半径方向に往復移動し、ドレインから吸入された作動油が加圧されてライン圧油路200に吐出される。ポンプ50の吐出量は、ロータ54に対するカムリング52の偏心量により増減する。ロータ54に対するカムリング52の偏心量が大きいほど、つまりライン圧制御弁70から制御油路204を通して容量制御ピストン64が受ける油圧が高いほどポンプ50の吐出量は増加する。
【0022】
調圧手段としてのライン圧制御弁70のスプール72は、スプリング82の荷重と、出力油路202、最大圧油路236、後進油路240の油圧からランド74、76、78、80が受ける力との釣り合いにより移動し、ライン圧油路200および制御油路204の油圧を制御する。ライン圧油路200から出力油路202を介してポンプ50の吐出圧を受けるランド78の受圧面と、後進レンジ以外の摩擦要素に加わる油圧を制御する電磁弁20、22等の出力圧から選択された最大圧が加わる最大圧油路236から油圧を受けるランド76の受圧面とは互いに反対方向に油圧を受ける。
【0023】
リリーフ弁84は、ポンプ50から作動油が吐出される吐出回路であるライン圧油路200に設置されている。リリーフ弁84は、ライン圧油路200の油圧が所定圧以上になると開弁してライン圧油路200の油圧を低下する。これにより、後述する変速段の切替制御等において、ライン圧油路200の油圧が急激に上昇することを防止する。
【0024】
図2に示すロックアップクラッチ90は、エンジン側の出力軸と自動変速機側の入力軸とを連結または連結を解除するクラッチである。ロックアップクラッチ90は、連結時にトルクコンバータ92を迂回してエンジンから自動変速機に動力を伝達する。ロックアップリレー弁94は、電磁弁96の指令圧に基づいてロックアップクラッチ90の係合または解放を切り替える。ロックアップクラッチ制御弁98は、ロックアップクラッチ90に加える油圧を制御する。
【0025】
(変速段の切替制御)
次に、変速段を切り替えるときのクラッチ圧の変化について説明する。図3では、例えば変速段を切り替えるときに解放状態にあるクラッチ100を係合するときのクラッチ圧の変化について説明する。クラッチ100は、図1に示すクラッチ4、6の構成を模式的に示したものである。図3において、実線300はクラッチ100のクラッチ室102の油圧を示している。点線302は、クラッチ100に加わる油圧を制御する電磁弁20または電磁弁22にECU40から送出される制御信号により電磁弁20、22からクラッチ室102に加わる出力圧が設定され、設定された出力圧に応じてクラッチ室102が達する目標油圧を示している。
【0026】
(ステップ1)
変速を開始すると、ECU40は、電磁弁の出力圧が一時的に上昇するように電磁弁に制御信号を送出し、点線302が示すようにクラッチ室102の目標油圧を上昇させる。これにより、電磁弁20、22およびその他の電磁弁の出力圧から選択された最大圧が上昇するので、ライン圧制御弁70から容量制御ピストン64に加わる制御圧が上昇し、ポンプ50の吐出量が増加する。その結果、クラッチ室102に供給される作動油量が増加しクラッチ室102に速やかに作動油が充填される。クラッチ室102に作動油が充填されクラッチ室102の油圧が上昇すると、クラッチピストン104が移動を開始する。
【0027】
クラッチピストン104が移動しクラッチ板106に接近すると、ECU40は出力圧が低下するように電磁弁を制御し、クラッチ室102の目標油圧を低下させる。これは、クラッチ板106の近傍まで移動したクラッチピストン104がクラッチ板106に急激に衝突しないようにするためである。目標油圧を低下することでクラッチ室102に供給される油圧が低下し、クラッチピストン104はストローク速度を落としてクラッチ板106に緩やかに衝突する。ステップ1とステップ2との境界付近で、クラッチピストン104はクラッチ板106に緩やかに衝突して係止される。クラッチピストン104がクラッチ板106に係止されると、クラッチ室102が密封状態になりクラッチ室102の圧力が急激に上昇する恐れがある。そこで、本実施形態では、クラッチ室102に接続する油路224、226にそれぞれダンパ24、26を設置し、クラッチ室102の圧力のオーバーシュートを防止している。
【0028】
(ステップ2)
クラッチピストン104がクラッチ板106に係止されると、クラッチ板同士を完全係合するために、ECU40は電磁弁の出力圧が上昇するように制御し、クラッチピストン104に加わる油圧が徐々に増大する。そして、クラッチピストン104に加わる油圧はクラッチ板同士が滑らない限界近傍の油圧に達し、変速段の切替が終了する。
【0029】
変速段の切替が終了しステップ2が終了すると、ECU40は係合したクラッチ板同士が滑らないように電磁弁の出力圧を所定の設定値まで上昇させる。
この変速段の切替において、係合ショックを低減しつつ速やかにクラッチを係合させる制御は、図2に示すロックアップクラッチ90を係合させるときにも同様の手順で実施される。つまり、ロックアップクラッチ90が係合を開始するとき、ECU40は、電磁弁20、22の出力圧が一時的に上昇するように制御し、最大圧を上昇させてポンプ50の吐出量を増加することにより、ロックアップクラッチ90のクラッチ室に速やかに作動油を充填する。これにより、ロックアップクラッチ90は速やかに係合する。
【0030】
以上説明した第1実施形態では、摩擦要素に加わる油圧を制御する電磁弁20、22およびその他の電磁弁の出力圧から最大圧を選択し、選択された最大圧に応じてライン圧制御弁70がポンプ50の吐出圧を制御する。これにより、専用の電磁弁からライン圧制御弁70が指令圧を受けてポンプ50の吐出圧を制御する構成に比べて部品点数が減少するので、自動変速機制御装置10が小型化し、製造コストが低下する。
【0031】
また、可変容量のポンプ50の偏心量を増減しポンプ50の吐出量を制御する容量制御ピストン64に加える油圧を最大圧に応じてライン圧制御弁70が制御するので、ポンプ50の偏心量を電磁弁で増減する構成に比べ、部品点数が減少する。
また、摩擦要素に加わる油圧を制御する電磁弁20、22およびその他の電磁弁の出力圧から選択された最大圧に応じてポンプ50の吐出量が可変に制御されるので、ポンプ50の吐出圧を制御するライン圧制御弁70が処理する作動油量は少ない。これにより、ライン圧制御弁70およびライン圧制御弁70に接続する油路を形成する油路部材を小型化できる。
【0032】
また、一つのライン圧制御弁70がポンプ50の吐出圧と、ポンプ50の吐出量を制御する容量制御ピストン64に加える油圧とを制御するので、図3に基づいて説明した変速段の係合制御およびロックアップクラッチの係合制御等において、自動変速機が必要とする作動油量を適正なタイミングで供給できる。例えば、変速段の係合を開始するときに一時的に電磁弁の出力圧を上昇してクラッチ室102に充填する作動油量を増加するときに、エンジン回転数が低い、または低温により作動油の粘性が高いために容量一定のポンプであれば吐出量が減少する場合でも、ポンプ50の偏心量を増加することによりポンプ50の吐出量を増加できる。これにより、エンジン回転数が低いとき、または低温により作動油の粘性が高いときに、摩擦要素に加わる油圧を速やかに上昇できる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図4に示す。尚、第1実施形態と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。
第2実施形態の自動変速機制御装置110では、電磁制御手段としての電磁弁120、122から圧力制御弁124、126に加える指令圧により、クラッチ4、クラッチ6に加わる油圧が制御される。モジュレート弁130は、ライン圧油路200のライン圧を減圧してモジュレート圧を生成し、このモジュレート圧をモジュレート油路250から油路252、254を介して電磁弁120、122に加える。圧力制御弁124、126には、マニュアルバルブ12を通り、前進油路210から油路220、222を介してライン圧制御弁70で調圧されたライン圧が加わる。高圧選択弁32、32は、圧力制御弁124、126に加える電磁弁120、122の出力圧である指令圧から最大圧を選択する。
【0034】
第2実施形態では、ライン圧から減圧された低圧のモジュレート圧を元圧として圧力制御弁124、126に加える指令圧を電磁弁120、122が制御し、クラッチ4、クラッチ6に加わる油圧を制御する。これにより、第1実施形態に比べ、電磁制御手段としての電磁弁120、122を小型化できる。
また、ダンパ132、134は電磁弁120、122の出力側に設置されているので、ダンパ132、134が緩衝手段として作用するために処理する作動油量は、第1実施形態のダンパ24、26に比べて減少する。したがって、ダンパ132、134を小型化できる。
【0035】
(他の実施形態)
上記実施形態では、ポンプ50の吐出圧の急激な上昇を防止するために、ライン圧油路200にリリーフ弁84を設置した。これに対し、本発明では、リリーフ弁84を設置しない構成でもよい。また、上記実施形態では、ライン圧制御弁70から容量制御ピストン64に制御圧を加える制御油路204に絞り66を設け、容量制御ピストン64に加わる制御圧が急激に変化し、ポンプ50の吐出量が急激に変化することを防止した。これに対し、本発明では、制御油路204に絞り66を設けない構成でもよい。
【0036】
このように、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、上記実施形態の特徴的構造をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態による自動変速機制御装置を示す油圧回路図。
【図2】トルクコンバータおよびロックアップクラッチを示す油圧回路図。
【図3】クラッチ係合時のクラッチ圧の変化を示す特性図。
【図4】第2実施形態による自動変速機制御装置を示す油圧回路図。
【符号の説明】
【0038】
2:リバースクラッチ(摩擦要素)、4、6:クラッチ(摩擦要素)、10、110:自動変速機制御装置、20、22、120、122:電磁弁(電磁制御手段)、30、32:高圧選択弁(選択手段)、50:ポンプ、40:ECU(液圧制御手段)、64:容量制御ピストン(可変手段)、66:絞り(作動低下手段)、70:ライン圧制御弁(調圧手段)、84:リリーフ弁、200:ライン圧油路(吐出回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦要素の係合および解放を作動流体の液圧により制御し変速段を切り替える自動変速機制御装置において、
内燃機関により駆動され、作動流体を加圧して吐出し前記複数の摩擦要素に加える液圧を生成するポンプと、
液圧により駆動され前記ポンプの吐出量を可変にする可変手段と、
前記ポンプの吐出圧に基づいて前記複数の摩擦要素に加わる液圧を制御する複数の電磁制御手段と、
前記複数の電磁制御手段の出力圧から最大圧を選択する選択手段と、
前記ポンプの吐出圧を受圧し、前記選択手段により選択された複数の前記電磁制御手段の最大圧に応じて前記ポンプの吐出圧ならびに前記可変手段を駆動する液圧を制御する調圧手段と、
を備えることを特徴とする自動変速機制御装置。
【請求項2】
前記調圧手段は、前記ポンプの吐出圧と、前記選択手段により選択された複数の前記電磁制御手段の最大圧とを反対方向に受圧することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機制御装置。
【請求項3】
前記電磁制御手段の出力圧を制御する液圧制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機制御装置。
【請求項4】
前記液圧制御手段は、変速段の切り替えを開始するとき、前記電磁制御手段の出力圧が一時的に上昇するように制御することを特徴とする請求項3に記載の自動変速機制御装置。
【請求項5】
前記電磁制御手段は、トルクコンバータを迂回して前記内燃機関の出力トルクを自動変速機に伝達するロックアップクラッチに加える液圧を制御し、前記ロックアップクラッチが係合を開始するとき、前記液圧制御手段は、前記電磁制御手段の出力圧が一時的に上昇するように制御することを特徴とする請求項3または4に記載の自動変速機制御装置。
【請求項6】
前記液圧制御手段は、作動流体の温度が所定温度よりも低いとき、前記電磁制御手段の出力圧が上昇するように制御することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
【請求項7】
前記液圧制御手段は、前記内燃機関の回転数が所定回転数よりも低いとき、前記電磁制御手段の出力圧が上昇するように制御することを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
【請求項8】
前記ポンプの吐出量を可変にする前記可変手段の作動速度を低下させる作動低下手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
【請求項9】
前記ポンプが作動流体を吐出する吐出回路に設置されたリリーフ弁をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−202675(P2008−202675A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38836(P2007−38836)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】