説明

自動変速機油圧制御装置

【課題】8速の変速段を実現し、各摩擦要素の精密で安定した制御によって変速感を向上させることができ、故障発生時の摩擦要素の誤作動を防止するフェイルセーフ機能を有する自動変速機油圧制御装置の提供。
【解決手段】6個の摩擦要素と、5個の直接制御ソレノイドバルブと、油圧の供給と遮断の切り換えが可能に備えられたオンオフソレノイドバルブと、オンオフソレノイドバルブからの油圧が作用するか否かにより、直接制御ソレノイドバルブからの油圧を2個の摩擦要素に選択的に供給するスイッチバルブと、直接制御ソレノイドバルブと摩擦要素との間に備えられた4個のフェイルセーフバルブと、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機油圧制御装置に係り、より詳しくは、故障発生時の摩擦要素の誤作動を防止するフェイルセーフ機能を有する8速自動変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機は、エンジンなどの動力発生装置からの動力を、車両の走行状態に適したトルクと回転数に自動的に変化させ、円滑な車両の走行がなされるようにする装置である。
このような自動変速機において、自動変速機の対応できる変速比が多様であるほど、動力発生装置からの動力を車両の走行状態に応じ最適な状態に維持できるので、車両の燃費や動力性能を向上させることができる。
【0003】
現在、自動変速機の主流は4速自動変速機であるが、車両の燃費や動力性能の向上の要請の高まりから、自動変速機の多段化の検討が盛んに行われている(特許文献1)。しかし、最近では、排ガス規制への対応や省エネ要請の高まりから、自動変速機のさらなる多段化が求められている。
【0004】
また、このような多様な変速比を有する自動変速機においては、複数の摩擦要素を精密かつ安定に制御して、変速衝撃を防止して良好な変速感が味わえるようにし、摩擦要素を常に定められた適切な組み合わせで作動させて、故障時の誤作動を排除するフェイルセーフ機能を確保することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−046746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、8速の変速段を実現し、各摩擦要素の精密で安定した制御によって変速感を向上させることができ、故障発生時の摩擦要素の誤作動を防止するフェイルセーフ機能を有する自動変速機油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の自動変速機油圧制御装置は、油圧の供給を受け、変速段毎に互いに異なるように定められた2個の摩擦要素が作動することにより、該当変速段をそれぞれ形成する6個の摩擦要素と、摩擦要素のうちの4個の摩擦要素に供給する油圧をそれぞれ直接制御し、残りの2個の摩擦要素に共通に供給する油圧を直接制御する合計5個の直接制御ソレノイドバルブと、油圧の供給を受け、油圧の供給と遮断の切り換えが可能に備えられたオンオフソレノイドバルブと、バルブスプールの一側がスプリングによって支持され、他側にオンオフソレノイドバルブからの油圧が作用するか否かにより、2個の摩擦要素に共通に供給する油圧を直接制御する直接制御ソレノイドバルブからの油圧を2個の摩擦要素に選択的に供給するスイッチバルブと、摩擦要素の作動可能な組み合わせを制限するために、直接制御ソレノイドバルブと摩擦要素との間に備えられた4個のフェイルセーフバルブと、を含んで構成される。
【0008】
また、本発明に係る自動変速機油圧制御装置は、NレンジとDレンジ1速において作動する第2ブレーキと、NレンジとDレンジとの間のスタティック変速の間に作動状態の変化なしで第2ブレーキに持続的に油圧を供給するように設けられたスイッチバルブと、ライン圧の供給を受け、Dレンジ1速において第2ブレーキと共に作動する第1クラッチに供給される油圧を直接制御するように設けられた第2直接制御ソレノイドバルブと、第2直接制御ソレノイドバルブから第1クラッチに供給される圧力を検知するために設けられた第1圧力スイッチと、Nレンジ及びPレンジにおいて、第1クラッチに圧力が供給される異常状況が第1圧力スイッチによって検知されれば、第2直接制御ソレノイドバルブから第1クラッチに油圧を供給する流路を遮断するように設けられたC1&C3フェイルセーフバルブと、を含んで構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、6個の摩擦要素を制御して8速の変速段を実現できるばかりでなく、各摩擦要素の精密で安定した制御によって変速感を向上させることができ、故障発生時の設定外の組み合わせによる摩擦要素の誤作動を防止し、安全な走行を可能にするフェイルセーフ機能を有する自動変速機油圧制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動変速機油圧制御装置の構造図である。
【図2】図1の油圧制御装置の各変速段別の作動要素の作動モード表である。
【図3】図2の作動モードを実現するための各ソレノイドバルブの通電状態を整理した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図3を参照して、本発明の好ましい実施形態について以下に詳述する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、油圧の供給を受け、変速段毎に互いに異なる2つの設定された摩擦要素が作動して当該変速段を実施可能とする6個の摩擦要素と、6個の摩擦要素のうちの4個の摩擦要素には、供給する油圧を直接制御するようにそれぞれに備えられ、残りの2個の摩擦要素には、共通に供給する油圧を直接制御するように1個が備えられた、合計5個の直接制御ソレノイドバルブと、油圧の供給を受け、油圧の供給を制御するオンオフソレノイドバルブと、直接制御ソレノイドバルブが共通に制御する2つの摩擦要素に選択的に油圧を供給するスイッチバルブと、摩擦要素の作動可能な組み合わせを制限する直接ソレノイドバルブと摩擦要素との間に備えられた4個のフェイルセーフバルブと、を含んで構成される。
【0013】
6個の摩擦要素は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4と、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2とからなる。
第2クラッチC2と第2ブレーキB2には、第1直接制御ソレノイドバルブ5とスイッチバルブ3が、第1直接制御ソレノイドバルブ5から供給される油圧がスイッチバルブ3によって選択的に供給されるように、油圧経路が連結している。
第1クラッチC1、第3クラッチC3、第4クラッチC4及び第1ブレーキB1の4つの摩擦要素には、第2直接制御ソレノイドバルブ7、第3直接制御ソレノイドバルブ9、第4直接制御ソレノイドバルブ11及び第5直接制御ソレノイドバルブ13が、各直接制御ソレノイドバルブからそれぞれ油圧の供給を受けるように、油圧経路が連結している。
【0014】
ここで、直接制御ソレノイドバルブとは、従来の一般的なソレノイドバルブが、摩擦要素に必要な作動圧を制御するために別途設けられた圧力制御バルブを制御するのに対し、圧力制御バルブが担当していた機能も兼ね備え、摩擦要素に必要な油圧を直接制御して供給するようになっているものをいう。
直接制御ソレノイドバルブを用いることにより、摩擦要素を制御するための油圧を直接制御ソレノイドバルブのみで制御することができ、バルブボディーをよりコンパクトで簡単な構造にすることができ、応答性を向上させることができる。
【0015】
本実施形態には、オイルポンプ15から供給された油圧によってライン圧を形成するレギュレータバルブ17と、ライン圧の伝達を受け、運転者の選択により、D圧力と、R圧力を選択的に出力するマニュアルバルブ19とが備えられている。 また、オンオフソレノイドバルブ1は、レギュレータバルブ17からライン圧の供給を受け、制御電気に応じて油圧の供給、遮断の切り替えを行う。
【0016】
第1直接制御ソレノイドバルブ5と、第2直接制御ソレノイドバルブ7及び第3直接制御ソレノイドバルブ9は、ライン圧の供給を受け、第4直接制御ソレノイドバルブ11と第5直接制御ソレノイドバルブ13は、D圧力の供給を受け、それぞれ連結している摩擦要素に油圧を供給する。
【0017】
第1直接制御ソレノイドバルブ5、第4直接制御ソレノイドバルブ11及びオンオフソレノイドバルブ1は、制御電気が停止した場合に最大出力圧を形成するノーマリーハイタイプ(normally high type)である。
一方、第2、第3、第5直接制御ソレノイドバルブ7、9、13は、制御電気が停止した場合に出力圧を形成しないノーマリーロータイプ(normally low type)である。
【0018】
スイッチバルブ3は、オンオフソレノイドバルブ1からの油圧が供給されない場合に、スプリングにより、第1直接制御ソレノイドバルブ5からの油圧を第2ブレーキB2に供給し、オンオフソレノイドバルブ1からの油圧が供給されれば、第1直接制御ソレノイドバルブ5からの油圧を第2クラッチC2に供給するように機能する。
【0019】
すなわち、スイッチバルブ3は、バルブスプールの一側方向にスプリングの弾性力が作用するようにした状態で、他側方向にオンオフソレノイドバルブ1からの油圧が供給されるように構成され、オンオフソレノイドバルブ1からの油圧が供給されている間だけバルブスプールがスプリングを圧縮するように移動し、第1直接制御ソレノイドバルブ5から供給された油圧を第2クラッチC2に供給するようにし、オンオフソレノイドバルブ1からの油圧供給がない時には、第1直接制御ソレノイドバルブ5からの油圧を第2ブレーキB2に供給するようにしたものである。
【0020】
ここで、オンオフソレノイドバルブ1は、ノーマリーハイタイプであるため、制御電気が停止した状態では、スイッチバルブ3に油圧を供給し、第2クラッチC2に作動圧を供給する。
【0021】
また、スイッチバルブ3は、第2クラッチC2に供給される油圧をフィードバックして、オンオフソレノイドバルブ1からの油圧と同一方向にバルブスプールを加圧し、第2クラッチC2の作動状態の安定性を向上させるフィードバックポート21を備えている。
【0022】
一方、スイッチバルブ3は、オンオフソレノイドバルブ1からの油圧が供給された場合に、R圧力を第2ブレーキB2に供給するようになっており、これは、後述するフェイルセーフ機能において、電源オフ時に後進変速段を形成するようにするためのものである。
【0023】
本実施形態において、4個のフェイルセーフバルブは、次に挙げるものである。
C2フェイルセーフバルブ(C2FSV)は、スイッチバルブ3から第2クラッチC2に作動圧を供給する油圧経路上に設置され、第2クラッチC2への油圧経路の開放、遮断を行う。
C1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)は、第2直接制御ソレノイドバルブ7から第1クラッチC1に作動圧を供給する油圧経路と、第3直接制御ソレノイドバルブ9から第3クラッチC3に作動圧を供給する油圧経路上に設置され、2つの油圧経路を同時に開放、遮断できるようになっている。
C4フェイルセーフバルブ(C4FSV)は、第4直接制御ソレノイドバルブ11から第4クラッチC4に作動圧を供給する油圧経路上に設置され、第4クラッチC4への油圧経路の開放、遮断を行う。
B1フェイルセーフバルブ(B1FSV)は、第5直接制御ソレノイドバルブ13から第1ブレーキB1に作動圧を供給する油圧経路上に設置され、第1ブレーキB1への油圧経路の開放、遮断を行う。
【0024】
C2フェイルセーフバルブ(C2FSV)は、バルブスプールの一側方向にD圧力が作用し、他側方向にスプリングが設けられて弾性力が作用するようになっていると共に、第1クラッチC1の作動圧と、第1ブレーキB1または第4クラッチC4の作動圧が作用するようになっている。そして、第1クラッチC1の作動圧と、第1ブレーキB1または第4クラッチC4の作動圧が共に供給される場合には、第2クラッチC2の作動圧が第2クラッチC2に供給されないように油圧経路を遮断するようになっている。
【0025】
C1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)は、バルブスプールの一側方向にスプリングの弾性力とD圧力が作用し、他側方向にオンオフソレノイドバルブ1からの圧力が作用するようになっている。そして、オンオフソレノイドバルブ1からの圧力が作用した場合には、第2直接制御ソレノイドバルブ7から第1クラッチC1に供給される作動圧と、第3直接制御ソレノイドバルブ9から第3クラッチC3に供給される作動圧をそれぞれ遮断し、第3クラッチC3にR圧力を供給するようになっている。
【0026】
C4フェイルセーフバルブ(C4FSV)は、バルブスプールの一側方向にスプリングの弾性力とD圧力が作用し、他側方向に第3クラッチC3の作動圧または第2ブレーキB2の作動圧と、第4クラッチC4の作動圧が作用するようになっている。第3クラッチC3の作動圧または第2ブレーキB2の作動圧と、第4クラッチC4の作動圧が共に作用した場合には、第4直接制御ソレノイドバルブ11から第4クラッチC4に供給される作動圧を遮断するようになっている。
【0027】
B1フェイルセーフバルブ(B1FSV)は、バルブスプールの一側方向にスプリングの弾性力とD圧力が作用し、他側方向に第3クラッチC3の作動圧または第2ブレーキB2の作動圧と、第4クラッチC4の作動圧、第1ブレーキB1の作動圧が作用するようになっている。第3クラッチC3の作動圧または第2ブレーキB2の作動圧と、第4クラッチC4の作動圧、第1ブレーキB1の作動圧のうちの任意の2つが共に作用した場合に、第5直接制御ソレノイドバルブ13から第1ブレーキB1に供給される作動圧を遮断するようになっている。
【0028】
C2フェイルセーフバルブ(C2FSV)は、第1ブレーキB1と第4クラッチC4のそれぞれに供給される作動圧のどちらも受けられるようになっており、転換バルブによって、これらの作動圧のうちのいずれか1つの作動圧を選択的に供給することができるようになっている。
同様に、C4フェイルセーフバルブ(C4FSV)とB1フェイルセーフバルブ(B1FSV)に供給される第3クラッチC3または第2ブレーキB2の作動圧も、転換バルブによって選択的に供給できるようになっている。
【0029】
C1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)から第1クラッチC1に第1クラッチC1の作動圧を供給する油圧経路と、第3クラッチC3に第3クラッチC3の作動圧を供給する油圧経路には、それぞれ、第1クラッチC1と第3クラッチC3に供給される作動圧を、検知することができる第1圧力スイッチP1と第2圧力スイッチP2が備えられている。
【0030】
第1圧力スイッチP1と第2圧力スイッチP2は、フェイルセーフバルブの作動に加え、第1クラッチC1と第3クラッチC3が作動する状況を、電気的信号にしてコントローラに提供することにより、不適切な作動状況が発生していないかどうかをチェックする機能をはたす。
【0031】
フェイルセーフバルブの作用は、次のようになっている。
油圧制御装置の電源がオフになる状況におけるフェイルセーフ機能は、マニュアルバルブ19がDレンジを選択している場合には、6速に固定されるようにし、Rレンジを選択している場合には、Rレンジが形成されるようにし、その他、Nレンジ、Pレンジを選択している場合には、第2ブレーキ以外のいずれの摩擦要素も作動しないようにして、最小限の機動状態の確保及び停車状態の維持を行う。
【0032】
マニュアルバルブ19がDレンジを選択している状態で、電源がオフになった場合には、スイッチバルブ3は、バルブスプールにノーマリーハイタイプのオンオフソレノイドバルブ1からの油圧が供給され、ノーマリーハイタイプの第1直接制御ソレノイドバルブ5を通過した油圧を第2クラッチC2に向かって供給する状態となり、C2フェイルセーフバルブ(C2FSV)のバルブスプールにはD圧力がかけられるため、第2クラッチC2に作動圧が供給される。
【0033】
それと共に、C4フェイルセーフバルブ(C4FSV)のバルブスプールにもD圧力がかかり、ノーマリーハイタイプの第4直接制御ソレノイドバルブ11からの油圧もC4フェイルセーフバルブ(C4FSV)を通過して第4クラッチC4に供給される。
したがって、図2に示されているような6速変速段の作動要素である第2クラッチC2と第4クラッチC4が作動して、6速変速段を形成することができる。
【0034】
次に、マニュアルバルブ19がRレンジを選択した状態で電源がオフになった場合には、Rレンジでは第3クラッチC3と第2ブレーキB2が作動しなければならないので、スイッチバルブ3にオンオフソレノイドバルブ1からの油圧が作用して、R圧力が第2ブレーキB2に供給される。そして、C1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)のバルブスプールには、一側にオンオフソレノイドバルブ1からの油圧が作用し、他側のD圧力は作用しないため、R圧力が第3クラッチC3に供給される状態となる。
【0035】
このとき、セーフバルブ(C2FSV)にはD圧力が作用しないため、スプリングによってバルブスプールが移動する。このことによって、スイッチバルブ3を経由して、第2クラッチC2に向かう油圧は、C2フェイルセーフバルブ(C2FSV)によって、第2クラッチC2に作動圧が供給されないように遮断される。
そして、第4直接制御ソレノイドバルブ11と第5直接制御ソレノイドバルブ13がD圧力を受けるようになるので、マニュアルバルブ19にはR圧力がかかり、D圧力がかからず、第4クラッチC4と第1ブレーキB1は作動しなくなる。
【0036】
また、NレンジやPレンジにおいて電源がオフになった場合には、そのままN状態やP状態を維持するようにしなければならないので、第2クラッチC2は、D圧力を受けないC2フェイルセーフバルブ(C2FSV)により、油圧の供給が遮断され、第1クラッチC1と第3クラッチC3もまた、第2直接制御ソレノイドバルブ7及び第3直接制御ソレノイドバルブ9がノーマリーロータイプであるので、作動圧が供給されない。
さらに、ノーマリーハイタイプのオンオフソレノイドバルブ1から油圧が供給されるC1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)が、第2直接制御ソレノイドバルブ7及び第3直接制御ソレノイドバルブ9から第1クラッチC1と第3クラッチC3にそれぞれ連絡する油圧経路を遮断するので、たとえ第2直接制御ソレノイドバルブ7及び第3直接制御ソレノイドバルブ9が誤作動をしたとしても、第1クラッチC1と第3クラッチC3の作動は確実に防止される。
【0037】
また、第4クラッチC4と第1ブレーキは、第4直接制御ソレノイドバルブ11と第5直接制御ソレノイドバルブ13にD圧力が供給されないので、作動することはない。
【0038】
本発明の実施形態において、自動変速機油圧制御装置の正常作動中に摩擦要素が設定外の不適切な組み合わせで作動することを防止するため、マニュアルバルブ19がDレンジを選択している状態で、第1クラッチC1に作動圧が供給されて、第1ブレーキB1、第4クラッチC4の作動圧のうちのいずれか1つが供給されれば、C2フェイルセーフバルブ(C2FSV)は、第2クラッチC2にかかる作動圧を遮断するようになっている。
【0039】
図2を参照すれば、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が作動する2速状態と、第1クラッチC1と第4クラッチC4が作動する4速状態において、第2クラッチC2は作動することがなく、前述の作用は、この状態をフェイルセーフ機構として実現したものである。
【0040】
また、第3クラッチC3の作動圧や第2ブレーキB2の作動圧が供給されている状況において、第4クラッチC4の作動圧が供給された場合には、C4フェイルセーフバルブ(C4FSV)は、第4クラッチC4の作動圧が第4クラッチC4に供給されることを遮断する。
逆に、第4クラッチC4の作動圧が供給されている状況において、第3クラッチC3の作動圧や第2ブレーキB2の作動圧が供給された場合には、C4フェイルセーフバルブ(C4FSV)は、第4クラッチC4の作動圧が第4クラッチC4に供給されることを遮断し、第4クラッチC4が第3クラッチC3や第2ブレーキB2と共に作動することを防止するようになっている。
【0041】
すなわち、図2を参照すれば、第4クラッチC4は4速と6速においてのみ作動し、第3クラッチC3と第2ブレーキB2は、第4クラッチC4と共に作動するモードは存在しないので、前述の作用は、このことを構造的に実現したものである。
【0042】
一方、第1ブレーキB1に作動圧が供給されている状況において、第4クラッチC4の作動圧や、第3クラッチC3の作動圧または第2ブレーキB2の作動圧が供給された場合には、B1フェイルセーフバルブ(B1FSV)は、第1ブレーキB1に供給される圧力を遮断して、第1ブレーキB1が第4クラッチC4や、第3クラッチC3または第2ブレーキB2と共に作動しないようにしている。
図2を参照すれば、第1ブレーキB1は2速と8速においてのみ作動し、第4クラッチC4や第3クラッチC3または第2ブレーキB2は、第1ブレーキB1と共に作動するモードは存在しないので、前述の作用は、このことを構造的に実現したものである。
【0043】
本発明の実施形態を他の角度から見れば、本発明は、NレンジとDレンジ1速において共通に作動する第2ブレーキB2と、NレンジとDレンジとの間のスタティック(STATIC)変速の間に作動状態の変化なしで第2ブレーキB2に持続的に油圧を供給するように設けられたスイッチバルブ3と、ライン圧の供給を受け、Dレンジ1速において第2ブレーキB2と共に作動する第1クラッチC1に供給される油圧を直接制御するように設けられた第2直接制御ソレノイドバルブ7と、第2直接制御ソレノイドバルブ7から第1クラッチC1に供給される圧力を検知するように設けられた第1圧力スイッチP1と、NレンジやPレンジにおいて、第1クラッチC1に圧力が供給される異常状況が第1圧力スイッチP1によって検知されれば、第2直接制御ソレノイドバルブ7から第1クラッチC1に油圧を供給する油圧経路を遮断するように設けられたC1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)と、を含んで構成されるものである。
【0044】
従来の方法では、NレンジからDレンジに変速される時、新たに作動するようになる摩擦要素には主にD圧力が供給されるように構成し、運転者が確実にDレンジに変速を行った場合にだけ作動するようにすることによって、フェイルセーフ機能を実現するようにしていた。
すなわち、運転者がDレンジを選択しない限り、マニュアルバルブから摩擦要素に供給されるD圧力が形成されないため、Nレンジ状態で意図せずに車両が前進するトラブルを排除できるようにしていた。
【0045】
しかし、このような従来の方法では、運転者のスタティック変速操作によって、マニュアルバルブにDレンジ圧が形成された後に、摩擦要素にDレンジ圧が供給されるため、ライン圧を直接摩擦要素に供給する場合に比べ、応答性が遅くなる欠点があった。そのため、DレンジからNレンジに変速する時に、マニュアルバルブから供給された圧力が瞬間的に抜けるため、摩擦要素の解除制御が難しくなり、別途のアキュムレータを設けて制御性を確保するか、別途の構造や制御ロジックを補完する必要があった。
【0046】
本発明においては、Dレンジ1速において、第2ブレーキB2と共に作動する第1クラッチC1に供給される油圧を、第2直接制御ソレノイドバルブ7がライン圧を受けて直接第1クラッチC1に供給するので、制御応答性を向上させることができる。
【0047】
また、本発明においては、Nレンジ状態で意図せず第1クラッチC1へ圧力が供給される異常状況が発生した場合に、これを第1圧力スイッチP1によって検知したコントローラが、オンオフソレノイドバルブ1を制御し、C1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)が、第2直接制御ソレノイドバルブ7から第1クラッチC1に油圧を供給する油圧経路を遮断するようにすることにより、フェイルセーフ機能を果たすようになっている。
【0048】
さらにまた、本発明においては、DレンジからNレンジへのスタティック変速操作時において、第1クラッチC1の油圧解除を、第2直接制御ソレノイドバルブ7から持続的にライン圧の供給を受ける状況で安定するように制御することができるため、別途のアキュムレータなどの装置が不要となる。
【0049】
本発明は、NレンジとRレンジとの間のスタティック変速においても、前述の原理でフェイルセーフ機能を果たせるようにしている。
すなわち、本発明の実施形態においては、第2ブレーキB2は、NレンジとDレンジ1速及びRレンジにおいて作動し、スイッチバルブ3は、NレンジとRレンジとの間のスタティック変速の間にも作動状態に変化なく、第2ブレーキB2に持続的に油圧を供給し、ライン圧の供給を受け、Rレンジにおいて第2ブレーキB2と同時に作動する第3クラッチC3に供給される油圧を直接制御するように設けられた第3直接制御ソレノイドバルブ9と、第3直接制御ソレノイドバルブ9から第3クラッチC3に供給される圧力を検知するように設けられた第2圧力スイッチP2を備え、C1&C3フェイルセーフバルブ(C1&C3FSV)は、NレンジやPレンジにおいて、第3クラッチC3に圧力が供給される異常状況が第2圧力スイッチP2によって検知されれば、第3直接制御ソレノイドバルブ9から第3クラッチC3に油圧を供給する油圧経路を遮断するようになっている。
【符号の説明】
【0050】
1 ・・・オンオフソレノイドバルブ
3 ・・・スイッチバルブ
5 ・・・第1直接制御ソレノイドバルブ
7 ・・・第2直接制御ソレノイドバルブ
9 ・・・第3直接制御ソレノイドバルブ
11 ・・・第4直接制御ソレノイドバルブ
13 ・・・第5直接制御ソレノイドバルブ
15 ・・・オイルポンプ
17 ・・・レギュレータバルブ
19 ・・・マニュアルバルブ
21 ・・・フィードバックポート
C1 ・・・第1クラッチ
C2 ・・・第2クラッチ
C3 ・・・第3クラッチ
C4 ・・・第4クラッチ
B1 ・・・第1ブレーキ
B2 ・・・第2ブレーキ
C2FSV ・・・・・・C2フェイルセーフバルブ
C1&C3FSV ・・・C1&C3フェイルセーフバルブ
C4FSV ・・・・・・C4フェイルセーフバルブ
B1FSV ・・・・・・B1フェイルセーフバルブ
P1 ・・・第1圧力スイッチ
P2 ・・・第2圧力スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧の供給を受け、各変速段別に互いに異なるように定められた2つが作動することによって該当変速段をそれぞれ形成する6個の摩擦要素と、
前記6個の摩擦要素のうちの4個の摩擦要素に供給される油圧をそれぞれ直接制御するように備えられ、残りの2個の摩擦要素に共通に供給される油圧を直接制御するように備えられた合計5個の直接制御ソレノイドバルブと、
油圧の供給を受け、油圧の供給と遮断の切り換えが可能に備えられたオンオフソレノイドバルブと、
バルブスプールの一側がスプリングによって支持され、バルブスプールの他側に前記オンオフソレノイドバルブからの油圧が作用するか否かにより、前記2個の摩擦要素に共通に供給される油圧を直接制御する直接制御ソレノイドバルブからの油圧を前記2個の摩擦要素に選択的に供給するスイッチバルブと、
前記摩擦要素の作動可能な組み合わせを制限するために、前記直接制御ソレノイドバルブと前記摩擦要素との間に備えられた4個のフェイルセーフバルブと、
を含んで構成されることを特徴とする自動変速機油圧制御装置。
【請求項2】
前記6個の摩擦要素は、第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチおよび第4クラッチと、第1ブレーキおよび第2ブレーキとからなり、
前記第2クラッチと第2ブレーキは、前記直接制御ソレノイドバルブのうちの1つである第1直接制御ソレノイドバルブから共通に供給される油圧が前記スイッチバルブによって選択的に供給されるように連結され、
前記第1クラッチと、前記第3クラッチ、前記第4クラッチ及び前記第1ブレーキは、前記直接制御ソレノイドバルブのうちの残りの第2直接制御ソレノイドバルブ、第3直接制御ソレノイドバルブ、第4直接制御ソレノイドバルブ及び第5直接制御ソレノイドバルブとそれぞれ油圧の供給を受けるように連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項3】
オイルポンプから提供された油圧でライン圧を形成するレギュレータバルブと、
前記ライン圧の伝達を受け、運転者の選択により、D圧力と、R圧力を選択的に出力するマニュアルバルブと、
が備えられ、
前記第1直接制御ソレノイドバルブと、前記第2直接制御ソレノイドバルブ及び前記第3直接制御ソレノイドバルブは、前記ライン圧の供給を受け、各該当摩擦要素に油圧を供給するように連結され、
前記第4直接制御ソレノイドバルブと前記第5直接制御ソレノイドバルブは、前記D圧力の供給を受け、各該当摩擦要素に油圧を供給するように連結されていることを特徴とする、請求項2に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項4】
前記第1直接制御ソレノイドバルブと前記第4直接制御ソレノイドバルブは、制御電気がない時に最大出力圧を形成するノーマリーハイタイプであり、
前記第2直接制御ソレノイドバルブと、前記第3直接制御ソレノイドバルブ及び前記第5直接制御ソレノイドバルブは、制御電気がない時に出力圧を形成しないノーマリーロータイプであり、
オンオフソレノイドバルブはノーマリーハイタイプであることを特徴とする、請求項3に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項5】
スイッチバルブは、前記オンオフソレノイドバルブからの油圧が供給されない場合には、スプリングにより、前記第1直接制御ソレノイドバルブからの油圧を第2ブレーキに供給するようにし、前記オンオフソレノイドバルブからの油圧が供給されれば、前記第1直接制御ソレノイドバルブからの油圧を第2クラッチに供給するように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項6】
前記スイッチバルブは、前記オンオフソレノイドバルブからの油圧が供給された場合に、R圧力を前記第2ブレーキに供給するように形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項7】
前記スイッチバルブは、第2クラッチに供給される油圧をフィードバックして前記オンオフソレノイドバルブからの油圧と同一方向にバルブスプールを加圧して、前記第2クラッチ作動状態の安定性を向上させるフィードバックポートを備えることを特徴とする、請求項6に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項8】
4個のフェイルセーフバルブは、
前記スイッチバルブから前記第2クラッチに作動圧を供給する油圧経路上に当該油圧経路を開放、遮断するように備えられたC2フェイルセーフバルブと、
第2直接制御ソレノイドバルブから第1クラッチに作動圧を供給する油圧経路と、第3直接制御ソレノイドバルブから第3クラッチに作動圧を供給する油圧経路上に前記2つの油圧経路を同時に開放、遮断するように備えられたC1&C3フェイルセーフバルブと、
第4直接制御ソレノイドバルブから第4クラッチに作動圧を供給する油圧経路上に当該油圧経路を開放、遮断するように備えられたC4フェイルセーフバルブと、
第5直接制御ソレノイドバルブから第1ブレーキに作動圧を供給する油圧経路上に当該油圧経路を開放、遮断するように備えられたB1フェイルセーフバルブと、
からなることを特徴とする、請求項7に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項9】
前記C2フェイルセーフバルブは、
バルブスプールの一側方向にD圧力が作用し、他側方向にスプリングの弾性力と共に、前記第1クラッチの作動圧と、前記第1ブレーキまたは前記第4クラッチの作動圧が作用するように形成され、前記第1クラッチの作動圧と、前記第1ブレーキまたは前記第4クラッチの作動圧が同時に供給される時、前記第2クラッチの作動圧が前記第2クラッチに供給されるのを遮断するように形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項10】
前記C1&C3フェイルセーフバルブは、
バルブスプールの一側方向にスプリングの弾性力とD圧力が作用し、他側方向にオンオフソレノイドバルブからの圧力が作用するように形成され、前記オンオフソレノイドバルブからの圧力が作用すれば、前記第2直接制御ソレノイドバルブから第1クラッチに提供される作動圧と、前記第3直接制御ソレノイドバルブから第3クラッチに提供される作動圧をそれぞれ遮断し、前記第3クラッチにはR圧力を供給するように形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項11】
前記C4フェイルセーフバルブは、
バルブスプールの一側方向にスプリングの弾性力とD圧力が作用し、他側方向に前記第3クラッチの作動圧または前記第2ブレーキの作動圧と、前記第4クラッチの作動圧が作用するように形成され、前記第3クラッチの作動圧または前記第2ブレーキの作動圧と、前記第4クラッチの作動圧が同時に作用すれば、前記第4直接制御ソレノイドバルブから前記第4クラッチに供給される作動圧を遮断するように形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項12】
前記B1フェイルセーフバルブは、
バルブスプールの一側方向にスプリングの弾性力とD圧力が作用し、他側方向に前記第3クラッチの作動圧または前記第2ブレーキの作動圧と、前記第4クラッチの作動圧、前記第1ブレーキの作動圧が作用するように形成され、前記第3クラッチの作動圧または前記第2ブレーキの作動圧と、前記第4クラッチの作動圧、前記第1ブレーキの作動圧のうちの任意の2つが同時に作用すれば、前記第5直接制御ソレノイドバルブから前記第1ブレーキに供給される作動圧を遮断するように形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項13】
前記C1&C3フェイルセーフバルブから前記第1クラッチに前記第1クラッチの作動圧を供給する油圧経路と、前記第3クラッチに前記第3クラッチの作動圧を供給する油圧経路には、それぞれ、前記第1クラッチと前記第3クラッチに供給される作動圧を検知することができる第1圧力スイッチおよび第2圧力スイッチがさらに備えられることを特徴とする、請求項8に記載の自動変速機油圧制御装置。
【請求項14】
NレンジとDレンジ1速において共通に作動する第2ブレーキと、
NレンジとDレンジとの間のスタティック変速の間に作動状態の変化なしで前記第2ブレーキに持続的に油圧を供給するように設けられたスイッチバルブと、
ライン圧の供給を受け、Dレンジ1速において前記第2ブレーキと共に作動する第1クラッチに供給される油圧を直接制御するように設けられた第2直接制御ソレノイドバルブと、
前記第2直接制御ソレノイドバルブから前記第1クラッチに供給される圧力を検知するように設けられた第1圧力スイッチと、
NレンジやPレンジにおいて、前記第1クラッチに圧力が供給される異常状況が前記第1圧力スイッチによって検知されれば、前記第2直接制御ソレノイドバルブから前記第1クラッチに油圧を供給する油圧経路を遮断するように設けられたC1&C3フェイルセーフバルブと、
を含んで構成されていることを特徴とする自動変速機油圧制御装置。
【請求項15】
前記スイッチバルブは、NレンジとRレンジとの間のスタティック変速の間にも作動状態の変化なしで前記第2ブレーキに持続的に油圧を提供するように設けられ、
ライン圧の供給を受け、Rレンジにおいて前記第2ブレーキと共に作動する第3クラッチに供給される油圧を直接制御するように設けられた第3直接制御ソレノイドバルブと、
前記第3直接制御ソレノイドバルブから前記第3クラッチに供給される圧力を検知するように設けられた第2圧力スイッチと、
をさらに含んで構成され、
前記C1&C3フェイルセーフバルブは、NレンジやPレンジにおいて、前記第3クラッチに圧力が供給される異常状況が前記第2圧力スイッチによって検知されれば、前記第3直接制御ソレノイドバルブから前記第3クラッチに油圧を供給する油圧経路を遮断するようになっていることを特徴とする、請求項14に記載の自動変速機油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−72894(P2012−72894A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250253(P2010−250253)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】