説明

自動溶接装置

【課題】 枝管と母管の溶接個所を溶接トーチで正確に溶接する。
【解決手段】 ロボットハンド12の先端部の旋回台13に、馬蹄型ガイド5と円周動作する溶接トーチ11を備えた枝管溶接機4を取り付け、その反対側に探触子14を設ける。ロボットコントローラ19に、探触子14に接続したタッチセンサ16の接触検出信号を入力可能とし、更に外部の制御装置20を接続する。ロボットコントローラ19で多関節ロボットを制御して枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象の枝管2aに外嵌させるときに、制御装置20により、馬蹄型ガイド5と予め探触子14で検出した溶接対象の枝管2aの位置のずれ量を求め、このずれ量を解消するための馬蹄型ガイド5の位置補正量を求めてロボットコントローラ19へ与えることで、馬蹄型ガイド5を外嵌させた溶接対象の枝管2aを、溶接トーチ11の円周動作の軌道の中心に配置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母管の長手方向に沿って配列した複数の枝管を該母管に溶接するために用いる自動溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等におけるヘッダ(管寄せ)の1つの形式として、母管の外周面に、円周方向及び長手方向(軸心方向)に複数の枝管を接続した形式のものがある。
【0003】
この種のヘッダを製造する場合、横向きに配置した母管の外周面における周方向の1個所、たとえば、外周面の上端側位置に、該母管の長手方向に所要間隔で配列される複数の枝管を溶接して取り付け、次いで、上記母管を、周方向に所要角度回転させてから、新たに該母管の外周面の上端側となる位置に、長手方向に所要間隔で配列される複数の枝管を溶接して取り付け、以降、上記手順を順次繰り返して行うことで、上記母管の外周面の円周方向及び長手方向に多数の枝管を取り付ける手法が多く用いられている。
【0004】
又、上記横向きに配置した母管の外周面における上端側位置に該母管の長手方向に所要間隔で配列される枝管を取り付けるための溶接作業を、溶接トーチを備えたロボットを用いて自動化できるようにした自動溶接装置が提案されている。
【0005】
上記のような母管に対する枝管の溶接作業について、ロボットを用いて自動化させる場合は、該ロボットに備えた溶接トーチを、枝管と母管との間の溶接個所に対し周方向の全周に沿わせて正確に移動させる必要があるため、ロボットにより枝管と母管との溶接個所を予め検出させて、その検出された溶接個所の位置に対して溶接トーチを正確に配置させることが重要となる。
【0006】
そのために、たとえば、ロボットに備えた溶接トーチの先端に設けてあるチップを探触子として、上記母管の長手方向に配列される複数の枝管のうちから選んだ1つの基準枝管と、その近傍の母管の位置をタッチセンシングにより検出し、上記基準枝管についての位置データと、上記母管の長手方向に配列する各枝管の配列ピッチを基に、他の枝管と、該枝管近傍の母管の位置を算出して、溶接トーチによる溶接位置を定める手法が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
又、ロボットに備えた溶接トーチの近傍に、探触子(触針センサ)を設けて、母管と枝管の溶接を行う際は、予め母管の所定位置に仮付けしてある溶接対象となる枝管について、上記探触子によるタッチセンシングを行い、その検出結果を基に、溶接対象となる枝管を鉛直に配置させ且つ上記ロボットの移動方向が上記母管の軸心方向に対して平行になるようにするための補正量を求めて、該求められた補正量に応じて上記母管の周方向角度と上下方向の傾き、及び、水平面内での位置(角度)を補正させる手法も従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
ところで、本出願人は、上記ヘッダ製造時における母管と枝管との溶接作業を行う際に、通常の溶接トーチではアクセスが困難な狭隘部であっても、枝管の周方向の全周に亘り溶接トーチを移動させながら隅肉溶接を行うことができるようにするために、図5及び図6に示す如き自動溶接装置を従来提案している。
【0009】
図5に示す自動溶接装置は、母管1の長手方向に沿って該母管1の長手方向に配列して取り付ける複数の枝管2の取付位置に応じて移動可能に設けた多関節ロボット3の先端側に、枝管溶接機(スタブ管溶接機)4を取り付けた構成としてある。
【0010】
更に、上記枝管溶接機4は、図6に示すように、枝管2を半径方向から挿入して包囲可能な切欠部5aを備えた馬蹄型ガイド5と、上記枝管2を半径方向から挿入して包囲可能な切欠部6aを備え且つ上記馬蹄型ガイド5の下側に該馬蹄型ガイド5の切欠部5aを超えて回転可能に支持された切欠付リングギア6と、上記馬蹄型ガイド5に対し上記リングギア6を相対的に回転駆動させる駆動機構7と、上記リングギア6に固定されていて該リングギア6と同じ方向の位置に切欠部8aを備えたトーチ取付部材8と、該トーチ取付部材8の下側にスライドガイド10を介して径方向にスライド可能に取り付けたトーチ支持ブロック9と、該トーチ支持ブロック9に下向きに取り付けると共に下端部が上記リングギア6の中心側に向くように取り付けた溶接トーチ11とからなる構成としてある。
【0011】
これにより、上記枝管溶接機4では、上記リングギア6の切欠部6aの位相を、上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aの位相に合わせた状態で、上記多関節ロボット3の操作により枝管溶接機4を、母管1の外周面の上端側位置に仮止めしてある枝管2に対し側方より近接させて、該枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5及びリングギア6の切欠部5a,6aを、上記枝管2に外嵌させ、これにより、上記リングギア6にトーチ取付部材8、スライドガイド10及びトーチ支持ブロック9を介して取り付けてある上記溶接トーチ11を、上記枝管2と母管1との溶接個所の周方向の1個所に向けて配置できるようにしてある。
【0012】
その後、上記駆動機構7によりリングギア6を駆動させると、該リングギア6と一緒に上記溶接トーチ11は、上記枝管2の周りで、上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aを越えて周回動作させられるようにしてある。
【0013】
したがって、この周回動作する溶接トーチ11により、上記馬蹄型ガイド5の内側に配置させている枝管2とその下方の母管1との溶接個所は、周方向の全周に亘って溶接できるようにしてある。
【0014】
なお、上記図5及び図6に示した自動溶接装置において、上記枝管2と母管1との溶接個所に対する溶接トーチ11の位置決め精度を高めるためには、枝管2に対する馬蹄型ガイド5の軸心ずれ及び傾きを調整する必要がある。
【0015】
そこで、上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aのU字状開口を挟んだ先端部に、互いに対抗する光学センサ、又は、探触子を取り付けて、上記枝管2の位置や該馬蹄型ガイド5に対する相対的な傾きを検出し、該検出された枝管2の位置や相対的な傾きに応じて上記馬蹄型ガイド5の配置を調整させるようにすることが提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3385390号公報
【特許文献2】特公平4−31784号公報
【特許文献3】特開平10−193112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、特許文献1に示されたように、基準枝管についてのみタッチセンシングによる位置検出を行い、該基準枝管の位置データからその他の枝管の位置を算出する手法では、基準枝管以外の個々の枝管のずれや母管の歪み等による誤差が考慮されない。
【0018】
しかも、実際には、枝管の溶接時の熱の影響により母管自体が撓んだり、歪んだりすることがあり、又、上記母管における枝管取り付け部分には、該枝管に連通させるための孔が設けてあるが、その加工精度により孔自体の位置に誤差が生じることもあるため、基準枝管以外の枝管については、母管との溶接個所に対して、溶接トーチを正確に配置できなくなる可能性がある。
【0019】
特許文献2に示されたように、母管に仮付けされた枝管の位置をタッチセンシングにより検出し、その検出結果に応じて母管側を動かすことで枝管の位置の補正を実施する手法では、母管が大型になると、該母管を移動させる大掛かりな位置決め装置が必要になるという問題が生じてしまう。
【0020】
なお、特許文献3に示された自動溶接装置における枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5の先端部に、光学センサ又は探触子を取り付けて、枝管2の位置や馬蹄型ガイド5に対する相対的な傾きを検出する手法は、該検出された枝管2の位置や相対的な傾きに応じて上記馬蹄型ガイド5の配置を調整することができて、各枝管2と母管1との溶接個所に対し上記枝管溶接機4の溶接トーチ11を正確に配置するのに有効である。
【0021】
そこで、本発明は、上記特許文献3に示された自動溶接装置を更に発展させて、母管の周方向及び長手方向に枝管を密に配置する場合であっても、枝管溶接機の馬蹄型ガイドを溶接対象の枝管に外嵌させる前に、該溶接対象の枝管の位置を検出することができて、上記馬蹄型ガイドを上記溶接対象の枝管に正確に外嵌させることができ、上記枝管溶接機の円周動作する溶接トーチの円周軌道の中央に、上記溶接対象の枝管を正確に配置させることができて、上記溶接対象の枝管と母管との溶接個所を上記円周動作する溶接トーチにより周方向の全周に沿って正確に溶接することができる自動溶接装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、母管に仮付けした枝管の位置を検出するためのセンサ装置と、溶接対象の枝管に外嵌させるための切欠部を有するガイドと該ガイドに保持され且つ上記切欠部を超えて円周動作できるようにしてある溶接トーチを具備してなる枝管溶接機を、個別の又は共通のロボットに取り付け、更に、上記ロボットの制御を行うためのロボットコントローラと、上記ロボットコントローラの外部に設けて該ロボットコントローラと接続した制御装置とを備え、且つ上記制御装置は、上記ロボットコントローラによりロボットを制御して上記枝管溶接機のガイドを溶接対象の枝管に外嵌させるときの該ガイドの位置と、上記センサ装置により検出された枝管の位置とのずれ量を検出して、該検出されたずれ量を解消するための上記ガイドの位置補正量を求める機能と、該求めた位置補正量を上記枝管溶接機のガイドを溶接対象の枝管に外嵌させる操作を行う上記ロボットコントローラへ与える機能を備えてなるものとした構成とする。
【0023】
又、上記構成において、制御装置を、枝管溶接機の溶接トーチの円周動作を制御する機能を備えてなるものとした構成とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の自動溶接装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)母管に仮付けした枝管の位置を検出するためのセンサ装置と、溶接対象の枝管に外嵌させるための切欠部を有するガイドと該ガイドに保持され且つ上記切欠部を超えて円周動作できるようにしてある溶接トーチを具備してなる枝管溶接機を、個別の又は共通のロボットに取り付け、更に、上記ロボットの制御を行うためのロボットコントローラと、上記ロボットコントローラの外部に設けて該ロボットコントローラと接続した制御装置とを備え、且つ上記制御装置は、上記ロボットコントローラによりロボットを制御して上記枝管溶接機のガイドを溶接対象の枝管に外嵌させるときの該ガイドの位置と、上記センサ装置により検出された枝管の位置とのずれ量を検出して、該検出されたずれ量を解消するための上記ガイドの位置補正量を求める機能と、該求めた位置補正量を上記枝管溶接機のガイドを溶接対象の枝管に外嵌させる操作を行う上記ロボットコントローラへ与える機能を備えてなるものとした構成としてあるので、母管に取り付ける枝管の隣接するもの同士の間隔が狭くなる場合であっても、ロボットに取り付けてある枝管溶接機のガイドを、母管の長手方向に沿って仮付けされた複数の枝管のうちの溶接対象の枝管に正確に外嵌させることができ、このガイドの溶接対象の枝管に対する外嵌の際に、該ガイドが溶接対象の枝管や、母管に既設又は仮付けされた他の枝管に対して干渉する虞を防止することができる。
(2)溶接対象の枝管と母管との溶接個所に、母管の撓みや歪み、母管における枝管の取付部分に設けてある孔の加工精度、母管に仮付けされている溶接対象の枝管の傾き等に起因する様々な誤差が生じていても、該溶接対象の枝管と母管との溶接個所を、周方向の全周に亘り正確に溶接することができる。
(3)更に、溶接対象の枝管と、枝管溶接機のガイドの位置のずれ量を補正するための該ガイドの位置補正量を求める演算処理を、ロボットコントローラの外部に設けた制御装置で行うようにしてあるため、上記ロボットコントローラでは、複雑な演算処理が不要になる。よって、一般的に用いられている多関節ロボットのロボットコントローラでは新たなプログラムが必要になる等、処理が煩雑になる複雑な補正演算処理を、容易に行うことができる。又、上記ロボットコントローラではブラックボックス化される虞のある補正結果等の外部管理や確認を、上記制御装置で行うことが可能になり、更には、上記制御装置により、補正値の外部設定を行うことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の自動溶接装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】図1の自動溶接装置を用いて溶接処理を実施する手順を示すもので、(イ)は溶接対象の枝管の母管の長手方向の位置のセンシングを行う状態を、(ロ)は溶接対象の枝管の母管の長手方向と直角な水平方向の位置のセンシングを行う状態をそれぞれ示す概要図である。
【図3】図1の自動溶接装置を用いて、枝管溶接機の馬蹄型ガイドを溶接対象の枝管に外嵌させた状態を示す概要図である。
【図4】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【図5】従来の枝管溶接用の自動溶接装置を示す概略斜視図である。
【図6】図5の自動溶接装置における枝管溶接機を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1乃至図3は本発明の自動溶接装置の実施の一形態として、枝管の位置のセンシング作業と、枝管の母管に対する溶接作業を、1基の多関節ロボットで行う形式の適用例を示すもので、以下のような構成としてある。
【0028】
すなわち、本発明の自動溶接装置は、母管1の長手方向に沿って図示しない移動機構により移動可能に設けた多関節ロボットにおけるロボットハンド12の先端部に、旋回台13を設けて、該旋回台13を、上記多関節ロボットのロボットハンド12の先端部に備えた旋回機能により旋回できるようにする。
【0029】
上記旋回台13の旋回軸心13aと直交する方向に位置する旋回台13の側面の所要個所には、図5及び図6に示した自動溶接装置における枝管溶接機4と同様に、ガイドとしての馬蹄型ガイド5と、該馬蹄型ガイド5に保持された状態でリングギア6(図6参照)と共に円周動作可能な溶接トーチ11を備えてなる枝管溶接機4を取り付ける。なお、図1乃至図3では、図示する便宜上、上記多関節ロボットのロボットハンド12の先端部以外の部分の記載は省略してある。又、上記枝管溶接機4における馬蹄型ガイド5と溶接トーチ11以外の構成の記載は省略してある。上記図1乃至図3に一点鎖線で描いた円弧は、上記溶接トーチ11の円周動作の軌道の概要を示すものである。
【0030】
更に、上記旋回台13において、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を母管1に仮付けされた溶接対象の枝管2aに対して横方向から外嵌させるときに上記母管1に既設又は仮付けされている他の枝管2と干渉しない範囲、すなわち、上記旋回台13の旋回軸心13aを中心として上記枝管溶接機4の取付位置の方向を0度とした場合に周方向に90度以上且つ270度以下となる角度範囲の領域に、上記溶接対象の枝管2aの位置を検出するためのセンサ装置として、たとえば、該旋回台13の旋回軸心13aに直交する方向に沿って外方へ所要寸法延びる直線状の探触子14を配置して、該探触子14を、上記旋回台13の側面における対応する個所に取付部材15を介して取り付ける。これにより、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象の枝管2aに対して横方向から外嵌させるときには、上記探触子14が、該馬蹄型ガイド5の進行方向に対し直角な方向よりも前側に突出配置されないようにしてあり、よって、溶接対象の枝管2aに対して上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を外嵌させた状態で溶接作業を実施する際に、上記センサ装置としての探触子14が母管1に既設或いは仮付けされている他の枝管2に干渉することがないようにしてある。
【0031】
なお、上記多関節ロボットによる旋回台13の制御や、後述する溶接対象の枝管2aにおける上記探触子14が接触する個所の位置情報の検出を行う際の演算等の処理を容易なものとするという観点からすると、上記旋回台13における上記探触子14の取付位置は、上記枝管溶接機4の取付位置に対して旋回軸心13aを中心に周方向に90度又は180度又は270度となる方向に設定することが望ましい。図1乃至図3では、上記旋回台13における上記枝管溶接機4の取付位置に対して旋回軸心13aを中心に180度となる方向の側面に探触子14を取り付けた構成が示してある。
【0032】
上記探触子14には、通電検出式のタッチセンサ16の一方の電極(図では正極)16aを、通電ライン17を介して接続すると共に、該タッチセンサ16の他方の電極(図では負極)16bに一端部を接続した通電ライン18の他端部を、上記母管1に接続する。 更に、上記タッチセンサ16による接触検出信号を、上記多関節ロボットの制御を行うためのロボットコントローラ19に入力できるようにする。これにより、上記探触子14が上記母管1に仮付けしてある溶接対象の枝管2aに接触すると、その時点で、上記タッチセンサ16により両者の接触を通電により検出できるようにしてある。更に、この接触検出信号が入力される上記ロボットコントローラ19により、該ロボットコントローラ19で制御している上記多関節ロボットのロボットハンド12の先端部の旋回台13の位置及び向きの情報と、該旋回台13に取り付けてある上記探触子14の形状(長さ)等についての既知のデータとを基に、上記溶接対象の枝管2aにおける上記探触子14が接触した個所についての位置情報を、たとえば、上記母管1の長手方向となるX軸方向と、それに直角な水平方向であるY軸方向と、上下方向であるZ軸方向についての座標に関して検出できるようにしてある。
【0033】
上記ロボットコントローラ19は、PLCやPC等の演算処理機能とデータ通信機能を備えた外部の制御装置20に通信線21を介して接続する。これにより、上記ロボットコントローラ19より、該ロボットコントローラ19で制御している上記多関節ロボットのロボットハンド12の先端部の旋回台13の位置及び向きの情報、及び、上記溶接対象の枝管2aに上記探触子14が接触したときに検出された接触個所についてのXYZ座標軸系に関する位置情報を、上記通信線21を介して上記制御装置20へ向けて外部出力させることができるようにする。
【0034】
更に、上記ロボットコントローラ19は、上記多関節ロボットを制御して、ロボットハンド12の先端部の旋回台13に取り付けてある上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を、溶接対象の枝管2aに外嵌させる操作を行うときには、後述するように制御装置20で演算して一旦記憶してある上記馬蹄型ガイド5の位置補正量の演算結果を該制御装置20より取得し、且つ母管1の寸法、枝管2の寸法、上記母管1に対し接続する枝管2の配置等に関する既知のデータ、たとえば、CADデータ等の設計データに基づく溶接対象の枝管2aの位置に応じて定まる上記馬蹄型ガイド5を配置させるべきXYZ座標軸系の位置に、上記制御装置20より取得した位置補正量の演算結果を加えて、該馬蹄型ガイド5の位置(配置)を補正し、該位置補正された馬蹄型ガイド5を、溶接対象の枝管2aに外嵌させるようにした機能を備えた構成としてある。
【0035】
上記制御装置20は、上記ロボットコントローラ19より、上記溶接対象の枝管2aに上記探触子14が接触したときの接触個所についてのXYZ座標軸系に関する位置情報が入力されると、その位置情報を基に、上記溶接対象の枝管2aのXYZ座標軸系における位置と、Z軸方向からの傾きを測定する機能を備える。
【0036】
更に、上記制御装置20は、上記溶接対象の枝管2aのXYZ座標軸系での位置と、Z軸方向からの傾きの測定結果を基に、上記溶接対象の枝管2aと母管1の位置について、上記設計データに基づく位置からのずれ量を検出する機能を備えると共に、このずれ量を解消して上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象の枝管2aに外嵌させることができるようにするために必要とされる該馬蹄型ガイド5の位置補正量を求める演算処理を行い、その演算結果を一旦記憶する機能を備える。該制御装置20に記憶した上記馬蹄型ガイド5の位置補正量の演算結果は、上記したように、ロボットコントローラ19により上記多関節ロボットを制御して上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象の枝管2aに外嵌させる操作を行うときに呼び出して、上記通信線21を介して上記ロボットコントローラ19へ出力できるようにしてあるものとする。
【0037】
上記制御装置20は、更に、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5に保持させた溶接トーチ11の円周動作を制御する機能を備えてなる構成とする。
【0038】
上記枝管溶接機4の溶接トーチ11に供給するワイヤ22には、上記タッチセンサ16の一方の電極16aを、通電ライン23を介して接続した構成とする。これにより、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を母管1に仮付けしてある溶接対象の枝管2aに外嵌させた状態で、上記溶接トーチ11のワイヤ22を探触子として、該ワイヤ22と、上記溶接対象の枝管2aや、その下方近傍に位置する母管1との接触を、上記タッチセンサ16で検出できるようにしてある。
【0039】
したがって、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を上記溶接対象の枝管2aに外嵌させた状態で、上記制御装置20により該枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作を制御して、該溶接トーチ11を溶接対象の枝管2aの周りで円周動作の軌道の周方向所要間隔の複数個所にそれぞれ配置させた状態で、該各個所ごとに上記溶接トーチ11のワイヤ22を探触子として上記溶接対象の枝管2aとその下方近傍に位置する母管1に接触させるようにすることにより、上記タッチセンサ16で接触が検出された時点でその接触検出信号が入力される上記ロボットコントローラ19で、上記多関節ロボットのロボットハンド12の先端部の旋回台13の位置情報を基に上記溶接対象の枝管2aに外嵌させた枝管溶接機4のXYZ座標軸系での位置情報を検出させ、このロボットコントローラ19で検出された上記枝管溶接機4のXYZ座標軸系での位置情報と、制御装置20で制御している上記枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作の軌道上での位置情報と、該枝管溶接機4の形状及び溶接トーチ11のワイヤ22の突出量についての既知のデータを基に、上記溶接対象の枝管2aや母管1における上記溶接トーチ11のワイヤ22が接触した個所について、XYZ座標軸系の位置情報を検出できるようにしてある。
【0040】
更に、上記制御装置20では、上記のようにして溶接トーチ11のワイヤ22を探触子として周方向所要間隔の複数個所でそれぞれ検出した上記溶接対象の枝管2aとその下方近傍の母管1の位置情報を互いに連係させることで、溶接対象の枝管2aと母管1との実際の溶接個所、すなわち、他の枝管2の溶接時の熱により生じた母管1の撓みや歪み、及び、母管1における各枝管2の取付部分に設けてある図示しない孔の加工精度、更には、上記母管1に仮付けされている溶接対象の枝管2aの傾き等に起因する様々な誤差を含んだ状態の実際の溶接個所について、周方向の全周に亘りその詳細な位置情報を計測できるようにしてある。
【0041】
以上の点に鑑みて、上記制御装置20は、上記したように溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所について得られている詳細な位置情報を基に、上記溶接対象の枝管2aに外嵌させた枝管溶接機4の円周動作する溶接トーチ11により上記溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所の実際の溶接作業を行うときには、上記円周動作する溶接トーチ11が、該溶接個所に沿って周方向の全周に亘り正確に移動するようにするために必要とされる枝管溶接機4の位置補正量を求める補正演算処理を行い、その位置補正量の演算結果を、上記ロボットコントローラ19へ与える機能も備えるようにしてある。これにより、上記溶接対象の枝管2aに外嵌させた枝管溶接機4の溶接トーチ11を円周動作させて上記溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所の実際の溶接作業を行うときには、上記制御装置20による溶接トーチ11の円周動作の制御と同時に、上記ロボットコントローラ19による上記多関節ロボットの制御を介してロボットハンド12の先端部の旋回台13に取り付けてある枝管溶接機4の位置を、上記制御装置20より与えられる位置補正量の演算結果を基に補正することで、上記円周動作する溶接トーチ11を、上記溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所に向けて周方向の全周に亘り正確に配置できるようにしてある。
【0042】
その他、図5及び図6に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0043】
以上の構成としてある本発明の自動溶接装置を使用する場合は、母管1の外周面の上端側位置に、該母管1の長手方向に所要間隔で配列した複数の枝管2,2aを予め仮付けしておく。
【0044】
この状態で、先ず、母管1の寸法、枝管2の寸法、上記母管1に対し接続する枝管2の配置等に関する設計データを基に、上記多関節ロボットを操作して、ロボットハンド12の先端部の上記旋回台13を、母管1に仮付けした溶接対象の枝管2aに対し上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を外嵌させるときの高さ位置に対応する所定のZ座標平面内に、母管1よりY軸方向の一方へ所要寸法離して配置させる。又、この状態で、上記旋回台13の旋回操作により、上記探触子14を、母管1側へ向けてY軸方向に平行に配置させる。
【0045】
次に、上記母管1の長手方向(X軸方向)の枝管2,2aの取付個所に関する設計データを基に、上記多関節ロボットを操作して、上記探触子14を、図2(イ)に二点鎖線で示すように、溶接対象の枝管2aと、そのX軸方向の一方に隣接する他の枝管2との間に挿入する。この際、上記X軸方向に配列された各枝管2,2aの位置が設計データより大幅に変化していることはなく、一方、上記探触子14は直線状として、水平方向の幅寸法を上記各枝管2,2aのX軸方向の配列間隔に比して大幅に小さくなるようにしてあるため、上記探触子14が上記溶接対象の枝管2aやそのX軸方向の一方に隣接する他の枝管2に接触する虞はない。
【0046】
次いで、図2(イ)に矢印aで示すように、上記多関節ロボットの操作により、上記探触子14を溶接対象の枝管2aの側面に近接する方向へ移動させる。この移動に伴って、図2(イ)に実線で示すように、上記探触子14が上記溶接対象の枝管2aの側面に接触すると、通電開始に基づいてタッチセンサ16により両者の接触が検出される。よって、その接触検出信号が入力されるロボットコントローラ19では、上記溶接対象の枝管2aにおける上記探触子14が接触した個所、すなわち、溶接対象の枝管2aの上記所定のZ座標平面内におけるX軸方向の一方の端部位置についてのX座標が求まる。よって、その求められたX座標が、ロボットコントローラ19より制御装置20へ入力されるようになるため、該制御装置20では、上記X座標と上記設計データより既知となっている上記溶接対象の枝管2aの半径の寸法から、上記所定のZ座標平面内における溶接対象の枝管2aの中心位置のX座標を求めて、一時記憶する。
【0047】
上記のようにして所定のZ座標平面内における溶接対象の枝管2aの中心位置のX座標が判明すると、上記ロボットコントローラ19は、多関節ロボットを操作して、上記探触子14を、上記溶接対象の枝管2aとそのX軸方向の一方に隣接する他の枝管2との間からY軸方向の一方(溶接対象の枝管2aから離れる方向)へ一旦引き出し、その後、Y軸方向に平行な配置としてある該探触子14を、上記所定のZ座標平面内で、上記溶接対象の枝管2aの中心位置のX座標と同一のX座標位置に配置させる。
【0048】
次いで、上記多関節ロボットの操作により、上記探触子14を、Y軸方向の他方(溶接対象の枝管2aに接近する方向)へ移動させる。この移動に伴い、図2(ロ)に示すように、上記探触子14の先端部が溶接対象の枝管2aの外周面に接触すると、タッチセンサ16より両者の接触検出信号が上記ロボットコントローラ19へ入力されるため、該ロボットコントローラ19では、上記溶接対象の枝管2aにおける上記探触子14が接触した個所、すなわち、上記所定のZ座標平面内にて、上記溶接対象の枝管2aの外周面におけるY軸方向の一方へ最も突出した個所についてのY座標が求まる。よって、その求められたY座標が、ロボットコントローラ19より制御装置20へ入力されるようになるため、該制御装置20では、上記Y座標と上記溶接対象の枝管2aの既知の半径寸法から、上記所定のZ座標平面内における溶接対象の枝管2aの中心位置のY座標を求めて、一時記憶する。これにより、上記所定のZ座標平面内における溶接対象の枝管2aの中心位置のXY座標が明らかとなる。
【0049】
更に、上記と同様の探触子14を用いたセンシング作業を、Z軸方向の位置を変えて行うことにより、上記制御装置20では、高さ位置の異なる2つのZ座標平面内で計測された溶接対象の枝管2aの中心位置のXY座標のずれから、該溶接対象の枝管2aについて、Z軸方向からの傾きが明らかとなる。
【0050】
その後、上記制御装置20では、上記明らかとなった溶接対象の枝管2aの位置と傾きについて、該溶接対象の枝管2aの設計データからのずれ量を検出した後、この設計データからのずれ量を有する溶接対象の枝管2aに対し、該ずれ量を解消して上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を外嵌させるために必要とされる該馬蹄型ガイド5の位置補正量を求める演算処理を行い、その演算結果を該制御装置20自身に一旦記憶する。
【0051】
次いで、上記ロボットコントローラ19は、多関節ロボットを制御して、上記探触子14を上記溶接対象の枝管2aの外周面よりY軸方向の一方へ所要寸法離反させた後、上記旋回台13を180度旋回させて、図1に示すように、上記枝管溶接機4を、馬蹄型ガイド5の切欠部5a(図6参照)がY軸方向に沿って上記溶接対象の枝管2aに臨むように配置する。この際、上記ロボットコントローラ19は、上記制御装置20より馬蹄型ガイド5の位置補正量の演算結果を取得して、この位置補正量のX軸方向成分を反映した位置に上記枝管溶接機4における馬蹄型ガイド5を配置させるようにする。これにより、該枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作の中心位置のX座標が、上記センシング作業により検出された溶接対象の枝管2aの実際の中心位置のX座標と一致するようになる。更に、上記ロボットコントローラ19は、上記制御装置20より取得した馬蹄型ガイド5の位置補正量の演算結果を基に、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を、上記溶接対象の枝管2aのZ軸方向からの傾きに応じた傾斜角度で配置させるようにする。
【0052】
その後、上記ロボットコントローラ19は、多関節ロボットを制御して、上記枝管溶接機4を、上記所定のZ座標平面内でY軸方向の他方へ移動させて、図3に示すように、該枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を、上記溶接対象の枝管2aに外嵌させる。この際、上記ロボットコントローラ19は、上記制御装置20より取得した馬蹄型ガイド5の位置補正量の演算結果のY軸方向成分を反映した位置に上記馬蹄型ガイド5を配置させるようにする。これにより、上記枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作の中心位置のY座標が、上記センシング作業により検出された溶接対象の枝管2aの実際の中心位置のY座標と一致するようになる。したがって、上記溶接対象の枝管2aが、上記枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作の軌道の中央に正確に配置させられるようになる。
【0053】
なお、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を上記溶接対象の枝管2aに外嵌させるときには、上記所定のZ座標平面内で、上記枝管溶接機4における溶接トーチ11の円周動作の中心位置のX座標を、上記予めセンシング作業により検出した溶接対象の枝管2aの実際の中心位置のX座標に一致させた状態としてから、該枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5をY軸方向の他方へのみ移動させるようにしてあるため、該枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5が、上記溶接対象の枝管2aや、母管1に既設又は仮付けしてある他の枝管2に干渉する虞はない。
【0054】
上記のようにして溶接対象の枝管2aに、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を外嵌させると、上記制御装置20は、該枝管溶接機4の溶接トーチ11を、上記溶接対象の枝管2aの周りで円周動作させると共に、周方向の複数個所で、溶接トーチ11のワイヤ22を探触子として、上記溶接対象の枝管2aの下端部や、その下方近傍に位置する母管1と接触させて、上記溶接対象の枝管2aや母管1における上記溶接トーチ11のワイヤ22が接触した各個所についての、XYZ座標軸系の位置情報を検出すると共に、該各個所の位置情報を互いに連係させて、溶接対象の枝管2aと母管1との実際の溶接個所について、周方向の全周に亘りその詳細な位置情報を計測する。更に、上記制御装置20では、上記溶接対象の枝管2aと母管1との実際の溶接個所について得られた詳細な位置情報を基に、上記溶接トーチ11を該溶接個所に周方向の全周に亘り正確に沿わせて円周動作させるために必要とされる枝管溶接機4の位置補正量を求める補正演算処理を行い、一旦記憶する。
【0055】
その後、上記制御装置20により上記溶接対象の枝管2aに馬蹄型ガイド5を外嵌させた枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作による該溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所の溶接作業を行うときには、同時に、上記ロボットコントローラ19により上記制御装置20より取得した位置補正量に基づいて上記多関節ロボットを制御して上記枝管溶接機4の位置の補正を行わせる。なお、上記溶接トーチ11の円周動作に伴う位置補正は、実際の溶接作業の前に予めティーチングを行うか、又は、溶接トーチ11の位置補正を行いながら溶接作業を行わせるようにすればよい。
【0056】
これにより、上記枝管溶接機4の円周動作する溶接トーチ11によって、上記溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所が、周方向の全周に亘り適切に溶接(隅肉溶接)されるようになる。
【0057】
したがって、上記母管1に仮付けされた各枝管2について、上記と同様の手順を順次繰り返して実施することにより、上記各枝管2は、該各枝管2ごとに個別に行われる上記探触子14を用いたセンシング作業により計測される位置情報を基に測定される設計データからの位置ずれに応じて、枝管溶接機4及びその溶接トーチ11の位置が補正された状態で母管1に対する溶接作業が順次行われるようになる。
【0058】
このように、本発明の自動溶接装置によれば、母管1の周方向及び長手方向に枝管2を密に配置した構成のヘッダを製造するために、上記母管1に取り付ける枝管2の隣接するもの同士の間隔が狭くなる場合であっても、多関節ロボットのロボットハンド12に旋回台13を介して取り付けてある枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を、母管1の長手方向に沿って仮付けされた複数の枝管2のうちの溶接対象の枝管2aに正確に外嵌させることができる。又、この馬蹄型ガイド5の溶接対象の枝管2aに対する外嵌の際に、該馬蹄型ガイド5が溶接対象の枝管2aや、母管1に既設又は仮付けされた他の枝管2に対して干渉する虞は解消することができる。
【0059】
又、溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所に、他の枝管2の溶接時の熱により生じた母管1の撓みや歪み、及び、母管1における各枝管2の取付部分に設けてある図示しない孔の加工精度、更には、上記母管1に仮付けされている溶接対象の枝管2aの傾き等に起因する様々な誤差が生じていても、該溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所を、周方向の全周に亘り正確に溶接することができる。
【0060】
更に、上記溶接対象の枝管2aのXYZ座標系での位置の設計データからの位置ずれ(XY軸方向の位置ずれ、Z軸方向からの傾き)の検出や、該検出された位置ずれに応じて枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5の位置を補正するための位置補正量を求める演算処理を、ロボットコントローラ19の外部に設けた制御装置20で行うようにしてあるため、上記ロボットコントローラ19では、複雑な演算処理を要することなく、上記設計データに、上記制御装置20より取得する枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5の位置補正量の演算結果を加えた位置情報に基づいて、上記多関節ロボットを制御するようにすればよい。よって、一般的に用いられている(汎用の)多関節ロボットのロボットコントローラ19では新たなプログラムが必要になる等、処理が煩雑になる複雑な補正演算処理を、容易に行うことができる。又、上記ロボットコントローラ19ではブラックボックス化される虞のある補正結果等の外部管理や確認を、上記制御装置20で行うことが可能になる。更には、上記制御装置20により、補正値の外部設定を行うことも可能になる。
【0061】
又、本実施の形態においては、上記枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作を、上記制御装置20により制御させるようにしてあるため、上記多関節ロボットとしては、ロボットハンド12の先端部までに複数の制御軸を備えた6軸ロボット等の通常の多関節ロボットを採用することができる。よって、通常の多関節ロボットに新たな軸の追加や、この追加する新たな軸のための制御プログラムの追加等を要することなく本発明の自動溶接装置を構成することができる。これにより、本発明の自動溶接装置の製造に要する手間及びコストを抑える効果も期待できる。
【0062】
上記実施の形態においては、本発明の自動溶接装置を、枝管の位置のセンシング作業と、枝管の母管に対する溶接作業を、1基の多関節ロボットで行うものとして説明したが、本発明の自動溶接装置は、図4に示すように、枝管の位置のセンシング作業と、枝管の母管に対する溶接作業を、個別の多関節ロボットで行わせる形式としてもよい。
【0063】
すなわち、図4に示す本発明の自動溶接装置は、母管1の一側に、該母管1の長手方向に平行に延びるガイドレール24を設置して、該ガイドレール24に、2基の多関節ロボット25と26を独立して往復動可能に取り付ける。
【0064】
更に、上記母管1の長手方向一端側に位置する一方の多関節ロボット25のロボットハンド25aの先端部に、図1乃至図3に示した枝管溶接機4と同様の枝管溶接機4を取り付けると共に、上記母管1の長手方向他端側に位置する他方の多関節ロボット26のロボットハンド26aの先端部に、図1乃至図3に示した探触子14と同様の探触子14を取り付ける。なお、図4では、図示する便宜上、上記各多関節ロボット25,26は、上記母管1の長手方向と対応するガイドレール24の長手方向であるX軸方向へ移動する機能と、それに直角な水平方向であるY軸方向へ、各ロボットハンド25a,26の先端部を移動させる機能以外の構成は簡略化して記載してある。又、上記枝管溶接機4における馬蹄型ガイド5と溶接トーチ11以外の構成の記載は省略してある。上記図4に一点鎖線で描いた円弧は、上記溶接トーチ11の円周動作の軌道の概要を示すものである。
【0065】
上記探触子14を取り付けたセンシング作業用の多関節ロボット26のロボットコントローラ27には、一方の電極(図では正極)28aを上記探触子14に通電ライン29を介して接続し且つ他方の電極(図では負極)28bを母管1に通電ライン30を介して接続した通電検出式のタッチセンサ28による接触検出信号を入力できるようにする。
【0066】
更に、上記ロボットコントローラ27は、該ロボットコントローラ27で制御している上記センシング作業用の多関節ロボット26のロボットハンド26aの先端部の位置及び向きの情報と、上記探触子14の形状(長さ)等についての既知のデータとを基に、母管1に仮付けしてある枝管2における上記探触子14が接触するときの該接触個所についてのXYZ座標軸系に関する位置を検出して、該検出した位置情報を、通信線31を介して接続した制御装置20aへ向けて外部出力できるようにする。
【0067】
一方、上記枝管溶接機4を取り付けた溶接作業用の多関節ロボット25のロボットコントローラ32には、一方の電極(図では正極)33aを上記枝管溶接機4の溶接トーチ11のワイヤ22に通電ライン34を介して接続し且つ他方の電極(図では負極)33bを母管1に通電ライン35を介して接続した通電検出式のタッチセンサ33による接触検出信号を入力できるようにする。
【0068】
更に、上記ロボットコントローラ32は、該ロボットコントローラ32で制御している上記溶接作業用の多関節ロボット25のロボットハンド25aの先端部の位置及び向きの情報と、上記枝管溶接機4の形状、溶接トーチ11の形状、該溶接トーチ11のワイヤ22の突出寸法等についての既知のデータとを基に、上記溶接トーチ11のワイヤ22を探触子として、上記母管1に仮付けしてある枝管2やその下方近傍の母管1に接触させるときに、それぞれの接触個所についてのXYZ座標軸系に関する位置を検出して、該検出した位置情報を、通信線36を介して接続した制御装置20aへ向けて外部出力できるようにする。
【0069】
上記制御装置20aは、上記センシング作業用の多関節ロボット26のロボットコントローラ27より、或る枝管2に上記探触子14が接触したときの接触個所についてのXYZ座標軸系に関する位置情報が入力されると、その位置情報を基に、上記或る枝管2のXYZ座標軸系における位置と、Z軸方向からの傾きを測定する機能を備える。
【0070】
更に、上記制御装置20aは、上記或る枝管2のXYZ座標軸系での位置と、Z軸方向からの傾きの測定結果を基に、上記或る枝管2の位置について、設計データに基づく位置からのずれ量を検出する機能を備えると共に、該或る枝管2を溶接対象とする場合に、上記検出された設計データからのずれ量を解消して上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象とする上記或る枝管2に外嵌させることができるようにするために必要とされる該馬蹄型ガイド5の位置補正量を求める演算処理を行い、その演算結果を、各枝管2ごとに一旦記憶する機能を備える。
【0071】
又、上記制御装置20aは、上記溶接作業の多関節ロボット25をそのロボットコントローラ32により制御してロボットハンド25aに取り付けてある枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を、溶接対象の枝管2aに外嵌させるときに、該溶接対象の枝管2aについて予め記憶してある上記馬蹄型ガイド5の位置補正量の演算結果を呼び出して、上記ロボットコントローラ32へ出力できるようにしてある。
【0072】
更に、上記制御装置20aは、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5に保持させた溶接トーチ11の円周動作を制御する機能を備える。
【0073】
更に又、上記制御装置20aは、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を上記溶接対象の枝管2aに外嵌させた状態で、該制御装置20aにより円周動作を制御する枝管溶接機4の溶接トーチ11を探触子として円周動作の軌道の周方向所要間隔の複数個所で検出した上記溶接対象の枝管2a及びその下方近傍に位置する母管1との接触個所のXYZ座標軸系での位置情報が入力されると、周方向の各個所で検出した位置情報を互いに連係させることで、溶接対象の枝管2aと母管1との実際の溶接個所について、周方向の全周に亘りその詳細な位置情報を計測する機能を備えるようにしてある。
【0074】
上記制御装置20aは、更に、上記したように溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所について得られている詳細な位置情報を基に、上記溶接対象の枝管2aに外嵌させた枝管溶接機4の円周動作する溶接トーチ11により上記溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所の実際の溶接作業を行うときには、上記円周動作する溶接トーチ11が、該溶接個所に沿って周方向の全周に亘り正確に移動するようにするために必要とされる枝管溶接機4の位置補正量を求める補正演算処理を行い、その位置補正量の演算結果を、上記溶接作業用の多関節ロボット25のロボットコントローラ32へ与える機能も備えるようにしてある。これにより、上記溶接対象の枝管2aに外嵌させた枝管溶接機4の溶接トーチ11を円周動作させて上記溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所の実際の溶接作業を行うときには、上記制御装置20aによる溶接トーチ11の円周動作の制御と同時に、上記ロボットコントローラ32による上記溶接作業用の多関節ロボット25の制御を介してロボットハンド25aの先端部に取り付けてある枝管溶接機4の位置を、上記制御装置20aより与えられる位置補正量の演算結果を基に補正することで、上記円周動作する溶接トーチ11を、上記溶接対象の枝管2aと母管1との溶接個所に向けて周方向の全周に亘り正確に配置できるようにしてある。
【0075】
その他、図1乃至図3に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0076】
以上の構成としてある本発明の自動溶接装置によっても、上記図1乃至図3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
上記本発明の実施の形態においては、母管1に取り付ける各枝管2,2aについてのセンシング作業と、溶接対象の枝管2aの母管1に対する溶接作業を、個別の多関節ロボット26と25で独立して行わせるようにしてあるため、センシング作業用の多関節ロボット26では、各枝管2,2aの位置計測を連続して次々に実施することができる一方、溶接作業用の多関節ロボット25では、溶接作業のみに時間を割くことができるようになる。
【0078】
したがって、上記溶接作業用の多関節ロボット25の枝管溶接機4を用いて所定の溶接順序にしたがって各枝管2を順次溶接対象の枝管2aとしてその溶接作業を実施している間に、上記センシング作業用の多関節ロボット26では、探触子14を用いて溶接順序が後の枝管2についてのセンシング作業を並行して(同時作業で)実施することができることから、上記母管1に対して該母管1の長手方向に配列された複数の枝管2,2aをすべて溶接するまでに要する溶接処理時間を短縮させることができる。よって、上記母管1に複数の枝管2,2aを溶接する溶接処理に関する単位時間当たりの処理能力(スループット)を向上させることが可能になる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、枝管2,2aの位置を検出するためのセンサとして、直線状の探触子14を示したが、多関節ロボットのロボットハンド12や、多関節ロボット26のロボットハンド26aの先端部に取り付けて、枝管2,2aの存在を検出できるようにしてあれば、別の形状の探触子14を採用してもよい。又、探触子14に代えて、耐熱型の光学式又は磁気式の変位センサを用いるようにしてもよい。この場合、該変位センサの検出形式に応じてそのロボットハンド12,26aへの取付手段、取付構造は自在に設定してよい。
【0080】
上記各実施の形態では、制御装置20,20aを、センシングにより検出された溶接対象の枝管2aのXYZ座標軸系での位置とZ軸方向からの傾きの測定結果を基に、上記溶接対象の枝管2aと母管1の位置について設計データの位置からのずれ量を検出する機能と、このずれ量を解消して上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象の枝管2aに外嵌させることができるようにするために必要とされる該馬蹄型ガイド5の位置補正量を求める演算処理を行い、その位置補正量の演算結果を、枝管溶接機4を備えた多関節ロボット25のロボットコントローラ19,32へ与える機能を備えるものとして示したが、上記制御装置20,20aを、上記溶接対象の枝管2aと母管1の位置について設計データの位置からのずれ量を検出して、このずれ量を枝管溶接機4を備えた多関節ロボット25のロボットコントローラ19,32へ与える機能を備えるものとし、一方、該ロボットコントローラ19,32に、上記ずれ量を解消して上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象の枝管2aに外嵌させることができるようにするために必要とされる該馬蹄型ガイド5の位置補正量を求める演算処理を行う機能を持たせるようにしてもよい。
【0081】
更に、枝管溶接機4を装備して溶接作業に用いる多関節ロボット25に制御軸を増やす必要がなく、又、その制御を行うロボットコントローラ19,32に複雑な位置補正のためのプログラムの追加を不要にできるという観点から考えると、上記枝管溶接機4の溶接トーチ11の円周動作を制御する機能は、ロボットコントローラ19,32の外部に設けた制御装置20,20aに持たせることが望ましいが、上記ロボットコントローラ19,32に持たせるようにしてもよい。
【0082】
上記溶接対象の枝管2aに、枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を外嵌させた後に、溶接対象の枝管2aと、その下方近傍の母管1との溶接個所に関し、周方向の全周に亘りその詳細な位置情報を得て、該位置情報を基に、上記枝管溶接機4の溶接トーチ11を円周動作させるときに位置補正を行うことが望ましいが、溶接時の熱による母管1の撓みや歪みが小さい場合や、母管1における各枝管2の取付部分に設ける図示しない孔の精度が十分に高い場合等には、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を外嵌させた後の溶接トーチ11のワイヤ22を探触子とする溶接対象の枝管2aと、その下方近傍の母管1との溶接個所についてのタッチセンシングは省略してもよい。この場合は、上記溶接トーチ11のワイヤを探触子として行うタッチセンシングに関する装置構成を省略してもよい。
【0083】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
1 母管
2 枝管
2a 溶接対象の枝管
4 枝管溶接機
5 馬蹄型ガイド(ガイド)
5a 切欠部
11 溶接トーチ
14 探触子(センサ装置)
16 タッチセンサ(センサ装置)
19 ロボットコントローラ
20,20a 制御装置
25 多関節ロボット(ロボット)
26 多関節ロボット(ロボット)
27 ロボットコントローラ
28 タッチセンサ(センサ装置)
32 ロボットコントローラ
33 タッチセンサ(センサ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母管に仮付けした枝管の位置を検出するためのセンサ装置と、溶接対象の枝管に外嵌させるための切欠部を有するガイドと該ガイドに保持され且つ上記切欠部を超えて円周動作できるようにしてある溶接トーチを具備してなる枝管溶接機を、個別の又は共通のロボットに取り付け、更に、上記ロボットの制御を行うためのロボットコントローラと、上記ロボットコントローラの外部に設けて該ロボットコントローラと接続した制御装置とを備え、且つ上記制御装置は、上記ロボットコントローラによりロボットを制御して上記枝管溶接機のガイドを溶接対象の枝管に外嵌させるときの該ガイドの位置と、上記センサ装置により検出された枝管の位置とのずれ量を検出して、該検出されたずれ量を解消するための上記ガイドの位置補正量を求める機能と、該求めた位置補正量を上記枝管溶接機のガイドを溶接対象の枝管に外嵌させる操作を行う上記ロボットコントローラへ与える機能を備えてなるものとした構成を有することを特徴とする自動溶接装置。
【請求項2】
制御装置を、枝管溶接機の溶接トーチの円周動作を制御する機能を備えてなるものとした請求項1記載の自動溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218365(P2011−218365A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86746(P2010−86746)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】