説明

自動車用ガラスラン

【課題】ドアフレームへの装着が容易で、確実に保持されるとともに、装飾性に優れたガラスランを得る。
【解決手段】
ドアフレーム2のガラスラン10を装着する部分は、断面略L字形で形成され、ドアフレーム2に車内側側壁30と底壁40が保持されるガラスラン10において、
底壁40と車外側側壁20は、オレフィン系アイオノマー樹脂で形成され、車内側側壁30と、車外側ガラスシールリップ21と、車内側ガラスシールリップ31は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、底壁40と車外側側壁20は、車内側側壁30、車外側ガラスシールリップ21と車内側ガラスシールリップ31よりも硬い材料で形成され、車外側側壁20の車外側表面には、光透過率が80%以上の透明性を有するナイロン樹脂層23が形成されたことを特徴とする自動車用ガラスランである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアのドアフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランに関するものであり、特に、ドアフレームの内周にガラスランを取り付けるチャンネルが、ガラスランの車外側側壁を保持する部分を設けずに、ガラスランの車外側側壁が直接車外側に露出するガラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、自動車のドア1のドアフレーム2の内周に、ドアガラス5の昇降を案内するガラスラン110が取付けられている。その従来の取付構造を図4に示す。図4は、図3におけるA−A線に沿った断面図である。
【0003】
従来、ガラスラン110は、図3に示すように、ドアフレーム2のチャンネル3内に取付けられて、ドアガラス5の昇降を案内するとともにドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。さらに、ガラスラン110は、押出成形により成形された直線状の直線部111からなるドア1の上辺部とフロント側縦辺部及びリヤ側縦辺部を、ドアフレーム2の形状に合わせて型形成するコーナー部112で接続している。
なお、ドア1と車体との間のシールは、図4に示すように、ドアフレーム2の外周に取付けられたドアウエザストリップ108および/または車体の開口部のフランジに取付けられたオープニングトリムウエザストリップ109によりなされている。
【0004】
ガラスラン110は、車外側側壁120と、車内側側壁130と、底壁140からなる断面略U字状をなしている。車外側側壁120の先端付近から車外側シールリップ126が上記断面略U字状の内側に向けて延出するように設けられている。また、車内側側壁130にもその先端付近から車内側シールリップ136が断面略U字状の内側に向けて延出するように設けられている。さらに、車外側側壁120の車外側の外面の先端付近から車外側側壁120と平行に底壁140方向に車外側モールリップ124が延設され、車内側側壁130の車内側の外面の先端付近から車内側側壁130と平行に底壁140方向に車内側モールリップ134が延設されている。
【0005】
車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140はドアフレーム2に設けられたチャンネル3内に挿入され、各壁の外面がチャンネル3の内面に当接される。車外側側壁120と車外側モールリップ124の間にチャンネル3の側端部とドアフレーム2のアウターパネル2bの先端部が挿入され、車内側側壁130と車内側モールリップ134の間にチャンネル3の側端部とインナーパネル2cの先端部が挿入され、ガラスラン110を保持している。
【0006】
ドアガラス5は、このガラスラン110の断面略U字状の本体部の内側を摺動するとともに、上記車外側シールリップ126と車内側シールリップ136によってドアガラス5の端部の両側面がシールされて保持されている。
ドアガラス5を閉じるとき、パワーウインドのドアガラス5がドアフレーム2の縦辺部に沿って上昇し、ドアガラス5の上端がドアフレーム2の上辺に装着されているガラスラン110の上辺の本体部内に挿入され、底壁140に当り、底壁140はチャンネル3の底壁140に当接し、チャンネル3内でガラスラン110を介して保持される。
【0007】
しかしながら、図5に示すように、自動車の見栄えの向上やドアフレーム2の構造上の制約のために、ガラスラン110を目立たなくするため、ガラスラン110の車外側側壁120と車外側シールリップ126を短くして、車外側モールリップ124をなくすかあるいはきわめて短くして、車内側側壁130と車内側シールリップ136を長くすることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
さらに、図6に示すように、見栄えの向上のためにドアフレーム2の車外側の幅を狭くすることや、ドアフレーム2の車外側部分を削除することも試みられている。この場合は、ガラスラン210を保持するチャンネル3は、ドアフレーム2の車内側側壁230側及び/または底壁240側に設けられることとなる。
【0009】
この場合、ガラスラン210の車内側側壁230または底壁240を撓ませてチャンネル3内に嵌め込むが、チャンネル3に装着しやすくする必要があった。このため、車内側側壁230を軟質材で形成し、底壁240と車外側側壁220を硬質材で形成することが行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
一方、ガラスラン210の車外側側壁220の剛性が低いと、自動車の振動等に伴うドアガラス5の振動でガラスラン210の車外側側壁220が変形し、ドアガラス5がガラスラン210から外れてしまう恐れがあった。
このため、ガラスラン210の剛性を増加するように、車外側側壁220、車内側側壁230および底壁240の内部に補強材としてインサートを埋設することも行なわれている。
【0011】
しかしながら、インサートを埋設するとガラスラン210の重量が増加し、車両の軽量化を損なうこととなるとともに、製造も複雑となり、コストも増大し、製造効率も低下した。
また、ガラスラン210の全体の剛性を増加させると、チャンネル3内への装着に手間がかかることとなる。
【0012】
さらに、ドアフレーム2の車外側部分を削除する場合には、ガラスラン210の車外側側壁220の外面が装飾面として車外側に露出するため、その装飾面の保護のために、耐傷付性及び耐薬品性を付与することも必要であった。
そのため、図7に示すように、モールディング310において、その本体である車外側側壁320、車内側側壁330及び底壁340の内、車外側から見える車外側側壁320及び底壁340の外面にナイロン樹脂層350を熱融着するものもある(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、単にナイロン樹脂層350を熱融着したのみでは、充分な装飾性が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−280753号公報
【特許文献2】特開2006−281845号公報
【特許文献3】特開2008−74370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このため、ドアフレームへの装着が容易で、確実に保持されるとともに、装飾性に優れたガラスランを得ることが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランであって、
ドアフレームのガラスランを装着する部分は、断面略L字形で形成され、
ガラスランの本体部は、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字形をなし、底壁の少なくとも車内側側壁との連続部位は断面略L字形に形成され、車外側側壁と車内側側壁の先端から、それぞれ断面略U字状の本体部の内側に向かって延出する車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップが延設され、ドアフレームに車内側側壁と底壁が保持されるガラスランにおいて、
底壁と車外側側壁は、オレフィン系アイオノマー樹脂で形成され、車内側側壁と、車外側ガラスシールリップと、車内側ガラスシールリップは、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、底壁と車外側側壁は、車内側側壁、車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップよりも硬い材料で形成され、車外側側壁の車外側表面には、光透過率が80%以上の透明性を有するナイロン樹脂層が形成されたことを特徴とする自動車用ガラスランである。
【0016】
請求項1の本発明では、ドアフレームのガラスランを装着する部分は、断面略L字形で形成されているため、断面略U字形に形成する場合と比べて断面形状が簡単になり、ドアフレームの成形が容易である。
ガラスランの本体部は、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字形をなしている。また、底壁の少なくとも車内側側壁との連続部位は断面略L字形に形成されている。そのため、ドアガラスの上昇時に、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字状のガラスランの本体部の内側にドアガラスの先端を収納することができるとともに、底壁と車外側側壁とでドアガラスの先端を確実に保持することができる。
【0017】
底壁と車外側側壁は、国際ゴム硬度(IRHD)が70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で形成されて、底壁と車外側側壁は、車内側側壁とガラスシールリップよりも硬度が大きく形成されているため、ドアガラスにより車外側側壁が変形しにくく、走行時にドアガラスが振動しても、ドアガラスの先端を保持してドアガラスの先端がガラスランの本体部の内部から外れることを防止することができる。
また、オレフィン系アイオノマー樹脂であるため、強靭で適度な弾力性と柔軟性を有するとともに、耐候性と耐磨耗性を有することができ、ドアフレームに装着し易く、ドアフレームの形状に沿って装着することができる。
【0018】
車内側側壁と、車外側ガラスシールリップと、車内側ガラスシールリップは、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されているため、柔軟性と弾力性を有して、車内側側壁をドアフレームのチャンネルに取付けることが容易であり、車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップが柔軟にドアガラスに当接することができ、ドアガラスの上昇がスムースにできるとともに、ドアガラスとガラスランの間のシールを確実に行うことができる。
さらに、オレフィン系アイオノマー樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーは、いずれもオレフィン系であり、同時押出成形により強固に熱融着させることができる。
【0019】
車外側側壁の車外側表面には、光透過率が80%以上の透明性を有するナイロン樹脂層が形成されたため、ガラスランの車外側から見た表面を耐傷付性と耐薬品性にすることができるとともに、表面光沢を付与して見栄えを向上させることができる。車外側側壁がオレフィン系アイオノマー樹脂で形成されているため、ナイロン樹脂と熱融着することができ、ガラスランの本体を押出成形するときに、ナイロン樹脂層と車外側側壁とを強固に融着することができる。光透過率が80%未満では表面光沢が低下してしまい、所望の外観が得られない。
【0020】
請求項2の本発明は、車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップの表面には、滑剤成分を含んだショアD硬度35度〜55度のオレフィン系熱可塑性エラストマーの被覆層が形成された自動車用ガラスランである。
【0021】
請求項2の本発明では、車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップの表面には、滑剤成分を含んだショアD硬度35度〜55度のオレフィン系熱可塑性エラストマーの被覆層が形成されている。このため、ドアガラスの昇降につれてドアガラスの先端が車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップの表面に当接すると、摺動抵抗が小さく容易に、異音が発生することなく、摺動することができるとともに、柔軟性が高く、車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップが柔軟に撓んで、ドアガラスとガラスランの間のシール性を確保することができる。また、同じオレフィン系熱可塑性エラストマーであるため、同時押出成形等で強固に融着することができる。ショアD硬度35度未満だと、ドアガラスとの摺動抵抗が大きくなり、磨耗が生じて、異音が発生しやすくなる。ショアD硬度55度を越えると車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップが硬くなりすぎて、ドアガラスに対して馴染みが悪くシール性が低下する。
【0022】
請求項3の本発明は、底壁の外面に底壁チャンネル凹部を形成し、車内側側壁の外面に車内側側壁チャンネル凹部を形成し、ドアフレームにチャンネルを取付けて、チャンネルの両側端を底壁チャンネル凹部と車内側側壁チャンネル凹部に嵌め込んでガラスランを保持する自動車用ガラスランである。
【0023】
請求項4の本発明では、底壁の外面に底壁チャンネル凹部を形成し、車内側側壁の外面に車内側側壁チャンネル凹部を形成し、ドアフレームにチャンネルを取付けて、チャンネルの両側端を底壁チャンネル凹部と車内側側壁チャンネル凹部に嵌め込んでガラスランを保持する。このため、底壁と車内側側壁をドアフレームのチャンネルで確実に保持することができ、車外側側壁を保持しなくてもガラスランがドアフレームから外れることがない。
車内側側壁は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されているため、容易に車内側側壁チャンネル凹部にチャンネルの側端を嵌め込むことができる。
【発明の効果】
【0024】
底壁と車外側側壁は、オレフィン系アイオノマー樹脂で形成されているため、底壁と車外側側壁は硬度が大きく車外側側壁が変形しにくく、走行時にドアガラスが振動しても、ドアガラスの先端を保持してドアガラスの先端がガラスランの本体部の内部から外れることを防止することができる。
車内側側壁と、車外側ガラスシールリップと、車内側ガラスシールリップは、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されているため、柔軟性と弾力性を有して、車内側側壁をドアフレームのチャンネルに取付けることが容易であり、ドアガラスの上昇がスムースにできるとともに、ドアガラスとガラスランの間のシールを確実に行うことができる。
車外側側壁の車外側表面には、光透過性が80%以上の透明性を有するナイロン樹脂層が形成されたため、ガラスランの車外側から見た表面を耐傷付性と耐薬品性にすることができるとともに、表面光沢を付与して見栄えを向上させることができる。さらに、ナイロン樹脂層と車外側側壁とを強固に融着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態であるガラスランの断面図であり、図2のA−A線に沿った部分の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態であるガラスランの展開された状態の断面図である。
【図3】自動車ドアの側面図である。
【図4】従来のドアフレームに取付けられたガラスランの断面図であり、図3のA−A線に沿った部分の断面図である。
【図5】従来の他のガラスランの断面図である。
【図6】従来の他のガラスランの断面図である。
【図7】従来のモールディングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図1〜図3に基づき説明する。
図3は自動車のドア1の側面図である。図1は、本発明の実施の形態におけるドアフレーム2に装着されたガラスラン10の断面図であり、図3のA−A線に沿った部分の断面図である。図2は、本発明のガラスラン10がドアフレーム2に装着される前の展開された状態の断面図である。
【0027】
図3に示すように、自動車のドア1のベルトラインより上部にはドアフレーム2が設けられ、ドアガラス5が昇降自在に取付けられる。即ち、ドアフレーム2の内周には、ガラスラン10が取付けられ、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。このとき、ドアフレーム2には、後述するように、ガラスラン10を保持するチャンネル3が設けられている。
【0028】
ガラスラン10は、全体として押出成形で形成された略直線状の直線部11と、ドアフレーム2のコーナー部に取付けられ、その直線部11を接続し型成形で形成されるコーナー部12からなる。
直線部11は、ドアフレーム2の上辺に取付けられる部分と、ドアフレーム2のリヤ側縦辺に取付けられる部分と、ドアフレーム2のフロント側縦辺に取付けられる部分とからなり、本実施の形態では、特に、ドアフレーム2の上辺に取付けられる部分に関するものを例にとり説明する。
【0029】
直線部11が装着されるドアフレーム2の上辺には、図1に示すように、ドアフレーム2のアウターパネル2bとインナーパネル2cのそれぞれの先端が重ねあわされるようにしてガラスラン10を収納する開口を形成する。
また、ドアフレーム2の上辺において、アルミニウム製またはステンレス製のアウターパネル2bは、断面が略L字形に形成され、L字形の一方の辺はドアフレーム2に対して上部平坦面を形成し、他方の辺は、ドアフレーム2に対して車外側に開口する側部平坦面を形成する。アウターパネル2bの上部平坦面には、ガラスラン10がその底壁40を当接させるように配置される。
【0030】
アウターパネル2bの上部平坦面の車外方向先端は、上方に屈曲してパネルモール部2dとなり、ドアフレーム2の車外側の面を形成している。パネルモール部2dの先端には保護トリム2fが取付けられている。
アウターパネル2bの断面略L字形の側部平坦面には、断面略U字形のチャンネル3が溶接やビス止めで固着されている。チャンネル3の側端は、それぞれ断面略U字形の内部方向に屈曲しており、ガラスラン10に設けられた後述する凹部に嵌め込まれて、ガラスラン10を保持する。
【0031】
アウターパネル2bの車内側には、ドアフレーム2の強度を上げるために、断面略U字形の板金製のリンフォース4が設けられている。
リンフォース4の車内側には、板金製のインナーパネル2c、2eが形成されている。さらに、インナーパネル2eの内側には、樹脂製のガーニッシュ60が設けられている。図1ではガーニッシュ60の下部の先端部分が記載されている。アウターパネル2bの上側の先端には、保護トリム2fとの間に、リップ状のドアウエザストリップ(図示せず)が装着されて、車体開口部との間をシールしている。なお、ガーニッシュ60の下側の先端は、屈曲してガラスラン10の車内側側壁30を保持している。
【0032】
ガラスラン10は、車外側側壁20、車内側側壁30と底壁40からなる断面略U字形の本体部を有している。車外側側壁20と底壁40は国際ゴム硬度(IRHD)70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で形成され、車内側側壁30は国際ゴム硬度(IRHD)50度〜70度のオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されている。本実施の形態では、車外側側壁20と底壁40はIRHD硬度80度で形成され、車内側側壁30は、IRHD硬度60度で形成されている。
なお、車外側側壁20、車内側側壁30と底壁40の内部には補強材としてのインサートが埋設されていない。このため、ガラスラン10の軽量化を図ることができる。
【0033】
車内側側壁30の先端部には、前述したガーニッシュ60の先端が挿入される車内側パネル凹部33が形成されている。
車内側パネル凹部33よりも底壁40側の車内側面に車内側チャンネル凹部34が形成されている。車内側チャンネル凹部34には、前述したドアフレーム2のチャンネル3の側端が挿入されて、車内側側壁30を保持している。
【0034】
車内側側壁30の上記断面略U字形の内面側のほぼ中央部には、凹状の溝部35が設けられている。この溝部35は、図2に示すように、ガラスラン10の押出成形時において本体部が展開された状態で形成され、断面略U字形に形成されるが、チャンネル3に装着されたときは、図1に示すように断面略U字形の溝部35の開口側先端が相互に当接して閉じられる。このため、車内側側壁30をチャンネル3に装着したときに、車内側側壁30に横方向から力が加わっても、この当接により突っ張ることができ、チャンネル3の中で強固に装着される。したがって、ドアガラス5の昇降によりガラスラン10がチャンネル3から外れることがない。
【0035】
なお、車内側側壁30の車内側面は、柔軟性を向上させるために凹面状に形成することができる。本実施の形態では、車内側側壁30の外面が円弧状に中央部が凹んで形成された湾曲部38とされている。このため、車内側側壁30の内面側に形成された溝部35とあいまって、ガラスラン10の車内側側壁30部位をドアフレーム2のチャンネル3に装着するときに、チャンネル3に挿入する車内側側壁30等を撓ませることが容易となり、装着が容易である。
【0036】
また、車内側側壁30の車内側面にチャンネル3に当接するチャンネル保持リップ36を設けてもよい。チャンネル保持リップ36によりガラスラン10とチャンネル3との間をシールすることができる。なお、車内側側壁30には、車内側パネル凹部33付近において、車内側パネル保持リップ37が、車内側チャンネル凹部34付近において、車内側チャンネル保持リップ39が一体に形成されている。車内側チャンネル保持リップ39がチャンネル3を保持し、車内側パネル保持リップ37がガーニッシュ60の先端部を保持している。
【0037】
車内側側壁30の先端には、断面略U字形の本体部の内部に向かって車内側ガラスシールリップ31が形成されている。車内側ガラスシールリップ31は、ドアフレーム2の構造上、車内側の部分が大きくなるため、車外側ガラスシールリップ21よりも大きく形成されている。
車内側ガラスシールリップ31は、国際ゴム硬度(IRHD)が50度〜70度のオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されている。本実施の形態では国際ゴム硬度(IRHD)が60度のものを使用している。
【0038】
上記の硬度を有するため、車内側ガラスシールリップ31は、柔軟性と弾力性を有して、車内側側壁30をドアフレーム2のチャンネル3に取付けることが容易であり、後述する車外側ガラスシールリップ21と車内側ガラスシールリップ31が柔軟にドアガラス5に当接することができ、ドアガラス5の上昇がスムースにできるとともに、ドアガラス5とガラスラン10の間のシールを確実に行うことができる。
【0039】
車内側ガラスシールリップ31と後述する車外側ガラスシールリップ21のドアガラス5と当接する外面には、滑剤成分を含んだショアD硬度35度〜55度のオレフィン系熱可塑性エラストマーの被覆層31b、21bが形成されている。滑剤成分としては、グラファイト、脂肪酸、シリコーン樹脂、アミド系樹脂を使用することができる。
【0040】
このため、ドアガラス5の昇降につれてドアガラス5の先端が車外側ガラスシールリップ21と車内側ガラスシールリップ31の表面に当接すると、摺動抵抗が小さく容易に、異音が発生することなく、摺動することができるとともに、車外側ガラスシールリップ21と車内側ガラスシールリップ31が柔軟に撓んで、ドアガラス5とガラスラン10の間のシール性を確保することができる。
なお、この滑剤成分は、後述する車内側カバーリップ32及び底壁リップ41の表面にも塗布または接着することが好ましい。
【0041】
車内側側壁30の先端の車内側ガラスシールリップ31と反対側には、車内側カバーリップ32が形成されている。車内側カバーリップ32は、上記したガーニッシュ60の端部を覆うことができ、美観を向上させることができる。また、車内側ガラスシールリップ31と車内側カバーリップ32が連続してドアガラス5の先端を案内することができ、ドアガラス5の先端が若干、車内側にずれてもガラスラン10の本体部の内部に導入することができる。
【0042】
車外側側壁20は、後述する底壁40と同じ材料である国際ゴム硬度(IRHD)が70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で、底壁40の車外側側壁20との連続部位は断面略L字形に形成されている。本実施の形態では、国際ゴム硬度(IRHD)が80度で形成されている。
このように車外側側壁20と後述する底壁40は、硬度が大きく、底壁40の車外側側壁20との連続部位は断面略L字形に形成されているため、ドアガラス5により車外側側壁20が変形しにくく、走行時にドアガラス5が振動しても、ドアガラス5の先端を保持してドアガラス5の先端がガラスラン10の本体部の内部から外れることを防止することができる。
また、オレフィン系アイオノマー樹脂であるため、強靭で適度な弾力性と柔軟性を有するとともに、耐候性と耐磨耗性を有することができ、ドアフレーム2の形状に沿って曲げることもでき、ドアフレーム2に装着し易くすることができる。
【0043】
車外側側壁20は、先端から断面略U字形の内部方向に斜めに延設された車外側ガラスシールリップ21が形成されている。車外側ガラスシールリップ21は、車内側ガラスシールリップ31と同様に、国際ゴム硬度(IRHD)が50度〜70度のオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されている。本実施の形態では、国際ゴム硬度(IRHD)が60度で形成されている。こため、柔軟性と弾力性を有して、上述のとおり、車外側ガラスシールリップ21が柔軟にドアガラス5に当接することができ、ドアガラス5の上昇がスムースにできるとともに、ドアガラス5とガラスラン10の間のシールを確実に行うことができる。
【0044】
車外側側壁20の車外側表面には、ショアD硬度70度〜95度の透明性を有するナイロン樹脂層23が形成されている。ナイロン樹脂層23は、透明性に優れたナイロン12で形成することが好ましい。このナイロン樹脂層23を有するため、ガラスラン10の車外側側壁20の車外側から見た表面を耐傷付性と耐薬品性にすることができるとともに、透明性に優れているため、表面光沢を付与して見栄えを向上させることができる。さらに、車外側側壁20がオレフィン系アイオノマー樹脂で形成されているため、ナイロン樹脂と熱融着することができ、ガラスラン10の本体を押出成形するときに、強固にナイロン樹脂層23と車外側側壁20と融着することができる。
【0045】
底壁40は、上記の車外側側壁20と一体に連続して国際ゴム硬度(IRHD)が70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で形成されている。本実施の形態では、国際ゴム硬度(IRHD)が80度で形成されている。
車外側側壁20と底壁40は、国際ゴム硬度(IRHD)が70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で形成されているため、車外側側壁20の剛性を増加させることでき、ドアガラス5の先端を保持する力が強く、インサートが埋設されていなくても自動車の振動等でドアガラス5の先端がガラスラン10の内部から外れることを防止できる
【0046】
上記底壁40と車内側側壁30との連続部分の断面略L字形の部分の内面には、底壁リップ41が形成される。底壁リップ41は、車内側側壁30から連続して軟質材である国際ゴム硬度(IRHD)が50度〜70度のオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、断面略U字状のガラスラン10の本体部の内側に向かって形成される。
【0047】
このため、ドアガラス5が上昇し、ドアフレーム2の上辺に装着されたガラスラン10の内部に挿入されたときに、ドアガラス5の先端が底壁リップ41に当接し、底壁リップ41の弾性によりドアガラス5の先端の衝撃を吸収することができ、ドアガラス5の先端が底壁40に衝突することを回避し、異音の発生を防止することができる。
【0048】
底壁40の本体部分から車内側側壁30との連続部分は、断面略L字形の底壁補強部43が形成され、しかも、底壁40から連続して硬質材である国際ゴム硬度(IRHD)が70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で形成されている。このため、ガラスラン10の本体部の底壁40と車外側側壁20が硬質材で断面略U字形に形成されるので、剛性が高くなり、ドアフレーム2に装着されたときに、本体部が断面略U字形を維持できる。
【0049】
一方、硬質材である国際ゴム硬度(IRHD)が70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で形成されている底壁チャンネル凹部42内にチャンネル3の一方の側端が嵌挿され、チャンネル3の他方の側端が軟質材である国際ゴム硬度(IRHD)が50度〜70度のオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されている車内側側壁30の車内側チャンネル凹部34と係合しているため、車内側側壁30のほぼ中央部に溝部35を有して軟質材で形成されていても、車内側側壁30はチャンネル3に対して強固に保持される。
【0050】
また、それに伴い底壁40と車外側側壁20も、一体的に硬質材で形成されているため、その形状を保持したままドアフレーム2に対して保持されることとなる。そのため、ドアガラス5の昇降によって、ガラスラン10がチャンネル3から外れることはない。
なお、本実施の形態では、底壁チャンネル凹部42を底壁40に形成したが、チャンネル3の一方の側端が嵌挿される凹部を、車内側側壁30の底壁40との連続部分の外面に設けてもよい。
【0051】
次に、ガラスラン10の製造方法について説明する。
ガラスラン10の成形においては、直線部11の成形材料は、上記のとおり底壁40と車外側側壁20は、国際ゴム硬度(IRHD)が70度〜90度のオレフィン系アイオノマー樹脂で形成され、車内側側壁30と、車外側ガラスシールリップ21と、車内側ガラスシールリップ31は、国際ゴム硬度(IRHD)が50度〜70度のオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、車外側側壁20の車外側表面には、ショアD硬度70度〜95度の光透過性80%以上の透明性を有するナイロン樹脂層23で形成されている。具体的には、エムスケミー・ジャパン者のTR90UVを用いることができる。
【0052】
オレフィン系アイオノマー樹脂は、エチレンーメタクリル酸共重合体やエチレンーアクリル酸共重合体の分子間をナトリウムや亜鉛などの金属イオンで分子間結合した構造を有する樹脂である。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリエチレン又はポリプロピレンのマトリックスにEPDMゴム又はEPRゴムを微分散させたエラストマーである。
【0053】
直線部11の成形は、押出成形機により、図2に示すように、オレフィン系アイオノマー樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーとを同時押出成形により、断面略U字形の本体部が展開された形状で、直線状に成形した後に、所定寸法に切断される。所定寸法に切断される前の冷却前に車外側側壁20の表面にナイロン樹脂(ナイロン12)のシート又は薄膜を熱融着させたり、押出成形時に同時に薄層押出成形により一体に形成されたりしている。
【0054】
ガラスラン10の本体部が展開された状態では、車外側ガラスシールリップ21と車内側ガラスシールリップ31の先端同士は接触しない状態である。通常、車外側ガラスシールリップ21と車内側ガラスシールリップ31の先端同士を接触させないようにするためには、車外側ガラスシールリップ21と車内側ガラスシールリップ31が設けられている車外側側壁20、車内側側壁30と底壁40とを回転中心としてそれぞれ展開させることが行なわれているが、このようにすると、車外側側壁20の車外側にドアフレーム2が存在しない状態では、車外側側壁20及びドアガラス5の先端を保持できなくなる。そのため、本願発明においては、底壁40と車外側側壁20のなす角度は、予め略直角に形成されて押出成形される。そして、図2において示すように、架台50により保持されて、冷却される。
【0055】
次に、コーナー部12を形成する型成形部分の成形は、上記により所定寸法に切断された直線部11の端部を、型成形部分を成形する金型に挟持して、その金型のキャビティーに型成形部分を形成する軟質材としてのオレフィン系熱可塑性エラストマーを注入する。型成形部分の断面形状は押出成形部分の断面形状と略同じである。成形材料は、押出成形部分に使用した材料と同じ種類のものを使用することが好ましい。熱可塑性エラストマーは、金型に注入されたときに注入材料は溶融されているため、その熱と圧力とで押出成形部分と型成形部分は一体的に融着される。
【符号の説明】
【0056】
2 ドアフレーム
3 チャンネル
5 ドアガラス
10 ガラスラン
20 車外側側壁
21 車外側ガラスシールリップ
23 ナイロン樹脂層
30 車内側側壁
31 車内側ガラスシールリップ
40 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ドアのドアフレームの内周に取付けられ、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランであって、
上記ドアフレームのガラスランを装着する部分は、断面略L字形で形成され、
上記ガラスランの本体部は、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略U字形をなし、上記底壁の少なくとも上記車外側側壁との連続部位は断面略L字形に形成され、上記車外側側壁と車内側側壁の先端から、それぞれ上記断面略U字状の本体部の内側に向かって延出する車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップが延設され、上記ドアフレームに上記車内側側壁と底壁が保持されるガラスランにおいて、
上記底壁と上記車外側側壁は、オレフィン系アイオノマー樹脂で形成され、上記車内側側壁と、上記車外側ガラスシールリップと、上記車内側ガラスシールリップは、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、底壁と車外側側壁は、車内側側壁、車外側ガラスシールリップと車内側ガラスシールリップよりも硬い材料で形成され、車外側側壁の車外側表面には、光透過率が80%以上の透明性を有するナイロン樹脂層が形成されたことを特徴とする自動車用ガラスラン。
【請求項2】
上記車外側ガラスシールリップと上記車内側ガラスシールリップの表面には、滑剤成分を含んだショアD硬度35度〜55度のオレフィン系熱可塑性エラストマーの被覆層が形成された請求項1に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項3】
上記底壁の外面に底壁チャンネル凹部を形成し、上記車内側側壁の外面に車内側側壁チャンネル凹部を形成し、上記ドアフレームにチャンネルを取付けて、該チャンネルの両側端を上記底壁チャンネル凹部と上記車内側側壁チャンネル凹部に嵌め込んで上記ガラスランを保持する請求項1又は請求項2に記載の自動車用ガラスラン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−173563(P2010−173563A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20342(P2009−20342)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】