説明

自動車用吸音シート及びこの吸音シートを用いた自動車用エンジンアンダーカバー

【課題】互いに積層状に設けた高分子有機材料からなる両層の間に多数の気泡を分散してなるシートを有効に活用して、騒音に対する吸音性を良好に発揮するようにした自動車用吸音シート及びこの吸音シートを用いた自動車用エンジンアンダーカバーを提供する。
【解決手段】吸音シート50bは、互いに積層した難燃性ポリエチレン樹脂からなる両フィルム52、53でもって構成されている。フィルム53は、平膜部53aと、多数の気泡部53bとを有しており、平膜部53aは、その裏面にて、平膜状のフィルム52にその表面側から固着されている。多数の気泡部53bは、フィルム52の面方向に沿い互いに千鳥状に分散して、平膜部53aの厚さ方向に沿いフィルム52から離れる方向に、円筒状に隆起して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用吸音シート及びこの吸音シートを用いた自動車用エンジンアンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、例えば、下記特許文献1に記載したエンジン用アンダーカバーが提案されている。このエンジンアンダーカバーは、エンジンの底部側に設けられており、当該エンジンアンダーカバーのエンジン側の内壁面には、多数の小突起が形成されている。
【0003】
このような構成によれば、エンジンから発生する騒音がエンジンアンダーカバーの内壁面の多数の小突起に入射すると、当該騒音が、多数の小突起によって乱反射される。このため、この乱反射による反射音が干渉して打ち消し合う。その結果、当該エンジンアンダーカバーによれば、吸音材を用いることなく、騒音の低減による吸音を図ることができるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−10544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成のエンジンアンダーカバーにおいては、多数の小突起が、上述のごとく、単に、エンジンアンダーカバーのエンジン側の内壁面に形成されているにすぎない。このため、これら多数の小突起が半球状に形成されて規則正しくエンジンアンダーカバーの内壁面に配列されていても、上述のような単なる反射音の打ち消し合いのみでは、上記騒音は、良好には低減されにくく、従って、当該多数の小突起は吸音性に欠けることとなる。その結果、多数の小突起に依っては、騒音に対する吸音を良好には確保できないという不具合が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、互いに積層状に設けた高分子有機材料からなる両層の間に多数の気泡を分散してなるシートを有効に活用して、騒音に対する吸音性を良好に発揮するようにした自動車用吸音シート及びこの吸音シートを用いた自動車用エンジンアンダーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る自動車用吸音シートは、請求項1の記載によれば、
柔軟な弾性を有する高分子有機材料により形成される第1層(52)と、
柔軟な弾性を有する高分子有機材料により形成されて第1層に沿い積層状に固着してなる第2層(53、54、55)とを備えて、
当該第2層(53)は、その気泡部(53b、54b、55b)を、吸音性の発揮可能に、第1層(52)に沿い分散させ、かつ当該第1層から離れる方向へ、多数、隆起させるように、形成してなるものである。
【0008】
これにより、当該吸音シートを、その第2層にて、自動車のうちエンジンの音等の騒音の伝搬の向きに対向するように、当該騒音の伝搬方向に位置する構成部位に設ければ、当該騒音が上記構成部位に伝搬して吸音シートに入射したとき、この騒音に対する吸音シートの反射は、吸音シートにより、その各気泡部のもとに、良好に抑制され得る。このことは、吸音シートが良好な吸音性を発揮し得ることを意味する。その結果、当該吸音シートによれば、上記騒音が良好に低減され得る。
【0009】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の自動車用吸音シートにおいて、第1層(52)は、その気泡部(52b)を、吸音性の発揮可能に、第2層(53、54、55)に沿い分散させ、かつ当該第2層から離れる方向へ、多数、隆起させるように、形成してなることを特徴とする。
【0010】
これにより、当該吸音シートを、その第2層にて、上記騒音の伝搬の向きに対向するように、当該騒音の伝搬方向に位置する構成部位に設ければ、当該騒音が上記構成部位に伝搬して吸音シートに入射したとき、この騒音の反射は、吸音シートにより、第2層及び第1層の双方の各気泡部のもとに、より一層良好に抑制され得る。その結果、当該吸音シートによれば、上記騒音がより一層良好に低減され得る。
【0011】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1または2に記載の自動車用吸音シートにおいて、
第1及び第2の両層は、それぞれ、7(μm)〜150(μm)の範囲以内の厚さを有するフィルムであり、
上記多数の気泡部は、それぞれ、5(mm)〜100(mm)の範囲以内の径及び高さを有する筒状気泡部であることを特徴とする。
【0012】
これによれば、第1及び第2の両層を、それぞれ、7(μm)〜150(μm)の範囲以内の厚さを有するフィルムとすることで吸音シートの軽量性及び柔軟な弾性するとともに、多数の気泡部を、それぞれ、5(mm)〜100(mm)の範囲以内の径及び高さを有する筒状気泡部とすることで各気泡部の吸音性を良好に確保しつつ、請求項1または2に記載の発明の作用効果をより一層確実に達成することができる。
【0013】
なお、気泡部が、例えば、円筒状である場合には、上記径は、円筒状気泡部の周壁部の径に対応し、また、気泡部が、例えば、四角筒状である場合には、上記径は、四角筒状気泡部の周壁部のうちの両対向壁部間の幅に対応する。
【0014】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車用吸音シートにおいて、第2層(53)を介し第1層(52)に対向するように第2層に沿い積層されて多孔質材料により形成してなる第3層(56)を具備することを特徴とする。
【0015】
これにより、当該吸音シートを、その第3層にて、上記騒音の伝搬の向きに対向するように、当該騒音の伝搬方向に位置する構成部位に設ければ、当該騒音が、上記構成部位に伝搬して吸音シートに入射するとき、当該騒音は、吸音シートの第3層にその表面側から入射する。
【0016】
しかして、このように第3層に入射した騒音は、当該第3層により、その形成材料である多孔質材料の吸音性能のもとに、吸音されて低減される。然る後に、このように第3層により低減された騒音が、さらに、第2層にその表面側から入射する。すると、この騒音に対する第2層及び第1層による反射は、第1及び第2の層により、各気泡部のもとに、良好に抑制され得る。その結果、当該吸音シートによれば、上記騒音が良好に低減され得る。
【0017】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載の自動車用吸音シートにおいて、第3層は、10(g/m2)〜200(g/m2)の範囲以内の目付量を有することを特徴とする。
【0018】
これにより、第3層の吸音性をより一層良好に確保することができる。このため、第3層が騒音をより一層良好に吸音することとなり、その結果、吸音シートとしての吸音性がより一層向上され得る。
【0019】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項4または5に記載の自動車用吸音シートにおいて、第3層を形成する上記多孔質材料は不織布であってもよい。
【0020】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項3〜5のいずれか1つに記載の自動車用吸音シートにおいて、第3層(56)、第2層(53)及び第1層(52)の各外周部は、共に、第1層の上記外周部を基準に熱融着されて、環状フランジ部(F)として形成されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、吸音シートを、上記騒音の伝搬する方向に位置する構成部材に取り付けるにあたっては、吸音シートの環状フランジ部を、第1層側から両面テープにより上記構成部材の表面に貼着するのみで、吸音シートの上記構成部材に対する装着を強固に行うことができる。その結果、吸音シートの上記構成部材に対する強固な装着が、両面テープでもって、簡単になされ得るのは勿論のこと、このような吸音シートの上記構成部材に対する強固な装着のもとに、騒音に対する吸音シートの吸音がより一層確実に達成され得る。
【0022】
また、本発明に係る自動車用吸音シートは、請求項8の記載によれば、
高分子有機材料により形成される第1層(52)と、
柔軟な弾性を有する高分子有機材料により形成されて第1層に沿い積層状に固着してなる第2層(53)と、
当該第2層を介し第1層に対向するように第2層に沿い積層されて多孔質材料により形成してなる第3層(56)と、
第1層(52)を介し第2層(53)に対向するように第1層に沿い積層されて金属材料により形成してなる第4層(57)とを具備して、
第2層は、その気泡部(53b)を、吸音性の発揮可能に、第1層(52)に沿い分散させ、かつ当該第1層から離れる方向へ、多数、隆起させるように、形成してなるものである。
【0023】
これによれば、当該吸音シートを、その第3層にて、上記騒音の伝搬の向きに対向するように、当該騒音の伝搬方向に位置する構成部位に設ければ、当該騒音が、上記構成部位に伝搬して吸音シートに入射するとき、当該騒音は、吸音シートの第3層にその表面側から入射する。
【0024】
しかして、このように第3層に入射した騒音は、当該第3層により、その形成材料である多孔質材料の吸音性能のもとに、吸音されて低減される。然る後に、このように第3層により低減された騒音が、さらに、第2層にその表面側から入射する。すると、この騒音に対する第2層及び第1層による反射は、第1及び第2の層により、各気泡部のもとに、良好に吸音された上で、第4層に入射する。
【0025】
ここで、当該第4層は、金属材料からなるため、当該第4層に入射した騒音は、この第4層により第1層側へ反射される。このため、このように反射された騒音は、再び、第1及び第2の層により各気泡部のもとに良好に吸音された上で第3層により良好に吸音される。その結果、当該吸音シートによれば、騒音は、第3層から第4層に向かう過程、及び第4層から第3層側へ反射される過程の双方において、第1〜第3の各層により、各気泡部のもとに、良好に吸音され得る。
【0026】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項8に記載の自動車用吸音シートにおいて、
第1及び第2の両層は、それぞれ、7(μm)〜150(μm)の範囲以内の厚さを有するフィルムであり、上記多数の気泡部は、それぞれ、5(mm)〜100(mm)の範囲以内の径及び高さを有する筒状気泡部であり、第3層は、10(g/m2)〜200(g/m2)の範囲以内の目付量を有し、また、第4層は、10(μm)〜100(μm)の範囲以内の厚さを有することを特徴とする。
【0027】
これによれば、第1及び第2の両層を、それぞれ、7(μm)〜150(μm)の範囲以内の厚さを有するフィルムとし、かつ第4層を、10(μm)〜100(μm)の範囲以内の厚さとすることで吸音シートの軽量性及び柔軟な弾性するとともに、多数の気泡部を、それぞれ、5(mm)〜100(mm)の範囲以内の径及び高さを有する筒状気泡部とすることで各気泡部の吸音性を良好に確保しつつ、請求項8に記載の発明の作用効果をより一層確実に達成することができる。
【0028】
また、本発明によれば、請求項10に記載のように、請求項8または9に記載の自動車用吸音シートにおいて、第3層を形成する前記多孔質材料は、不織布であってもよい。
【0029】
また、本発明は、請求項11の記載によれば、請求項8〜10のいずれか1つに記載の自動車用吸音シートにおいて、第4層を形成する上記金属材料は、アルミニウムであってもよい。
【0030】
また、本発明は、請求項12の記載によれば、請求項8〜11のいずれか1つに記載の自動車用吸音シートにおいて、第3層(56)、第2層(53)、第1層(52)及び第4層(57)の各外周部は、第4層の上記外周部を基準に熱融着されて、環状フランジ部(Fa)として形成されていることを特徴とする。
【0031】
これによれば、吸音シートを、上記騒音の伝搬する方向に位置する構成部材に取り付けるにあたっては、吸音シートの環状フランジ部を、第4層側から両面テープにより上記構成部材の表面に貼着するのみで、吸音シートの上記構成部材に対する装着を強固に行うことができる。その結果、吸音シートの上記構成部材に対する強固な装着が、両面テープでもって、簡単になされ得るのは勿論のこと、このような吸音シートの上記構成部材に対する強固な装着のもとに、騒音に対する吸音シートの吸音がより一層確実に達成され得る。
【0032】
また、本発明は、請求項13の記載によれば、自動車のエンジンルーム内に配設してなるエンジンの底部に沿い配設されるエンジンアンダーカバーにおいて、
エンジンの上記底部に沿い支持されて合成樹脂板からなるカバー本体(50a)と、
請求項1〜12のいずれか1つに記載の吸音シート(50b、50c、50d)とを具備して、
この吸音シートは、第2層(53)を第1層(52)のエンジン側に位置させるように、カバー本体に沿い、エンジンの上記底部側から装着されることを特徴とする。
【0033】
これにより、自動車のエンジンの音等の騒音が、エンジンの底部側に伝搬して吸音シートに入射すると、この騒音の反射は、吸音シートによりその各気泡部のもとに良好に抑制され得る。従って、当該吸音シートによれば、上記騒音が良好に低減され得る。その結果、エンジンの底部側へ伝搬するエンジンの音等の騒音が、当該自動車の車室内や車外に向けて騒音として伝搬することなく、吸音シートにより良好に吸音され得る。
【0034】
このことは、請求項1〜12のいずれか1つに記載の発明の作用効果を達成し得るエンジンアンダーカバーの提供が可能であることを意味する。
【0035】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るエンジンアンダーカバーの第1実施形態を適用した自動車の部分破断による模式的概略側面図である。
【図2】図1のエンジンアンダーカバーをオイルパンと共に示す拡大断面図である。
【図3】図2のエンジンアンダーカバーをオイルパンと共に示す下面図である。
【図4】図2の吸音シートの部分破断平面図である。
【図5】図4の吸音シートの気泡部の拡大断面図である。
【図6】上記第1実施形態における第1実施例の吸音率と周波数との関係を示すグラフである。
【図7】上記第1実施形態における第2実施例及び第1比較例の吸音率と周波数との関係をそれぞれ示す各グラフである。
【図8】上記第1実施形態における第3実施例及び第2比較例の吸音率と周波数との関係をそれぞれ示す各グラフである。
【図9】本発明の第2実施形態の要部である吸音シートを示す部分破断平面図である。
【図10】図9の吸音シートの気泡部の拡大断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の要部である吸音シートを示す部分破断平面図である。
【図12】本発明の第4実施形態の要部である吸音シートの気泡部の拡大断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態の要部である吸音シートの気泡部の拡大断面図である。
【図14】本発明の第6実施形態の要部である吸音シートの部分破断平面図である。
【図15】図14の吸音シートの断面図である。
【図16】上記第6実施形態における第4実施例及び第3比較例の吸音率と周波数との関係を示す各グラフである。
【図17】本発明の第7実施形態の要部である吸音シートの部分破断平面図である。
【図18】図17の吸音シートの断面図である。
【図19】本発明の第8実施形態の要部である吸音シートの断面図である。
【図20】上記第8実施形態における第5実施例及び第4比較例の吸音率と周波数との関係を示す各グラフである。
【図21】本発明の第9実施形態の要部である吸音シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1は、セダン型自動車に搭載してなるエンジンEの底部側に適用された本発明に係るエンジンアンダーカバーの第1実施形態を示している。上記自動車において、エンジンEは、当該自動車のエンジンルーム10内に組み付けられており、当該エンジンEの底部の直下には、オイルパン20が配設されている。
【0038】
なお、ダッシュボード40は、当該自動車の車室30からエンジンルーム10を隔離する役割を果たすものであるが、このダッシュボード40には、両ダッシュインシュレータ(図示しない)が、それぞれ、エンジンルーム10及び車室30の各内部から装着されている。また、エンジンルーム10のボンネット(フード)には、フードインシュレータ(図示しない)が、エンジンルーム10の内部から装着されている。
【0039】
上述のエンジンアンダーカバー(以下、エンジンアンダーカバー50という)は、図2及び図3にて示すごとく、エンジンルーム10内にて、オイルパン20にその直下から支持されているもので、当該エンジンアンダーカバー50は、その裏面にて、エンジンルーム10の底壁開口部を介し、当該自動車の走行路面G(図1参照)に対向している。
【0040】
当該エンジンアンダーカバー50は、カバー本体50aと、吸音シート50bとを備えている。カバー本体50aは、合成樹脂板からなるもので、このカバー本体50aは、オイルパン20の裏面に沿うように当該オイルパン20にその直下から各支持部材51(図2参照)により支持されている。これにより、当該カバー本体50aは、当該自動車の走行路面Gからの飛水、砂利、小石等からオイルパン20やエンジンEを保護する役割を果たす。
【0041】
吸音シート50bは、その裏面(後述するフィルム52の裏面)にて、カバー本体50aの表面に沿い装着されているもので、この吸音シート50bは、その表面(後述するフィルム53の表面)にて、オイルパン20の裏面に対し間隙を介して対向している。
【0042】
ここで、吸音シート50bの構成について詳細に説明する。当該吸音シート50bは、図4或いは図5から分かるように、互いに積層した難燃性ポリエチレン樹脂からなる両フィルム52、53でもって構成されている。本第1実施形態では、両フィルム52、53は、それぞれ、所定の厚さ(例えば、20(μm))を有しており、当該両フィルム52、53の各目付量の和は、所定の目付量(例えば、80(g/m2))となっている。なお、図4では、吸音シート50bは、便宜上、図3とは異なり、正方形状に描かれている。
【0043】
フィルム52は、その全体に亘り、平膜状に形成されている。また、フィルム53は、平膜部53aと、多数の気泡部53bとを有しており、当該フィルム53は、平膜部53aにより、その裏面にて、フィルム52にその表面側から固着されている。このフィルム53の多数の気泡部53bは、図4にて示すごとく、フィルム52の面方向に沿い互いに千鳥状に配列して形成されている。また、当該多数の気泡部53bは、それぞれ、図5にて例示するごとく、フィルム52のうち各気泡部53bに対する対応部から平膜部53aの厚さ方向に向け円筒状に隆起して形成されており、当該多数の気泡部53bの各内部には、空気が封入されている。
【0044】
本第1実施形態において、多数の気泡部53bは、以下に述べるようにして、千鳥状に配列されている。即ち、多数の気泡部53bのうちの1つの気泡部53bを選択すると、この選択気泡部53bは、図4にて示すごとく、正6角形状に配列した6つの気泡部53bにより包囲されており、当該選択気泡部53bと上記6つの気泡部53bの各々との各中心間隔及び当該6つの気泡部53bのうちの各両隣接気泡部53bの中心間隔は、所定の同一間隔となっている。
【0045】
また、各気泡部53bは、それぞれ、所定の外径(例えば、20(mm))及び所定の高さ(例えば、7(mm))を有する。ここで、上記所定の外径は、円筒状気泡部53bの周壁の外径に相当する。また、上記所定の高さは、フィルム52の表面から気泡部53bの頂壁部の表面までの間隔に相当する。また、気泡部53bの数は、吸音シート50bに吸音性を良好に発揮させ得るように、できる限り多くしてある。
【0046】
以上のように構成してなる当該吸音シート50bは、次のようにして製造されている。まず、両フィルム52、53の原材料として、難燃性ポリエチレン樹脂を準備する。そして、フィルム52の原材料である難燃性ポリエチレン樹脂を溶融して、溶融フィルム(以下、第1溶融フィルムともいう)とするとともに、フィルム53の原材料である難燃性ポリエチレン樹脂を溶融して溶融フィルム(以下、第2溶融フィルムともいう)とする。このとき、この第2溶融フィルムは、その厚さ方向に沿い多数の円筒状気泡部を上述のごとく隆起させるように成形される。
【0047】
然る後、上述のように溶融した第1及び第2の溶融フィルムを、真空成形のもと或いは一対の加圧ローラ(図示しない)による挟持のもとに、加圧冷却して、相互に固着する。これにより、吸音シート50bの製造が終了される。
【0048】
なお、上述した第1及び第2の溶融フィルムに対する加圧の力は、当該加圧の終了後に、第2溶融フィルムのうち各気泡部53bに対する対応部を原形状に復帰させ得る程度であって、第2溶融フィルムのうち平膜部53aに対する対応部を第1溶融フィルムに一様に固着させ得る程度の値に設定されている。
【0049】
以上のように構成した本第1実施形態においては、上述のように構成したエンジンアンダーカバー50が、上述のごとく、エンジンルーム10内にて、オイルパン20にその直下から支持されている。しかも、当該エンジンアンダーカバー50は、上述のごとく、合成樹脂板からなるカバー本体50aにその表面側から吸音シート50bを装着して構成されている。
【0050】
ここで、吸音シート50bは、上述のごとく、フィルム53を、その平膜部53aにて、フィルム52にその表面側から固着してなるもので、フィルム53の多数の気泡部53bは、それぞれ、上述のごとく、平膜部53aの厚さ方向に向け円筒状に隆起して千鳥状に配列されている。これにより、当該吸音シート50bは、千鳥状に配列された多数の気泡部53b内の各封入空気を介し、両フィルム52、53の2層構造となっている。
【0051】
そして、このような2層構造の吸音シート50bにおいて、上述したごとく、両フィルム52、53の各厚さは、20(μm)であり、各気泡部53bの外径及び高さは、それぞれ、20(mm)及び7(mm)である。
【0052】
このように構成した吸音シート50bによれば、両フィルム52、53は、通気性を有さないものの、ポリエチレン樹脂でもって、上述のごとく、20(μm)と薄く形成されている。従って、当該両フィルム52、53は、柔軟な弾性を有する。
【0053】
ここで、例えば、当該自動車の走行中において、エンジンEが、その作動に伴い音(以下、エンジン音ともいう)を発生すると、このエンジン音は、その周囲に向けて騒音として伝搬する。このようにエンジンEの周囲に向けて伝搬するエンジン音のうち、エンジンEの底部側へ伝搬するエンジン音は、オイルパン20を介しエンジンアンダーカバー50に向けてさらに伝搬して、吸音シート50bにその表面側(フィルム53の表面側)から入射する。
【0054】
しかして、このように吸音シート50bに入射したエンジン音は、吸音シート50bにより反射されるが、当該吸音シート50bが上述のごとく多数の気泡部53bを有するため、この吸音シート50bによる上記エンジン音に対する反射は、当該吸音シート50bによりその各気泡部53bのもとに良好に抑制される。このことは、各気泡部53bが、吸音シート50bを構成する両フィルム52、53において、吸音性の発揮にあたり大きな役割を果たし、その結果、吸音シート50bが良好な吸音性を発揮することを意味する。これにより、当該吸音シート50bによれば、この吸音シート50bに入射したエンジン音が良好に低減され得る。
【0055】
その結果、上述のようにエンジンEの底部側へ伝搬するエンジン音は、当該自動車の車室内や車外に向けて騒音として伝搬することなく、吸音シート50bでもって良好に吸音により防音され得る。また、エンジン音と同様に吸音シート50bに入射する外乱音等も同様に当該吸音シート50bでもって良好に吸音により防音され得る。なお、上述のようにエンジンEの周囲に向けて伝搬するエンジン音のうちエンジンEの上方及び後方へ伝播するエンジン音や外乱音は、上記フードインシュレータ及び上記ダッシュインシュレータにより吸音される。
【0056】
また、両フィルム52、53を形成するポリエチレン樹脂は、上述のごとく難燃性を有するから、エンジンEが高温になったとしても、両フィルム52、53は、熱による損傷を受けることなく、エンジン音や外乱音を良好に吸音し得る。
【0057】
また、両フィルム52、53の各目付量は、上述のごとく、80(g/m2)であるから、吸音シートとしては、非常に軽量である。しかも、両フィルム52、53の形成材料は、難燃性を有するものの、ポリエチレン樹脂であることに変わりはない。このため、当該フィルム52、53は、共に、含水性を有さない。従って、これらフィルム52、53の重量が、当該フィルムの含水により増大するという事態を招くことはない。
【0058】
よって、当該自動車の走行時において、吸音シート50bが、例えば、雨水に水没しても、当該吸音シート50bを構成する両フィルム52、53は、吸音性の高いフェルトやグラスウールのように含水して重量増加を招くことなく、常に軽量に維持され得るのは勿論のこと、当該両フィルム52、53は、その含水によって本来の良好な吸音性を損なうという事態を招くこともなく、吸音シート50bとしてのエンジン音や外乱音に対する吸音性を良好に維持し得る。
【0059】
また、両フィルム52、53は、上述のごとく、ポリエチレン樹脂でもって、柔軟な弾性を有するように形成されているから、当該両フィルム52、53は、本来の原形状を良好に維持することができる。その結果、上述した吸音シート50bの取り扱いが非常に容易に維持され得る。なお、吸音シート50bは、上述のような構成となるように製造されることから、当該吸音シート50bは、より一層低コスト及びより一層軽量な吸音シートとして提供され得る。
【0060】
ちなみに、本第1実施形態における吸音シート50bを実施例とし、この実施例(以下、第2実施例という)の他に、第1及び第3の実施例及び第1及び第2の比較例を準備して、これら各実施例及び各比較例を各試料として用い、当該各試料に対し、残響室法吸音率試験を施して、吸音率と周波数との関係を調べてみた。
【0061】
ここで、上記第1実施例は、上記第2実施例において、目付量を50(g/m2)とし、気泡部の外径及び高さを、それぞれ、7(mm)及び3(mm)に変更したものである。また、上記第3実施例は、上記第2実施例において、目付量を100(g/m2)とし、気泡部の外径及び高さを、それぞれ、30(mm)及び13(mm)に変更したものである。上記第1及び第3の実施例のその他の構成は、上記第2実施例と同様である。
【0062】
一方、上記第1比較例は、上記第2実施例とは異なり、80(g/m2)の目付量及び1(mm)の厚さを有する平板状の不織布でもって構成されている。また、上記第2比較例は、上記第2実施例とは異なり、650(g/m2)の目付量及び13(mm)の厚さを有する平板状のフェルトでもって構成されている。なお、上記各試料の仕様は、次の表1及び表2の通りである。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

しかして、上記第1実施例につき、上記残響室法吸音率試験により、吸音率と周波数との関係を調べたところ、図6にて示すグラフ1(表1参照)が得られた。また、上記第2及び第3の各実施例につき、それぞれ、上記残響室法吸音率試験により、吸音率と周波数との関係を調べたところ、図7及び図8にて示す各グラフ2及び3(表1参照)が得られた。なお、上記周波数は、エンジンEからその作動に伴い発生される音の周波数、即ち、所定の周波数の範囲(例えば、200(Hz)〜6000(Hz)の範囲)以内の周波数をいう。
【0065】
一方、上記第1及び第2の各比較例につき、それぞれ、上記残響室法吸音率試験により、吸音率と所定の周波数との関係を調べたところ、図7及び図8にて示す各グラフ4及び5(表2参照)が得られた。
【0066】
以上述べた第1〜第3の実施例に対応する図6〜図8の各グラフ1〜3を相互に比較してみると、次のようなことが分かる。即ち、上記第1〜第3の実施例のうち、目付量、気泡部の外径及び高さが増大する実施例ほど、周波数が上記所定の周波数の範囲において高くなるにつれて、吸音率が上昇していることが分かる。
【0067】
一方、上記第1及び第2の比較例に対応する図7及び図8の各グラフ4、5を相互に比較してみると、上記第1比較例では、図7のグラフ4により示すごとく、周波数が上記所定の周波数の範囲において高くなっても、吸音率は、低いままである。また、上記第2比較例では、吸音率は、図7及び図8の各グラフ4、5から分かるように、上記第1比較例よりも高い。
【0068】
次に、上記第1〜第3の各実施例を上記第1及び第2の比較例と比較してみると、上記第1実施例(図6のグラフ1参照)では、吸音率は、上記所定の周波数の範囲のうちの高い周波数側において、上記第1比較例よりも高いことが分かる。
【0069】
また、上記第2実施例(図7のグラフ2参照)では、吸音率は、上記第1比較例(図7のグラフ4参照)よりも高く、周波数の増大に伴い上記第2比較例とほぼ同様の上昇傾向を示す。
【0070】
また、上記第3実施例(図8のグラフ3参照)では、吸音率は、どの周波数においても、上記第1比較例(図7のグラフ4参照)よりも、高く、また、周波数4000(Hz)程度までは、周波数の増大に伴い、上記第2比較例(図8のグラフ5参照)よりも高めを維持しながら上昇することがわかる。
【0071】
以上によれば、上記第1〜第3の各実施例は、そのいずれも、上記第1比較例よりも、良好な吸音率を示すことが分かる。また、上記第2及び第3の各実施例は、そのいずれも、上記第2比較例以上の良好な吸音率を示すことが分かる。従って、全体としては、上記第2及び第3の実施例であれば、吸音シートとしては、良好であるといえる。
【0072】
また、上述の第2実施例において、フィルム53の気泡部の外径及び各フィルム52、53の厚さを種々変更した吸音シートを、多数、準備して、上述と同様に吸音率と周波数との関係を調べたところ、気泡部の外径及び高さが5(mm)〜100(mm)の範囲以内の値であり、かつ、各フィルム52、53の厚さが7(μm)〜150(μm)の範囲以内の値であれば、エンジンアンダーカバーの吸音シートとしての吸音性は良好に確保し得ることが分かった。
【0073】
但し、気泡部の外径が5(mm)〜100(mm)の範囲以内の値から外れると、気泡部が小さすぎたり大きすぎたりして、吸音性に欠けることとなる。
【0074】
また、各フィルム52、53の厚さが7(μm)よりも薄いと、当該各フィルム52、53は、破れ易くなる。一方、各フィルム52、53の厚さが150(μm)を超えて増大すると、各フィルム52、53が、その目付量の増大のため、柔軟性に欠けて固くなり、吸音性や取り扱いの容易性に欠けることとなる。なお、各フィルム52、53の厚さが7(μm)〜150(μm)の範囲内の値であれば、吸音シートとしては軽量であることは勿論である。
【0075】
また、本第1実施形態において、エンジンEの底部の下側の空間、特にオイルパン20の下側にてカバー本体50aとの間に形成される空間が狭い場合には、気泡部の高さは、5(mm)〜50(mm)の範囲以内の値であってもよい。これによれば、気泡部の外径が5(mm)〜100(mm)の範囲以内の値であれば、気泡部の高さは、5(mm)〜50(mm)の範囲以内の値であっても、吸音シートの吸音性を実質的に良好に確保しつつ、エンジンアンダーカバーをオイルパン20の下側に適用することは容易であるといえる。
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態の要部を示している。この第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べた吸音シート50bにおいて、そのフィルム53に代えて、フィルム54を採用した構成となっている。
【0076】
このフィルム54は、フィルム53と同様に難燃性ポリエチレン樹脂からなるもので、当該フィルム54は、平膜部54aと、多数の気泡部54bとを有しており、当該フィルム54は、平膜部54aにより、その裏面にて、フィルム52にその表面側から固着されている。このフィルム54の多数の気泡部54bは、図9にて示すごとく、フィルム52の面方向に沿い互いに格子状に分散して形成されている。また、当該多数の気泡部54bは、それぞれ、図10にて例示するごとく、フィルム52のうち各気泡部54bに対する対応部から平膜部54aの厚さ方向に向け正四角筒状に隆起して形成されており、当該多数の気泡部54bの各内部には、空気が封入されている。
【0077】
本第2実施形態において、フィルム54は、フィルム53と同様の目付量(例えば、80(g/m2))及び厚さ(例えば、20(mm))を有する。また、各気泡部54bは、所定の幅(例えば、20(mm))を有するとともに、所定の高さ(例えば、7(mm))を有する。
【0078】
ここで、上記所定の幅は、気泡部54bの正四角筒状周壁部のうちの両対向壁部の各外面間の幅(上記第1実施形態にて述べた外径に対応)に相当する。また、上記所定の高さは、フィルム52の上面から気泡部54bの頂壁部の表面までの間隔をいう。また、気泡部54bの数は、本第2実施形態にいう吸音シートに吸音性を良好に発揮させ得るようにできる限り多くしてある。なお、本第2実施形態にいう吸音シート50bも、上記第1実施形態と同様な製造方法により、上記構成となるように製造されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0079】
このように構成した本第2実施形態によれば、各気泡部54bが、上記第1実施形態にて述べた各気泡部53bの千鳥状の配列とは異なり、格子状に配列されているものの、本第2実施形態にいう吸音シートは、各気泡部54bのもとに、上記第1実施形態にいう吸音シート50bの各気泡部53bのもとにおける吸音性と同様に、良好な吸音性を発揮し得る。その結果、本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
【0080】
なお、本第2実施形態における吸音シートにおいて、各気泡部54bの幅や高さ及び各フィルムの厚さを種々変更してみたところ、気泡部の幅及び高さが、ともに、5(mm)〜100(mm)の範囲内の値であり、かつ、各フィルムの厚さが7(μm)〜150(μm)の範囲以内の値であれば、エンジンアンダーカバーの吸音シートとしての吸音性は、上記第1実施形態と同様に、良好に確保し得ることが分かった。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態の要部を示している。この第3実施形態では、上記第2実施形態にて述べた吸音シートにおいて、そのフィルム54に代えて、フィルム55を採用した構成となっている。
【0081】
このフィルム55は、フィルム54と同様に難燃性ポリエチレン樹脂からなるもので、当該フィルム55は、平膜部55aと、多数の気泡部55bとを有している。そして、当該フィルム55は、平膜部55aにより、その裏面にて、フィルム52にその表面側から固着されている。
【0082】
このフィルム55の多数の気泡部55bは、フィルム52の面方向に沿い、図11にて示すごとく、上記第2実施形態にて述べた格子状の多数の気泡部54bとは異なり、互いに千鳥状に分散して形成されている。また、当該多数の気泡部55bは、それぞれ、フィルム52のうち各気泡部55bに対する対応部から平膜部55aの厚さ方向に向け長四角筒状に隆起して形成されており、当該多数の気泡部55bの各内部には、空気が封入されている。
【0083】
なお、本第3実施形態において、フィルム55は、フィルム54と同様の目付量(例えば、80(g/m2))及び厚さ(例えば、20(mm))を有する。その他の構成は上記第2実施形態と同様である。
【0084】
このように構成した本第3実施形態では、各気泡部55bが、各気泡部54bとは異なり、上述のごとく、千鳥状に配列されて、長四角筒状に形成されているにすぎない。従って、本第3実施形態によれば、上記第2実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
【0085】
図12は、本発明の第4実施形態の要部を示している。この第4実施形態では、上記第3実施形態にて述べたフィルム52が、当該第3実施形態とは異なり、平膜部52aと、多数の気泡部52bとを有している。これに伴い、本第4実施形態では、上記第3実施形態にて述べたフィルム55は、平膜部55aにより、その裏面にて、フィルム52の平膜部52aにその表面側から固着されている。
【0086】
ここで、本第4実施形態では、多数の気泡部52bは、それぞれ、フィルム55の多数の気泡部55bの各々に対向して、当該多数の気泡部55bの各々とは逆方向に隆起するように形成されている。但し、各気泡部52bは、各気泡部55bとは対称的な断面形状を有する。
【0087】
これにより、多数の気泡部52bの各々は、各対応の気泡部55bと共に、それぞれ、共通気泡部を構成することとなり、当該各共通気泡部には、気泡部55bに対する封入空気量の2倍の空気が封入されている。その他の構成は上記第3実施形態と同様である。
【0088】
このように構成した本第4実施形態では、フィルム52が、フィルム55と対称的な断面形状を有することで、両フィルム52、55は、上記第3実施形態とは異なり、上述のごとく、気泡部55bの封入空気量の2倍の空気を封入してなる共通気泡部を、多数、形成している。
【0089】
これにより、本第4実施形態にいう吸音シートは、その各共通気泡部のもとに、上記第3実施形態にいう吸音シートの各気泡部55bのもとにおける吸音性よりも、より一層良好な吸音性を発揮し得る。その結果、本第4実施形態によれば、上記第3実施形態にて述べた作用効果がより一層向上され得る。
【0090】
図13は、本発明の第5実施形態の要部を示している。この第5実施形態では、上記第4実施形態において、フィルム52が、多数の気泡部52bのうちの約半数の気泡部52bの各々に代えて、気泡部52cを形成してなるもので、各気泡部52cは、図13にて図示上下方向において、各気泡部52bと交互に配列して形成されている。同様に、フィルム55が、多数の気泡部55bのうちの約半数の気泡部55bの各々に代えて、気泡部55cを形成してなるもので、各気泡部55cは、それぞれ、各気泡部52cに対応して形成されて、当該各対応の気泡部52cと共通の気泡部を構成する。
【0091】
但し、各気泡部52cにおいて図13にて図示上下方向に沿う幅は、各気泡部52bの同一方向の幅よりも狭い。同様に、各気泡部55cにおいて図13にて図示上下方向に沿う幅は、各気泡部55bの同一方向の幅よりも狭い。その他の構成は上記第4実施形態と同様である。
【0092】
このように構成した本第5実施形態では、上記第4実施形態とは異なり、気泡部が、両フィルム52、55の各々において、上述のごとく、2種類の形状に形成されているにすぎない。その結果、本第5実施形態においても、上記第4実施形態と実質的に同様の作用効果が達成され得る。
(第6実施形態)
図14及び図15は、本発明の第6実施形態の要部を示している。この第6実施形態において、吸音シート50cは、表皮層56を、上記第1実施形態にて述べた両フィルム52、53からなる積層構成に付加して構成されている。
【0093】
当該吸音シート50cにおいて、両フィルム52、53は、本第6実施形態においても、上記第1実施形態と同様の構成にて積層されているが、本第6実施形態では、両フィルム52、53は、それぞれ、上記第1実施形態にて述べた第3実施例と同様に、所定の厚さ(例えば、20(μm))及び所定の目付量(例えば、100(g/m2))を有している。また、フィルム53の各気泡部の外径及び高さは、それぞれ、本第6実施形態においても、上記第1実施形態にて述べた第3実施例と同様に、30(mm)及び13(mm)となっている。
【0094】
表皮層56は、所定の目付量(例えば、70(g/m2)を有する不織布からなるもので、当該表皮層56は、フィルム53を介し、フィルム52に対向するように、フィルム53に沿い積層されている。
【0095】
ここで、表皮層56は、その裏面にて、フィルム53の多数の気泡部53bの各円筒状頂壁部の表面に接着剤による接着でもって固着されている。これにより、表皮層56とフィルム53との間には、多数の気泡部53bの各両隣接気泡部53b間において、空気層53cが形成されている。
【0096】
しかして、このように構成してなる吸音シート50cは、表皮層56の表面にて、オイルパン20の裏面に間隙を介して沿うように、フィルム52の裏面にて、カバー本体50aの表面に沿い装着されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0097】
以上のように構成した本第6実施形態において、上記第1実施形態と同様に、エンジンEが発生するエンジン音のうちオイルパン20を介しエンジンアンダーカバー50に向けて伝搬するエンジン音は、吸音シート50cに入射する。
【0098】
ここで、本第6実施形態では、表皮層56が、その表面にて、オイルパン20の裏面に対向しているため、上述のように伝搬するエンジン音は、吸音シート50cの表皮層56にその表面側から入射する。
【0099】
すると、このように表皮層56に入射したエンジン音は、当該表皮層56により、その形成材料である不織布の吸音性能のもとに、吸音されて低減される。然る後に、このように表皮層56により低減されたエンジン音が、さらに、吸音シート50cのフィルム53にその表面側から入射する。
【0100】
ここで、上述のように低減されてフィルム53に入射するエンジン音は、上記第1実施形態にて述べた吸音シート50bによる場合と同様に両フィルム53、52により反射されるが、当該エンジン音に対する両フィルム53、52による反射は、当該両フィルム53、52により各気泡部53bのもとに良好に抑制される。これにより、両フィルム53、52に入射したエンジン音が良好に低減され得る。
【0101】
このことは、表皮層56及び両フィルム53、52の双方の良好な吸音性が、エンジンEから発生するエンジン音に対し、相乗的に吸音シート50cの吸音性として作用することを意味する。
【0102】
その結果、吸音シート50cによれば、エンジンEから発生するエンジン音が、上記第1実施形態にて述べた吸音シート50bに対応する両フィルム53、52による場合に比べて、より一層良好な吸音により防音され得る。
【0103】
また、不織布からなる表皮層56が両フィルム52、53にフィルム53側から積層されているので、当該表皮層56は、両フィルム52、53を損傷を招くことなく良好に保護し得る。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0104】
ちなみに、本第6実施形態における吸音シート50cを実施例(以下、第4実施例という)とし、この第4実施例の他に、吸音シート50cのうちの両フィルム52、53からなる積層構成を比較例(以下、第3比較例という)として準備して、これら各実施例及び各比較例を各試料として用い、当該各試料に対し、残響室法吸音率試験を施して、吸音率と周波数との関係を調べてみた。
【0105】
しかして、上記第4実施例につき、上記残響室法吸音率試験により、吸音率と周波数との関係を調べたところ、図16にて示すグラフ6が得られた。また、上記第3比較例につき、上記残響室法吸音率試験により、吸音率と周波数との関係を調べたところ、図16にて示すグラフ7が得られた。なお、上記周波数の範囲は、上記第1実施形態と同様に、所定の周波数の範囲(例えば、200(Hz)〜6000(Hz)の範囲をいう。
【0106】
以上述べた上記第4実施例に対応するグラフ6を、上記第3比較例に対応するグラフ7と比較してみると、上記第4実施例の吸音率が、上記第3比較例の吸音率に比べて、上記所定の周波数の範囲のほぼ全体に亘り、上昇していることが分かる。従って、吸音シートとしては、不織布を表皮層56として有する吸音シート50cの方が、上記第1実施形態にて述べた吸音シート50bに対応する両フィルム52、53の積層構成に比べて、より一層良好な吸音性を発揮するものといえる。
【0107】
なお、上記第4実施例において、表皮層56の目付量、フィルム53の気泡部の外径及び各フィルム52、53の厚さを種々変更した吸音シートを、多数準備して上述と同様に吸音率と周波数との関係を調べたところ、気泡部の外径及び高さが5(mm)〜100(mm)の範囲以内の値であり、かつ、各フィルム52、53の厚さが7(μm)〜150(μm)の範囲以内の値であり、表皮層56の目付量が10(g/m2)〜200(g/m2)の範囲以内の値であれば、本第6実施形態におけるエンジンアンダーカバーの吸音シートとしての吸音性は良好に確保し得ることが分かった。
【0108】
ここで、表皮層56の目付量が10(g/m2)未満であると、表皮層56が不織布からなるため、破れ易く、また、表皮層56の目付量が200(g/m2)よりも増大すると、表皮層56が厚過ぎて柔軟性に欠け、吸音シート50cとしての取り扱いが不便になるとともに吸音性の低下を招く。
(第7実施形態)
図17及び図18は、本発明の第7実施形態の要部を示している。この第7実施形態では、上記第6実施形態にて述べた吸音シート50cの外周縁部が、高周波誘導加熱等の加熱により溶融圧着されて、環状フランジ部Fとして形成されている。ここで、環状フランジ部Fは、フィルム52の外周部を基準に、表皮層56の外周部を、フィルム53の外周部を介し、フィルム52の外周部側へ加熱により溶融圧着することで、薄く形成されている。
【0109】
このように形成した吸音シート50cは、フィルム52の裏面をカバー本体50aの表面に沿うように当接させた状態で、環状フランジ部Fを環状の両面テープT(図18参照)でもって、カバー本体50aの表面に貼着されることで、カバー本体50aに装着されている。その他の構成は、上記第6実施形態と同様である。
【0110】
このように構成した本第7実施形態によれば、吸音シート50cをカバー本体50aの表面に装着するにあたっては、上述のごとく、吸音シート50cの環状フランジ部Fが、フィルム52側から両面テープTによりカバー本体50aの表面に貼着される。
【0111】
ここで、環状フランジ部Fは、上述のごとく、表皮層56の外周部を、フィルム53の外周部を介し、フィルム52の外周部側へ加熱により溶融圧着することで形成されているので、当該環状フランジ部Fは、表皮層56、フィルム53及びフィルム52の各外周部を一体化した状態で薄く形成されている。
【0112】
従って、吸音シート50cのカバー本体50aに対する装着が、両面テープTの貼着のみで、強固に行われ得る。その結果、吸音シート50cのカバー本体50aに対する強固な装着が簡単な構成にて簡単な作業で済むのは勿論のこと、吸音シートの上記構成部材に対する強固な装着のもとに、騒音に対する吸音シートの吸音がより一層確実に達成され得る。その他の作用効果は、上記第6実施形態と同様である。
(第8実施形態)
図19は、本発明の第7実施形態の要部を示している。この第7実施形態において、吸音シート50dは、裏皮層57を、上記第6実施形態にて述べた吸音シート50cに付加して構成されている。
【0113】
裏皮層57は、吸音シート50cのフィルム52を介し、当該吸音シート50cのフィルム53に対向するように、フィルム52に沿い積層されている。本第7実施形態において、裏皮層57は、所定の厚さ(例えば、30(μm))及び所定の目付量(例えば、70(g/m2))を有するようにアルミニウムでもって形成されている。
【0114】
本第8実施形態では、裏皮層57が、70(g/m2))の目付量を有するとともに、吸音シート50cが、170(g/m2))の目付量を有することから、吸音シート50dの総目付量は、240(g/m2))となっている。
【0115】
また、裏皮層57は、表皮層56をフィルム53に積層する前に、両フィルム52、53にフィルム52側から当接された状態で、両フィルム52、53と共に、加熱により融着されている。従って、この融着の後に、表皮層56が、フィルム53に積層されている。
【0116】
しかして、このように構成してなる吸音シート50dは、表皮層56の表面にて、オイルパン20の裏面に間隙を介して沿うように、裏皮層57の裏面にて、カバー本体50aの表面に沿い一様に装着されている。その他の構成は、上記第6実施形態と同様である。
【0117】
以上のように構成した本第8実施形態において、上記第6実施形態と同様に表皮層56により低減されたエンジン音が吸音シート50dのフィルム53にその表面側から入射すると、当該エンジン音は、上記第6実施形態にて述べたように、両フィルム53、52により反射されるが、当該エンジン音に対する両フィルム53、52による反射は、当該両フィルム53、52によりその各気泡部のもとに良好に抑制される。これにより、エンジン音は、両フィルム52、53によりその各気泡部のもとに良好に吸音された上で、裏皮層57に入射する。
【0118】
ここで、裏皮層57がアルミニウムからなるため、当該裏皮層57に入射したエンジン音は、この裏皮層57によりフィルム52に向けて反射される。このため、このように反射されたエンジン音は、再び、両フィルム52、53によりその各気泡部のもとに良好に吸音された上で、表皮層56により良好に吸音される。
【0119】
このことは、表皮層56及び両フィルム53、52が、双方の相乗的な吸音性のもとにエンジンEからのエンジン音を低減した後、両フィルム53、52及び表皮層56が、その双方の相乗的な吸音性のもとに、裏皮層57による反射エンジン音を、再度、良好に低減することを意味する。
【0120】
その結果、吸音シート50dによれば、エンジンEから発生するエンジン音が、上記第6実施形態にて述べた吸音シート50cによる場合に比べて、より一層良好に吸音され得る。
【0121】
また、裏皮層57が上述のごとくアルミニウムでもって形成されているため、両フィルム52、53の原形状態が裏皮層57により適正に保持され得る。換言すれば、吸音シート50dが加熱されても、両フィルム52、53が、熱による伸縮等の変形を伴うことなく、その原形状態に、裏皮層57により適正に保持されることを意味する。その他の作用効果は、上記第6実施形態と同様である。
【0122】
ちなみに、本第7実施形態における吸音シート50dを実施例(以下、第5実施例という)とし、この第5実施例の他に、上記第6実施形態にて述べた第3比較例(吸音シート50cのうちの両フィルム52、53からなる積層構成)を準備するとともに、吸音シート50dのうちの両フィルム52、53及び裏皮層57からなる積層構成を比較例(以下、第4比較例という)として準備し、これら第5実施例並びに第3及び第4の比較例を各試料として用い、当該各試料に対し、残響室法吸音率試験を施して、吸音率と周波数との関係を調べてみた。
【0123】
しかして、上記第5実施例につき、上記残響室法吸音率試験により、吸音率と周波数との関係を調べたところ、図20にて示すグラフ8が得られた。また、上記第4比較例につき、上記残響室法吸音率試験により、吸音率と周波数との関係を調べたところ、図20にて示すグラフ9が得られた。なお、上記第3比較例については、上記第6実施形態にて述べた図16のグラフ7が、吸音率と周波数との関係を表すグラフとして、図20においてそのまま記載されている。また、上記周波数の範囲は、上記第1実施形態と同様に、所定の周波数の範囲(例えば、200(Hz)〜6000(Hz)の範囲をいう。
【0124】
以上述べた上記第5実施例に対応するグラフ8を、上記第4比較例に対応するグラフ9と比較してみると、上記第5実施例の吸音率が、上記第4比較例の吸音率に比べて、上記所定の周波数の範囲のほぼ全体に亘り、上昇していることが分かる。
【0125】
また、上記第3及び第4の比較例にそれぞれ対応する各グラフ7、9を比較してみると、上記第4比較例の吸音率が、上記第3比較例の吸音率に比べて、上記所定の周波数の範囲のうち1000(Hz)以上の周波数の範囲において上昇していることが分かる。
【0126】
また、上記第5実施例に対応するグラフ8を、上記第3比較例に対応するグラフ7と比較してみると、上記第5実施例の吸音率が、上記第3比較例の吸音率に比べて、上記所定の周波数の範囲のうち約1000(Hz)以上の周波数の範囲において上昇していることが分かる。
【0127】
従って、吸音シートとしては、アルミニウムからなる層を裏皮層57として有する吸音シート50dの方が、両フィルム52、53からなる積層構成や両フィルム52、53及び裏皮層57からなる積層構成に比べて、より一層良好な吸音性を有するものといえる。
【0128】
なお、上記第5実施例に対応するグラフ8を、上記第6実施形態にて述べた第4実施例(吸音シート50c)に対応するグラフ6と比較してみると、上記第5実施例の吸音率は、上記第4実施例の吸音率と、上記所定の周波数の範囲の全体に亘り、ほぼ同様となっていることが分かる。
【0129】
また、上記第5実施例において、裏皮層57の厚さ、表皮層56の目付量、フィルム53の気泡部の外径及び各フィルム52、53の厚さを種々変更した吸音シートを、多数準備して上述と同様に吸音率と周波数との関係を調べたところ、気泡部の外径及び高さが5(mm)〜100(mm)の範囲以内の値であり、かつ、各フィルム52、53の厚さが7(μm)〜150(μm)の範囲以内の値であり、表皮層56の目付量が10(g/m2)〜200(g/m2)の範囲以内であり、裏皮層57の厚さが10(μm)〜100(μm)の範囲以内であれば、本第7実施形態におけるエンジンアンダーカバーの吸音シートとしての吸音性は良好に確保し得ることが分かった。
【0130】
ここで、裏皮層57の厚さが10(μm)未満であると、裏皮層57がアルミニウムからなる層であることから破れ易く、また、裏皮層57が100(μm)よりも厚くなると、裏皮層57が厚過ぎて、柔軟性に欠け、吸音シート50dとしての取り扱いに不便となる。
(第9実施形態)
図21は、本発明の第9実施形態の要部を示している。この第9実施形態では、上記第8実施形態にて述べた吸音シート50dの外周縁部が、高周波誘導加熱等の加熱により溶融圧着されて、環状フランジ部Faとして形成されている。ここで、環状フランジ部Faは、裏皮層57の外周部を基準に、表皮層56の外周部を、両フィルム53、52の各外周部を介し、裏皮層57の外周部側へ加熱により溶融圧着することで、薄く形成されている。
【0131】
このように形成した吸音シート50dは、裏皮層57の裏面をカバー本体50aの表面に沿うように当接させた状態で、環状フランジ部Faを、環状の両面テープTa(図21参照)でもって、カバー本体50aの表面に貼着されることで、カバー本体50aに装着されている。その他の構成は、上記第8実施形態と同様である。
【0132】
このように構成した本第9実施形態によれば、吸音シート50dをカバー本体50aの表面に装着するにあたっては、上述のごとく、吸音シート50dの環状フランジ部Faが、裏皮層57側から両面テープTaによりカバー本体50aの表面に貼着される。
【0133】
ここで、環状フランジ部Faは、上述のごとく、表皮層56の外周部を、両フィルム53、52の各外周部を介し、裏皮層57の外周部側へ加熱により溶融圧着することで形成されているので、当該環状フランジ部Faは、表皮層56、フィルム53、フィルム52及び裏皮層57の各外周部を一体化した状態で薄く形成されている。
【0134】
従って、吸音シート50dのカバー本体50aに対する装着が、両面テープTaの貼着のみで、強固に行われ得る。このことは、吸音シート50dのカバー本体50aに対する装着が簡単な構成にて簡単な作業で済むことを意味する。その他の作用効果は、上記第8実施形態と同様である。
【0135】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)各フィルム52〜55の形成材料は、上記各実施形態にて述べた難燃性ポリエチレン樹脂に限ることなく、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂或いはフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂その他の高分子有機材料であって難燃性のあるものであればよい。なお、吸音シート50b、50c或いは50dが、熱による損傷を受けにくい程度の温度の雰囲気内で用いられる場合には、上記熱可塑性樹脂その他の高分子有機材料は、必ずしも、難燃性を有さなくてもよい。
(2)上記第1実施形態では、各気泡部を千鳥状に配列したが、これに限らず、例えば、格子状に配列してもよく、また、一般的には、各気泡部が多数分散して位置しておれば、どのような配列にあってもよい。
(3)上述した第4実施形態(図12参照)では、フィルム52の各気泡部52bが、フィルム55の各気泡部55bに対向するように形成されているが、これに限ることなく、各気泡部52bは、両フィルム52、55の各平膜部の面に沿う方向における各気泡部55bとは異なる位置にて、当該各気泡部55bとは逆方向に隆起形成されていてもよい。
【0136】
このことは、上述した第5実施形態(図13参照)においても同様であって、各気泡部52b、52cは、それぞれ、各両フィルム52、55の各平膜部の面に沿う方向における各気泡部55b、55cとは異なる位置にて、当該各気泡部55b、55cとは逆方向に隆起形成されていてもよい。
(4)上記第1或いは第2の実施形態にて述べたフィルム52(図5或いは図10参照)は、難燃性ポリエチレン樹脂に限ることなく、難燃性発泡プロピレンシート或いは難燃性ポリエチレンシート等の高分子有機材料で形成してもよい。なお、上記第8実施形態では、裏皮層57をフィルム52に積層するため、当該フィルム52は、柔軟な弾性を有さなくてもよい。
(5)本発明の実施にあたり、各フィルム52〜55は、それぞれ、膜或いは層であってもよい。なお、膜は、フィルムよりも幾分厚く、また、層は、膜よりも幾分厚いものとする。
(6)また、本発明の実施にあたり、吸音シート50b、50c或いは50dは、エンジンアンダーカバー50に限ることなく、例えば、当該自動車のボンネットのフードに適用して実施してもよい。
(7)吸音シート50b、50c或いは50dは、エンジンアンダーカバー50に限ることなく、自動車の車体のピラー内に丸めて収容するようにしてもよい。これにより、上記ピラー内に伝搬するエンジン音を吸音することができる。
(8)本発明の実施にあたり、上記第6実施形態にて述べたように、裏皮層57を両フィルムと加熱による融着するのではなく、両フィルム52、53にフィルム52側から接着剤でもって接着するようにしてもよい。
(9)本発明の実施にあたり、各気泡部の数及び形状が、上記所定の周波数の範囲以内の周波数の騒音を吸音するように設定されていれば、当該各気泡部のもと、吸音シートの吸音性が良好に確保され得る。
(10)本発明の実施にあたり、上述したフィルム52、53、54或いは55の厚さを、上述のごとく、7(μm)〜150(μm)の範囲以内とした。これは、フィルム52、53、54或いは55の厚さを、7(μm)〜100(μm)以内に限ることなく、7(μm)〜150(μm)としても、フィルム52、53、54或いは55の吸音特性は、実質的に同様であることによる。
(11)本発明の実施にあたり、上記第1実施形態にて述べた吸音シート50bは、一枚に限ることなく、2枚或いは一般的には複数枚を積層して新たな吸音シートとしてもよい。これによれば、一枚の吸音シート50bによる場合の吸音性能(特に、低周波数の領域の吸音性能)を、さらに、より一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0137】
10…エンジンアンダーカバー、50…エンジンアンダーカバー、
50a…カバー本体、50b、50c、50d…吸音シート、
52、53、54、55…フィルム、
52a、53a、54a、55a…平膜部、
52b、53b、54b、55b…気泡部、56…表皮層、57…裏皮層、
E…エンジン、F、Fa…環状フランジ部、T、Ta…環状両面テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な弾性を有する高分子有機材料により形成される第1層と、
柔軟な弾性を有する高分子有機材料により形成されて前記第1層に沿い積層状に固着してなる第2層とを備えて、
当該第2層は、その気泡部を、吸音性の発揮可能に、前記第1層に沿い分散させ、かつ当該第1層から離れる方向へ、多数、隆起させるように、形成してなる自動車用吸音シート。
【請求項2】
前記第1層は、その気泡部を、吸音性の発揮可能に、前記第2層に沿い分散させ、かつ当該第2層から離れる方向へ、多数、隆起させるように、形成してなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用吸音シート。
【請求項3】
前記第1及び第2の両層は、それぞれ、7(μm)〜150(μm)の範囲以内の厚さを有するフィルムであり、
前記多数の気泡部は、それぞれ、5(mm)〜100(mm)の範囲以内の径及び高さを有する筒状気泡部であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用吸音シート。
【請求項4】
前記第2層を介し前記第1層に対向するように前記第2層に沿い積層されて多孔質材料により形成してなる第3層を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車用吸音シート。
【請求項5】
前記第3層は、10(g/m2)〜200(g/m2)の範囲以内の目付量を有することを特徴とする請求項4に記載の自動車用吸音シート。
【請求項6】
前記第3層を形成する前記多孔質材料は、不織布であることを特徴とする請求項4または5に記載の自動車用吸音シート。
【請求項7】
前記第3層、前記第2層及び前記第1層の各外周部は、共に、前記第1層の前記外周部を基準に熱融着されて、環状フランジ部として形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の自動車用吸音シート。
【請求項8】
高分子有機材料により形成される第1層と、
柔軟な弾性を有する高分子有機材料により形成されて前記第1層に沿い積層状に固着してなる第2層と、
当該第2層を介し前記第1層に対向するように前記第2層に沿い積層されて多孔質材料により形成してなる第3層と、
前記第1層を介し前記第2層に対向するように前記第1層に沿い積層されて金属材料により形成してなる第4層とを具備して、
前記第2層は、その気泡部を、吸音性の発揮可能に、前記第1層に沿い分散させ、かつ当該第1層から離れる方向へ、多数、隆起させるように、形成してなる自動車用吸音シート。
【請求項9】
前記第1及び第2の両層は、それぞれ、7(μm)〜150(μm)の範囲以内の厚さを有するフィルムであり、
前記多数の気泡部は、それぞれ、5(mm)〜100(mm)の範囲以内の径及び高さを有する筒状気泡部であり、
前記第3層は、10(g/m2)〜200(g/m2)の範囲以内の目付量を有し、
また、前記第4層は、10(μm)〜100(μm)の範囲以内の厚さを有することを特徴とする請求項8に記載の自動車用吸音シート。
【請求項10】
前記第3層を形成する前記多孔質材料は、不織布であることを特徴とする請求項8または9に記載の自動車用吸音シート。
【請求項11】
前記第4層を形成する前記金属材料は、アルミニウムであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つに記載の自動車用吸音シート。
【請求項12】
前記第3層、前記第2層、前記第1層及び前記第4層の各外周部は、前記第4層の前記外周部を基準に熱融着されて、環状フランジ部として形成されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1つに記載の自動車用吸音シート。
【請求項13】
自動車のエンジンルーム内に配設してなるエンジンの底部に沿い配設されるエンジンアンダーカバーにおいて、
エンジンの前記底部に沿い支持されて合成樹脂板からなるカバー本体と、
請求項1〜12のいずれか1つに記載の吸音シートとを具備して、
この吸音シートは、前記第2層を前記第1層の前記エンジン側に位置させるように、前記カバー本体に沿い、前記エンジンの前記底部側から装着されることを特徴とする自動車用エンジンアンダーカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−208618(P2010−208618A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24208(P2010−24208)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(509069892)豊和繊維工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】