説明

自動降坂速度制御システム

機械の降坂速度を自動的に制御する方法。この方法は、現在の機械速度に基づいて目標機械速度を決定するステップと、勾配が所定の閾値より大きいこと、等の少なくとも1つのトリガ条件が満たされたか否かを判断するステップと、を含む。条件が満たされた場合、この方法は、制御システムを有効化して、パワートレインリターダとトランスミッションギアチェンジのうちの少なくとも一方を制御して、目標機械速度の超過を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動降坂速度制御に関し、より詳しくは降坂速度を制御するための自動パワートレイン制動およびギアシフトに関する。
【背景技術】
【0002】
機械のオペレータは、降坂時にしばしば、制動装置を効かせ、ギアを選択することによって速度を制御する。(特許文献1)は、方位センサを使用して、油圧式ファンの動作によりエンジンの制動を制御することを開示している。しかしながら、(特許文献1)は目標速度を決定するシステムを開示していない。(特許文献1はまた、パワートレイン制動と変速ギアの制御により降坂速度を制御するシステムも開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0207398号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、本願は、機械の降坂速度を自動的に補遺御する方法を提供する。この方法は、現在の機械速度に基づいて目標機械速度を設定し、勾配が所定の閾値より大きいこと、等の少なくとも1つのトリガ条件が満たされたか否かを判断する。条件が満たされた場合、この方法は、制御システムを有効化して、パワートレインリターダを制御し、目標機械速度の超過を防止する。
【0005】
別の態様において、この方法は、ブレーキペダルが踏まれると、パワートレイン制動レベルを上げて、機械速度を目標速度未満に下げる。
【0006】
また別の態様において、スロットル、エンジン、パワートレインリターダ、勾配センサ、コンローラを含む機械が提供される。コントローラは、パワートレインリターダおよび勾配センサと電気的に連通しており、勾配センサが所定の閾値より大きい機械の勾配を測定し、スロットルが解放されると、パワートレインリターダを有効化して、目標機械速度の超過を防止するように構成される。
【0007】
本願のその他の特徴と態様は、以下の説明と添付の図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】平坦な坂上面の上の機械の概略図である。
【図2】降坂面の上の機械の概略図である。
【図3】平坦な坂下面の上の機械の概略図である。
【図4】機械の概略図である。
【図5】リターダレバーの概略図である。
【図6】自動降坂速度制御システムのブロック図である。
【図7】軌道シーケンスのブロック図である。
【図8】目標速度シーケンスのブロック図である。
【図9】速度制御シーケンスのブロック図である。
【図10】加速シーケンスのブロック図である。
【図11】減速シーケンスのブロック図である。
【図12】スキッドシーケンスのブロック図である。
【図13】失速シーケンスのブロック図である。
【図14】シフトシーケンスのブロック図である。
【図15】ギア選択シーケンスを説明する図である。
【図16】勾配センサの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜図3は、地面12の上にある、自動降坂速度制御システム100(以下、「制御システム100」という)を備える機械10を示している。図1は、地面12の平坦な坂上面14の上にある機械10を示しており、この機械10は、坂上平面速度18で平面方向16に走行している。図2は、地面12の勾配22の降坂面20の上にある機械を示しており、この機械10は、降坂速度26で降坂方向24に走行している。図3は、地面12の平坦な坂下面28の上にある機械10を示しており、この機械10は、坂下平面速度30で平面方向16に走行している。
【0010】
機械10は実際には、連結トラック(図示のとおり)またはその他、さまざまな自動車または移動機械のうちのいずれであってもよい。機械10は、たとえば、トラック、自動車、公道用トラック、ダンプトラック、工事現場用トラック、土木機械、ホイールローダ、突き固め機、掘削機、履帯式トラクタ、ブルドーザ、モータグレーダ、モータスクレーパまたは他のいずれの移動機械であってもよい。機械10は、荷重32を運搬していても、していなくてもよい。
【0011】
図4は、エンジン34、パワートレインリターダ35、トランスミッション38、自動トランスミッション制御手段39、ドライブシャフト40、車輪42、機械または車輪ブレーキ44、コントローラ46、勾配センサ48、荷重センサ49、スロットル50、ブレーキペダル52、リターダレバー54を備える。エンジン34は、トランスミッション38とドライブシャフト40を通じて動力を車輪42に伝える。スロットル50、ブレーキペダル52およびリターダレバー54は、オペレータ56によって制御される。オペレータ56は実際には、運転士(図示のとおり)または自律制御システムであってよい。
【0012】
パワートレインリターダ35は、機械10を推進させるための動力を供給し、またはその動力を伝達するシステム内でエネルギーを消散させるために使用される機器またはシステムを含む。パワートレインリターダ35は、エンジンブレーキ36および/またはトランスミッションリターダ37を含んでいてもよい。パワートレインリターダ35は、エンジンブレーキ36またはトランスミッションリターダ37のいずれか、または両方を含んでいてもよい。エンジンブレーキ36、トランスミッションリターダ37、および含められている他のあらゆるパワートレインリターダ35は、一緒に使用してもよく、相互に褒め合ってもよい。
【0013】
エンジンブレーキ36は、エネルギーを消散させることによって、エンジン34と機械10を減速(retard or slow)させる機器である。エンジンブレーキ36は、圧縮解放ブレーキまたはジェイクブレーキとも呼ばれ、エンジン34の弁を作動させ、開放し、または制御することによって機能する。エンジンブレーキ36は、圧縮行程の上死点付近でエンジン34の排気弁を開放し、または作動させてもよく、これによって圧縮空気を排気の中に解放させて、エネルギーを消散させ、機械10を減速させる。
【0014】
トランスミッションリターダ37またはその他の駆動系リターダは、駆動系の中でエネルギーを消散させる。トランスミッションリターダ37は、トランスミッション38に取り付けられた1つまたはそれ以上の油圧ポンプを動作させて、エネルギーを消散させてもよい。トランスミッションリターダ37は、流体(油圧油、トランスミッション液またはその他の利用可能な流体)を、トランスミッション38と一緒に回転するチャンバの中に輸送してもよい。チャンバは、羽根またはその他の構造を有していてもよい。流体がチャンバに供給されると、トランスミッション38に粘性抵抗がかかり、これがエネルギーを消散させて、機械10を減速させる。トランスミッションリターダ37はまた、トランスミッション38またはドライブシャフト40に連結された電気モータ、ヒータ、または発電機を動作させて、エネルギーを消散させてもよい。
【0015】
パワートレインリターダ35はまた、当業界で周知のその他のリターダを有していてもよい。たとえば、パワートレインリターダ35は、排気システムに制御可能な制約を加える排気ブレーキまたは、電磁誘導を利用してフライホイール、トランスミッション37またはドライブシャフト40に制動力をかけるようにしてもよい電気リターダを含んでいてもよい。パワートレインリターダ35からのエネルギーは、他のシステムが使用してもよく、または後にパワートレインが使用するために保存していてもよい。
【0016】
コントローラ46は、エンジン34、パワートレインリターダ35、およびトランスミッション38と連通し、これらを制御する。コントローラ46はまた、勾配センサ48、スロットル50、ブレーキペダル52、およびリターダレバー54からデータを受信する。コントローラ46は、電子コントローラモジュールまたは、データの通信、受信、処理、保存が可能な当業界で周知の別のプロセッサの形をとる。コントローラ46はまた、本明細書に記載のものより多くのシステムと、これより多くのデータの通信、受信および処理を行ってもよい。
【0017】
自動トランスミッション制御手段39はトランスミッション38の適当なギアを自動的に判断し(図9と図15に関して後述)、このギアに入れる。トランスミッション38のギアはまた、オペレータ56がマニュアル操作で選択してもよい。
【0018】
勾配センサ48は、機械10が乗っている勾配22の指標を提供する。勾配センサ48は、加速度計(図16に関して後述)、傾斜計、または機械10の上り、下り、仰角の変化、傾斜、方位または勾配22を測定するための当業界で周知の他のセンサの形をとってもよい。勾配センサ48はまた、全地球測位システム、機械10の現在位置の勾配に関する外部入力、またはオペレータ56からの入力の形をとってもよい。勾配22は、上昇勾配を走行距離で割ったパーセンテージ(%)として測定してもよく、0%勾配は平坦な0傾斜、100%勾配は1フィート走行して1フィート上昇する(1/1の)急峻な傾斜、すなわち45度傾斜である。
【0019】
荷重センサ49は、荷重32と機械10の重量の指標を提供する。荷重センサ49は、機械10のサスペンションのアスペクトをモニタしてもよく、または実際にはロードセルであってもよい。荷重センサ49はまた、実際には、重量を表す外部入力または、荷重32と機械10の重量を測定するための当業界で周知の他の機器または方法であってもよい。より機能の少ない実施形態の場合、荷重センサ49は不要としてもよい。
【0020】
スロットル50は、オペレータ56によって押し下げられ、エンジン34への燃料供給を増大させ、機械10の速度を上げる。ブレーキペダル52は、オペレータ56によって使用され、車輪ブレーキ44をかけて、機械10を減速させる。
【0021】
リターダレバー54は、オペレータによって使用され、パワートレインリターダ35をかけて、機械10を減速させる。図5に示されるように、リターダレバー54には、複数の動作位置または動作モードがあってもよい。たとえば、リターダレバー54には、オートマチック位置58、オフ位置60、ロー位置62、ハイ位置64があってもよい。オートマチック位置58では、制御システム100が有効化される。オフ位置60では、制御システム100とパワートレインリターダ35が無効化される。ロー位置62では、制御システム100が無効化され、パワートレインリターダ35がかけられる。ハイ位置64では、制御システム100が無効化され、パワートレインリターダ35が、ロー位置62の時よりも大きな程度までかけられる。リターダレバー54の位置はこれより多くても少なくてもよく、また、これらをなくして、デフォルトでオートマチック位置58が選択されてもよい。
【0022】
コントローラ46は、制御システム100を動作させるように構成される。制御システム100は、図6において、以下の制御シーケンスを有するように概略的に示されている。有効化シーケンス200、目標速度シーケンス300、速度制御シーケンス400、加速シーケンス500、減速シーケンス600、スキッドシーケンス700、失速シーケンス800、シフトシーケンス900、およびギア選択シーケンス910である。制御システム100のシーケンスはこれより多くても少なくてもよい。
【0023】
有効化シーケンス200は、図7に示されるように、制御システム100がいつ有効化され、パワートレインリターダ35が自動的に動作するかを判断する。有効化シーケンス200は、少なくとも1つのトリガ条件について尋ね、少なくとも1つのトリガ条件が満たされたか否かを判断し、制御システム100を有効化する。
【0024】
図7に示されているように、有効化シーケンス200には5つのトリガ条件が含まれてもよい。トリガ条件202では、有効化シーケンス200は、リターダレバー54がオートマチック位置58にあるか否かを確認する。トリガ条件204では、有効化シーケンス200は、所定の勾配閾値を超えた降坂勾配22が勾配センサ48によって報告されたか否かを確認する。所定の勾配閾値は、機械の降坂速度26を制御するためにパワートレイン制動が必要となる勾配22であってもよく、0%から4%の間の勾配22であってもよい。
【0025】
トリガ条件206では、有効化シーケンス200は、スロットル50が解除されたか否かを確認する。トリガ条件208では、有効化シーケンス200は、ブレーキペダル52が踏まれていないかを確認する。トリガ条件210では、有効化シーケンス200は、エンジン34が所定の失速速度より速いか否かを確認する。所定の失速速度は、それより低いとエンジン34が適正に動作しなくなる速度であり、それより低いとエンジン34に対して、それが回転し続けるのに十分な燃料と空気が送られなくなる速度を表していてもよい。所定の失速速度を下回ると、エンジン速度は自動的に失速速度より高く上げられてもよい。
【0026】
有効化シーケンス200のこれらのトリガ条件202、204、206、208、210の各々に対する回答が「イエス」であれば、結果212で制御システム100が有効化される。有効化シーケンス200のこれらのトリガ条件202、204、206、208、210のいずれかに対する回答が「ノー」であると、結果214で制御システム100が有効化されず、マニュアル制御が保持される。有効化シーケンス200のトリガ条件、質問、回答、結果は、これより多くても少なくてもよい。
【0027】
有効化シーケンス200によって有効化されると、制御システム100は、その他のシーケンスを利用して機械10とエンジン34を制御し、これを図8から図15に示す。
【0028】
図8は目標速度シーケンス300を示しており、これは制御システム100の目標速度の決定に使用される。ステップ302において、機械10の現在速度が自動的に測定または判断される。ステップ304において、機械10の最大許容速度が決定される。最大許容速度は、その時の状況において機械10が動作されるべき所定の速度である。機械10の最大許容速度は、勾配22と荷重32の重量に依存してもよい。勾配22がより急峻で、荷重32の重量が大きいほど、最大許容速度は低くなり得る。最大許容速度は、計算またはマップを通じて、コントローラ46により決定されてもよい。機械10の最大許容速度はまた、その他の要素、たとえば車輪スリップ、負荷分散、実際の使用状況、エンジン状態または、機械10の動作に影響を与える可能性のあるその他の要素に依存してもよい。ステップ304は、勾配22の変化等、最大許容速度を変化させるような変動的条件に対応して常に繰り返されている。
【0029】
ステップ306において、ステップ302で決定された現在速度とステップ304で決定された最大許容速度のうちの低い方が目標速度とされる。ステップ306は、最大許容速度の変化に対応して常に繰り返されている。ステップ308において、制御システム100は、ステップ306で決定された目標速度を達成するために使用される。
【0030】
図9は速度制御シーケンス400を示しており、これは目標速度の達成に使用される。制御システム100は、以下のように、降坂速度26を目標速度と一致させるように試みる。ステップ402において、トランスミッション38の適当なギアが、ギア選択シーケンス910(図15に関して後述)に従って選択される。次に、ステップ404において、パワートレインリターダ35が有効化されて、目標速度が達成される。速度が目標速度より高い場合、パワートレインの制動程度または制動レベルは上げられ、速度が目標速度より低い場合は、エンジンブレーキのレベルが下げられる。
【0031】
図10は加速シーケンス500を示しており、これは、勾配22の上にあり、制御システム100が有効である時に機械10を加速させるために使用される。ステップ502において、制御システム100が有効の状態で、スロットル50がかけられる。ステップ504において、スロットル50がかけられたことに応答して、制御システム100が無効化され、機械10が加速される。ステップ506において、新しい現在速度でスロットル50が再び解除される。ステップ508において、目標速度シーケンス300によって新しい目標速度がステップ506からの新しい現在速度に基づいて設定された状態で、制御システム100が再び有効化される。
【0032】
図11は減速シーケンス600を示しており、これは、勾配22の上にあり、制御システム100が有効である時に機械10を減速させるために使用される。ステップ602において、制御システム100が有効の状態で、ブレーキペダル52が踏まれる。ステップ604において、制御システム100は自動的にパワートレインの制動レベルを上げ、車輪ブレーキ44を必要に応じてかけて、機械10を減速させる。ステップ606において、新しい現在速度でブレーキペダル52が解除される。ステップ608において、目標速度シーケンス300によって新しい目標速度がステップ606からの新しい現在速度に基づいて設定された状態で、制御システム100が再び有効化される。
【0033】
図12はスキッドシーケンス700を示しており、これは、駆動力制御システムが有効である状態で、スキッド現象発生中の支援のために使用される。スキッド現象は、機械10が地面12の上でスリップを始めた時、またはその他の理由で駆動力が失われた時に発生する。駆動力制御システムは、車輪速度の変化と加速度計のデータを含めたさまざまな入力に基づいて有効化されてもよい。状況に応じて、駆動力制御システムは多数の是正措置を実行してもよく、これにはたとえば、車輪42への動力の分散を変化させること、車輪ブレーキ44をかけること、パワートレインリターダ35をかけること、またトランスミッション38のギアチェンジを行うこと、等が含まれる。
【0034】
ステップ702において、駆動力制御システムは有効であり、動作を要求する。ステップ704において、制御システム100は、駆動力制御システムによって制御され、駆動力制御システムからの要求に従って、パワートレイン制動レベルを適用するか、トランスミッション38のギアチェンジを行う。ステップ706において、スキッド現象が終息し、駆動力制御システムが有効ではなくなるか、または是正措置を要求しなくなる。ステップ708において、駆動力制御システムが有効化される前の目標速度で、制御システム100が再び有効化される。
【0035】
図13は失速シーケンス800を示しており、これは、トリガ条件210と同様に、エンジン34の速度が所定の失速速度を下回るのを防止するために使用される。ステップ802において、エンジン34の速度が所定の失速速度を下回ると、失速制御システムが有効化される。ステップ804において、制御システム100が失速制御システムによって制御される。ステップ806において、失速制御システムはエンジン34の速度を無効化速度より高く上げ、これは、エンジン34の速度が再び所定の失速速度を下回るのを防止するのに役立つように、所定の失速速度より高くてもよい。ステップ808において、エンジン34の速度が無効化速度を上回ると、失速制御システムが無効化され、失速制御システムが有効化される前の目標速度で制御システム100が有効化される。
【0036】
図14はシフトシーケンス900を示しており、これはトランスミッション38の円滑なシフトを提供するのに役立つ。ステップ902において、制御システム100または自動トランスミッション制御手段39のいずれかがトランスミッション38のギアシフトを要求する。ステップ904において、制御システム100は、トランスミッション38のギアシフトが完了するまで、パワートレイン制動レベルの変化を禁止する。
【0037】
図15はギア選択シーケンス910がどのように機能するかを示す例示的な図である。速度制御シーケンス400のステップ402に含められているように、制御システムは、自動トランスミッション制御手段39を通じて、その時の状況にとって適正なギアを選択する。図15に示されるように、このギア選択は、目標速度ではなく、勾配22と荷重32の重量に基づいて行ってもよい。図15は、勾配22対荷重32の重量に依存する適正なギア(1〜7)の例示的な図である。勾配22と荷重32が低ければ低いほど、より高いトランスミッション38ギアが選択される。実際の数値は、機械10の特性によって大きく異なる。このギア選択には、追加的な可変値も使用してよい。
【0038】
他の実施形態において、シーケンス200、300、400、500、600、700、800、900または910のうちの1つまたはそれ以上を含めなくてもよい。たとえば、加速シーケンス500、減速シーケンス600、スキッドシーケンス700、失速シーケンス800、シフトシーケンス900および/またはギア選択シーケンス910は省いてもよい。1つの実施形態において、自動トランスミッション制御39を省いてもよく、それによって、荷重センサ48、速度制御シーケンス400のステップ402、ギアシフトシーケンス900、およびギア選択シーケンス910は不要となり得る。
【0039】
図16は、使用可能な例示的な勾配センサ48を示している。この勾配センサ48は、ロール軸X、ピッチ軸Y、ヨー軸Zの3軸加速度計として実現されている。これらの3つの軸X、Y、Zからの測定値は、三角計算法によって勾配22の指標を提供するために使用できる。これらの計算では、多数の可変値を考慮に入れなければならず、たとえば、粗い地面12、機械10の回転中の動揺、速度変化中または車輪ブレーキ壁44がかかっているときの機械10の揺れ、車輪42の跳ね上がり、荷重32の移動、トランスミッション38のギアシフト、機械10のサスペンションの圧縮、急速に変化する勾配22その他が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上述の制御システム100により、オペレータ56は機械10の速度を制御する。オペレータ56が傾斜22を下り始め(図1参照)、スロットル50を解除すると、制御システム100に引き継がれて、機械10の現在の速度が維持される。現在の速度が勾配22と荷重32の重量にとって速すぎると、目標速度シーケンス300が機械10を減速させる。オペレータ56が、スロットル50を押し下げることによって機械10を加速させたい場合、加速シーケンス500が機械10を加速させる。オペレータ56が、ブレーキペダル52を踏むことによって、機械10を減速させたい場合、減速シーケンス600は機械10を減速させる。
【0041】
スキッド現象が発生し、駆動力制御システムがパワートレイン制動レベルまたはトランスミッション38のギアの変更が必要な場合、スキッドシーケンス700は駆動力制御システムを制御する。エンジン34の速度が所定の失速速度未満になると、失速シーケンス800が失速制御システムを制御する。トランスミッション38のギアチェンジが行われている間、制御システム100は、ギアチェンジが完了するまでパワートレイン制動レベルを変化させない。
【0042】
制御システム100は継続的に現状に適応する。勾配22の変化によって、目標速度シーケンス300において最大許容速度が変化し、ギア選択シーケンス910によって選択されたギアが自動的に変化する可能性がある。機械10が平坦な面28(図3参照)に戻ると、感知された勾配22は、有効化シーケンス200における所定の閾値より低くなり、制御システム100が無効化されるであろう。
【0043】
降坂時には、制御システム100は、オペレータ56が、重要な入力を必要とせず、またブレーキペダル52を介してホイールブレーキ44を使って所望の速度を達成することなく、所望の速度を維持するのに役立つ。特に機械10が大型である、荷重32が重い、および勾配22が急峻である場合に、車輪ブレーキ44が過熱し、摩耗して、降坂時に速度制御において効果がなくなり得る。これらの状況と用途においては、たとえばエンジンブレーキ36等のパワートレインリターダ35が車輪ブレーキ44より一般に好ましい。
【0044】
制御システム100がなければ、オペレータ56は常に制動レバー54を切り替えて、降坂時に、所望の機械10に必要なパワートレイン制動レベルを達成し、維持する必要がある。オペレータ56に求められるこのような連続的動作によって、オペレータ56は車輪ブレーキ44をかけて必要な修正を行い得る。制御システム100は、オペレータ56が担うこの作業を軽減させ、車輪ブレーキ44を使用しなくて済むようにするのに役立ち得る。このようにオペレータ56が担う作業が軽減されることによって、オペレータは、道路またはその他の任務により集中することができるであろう。制御システム100により、機械10の自動制御がより容易となる場合もある。
【0045】
制御システム100はまた、オペレータ56が気付き、修正し得る前に、勾配22の変化に対する修正を行う。目標速度シーケンス300は、その時の状況での最大許容速度の超過を防止するのに役立つ。スキッドシーケンス700は、機械10が好ましくない状況に自動的に反応するのに役立ち、その一方でオペレータ56は引き続き運転に集中することができるようにする。失速シーケンス800は、機械10が、オペレータ56が気付かない、または間に合うように反応できない場合があるような低速状態に自動的に反応するのに役立つ。ギアシフトシーケンス900は、トランスミッション38の円滑なシフトを提供するのを助け、トランスミッション38の摩耗を軽減させる可能性がある。ギア選択シーケンス910は、自動的にトランスミッション38をその状況にとって適正なギアに入れることによって、オペレータ56を支援する。3軸加速度計は、勾配センサ48として、傾斜計に対する低コストの代替物となり得る。
【0046】
自動制御レベルが高いにもかかわらず、制御システム100は依然としてオペレータ56に多くの入力をもたらす。有効化シーケンス200は、制御システム100を有効化する容易な方法である。オペレータは、勾配22に近づいたときに、単にリターダレバー54をオートマチック位置58にして、スロットル50から足を離すだけでよい。
【0047】
目標速度シーケンス300によって、オペレータ56は素早くその所望の降坂速度26を設定することができる。加速シーケンス500によって、オペレータ56は機械10を容易に加速させることができる。減速シーケンス600によって、オペレータ56は機械10を容易に減速させ、その一方でさらに車輪ブレーキ44の必要性を低減させることができる。
【0048】
要約すれば、機械の降坂速度を自動的に制御する方法が開示され、この方法は、現在の機械速度に基づいて目標機械速度を設定するステップと、勾配センサによって測定された勾配が所定の閾値より高いことを含む少なくとも1つのトリガ条件が満たされたか否かを判断するステップと、少なくとも1つのトリガ条件が満たされたと判断された場合に、パワートレインリターダを制御して、目標機械速度の超過を防止するステップと、を含む。少なくとも1つのトリガ条件はまた、オペレータがオートマチックモードを選択したこと、スロットルが解除されたこと、機械ブレーキがかけられていないこと、エンジン速度が失速防止を行うべき速度であること、等のうちの少なくとも1つまたはそれ以上を含んでいてもよい。勾配センサは、加速度計であってもよい。トランスミッションギアは、勾配とその機械が運搬する荷重の重量に基づいて選択されてもよい。この方法はまた、最大許容機械速度を決定するステップと、最大許容機械速度が目標機械速度より低いときに、パワートレイン制動レベルを上げて、最大許容機械速度の超過を防止するステップと、を含んでいてもよい。最大許容機械速度は、勾配とその機械が運搬する荷重の重量に依存してもよい。パワートレインリターダは、スロットルがかけられた時に無効化されてもよい。パワートレインリターダは、スロットルが再び解除された時に再度有効化され、新しい現在速度に基づいて新しい目標速度が設定されてもよい。ブレーキペダルが踏まれると、パワートレイン制動レベルが上げられて、機械速度が目標速度未満にされてもよく、ブレーキペダルが解除されたら、新しい現在速度に基づいて新しい目標速度が設定されてもよい。勾配が所定の閾値未満になった時に、パワートレインリターダは再度無効化されてもよい。トランスミッションのギアチェンジが行われたときに、現在のパワートレイン制動レベルが維持され得る。パワートレインリターダはまた、エンジンブレーキとトランスミッションリターダの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0049】
機械の自動速度制御のための方法もまた開示され、この方法は、現在の機械速度に基づいて目標機械速度を設定するステップと、トリガ条件が満たされたか否かを判断するステップと、トリガ条件が満たされたと判断されたところで、パワートレイン制動レベルを有効化して、目標機械速度の超過を防止するステップと、ブレーキペダルが踏まれたときに、パワートレイン制動レベルを上げて、機械速度を目標速度未満にするステップと、を含む。少なくとも1つのトリガ条件はまた、勾配が所定の閾値より大きいこと、オペレータがオートマチックモードを選択したこと、スロットルが解除されたこと、機械ブレーキがかかっていないこと、エンジン速度が失速防止を行うべき速度であること、等のうちの少なくとも1つまたはそれ以上含んでもよい。この方法はまた、勾配と機械が運搬する荷重の重量に基づいてトランスミッションのギアチェンジを行うステップを含んでいてもよい。この方法また、最大許容機械速度を決定するステップと、最大許容機械速度が目標機械速度未満の時に、パワートレイン制動レベルを上げて、最大許容機械速度の超過を防止するステップと、を含んでいてもよく、最大許容機械速度は、勾配と機械が運搬する荷重の重量に依存してもよい。この方法はまた、ブレーキペダルが解除されたときに、パワートレイン制動レベルを有効化して、新しい現在速度に基づく新しい目標機械速度の超過を防止するステップを含んでいてもよい。
【0050】
また、スロットル、エンジン、パワートレインリターダ、勾配センサ、パワートレインリターダおよび勾配センサと電気的に連通するコントローラと、を備える機械が開示され、勾配センサから機械の勾配が所定の閾値より大きいことが報告され、スロットルが解除されると、コントローラはパワートレインリターダを有効化して、目標機械速度の超過を防止する。この機械はまた、機械の勾配が所定の閾値より大きく、スロットルが解除されると、勾配とその機械が運搬する荷重の重量に基づいてギアチェンジを行うトランスミッションを備えていてもよい。勾配センサは、3軸加速度計であってもよい。
【0051】
本願の態様は、降坂速度制御が必要な、エンジン34と機械10のその他のシステムにも適用可能である。このような、エンジン34と機械10のその他のシステムとしては、ハイブリッド、電気、油圧その他が含まれる。本明細書で説明する本願の実施形態は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく採用され得るが、当業者にとっては、各種の変更や改変を加えることができることが明らかであろう。他の実施形態も、本願の明細書と実践態様を考慮することにより、当業者にとって明らかとなるであろう。明細書と例は単に説明のためとみなされ、実際の範囲は以下の特許請求の範囲とその均等物によって示されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(10)の降坂速度(26)を自動的に制御する方法であって、
現在の機械速度に基づいて目標機械速度を設定するステップと、
勾配センサ(48)によって測定された勾配(22)が所定の閾値より大きいことを含む少なくとも1つのトリガ条件が満たされたか否かを判断するステップと、
少なくとも1つのトリガ条件が満たされたと判断されたところで、パワートレインリターダ(35)を制御して、目標機械速度の超過を防止するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つのトリガ条件がまた、オートマチックモード(58)がオペレータにより選択されたこと、スロットル(50)が解除されていること、機械ブレーキ(44)がかけられていないこと、エンジン(34)の速度が失速防止を行うのに十分な速度であること、のうちの少なくとも1つまたはそれ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
最大許容機械速度を決定するステップと、
最大許容機械(10)速度が目標機械速度未満の時に、パワートレイン制動レベルを上げて、最大許容機械(10)速度の超過を防止するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
スロットル(50)がかけられると、パワートレインリターダ(35)が無効化され、スロットル(50)が再び解除されると、パワートレインリターダ(35)が再び有効化されて、新しい目標速度が新しい現在速度に基づいて設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ブレーキペダル(52)が踏まれると、パワートレイン制動(35)レベルが上げられて、機械(10)の速度が目標速度未満に下げられ、ブレーキペダル(52)が解除されると、新しい目標速度が新しい現在速度に基づいて設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
勾配(22)が所定の閾値未満であると、パワートレインリターダ(35)が無効化される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
トランスミッション(38)のギアチェンジが行われている時に、現在のパワートレイン制動(35)レベルが保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
パワートレインリターダ(35)がエンジンブレーキ(36)とトランスミッションリターダ(37)の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スロットル(50)と、
エンジン(34)と、
パワートレインリターダ(35)と、
勾配センサ(48)と、
パワートレインリターダ(35)および勾配センサ(48)と電気的に連通するコントローラ(46)と、
を備える機械(10)であって、
勾配センサ(48)が、機械(10)の勾配(22)が所定の閾値より大きいことを報告し、スロットル(50)が解除されると、コントローラ(46)はパワートレインリターダ(35)を有効化して、目標機械(10)速度の超過を防止する機械(10)。
【請求項10】
機械(10)の勾配(22)が所定の閾値より大きく、スロットル(50)が解除されると、勾配(22)と機械(10)が運搬する荷重(32)の重量に基づいてギアチェンジを行うトランスミッション(38)をさらに備える、請求項9に記載の機械(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−511426(P2013−511426A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539909(P2012−539909)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/051723
【国際公開番号】WO2011/062697
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】