説明

自律移動装置

【課題】 超音波の干渉による誤検出を防止しつつ、複数の超音波センサによるスキャン時間を短縮することが可能な自律移動装置を提供する。
【解決手段】 自律移動装置1は、超音波を発信するとともにその反射波を受信することにより物体を検出する16個の超音波センサ21〜36を備える。16個の超音波センサ21〜36は、上下2段に分けて、自律移動装置1の本体10の外周面に周方向に沿って等間隔に配置されている。また、自律移動装置1は、16個の超音波センサ21〜36のうち、超音波が互いに干渉しない十字状の位置に配置されている4つの超音波センサを一組として同時に駆動するとともに、駆動する組を所定時間毎に順次切替えるインターフェースボード42を備える。このインターフェースボード42は、超音波センサ21〜36の結果出力時間を計測して物体までの距離を算出し、その算出結果としての距離情報を電子制御装置60に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動装置に関し、特に、周囲の物体を検出しつつ自律して移動する自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、障害物等の物体を回避しつつ、目的地まで自律して移動する自律移動装置が注目されている。障害物を回避しつつ自律移動するためには、自律移動装置が、自機周辺の障害物等の存在を常に認識していることが必要となる。そのため、一般的に自律移動装置は、複数の測距センサ(物体検出手段)を搭載し、それらの測距センサを逐次切り替えることで、自機周辺の障害物を全方位にわたって検出している。
【0003】
このような自律移動装置として、送信用超音波トランスデューサと受信用超音波トランスデューサの組(測距センサ)が8組、45°間隔で環状に取付けられた移動ロボット(自律移動装置)が特許文献1に開示されている。この移動ロボットでは、トランスデューサの組ごとに、ドライバ回路、カウンタ及び増幅回路が設けられている。各トランスデューサの組に対する測定要求パルスは、マイクロコンピュータによりインターフェースを介して出力される。各カウンタの測定値はインターフェースを介してマイクロコンピュータに送られ、物体までの距離が計算される。
【0004】
ここで、8台の送信用超音波トランスデューサは、お互いに干渉しないように、順次超音波パルス(検出波)を発するように構成されている。すなわち、マイクロコンピュータは、所定の送信用超音波トランスデューサが超音波パルスを発した後、超音波パルスが最長有効到達可能距離を伝わるより少し長い時間だけ待ってから、次の送信用超音波トランスデューサに対して測定要求パルスを出力する。以下、マイクロ・コンピュータは、8個の送信用超音波トランスデューサに対して、前の超音波パルスが最長有効到達可能距離まで届く時間より少し長く待ってから測定要求パルスを出力することを順次繰り返す。
【特許文献1】特開平05−158533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した自律移動ロボットのように複数の測距センサを所定の時間間隔をおいて順次駆動する場合、すべての測距センサの検出結果を取得するために要する時間(以下、「スキャン時間」という)が長くなる。その結果、状況によっては、障害物等の物体を検出するまでに要する時間が長くなり、例えば、当該物体に対する、回避や停止といった動作の応答性が低下するおそれがある。この問題は、特に、測距センサの数が増大するほど顕著になる。
【0006】
ここで、測距センサ(物体検出手段)として超音波センサを用いた場合についてより具体的に説明する。例えば、超音波センサの測距範囲を3.5mとした場合、発信された超音波が3.5m先で反射されて戻ってくるまで約20msec必要となるが、誤検出を防ぐためには不要超音波の減衰を待ってから次の超音波センサを駆動する必要がある。そのため、例えば25msec間隔で超音波センサが順次切替えられる。
【0007】
ここで、自律移動装置(自律移動ロボット)に16個の超音波センサを搭載したとすると、スキャン時間は25msec×16=400msecとなる。一方、自律移動装置が1.5m/secの速度で移動していると仮定すると、スキャン時間(400msec)が経過する間に0.6m移動する。そのため、ワーストケースで考えると、障害物の検出が遅れることにより、該障害物と接触するおそれが生じてくる。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、検出波の干渉による誤検出を防止しつつ、複数の物体検出手段によるスキャン時間(すなわち、すべての物体検出手段の検出結果を取得するために要する時間)を短縮することが可能な自律移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自律移動装置は、自機の周囲の物体を検出しつつ自律して移動する自律移動装置において、検出波を発信するとともに、物体によって反射された検出波を受信することにより、該物体を検出する複数の物体検出手段と、複数の物体検出手段のうち、検出波が互いに干渉しない2以上の物体検出手段を組合せて同時に駆動する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る自律移動装置によれば、同時に2以上の物体検出手段が駆動されるため、各物体検出手段が1つずつ順番に駆動される場合と比較して、複数の物体検出手段のスキャン時間を短縮することができる。また、2以上の物体検出手段が同時に駆動される際に、検出波が互いに干渉しない物体検出手段が選択されて組み合わされるため、検出波の干渉(すなわち誤検出)を防止することができる。よって、本発明に係る自律移動装置によれば、検出波の干渉による誤検出を防止しつつ、複数の物体検出手段によるスキャン時間を短縮することが可能となる。
【0011】
本発明に係る自律移動装置では、制御手段が、2以上の物体検出手段を含んで構成される複数の組合せを、順次、切替えて駆動することが好ましい。このようにすれば、同時に駆動される2以上の物体検出手段を含む複数の組合せ(組)が順次切替えられるため、要求される検出領域全体をより短い時間でスキャンすることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る自律移動装置では、複数の物体検出手段が、胴体部の外周面に、周方向に沿って等間隔に配置されていることが好ましい。このようにすれば、自律移動装置の周辺に存在する物体を全方位にわたって検出することが可能となる。
【0013】
本発明に係る自律移動装置では、制御手段が、複数の物体検出手段のうち、対角線上の位置に配置されている物体検出手段を一組として同時に駆動することが好ましい。この場合、対角線上の位置に配置されている物体検出手段が組み合わされて同時に駆動されるため、スキャン時間を1/2に短縮することができる。また、検出波が反対方向に発信されるため、検出波が互いに干渉することを防止することが可能となる。よって、検出波の干渉を防止しつつ、スキャン時間を1/2に短縮することが可能となる。
【0014】
本発明に係る自律移動装置では、制御手段が、複数の物体検出手段のうち、十字状の位置に配置されている物体検出手段を一組として同時に駆動することが好ましい。この場合、十字状の位置に配置されている物体検出手段が組み合わされて同時に駆動されるため、スキャン時間を1/4に短縮することができる。また、同時に発信される検出波が90°ずつずれているため、検出波が互いに干渉することを防止することが可能となる。よって、検出波の干渉を防止しつつ、スキャン時間を1/4に短縮することが可能となる。
【0015】
本発明に係る自律移動装置では、制御手段が、複数の物体検出手段のうち、L字状の位置に配置されている物体検出手段を一組として同時に駆動することが好ましい。この場合、L字状の位置に配置されている物体検出手段が組み合わされて同時に駆動されるため、スキャン時間を1/2に短縮することができる。また、同時に発信される検出波が90°ずれているため、検出波が互いに干渉することを防止することが可能となる。よって、検出波の干渉を防止しつつ、スキャン時間を1/2に短縮することが可能となる。
【0016】
なお、本発明に係る自律移動装置では、上記物体検出手段として、超音波センサを用いることが好ましい。超音波センサを用いた場合には、検出波としての超音波を発信してから反射波を受信するまでの伝播時間に応じて、物体の有無及び該物体との距離等を検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検出波が互いに干渉しない2以上の物体検出手段を組み合わせて同時に駆動する構成としたので、検出波の干渉による誤検出を防止しつつ、複数の物体検出手段のスキャン時間(すなわち、すべての物体検出手段の検出結果を取得するために要する時間)を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。まず、図1を用いて、実施形態に係る自律移動装置1の構成について説明する。図1は、自律移動装置1の全体構成を示す図である。
【0019】
自律移動装置1は、周囲に存在する障害物等の物体を検出するとともに、障害物等が検出された場合に、回避又は一時停止等の動作をとりつつ、目的地まで自律して移動する機能を有するものである。そのため、自律移動装置1は、その下部に電動モータ12及び該電動モータ12により駆動されるオムニホイール13が設けられた本体10と、周囲に存在する物体(例えば壁や障害物等)の有無及び該物体との距離を計測するレーザレンジファインダ20と、周囲に存在する物体の有無及び該物体までの距離を検出する16個の超音波センサ21〜36とを備えている。また、自律移動装置1は、所定のタイミングでレーザレンジファインダ20の検出結果を読み込むとともに、超音波センサ21〜36の検出結果をインターフェースボード42を介して読み込み、それらの検出結果に応じて、回避又は一時停止等の動作をとるように電動モータ12を制御する電子制御装置60を備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
本体10は、例えば略有底円筒状に形成された金属製のフレームであり、この本体10に、上述したレーザレンジファインダ20、16個の超音波センサ21〜36、インターフェースボード42、及び電子制御装置60等が取り付けられている。なお、本体10の形状は略有底円筒状に限られない。本体10の下部には、4つの電動モータ12が十字状に配置されて取り付けられている。4つの電動モータ12それぞれの駆動軸12Aにはオムニホイール13が装着されている。すなわち、4つのオムニホイール13は、同一円周上に周方向に沿って90°ずつ間隔を空けて取り付けられている。
【0021】
オムニホイール13は、電動モータ12の駆動軸12Aを中心にして回転する2枚のホイール14と、各ホイール14の外周に電動モータ12の駆動軸12Aと直交する軸を中心として回転可能に設けられた6個のフリーローラ15とを有する車輪であり、全方向に移動可能としたものである。なお、2枚のホイール14は位相を30°ずらして取り付けられている。このような構成を有するため、電動モータ12が駆動されてホイール14が回転すると、6個のフリーローラ15はホイール14と一体となって回転する。一方、接地しているフリーローラ15が回転することにより、オムニホイール13は、そのホイール14の回転軸に並行な方向にも移動することができる。そのため、4つの電動モータ12を独立して制御し、4つのオムニホイール13それぞれの回転方向及び回転速度を個別に調節することより、自律移動装置1を任意の方向(全方向)に移動させることができる。
【0022】
4つの電動モータ12それぞれには、電動モータ12の駆動軸12Aの回転角度を検出するエンコーダ16が取り付けられている。各エンコーダ16は、電子制御装置60と接続されており、検出した各電動モータ12の回転角度を電子制御装置60に出力する。電子制御装置60は、入力された各電動モータ12の回転角度から、自律移動装置1の移動方向及び移動量を演算する。
【0023】
レーザレンジファインダ20は、自機の正面方向(前方)を向くようにして自律移動装置1の前部に取り付けられている。レーザレンジファインダ20は、レーザを射出するとともに、射出したレーザを回転ミラーで反射させることで、自律移動装置1の周囲を中心角240°の扇状に水平方向に走査する。そして、レーザレンジファインダ20は、例えば壁や障害物等の物体で反射されて戻ってきたレーザを検出し、レーザ(反射波)の検出角度、及びレーザを射出してから物体で反射されて戻ってくるまでの時間(伝播時間)を計測することにより、物体との角度及び距離を検出する。なお、レーザレンジファインダ20は、電子制御装置60と接続されており、検出した周囲の物体との距離情報・角度情報を電子制御装置60に出力する。
【0024】
自律移動装置1の本体10の側面には、周方向に8つの切り欠きが形成されており、各切り欠き毎に上下2段に分けて超音波センサ21〜36が取り付けられている。すなわち、本体10の側面には、上段、下段それぞれに8個ずつ、合計16個の超音波センサ21〜36が取り付けられている。図2及び図3に示されるように、上段の超音波センサ21〜28及び下段の超音波センサ29〜36は、それぞれ本体10の外周面に、周方向に沿って等間隔に配置されている。すなわち、上段の超音波センサ21〜28、下段の超音波センサ29〜36は共に、同一円周上に周方向に沿って45°ずつ間隔を空けて取り付けられている。ここで、図2は、上段の超音波センサ21〜28の配置を示し、図3は、下段の超音波センサ29〜36の配置を示す。
【0025】
超音波センサ21〜36は、物体の検出方向に指向性を有している。上段の超音波センサ21〜28は、各センサの前方上方に指向性を持たせるように取り付けられている。一方、下段の超音波センサ29〜36は、各センサの前方下方に指向性を持たせるように取り付けられている。16個の超音波センサ21〜36を上述したように配置して取り付けることにより、全方位(360°)かつ自機の略全高にわたって、物体を検出することができる。
【0026】
超音波センサ21〜36は、反射形の超音波センサである。超音波センサ21〜36は、超音波を発信するとともに、物体で反射されて戻ってくる超音波(反射波)を検出し、この反射波の有無及び反射波の到達時間(伝播時間)から、物体の有無及び物体までの距離を検出する。すなわち、超音波センサ21〜36は、特許請求の範囲に記載の物体検出手段として機能する。なお、超音波センサ21〜36は、後述するインターフェースボード42に接続されており、超音波センサ21〜36による検出結果は、インターフェースボード42において物体との距離情報に変換された後、電子制御装置60に出力される。
【0027】
より詳細には、図4に示されるように、本実施形態で用いた超音波センサ21〜36は、超音波を発信する送信機37、物体で反射されて戻ってくる超音波(反射波)を検出する受信機38、送信機37並びに受信機38に電力を供給する電源(5V)端子39・グランド(GND)端子40、及び、制御信号(トリガ信号)の入力及び検出結果(検出信号)の出力に使用されるシグナル(SIG)端子41を有している。なお、図4は超音波センサ21〜36の正面図である。
【0028】
図7に示されるように、本実施形態で用いた超音波センサ21〜36では、シグナル端子41にトリガ信号(5μsのHighパルス)が入力されると、送信機37から超音波パルスが発信される。シグナル端子41は、超音波パルスを発信した後にHighになり、物体に反射して戻ってきた超音波が受信された時点でLowになる。よって、この結果出力時間(すなわちシグナル端子41がHighになっている時間)を計測することにより物体までの距離を測定することができる。なお、超音波センサ21〜36は、超音波発信中に自ら発信した超音波を拾ってしまう可能性があるため、超音波発信後はしばらく受信動作を停止する。この停止時間と発信準備にかかる時間とがホールドオフ時間になる(図7参照)。ここで、ホールドオフ時間は750μsで固定である。
【0029】
本実施形態では、16個の超音波センサ21〜36のうち、超音波が互いに干渉しない十字状の位置に配置されている4つの超音波センサを一組として同時に駆動するとともに、設定された4つの組を順次切替えて駆動する構成とした。すなわち、超音波センサ21,23,25,27の組(以下「第1組」という。図2の実線参照)、超音波センサ22,24,26,28の組(以下「第2組」という。図2の破線参照)、超音波センサ29,31,33,35の組(以下「第3組」という。図3の実線参照)、及び、超音波センサ30,32,34,36の組(以下「第4組」という。図3の破線参照)を設定し、各組に含まれる4つの超音波センサを同時に駆動するとともに、所定時間(例えば25msec)毎に駆動する組を順次切替える構成とした。よって、4回の切替え(例えば100msec)ですべての超音波センサ21〜36の検出結果を取得することができる。
【0030】
インターフェースボード42は、プログラム等を記憶するROM並びに演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等を内蔵したワンチップのマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)、及び、該マイコンと超音波センサ21〜36とを接続する入出力インターフェース回路等を備えている。インターフェースボード42は、上述した各組毎に超音波センサ21〜36を選択して駆動するとともに、超音波センサ21〜36の結果出力時間を計測して物体までの距離を算出し、その算出結果としての距離情報を電子制御装置60に出力する機能を有している。すなわち、インターフェースボード42は、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。
【0031】
ここで、インターフェースボード42の構成を示すブロック図を図5に示す。インターフェースボード42は、マイコン43、ディップスイッチ44、ASCII/バイナリ切替入力部45、超音波センサ数設定入力部46、センサ信号入出力切替部47、第1トリガ出力部48、第1センサ入力部49、第2トリガ出力部50、第2センサ入力部51、及び、シリアル入出力コンバータ部52等を有している。なお、図5では、理解を容易にするため、超音波センサ21〜36に対するトリガ入力と測距結果出力とを分けて描いているが、本実施形態の超音波センサ21〜36では、上述した1つのシグナル端子41が両機能を兼ね備えている。よって、実際には該シグナル端子41に接続されるバスの入出力状態を切替えることにより、1つのシグナル端子41をトリガ入力端子及び測距結果出力端子として利用する構成となっている。続いて、インターフェースボード42の各構成要素について説明する。
【0032】
ASCII/バイナリ切替入力部45は、ディップスイッチ44の所定の1bitの状態に基づいて、電子制御装置60に送る測距データの形式をASCII又はバイナリに設定する。例えば、ディップスイッチ44の所定の1bitの状態が「0」のときにバイナリ、「1」のときにASCIIに設定される。なお、本実施形態では「0:バイナリ」に設定した。
【0033】
超音波センサ数設定入力部46は、ディップスイッチ44の所定の3bitの状態に基づいて、インターフェースボード42に接続されている超音波センサの数を設定する。例えば、ディップスイッチ44の所定の3bitの状態が、「000」のときに8個、「001」のときに16個、「010」のときに24個、「011」のときに32個、「100」のときに40個、「101」のときに48個、「110」のときに56個、「111」のときに64個に設定される。なお、本実施形態では、「001:16個」に設定した。
【0034】
センサ信号入出力切替部47は、マイコン43からの制御信号(トリガ出力コントロール信号(3bit)、測距結果入力コントロール信号(3bit))に基づいて、第1トリガ出力部48、第1センサ入力部49、第2トリガ出力部50、又は第2センサ入力部51をアクティブにする。なお、本実施形態では、マイコン43を利用しているが、自律移動装置1の電子制御装置60からの出力信号を受けてこれらの入出力部48〜51がアクティブにされても良い。また、I/Oインターフェイスの操作あるいは通信回線を介して入力された信号を受けてこれらの入出力部48〜51がアクティブにされても良い。
【0035】
第1トリガ出力部48は、センサ信号入出力切替部47によりアクティブにされているときに、マイコン43からの制御信号(トリガ1信号(1bit)、トリガ2信号(1bit))に基づいて、上段に配置されている第1組(超音波センサ21,23,25,27)又は下段に配置されている第2組(超音波センサ22,24,26,28)に含まれる4つの超音波センサに対してトリガ信号を出力する。
【0036】
第1センサ入力部49は、センサ信号入出力切替部47によりアクティブにされているときに、第1組(超音波センサ21,23,25,27)又は第2組(超音波センサ22,24,26,28)を構成する各超音波センサからの検出信号を測距データバスを介してマイコン43の測距入力ポートに出力する。なお、本実施形態では、第1組の超音波センサ21,23,25,27と第2組(超音波センサ22,24,26,28)とは同時に駆動されないため、第1組の超音波センサ21,23,25,27と第2組(超音波センサ22,24,26,28)とを2つずつ組合せ、双方の検出信号のOR(論理和)をとった結果をマイコン43の測距入力ポートに出力する構成とした。
【0037】
第2トリガ出力部50は、センサ信号入出力切替部47によりアクティブにされているときに、マイコン43からの制御信号(トリガ1信号(1bit)、トリガ2信号(1bit))に基づいて、上段に配置されている第3組(超音波センサ29,31,33,35)又は下段に配置されている第4組(超音波センサ30,32,34,36)に含まれる4つの超音波センサに対してトリガ信号を出力する。
【0038】
第2センサ入力部51は、センサ信号入出力切替部47によりアクティブにされているときに、第3組(超音波センサ29,31,33,35)又は第4組(超音波センサ30,32,34,36)を構成する各超音波センサからの検出信号を測距データバスを介してマイコン43の測距入力ポートに出力する。なお、本実施形態では、第3組(超音波センサ29,31,33,35)と第4組の超音波センサ30,32,34,36とは同時に駆動されないため、第3組(超音波センサ29,31,33,35)と第4組の超音波センサ30,32,34,36とを2つずつ組合せ、双方の検出信号のOR(論理和)をとった結果をマイコン43の測距入力ポートに出力する構成とした。
【0039】
マイコン43では、超音波センサ21〜36の検出信号のパルス幅(時間)が取得される。より具体的には、マイコン43では、4つのタイマーが駆動されるとともに、4つの測距入力ポートそれぞれのレベル(すなわち超音波センサ21〜36の検出信号)がHighからLowに落ちたときに割り込みがかかり、そのときのタイマー値が保持されるように設定されている。そして、マイコン43では、保持されたタイマー値から検出信号パルスがHighの時間(すなわち、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間)が取得されるとともに、取得された時間から物体との距離が算出される。なお、マイコン43で算出された距離情報は、シリアル入出力コンバータ部52を介し、シリアル通信を用いて電子制御装置60に送信される。
【0040】
次に、図8を参照しつつインターフェースボード42の動作について説明する。ここで、図8は、4組(16個)の超音波センサ21〜36の駆動タイミング及び測距結果取得タイミングを示すタイミングチャートである。上述したように、本実施形態では、第1組、第2組、第3組、及び第4組に含まれる4つの超音波センサが同時に駆動されるとともに、1フレーム(25msec)毎に駆動される組が順次切替えられる。よって、4フレーム(1サイクル、100msec)で16個すべての超音波センサ21〜36の検出結果が取得される。以下、より詳細に説明する。
【0041】
第1フレーム(時刻t1〜t3)では、第1組を構成する超音波センサ21,23,25,27の検出結果(タイマー値)に基づいて、各超音波センサ21,23,25,27毎に物体との距離がマイコン43によって演算される。そして、各距離データの演算が完了した後に、取得された距離データが電子制御装置60に送信される。なお、反射波が戻ってこなかった場合には、超音波センサ21,23,25,27の検出可能距離内に物体が存在しないと判断され、距離データに最大値がセットされる。
【0042】
一方、第1フレームの時刻t1〜t2では、第3組(超音波センサ29,31,33,35)に対するトリガ出力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、第3組を構成する超音波センサ29,31,33,35に対してトリガ信号が出力される。また、トリガ信号が出力された後(すなわち超音波が発信された後)、第1フレームの時刻t2〜t3では、センサ入力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、超音波センサ29,31,33,35からの検出信号がマイコン43に入力され、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間(タイマー値)が取得される。
【0043】
第2フレーム(時刻t3〜t5)では、第1フレームで取得された第3組を構成する超音波センサ29,31,33,35の検出結果(タイマー値)に基づいて、各超音波センサ29,31,33,35毎に物体との距離がマイコン43によって演算される。そして、各距離データの演算が完了した後に、取得された距離データが電子制御装置60に送信される。一方、第2フレームの時刻t3〜t4では、第2組(超音波センサ22,24,26,28)に対するトリガ出力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、第2組を構成する超音波センサ22,24,26,28に対してトリガ信号が出力される。また、トリガ信号が出力された後(すなわち超音波が発信された後)、第2フレームの時刻t4〜t5では、センサ入力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、超音波センサ22,24,26,28からの検出信号がマイコン43に入力され、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間(タイマー値)が取得される。
【0044】
第3フレーム(時刻t5〜t7)では、第2フレームで取得された第2組を構成する超音波センサ22,24,26,28の検出結果(タイマー値)に基づいて、各超音波センサ22,24,26,28毎に物体との距離がマイコン43によって演算される。そして、各距離データの演算が完了した後に、取得された距離データが電子制御装置60に送信される。一方、第3フレームの時刻t5〜t6では、第4組(超音波センサ30,32,34,36)に対するトリガ出力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、第4組を構成する超音波センサ30,32,34,36に対してトリガ信号が出力される。また、トリガ信号が出力された後(すなわち超音波が発信された後)、第3フレームの時刻t6〜t7では、センサ入力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、超音波センサ30,32,34,36からの検出信号がマイコン43に入力され、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間(タイマー値)が取得される。
【0045】
第4フレーム(時刻t7〜t9)では、第3フレームで取得された第4組を構成する超音波センサ30,32,34,36の検出結果(タイマー値)に基づいて、各超音波センサ30,32,34,36毎に物体との距離がマイコン43によって演算される。そして、各距離データの演算が完了した後に、取得された距離データが電子制御装置60に送信される。一方、第4フレームの時刻t7〜t8では、第1組(超音波センサ21,23,25,27)に対するトリガ出力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、第1組を構成する超音波センサ21,23,25,27に対してトリガ信号が出力される。また、トリガ信号が出力された後(すなわち超音波が発信された後)、第4フレームの時刻t8〜t9では、センサ入力がセンサ信号入出力切替部47によってイネーブル(ローアクティブ)にされ、超音波センサ21,23,25,27からの検出信号がマイコン43に入力され、超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間(タイマー値)が取得される。以後、上述した第1フレーム〜第4フレーム(1サイクル)が繰り返して実行され、自機の周囲の物体が検出される。
【0046】
図1に戻り説明を続ける。電子制御装置60は、自律移動装置1の運動を総合的に司るものである。電子制御装置60は、演算を行うCPU、該CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及びその記憶内容が保持されるバックアップRAM等から構成されている。また、電子制御装置60は、電動モータ12を駆動するドライバ回路等を備えている。
【0047】
電子制御装置60は、計画された経路に沿って目標位置まで自律移動装置1が自律して移動するように各電動モータ12を制御する。また、電子制御装置60は、自律移動を行う際に、インターフェースボード42を介して超音波センサ21〜36の検出結果を受信し、その検出結果等に応じて、例えば回避又は停止等の動作をとるように各電動モータ12を制御する。そのため、電子制御装置60は、図6に示されるように、マップ記憶部61、目標位置記憶部62、自機情報取得部63、障害物情報取得部64、及び予測スパン記憶部65を備える。また、電子制御装置60は、仮想引力計算部66、仮想斥力計算部67、ベクトル合成部68、及び走行指令送信部69を備えている。これらの各部は、上述したハードウェアとソフトウェアとの組合わせにより構築されている。
【0048】
マップ記憶部61は、自律移動装置1の行動範囲における静的障害物を示すグローバルマップを記憶可能に構成されている。ここで静的障害物とは、消えたり位置が変化したりすることのない障害物をいい、具体的には壁、柱等の静的構造物及び重量物等である。目標位置記憶部62は、自律移動装置1を移動させるべき目標位置の情報を記憶可能に構成されている。この目標位置は、ユーザが自律移動装置1を操作することにより指定され、グローバルマップにおける座標の形で記憶される。自機情報取得部63は、自機の位置及び速度を計算して取得する。この自機情報は、レーザレンジファインダ20から得られた周囲の障害物の情報とグローバルマップとを照合した結果と、オムニホイール13を駆動する各電動モータ12の駆動軸12Aの回転角度情報とを総合的に考慮して決定される。
【0049】
障害物情報取得部64は、レーザレンジファインダ20から得られた周囲の物体との距離情報・角度情報からグローバルマップ上にない障害物を検出し、その位置及び速度を取得する。また、障害物情報取得部64は、インターフェースボード42を介して受信された各超音波センサ21〜36の距離情報から障害物の位置を取得する。
【0050】
予測スパン記憶部65は、予め定められた複数の予測スパンの値を記憶している。この予測スパンは、自機の周囲環境の変化の何秒先を見据えて行動を決定するかを示す指標である。仮想引力計算部66は、自機情報取得部63で得られた自機の位置に基づいて、目標位置へ向かうための仮想引力を計算する。一方、仮想斥力計算部67は、自機情報取得部63で得られた自機の位置・速度、障害物情報取得部64で得られた障害物の位置・速度、及び、予測スパン記憶部65に設定されている予測スパンに基づいて、障害物を回避するための仮想斥力を計算する。ベクトル合成部68は、仮想引力計算部66で得られた仮想引力と、仮想斥力計算部67で得られた仮想斥力とをベクトル合成することにより、仮想力ベクトルを計算する。そして、走行指令送信部69は、ベクトル合成部68で得られた仮想力ベクトルに基づいて走行指令を生成し、各電動モータ12に対し送信することにより、自律移動装置1を走行させる。以上の構成により、自律移動装置1は、周囲の物体を検出して回避動作をとりつつ、設定された目標地点まで自律して移動する。
【0051】
本実施形態によれば、十字状の位置に配置されている4つの超音波センサが同時に駆動されるため、各超音波センサ21〜36が1つずつ順番に駆動される場合と比較して、スキャン時間を1/4に短縮することができる。また、本実施形態では水平方向の指向角が40°の超音波センサ21〜36を使用しており、かつ、4つの超音波センサが同時に駆動される際に、同時に発信される超音波が90°ずつずれているため、超音波の干渉(すなわち誤検出)を防止することができる。よって、本実施形態によれば、超音波の干渉による誤検出を防止しつつ、16個の超音波センサ21〜36のスキャン時間(すなわち、すべての超音波センサ21〜36の検出結果を取得するために要する時間)を短縮することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態によれば、16個の超音波センサ21〜36が、上下2段に分けられて、本体10の外周面に周方向に沿って等間隔に配置されているため、自律移動装置1の周辺に存在する物体を全方位(360°)にわたって検出することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態によれば、同時に駆動される4つの超音波センサで構成される組(第1組〜第4組)が順次切替えられるため、全方位をより短い時間でスキャンすることが可能となる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、16個の超音波センサ21〜36を用いたが、超音波センサの数は16個には限られない。また、上記実施形態では、超音波センサ21〜36を、上下2段に分けて、本体10の外周面に周方向に沿って等間隔に配置したが、超音波センサ21〜36の配置は上記実施形態には限られない。
【0055】
上記実施形態では、16個の超音波センサ21〜36のうち、十字状の位置に配置されている4つの超音波センサを一組として同時に駆動したが、超音波センサの組合せは、上記実施形態には限られない。すなわち、組み合わされる超音波センサは、同時に超音波を発信したとしても超音波同士が干渉しない位置関係にあればよく、例えば、対角線上の位置に配置されている超音波センサを一組としてもよく、また、L字状の位置に配置されている超音波センサを一組としてもよい。さらに、4つ以上の超音波センサを同時に駆動する構成にしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、第1組、第3組、第2組、第4組の順序で超音波センサを駆動したが、駆動順序は上記実施形態に限られない。例えば、第1組、第2組、第3組、第4組の順序で超音波センサを駆動してもよい。
【0057】
上記実施形態では、トリガ信号の入力と検出結果の出力とを1つのシグナル端子41で行うタイプの超音波センサ21〜36を用いたが、トリガ信号の入力と検出結果の出力とを別々の端子(2つの端子)で行うタイプの超音波センサを用いてもよい。
【0058】
上記実施形態では、周囲の物体を検出する物体検出手段として超音波センサを用いたが、超音波センサに代えて、例えば赤外線レーダ等を用いてもよい。また、演算用電子デバイスは、マイコンに限られず、Complex Programmable Logic Device(CPLD)、Field Programmable Gate Array(FPGA)またはDigital Application Processor/Distributed Network Architecture(DAP/DNA)であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態に係る自律移動装置の全体構成を示す図である。
【図2】超音波センサの配置(上段)を示す平面図である。
【図3】超音波センサの配置(下段)を示す平面図である。
【図4】超音波センサの正面図である。
【図5】超音波センサのインターフェースボードの構成を示すブロック図である。
【図6】電子制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】超音波センサの動作を説明するための図である。
【図8】4組(16個)の超音波センサの駆動タイミング及び測距結果取得タイミングを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 自律移動装置
10 本体
12 電動モータ
13 オムニホイール
20 レーザレンジファインダ
21〜36 超音波センサ
42 インターフェースボード
60 電子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機の周囲の物体を検出しつつ自律して移動する自律移動装置において、
検出波を発信するとともに、物体によって反射された検出波を受信することにより、該物体を検出する複数の物体検出手段と、
前記複数の物体検出手段のうち、前記検出波が互いに干渉しない2以上の物体検出手段を組合せて同時に駆動する制御手段と、を備える、ことを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記2以上の物体検出手段を含んで構成される複数の組合せを、順次、切替えて駆動することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記複数の物体検出手段は、胴体部の外周面に、周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自律移動装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記複数の物体検出手段のうち、対角線上の位置に配置されている物体検出手段を一組として同時に駆動することを特徴とする請求項3に記載の自律移動装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記複数の物体検出手段のうち、十字状の位置に配置されている物体検出手段を一組として同時に駆動することを特徴とする請求項3に記載の自律移動装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記複数の物体検出手段のうち、L字状の位置に配置されている物体検出手段を一組として同時に駆動することを特徴とする請求項3に記載の自律移動装置。
【請求項7】
前記物体検出手段は、超音波センサであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自律移動装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−122830(P2010−122830A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294895(P2008−294895)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、ロボット搬送システム(サービスロボット分野)、全方向移動自律搬送ロボット開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】