説明

自走式車両

【課題】エンジンおよび前輪駆動軸伝達装置を効率的に冷却する冷却ファンを備える自走式車両を提供する。
【解決手段】エンジン10と、エンジン10の前方に備える冷却ファン36と、エンジン10の駆動を駆動スプロケット(前輪)4に伝達するためのFDSトランスミッション(前輪駆動軸伝達装置)31とを備える。さらに、エンジン10およびFDSトランスミッション31を水平に備えるとともに冷却ファン36を鉛直方向よりエンジン10側に角度αだけ傾斜して備え、さらにFDSトランスミッション31をエンジン10と冷却ファン36との間であって、かつエンジン10と冷却ファン36の下方に備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、そのエンジンの前方に備える冷却ファンと、エンジンの駆動を前輪に伝達するための前輪駆動軸伝達装置とを備える自走式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、従来のトラクタ(自走式車両)は、機体に対して水平に設けられた左右一対のフロントアクスルブラケット130を車幅方向に平行に備える。このフロントアクスルブラケット130に対して、鉛直上方に起立するようにフロントフレーム134を固設するとともに下方にFDSトランスミッション(前輪駆動軸伝達装置)131を板状のブラケット132を介して配設する。ブラケット132は一対のフロントアクスルブラケット130に掛け渡すように、かつ水平に固設されている。なお、FDSトランスミッション131はエンジン110の駆動を駆動スプロケット(前輪)104に伝達するためのものである。
【0003】
そして、ボンネット111の内部に、エンジン110、エンジン110の前方に備える冷却ファン136、ラジエータ135、冷却ファン136を固設するためのフロントフレーム134などを備える。
なお、符号101はトラックフレーム、102は前ミッションケース、103は車軸、105はテンションフレーム、106はテンションローラ、107はイコライザ転輪、108はアイドラ、109は走行クローラである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成のトラクタでは、鉛直方向に設置されたフロントフレーム134に取り付けられた冷却ファン136は、エンジン110に向かって水平方向に風(白抜き矢印)を送るため、エンジン110から反射した風の流れ(白抜き矢印)はエンジン底面に平行に形成される。したがって、FDSトランスミッション131には十分に風が送られず、FDSトランスミッション131の油温の上昇を防止することができないという問題があった。
そこでこの発明の目的は、エンジンおよび前輪駆動軸伝達装置を効率的に冷却する冷却ファンを備える自走式車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、エンジンと、該エンジンの前方に備える冷却ファンと、前記エンジンの駆動を前輪に伝達するための前輪駆動軸伝達装置とを備える自走式車両において、
前記エンジンおよび前記前輪駆動軸伝達装置を水平に備えるとともに前記冷却ファンを鉛直方向より前記エンジン側に傾斜して備え、
さらに前記前輪駆動軸伝達装置を前記エンジンと前記冷却ファンとの間であって、かつ前記エンジンと前記冷却ファンの下方に備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自走式車両において、前記冷却ファンを固設するフロントフレームをボンネット内に備えるとともに、前記ボンネットの下方にフロントアクスルブラケットを備え、
前記フロントフレームを前記フロントアクスルブラケットから上方に起立するように固設するとともに、該フロントアクスルブラケットの下方に前記前輪駆動軸伝達装置を配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の自走式車両において、前記前輪駆動軸伝達装置をブラケットを介して前記フロントアクスルブラケットに取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンと、そのエンジンの前方に備える冷却ファンと、エンジンの駆動を前輪に伝達するための前輪駆動軸伝達装置とを備える自走式車両において、エンジンおよび前輪駆動軸伝達装置を水平に備えるとともに冷却ファンを鉛直方向よりエンジン側に傾斜して備え、さらに前輪駆動軸伝達装置をエンジンと冷却ファンとの間であって、かつエンジンと冷却ファンの下方に備えるので、エンジンに向かって水平よりも下向きに風を送ることができ、エンジンから反射した風をエンジンと冷却ファンの下方に設けられた前輪駆動軸伝達装置に十分に送ることができる。これにより、冷却ファンによって前輪駆動軸伝達装置も冷却することができ、油温の上昇を防止することができる。
したがって、エンジンおよび前輪駆動軸伝達装置を効率的に冷却する冷却ファンを備える自走式車両を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、冷却ファンを固設するフロントフレームをボンネット内に備えるとともに、ボンネットの下方にフロントアクスルブラケットを備え、フロントフレームをフロントアクスルブラケットから上方に起立するように固設するとともに、そのフロントアクスルブラケットの下方に前輪駆動軸伝達装置を配置したので、別途、フロントフレームを取り付けるための部材を必要とせず、簡単な構成で冷却ファンをボンネット内部に保持することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、前輪駆動軸伝達装置をブラケットを介してフロントアクスルブラケットに取り付けるので、別途、前輪駆動軸伝達装置を取り付けるための部材を必要とせず、簡単な構成で前輪駆動軸伝達装置を取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1はこの発明の自走式車両の一例としてのトラクタの一部破断側面図、図2は図1の要部拡大側面図、図3はフロントアクスルブラケットおよびその周辺の概略平面図である。
トラクタは、四角筒形の左右一対のトラックフレーム1前部に前ミッションケース2を固定させ、前ミッションケース2の左右車軸3に左右駆動スプロケット4を軸支させると共に、トラックフレーム1後部にテンションフレーム5を介してテンションローラ6を設け、イコライザ転輪7及びアイドラ8を介して駆動スプロケット4とテンションローラ6間に走行クローラ9を巻回装設している。
【0012】
また、左右トラックフレーム1の間で前部上方には、エンジン(駆動部)10およびオイルパン10aを水平に搭載し、エンジン10外側をボンネット11によって覆うと共に、左右トラックフレーム1の間で後部に後ミッションケース12を設け、リフトアーム13を備える油圧昇降シリンダとトップリンク15及びロワーリンク16とを後ミッションケース12に設け、耕耘ロータリ作業機またはプラウなどの後作業機をトップリンク15及びロワーリンク16に昇降及び着脱自在に装設させ、圃場の耕耘作業などを行わせる。
【0013】
さらに、ボンネット11後方に操縦部17を設ける。操縦部17には、前部にブレーキペダル19、コラムカバー18、コラムカバー18より延設された丸形操向ハンドル20設けるとともに、後部に作業者が座乗する運転席21を設ける。なお、符号38は安全バー、37はダッシュボードである。
【0014】
ボンネット11内でエンジン10の前方には、エンジン10を冷却するための冷却ファン36およびラジエータ35を備え、冷却ファン36およびラジエータ35を取り付けるためのフロントフレーム34を鉛直方向よりエンジン10側に角度αだけ傾斜して備える。したがって、冷却ファン36も鉛直方向よりエンジン10側に角度αだけ傾斜して設けられる。
フロントフレーム34の下端はフロントアクスルブラケット30に取り付けられる。フロントアクスルブラケット30にはブラケット32を固設し、ブラケット32の下面側にはFDSトランスミッション(前輪駆動軸伝達装置)31をボルト33と不図示のナットによって水平に取り付ける。このFDSトランスミッション31は、エンジン10の駆動を駆動スプロケット(前輪)4に伝達するためのものである。
【0015】
このように構成したトラクタでは、ボンネット11内の冷却ファン36からの風が、エンジン10の側面10sに対して水平より角度αだけ下向きにあたるようになり、それによって形成される風の流れ(図2の白抜き矢印)はFDSトランスミッション31に適切に当たるとともに、FDSトランスミッション31で反射した風が再びエンジン10のオイルパン10aにあたる。
したがって、1つの冷却ファン36でエンジン10およびFDSトランスミッション31を冷却することができ、部品点数を減らしてトラクタの構成を簡単にすることができる。
また、エンジン10およびFDSトランスミッション31を同時に冷却するための風の流れを形成するダクトを別途設ける必要がない。
【0016】
ところで、この例のトラクタでは、フロントアクスルブラケット30を水平よりも角度θだけ前傾して配置している。また、ボンネット11をフロントアクスルブラケット30に取り付け、ダッシュボード37をボンネット11に取り付ける。さらに、フロントアクスルブラケット30にフロントグリルを取り付けるように構成する。
したがって、ボンネット11およびダッシュボード37もフロントアクスルブラケット30の傾斜に応じて、水平よりも角度θだけ前傾して配置される(なお、エンジン10およびFDSトランスミッション31は水平に配置されるので、駆動部の基本性能は劣化しない)。また、フロントアクスルブラケット30にボンネット11、フロントフレーム34、フロントグリルなどの外装部品を取り付けるので、ボンネット11、フロントグリルなどを機体に取り付けるためのステーを別途設ける必要がなく、部品点数を低減することができる。
【0017】
これにより、トラクタの外観が前傾して安定感を増すので、例えば、畝などにトラクタの前部が乗り上げてトラクタが後傾姿勢となったときにも、ヘッドアップした外観となることがなく、安定したデザインと外観を保持することができる。
なお、フロントフレーム34はフロントアクスルブラケット30に対して任意の角度で取り付けることができる。これによって、エンジン10およびFDSトランスミッション31を冷却するための冷却ファン36からの風の流れをトラクタごとに最適にすることができる。
【0018】
以上、詳述したように、この発明のトラクタは、エンジン10と、エンジン10の前方に備える冷却ファン36と、エンジン10の駆動を駆動スプロケット(前輪)4に伝達するためのFDSトランスミッション(前輪駆動軸伝達装置)31とを備える。さらに、エンジン10およびFDSトランスミッション31を水平に備えるとともに冷却ファン36を鉛直方向よりエンジン10側に角度αだけ傾斜して備え、さらにFDSトランスミッション31をエンジン10と冷却ファン36との間であって、かつエンジン10と冷却ファン36の下方に備えるものである。
冷却ファン36を固設するフロントフレーム34をボンネット11内に備えるとともに、ボンネット11の下方にフロントアクスルブラケット30を備え、フロントフレーム34をフロントアクスルブラケット30から上方に起立するように固設するとともに、フロントアクスルブラケット30の下方にFDSトランスミッション31を配置する。
さらに、FDSトランスミッション31をブラケット32を介してフロントアクスルブラケット30に取り付ける。
【0019】
なお、上述の例では、自走式車両の一例としてトラクタについて詳述したが、この発明はこれに限定されるものではなく、コンバインなど他の農業用自走式車両、トラック、自家用車などあらゆる自走式車両に適用しうる。また、駆動部はエンジンに限定されるものではなく、電動モータなどあらゆる駆動装置を適用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の自走式車両の一例としてのトラクタの一部破断側面図である。
【図2】図1の要部拡大側面図である。
【図3】図2のフロントアクスルブラケットおよびその周辺の概略平面図である。
【図4】従来のトラクタの一部破断側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 トラックフレーム
2 前ミッションケース
3 左右車軸
4 左右駆動スプロケット(前輪)
5 テンションフレーム
6 テンションローラ
7 イコライザ転輪
8 アイドラ
9 走行クローラ
10 エンジン(駆動部)
10a オイルパン
11 ボンネット
12 後ミッションケース
13 リフトアーム
15 トップリンク
16 ロワーリンク
17 操縦部
18 コラムカバー
19 ブレーキペダル
20 丸型操向ハンドル
21 運転席
30 フロントアクスルブラケット
31 FDSトランスミッション(前輪駆動軸伝達装置)
32 ブラケット
33 ボルト
34 フロントフレーム
35 ラジエータ
36 冷却ファン
37 ダッシュボード
38 安全バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンの前方に備える冷却ファンと、前記エンジンの駆動を前輪に伝達するための前輪駆動軸伝達装置とを備える自走式車両において、
前記エンジンおよび前記前輪駆動軸伝達装置を水平に備えるとともに前記冷却ファンを鉛直方向より前記エンジン側に傾斜して備え、
さらに前記前輪駆動軸伝達装置を前記エンジンと前記冷却ファンとの間であって、かつ前記エンジンと前記冷却ファンの下方に備えることを特徴とする、自走式車両。
【請求項2】
前記冷却ファンを固設するフロントフレームをボンネット内に備えるとともに、前記ボンネットの下方にフロントアクスルブラケットを備え、
前記フロントフレームを前記フロントアクスルブラケットから上方に起立するように固設するとともに、該フロントアクスルブラケットの下方に前記前輪駆動軸伝達装置を配置したことを特徴とする、請求項1に記載の自走式車両。
【請求項3】
前記前輪駆動軸伝達装置をブラケットを介して前記フロントアクスルブラケットに取り付けることを特徴とする、請求項2に記載の自走式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−312367(P2006−312367A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135615(P2005−135615)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】