説明

色変換テーブル作成プログラム、色変換テーブル作成プログラムを格納した媒体、及び色変換テーブルの作成方法

【課題】高精度に表色系の値をCMYKの値の組み合わせへ変換できる色変換テーブルの作成プログラム、色変換テーブルの作成プログラムを格納する媒体、色変換テーブルの作成方法を提供する。
【解決手段】色調整システム1000において、第2のコンピュータ10のCPU11は、CMYの3色の値の組み合わせをCMYKの4色の値の組み合わせに変換させたカラーパッチからなる第2のカラーチャートの測定値に基づいて、L*a*b*の値をCMYKの値の組み合わせに変換する第2のLUTを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換テーブル作成プログラム、色変換テーブル作成プログラムを格納した媒体、及び色変換テーブルの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デバイスプロファイルを用いたカラーマネジメントシステムにより、カラープリンタの出力色は所望の色に調整される。
【0003】
コンピュータは、当該デバイスプロファイルをカラープリンタに用いる場合、CMYKの値→表色系の値のLUT(Look Up Table)と、表色系の値→CMYKの値のLUTと、をカラープリンタ用に予め作成する必要がある。ここで、CMYKはカラープリンタの出力色であり、CMYの3つの基本色(シアン,マゼンタ,イエロー)とKの色(墨)の4色を指す。また、CMYKの値→表色系の値のLUTは、デバイスに依存するCMYKの値の組み合わせを、L*a*b*等のデバイスに依存しない表色系の値に変換するための色変換テーブルである。反対に、表色系の値→CMYKの値のLUTは、表色系の値をCMYKの値の組み合わせに変換するための色変換テーブルである。
【0004】
コンピュータは、ISO12642規格等の一般的なカラーチャート(以下、第1のカラーチャート)の測定結果と、当該測定結果に基づく補間計算と、でCMYKの値→表色系の値のLUTを作成する。ここで、CMYKの値→表色系の値のLUTは、例えば、CMYKそれぞれが9通りの値を有し、合計でC×M×Y×K:9×9×9×9点のCMYKの値の組み合わせを入力点とする。そして、CMYKの値→表色系の値のLUTは、それぞれの入力点に対応する表色系の値を格納する。また、第1のカラーチャートは、上記C×M×Y×K:9×9×9×9点の一部に相当するCMYKの値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを複数配置する。
そのため、コンピュータは、測定器で測定するカラーパッチそれぞれの測定値(表色系の値)を取得することで、カラーパッチごとのCMYKの値の組み合わせと表色系の値とを対応付けることができる。さらに、コンピュータは、カラーパッチが存在しないCMYKの値の組み合わせに対応する表色系の値を、カラーパッチが存在するCMYKの値の組み合わせに対応付けた表色系の値より補間計算で算出できる。
なお、第1のカラーチャートにおいて、配置するカラーパッチの点数を省くため、Kの値が大きくなるほど、当該Kの値を備えるカラーパッチの点数は少なくなる。例えば、ISO12642規格のカラーチャートは、Kの値が0%に対して、C×M×Y:6×6×6点のカラーパッチを配置する。一方で、ISO12642規格のカラーチャートは、Kの値が100%に対して、C×M×Y:2×2×2点のカラーパッチのみを配置する。Kの値が大きくなるほど、CMYの値の組み合わせ間の色の差は小さくなるためである。そのため、コンピュータは、C×M×Y×K:9×9×9×9点の中で、Kの値が大きいほど、CMYKの値の組み合わせに対応する表色系の値を、より少ない測定値に基づく補間計算で算出する。
【0005】
一方、コンピュータは、表色系の値→CMYKの値のLUTを作成する場合、表色系の値それぞれに対するCMYKの値の組み合わせを求める。この場合、測定器で測定される一の表色系の値に対して、Kの値が異なる複数のCMYKの値の組み合わせが存在し得る。そのため、コンピュータがカラーチャートの測定結果を用いて表色系の値からCMYKの値の組み合わせを逆算しても、当該CMYKの値の組み合わせは一意に定まらない。
【0006】
そこで、以下の方法が知られている。まず、コンピュータは、CMYの値とKの値との関係を定め、CMYの値について当該関係に従ってKの値を加えた時の表色系の値を、カラーチャートの測定値より取得する。そして、コンピュータは、一旦、当該表色系の値に該当するCMYの値に変換し、その後CMYの値をCMYKの値に変換する(例えば、特許文献1等参照)。コンピュータは、当該方法により、表色系の値をCMYの値に変換する際にKの値を用いないので、CMYKの値の組み合わせを一意に定めることができる。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の方法を実施する上で、表色系の値→CMYKの値のLUTを作成する際に、第1のカラーチャートの測定結果に基づいてCMYKの値の組み合わせに対応する表色系の値を取得する方法が知られている(例えば、特許文献2等参照)。この場合、コンピュータは、上記測定結果及び補間計算により取得したC×M×Y×K:9×9×9×9点のCMYKの値の組み合わせに対する表色系の値を用いて、C×M×Y:9×9×9点のCMYの値の組み合わせに対して、CMYの値に応じてKを加えた時の表色系の値を補間計算により求める処理を行う。コンピュータは、当該方法により、CMYKの値の組み合わせを表色系の値に変換する場合と表色系の値をCMYKの値の組み合わせに変換する場合とで、双方向の変換時における互換性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2898030号
【特許文献2】特開2003−78773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の方法によると、コンピュータは、上述の通り、CMYの値の組み合わせに変換する前の、CMYKの値の組み合わせに対応する表色系の値の一部を補間計算で算出する。特に、コンピュータは、Kの値が大きいほど、CMYKの値の組み合わせに対応する表色系の値を、より少ない測定値に基づく粗い補間計算で算出する。そのため、コンピュータは、Kの値が大きなCMYKの値の組み合わせについて、精度のよい表色系の値を算出できない場合がある。したがって、表色系の値→CMYKの値のLUTにおいて、色変換の精度が十分でないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の課題は、高精度に表色系の値をCMYKの値の組み合わせへ変換できる色変換テーブルの作成プログラム、当該色変換テーブルの作成プログラムを格納する媒体、色変換テーブルの作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、色変換テーブル作成プログラムであって、プリンタが出力すべき墨及び互いに色相の異なる3つの基本色からなる4色の値の組み合わせを表色系の値に変換するための第1の色変換テーブルと、前記表色系の値を前記4色の値の組み合わせに変換するための第2の色変換テーブルと、を作成するコンピュータを、前記3つの基本色の値の組み合わせを変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する変換手段、複数の前記3つの基本色の値の組み合わせそれぞれを前記変換手段により前記4色の値の組み合わせに変換し、当該4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わるカラーチャートを生成する生成手段、前記生成手段により生成したカラーチャートを前記プリンタに出力させる出力手段、前記出力手段により出力させたカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する取得手段、前記取得手段により取得した表色系の値に基づいて前記第2の色変換テーブルを作成する第2の色変換テーブル作成手段、として機能させる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、色変換テーブル作成プログラムであって、プリンタが出力すべき墨及び互いに色相の異なる3つの基本色からなる4色の値の組み合わせを表色系の値に変換するための第1の色変換テーブルと、前記表色系の値を前記4色の値の組み合わせに変換するための第2の色変換テーブルと、を作成するコンピュータを、複数の前記4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わる第1のカラーチャートを前記プリンタに出力させる第1の出力手段、前記第1の出力手段により出力させた第1のカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する第1の取得手段、前記第1の取得手段により取得した表色系の値に基づいて前記第1の色変換テーブルを作成する第1の色変換テーブル作成手段、前記3つの基本色の値の組み合わせを変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する変換手段、複数の前記3つの基本色の値の組み合わせそれぞれを前記変換手段により前記4色の値の組み合わせに変換し、当該4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わる第2のカラーチャートを生成する生成手段、前記生成手段により生成した第2のカラーチャートを前記プリンタに出力させる第2の出力手段、前記第2の出力手段により出力させた第2のカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する第2の取得手段、前記第2の取得手段により取得した表色系の値に基づいて前記第2の色変換テーブルを作成する第2の色変換テーブル作成手段、として機能させる色変換テーブル作成プログラムであって、前記生成手段により前記第2のカラーチャートを生成する際に前記変換手段により変換する3つの基本色の値の組み合わせの個数は、前記第1のカラーチャートに備わる前記墨の値が0である3つの基本色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチの個数よりも多い、ことを特徴とする。
【0013】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラムを格納するコンピュータで読み取り可能な媒体である。
【0014】
請求項15に記載の発明は、プリンタが出力すべき墨及び互いに色相の異なる3つの基本色からなる4色の値の組み合わせを表色系の値に変換するための第1の色変換テーブルと、前記表色系の値を前記4色の値の組み合わせに変換するための第2の色変換テーブルと、をコンピュータが作成する色変換テーブルの作成方法であって、複数の前記3つの基本色の値の組み合わせそれぞれを変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する変換工程と、前記変換した4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わるカラーチャートを生成する生成工程と、前記生成したカラーチャートを前記プリンタに出力させる出力工程と、前記出力させたカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する取得工程と、前記取得した表色系の値に基づいて前記第2の色変換テーブルを作成する作成工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
したがって、本発明は、高精度に表色系の値をCMYKの値の組み合わせへ変換できる色変換テーブルの作成プログラム、色変換テーブルの作成プログラムを格納する媒体、色変換テーブルの作成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】色調整システムのシステム構成図である。
【図2】第2のコンピュータの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】第1のLUTの説明図である。
【図4】第1のカラーチャートを表す模式図である。
【図5】図4の第1のカラーチャートにおいて、K:0%のカラーパッチが配置された状態を表す模式図である。
【図6】CMYの値と表色系の値による軌跡上のサンプル点と補間処理を行う点の分布を示す図である。
【図7】CMYの値の組み合わせについての補間処理の順序を示した図である。
【図8】C、M、Yそれぞれの値を変換する1次元LUTを表す図である。
【図9】第2のLUTの説明図である。
【図10】第2のカラーチャートを表す模式図である。
【図11】CMYチャートを表す模式図である。
【図12】5通りのKカーブを例示する図である。
【図13】a*L*座標系における目標値T’を示す図である。
【図14】CM座標系における目標値Tを示す図である。
【図15】図14に示す領域V0を拡大した図である。
【図16】a*L*座標系において、図15に示す領域V0に対応する領域V0’を示す図である。
【図17】目標値T’が色域の外側にある場合に、目標値T’を色域の内側に移動させる手順を説明する図である。
【図18】色調整システムにて実施される色調整処理を示すフローチャートである。
【図19】Yinが1の場合の変換テーブルの一部を例示する図である。
【図20】Yinが4の場合の変換テーブルの一部を例示する図である。
【図21】Yinが6の場合の変換テーブルの一部を例示する図である。
【図22】9点のL*a*b*の値それぞれに対応するCMYの値と比率の算出結果を表す図である。
【図23】図22に示すL*の値を横軸として、CMYそれぞれの値を折線で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る第1の実施形態の色調整システム1000について、図1〜図18を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る色調整システム1000の構成の一実施例である。色調整システム1000は、カラープリンタ1と、第1のコンピュータ2と、測定器3と、第2のコンピュータ10と、を含む。色調整システム1000は、色調整の目標となるデバイス(ターゲットデバイス)より出力される画像データの色を調整し、カラープリンタ1(デスティネーションデバイス)で当該画像データの色を再現する。以下の説明において、ターゲットデバイスは、RGB色の画像データを出力するカラーモニタ装置とする。
【0019】
カラープリンタ1は、互いに色相の異なるCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)の3つの基本色及びK(墨)の色からなるCMYK色の画像データを出力する。カラープリンタ1は、通信用のインターフェースを介して第1のコンピュータ2と接続される。
【0020】
第1のコンピュータ2は、ネットワークを介して接続された他のコンピュータより印刷ジョブを取得する。そして、第1のコンピュータ2は、取得した印刷ジョブに対してRIP(Raster Image Processer)展開処理によりラスター・イメージの画像データを生成する。
また、第1のコンピュータ2は、後述の第2のコンピュータ10より送信されるデバイスリンクプロファイルを、HDD等の記憶装置に記憶する。第1のコンピュータ2は、生成した画像データについてデバイスリンクプロファイルを用いて色変換処理を行うことができる。第1のコンピュータ2は、上記色変換処理を行った又は色変換処理を行わない画像データをカラープリンタ1に送信して出力させる。
ここで、デバイスリンクプロファイルは、カラーモニタ装置のデバイスプロファイルとカラープリンタ1のデバイスプロファイルとを統合したプロファイルである。具体的には、デバイスリンクプロファイルは、カラーモニタ装置のRGBの値とカラープリンタ1のCMYKの値とを、デバイスに依存しない色空間を介さずに対応付ける。そのため、第1のコンピュータ2は、デバイスリンクプロファイルを用いて、カラーモニタ装置から出力されるRGB色の画像データを直接CMYK色に変換することができる。
【0021】
測定器3は、カラープリンタ1より出力されるカラーチャートを測定する。また、測定器3は、通信用のインターフェースを介して第2のコンピュータ10と接続される。
具体的には、測定器3は、カラーチャートに含まれる各カラーパッチの色をそれぞれ分光的に測定する。そして、測定器3は、当該測定した色の測定値を第2のコンピュータ10に送信する。ここで、測定器3による測定値は、分光反射率の値、国際照明委員会(CIE)で定めるXYZやL*a*b*等のデバイスに依存しない表色系の値で表わされる。
なお、測定器3による測定値が分光反射率の値やXYZの値で表わされる場合、第2のコンピュータ10が、当該測定値をL*a*b*の値やCIECAM02の値に変換する構成であってもよい。
本実施の形態では、測定器3による測定値として、L*a*b*の値を用いる場合を説明する。
【0022】
第2のコンピュータ10は、PC(Personal Computer)等である。第2のコンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、操作部14と、表示部15と、記憶部16と、通信部17と、を含んで構成される。
【0023】
CPU11は、第2のコンピュータ10の各部から入力される入力信号に応じて、ROM13に記憶された各種プログラム(プログラムコード)を実行する。さらに、CPU11は、当該実行にかかるプログラムに基づいて各部に出力信号を出力し、第2のコンピュータ10の動作全般を統括制御する。
CPU11は、例えば、カラープリンタ1のデバイスプロファイル(デスティネーションプロファイル)を作成する。また、CPU11は、カラープリンタ1のデバイスプロファイルとカラーモニタ装置のデバイスプロファイルとを用いてデバイスリンクプロファイルを作成する。つまり、CPU11は、カラーモニタ装置より出力される画像データの色を調整し、カラープリンタ1で当該画像データの色を再現するための色変換テーブルを作成する。
【0024】
RAM12は、CPU11により実行される各種プログラム及び当該プログラムに係るデータを一時的に記憶するためのワークエリアを形成する。
【0025】
ROM13は、不揮発性の半導体メモリ等で構成される。ROM13は、CPU11が実行する各種プログラムを、当該CPU11が読み取り可能なプログラムコードの形態で格納する媒体である。また、ROM13は、CPU11が当該プログラムの実行に必要とするパラメータやファイル等を記憶する。
【0026】
操作部14は、カーソルキー、文字入力キー、及び各種機能キーを備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスと、を備える。操作部14は、ユーザによる操作入力を受け付けると、操作内容に応じた操作信号をCPU11に出力する。
【0027】
表示部15は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成される。表示部15は、CPU11からの指示に従って、各種操作画面や各種処理結果を表示する。
【0028】
記憶部16は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である。記憶部16は、CPU11が作成するカラープリンタ1のデバイスプロファイルやデバイスリンクプロファイルを記憶する。
また、記憶部16は、カラーモニタ装置のデバイスプロファイルとして、sRGB形式のデバイスプロファイルを予め記憶する。sRGB形式のデバイスプロファイルは、国際電気標準会議(IEC;International Electrotechnical Commission)が定めた国際標準規格に準拠するデバイスプロファイルである。
【0029】
通信部17は、第2のコンピュータ10を第1のコンピュータ2及び測定器3と接続する通信用のインターフェースである。そして、通信部17は、コンピュータ2及び測定器3との間でデータの送受信を行う。
例えば、通信部17は、測定器3より送信されるカラーチャートの測定値を受信する。また、通信部17は、記憶部16に記憶されたデバイスプロファイルやデバイスリンクプロファイルを第1のコンピュータ2へ送信する。
【0030】
次に、第2のコンピュータ10によるカラープリンタ1のデバイスプロファイルの作成手順について説明する。ここで、カラープリンタ1のデバイスプロファイルは、第1のLUT100と、第2のLUT200と、の2つの色変換テーブルで構成される。
【0031】
「第1のLUT」
第1のLUT100は、CMYKの値の組み合わせを表色系のL*a*b*の値に変換するための色変換テーブルである。第1のLUT100は、例えば、図3に示すように、C×M×Y×K:9×9×9×9=6561点のCMYKの値の組み合わせであるLUT入力点に対して、L*a*b*の値が入る4次元入力/3次元出力LUTである。ここで、9通りのCMYそれぞれの値は、C、M、Y:0%、10%、20%、30%、40%、55%、70%、85%、100%である。また、9通りのKの値は、K:0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、100%である。
以下に、当該第1のLUT100の作成手順を述べる。
【0032】
まず、コンピュータ10のCPU11が、第1のコンピュータ2を介して、図4に示す第1のカラーチャート110を、色変換処理を行わないでカラープリンタ1に出力させる。ここで、第1のカラーチャート110は、記憶部16等に予め記憶されている。第1のカラーチャート110は、ISO12642規格に準拠した一般的なカラーチャートである。第1のカラーチャート110は、CMYKそれぞれの値の最大値100%を複数に分割し、分割したCMYKの値の組み合わせに応じた色のカラーパッチをそれぞれ備える。
【0033】
具体的には、第1のカラーチャート110は、図4に示すように、(1)K:0%、(2)K:20%、(3)K:40%、(4)K:60%、(5)K:80%、(6)K:100%の6通りを備える。そして、第1のカラーチャート110は、(1)〜(6)それぞれについて、CMYの値を組み合わせた複数点のカラーパッチを配置する。例えば、(1)のK:0%では、図5に示すように、C×M×Y:6×6×6点のカラーパッチが配置される。ここで、6通りのCMYそれぞれの値は、C、M、Y:0%、10%、20%、40%、70%、100%である。同様に、第1のカラーチャート110は、(2)のK:20%に、C×M×Y:6×6×6点のカラーパッチ(C、M、Y:0%、10%、20%、40%、70%、100%)を、(3)のK:40%に、C×M×Y:5×5×5点のカラーパッチ(C、M、Y:0%、20%、40%、70%、100%)を、(4)のK:60%に、C×M×Y:5×5×5点のカラーパッチ(C、M、Y:0%、20%、40%、70%、100%)を、(5)のK:80%に、C×M×Y:4×4×4点のカラーパッチ(C、M、Y:0%、40%、70%、100%)を、(6)のK:100%に、C×M×Y:2×2×2点のカラーパッチ(C、M、Y:0%、100%)を、それぞれ備える。
つまり、第1のカラーチャート110は、(1)〜(6)の合計で、C×M×Y×K:754点のカラーパッチを備える。
【0034】
次に、ユーザは、出力された第1のカラーチャート110の各カラーパッチを測定器3で順番に測定する。すると、CPU11は、C×M×Y×K:754点のCMYKの値の組み合わせそれぞれに対応したL*a*b*の値(測定値)を測定器3より取得できる。
【0035】
次に、CPU11は、上記754点以外について、C×M×Y×K:9×9×9×9=6531点のCMYKの値の組み合わせそれぞれに対応したL*a*b*の値を算出する。
具体的には、CPU11は、(1)のC×M×Y:6×6×6点をサンプル点として、C×M×Y:9×9×9点の中で測定値の無い点(C、M、Y:30%、55%、85%)について補間処理を行い、測定値の無い点のL*a*b*の値を算出する。次に、CPU11は、(2)のC×M×Y:6×6×6点、(3)のC×M×Y:5×5×5点、(4)のC×M×Y:5×5×5点、(5)のC×M×Y:4×4×4点、(6)のC×M×Y:2×2×2点、のそれぞれについても同様の補間処理を行い、測定値の無い点のL*a*b*の値を算出する。つまり、CPU11は、C×M×Y×K:754点をサンプル点として補間処理を行うことで、C×M×Y×K:9×9×9×6点に補間できる。
さらに、CPU11は、K:9点の中で測定値の無い3点(K:10%,30%,50%)についても、同様の補間処理を行い、補間処理を行った点のL*a*b*の値を算出する。
以上により、CPU11は、第1のLUT100の、C×M×Y×K:9×9×9×9=6561点のLUT入力点に対するL*a*b*の値を取得できる。
【0036】
ところで、上記補間処理は、本出願人により先に提出された特開2003−78773号公報等に詳述されている。一例として、(4)のC×M×Y:5×5×5点をサンプル点とする補間処理について簡単に説明する。
CPU11は、補間処理を行う点(測定値の無い点)のL*a*b*の値を、サンプル点のL*a*b*の値と、CMYの単色における階調ステップの値と、で算出する。ここで、補間処理を行う点のL*a*b*はLm*am*bm*、各サンプル点のL*a*b*はLi*ai*bi*(i=1〜4)とする。
図6は、○印がサンプル点、△印と×印がそれぞれ補間処理を行う点を表す。CPU11は、△印のように前後2点ずつサンプル点が存在する場合と、×印のように前後に1点及び3点のサンプル点が存在する場合と、で異なる補間式を用いてLm*am*bm*の値を算出する。
具体的には、前者(△印)に対する補間式は、Lm*=−(1/16)L1*+(9/16)L2*+(9/16)L3*−(1/16)L4*、am*=−(1/16)a1*+(9/16)a2*+(9/16)a3*−(1/16)a4*、bm*=−(1/16)b1*+(9/16)b2*+(9/16)b3*−(1/16)b4*、である。
一方、後者(×印)に対する補間式は、Lm*=(5/16)L1*+(15/16)L2*−(5/16)L3*−(1/16)L4*、am*=(5/16)a1*+(15/16)a2*−(5/16)a3*−(1/16)a4*、bm*=(5/16)b1*+(15/16)b2*−(95/16)b3*−(1/16)b4*、である。
次に、CPU11は、上記補間式を用いて、C×M×Y:9×9×9点に含まれる補間処理を行う点それぞれに対し、図7に示す番号I〜IIIの順序に沿って補間処理を繰り返し行う。その結果、CPU11は、補間処理が完了した時点で、(4)のC×M×Y:5×5×5点のサンプル点でC×M×Y:9×9×9点に補間することができる。
【0037】
以上により、CPU11は、第1のLUT100を作成することができる。ただし、先に述べた通り、CPU11は、第1のLUT100について、CMYそれぞれの値を、C、M、Y:0%、10%、20%、30%、40%、55%、70%、85%、100%、Kの値を、K:0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、100%にとっている。つまり、9通りのCMYKそれぞれの値は、最大値100%を8等分に分割した値ではない。
そのため、CPU11は、図8に示す1次元LUT120,130により、CMYKそれぞれの値を、100%を8等分に分割した値に変換する。そして、CPU11は、変換後のCMYKそれぞれの値を第1のLUT100へ入力する処理を行う。具体的には、CPU11は、1次元LUT120を用いて、C、M、Y:10%を12.5%に、20%を25%に、30%を37.5%に、40%を50%に、55%を62.5%に、70%を75%に、85%を87.5%に、変換する。また、CPU11は、1次元LUT130を用いて、K:10%を12.5%に、20%を25%に、30%を37.5%に、40%を50%に、50%を62.5%に、60%を75%に、80%を87.5%に、変換する。
【0038】
「第2のLUT」
第2のLUT200は、表色系のL*a*b*の値をCMYKの値の組み合わせに変換する。第2のLUT200は、図9に示すように、L*a*b*:33×33×33=35937点のL*a*b*の値のLUT入力点に対して、CMYKの値が入る3次元入力/4次元出力LUTである。
以下に、当該第2のLUT200の作成手順を述べる。
【0039】
(第2のカラーチャートの生成)
まず、CPU11は、図10に示す第2のカラーチャート210を生成する。第2のカラーチャート210は、図11に示すCMYチャート220に含まれるカラーパッチの一部にKの色を加えたものである。ここで、図10において、網掛けされた箇所は、Kの色を加えたカラーパッチを示す。また、図10において、網掛けされた箇所が濃色で表現される箇所ほどKの値が大きいことを示す。
【0040】
CMYチャート220は、C×M×Y:9×9×9点のカラーパッチを配置したものである。それぞれのカラーパッチは、CMYそれぞれの値の最大値100%を9つに分割し、分割したCMYの値を組み合わせた色からなる。具体的には、CMYチャート220は、図11に示すように、C×M:9×9点のマトリクス状のカラーパッチに9通りのYの値それぞれが掛け合わされて構成される。ここで、9通りのCMYそれぞれの値は、C、M、Y:0%、10%、20%、30%、40%、55%、70%、85%、100%である。つまり、図5及び図11に示すように、CMYチャート220において、9通りのCMYの値の中でC、M、Y:0%、10%、20%、40%、70%、100%は、第1のカラーチャート110のK:0%におけるCMYの値と一致する。そのため、CMYチャート220は、3通りのCMY(C、M、Y:30%、55%、85%)の組み合せの個数分、第1のカラーチャート110のK:0%よりも多くのカラーパッチを備える。
【0041】
次に、CPU11は、CMYチャート220に含まれるカラーパッチに加えるKの値を、Kカーブで決定する。Kカーブは、CMYの値の組み合わせとKの値とを関係付ける関係式である。具体的には、Kカーブは、グレー成分に相当するCMYの最小値に応じたKの値を出力させる。
【0042】
ここで、Kカーブは、主に、スタートポイントと傾きに応じて複数存在する。一例として、図12に、Kカーブ1〜Kカーブ5の5通りのKカーブを示す。Kカーブ1はスタートポイントが50%で傾きが2の直線である。Kカーブ2はスタートポイントが37.5%で傾きが1.6の直線である。Kカーブ3はスタートポイントが25%で傾きが1.3333の直線である。Kカーブ4はスタートポイントが12.5%で傾きが1.1429の直線である。Kカーブ5はスタートポイントが0%で傾きが1.0の直線である。なお、Kカーブ1〜Kカーブ5は、図12では全て直線の場合を例示しているが、スタートポイント近傍を曲線にしたものや全体を曲線にしたものであってもよい。
【0043】
CPU11は、Kカーブ1〜Kカーブ5より一のKカーブを決定する場合、操作部14や表示部15を介して、ユーザに当該一のKカーブを選択させる。そして、CPU11は、CMYチャート220に含まれるC×M×Y:9×9×9点のCMYの値の組み合わせそれぞれについて、CMYの最小値を導出する。さらに、CPU11は、導出したCMYの最小値を入力値として、ユーザに選択されたKカーブを用いてKの値を決定する。
つまり、CPU11は、当該Kカーブに基づいて、CMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせに変換する変換式を作成出来る。そして、CPU11は、当該変換式を用いて、CMYチャート220に含まれるカラーパッチのCMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせに変換する。
【0044】
ここで、CPU11は、決定されたKの値に基づいて、UCR(Under Color Removal)、UCA(Under Color Addition)、GCR(Gray Component Replacement)、等の処理を行ってもよい。具体的には、CPU11は、複数のKの値それぞれに対応するCMYの値の加減値を定めたリストを作成する。そして、CPU11は、Kカーブで決定したKの値に応じて、上記リストよりCMYの値の加減値を抽出する。さらに、CPU11は、CMYチャート220に備わる各カラーパッチのCMYの値について、抽出した加減値によりCMYの値を増加又は減少させる。なお、リストに記載される加減値は、CMYそれぞれについて同値である。
【0045】
以下では、Kカーブ1〜Kカーブ5よりKカーブ1がユーザに選択された場合を例にとって説明する。
Kカーブ1がユーザに選択された場合、図12より把握されるように、Kの値は、CMYの最小値が50%を超えた場合に0%以上となる。また、Kカーブ1において、Kの値は、CMYの最小値が50%より大きくなるにつれて増加する。
ここで、図10に示す第2のカラーチャート210は、Kカーブ1〜Kカーブ5よりKカーブ1が選択された場合の、CMYチャート220にKの色を加えた例である。
つまり、CPU11は、図10及び図11に示すように、CMYチャート220のCMYの最小値が50%より大きい(C、M、Y:55%〜100%の)カラーパッチに対してKの色を加えることで、第2のカラーチャート210を生成する。そして、加えられるKの値は、CMYの最小値が50%より大きくなるにつれて増加する。
なお、CPU11は、第2のカラーチャート210に含まれるカラーパッチを、9通りのRGBの値の組み合わせに対応する色のカラーパッチを配置したカラーチャートより生成してもよい。9通りのRGBそれぞれの値は、CMYチャート220に含まれるカラーパッチのCMYそれぞれの値と補色関係にある。具体的には、C、M、Y:0%、10%、20%、30%、40%、55%、70%、85%、100%に対して、R、G、B:255、230、204、179、153、115、77、38、0である。CPU11は、当該9通りのRGBの値の組み合わせをRGB―CMYKテーブルでCMYKの値に逐次変換しながらカラーパッチを生成する。RGB―CMYKテーブルは、RGBの値の組み合わせを、CMYの値にKカーブで決定したKの値を加えたCMYKの値に変換するテーブルである。
【0046】
(差分値の補正)
次に、CPU11は、第1のコンピュータ2を介して、上記生成した第2のカラーチャート210を、色変換処理を行わないでカラープリンタ1に出力させる。そして、ユーザは、出力された第2のカラーチャート210の各カラーパッチを測定器3で順番に測定する。すると、CPU11は、C×M×Y:9×9×9点の一部にKの色を加えたCMYKの値の組み合わせに対するL*a*b*の測定値を測定器3より取得できる。
ここで、CPU11は、第1のカラーチャート110及び第2のカラーチャート210の両方に含まれる色について、それぞれのカラーチャートの測定値の差分値を補正する。つまり、CPU11は、第1のカラーチャート110の測定値を第2のカラーチャート210の測定値に一致させる。また、上記両方に含まれる色とは、第1のカラーチャート110に備わるカラーパッチと第2のカラーチャート210に備わるカラーパッチとでCMYKの値が互いに一致する一致点を指す。
【0047】
ところで、第2のカラーチャート210の、9通りのCMYそれぞれの値の中で6通りの値は、第1のカラーチャート110のK:0%におけるCMYそれぞれの値と一致する。また、第2のカラーチャート210は、Kカーブ1によりCMYの最小値が50%以下の点でK:0%である。そして、第1のカラーチャート110における(1)のK:0%について、C×M×Y:6×6×6点の中でCMYの最小値が50%を超える点は、C、M、Y:70%、100%の組み合わせの8点である。つまり、第1のカラーチャート110における(1)のK:0%について、C×M×Y:6×6×6点の中で上記8点を除いた208点は一致点である。さらに、第1のカラーチャート110における(6)のK:100%について、C、M、Y:100%の組み合わせは第2のカラーチャート210にも存在するため一致点である。したがって、CPU11は、合計209点の一致点について補正を行う。
【0048】
具体的には、CPU11は、第2のカラーチャート210の一致点の測定値を、第1のカラーチャート110の一致点の測定値に代入する処理を209点全てについて行う。また、それぞれのカラーチャートの測定値の差分値が大きい場合、CPU11は、一致点について補正を行う際に、一致点の近傍にある周囲の点についても同時に補正を行う。この場合、CPU11は、第1のカラーチャート110の周囲の点の測定値に、差分値より小さな値を代入する。代入する値は、一致点のCMYKの値と周囲の点のCMYKの値との値の隔たりに応じて小さくなる。CPU11は、上記補正を行うことで、カラープリンタ1が第1のカラーチャート110及び第2のカラーチャート210を出力する際の出力むらの影響や測定器3の測定誤差の影響を減少させることができる。
なお、CPU11は、上記第2のカラーチャート210の測定値を第1のカラーチャート110の測定値に一致させるように補正しても勿論よい。また、CPU11は、第1のLUT100のLUT入力点と、第2のカラーチャート210に備わるカラーパッチのCMYKの値の組み合わせと、でCMYKの値が一致する点を一致点としてもよい。この場合、CPU11は、一致点について、第2のカラーチャート210の測定値と、LUT入力点に対応するL*a*b*の値と、の差分値の補正を行う。
【0049】
(LUT入力点に対するCMYKの値の組み合わせを導出)
次に、CPU11は、L*×a*×b*:33×33×33点のLUT入力点に対する、CMYKの値の組み合わせを導出する。
まず、L*×a*×b*:33×33×33点の組み合わせの中で、L*a*b*の測定値が存在する点(つまり、カラープリンタ1の色域の内側の点)について、CMYKの値の組み合わせを導出する手順を説明する。ここで、色域(カラーガマット)とは、カラープリンタ1等の画像データの出力処理を行う機器が表現または再現できる色の範囲である。
当該導出に用いる収束演算処理は、本出願人により先に提出された特開2003−78773号公報等に詳述されている。ここでは、当該導出の手順について簡潔に述べる。
【0050】
図13は、3次元のCMYの値の内、2次元のCMの値からなるC×M:9×9点の組み合わせ(Y:0%)について、縦軸に明度L*を横軸にa*をプロットした座標系である。図13において、H1’とH2’は彩度頂点、W’は白色頂点、B’はブルーの頂点を表す。なお、実際には、CPU11は3次元のCMYの値についての導出処理を行うが、簡単のために2次元のCMの値の導出処理について示す。
【0051】
図13において、目標値T’は、L*×a*×b*:33×33×33点の中で、CMYの値の組み合わせを求めようとするターゲット点のL*a*b*の値である。当該目標値T’が、図13の格子点a’〜d’で囲まれる領域V0’に存在する場合を仮定する。この場合、CPU11は、CM座標系におけるCMの値の組み合わせである目標値Tを、図14に示す格子点a〜dで囲まれる領域V0内にあると推定する。ここで、図14において、H1とH2は彩度頂点H1’とH2’に、Wは白色頂点W’に、Bはブルーの頂点B’に、それぞれ対応する点である。
次に、CPU11は、図14に示す格子点a〜dで囲まれる領域V0を、図15に示す分割点e〜iで領域V1〜V4に4等分する。ここで、CPU11は、分割点e〜iの値を、既に求められている周囲の格子点を利用して重み平均で算出する。そして、CPU11は、分割点e〜iに対応するL*a*b*の値を図16に示す座標系にプロットする。図16に示す分割点e’〜i’は、それぞれ、図15に示す分割点e〜iに対応するプロット点である。
さらに、CPU11は、分割点e’〜i’によって形成された4つの領域V1’〜V4’のうちどの領域に目標値T’があるかを求める。例えば、図16に示すように目標値T’が領域V2’にある場合、CPU11は、目標値Tが図15に示す領域V2’に対応した領域V2にあると推定する。
【0052】
次に、CPU11は、推定した領域V2を領域V5〜V8に分割し、分割した領域V5〜V8のうちどの領域に目標値Tがあるかを推定する。以下同様にして、CPU11は、領域の分割/推定を繰り返し、領域V0、V1〜V4、V5〜V8、V9〜V12、・・・、と領域を次第に小さくして収束させる。そして、CPU11は、収束した領域を形成する4つの格子点又は分割点の平均値によって目標値T(CMの値の組み合わせ)を求めることができる。ただし、実際のCPU11は、3次元のCMYの値について、各ターゲット点に対する目標値T(CMYの値の組み合わせ)を1点ずつ計算する。なお、CPU11が上記収束演算処理を行うのは、図14の座標系から図13の座標系への変換が既知であるにもかかわらず、その逆の変換は非常に複雑で未だ良好な変換式が知られていないためである。
【0053】
そして、CPU11は、求めたCMYの値の組み合わせに対応するKの値をKカーブにより決定することで、各ターゲット点のL*a*b*の値に対応するCMYKの値の組み合わせを取得する。
【0054】
次に、L*×a*×b*:33×33×33点の中で、L*a*b*の値が色域の外側にある場合について、CMYKの値の組み合わせを導出する手順を説明する。この場合、CPU11は、カラーガマットマッピング(色域写像)の処理を実行する。つまり、CPU11は、当該L*a*b*の値を色域の内側の値に写像した上で、上述の収束演算処理によりCMYKの値の組み合わせを導出する。以下に、カラーガマットマッピングについて述べる。
【0055】
図17は、L*a*b*表色系空間を、ある色相でL*軸を含むような方向で切断した断面である。ここで、図17において、B’は黒色の頂点(黒色頂点)を表す。また、図17において、彩度頂点H1’、白色頂点W’、彩度頂点H2’、黒色頂点B’、を4頂点とする斜線部分は、カラープリンタ1の色域である。
【0056】
まず、CPU11は、a*、b*の値を用いて色相角h及び彩度C*を算出する。色相角hは、h=arctan(b*/a*)/π×180、で算出できる。彩度C*は、C*=((a*^2)+(b*^2))^2、で算出できる。
【0057】
次に、CPU11は、色相角hにおけるカラープリンタ1の色域について、彩度頂点H1’、白色頂点W’、黒色頂点B’の明度L*と彩度C*とを求める。例えば、彩度頂点H1’の明度L*と彩度C*は以下のようにして算出する。CPU11は、M:100%且つC、Y:0%の点と、M、Y:100%且つC:0%の点と、Y:100%且つM、C:0%の点と、C、Y:100%且つM:0%の点と、C:100%且つM、Y:0%の点と、C、M:100%且つY:0%の点と、を結ぶ。そして、CPU11は、結んだ各点のCMYの値に対応するL*a*b*の値を取得する。また、CPU11は、取得した各点のL*a*b*の値より、色相角h及び彩度C*を算出する。さらに、CPU11が算出した各点の色相角h及び彩度C*を用いて補間計算を行うことで、彩度頂点H1’の明度L*と彩度C*は算出される。
【0058】
次に、CPU11は、色相角hを一定にして、色域の外側にある点(入力点)が、図17に示す領域P1〜P5の何れの領域に属すかを判断する。そして、CPU11は、領域P1〜P5ごとに定められた写像の手順に基づいて、入力点を色域に写像させて、目標値T’に対応する色域上の目標点を決定する。
ここで、本実施形態において、高彩度色の目標点r1は、彩度頂点H1’よりも彩度C*が小さな位置に定められる。つまり、CPU11は、図17に示すように、当該目標点r1を、中間点r2と彩度頂点H1’とを結ぶ線分上の、彩度頂点H1’側に配置する。また、CPU11は、白色頂点W’近傍の色の目標点r3を配置する。CPU11は、当該目標点r3を、白色頂点W’と中間点r2とを結ぶ線分上に位置するように定める。なお、中間点r2は、白色頂点W’の明度L*と黒色頂点B’の明度L*の中間値をとる点である。
【0059】
まず、CPU11は、図17に示す領域P1〜P5のそれぞれの領域の境界を定める。
具体的には、CPU11は、領域P2及び領域P4の傾きを予め定められた方法に基づいて決定する。ここで、領域P2は、色域の上側に位置し、CPU11により決定された傾きで色域へ写像する領域である。また、領域P4は、色域の下側に位置し、CPU11により決定された傾きで色域へ写像する領域である。
そして、CPU11は、領域P2及び領域P4の傾きに基づいて、境界線q1〜q4を作成する。CPU11は、作成した境界線q1〜q4により、領域P1〜P5のそれぞれの領域の境界を定める。境界線q1は、目標点r3より領域P2の傾きで色域の上側へ延伸した半直線である。境界線q2は、目標点r1より領域P2の傾きで色域の上側へ延伸した半直線である。境界線q3は、目標点r1より領域P4の傾きで色域の下側へ延伸した半直線である。境界線q4は、黒色頂点B’より領域P4の傾きで色域の下側へ延伸した半直線である。
ここで、図17において、彩度頂点H1’の明度L*は、明度L*の最大値100の略中間値を示す。しかし、彩度頂点H1’の明度L*は、切断する色相次第で当該略中間値を示さない場合がある。例えば、イエローの色相で切断した場合、彩度頂点H1’の明度L*は、図17よりも高い明度L*を示す。また、ブルーの色相で切断した場合、彩度頂点H1’の明度L*は、図17よりも低い明度L*を示す。このような場合、CPU11は、上記領域P2及び領域P4の傾きを、彩度頂点H1’から白色頂点W’や黒色頂点B’に向けての直線の傾きに応じて変化させることを望まれる。
【0060】
次に、CPU11は、入力点と目標点r3とを結んだ線分の傾きと、入力点と目標点r1とを結んだ線分の傾きと、入力点と中間点r2とを結んだ線分の傾きと、を算出する。そして、CPU11は、算出した各傾きと、入力点の明度L*と彩度頂点H1’の明度L*との大小比較の結果と、に基づいて、入力点が領域P1〜P5の何れの領域に属すかを判断する。
次に、CPU11は、入力点を写像させる色域内の目標点を当該入力点の属する領域に応じて決定する。例えば、CPU11は、入力点が領域P1に属すと判断した場合、目標点を目標点r3に決定する。また、CPU11は、入力点が領域P3に属すと判断した場合、目標点を目標点r1に決定する。また、CPU11は、入力点が領域P5に属すと判断した場合、目標点を黒色頂点B’に決定する。また、CPU11は、入力点が領域P2に属すと判断した場合、目標点r1と白色頂点W’とを結ぶ線分又は目標点r3と中間点r2とを結ぶ線分と、入力点を通りP2の傾きで延伸させた直線と、の交点を目標点に決定する。また、CPU11は、入力点が領域P4に属すと判断した場合、目標点r1と白色頂点W’とを結ぶ線分又は黒色頂点B’と中間点r2とを結ぶ線分と、入力点を通りP4の傾きで延伸させた直線と、の交点を目標点に決定する。
その結果、CPU11は、L*a*b*の値が色域の外側にある入力点を、色域内の目標点に写像させることができる。そして、CPU11は、当該目標点の目標値T’について収束演算処理を行うことで、CMYKの値の組み合わせを取得する。
【0061】
以上により、CPU11は、L*a*b*:33×33×33=35937点の各LUT入力点に対するCMYKの値の組み合わせを導出したので、第2のLUT200を生成できた。
【0062】
(色調整処理)
次に、色調整システム1000にて実施される色調整処理について、図18のフローチャートに基づき説明する。
【0063】
まず、第2のコンピュータ10(CPU11)は、複数のKカーブより一のKカーブをユーザに選択させる画面を表示部15に表示させる。すると、ユーザは、操作部14を介して使用するKカーブを選択する(ステップS1)。
次いで、第2のコンピュータ10は、ステップS1にて選択されたKカーブを用いて、CMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせに変換する変換式を作成する。第2のコンピュータ10は、変換式を用いて、CMYチャート220に含まれるカラーパッチのCMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせに変換する。第2のコンピュータ10は、当該CMYKの値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを備える第2のカラーチャート210を生成する(ステップS2;変換工程、生成工程)。
次いで、第2のコンピュータ10は、第1のコンピュータ2を介して、第1のカラーチャート110及び第2のカラーチャート210を色変換処理無しでカラープリンタ1に出力させる(ステップS3;出力工程)。
次いで、第2のコンピュータ10は、ユーザが測定器3で測定した第1のカラーチャート110及び第2のカラーチャート210の測定値を当該測定器3より取得する(ステップS4;取得工程)。
次いで、第2のコンピュータ10は、第1のカラーチャート110及び第2のカラーチャート210の両方に含まれる色の測定値の差分値を補正する(ステップS5)。
次いで、第2のコンピュータ10は、ステップS5にて補正された第1のカラーチャート110の測定値に基づいて、第1のLUT100を作成する(ステップS6)。
次いで、第2のコンピュータ10は、ステップS5にて補正された第2のカラーチャート210の測定値に基づいて、第2のLUTを200作成する(ステップS7;作成工程)。第2のコンピュータ10は、当該ステップS6及びステップS7の処理を行うことで、カラープリンタ1のデバイスプロファイルを作成できる。
次いで、第2のコンピュータ10は、記憶部16に予め記憶されたsRGB形式のデバイスプロファイル(ソースプロファイル)と、カラープリンタ1のデバイスプロファイルと、に基づいてデバイスリンクプロファイルを作成する(ステップS8)。ここで、第2のコンピュータ10は、作成したデバイスリンクプロファイルを通信部17を介して第1のコンピュータ2へ送信する。
次いで、第1のコンピュータ2は、カラーモニタ装置に係るRGB色の画像データに対して、デバイスリンクプロファイルを用いて色変換処理を行い、CMYK色からなる画像データをカラープリンタ1に出力させる(ステップS9)。
なお、ステップS8にて、第2のコンピュータ10は、デバイスリンクプロファイルを作成すること無く、sRGB形式のデバイスプロファイルとカラープリンタ1のデバイスプロファイルとを第2のコンピュータ10に送信してもよい。つまり、ステップS9にて、第1のコンピュータ2は、sRGB形式のデバイスプロファイルとカラープリンタ1のデバイスプロファイルとを用いて上記色変換処理を行うこととしてもよい。
【0064】
以上により、本実施形態に係る色調整システム1000によると、CPU11は、第2のカラーチャート210の測定値に基づいて、第2のLUT200を作成することができる。そして、第2のカラーチャート210は、CMYチャート220に含まれるカラーパッチのCMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせに変換させたカラーパッチからなる。つまり、CPU11は、第2のLUT200を作成する際に、従来補間計算で算出したCMYKの値の組み合わせに対応するそれぞれのL*a*b*の値を、実測値として取得することが出来る。したがって、CPU11は、高精度な第2のLUT200を生成することができる。
【0065】
また、CPU11は、第1のカラーチャート110及び第2のカラーチャート210の両方に含まれる色(一致点)について、それぞれのカラーチャートの測定値の差分値を補正する。そのため、CPU11は、カラープリンタ1が第1のカラーチャート110及び第2のカラーチャート210を出力する際の出力むらの影響や測定器3の測定誤差の影響を減少させることができる。したがって、CPU11は、第1のLUT100を用いた色変換処理と、第2のLUT200を用いた色変換処理と、の双方向の変換処理における互換性を確保できる。
【0066】
また、CPU11は、一致点について補正を行う際に、一致点の周囲の点についても同時に補正を行うことができる。そのため、CPU11は、上記双方向の変換処理における互換性を一層向上できる。
【0067】
また、CPU11は、第2のカラーチャート210について、C、M、Y:30%、55%、85%に対するCMYの値の組み合わせの分、第1のカラーチャート110のK:0%よりも細かくカラーパッチを配置できる。
【0068】
また、CPU11は、CMYチャート220に含まれるカラーパッチのCMYの値をCMYKの値に変換する場合、Kの値をKカーブで決定することができる。
【0069】
また、CPU11は、決定されたKの値に基づいて、CMYチャート220に含まれるカラーパッチのCMYの値を増加又は減少させる。つまり、CPU11は、UCR、UCA、GCR等の処理を適宜に行うことができる。
【0070】
また、CPU11は、第2のLUT200のLUT入力点に対するCMYKの値の組み合わせを導出する際、収束演算処理により求めた当該LUT入力点に対するCMYの値の組み合わせについて、加えるKの値をKカーブで決定する。そのため、CPU11は、Kの値とCMYの値の組み合わせとの関係において補間計算の影響を少なくできる。
【0071】
(変形例1)
第1の実施形態において、CPU11は、第2のLUT200を作成する際に、CMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせに変換する変換式を作成したが、変換テーブルを作成してもよい。ここで、変換テーブルは、CMYの値を3次元の格子点上にとり、各々の格子点に対応するCMYKの値を格納したLUTである。
【0072】
CPU11は、変換テーブルに格納されるCMYKの値を、CMYの値の組み合わせ(格子点の位置)に応じて柔軟に設定できる。例えば、CPU11は、CMYの値が予め定めた値(100%)を超えるまではKカーブに基づいてKの値を決定する。そして、CPU11は、CMYの値へ当該決定したKの値を加え、変換テーブルにCMYKの値を格納する。一方で、CPU11は、CMYの値の何れか一つの値が100%を超えた場合、高濃度側の色域を広げる目的で、Kカーブで決定するKの値よりも大きくなるようにKの値を決定する。さらに、CPU11は、当該決定したKの値に応じて、CMYの値のうち100%でない値を減少させる。そして、CPU11は、減少させたCMYの値に決定したKの値を加えたCMYKの値を、変換テーブルに格納する。
【0073】
具体的には、CPU11は、図19〜図21に例示する変換テーブルを作成できる。ここで、図19〜図21において、格子点のCMYそれぞれの値は、Cin、Min、Yinで表され、変換テーブルに格納されるCMYKそれぞれの値は、Cout、Mout、Yout、Koutで表される。また、図19〜図21において、CMYoutの最小値は、Coutの値とMoutの値とYoutの値の中の最小値である。
【0074】
CPU11は、図19〜図21に例示する変換テーブルを作成する場合、Cin×Min×Yin:11×11×11点のCMYの値の組み合わせを3次元の格子点にとる。
ここで、11通りのCMYそれぞれの値の中で、9通りのCMYそれぞれの値は、CMYチャート220のC×M×Y:9×9×9点に係るCMYそれぞれの値に一致する。つまり、図19〜図21において、Cin、Min、Yin:0、1、2、3、4、5、6、7、8は、それぞれ、C、M、Y:0%、10%、20%、30%、40%、55%、70%、85%、100%に等しい。この場合、CPU11は、当該9通りのCMYの値の組み合わせであるCin×Min×Yin:9×9×9点について、Kカーブ1に基づいてKoutの値を決定する。
一方で、CPU11は、11通りのCMYそれぞれの値の中でCin、Min、Yin:9、10を、それぞれ100%を超える値に定める。この場合、図12及び図19〜図21より把握されるように、CPU11は、Cin、Min:9、10のCMYの値の組み合わせについて、Koutの値をKカーブ1で決定するKの値よりも大きな値に決定する。さらに、CPU11は、Youtの値を、決定したKoutの値に応じてYinよりも小さな値に定める。
その結果、CPU11は、Cin×Min×Yin:11×11×11点のCMYの値の組み合わせに対応するCout、Mout、Yout、Koutの値を、それぞれ変換テーブルに格納できる。そして、図19〜図21に示す、Cin、Min:9、10のCMYの値の組み合わせに対応したL*a*b*の値より把握されるように、L*a*b*の値が低明度側に広がりを持つような値をとるため、高濃度側の色域は広くなる。
【0075】
また、CPU11は、変換テーブルの中でKカーブに基づくKoutの値が格納された部分について、第2のLUT200を作成する際に収束演算処理で求めたCMYの値の組み合わせに対応するKの値を、当該変換テーブルで決定する。つまり、CPU11は、3次元の格子点上に上記CMYの値の組み合わせを配置し、対応するCMYKの値を変換テーブルより抽出する。そして、CPU11は、CMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせへ変換することで、Kの値を決定する。
【0076】
以上、本変形例によると、CPU11は、第2のLUT200を作成する際に、高濃度側の色域に広がりを持たせた変換テーブルにより、CMYの値の組み合わせをCMYKの値の組み合わせに変換することができる。
【0077】
(変形例2)
第1の実施形態や変形例1において、CPU11は、予め用意した複数のKカーブからユーザが選択したKカーブを用いて、CMYの値の組み合わせとKの値とを関係付けた。しかし、本変形例2のように、CPU11は、第1のカラーチャート110の測定値(第1のLUT100のLUT入力点に対するL*a*b*の値)に基づいて当該関係付けを行う関係式を作成してもよい。
【0078】
具体的には、CPU11は、K:0%であるCMYの値の組み合わせと当該組み合わせそれぞれに対応するL*a*b*の値と、を第1のLUT100より抽出する。そして、CPU11は、抽出した値に基づいて、CMYの値の組み合わせをL*a*b*の値に変換するCMY→L*a*b*のLUTを作成する。
次に、CPU11は、CMY→L*a*b*のLUTにおけるL*a*b*の値を、カラープリンタ1の紙色がL*:100、a*:0、b*:0となるように、紙色に対する相対値に置き換える。そして、CPU11は、当該CMY→L*a*b*のLUT及び上述の収束演算処理を用い、L*:100、90、80、70、60、50、40、30、20それぞれについて、a*:0且つb*:0である、9点のL*a*b*の値に対応するCMYの値を算出する。ここで、図22は、上記L*a*b*の値に対応するCMYの値の算出結果である。また、図23は、図22に示すL*の値を横軸として、CMYそれぞれの値を折線上に表した図である。
【0079】
次に、CPU11は、CMYの値の組み合わせとKの値とを関係付ける上で、良好なグレーバランスを得るためのCMYの比率を算出する。まず、CPU11は、図22に示すように、9点のCMYの値について、CMYそれぞれの値をCの値で除して、C/C、M/C、Y/C、を求める。そして、CPU11は、求めた9点の中の複数点に亘って、C/C、M/C、Y/C、それぞれの平均値を計算してCMYの比率を算出する。例えば、CPU11が4点目〜6点目に亘って(図22のNo.4〜No.6について)平均値を計算した場合、C/Cの平均値は1.0、M/Cの平均値は0.861、M/Cの平均値は0.75となる。つまり、この場合のCMYの比率は、C:M:Y=1.0:0.861:0.75である。
【0080】
CPU11は、上記CMYの比率を用いて、グレーバランスを考慮したCMYの値の組み合わせとKの値とを関係付ける関係式を算出する。ここで、関係式は、K=(MIN(C,M/0.861,Y/0.75)−50)×2、である。なお、MIN(C,M/0.861,Y/0.75)は、C、M/0.861、Y/0.75、の値の中の最小値である。また、MIN(C,M/0.861,Y/0.75)<50の場合、K=0である。
一方、CPU11は、グレーバランスを考慮しない場合、CMYの値の組み合わせについて、K=(MIN(C,M,Y)−50)×2、の式でKの値と関係付ける。なお、MIN(C,M,Y)<50の場合、K=0である。
したがって、CPU11は、上記関係式に基づいて、CMYの値の組み合わせを、グレーバランスを考慮しない場合よりもグレー成分を強調したCMYKの値の組み合わせに変換できる。
【0081】
さらに、CPU11は、CMYチャート220に備わるカラーパッチのCMYの値を増加又は減少させる際に、第1のカラーチャート110の測定結果に基づいて加減値を決定する。つまり、第1の実施形態において、Kの値に対応付けてリストに記載される加減値は、CMYそれぞれについて同値であった。しかし、CPU11は、上記CMYの比率を用いることで、加減値をCMYそれぞれについて異なる値に設定できる。具体的には、CPU11は、リストに記載される加減値に対して、C/C、M/C、Y/Cをそれぞれ乗じた値を、CMYそれぞれの加減値に設定する。
【0082】
また、CPU11は、変形例1で述べた変換テーブルを作成する際、CMYの値の何れか一つの値が100%を超えた場合のCMYの値の減少値も、第1のカラーチャート110の測定結果(CMYの比率)に基づいて決定する。
例えば、変形例1の場合、CPU11は、図19に示すYin:1において、Cin、Min:8〜Cin、Min:10へと変化するにつれて、Yout:10%、6.25%、2.5%と減少させた。本変形例2では、CPU11は、Yout:10%に対するYout:6.25%、2.5%の減少値である、3.75%と7.5%にY/C=0.75を乗じる。そして、CPU11は、算出される5%及び10%を、Yout:10%に対する新たな減少値に決定する。つまり、Yin:1において、Cin、Min:8〜Cin、Min:10へと変化するにつれて、Youtは、10%、7.2%、4.4%と減少する。
さらに、CPU11は、図20に示すYin:4及び図21に示すYin:6についても、同様の算出処理で新たな減少値を決定する。その結果、Yin:4において、Cin、Min:8〜Cin、Min:10へと変化するにつれて、Youtは、40%、28.8%、17.5%と減少する。また、Yin:6において、Cin、Min:8〜Cin、Min:10へと変化するにつれて、Youtは、70%、56.9%、43.8%と減少する。
つまり、変換テーブルの高濃度側に色域を広げた部分について、図19〜図21に示すYoutの減少値よりも新たに決定したYoutの減少値の方が小さいため、CPU11は、変形例1よりもCMYの値の変化の度合いを均一に近づけることができる。
【0083】
以上、本変形例によると、CPU11は、第2のカラーチャート210を生成する上で、第1のカラーチャート110の測定結果を反映させた、CMYの値の組み合わせを良好なグレーバランスからなるCMYKの値の組み合わせに変換できる。
また、CPU11は、CMYチャート220に備わるカラーパッチのCMYの値を増加又は減少させる際に、加減値を第1のカラーチャート110の測定結果に基づいて決定する。そのため、CPU11は、CMYの値を増加又は減少させた場合のグレーバランスの変化を少なくすることが出来る。
さらに、CPU11は、変換テーブルを作成する際、CMYの値の何れか一つの値が100%を超えた場合のCMYの値の減少値も、第1のカラーチャート110の測定結果に基づいて決定できる。そのため、CPU11は、変換テーブルの高濃度側に色域を広げた部分について、変形例1よりもCMYの値の変化の度合いを均一に近づけることができる。
【0084】
なお、以上の実施形態における記述は、本発明に係る好適な色変換テーブル作成プログラム、色変換テーブル作成プログラムを格納した媒体、及び色変換テーブルの作成方法の一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、第1のコンピュータ2の機能が実行できる構成を、カラープリンタ1に備えるようにしてもよい。また、第2のコンピュータ10の一部又は全ての機能が実行できる構成を、第1のコンピュータ2に備えるようにしてもよい。
【0085】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムをコンピュータで読み取り可能な媒体として不揮発性の半導体メモリを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータで読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0086】
1000 色調整システム
2 第1のコンピュータ
3 測定器
10 第2のコンピュータ
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 操作部
15 表示部
16 記憶部
17 通信部
100 第1のLUT
110 第1のカラーチャート
120,130 1次元LUT
200 第2のLUT
210 第2のカラーチャート
220 CMYチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタが出力すべき墨及び互いに色相の異なる3つの基本色からなる4色の値の組み合わせを表色系の値に変換するための第1の色変換テーブルと、前記表色系の値を前記4色の値の組み合わせに変換するための第2の色変換テーブルと、を作成するコンピュータを、
前記3つの基本色の値の組み合わせを変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する変換手段、
複数の前記3つの基本色の値の組み合わせそれぞれを前記変換手段により前記4色の値の組み合わせに変換し、当該4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わるカラーチャートを生成する生成手段、
前記生成手段により生成したカラーチャートを前記プリンタに出力させる出力手段、
前記出力手段により出力させたカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する取得手段、
前記取得手段により取得した表色系の値に基づいて前記第2の色変換テーブルを作成する第2の色変換テーブル作成手段、
として機能させる色変換テーブル作成プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、更に、前記第1の色変換テーブルの4色の値の組み合わせの何れかと前記生成手段により生成するカラーチャートに備わるカラーパッチに応じた4色の値の組み合わせの何れかとで4色の値が一致する場合、前記一致する4色の値の組み合わせを前記第1の色変換テーブルで変換した表色系の値と、前記取得手段により前記一致する4色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを測定させて取得した表色系の値と、の差分値を補正する補正手段、
として機能させる請求項1に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項3】
前記補正手段は、前記差分値を補正する際に、前記一致する4色の値の近傍の4色の値の組み合わせを前記第1の色変換テーブルで変換した表色系の値と、前記取得手段により前記近傍の4色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを測定させて取得した表色系の値と、の何れか一方の表色系の値に、前記一致する4色の値と前記近傍の4色の値との値の隔たりに応じて前記差分値より所定値減じた値を代入する、
請求項2に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項4】
プリンタが出力すべき墨及び互いに色相の異なる3つの基本色からなる4色の値の組み合わせを表色系の値に変換するための第1の色変換テーブルと、前記表色系の値を前記4色の値の組み合わせに変換するための第2の色変換テーブルと、を作成するコンピュータを、
複数の前記4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わる第1のカラーチャートを前記プリンタに出力させる第1の出力手段、
前記第1の出力手段により出力させた第1のカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する第1の取得手段、
前記第1の取得手段により取得した表色系の値に基づいて前記第1の色変換テーブルを作成する第1の色変換テーブル作成手段、
前記3つの基本色の値の組み合わせを変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する変換手段、
複数の前記3つの基本色の値の組み合わせそれぞれを前記変換手段により前記4色の値の組み合わせに変換し、当該4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わる第2のカラーチャートを生成する生成手段、
前記生成手段により生成した第2のカラーチャートを前記プリンタに出力させる第2の出力手段、
前記第2の出力手段により出力させた第2のカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する第2の取得手段、
前記第2の取得手段により取得した表色系の値に基づいて前記第2の色変換テーブルを作成する第2の色変換テーブル作成手段、
として機能させる色変換テーブル作成プログラムであって、
前記生成手段により前記第2のカラーチャートを生成する際に前記変換手段により変換する3つの基本色の値の組み合わせの個数は、前記第1のカラーチャートに備わる前記墨の値が0である3つの基本色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチの個数よりも多い、
色変換テーブル作成プログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、更に、前記第1のカラーチャートに備わるカラーパッチに応じた4色の値の組み合わせの何れかと前記第2のカラーチャートに備わるカラーパッチに応じた4色の値の組み合わせの何れかとで4色の値が一致する場合、前記第1の取得手段により前記一致する4色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを測定させて取得した表色系の値と、前記第2の取得手段により前記一致する4色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを測定させて取得した表色系の値と、の差分値を補正する補正手段、
として機能させる請求項4に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項6】
前記補正手段は、前記差分値を補正する際に、前記第1の取得手段により前記一致する4色の値の近傍の4色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを測定させて取得した表色系の値と、前記第2の取得手段により前記近傍の4色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを測定させて取得した表色系の値と、の何れか一方の表色系の値に、前記一致する4色の値と前記近傍の4色の値との値の隔たりに応じて前記差分値より所定値減じた値を代入する、
請求項5に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項7】
前記変換手段は、前記3つの基本色の値の組み合わせと前記墨の値とを関係付ける関係式に基づいて前記墨の値を決定する変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する、
請求項1〜6の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項8】
前記変換手段は、前記3つの基本色の値の組み合わせと前記墨の値とを関係付ける関係式に基づいて前記墨の値を決定し当該決定した墨の値に応じて前記3つの基本色の値を加減する変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する、
請求項1〜6の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項9】
前記変換手段は、前記3つの基本色の値が予め定めた値を超えるまで前記3つの基本色の値の組み合わせと前記墨の値とを関係付ける関係式に基づいて前記墨の値を決定する一方で、前記3つの基本色の値の何れか一つの値が前記予め定めた値を超えた場合前記関係式に基づいて決定する墨の値より大きくなるように墨の値を決定し当該決定した墨の値に応じて前記予め定めた値と異なる値を有する前記3つの基本色の値を減少させる変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する、
請求項1〜6の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項10】
前記変換手段は、前記3つの基本色の値の組み合わせと前記墨の値とを関係付ける関係式に基づいて前記墨の値を決定する変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換し、前記関係式を前記第1の色変換テーブルの表色系の値又は前記第1の取得手段により取得される表色系の値に基づいて決定する、
請求項4〜6の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項11】
前記変換手段は、前記3つの基本色の値の組み合わせと前記墨の値とを関係付ける関係式に基づいて前記墨の値を決定し当該決定した墨の値に応じて前記3つの基本色の値を所定値加減する変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換し、前記関係式及び前記所定値を前記第1の色変換テーブルの表色系の値又は前記第1の取得手段により取得される表色系の値に基づいて決定する、
請求項4〜6の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項12】
前記変換手段は、前記3つの基本色の値が予め定めた値を超えるまで前記3つの基本色の値の組み合わせと前記墨の値とを関係付ける関係式に基づいて前記墨の値を決定する一方で、前記3つの基本色の値の何れか一つの値が前記予め定めた値を超えた場合前記関係式に基づいて決定する墨の値より大きくなるように墨の値を決定し当該決定した墨の値に応じて前記予め定めた値と異なる値を有する前記3つの基本色の値を所定値減少させる変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換し、前記関係式と前記所定値とを前記第1の色変換テーブルの表色系の値又は前記第1の取得手段により取得される表色系の値に基づいて決定する、
請求項4〜6の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項13】
前記第2の色変換テーブル作成手段は、前記変換手段により変換した4色の値の組み合わせの中で前記関係式に基づいて前記墨の値を決定した4色の値の組み合わせについて、当該4色の値の組み合わせに応じた色のカラーパッチを測定させて取得した表色系の値に対応する3つの基本色の値の組み合わせを算出し、当該算出した前記3つの基本色の値の組み合わせに対応する墨の値を前記関係式に基づいて決定する、
請求項7〜12の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラム。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載の色変換テーブル作成プログラムを格納するコンピュータで読み取り可能な媒体。
【請求項15】
プリンタが出力すべき墨及び互いに色相の異なる3つの基本色からなる4色の値の組み合わせを表色系の値に変換するための第1の色変換テーブルと、前記表色系の値を前記4色の値の組み合わせに変換するための第2の色変換テーブルと、をコンピュータが作成する色変換テーブルの作成方法であって、
複数の前記3つの基本色の値の組み合わせそれぞれを変換テーブル又は変換式により前記4色の値の組み合わせに変換する変換工程と、
前記変換した4色の値の組み合わせそれぞれに応じた色のカラーパッチが備わるカラーチャートを生成する生成工程と、
前記生成したカラーチャートを前記プリンタに出力させる出力工程と、
前記出力させたカラーチャートに備わるカラーパッチそれぞれを測定させて表色系の値を取得する取得工程と、
前記取得した表色系の値に基づいて前記第2の色変換テーブルを作成する作成工程と、
を有することを特徴とする色変換テーブルの作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−254224(P2011−254224A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125816(P2010−125816)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】