説明

色変換装置、色変換方法及びプログラム

【課題】色変換条件の変更に伴う印刷物の色再現特性に与える影響の程度を簡便に把握可能である色変換装置、色変換方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】基準変換テーブルに基づいて基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測し、比較変換テーブルに基づいて比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測し、前記第1色再現特性を基準として前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価し、評価結果を可視化するための3Dマップ画像122、124(2Dマップ画像160、162)を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力された画像信号を、印刷に応じたデバイス色信号に変換する色変換条件を決定する色変換装置、色変換方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、インクジェット技術の飛躍的進歩に伴い、インクジェット方式の印刷装置による高速・高画質を両立したカラー大判印刷が可能になりつつある。この装置は、特にサイン・ディスプレイ用途において幅広い分野で用いられており、例えば、店頭POP(Point Of Purchase)や壁面ポスター、屋外広告・看板等の印刷にも適用可能である。インクジェット方式では、CMYK等の複数種のインクの液滴を吐出し、印刷媒体上に多数のドットを形成することで、印刷物を得ることができる。
【0003】
ところで、人間の標準視覚応答特性によれば、グレー系統の色を最も識別し易いことが知られている。すなわち、各色のドットが同サイズである場合、Kインクで形成されるドットは、他のC、M、Yインクでのドットと比べて視認し易い。そのため、Kインクの使用量を多くして形成した画像では、個々のドットを識別できないまでも、画像全体としてザラツキ感(粒状性の悪化)が目立ってしまう。
【0004】
これに対し、C、M、Yインクを混色させてグレー(コンポジットブラック)を形成することで、各色のドットの重畳に伴う平滑化効果により、画像の粒状性を改善することができる。しかし、1色に代替して3色のインクを用いることから、インクの総使用量が増加するので、ランニングコスト(以下、単にコストという。)が高騰する。
【0005】
すなわち、インクジェット方式において、粒状性とコストとはトレードオフの関係下にあり、両者のバランスを取るような画像設計が重要である。そこで、インクの総使用量の変更量(以下、単に「インク変更量」という。インクの総使用量を削減する場合は、特に「インク削減量」という場合がある。)を予め設定した上で、各色のドット記録率を微調整することで、印刷物の画質を適切に制御する色変換処理に関連する技術が種々提案されている。
【0006】
特許文献1には、設定されたインク削減量に応じて、入力画像信号に対する色変換条件を変更する装置及び方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、設定されたインク削減量に応じて明度及び彩度を変更し、その明度及び彩度を実現するように画像信号を補正する装置及び方法が開示されている。例えば、設定画面上に配置されたスライドバーの操作に応じて、インク削減量の変更が自在である旨が記載されている。
【0008】
特許文献3には、単位領域毎のインクの総使用量を推定することで画像領域上での分布特性を算出し、前記分布特性から色変換条件を決定する装置及び方法が開示されている。また、プレビュー画像と、そのプレビュー画像の各単位領域に対応する前記総使用量を可視化したマップ画像とを併せて表示する画面図が記載されている。これにより、色変換条件を新たに決定しようとする作業者の支援にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−68982号公報([0022]、図6)
【特許文献2】特開2007−196529号公報([0029]、図2)
【特許文献3】特開2006−224454号公報([0011]、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、現行の色変換条件を変更する際、作業者は、インク削減量の増加に伴う、印刷物の画質に与える影響(特に弊害)の程度を予め把握しておきたい場合がある。特に、高画質が要求される印刷物においては、画質及びコストを両立した最適な色変換条件に調整したいという要望が特に高い。
【0011】
しかしながら、特許文献1及び2で開示された装置及び方法では、インク削減量に対する画質の良し悪しを事前に把握することができず、印刷物を実際に生成した上で画質を確認する必要があった。
【0012】
また、インクの総使用量を変更するための色変換テーブルを作成する場合、種々の設計手法(アルゴリズム又は画像設計方針)を採用することができる。すなわち、作成された色変換テーブルを用いて階調変換処理を施した場合での、色再現特性の傾向が異なることがある。
【0013】
しかしながら、特許文献3で開示された装置及び方法では、インクの総使用量の分布特性を把握できるため、インクの滲みや粒状性に関する一定の目安にはなるものの、この結果をもって色再現特性の傾向を把握することはできなかった。
【0014】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、色変換条件の変更に伴う印刷物の色再現特性に与える影響の程度を簡便に把握可能である色変換装置、色変換方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る色変換装置は、入力された画像信号を、印刷に応じたデバイス色信号に変換する色変換条件を決定する装置であって、基準の色変換条件に関する基準条件情報を取得する基準条件情報取得部と、前記基準の色変換条件と異なる比較対象の色変換条件に関する比較条件情報を少なくとも1つ取得する比較条件情報取得部と、前記基準条件情報取得部により取得された前記基準条件情報に基づいて前記基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測するとともに、前記比較条件情報取得部により取得された前記比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測する色再現特性予測部と、前記色再現特性予測部により予測された前記第1色再現特性を基準として、前記色再現予測部により予測された前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価する比較評価部と、前記比較評価部による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成する表示画像作成部とを有することを特徴とする。
【0016】
このように、基準条件情報に基づいて基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測するとともに、比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測する色再現特性予測部と、予測された前記第1色再現特性を基準として、予測された前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価する比較評価部とを設けたので、色変換条件の変更に伴う印刷物の色再現特性に与える影響の程度を、変更前の色変換条件と直接対比して把握できる。そして、比較評価による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成することで、作業者は一見して把握できる。
【0017】
また、前記デバイス色信号は、複数の色材の使用量に対応付けられた信号であり、前記複数の色材には無彩色材と複数の有彩色材とが含まれ、該複数の有彩色材を組み合せることで前記無彩色材を用いた前記印刷での色を再現可能であることが好ましい。
【0018】
さらに、前記比較対象の色変換条件は、前記基準の色変換条件と比較して、所定の色範囲において前記複数の色材の総使用量が異なり、且つ、デバイス非依存色空間上において略等色を再現する色変換条件であることが好ましい。
【0019】
さらに、前記比較対象の色変換条件は、前記基準の色変換条件と比較して、所定の色範囲において前記複数の色材の総使用量が少ない色変換条件であることが好ましい。
【0020】
さらに、前記所定の比較条件には、色差、トーンカーブの連続性及び滑らかさ並びにガマットの範囲のうちの少なくとも1つが含まれることが好ましい。
【0021】
さらに、前記結果表示画像は、前記入力された画像信号の各画素に対応する色に関する前記評価結果を可視化して判別可能となるように、各前記画素の信号値が決定された画像であることが好ましい。
【0022】
さらに、前記表示画像作成部により作成された前記結果表示画像を表示する表示部をさらに有することが好ましい。
【0023】
さらに、前記基準の色変換条件及び少なくとも1つの前記比較対象の色変換条件の中から選択された色変換条件に基づいて、前記入力された画像信号を前記デバイス色信号に変換する色変換処理部をさらに有することが好ましい。
【0024】
本発明に係る色変換方法は、入力された画像信号を、印刷に応じたデバイス色信号に変換する色変換条件を決定する方法であって、基準の色変換条件に関する基準条件情報を取得する第1取得ステップと、前記基準の色変換条件と異なる比較対象の色変換条件に関する比較条件情報を少なくとも1つ取得する第2取得ステップと、取得された前記基準条件情報に基づいて前記基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測するとともに、取得された前記比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測する予測ステップと、予測された前記第1色再現特性を基準として、予測された前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価する比較評価ステップと、前記比較評価ステップでの評価結果を可視化して結果表示画像を作成する作成ステップとを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明に係るプログラムは、入力された画像信号を、印刷に応じたデバイス色信号に変換する色変換条件を決定するため、コンピュータを、基準の色変換条件に関する基準条件情報を取得する基準条件情報取得部、前記基準の色変換条件と異なる比較対象の色変換条件に関する比較条件情報を少なくとも1つ取得する比較条件情報取得部、前記基準条件情報取得部により取得された前記基準条件情報に基づいて前記基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測するとともに、前記比較条件情報取得部により取得された前記比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測する色再現特性予測部、前記色再現特性予測部により予測された前記第1色再現特性を基準として、前記色再現予測部により予測された前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価する比較評価部、前記比較評価部による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成する表示画像作成部として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る色変換装置、色変換方法及びプログラムによれば、基準条件情報に基づいて基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測し、比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測し、前記第1色再現特性を基準として前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価するようにしたので、色変換条件の変更に伴う印刷物の色再現特性に与える影響の程度を、変更前の色変換条件と直接対比して把握できる。そして、比較評価による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成することで、作業者は一見して把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施の形態に係る色変換装置を組み込んだ印刷システムの概略説明図である。
【図2】図1に示す色変換装置の電気的な概略ブロック図である。
【図3】変更パラメータの設定画面の一例を表す図である。
【図4】図1に示す色変換装置の動作説明に供されるフローチャートである。
【図5】図5Aは、各変換前におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図5Bは、GCR変換処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図5Cは、IGCR変換処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。
【図6】デバイス非依存色空間上での等色範囲を表す概略説明図である。
【図7】図7Aは、グレー系統の色を再現する通常の色変換テーブルの変換特性を表すグラフである。図7Bは、グレー系統の色を再現するGCR変換テーブルの変換特性を表すグラフである。図7Cは、グレー系統の色を再現するIGCR変換テーブルの変換特性を表すグラフである。
【図8】図2の結果表示画像作成部で作成された結果表示画像の第1例を表す画面図である。
【図9】図9A〜図9Cは、図2の結果表示画像作成部で作成された結果表示画像の第2例を表す画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る色変換方法についてそれを実施する色変換装置及び印刷システムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係る色変換装置を組み込んだ印刷システム10の概略説明図である。
【0030】
印刷システム10は、色変換装置12と、印刷装置14と、DTP(Desktop Publishing)装置16と、データベースサーバ18とを基本的に備える。色変換装置12、DTP装置16及びデータベースサーバ18は、有線又は無線によって相互に電気的に接続されている。
【0031】
色変換装置12は、外部装置からの入力画像信号(デバイス色信号又はページ記述データ)を、印刷装置14での印刷に適したデバイス色信号に変換する。また、色変換装置12は、変換された前記デバイス色信号を印刷装置14側に出力する。ここで、デバイス色信号とは、デバイス依存データで定義された画像信号を意味し、例えば、4色(CMYK)或いは3色(RGB)のカラーチャンネルを有するラスタ形式データ(TIFF、ビットマップ、RAW等)である。また、印刷装置14に供給されるデバイス色信号として、任意のヘッダを付加した独自のフォーマットデータを用いてもよい。
【0032】
印刷装置14は、色変換装置12に電気的に接続されている。この接続には、例えば、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインターフェースや、セントロニクス等のパラレルインターフェースを適用することができる。
【0033】
印刷装置14は、図示しないメディア(記録媒体)を所定方向に搬送させながら、記録ヘッド20からインク滴を吐出させることで前記メディア上に画像を形成する、いわゆるインクジェットプリンタである。前記メディアの基材には、合成紙・厚紙・アルミ蒸着紙等の紙類、塩化ビニル・PET等の樹脂やターポリン等を用いることができる。
【0034】
記録ヘッド20は、色が異なる4種類の色材{Cインク22c(有彩色材)、Mインク22m(有彩色材)、Yインク22y(有彩色材)、Kインク22k(無彩色材)}の液滴を吐出するための4つのラインヘッド24c、24m、24y、24kで構成される。以下、Cインク22c、Mインク22m、Yインク22y、Kインク22kを総称してインク22という場合がある。
【0035】
各ラインヘッド24c、24m、24y、24kには、前記メディアの幅方向に沿って配設された図示しない複数のノズルが形成されている。Cインク22c、Mインク22m、Yインク22y、Kインク22kは、容器としてのインクタンク26c、26m、26y、26kにそれぞれ収容されている。ラインヘッド24cは、インクタンク26cから供給されたCインク22cを前記複数のノズルを介して吐出させる。ラインヘッド24mは、インクタンク26mから供給されたMインク22mを前記複数のノズルを介して吐出させる。ラインヘッド24yは、インクタンク26yから供給されたYインク22yを前記複数のノズルを介して吐出させる。ラインヘッド24kは、インクタンク26kから供給されたKインク22kを前記複数のノズルを介して吐出させる。
【0036】
なお、記録ヘッド20によるインク滴の吐出機構として、種々の方式を採り得る。例えば、ピエゾ素子(圧電素子)等で構成されるアクチュエータの変形によってインク滴を吐出する方式を適用してもよい。また、ヒータ等の発熱体を介してインク22を加熱することで気泡を発生させ、その圧力でインク滴を吐出するサーマルジェット方式を適用してもよい。また、記録ヘッド20は、ラインヘッドでなくてもよく、マルチパス方式であってもよい。
【0037】
DTP装置16は、文字、図形、絵柄や写真等から構成される素材を編集可能であり、該素材をページ毎に配置することで、ページ記述言語(以下、PDLという。)による電子原稿を生成する。ここで、PDLとは、印刷や表示等の出力単位である「ページ」内で文字、図形等の書式情報、位置情報、色情報(濃度情報を含む)等の画像情報を記述する言語である。DTP装置16は、PDL形式の電子原稿に対してラスタライズ処理を施す。このラスタライズ処理には、PDL形式からラスタ形式に変換するデータ形式変換処理と、ICC(International Color Consortium)プロファイルを用いた色変換処理とが含まれる。
【0038】
データベースサーバ18は、電子原稿のジョブチケット{例えば、JDF(Job Definition Format)ファイル}、色見本データ、ターゲットプロファイル、又は、印刷装置14及びメディアの組合せに適したデバイスプロファイルのデータ管理を行う装置である。
【0039】
図2は、図1に示す色変換装置12の電気的な概略ブロック図である。
【0040】
色変換装置12は、第1インターフェース30と、制御部32と、メモリ34と、第2インターフェース36と、表示制御部38と、第3インターフェース40と、表示部42とを備える。メモリ34には、本実施の形態に係る色変換装置として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0041】
第1インターフェース30は、外部装置からの電気信号を送受信する。例えば、DTP装置16で編集・作成された各種データ(デバイス色信号、PDLデータ)を取得可能である。また、データベースサーバ18で管理・保存されたICCプロファイル等の各種情報を取得可能である。
【0042】
第2インターフェース36は、外部装置に電気信号を送受信する。例えば、色変換装置12の内部で作成されたデバイス色信号を印刷装置14に供給可能である。
【0043】
また、印刷装置14側に供給されるデバイス色信号は、印刷装置14での各インク22の使用量にそれぞれ対応付けられている。この対応付けは、カラーチャンネル毎に任意に設計することができる。例えば、最低の階調レベルでは使用量「0%」を割り当て、最高の階調レベルでは使用量「100%」を割り当て、その中間レベルでは使用量を線形的に割り当ててもよい。
【0044】
CPU等の情報処理装置で構成される制御部32は、画像処理部44と、インク量変更テーブル作成部46と、データ取得部48と、色再現特性予測部50と、比較評価部52と、画面作成部54とを備える。
【0045】
画像処理部44は、DTP装置16(図1参照)と同様のラスタライズ機能を有するラスタライズ処理部56と、所定の色変換条件に従って階調変換処理を行うことで、印刷物28の印刷に用いるインク22の総使用量を変更するインク量変更処理部58(色変換処理部)とを備える。
【0046】
インク量変更処理部58は、インク量変更テーブルを用いて、色版の種類(例えばCMYK信号データ)を変更することなくデバイス色信号の信号値のみを変換する。以下、この変換前のデバイス色信号を「変換前色信号」といい、この変換後のデバイス色信号を「変換後色信号」という場合がある。
【0047】
インク量変更テーブル作成部46は、インク量変更処理部58での処理に供されるインク量変更テーブルを作成する。ここで、GCR(Gray-Component Replacement)変換を実行するためのGCR変換テーブル、又はIGCR(Inverse Gray-Component Replacement)変換を実行するためのIGCR変換テーブルが作成される。なお、GCR変換処理及びIGCR変換処理の詳細については後述する。
【0048】
データ取得部48は、基準の色変換条件に関する基準条件情報としての基準変換テーブルを取得する基準変換テーブル取得部60(基準条件情報取得部)と、比較対象の色変換条件に関する比較条件情報としての比較変換テーブルを少なくとも1つ取得する比較変換テーブル取得部62(比較条件情報取得部)とをさらに備える。
【0049】
色再現特性予測部50は、所定の色変換テーブルに基づいて色再現特性を予測する。予測可能な色再現特性として、階調特性としてのトーンカーブ、色再現範囲としてのガマット等が挙げられるが、これに限られない。
【0050】
比較評価部52は、色再現特性予測部50により予測された一の色変換条件下での色再現特性を基準として、色再現特性予測部50により予測された他の色変換条件下での色再現特性を、所定の比較条件に基づいて比較評価する。例えば、基準変換テーブル取得部60で取得された基準変換テーブルに基づく色再現特性と、比較変換テーブル取得部62で取得された比較変換テーブルを用いた色再現特性とを比較評価する。
【0051】
画面作成部54は、表示部42に表示させるための画面、あるいは前記画面の一部を構成する各種画像を作成する。画面作成部54は、比較評価部52による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成する結果表示画像作成部64(表示画像作成部)を備える。
【0052】
メモリ34は、ターゲットプロファイル、印刷装置14に適したデバイスプロファイルを記録する。メモリ34は、そのほか、変換前色信号、変換後色信号、インク量変更テーブル作成部46で作成された色変換テーブル(GCR変換テーブル又はIGCR変換テーブル)を記録してもよい。
【0053】
表示制御部38は、第3インターフェース40を介して、画面作成部54により作成された各種画面(図3の設定画面100を含む。)を表示部42に表示させる。また、表示部42の表示機能と、図示しないポインティングデバイスの入力機能とを用いることで、ユーザインターフェース(UI部66)を実現する。
【0054】
図3は、図2の表示部42に表示された設定画面100の一例を表す画面図である。
【0055】
設定画面100は、デバイスプロファイルの種類を入力する第1入力部102と、インク22の総使用量を変更するパラメータ(以下、「インク量変更パラメータ」あるいは単に「変更パラメータ」という。)を入力する第2入力部104、106と、印刷しようとする画像ファイル名を入力する第3入力部108と、ターゲットプロファイルの種類を入力する第4入力部110と、後述する評価結果画像をウィンドウ120、150(図8〜図9C参照)に表示指示するための[結果プレビュー]ボタン112と、第2入力部104、106での変更パラメータの入力値に応じてインク量変更テーブルを作成する[作成]ボタン114とを備える。
【0056】
本実施の形態に係る色変換装置12は以上のように構成される。続いて、色変換装置12の動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0057】
先ず、色変換装置12は、画像信号及びプロファイルを設定・入力する(ステップS1)。例えば、第3入力部108(図3参照)を介して、印刷しようとする画像ファイル名を入力すると、画像ファイル名に紐付けられた画像信号は、結果表示画像作成部64に供給される。また、第4入力部110(同参照)を介して、ターゲットプロファイルの種類を入力すると、基準変換テーブル取得部60は、メモリ34に記録されたターゲットプロファイルを読み出し、前記ターゲットプロファイルが備える色変換テーブルを取得する。
【0058】
次いで、基準変換テーブル取得部60は、基準条件情報としての基準変換テーブルを取得する(ステップS2)。例えば、第1入力部102(図3参照)を介して、印刷装置14のデバイスプロファイルの種類を入力すると、基準変換テーブル取得部60は、メモリ34に記録されたデバイスプロファイルを読み出し、前記デバイスプロファイルが備える所定の色変換テーブルを取得する。
【0059】
次いで、色変換装置12は、第2入力部104、106を介して、インク量変更パラメータを設定・入力する(ステップS3)。
【0060】
図3に示すように、第2入力部104は、設定画面100の横方向に延在するスライドバーで構成される。一方、第2入力部106は、テキストボックスで構成される。百分率単位で表記される変更パラメータは、−50〜100%の範囲で設定可能であり、0%の値では基準変換テーブルに対応する。変更パラメータの値が正である場合、基準変換テーブルと比較してインク22の総使用量が少ない状態を表す。一方、変更パラメータの値が負である場合、基準変換テーブルと比較してインク22の総使用量が多い状態を表す。すなわち、変更パラメータの絶対値が大きいほど、インク変更量(増減量)が相対的に多くなる。例えば、第2入力部104、106のいずれか一方の変更操作に応じて他方が追従して変更され、両者の指示値が常時一致するように構成されている。
【0061】
次いで、比較変換テーブル取得部62は、比較変換条件情報としての比較変換テーブルを取得する(ステップS4)。インク量変更テーブル作成部46は、ステップS2で取得された基準変換テーブルと、ステップS3で入力された変更パラメータとを用いて、インク22の総使用量を変更した比較変換テーブルを作成する。ここで、比較変換テーブルの作成方法には、種々の設計手法(アルゴリズム又は画像設計方針)を採用してもよい。しかし、基準変換テーブルに対する色再現特性の良し悪しを直接比較可能とするため、所定の色範囲においてデバイス非依存色空間上で略等色を再現することが望ましい。
【0062】
ここで、デバイス非依存色空間とは、入出力装置に依存しない色空間である。具体的には、HSV(Hue-Saturation-Value)、HLS(Hue-Lightness-Saturation)、CIELAB、CIELUV、XYZ等の表色系が挙げられる。
【0063】
本実施の形態(図1の印刷装置14を参照)のように、複数の有彩色材であるCインク22c、Mインク22m、Yインク22yを組み合わせることで、無彩色材であるKインク22kによる印刷物28上の色を再現可能である場合、GCR変換処理及びIGCR変換処理は特に効果的である。
【0064】
本明細書における「GCR変換処理」とは、基準の色変換条件に基づく処理結果と比較して、所定の色範囲においてインク22の総使用量が少なく、且つ、デバイス非依存色空間上において略等色を再現する色変換処理をいう。また、「IGCR変換処理」とは、基準の色変換条件に基づく処理結果と比較して、所定の色範囲においてインク22の総使用量が多く、且つ、デバイス非依存色空間上において略等色を再現する色変換処理をいう。
【0065】
以下、GCR変換処理及びIGCR変換処理の概要について、図5A〜図7Cを参照しながら説明する。
【0066】
図5Aは、各変換前におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図5Bは、GCR変換処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。図5Cは、IGCR変換処理後におけるインク種類とその使用量との対応関係を表す概略説明図である。
【0067】
図5Bでは、図5Aと比べて、Cインク22c、Mインク22m及びYインク22yをそれぞれΔC、ΔM及びΔYだけ減量させている。そして、各インク22の減量に起因する濃度低下を相殺するため、Kインク22kをΔKだけ増量させている。これにより、印刷物28(図1参照)上での色再現を略一定にしつつも、(ΔC+ΔM+ΔY−ΔK)だけインク22の総使用量を減らすことができる。
【0068】
図5Cでは、図5Aと比べて、Cインク22c、Mインク22m及びYインク22yをそれぞれΔC、ΔM及びΔYだけ増量させている。そして、各インク22の増量に起因する濃度上昇を相殺するため、Kインク22kをΔKだけ減量させている。これにより、印刷物28(図1参照)上での色再現を略一定にしつつも、(ΔC+ΔM+ΔY−ΔK)だけインク22の総使用量が増える。これにより、形成されるドットの被覆率が高くなることで、粒状性が総じて向上する。
【0069】
図6は、デバイス非依存色空間上での等色範囲Rを表す概略説明図である。本実施の形態において、インク22の種類はCMYKの4種類である。本図では、説明の便宜上、CMKの3種類として表記する。
【0070】
変換前のデバイス色信号値に相当する点をPとする。デバイス非依存色空間上(例えば、L***色空間)において、点Pに対応する色値との色差Δeが所定値(例えば、0.5)以下である範囲を等色範囲Rとする。すなわち、この色変換処理において、等色範囲R内の任意のデバイス色信号は、点Pと等色であるものと取り扱う。
【0071】
本図に示すように、点Pの等色範囲R内であって、且つ、K値(単位%)が最大となる色を点Q1とする。デバイス依存色空間上の各点Pに対する点Q1をそれぞれ決定することで、GCR変換テーブルが作成される。また、点Pの等色範囲R内であって、且つ、K値(単位%)が最小となる色を点Q2とする。デバイス非依存色空間上の各点Pに対する点Q2をそれぞれ決定することで、IGCR変換テーブルが作成される。
【0072】
点Q1及び点Q2を決定する方法は、公知の探索アルゴリズムを種々採用してもよい。例えば、印刷装置14のデバイスプロファイルを用いて、点Pのすべての近傍色についてL***色値を算出した上で、制約条件を満たす最適なCMYK組合せを決定してもよい。その際、色の近似性のみならず、階調特性(例えば、階調カーブの連続性・滑らかさ)をも考慮して決定してもよい。
【0073】
このようにして得られたGCR変換テーブル及びIGCR変換テーブルの特性について説明する。図7A〜図7Cは、グレー系統の色を表現する各色変換テーブルの変換特性を表すグラフである。各グラフの横軸は変換前の色信号値(単位%)を表しており、各グラフの縦軸は変換後の色信号値(単位%)を表す。
【0074】
図7Aは、通常の色変換テーブルの変換特性を表すグラフである。このグラフは、等値変換(Y=X)ではなく、勾配が1よりも僅かに小さい直線を示す。これは、インク22の総使用量を400%未満に制限しているためである。グレーの各階調レベルにおいて、各インク22の使用量は同じである。
【0075】
図7Bは、GCR変換テーブルの変換特性を表すグラフである。K値に関して、0≦K≦Th1の範囲では、等値変換(Y=X)である。K≧Th1では曲線の勾配が急になり、色信号値が高い範囲において100(%)に近い状態で飽和する。他色(例えばC値)に関して、0≦C≦Th1の範囲では、等値変換(Y=X)である。K≧Th1では曲線の勾配が緩やかになり、最大範囲(100%)まで単調に増加する。Th1を超える範囲では、Kの比率が、他色(C、M、Y)の比率よりも大きくなっている。つまり、図7Bから諒解されるように、GCR変換テーブルは、Th1〜100(%)の範囲において、インク22の総使用量を低減させる効果を有する。
【0076】
図7Cは、IGCR変換テーブルの変換特性を表すグラフである。K値に関して、0≦K≦Th2の範囲では、常に0(%)である。K≧Th2では非0となり、急激に増大する。他色(例えばC値)に関して、0≦C≦Th2の範囲では、上に凸状の単調増加関数であり、C=Th2で最大値(100%)となる。そして、K≧Th2では緩やかに減少する。全範囲にわたって、Kの比率が、他色(C、M、Y)の比率よりも小さくなっている。つまり、図7Cから諒解されるように、IGCR変換テーブルは、0〜100(%)の範囲において、インク22の総使用量を増加させる効果を有する。
【0077】
このようにして、インク量変更テーブル作成部46は、GCR変換テーブル又はIGCR変換テーブルを作成する。そして、比較変換テーブル取得部62は、インク量変更テーブル作成部46から比較変換テーブルを取得する。また、予め作成された比較変換テーブルをメモリ34に記録(又はデータベースサーバ18で保存・管理)しておき、必要に応じて読み出すようにしてもよい。
【0078】
次いで、図4に戻って、色再現特性予測部50は、基準変換テーブル取得部60から取得した基準変換テーブルに基づいて、基準の色変換条件下での印刷物28の色再現特性を予測する(ステップS5)。ここで予測される色再現特性には、階調特性としてのトーンカーブ、色再現範囲としてのガマットを用いてもよい。以下、基準の色変換条件下での色再現特性を「第1色再現特性」という。
【0079】
次いで、色再現特性予測部50は、比較変換テーブル取得部62から取得した比較変換テーブルに基づいて、比較対象の色変換条件下での印刷物28の色再現特性を予測する(ステップS6)。後述するように、両者を直接対比可能にするため、ステップS5での方法と同一の予測方法を用いることが好ましい。以下、比較対象の色変換条件下での色再現特性を「第2色再現特性」という。
【0080】
次いで、比較評価部52は、第1色再現特性を基準として、第2色再現特性を所定の評価条件に基づいて比較・評価する(ステップS7)。所定の比較条件には、色差、トーンカーブの連続性及び滑らかさ、並びにガマットの範囲のうち少なくとも1つが含まれる。
【0081】
比較条件が色差である場合、所定のデバイス色信号に対応するL***をそれぞれ算出し、これらの色差が所定の閾値を超えるか否かで評価してもよい。比較条件がトーンカーブの連続性である場合、各色の周辺で色転び(色の反転)があるか否かで評価してもよい。比較条件がトーンカーブの滑らかさである場合、階調曲線の1次、2次微分の数値に基づいて評価してもよい。比較条件がガマットの範囲である場合、形状、大きさ、境界線に基づいて評価してもよい。
【0082】
また、比較評価の結果としては、OK(同等)/NG(同等でない)の二択判別のみならず、3種類以上の評価値であっても、整数又は実数であってもよい。
【0083】
次いで、作業者による[結果プレビュー]ボタン112(図3参照)のクリック操作に応じて、表示制御部38は、表示部42に結果表示画像を表示させる(ステップS8)。表示に先立ち、先ず、結果表示画像作成部64は、比較評価部52による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成する。そして、画面作成部54は、結果表示画像を含む画面(図8のウィンドウ120)を作成した後、前記画面を表す制御信号を表示制御部38側に供給する。そして、表示制御部38は、第3インターフェース40を介して、設定画面100と併せてウィンドウ120を表示部42に表示させる。
【0084】
図8は、図2の結果表示画像作成部64で作成された結果表示画像の第1例を表す画面図である。
【0085】
ウィンドウ120上には、ガマットの差異を可視化する3Dマップ画像122と、トーンカーブの連続性の差異を可視化する3Dマップ画像124と、3Dマップ画像122、124を回転表示させるための操作キー126と、ウィンドウ120を非表示にするための[閉じる]と表示されたボタン128とが配置されている。
【0086】
3Dマップ画像122には、L***の3次元座標系が表示されている。この3次元座標系上には、基準変換テーブルにおけるガマット領域130が重畳して配置されている。そして、ガマット領域130の下方部(a*−b*平面に近い領域)には、所定の色で塗り潰された着色領域132(本図では、ダブルハッチングが付された領域)が存在する。ここで、着色領域132は、基準変換テーブルでは色再現可能であり、且つ、比較変換テーブルでは色再現できない色領域を表している。
【0087】
3Dマップ画像124には、L***の3次元座標系が表示されている。この3次元座標系上には、基準変換テーブルにおけるガマット領域134が重畳して配置されている。そして、ガマット領域134の中央部(L*軸に近い領域)には、所定の色で塗り潰された着色領域136(本図では、シングルハッチングが付された領域)が存在する。ここで、着色領域136は、比較変換テーブルでのトーンカーブの連続性が十分でない色領域を表している。
【0088】
すなわち、着色領域132、136が存在しない(あるいは小さい)場合、比較対象の色変換条件下での色再現特性は、基準の色変換条件下での色再現特性と同等であると判断可能である。また、着色領域132、136が大きい場合、比較対象の色変換条件下での色再現特性は、基準の色変換条件下での色再現特性よりも劣っていると判断可能である。このように、作業者は、3Dマップ画像122、124を確認することで、色変更条件の変更に伴う印刷物28の色再現特性に与える影響の程度を一見して把握できる。
【0089】
なお、アイコン138(又はアイコン140)のクリック操作により、3Dマップ画像122、124を、L*軸を中心として左回り(又は右回り)に回転させること可能である。これにより、ガマット領域130、134の全方位から、着色領域132、136の存在を確認できる。
【0090】
ところで、図8例の表示方法では、ガマット全体での色再現特性の良し悪しを把握するために適しているが、実際に印刷される印刷物28自体の色再現特性を表したものではない。そこで、印刷しようとする画像(画像信号)との対応関係を容易に把握できるように構成してもよい。
【0091】
図9A〜図9Cは、図3の結果表示画像作成部64で作成された結果表示画像の第2例を表す画面図である。実際は、ウィンドウ150にカラー画像が表示されるものであるが、説明の便宜上、色彩を省略し輪郭のみを描画している。
【0092】
図9Aにおいて、ウィンドウ150の中央部には、基準変換テーブルを用いて色変換処理を行った場合でのプレビュー画像152が表示されている。その下方にはチェックボックス154、[閉じる]と表示されたボタン156がそれぞれ設けられている。ここで、作業者による[閉じる]ボタン156のクリック操作に応じて、ウィンドウ150は閉じられて非表示になる。
【0093】
例えば、第2入力部104、106(図3参照)を介して、変更パラメータの値を100%(インク削減量が最大)に設定したと仮定する。作業者は、チェックボックス154に対してクリック操作を行うと、図9Bに示すように、チェックボックス158にチェックマークが付加され、プレビュー画像152に代替して2Dマップ画像160が表示される。
【0094】
2Dマップ画像160において、着色領域132(図8参照)に属する色に対応する画素(単位領域)の値は、グレーに相当する色信号値(例えば、8ビット階調表示で、R=G=B=30)に置き換えられて表示される(ダブルハッチングで示した領域)。また、2Dマップ画像160において、着色領域136(同参照)に属する色に対応する画素の値は、青色に相当する値に相当する値(例えば、8ビット階調表示で、R=G=0、B=255)に置き換えられて表示されている。これにより、作業者は、実際に印刷される印刷物28を想定した上で、色再現特性の良し悪しを一見して把握できる。
【0095】
一方、第2入力部104、106(図3参照)を介して、変更パラメータの値を30%に設定したと仮定する。作業者は、チェックボックス154に対してクリック操作を行うと、図9Cに示すように、プレビュー画像152に代替して2Dマップ画像162が表示される。2Dマップ画像162にはグレーや青色に置換された画素が殆どないので、作業者は、基準変換テーブルに代えて比較変換テーブル(変更パラメータが30%)を使用しても、色再現特性に与える影響が少ないと判断できる。
【0096】
第2例の結果表示画像では、入力された画像信号の各画素に対応する色に関する評価結果を可視化して判別可能となるように各画素の信号値が決定(すなわち、着色)されている。これにより、作業者は、印刷物28を模擬した状態で色再現特性の良し悪しを容易に把握できるので、便宜である。
【0097】
次いで、表示制御部38は、UI部66から所定の入力指示を受け付けたか否かを判別する(ステップS9)。指示がない場合は、ステップS8に戻って、指示を受け付けるまで、ウィンドウ120、150の表示を継続する。
【0098】
一方、第2入力部104、106から変更パラメータの新たな入力指示があった場合、ステップS3に戻って、色変換装置12は、前回の変更パラメータと同一の又は異なる新たな変更パラメータを再度設定・入力する。以降、ステップS3〜S9を繰り返す。換言すれば、作業者は、インク22の総使用量を徐々に変更させ、3Dマップ画像122、124上で着色領域132、136の存在程度を確認しながら、この色再現特性での印刷が許容できるか否かを判断する。
【0099】
なお、作業者に代替して、色変換装置12が、予め決定された所定の判断基準に基づいて判断を行ってもよい。また、適切でないと判断した結果、表示部42にその旨の警告表示をしてもよい。
【0100】
最後に、作業者による[作成]ボタン114(図3参照)のクリック操作に応じて、インク量変更テーブルを決定する(ステップS10)。具体的には、確定された変更パラメータに対応する比較変更テーブルをメモリ34に記録する。あるいは、色変換装置12は、第1インターフェース30を介して、前記比較変更テーブルをデータベースサーバ18側に送信してもよい。
【0101】
このように、基準変換テーブルに基づいて基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測し、比較変換テーブルに基づいて比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測し、前記第1色再現特性を基準として前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価し、その評価結果を可視化するための3Dマップ画像122、124(2Dマップ画像160、162)を作成するようにしたので、色変換条件の変更に伴う印刷物28の色再現特性に与える影響の程度を、変更前の色変換条件と直接対比して把握できる。そして、比較評価による評価結果を可視化するための3Dマップ画像122、124(2Dマップ画像160、162)を作成することで、作業者は一見して把握できる。
【0102】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0103】
例えば、本実施の形態では色変換テーブルを用いて色変換処理を行っているが、処理形態は問わず、例えば、変換行列、変換式のみならず、ニューラルネットワーク等の学習モデルであってもよい。この場合、色変換条件に関する情報は、LUT(Look Up Table)、行列要素、関数式、係数、学習モデルを構築するための各種情報のいずれであってもよい。
【0104】
また、本実施の形態では主にCMYK(4つの色版)を中心に説明したが、これに限定されることなく、任意の色版の種類及び版数に設計変更できる。例えば、CMYKの標準インクと、LC、LM等の淡色やW(白色)等のオプションインクとを組み合わせてもよい。
【0105】
さらに、印刷装置14は、インクジェットプリンタに限られず、メディア上に色材を付着させてドットを形成する方式(例えば、電子写真方式)であれば、本発明を適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0106】
10…印刷システム 12…色変換装置
14…印刷装置 16…DTP装置
18…データベースサーバ 22…インク
32…制御部 34…メモリ
38…表示制御部 42…表示部
46…インク量変更テーブル作成部 48…データ取得部
50…色再現特性予測部 52…比較評価部
58…インク量変更処理部 60…基準変換テーブル取得部
62…比較変換テーブル取得部 64…結果表示画像作成部
100…設定画面 120、150…ウィンドウ
122、124…3Dマップ画像 130、134…ガマット領域
132、136…着色領域 160、162…2Dマップ画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号を、印刷に応じたデバイス色信号に変換する色変換条件を決定する色変換装置であって、
基準の色変換条件に関する基準条件情報を取得する基準条件情報取得部と、
前記基準の色変換条件と異なる比較対象の色変換条件に関する比較条件情報を少なくとも1つ取得する比較条件情報取得部と、
前記基準条件情報取得部により取得された前記基準条件情報に基づいて前記基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測するとともに、前記比較条件情報取得部により取得された前記比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測する色再現特性予測部と、
前記色再現特性予測部により予測された前記第1色再現特性を基準として、前記色再現予測部により予測された前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価する比較評価部と、
前記比較評価部による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成する表示画像作成部と
を有することを特徴とする色変換装置。
【請求項2】
請求項1記載の色変換装置において、
前記デバイス色信号は、複数の色材の使用量に対応付けられた信号であり、
前記複数の色材には無彩色材と複数の有彩色材とが含まれ、該複数の有彩色材を組み合せることで前記無彩色材を用いた前記印刷での色を再現可能である
ことを特徴とする色変換装置。
【請求項3】
請求項2記載の色変換装置において、
前記比較対象の色変換条件は、前記基準の色変換条件と比較して、所定の色範囲において前記複数の色材の総使用量が異なり、且つ、デバイス非依存色空間上において略等色を再現する色変換条件であることを特徴とする色変換装置。
【請求項4】
請求項3記載の色変換装置において、
前記比較対象の色変換条件は、前記基準の色変換条件と比較して、所定の色範囲において前記複数の色材の総使用量が少ない色変換条件であることを特徴とする色変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の色変換装置において、
前記所定の比較条件には、色差、トーンカーブの連続性及び滑らかさ並びにガマットの範囲のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする色変換装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の色変換装置において、
前記結果表示画像は、前記入力された画像信号の各画素に対応する色に関する前記評価結果を可視化して判別可能となるように、各前記画素の信号値が決定された画像であることを特徴とする色変換装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の色変換装置において、
前記表示画像作成部により作成された前記結果表示画像を表示する表示部をさらに有することを特徴とする色変換装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の色変換装置において、
前記基準の色変換条件及び少なくとも1つの前記比較対象の色変換条件の中から選択された色変換条件に基づいて、前記入力された画像信号を前記デバイス色信号に変換する色変換処理部をさらに有することを特徴とする色変換装置。
【請求項9】
入力された画像信号を、印刷に応じたデバイス色信号に変換する色変換条件を決定する色変換方法であって、
基準の色変換条件に関する基準条件情報を取得する第1取得ステップと、
前記基準の色変換条件と異なる比較対象の色変換条件に関する比較条件情報を少なくとも1つ取得する第2取得ステップと、
取得された前記基準条件情報に基づいて前記基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測するとともに、取得された前記比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測する予測ステップと、
予測された前記第1色再現特性を基準として、予測された前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価する比較評価ステップと、
前記比較評価ステップでの評価結果を可視化して結果表示画像を作成する作成ステップと
を備えることを特徴とする色変換方法。
【請求項10】
入力された画像信号を、印刷に応じたデバイス色信号に変換する色変換条件を決定するため、コンピュータを、
基準の色変換条件に関する基準条件情報を取得する基準条件情報取得部、
前記基準の色変換条件と異なる比較対象の色変換条件に関する比較条件情報を少なくとも1つ取得する比較条件情報取得部、
前記基準条件情報取得部により取得された前記基準条件情報に基づいて前記基準の色変換条件下での第1色再現特性を予測するとともに、前記比較条件情報取得部により取得された前記比較条件情報に基づいて前記比較対象の色変換条件下での第2色再現特性を予測する色再現特性予測部、
前記色再現特性予測部により予測された前記第1色再現特性を基準として、前記色再現予測部により予測された前記第2色再現特性を所定の比較条件に基づいて比較評価する比較評価部、
前記比較評価部による評価結果を可視化するための結果表示画像を作成する表示画像作成部
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−205166(P2012−205166A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69275(P2011−69275)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】