説明

荷役用油圧制御装置の制御方法

【課題】停止状態にある荷役用油圧シリンダが作動する際の動作を安定させることができる荷役用油圧制御装置の制御方法を提供する。
【解決手段】フォークリフトにおいて、リフトレバー22の操作角度θ1が0度のときは、CPU61はリフト用電磁弁32を閉状態とするとともにリフト用ポンプモータ31を駆動させない。また、リフトレバー22の操作角度θ1が不感帯にあるときは、CPU61はリフト用電磁弁32を閉状態とするとともに、リフト用ポンプモータ31をリフト用始動回転数で回転させる。さらに、リフトレバー22の操作角度θ1が不感帯を超えたときは、CPU61はリフト用電磁弁32を開状態とするとともに、リフト用ポンプモータ31を、リフト用始動回転数に対し操作角度θ1に比例して上昇する回転数を加えたリフト用操作回転数で回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役用操作レバーの操作によって荷役用油圧シリンダが作動する荷役用油圧制御装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バッテリフォークリフトの荷役用油圧制御装置において、荷役用油圧シリンダには、コントロールバルブが接続されている。コントロールバルブには、各油圧シリンダに対応するスプールが配設されている。また、コントロールバルブには、油圧ポンプから作動油が供給され、この油圧ポンプは荷役用ポンプモータにより駆動される。そして、荷役用油圧制御装置のコントローラは、各操作レバーの操作量に基づき、コントロールバルブの開度を制御するためのスプールを作動させ、油圧シリンダに供給する作動油の供給量と方向を制御する。
【0003】
また、油圧シリンダに供給する作動油の供給量を、油圧ポンプを駆動する荷役用ポンプモータの回転数で直接制御する方法もある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の荷役用油圧制御装置は、作動油の方向制御をコントロールバルブのスプールの移動により行う。また、作動油の流量の制御をコントローラが各操作レバーの操作量に基づいて、油圧ポンプを駆動する荷役用ポンプモータの回転数を変化させることで行なう。
【0004】
例えば、操作レバーが操作されると、ポテンショメータからその操作に基づく検出信号がコントローラに出力される。コントローラはポテンショメータからの検出信号に基づいて操作レバーの操作量及び操作方向を求める。そして、コントローラはその操作方向に基づいて、開度がほぼ全開状態となるようにスプールを移動させる。
【0005】
また、コントローラは操作レバーの操作量に対する荷役用ポンプモータの回転数を求める。そして、求めた回転数となるように、コントローラは荷役用ポンプモータに駆動制御信号を出力し、荷役用ポンプモータを駆動させる。すると、操作レバーの操作量に対応した作動油が油圧ポンプから吐出され、その作動油がコントロールバルブを介して油圧シリンダに供給される。その結果、油圧シリンダは操作レバーの操作に基づく速度で駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−115898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、油圧ポンプは油漏れが発生するため、油圧シリンダを停止させたとき油漏れによって油圧シリンダの位置が変化してしまう。この油漏れによる油圧シリンダの位置変化を防止するため、特許文献1のように作動油の供給量を荷役用ポンプモータの回転数で制御する荷役用油圧制御装置においては、油圧シリンダの停止時に、油圧シリンダへの作動油の供給流路をコントロールバルブのスプールで遮断しておく。しかし、特許文献1においては、操作レバーが操作されると、開度がほぼ全開状態となるようにスプールを移動させると同時に、荷役用ポンプモータを始動させる。このため、停止状態にある油圧シリンダが作動する際、静止摩擦トルクが原因で油圧ポンプの回転数が急上昇してしまい、油圧シリンダの動作が不安定になってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、停止状態にある荷役用油圧シリンダが作動する際の動作を安定させることができる荷役用油圧制御装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、荷役用操作レバーと、固定容量型の荷役用油圧ポンプと、該荷役用油圧ポンプを駆動させる可変速の荷役用ポンプモータと、前記荷役用油圧ポンプから供給される作動油により作動する荷役用油圧シリンダと、前記荷役用油圧シリンダと前記荷役用油圧ポンプとを接続する供給流路を開閉する開閉弁と、前記荷役用ポンプモータの駆動及び前記開閉弁の開閉を制御する制御部とを備え、前記荷役用操作レバーの操作角度が予め設定された不感帯にあるときは前記荷役用油圧シリンダが作動しないように構成された荷役用油圧制御装置の制御方法であって、前記荷役用操作レバーの操作角度が0度のときは、前記制御部は前記開閉弁を閉状態とするとともに前記荷役用ポンプモータを駆動させず、前記操作角度が0度ではなくかつ前記不感帯にあるときは、前記制御部は前記開閉弁を閉状態とするとともに、前記荷役用ポンプモータを、少なくとも前記荷役用油圧ポンプの油漏れ係数及び油粘度から決定される始動回転数で回転させ、前記操作角度が前記不感帯を超えたときは、前記制御部は前記開閉弁を開状態とし、それ以降に、前記荷役用ポンプモータを、前記始動回転数に対し、前記操作角度に比例して上昇する回転数を加えた操作回転数で回転させることを要旨とする。なお、「開閉弁を開状態」とするとは、開閉弁が全開状態にあることは当然のこと、開閉弁の開閉が連続的に行われて断続的に開状態になることも含むものとする。
【0010】
これによれば、荷役用油圧シリンダが停止状態にあるとき、荷役用操作レバーの操作角度が0度ではなくかつ不感帯にあるときでは、制御部は、始動回転数で荷役用ポンプモータが回転するように荷役用ポンプモータを駆動させる。このため、操作角度が不感帯にあり、荷役用油圧シリンダが停止状態にあるときでも、荷役用ポンプモータが駆動されるとともに荷役用油圧ポンプから作動油が吐出されている。よって、操作角度が不感帯を超え、開閉弁が開状態とされて、停止状態から荷役用油圧シリンダが作動する際には、すでに荷役用ポンプモータ(荷役用油圧ポンプ)が始動回転数で駆動されている。荷役用ポンプモータが始動回転数で駆動を開始するときには静止摩擦トルクを原因とした回転数変動が生じ得るが、不感帯においては開閉弁は閉状態であるから、この荷役用ポンプモータの回転数変動が荷役用油圧シリンダの動作に影響することはない。
【0011】
また、前記始動回転数は、荷役操作によって扱われる負荷荷重の大きさに比例して変更されるものでもよい。これによれば、固定容量型の荷役用油圧ポンプにおいては、負荷荷重の大きさに応じて油漏れ量が変動し、油漏れ量の変動に応じて荷役用油圧シリンダの移動速度も変動する。このため、荷役用操作レバーの操作角度が一定であっても、扱う負荷荷重毎に荷役用油圧シリンダの移動速度が変化してしまう。しかし、本発明では、負荷荷重の大きさに比例して始動回転数を変更するため、負荷荷重の大きさが変動しても、一定の荷役用操作レバーの操作角度に対しては荷役用油圧シリンダの移動速度を常に一定にすることができる。
【0012】
また、前記荷役用油圧制御装置はフォークリフトに適用され、前記荷役用油圧シリンダは前記フォークリフトのリフトシリンダであってもよい。これによれば、リフトシリンダを駆動させるには、ティルトシリンダを駆動させるのに比べて容量の大きい荷役用油圧ポンプが使用される。このため、リフトシリンダ用の荷役用油圧ポンプは、ティルトシリンダ用の荷役用油圧ポンプに比べて油漏れ量が多く、静止摩擦トルクの影響が顕著になる。よって、本発明の制御方法を適用することにより、油漏れの多い荷役用油圧ポンプで駆動されるリフトシリンダであっても、静止摩擦トルクに影響されることなく動作を安定させることができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記操作角度が前記不感帯を越えると前記開閉弁を全開させて前記開状態とさせると同時に、前記荷役用ポンプモータを前記操作回転数で回転させるようにしてもよい。
【0014】
これによれば、荷役用操作レバーの操作角度が不感帯を越えると同時に、全開の開閉弁を介して作動油が荷役用油圧シリンダに供給されるため、不感帯を越えると同時に荷役用油圧シリンダを速やかに動作させることができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記操作角度が前記不感帯を越えてから予め設定された微少操作帯にあるときは、前記荷役用ポンプモータを前記始動回転数で回転させるとともに、前記開閉弁の開閉を連続的に行わせて断続的に前記開状態とするようにしてもよい。
【0016】
これによれば、操作角度が微少操作帯にあり、荷役用ポンプモータが操作回転数より回転数の低い始動回転数にあるとき、開閉弁を断続的に開状態とすることにより、荷役用油圧シリンダには流量が制御された作動油が供給される。よって、荷役用操作レバーの操作角度が微少なときであっても、荷役用油圧シリンダを安定して動作させることができる。
【0017】
また、前記制御部は、前記操作角度が前記微少操作帯を越えると前記開閉弁を全開させて前記開状態とさせると同時に、前記荷役用ポンプモータを前記操作回転数で回転させるようにしてもよい。
【0018】
これによれば、操作角度が微少操作帯を越えると、荷役用ポンプモータは始動回転数より回転数の高い操作回転数で回転される。そして、荷役用ポンプモータが始動回転数のような低回転で回転する必要がなくなれば、流量を制御する必要がなくなるため、開閉弁を全開させることで、操作角度に応じた移動速度で荷役用油圧シリンダを動作させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、停止状態にある荷役用油圧シリンダが作動する際の動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は第1の実施形態の荷役用油圧制御装置の油圧的及び電気的構成を示す回路図、(b)は各レバーの操作角度を模式的に示す図。
【図2】フォークリフトの側面図。
【図3】第2の実施形態における各レバーの操作角度を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図2にしたがって説明する。
図2に示すように、フォークリフト11の車体フレーム12にはその前部にマスト13が設けられている。マスト13は車体フレーム12に対して傾動可能に支持された左右一対のアウタマスト13aと、その内側に昇降可能に装備されたインナマスト13bとからなる。両アウタマスト13aの後側には荷役用油圧シリンダとしてのリフトシリンダ14がアウタマスト13aと平行に固定され、そのピストンロッド14aの先端がインナマスト13bの上部に連結されている。
【0022】
インナマスト13bの内側にはリフトブラケット15がインナマスト13bに沿って昇降可能に装備され、リフトブラケット15にはフォーク16が取着されている。インナマスト13bの上部にはチェーンホイール17が支承され、チェーンホイール17には第1端部がリフトシリンダ14の上部に、第2端部がリフトブラケット15にそれぞれ連結されたチェーン18が掛装されている。そして、リフトシリンダ14の伸縮によりチェーン18を介してフォーク16がリフトブラケット15とともに昇降動される。
【0023】
車体フレーム12の左右両側には荷役用油圧シリンダとしてのティルトシリンダ19の基端が回動可能に支持され、そのピストンロッド19aの先端がアウタマスト13aの上下方向ほぼ中央部に回動可能に連結されている。そして、ティルトシリンダ19の伸縮によりアウタマスト13aが傾動される。
【0024】
運転室20の前部にはステアリング21、荷役用操作レバーとしてのリフトレバー22及びティルトレバー23がそれぞれ設けられている。図2においては両レバー22,23が重なった状態で示されている。リフトレバー22の操作によりリフトシリンダ14が伸縮されるとともにフォーク16が昇降するようになっている。また、ティルトレバー23の操作によりティルトシリンダ19が伸縮されるとともに、アウタマスト13aが傾動するようになっている。
【0025】
なお、リフトレバー22においては、リフトレバー22が操作されてもリフトシリンダ14が作動しない(伸縮しない)領域(不感帯)が存在する。また、ティルトレバー23においても、ティルトレバー23が操作されてもティルトシリンダ19が作動しない(伸縮しない)領域(不感帯)が存在する。そして、図1に示すように、リフトレバー22が不感帯にあるときとは、リフトシリンダ14を伸長させるため(フォーク16を上昇させるため)にボトム室14bに作動油が供給される方向では、リフトレバー22の操作角度θ1が0度を越えてα度までの範囲内(0<θ1≦α)にあるときのことである。また、リフトレバー22が不感帯にあるときとは、リフトシリンダ14を収縮させる(フォーク16を下降させる)方向では、リフトレバー22の操作角度θ1が0度を越えて−α度までの範囲内(−α≦θ1<0)にあるときのことである。
【0026】
一方、ティルトレバー23が不感帯にあるときとは、ティルトシリンダ19のボトム室19b側に作動油を供給する(アウタマスト13aを前傾させる)方向では、ティルトレバー23の操作角度θ2が0度を越えてβ度までの範囲内(0<θ2≦β)にあるときのことである。また、ティルトレバー23が不感帯にあるときとは、ティルトシリンダ19のロッド室19c側に作動油を供給する(アウタマスト13aを後傾させる)方向では、ティルトレバー23の操作角度θ2が0度を超えて−β度までの範囲内(−β≦θ2<0)にあるときのことである。
【0027】
次に、荷役用油圧制御装置について説明する。まず、リフトシリンダ14及びティルトシリンダ19を駆動するための荷役用油圧制御装置の油圧回路を図1に従って説明する。リフトシリンダ14にリフト用オイルタンクLT内の作動油を供給する荷役用油圧ポンプとしてのリフト用油圧ポンプ30は、図示しないバッテリを電源とする荷役用ポンプモータとしてのリフト用ポンプモータ31により駆動される。このリフト用油圧ポンプ30は、固定容量型の油圧ポンプであり、リフト用ポンプモータ31は、入力される指令信号(供給される電力量)に応じて回転数を変更可能な可変速のポンプモータである。
【0028】
リフト用油圧ポンプ30は管路30aを介して開閉弁としてのリフト用電磁弁32に接続され、リフト用電磁弁32は管路30bを介してリフトシリンダ14のボトム室14bに接続されている。また、ボトム室14bは、管路30aから分岐した分岐管路30dを介して第1タンクT1に接続され、この分岐管路30dにはリリーフ弁34が設けられるとともに、リリーフ弁34より上流側には分岐管路30dを開閉する電磁弁35が設けられている。また、分岐管路30dにおいて、電磁弁35より上流側には、逆止弁36を介してサブタンクT5が接続されている。逆止弁36は、サブタンクT5から分岐管路30dへの作動油の流出を許容する一方で、分岐管路30dからの作動油の流入を阻止する。また、リフトシリンダ14のロッド室14cは、管路30cを介して第2タンクT2に接続されている。
【0029】
そして、管路30a,30bにより、リフト用油圧ポンプ30とリフトシリンダ14を接続する供給流路が形成されるとともに、この供給流路(管路30b)上に開閉弁としてのリフト用電磁弁32が設けられている。また、管路30bには第1圧力センサ33が設けられ、この第1圧力センサ33は管路30b(ボトム室14b)の圧力を検出する。管路30bの圧力は、リフト用油圧ポンプ30が駆動されること、すなわちフォーク16によって荷(負荷)が扱われることによって変化し、管路30bの圧力は荷の重さ(負荷荷重)によって変動する。
【0030】
リフト用電磁弁32が開状態に切り換えられるとともに電磁弁35が閉状態に切り換えられた状態で、リフト用ポンプモータ31が回転されるとリフト用油圧ポンプ30によりボトム室14bに作動油が供給される。そして、ロッド室14cから第2タンクT2に作動油が排出されると、リフトシリンダ14が伸長される。また、リフト用電磁弁32が開状態に切り換えられるとともに電磁弁35が開状態に切り換えられた状態で、リフト用ポンプモータ31がリフトシリンダ14の伸長時とは逆方向へ回転されると、リフト用油圧ポンプ30によりボトム室14bからリフト用オイルタンクLTへ作動油が排出されると同時に、リフトシリンダ14が収縮される。また、リフト用電磁弁32が閉状態に切り換えられた状態では、リフトシリンダ14内の作動油の流量の変動が防止され、リフトシリンダ14が収縮することなく停止位置が保持されるようになっている。
【0031】
次に、ティルトシリンダ19側について説明する。ティルトシリンダ19のボトム室19b又はロッド室19cにティルト用オイルタンクTT内の作動油を供給する荷役用油圧ポンプとしてのティルト用油圧ポンプ40は、図示しないバッテリを電源とする荷役用ポンプモータとしてのティルト用ポンプモータ41により駆動される。ティルト用油圧ポンプ40は、固定容量型の油圧ポンプであり、ティルト用ポンプモータ41は、入力される指令信号(供給される電力量)に応じて回転数を変更可能な可変速のポンプモータである。
【0032】
ティルト用油圧ポンプ40は管路40aを介して開閉弁としての第1ティルト用電磁弁42に接続され、第1ティルト用電磁弁42は管路40bを介してティルトシリンダ19のボトム室19bに接続されている。また、ボトム室19bは、管路40aから分岐した分岐管路40dを介して第3タンクT3に接続され、この分岐管路40dにはリリーフ弁43が設けられている。
【0033】
そして、ボトム室19b側において、管路40a,40bにより、ティルト用油圧ポンプ40とティルトシリンダ19を接続する供給流路が形成されるとともに、供給流路(管路40b)上に第1ティルト用電磁弁42が設けられている。また、管路40bには第2圧力センサ45が設けられ、この第2圧力センサ45は管路40b(ボトム室19b)の圧力を検出する。管路40bの圧力は、ティルト用油圧ポンプ40が駆動されること、すなわち、アウタマスト13aが傾動してフォーク16によって荷(負荷)が扱われることによって変化し、管路40bの圧力は荷の重さ(負荷荷重)によって変動する。
【0034】
また、ティルト用油圧ポンプ40は管路50aを介して開閉弁としての第2ティルト用電磁弁52に接続され、第2ティルト用電磁弁52は管路50bを介してティルトシリンダ19のロッド室19cに接続されている。また、ロッド室19cは、管路50aから分岐した分岐管路50dを介して第4タンクT4に接続され、この分岐管路50dにはリリーフ弁53が設けられている。
【0035】
そして、ロッド室19c側において、管路50a,50bにより、ティルト用油圧ポンプ40とティルトシリンダ19を接続する供給流路が形成されるとともに、供給流路(管路50b)上に第2ティルト用電磁弁52が設けられている。また、管路50bには第3圧力センサ55が設けられ、この第3圧力センサ55は管路50bの圧力(ロッド室19c)を検出する。管路50bの圧力は、ティルト用油圧ポンプ40が駆動されること、すなわち、アウタマスト13aが傾動してフォーク16によって荷(負荷)が扱われることによって変化し、管路50bの圧力は荷の重さ(負荷荷重)によって変動する。また、ティルト用オイルタンクTTと管路40a,50aとの間には周知の低圧優先型シャトル弁44が設けられており、ティルト用油圧ポンプ40から供給される作動油がティルトシリンダ19に向かわずにティルト用オイルタンクTTに直接戻ることが防止されている。
【0036】
そして、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52が開状態に切り換えられた状態において、ティルト用ポンプモータ41が回転されるとティルト用油圧ポンプ40によりティルト用オイルタンクTTから低圧優先型シャトル弁44を介してボトム室19bに作動油が供給される。同時に、ティルト用ポンプモータ41の回転によりロッド室19cからリリーフ弁53を介して第4タンクT4に作動油が排出される。すると、ティルトシリンダ19が伸長される。
【0037】
また、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52が開状態に切り換えられた状態において、ティルト用ポンプモータ41がティルトシリンダ19の伸長時とは逆方向へ回転されるとティルト用油圧ポンプ40によりティルト用オイルタンクTTから低圧優先型シャトル弁44を介してロッド室19cに作動油が供給される。同時に、ティルト用ポンプモータ41の回転によりボトム室19bからリリーフ弁43を介して第3タンクT3に作動油が排出される。すると、ティルトシリンダ19が収縮される。また、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52が閉状態に切り換えられた状態では、ティルトシリンダ19内の作動油の流量の変動が防止され、ティルトシリンダ19が収縮することなく停止位置が保持されるようになっている。
【0038】
次に、上記油圧回路を駆動するための荷役用油圧制御装置の電気的構成について説明する。図1に示すように、リフト用ポンプモータ31とティルト用ポンプモータ41の駆動、及びリフト用電磁弁32と第1ティルト用電磁弁42と第2ティルト用電磁弁52と電磁弁35の開閉を制御する制御部としての制御装置60は中央処理装置(以下、CPUという)61と、メモリ62とを備えている。CPU61はメモリ62に記憶された所定のプログラムデータに従って各種の処理を実行するようになっている。また、メモリ62にはCPU61の各種演算結果が一時記憶される。さらに、メモリ62にはCPU61が実行するプログラムデータと、その実行に必要な各種データとが記憶されている。
【0039】
CPU61は、プログラムデータ及び各種データに基づいて、リフトレバー22の操作角度θ1が不感帯(−α≦θ1<0、0<θ1≦α)にあるときのリフト用ポンプモータ31の回転数であるリフト用始動回転数Ns1を演算する。リフト用始動回転数Ns1は、第1圧力センサ33から得られる圧力値Pと、リフト用ポンプモータ31の油漏れ係数及び作動油の油粘度から決定される定数A1とから以下の式(1)を用いて演算して求められる。なお、圧力値Pは、第1圧力センサ33から得られる圧力値から大気圧たるリフト用オイルタンクLTのタンク圧を引いた相対圧の値である。
【0040】
Ns1=A1×P…式(1)
このリフト用始動回転数Ns1は、リフト用油圧ポンプ30が駆動されるのに伴い加圧状態となりリフト用油圧ポンプ30から油漏れが発生しても、その漏れた分だけの作動油をリフト用油圧ポンプ30に吐出させて油漏れを相殺するための、リフト用油圧ポンプ30の回転数である。
【0041】
また、CPU61は、プログラムデータ及び各種データに基づいて、リフトレバー22の操作角度θ1が不感帯を超えたときのリフト用ポンプモータ31の回転数であるリフト用操作回転数Nd1を演算する。リフト用操作回転数Nd1は、リフト用始動回転数Ns1と、リフトレバー22の操作角度θ1と、不感帯の値α、リフト用油圧ポンプ30の特性値B1とから以下の式(2)を用いて演算して求められる。なお、特性値B1は、リフト用油圧ポンプ30の吐出容積と、リフトレバー22の最大操作角度、シリンダ面積等によって一義的に決定されるリフト用油圧ポンプ30固有の定数である。
【0042】
Nd1=B1(θ1−α)+Ns1…式(2)
このリフト用操作回転数Nd1は、リフト用始動回転数Ns1に対し、不感帯からのリフトレバー22の操作角度θ1の増加に応じた回転数を加えたものである。そして、リフトレバー22の操作角度θ1の増加に応じた回転数は、リフトレバー22の操作角度θ1の増加に比例して上昇する。
【0043】
さらに、CPU61は、プログラムデータ及び各種データに基づいて、ティルトレバー23の操作角度θ2が不感帯(−β≦θ2<0、0<θ2≦β)にあるときのティルト用ポンプモータ41の回転数であるティルト用始動回転数Ns2を演算する。ティルト用始動回転数Ns2は、第2圧力センサ45及び第3圧力センサ55から得られる圧力値P1,P2と、ティルト用ポンプモータ41の油漏れ係数、及び作動油の油粘度から決定される定数A2とから以下の式(3)を用いて演算して求められる。
【0044】
Ns2=A2×(P1−P2)…式(3)
このティルト用始動回転数Ns2は、ティルト用油圧ポンプ40が駆動されるのに伴い加圧状態となりティルト用油圧ポンプ40から油漏れが発生しても、その漏れた分だけの作動油をティルト用油圧ポンプ40に吐出させて油漏れを相殺するための、ティルト用油圧ポンプ40の回転数である。
【0045】
さらに、CPU61は、プログラムデータ及び各種データに基づいて、ティルトレバー23の操作角度θ2が不感帯を超えたときのティルト用ポンプモータ41の回転数であるティルト用操作回転数Nd2を演算する。ティルト用操作回転数Nd2は、ボトム室19bに作動油を供給する場合は、上述のティルト用始動回転数Ns2と、ティルトレバー23の操作角度θ2と、不感帯の値βと、ティルト用油圧ポンプ40の特性値B2とから以下の式(4)を用いて演算して求められる。なお、特性値B2は、ティルト用油圧ポンプ40の吐出容積と、ティルトレバー23の最大操作角度、シリンダ面積等によって一義的に決定されるティルト用油圧ポンプ40固有の定数である。
【0046】
Nd2=B2(θ2−β)+Ns2…式(4)
また、CPU61は、プログラムデータ及び各種データに基づいて、ティルトレバー23の操作角度θ2が不感帯を超えたときのティルト用ポンプモータ41の回転数であるティルト用操作回転数Nd2を演算する。ティルト用操作回転数Nd2は、ロッド室19cに作動油を供給する場合は、上述のティルト用始動回転数Ns2と、ティルトレバー23の操作角度θ2と、不感帯の値βと、ティルト用油圧ポンプ40の特性値B2と、ピストンロッド19aのロッド径Cとから以下の式(5)によって求められる。
【0047】
Nd2=(B2−C)×(θ2−β)+Ns2…式(5)
このティルト用操作回転数Nd2は、ティルト用始動回転数Ns2に対し、不感帯からのティルトレバー23の操作角度θ2の増加に応じた回転数を加えたものである。そして、ティルトレバー23の操作角度θ2の増加に応じた回転数は、ティルトレバー23の操作角度θ2の増加に比例して上昇する。
【0048】
図1に示すように、リフトレバー22の近傍には、リフトレバー22の操作角度θ1を検出するポテンショメータ22aが設けられている。また、ティルトレバー23の近傍には、ティルトレバー23の操作角度θ2を検出するポテンショメータ23aが設けられている。そして、CPU61は図示しない入力インタフェースを介してポテンショメータ22a,23aに接続されている。さらに、CPU61は、リフト用電磁弁32、第1ティルト用電磁弁42、第2ティルト用電磁弁52、及び電磁弁35に接続されている。また、CPU61は第1圧力センサ33、第2圧力センサ45、及び第3圧力センサ55に入力インタフェースを介して接続されている。CPU61は図示しない出力インタフェースを介してインバータ29に接続され、インバータ29を介してリフト用ポンプモータ31及びティルト用ポンプモータ41の駆動を制御するようになっている。
【0049】
次に、荷役用油圧制御装置の制御方法について説明する。まず、リフトシリンダ14の制御方法について説明する。
さて、リフトシリンダ14の停止時、リフトレバー22の操作角度θ1が0度のとき、CPU61は、リフト用電磁弁32及び電磁弁35を閉状態とするとともにリフト用ポンプモータ31を駆動させず、リフト用油圧ポンプ30を停止させる。
【0050】
そして、CPU61は、ポテンショメータ22aからの信号に基づき、リフトレバー22が操作されていると判断すると、ポテンショメータ22aの信号に基づいてリフトレバー22の操作角度θ1を検出する。そして、CPU61は、リフトレバー22の操作角度θ1が不感帯(−α≦θ1<0、0<θ1≦α)にあると判断すると、定数A1と第1圧力センサ33からの圧力値Pに基づき式(1)からリフト用始動回転数Ns1を演算する。
【0051】
次に、CPU61は、求められたリフト用始動回転数Ns1に対応した指令信号をインバータ29に出力する。このとき、CPU61は、リフト用電磁弁32に指令信号を出力せず、リフト用電磁弁32は閉状態のままである。また、CPU61は、電磁弁35に指令信号を出力し、電磁弁35を開状態とする。そして、リフト用ポンプモータ31がリフト用始動回転数Ns1で回転するとともに、リフト用油圧ポンプ30がリフト用始動回転数Ns1で駆動される。すると、リフト用電磁弁32は閉状態にあるため、リフトシリンダ14に作動油は供給されず、リフトシリンダ14内の作動油の流量は変動しない。また、リフト用油圧ポンプ30においては、その駆動に伴い油漏れが発生するが、その油漏れを相殺できる量の作動油がリフト用油圧ポンプ30から吐出される。
【0052】
リフト用油圧ポンプ30から吐出された作動油は、電磁弁35及びリリーフ弁34を介して第1タンクT1へ排出される。なお、このとき、逆止弁36によって作動油がサブタンクT5に流入することが防止される。そして、操作角度θ1が不感帯にある場合は、リフトシリンダ14内の作動油の流量は変動せず、リフトシリンダ14が停止位置に保持される。
【0053】
その後、リフトレバー22がさらに操作されると、CPU61は、ポテンショメータ22aからの信号に基づき、リフトレバー22の操作角度θ1を検出する。そして、CPU61は、リフトレバー22の操作角度θ1が不感帯を超えた(θ1<−α、α<θ1)と判断すると、定数B1と操作角度θ1に基づき式(2)からリフト用操作回転数Nd1を演算する。
【0054】
CPU61は、リフト用操作回転数Nd1に対応した指令信号をインバータ29に出力する。また、CPU61は、リフト用電磁弁32に指令信号を出力し、リフト用電磁弁32を開状態(全開状態)とするとともに、電磁弁35を閉状態とする。すなわち、CPU61は、操作角度θ1が不感帯を越えるとリフト用電磁弁32を全開させて開状態とさせると同時に、リフト用ポンプモータ31をリフト用操作回転数Nd1で回転させる。すると、リフト用ポンプモータ31がリフト用始動回転数Ns1から操作角度θ1の増加に応じた回転数を加えたリフト用操作回転数Nd1で回転する。
【0055】
ここで、リフトシリンダ14を伸長させる場合、CPU61は、ボトム室14bに作動油が供給される方向へリフト用ポンプモータ31を回転させてリフト用油圧ポンプ30を駆動させる。すると、ボトム室14bに作動油が供給され、フォーク16が上昇する。一方、リフトシリンダ14を収縮させる場合、CPU61は、ロッド室14cから作動油が排出される方向(リフトシリンダ14を伸長させる場合と逆方向)へリフト用ポンプモータ31を回転させてリフト用油圧ポンプ30を駆動させる。すると、フォーク16が下降するとともに、リフト用ポンプモータ31によって発電され、発電した電力はインバータ29に蓄電される。また、リフトシリンダ14を収縮させるとき、リフト用油圧ポンプ30の逆回転に伴いサブタンクT5から作動油が吸い上げられて分岐管路30dへ作動油が供給され、ボトム室14bが負圧になることが防止される。
【0056】
次に、ティルトシリンダ19の制御方法について説明する。ティルトシリンダ19の停止時、ティルトレバー23の操作角度θ2が0度のとき、CPU61は、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52を閉状態とするとともにティルト用ポンプモータ41を駆動させず、ティルト用油圧ポンプ40を停止させる。
【0057】
CPU61は、ポテンショメータ23aからの信号に基づき、ティルトレバー23が操作されていると判断すると、ポテンショメータ23aの信号に基づいてティルトレバー23の操作角度θ2を検出する。そして、CPU61は、ティルトレバー23の操作角度θ2が不感帯(−β≦θ2<0、0<θ2≦β)にあると判断すると、定数A2と第2圧力センサ45及び第3圧力センサ55からの圧力値P1,P2に基づき式(3)からティルト用始動回転数Ns2を演算する。
【0058】
次に、CPU61は、ティルト用始動回転数Ns2に対応した指令信号をインバータ29に出力する。また、CPU61は、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52に指令信号を出力せず、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52は閉状態のままである。そして、ティルト用ポンプモータ41がティルト用始動回転数Ns2で回転するとともに、ティルト用油圧ポンプ40がティルト用始動回転数Ns2で駆動される。すると、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52は閉状態にあるため、ティルトシリンダ19に作動油は供給されず、ティルトシリンダ19内の作動油の流量は変動しない。また、ティルト用油圧ポンプ40においては、その駆動に伴い油漏れが発生するが、その油漏れを相殺できる量の作動油がティルト用油圧ポンプ40から吐出される。
【0059】
ティルト用油圧ポンプ40から吐出された作動油は、リリーフ弁43,53を介して第3タンクT3又は第4タンクT4に排出される。よって、操作角度θ2が不感帯にある場合は、ティルトシリンダ19内の作動油の流量は変動せず、ティルトシリンダ19が停止位置に保持される。
【0060】
その後、ティルトレバー23がさらに操作されると、CPU61は、ポテンショメータ23aからの信号に基づき、ティルトレバー23の操作角度θ2を検出する。そして、CPU61は、ティルトレバー23の操作角度θ2がアウタマスト13aを前傾させる側の不感帯を超えた(β<θ2)と判断すると、CPU61は、アウタマスト13aを前傾させるべくボトム室19bに作動油を供給するため、定数B2と操作角度θ2に基づき式(4)からティルト用操作回転数Nd2を演算する。
【0061】
CPU61は、ティルト用操作回転数Nd2に対応した指令信号をインバータ29に出力する。また、CPU61は、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52に指令信号を出力し、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52を開状態(全開状態)とする。すなわち、CPU61は、操作角度θ2が不感帯を越えると、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52を全開させて開状態とさせると同時に、ティルト用ポンプモータ41をティルト用操作回転数Nd2で回転させる。すると、ティルト用ポンプモータ41がティルト用始動回転数Ns2から操作角度θ2の増加に応じた回転数を加えたティルト用操作回転数Nd2で回転するとともに、ティルト用油圧ポンプ40が駆動される。その結果、ティルトシリンダ19が伸長し、アウタマスト13aが前傾する。
【0062】
一方、CPU61は、ティルトレバー23の操作角度θ2がアウタマスト13aを後傾させる側の不感帯を超えた(θ2<−β)と判断すると、アウタマスト13aを後傾させるべくロッド室19cに作動油を供給するため、定数B2,Cと操作角度θ2に基づき式(5)からティルト用操作回転数Nd2を演算する。
【0063】
そして、CPU61は、ティルト用操作回転数Nd2に対応した指令信号をインバータ29に出力する。また、CPU61は、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52に指令信号を出力し、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52を開状態(全開状態)とする。すなわち、CPU61は、操作角度θ2が不感帯を越えると、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52を全開させて開状態とさせると同時に、ティルト用ポンプモータ41をティルト用操作回転数Nd2で回転させる。すると、ティルト用ポンプモータ41がティルト用始動回転数Ns2から操作角度θ2の増加に応じた回転数を加えたティルト用操作回転数Nd2で回転するとともに、ティルト用油圧ポンプ40が駆動される。その結果、ティルトシリンダ19が収縮し、アウタマスト13aが後傾する。
【0064】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)各レバー22,23の操作角度θ1,θ2が不感帯にあるとき、CPU61は、油漏れ係数、油粘度、及び圧力値に応じて決定される各始動回転数Ns1,Ns2で各ポンプモータ31,41を回転させる。そして、操作角度θ1,θ2が不感帯を超えると、CPU61は、各ポンプモータ31,41の回転数を、各始動回転数Ns1,Ns2に対し、操作角度θ1,θ2の増加に応じた回転数を加えた各操作回転数Nd1,Nd2で回転させる。このため、各操作角度θ1,θ2が不感帯にあり、各シリンダ14,19が停止状態にあるときでも、各ポンプモータ31,41が駆動されるとともに各油圧ポンプ30,40から作動油が吐出されている。よって、操作角度θ1,θ2が不感帯を超え、各電磁弁32,42,52が開状態(全開状態)とされて各シリンダ14,19が停止状態から作動する際には、すでに各ポンプモータ31,41が各始動回転数Ns1,Ns2で駆動されている。各ポンプモータ31,41が各始動回転数Ns1,Ns2で駆動を開始するときには静止摩擦トルクを原因とした回転数変動が生じ得る。しかし、不感帯においては各電磁弁32,42,52は閉状態であるから、各ポンプモータ31,41の回転数変動が各シリンダ14,19の動作に影響することはない。したがって、各シリンダ14,19が停止状態から作動する際、静止摩擦トルクを原因とした各ポンプモータ31,41の回転数の急上昇が各シリンダ14,19の動作に影響することを防止することができ、停止状態にある各シリンダ14,19が作動する際の動作を安定させることができる。
【0065】
(2)各始動回転数Ns1,Ns2は、各油圧ポンプ30,40の駆動時に、各油圧ポンプ30,40からの油漏れを相殺できる量の作動油を吐出可能とする回転数である。よって、各シリンダ14,19が停止状態から作動するため各電磁弁32,42,52が開状態(全開状態)とされたとき、各シリンダ14,19は各油圧ポンプ30,40からの油漏れの影響を受けず、停止位置から変動することなく操作角度θ1,θ2に応じて伸縮させることができる。
【0066】
(3)各シリンダ14,19の停止時、CPU61は、各レバー22,23の操作角度θ1,θ2が0度のときは各電磁弁32,42,52を閉状態として各シリンダ14,19内の作動油の流量の変動を防止して各シリンダ14,19が停止位置から変動することを防止する。よって、各シリンダ14,19の停止位置を保持するために各ポンプモータ31,41を低速回転させて作動油を各シリンダ14,19に供給し続ける場合と異なり、エネルギーロスを無くし、さらには、各ポンプモータ31,41を低速回転させたときの軸受けの損傷等を無くすことができる。
【0067】
(4)操作角度θ1,θ2が0度のときは各電磁弁32,42,52を閉状態としつつ、各ポンプモータ31,41を停止させて各シリンダ14,19内の作動油の流量の変動を防止して各シリンダ14,19が停止位置から変動することを防止する。そして、操作角度θ1,θ2が不感帯にあるときに各始動回転数Ns1,Ns2で各ポンプモータ31,41を回転させながら、各シリンダ14,19を停止位置に保持させる。このため、各シリンダ14,19の停止位置保持のために、各レバー22,23の操作角度θ1,θ2が0度のときから各ポンプモータ31,41を常に低速回転させて作動油を供給し続ける場合と比較して、各ポンプモータ31,41が低速回転する時間を少なくすることができ、エネルギーロスを少なくすることができる。
【0068】
(5)一般に、荷役用油圧ポンプにおいては、負荷荷重に応じて油漏れ量が変動するため、油漏れ量の変動に応じて荷役用油圧シリンダの移動速度が変動する。このため、各荷役用操作レバーの操作角度が一定であっても、扱う負荷荷重毎に荷役用油圧シリンダの移動速度が変化してしまう。しかし、本発明では、負荷荷重の大きさに比例して各始動回転数Ns1,Ns2を変更するため、負荷荷重の大きさが変動しても、一定の各レバー22,23の操作角度θ1,θ2に対しては各シリンダ14,19の移動速度を常に一定にすることができる。
【0069】
(6)CPU61により、各ポンプモータ31,41の回転数を制御することで、静止摩擦トルクを原因とした各ポンプモータ31,41の回転数の急上昇が各シリンダ14,19の動作に影響を与えることを防止することができる。したがって、静止摩擦トルクを原因とした各ポンプモータ31,41の回転数の急上昇が各シリンダ14,19の動作に影響を与えるのを防止するために、固定容量型ポンプに比べて静止摩擦トルクの影響がほとんど無い可変容量型のポンプを用いる場合と比較して、荷役油圧制御装置の製造コストを抑えることができる。
【0070】
(7)各シリンダ14,19の停止時、CPU61は、各レバー22,23の操作角度θ1,θ2が0度のときは各電磁弁32,42,52を閉状態とする結果、各シリンダ14,19が変動することを防止して停止位置が保持される。このため、例えば、停止位置を保持するためにサーボ弁やスプール弁を併用する場合と比較して油圧回路の構成を簡素化することができる。
【0071】
(8)リフト用油圧ポンプ30は、リフトシリンダ14によるフォーク16の精密な位置決めを可能とするために、ティルト用油圧ポンプ40より大容量のポンプが使用される。このため、リフト用油圧ポンプ30は油漏れ量が多く、静止摩擦トルクの影響が顕著である。本発明は、静止摩擦トルクを原因としたポンプモータの回転数変動が各シリンダ14,19の動作に影響するのを防止することができるため、本発明をリフト用油圧ポンプ30に適用するのがより好ましい。
【0072】
(9)各始動回転数Ns1,Ns2は、油漏れ係数と油粘度に加え、油圧回路内の圧力値P,P1,P2に基づいて決定され、圧力値P,P1,P2に比例して変動する。よって、負荷荷重の大きさが変われば圧力値P,P1,P2も変わるため、負荷荷重の大きさに応じて各始動回転数Ns1,Ns2を変更することができ、負荷荷重の大きさに関わらず各シリンダ14,19の動作を安定させることができるとともに、スムーズな操作感覚を得ることができる。
【0073】
(10)CPU61は、操作角度θ1,θ2が不感帯を越えると同時に各電磁弁32,42,52を全開させて開状態とさせる。このため、各レバー22,23の操作角度θ1,θ2が不感帯を越えると同時に、全開の各電磁弁32,42,52を介して各シリンダ14,19に作動油が供給されることとなるため、各シリンダ14,19を速やかに動作させることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図1及び図3にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0075】
図3に示すように、リフトレバー22において、不感帯を、リフトシリンダ14を伸長させる方向では、操作角度θ3が0度を越えてE度までの範囲内(0<θ3≦E)にあるときのこととし、リフトシリンダ14を収縮させる方向では、操作角度θ3が0度を超えて−E度までの範囲内(−E≦θ3<0)にあるときのこととする。また、リフトレバー22においては、不感帯を越えつつも、不感帯からのリフトレバー22の操作量が僅かであり、リフト用ポンプモータ31が低速回転領域で駆動される領域(微少操作帯)が存在する。本実施形態では、微少操作帯を、リフトシリンダ14を伸長させる方向では、操作角度θ3がE度を越えてからF度に至るまでの範囲内にあるときのこととし、リフトシリンダ14を収縮させる方向では、操作角度θ3が−E度を越えてから−F度に至るまでの範囲内にあるときのこととする。
【0076】
一方、ティルトレバー23において、不感帯を、ティルトシリンダ19を伸長させる方向では、操作角度θ4が0度を越えてからG度までの範囲内(0<θ4≦G)にあるときのこととし、ティルトシリンダ19を収縮させる方向では、操作角度θ4が0度を越えてから−G度までの範囲内(−G≦θ4<0)にあるときのこととする。また、ティルトレバー23においては、不感帯を越えつつも、不感帯からのティルトレバー23の操作量が僅かであり、ティルト用ポンプモータ41が低速回転領域で駆動される領域(微少操作帯)が存在する。本実施形態では、微少操作帯を、アウタマスト13aを前傾させる方向では、操作角度θ4がG度を越えてからH度に至るまでの範囲内にあるときのこととし、アウタマスト13aを後傾させる方向では、操作角度θ4が−G度を越えてから−H度に至るまでの範囲内にあるときのこととする。
【0077】
第2の実施形態において、CPU61は、リフトレバー22の操作角度θ3が不感帯(−E≦θ3<0、0<θ3≦E)にあるときは、リフト用電磁弁32を閉状態とするとともに電磁弁35を開状態とする制御を行う。また、CPU61は、操作角度θ3が不感帯を越えて微少操作帯(−F≦θ3<−E、E<θ3≦F)にあるときは、リフト用電磁弁32の開閉を連続的に行わせて断続的に開状態とするとともに電磁弁35を閉状態とする制御を行う。このリフト用電磁弁32の連続開閉は、リフトレバー22の操作角度θ3に応じた変調率のパルス信号をCPU61がリフト用電磁弁32に出力することで行われる。
【0078】
リフトシリンダ14を伸長させる際の変調率H1は、操作角度θ3が不感帯を越えてから微少操作帯を越えるまでのリフト用電磁弁32の開閉時間全体に対するリフト用電磁弁32の開時間の比率により算出される。変調率H1は、以下の式(6)を用いて求められる。
【0079】
変調率H1=(|θ3|−E)/(F−E)…式(6)
一方、リフトシリンダ14を収縮させる際の変調率H2は、操作角度θ3が不感帯を越えてから微少操作帯を越えるまでのリフト用電磁弁32の開閉時間全体に対するリフト用電磁弁32の開時間の比率と、第1圧力センサ33から得られる圧力値P3,P4を用いて以下の式(7)を用いて求められる。圧力値P3は、フォーク16によって荷(負荷)が扱われたときの管路30bの圧力であり、圧力値P4は、フォーク16によって荷(負荷)が扱われていないときの管路30bの圧力である。リフトシリンダ14を収縮させる際は、荷の荷重がリフトシリンダ14の移動速度に影響を及ぼすため、圧力値P3,P4を加味して変調率H2が設定される。
【0080】
変調率H2=(|θ3|−E)/(F−E)÷√(P3/P4)…式(7)
一方、ティルトレバー23においては、CPU61は、ティルトレバー23の操作角度θ4が不感帯(−G≦θ4<0、0<θ4≦G)にあるときは、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52を閉状態とする制御を行う。さらに、CPU61は、操作角度θ4が不感帯を越えて微少操作帯(−H≦θ4<−G、G<θ4≦H)にあるときは、第2圧力センサ45及び第3圧力センサ55の圧力値に基づき、ボトム室19b及びロッド室19cのうち圧力の高い方に接続された一方の電磁弁に対し開閉を連続的に行わせて断続的に開状態とする制御を行う。このとき、CPU61は、連続開閉が行われない他方の電磁弁に対しては全開させて開状態とする制御を行う。
【0081】
ティルト用油圧ポンプ40をポンプとして駆動させ、ティルトシリンダ19に作動油を送り、伸長又は収縮動作させる際の変調率H3は、操作角度θ4が不感帯を越えてから微少操作帯を越えるまでの第1ティルト用電磁弁42又は第2ティルト用電磁弁52の開閉時間全体に対する開時間の比率により算出される。変調率H3は、以下の式(8)を用いて求められる。
【0082】
変調率H3=(|θ4|−G)/(H−G)…式(8)
ロッド室19c側とボトム室19b側の圧力差が一定以上(下記のΔP以上)あり、かつマスト13の自重によってティルトシリンダ19から作動油を戻してシリンダ動作を行う時(ティルト用油圧ポンプ40を油圧モータとして駆動させる時)の変調率H4は以下のように求められる。すなわち、変調率H4は、操作角度θ4が不感帯を越えてから微少操作帯を越えるまでの第1ティルト用電磁弁42又は第2ティルト用電磁弁52の開閉時間全体に対する開時間の比率に加え、以下の要因を加味して以下の式(9)を用いて求められる。すなわち、変調率H4は、各電磁弁42,52の開時間の比率と、第2圧力センサ45から得られるボトム室19bの圧力値P5と、第3圧力センサ55から得られるロッド室19cの圧力値P6と、ΔPを用いて式(9)から求められる。なお、ΔPは、ティルトシリンダ19のシリンダ径や荷役用油圧制御装置の圧力損失によって決定される値であり、ティルト用ポンプモータ41を駆動させなくても自重でティルトシリンダ19を動作することができる最小の圧力差のことである。
【0083】
変調率H4=(|θ4|−G)/(H−G)÷√(|P6−P5|)/ΔP…式(8)
さて、第2の実施形態において、リフトシリンダ14を伸縮させる場合、CPU61は、リフトレバー22の操作角度θ3が不感帯(−E≦θ3<0、0<θ3≦E)にあるときは、上記式(1)からリフト用始動回転数Ns1を演算し、リフト用ポンプモータ31をリフト用始動回転数Ns1で回転させる。このとき、CPU61は、リフト用電磁弁32を閉状態としたままにする。
【0084】
その後、CPU61は、リフトレバー22の操作角度θ3が、リフトシリンダ14の伸長側で不感帯を越えて微少操作帯(E<θ3≦F)にあるときは、上記式(6)から変調率H1を演算し、リフトシリンダ14の収縮側で不感帯を越えて微少操作帯(−F≦θ3<−E)にあるときは、上記式(7)から変調率H2を演算する。
【0085】
そして、CPU61は、操作角度θ3が不感帯を越えてから微少操作帯にあるときは、変調率H1,H2に対応したパルス信号をリフト用電磁弁32に出力し、リフト用電磁弁32を連続開閉させて断続的に開状態とする。すると、リフト用ポンプモータ31がリフト用始動回転数Ns1で回転しながらも、リフト用電磁弁32の連続開閉により操作角度θ3に応じた作動油がリフトシリンダ14に供給される。よって、リフト用電磁弁32の連続開閉により流量制御された作動油量に応じた移動速度でリフトシリンダ14が伸縮する。
【0086】
その後、微少操作帯では、リフトレバー22の操作角度θ3が増大するにつれてリフト用電磁弁32を開状態とする時間が長くなり、リフト用電磁弁32の開閉時間全体に対する開時間の占める比率が大きくなっていき、変調率H1,H2の値が大きくなっていく。そして、CPU61は、リフトレバー22の操作角度θ3が微少操作帯を越えた(θ3<−F、F<θ3)と判断すると、リフト用電磁弁32を連続開閉させる状態から全開させて開状態とするとともに、電磁弁35を閉状態とする。同時に、CPU61は、上記式(2)からリフト用操作回転数Nd1を演算する。すると、リフト用電磁弁32が全開となると同時に、リフト用ポンプモータ31がリフト用始動回転数Ns1から操作角度θ3の増加に応じた回転数を加えたリフト用操作回転数Nd1で回転する。
【0087】
一方、ティルトシリンダ19の操作時において、CPU61は、ティルトレバー23の操作角度θ4が不感帯(−G≦θ4<0、0<θ4≦G)にあるときは、上記式(3)からティルト用始動回転数Ns2を演算し、ティルト用ポンプモータ41をティルト用始動回転数Ns2で回転させる。その後、CPU61は、ティルトレバー23の操作角度θ4が、アウタマスト13aを前傾させる側で不感帯を越えて微少操作帯(G<θ4≦H)にあるときは、上記式(7)から変調率H3を演算する。また、アウタマスト13aを後傾させる側で不感帯を越えて微少操作帯(−H≦θ4<−G)にあるときは、上記式(8)から変調率H4を演算する。
【0088】
そして、CPU61は、ティルトシリンダ19のロッド室19cの圧力がボトム室19bの圧力と比べ上記ΔP以上高く、マスト13の自重を利用してロッド室19c側の作動油を戻してマスト13を前傾させる際は、以下の制御を行う。すなわち、CPU61は、ボトム室19bとロッド室19cのうち、圧力の高いロッド室19cに連通する管路50b上の第2ティルト用電磁弁52に対し、変調率H4に対応したパルス信号を出力し、第2ティルト用電磁弁52を連続開閉させて断続的に開状態とする制御を行う。同時に、CPU61は、連続開閉されない第1ティルト用電磁弁42を全開させて開状態とする制御を行う。
【0089】
一方、CPU61は、ティルトシリンダ19のロッド室19cに作動油を送り、マスト13を後傾させる際は、以下の制御を行う。すなわち、CPU61は、ボトム室19bとロッド室19cのうち、圧力の高いボトム室19bに連通する管路50a,50b上の第2ティルト用電磁弁52に対し、変調率H3に対応したパルス信号を出力し、第2ティルト用電磁弁52を連続開閉させて断続的に開状態とする制御を行う。同時に、CPU61は、連続開閉されない第1ティルト用電磁弁42を全開させて開状態とする制御を行う。
【0090】
すると、ティルト用ポンプモータ41がティルト用始動回転数Ns2で回転しながらも、第1ティルト用電磁弁42又は第2ティルト用電磁弁52の連続開閉により操作角度θ4に応じた作動油がティルトシリンダ19に供給又は戻される。よって、連続開閉する電磁弁により流量制御された作動油量に応じた移動速度でティルトシリンダ19が伸縮して前傾又は後傾する。
【0091】
その後、CPU61は、ティルトレバー23の操作角度θ4が微少操作帯を越えた(θ4<−H、H<θ4)と判断すると、上記式(4)又は式(5)からティルト用操作回転数Nd2を演算する。CPU61は、ティルト用操作回転数Nd2に対応した指令信号をインバータ29に出力する。また、CPU61は、第1ティルト用電磁弁42及び第2ティルト用電磁弁52を全開させて開状態とする制御を行う。すると、ティルト用ポンプモータ41がティルト用操作回転数Nd2で回転する。
【0092】
したがって、上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(9)と同様の記載に加え、以下のような効果を得ることができる。
(11)各レバー22,23の操作角度θ3,θ4が不感帯を越えた微少操作帯にあるとき、CPU61は、各始動回転数Ns1,Ns2で各ポンプモータ31,41を回転させながら、電磁弁32,42,52を連続開閉させる。したがって、各始動回転数Ns1,Ns2のような各ポンプモータ31,41の低回転時に各シリンダ14,19を停止状態から動作させる場合のように、各レバー22,23の操作量が微少なときであっても、各シリンダ14,19を安定して動作させることができる。
【0093】
(12)リフトシリンダ14を下降させるときは、荷(負荷)を扱うことにより発生する荷重を加味して変調率H2が設定される。このため、始動回転数Ns1のような低回転時に、荷(負荷)を扱いながらリフトシリンダ14が下降する際であっても、荷を扱わないときと同様な操作感覚でリフトシリンダ14を動作させることができる。
【0094】
(13)ティルトシリンダ19を前傾させる際は、CPU61は、第1ティルト用電磁弁42と第2ティルト用電磁弁52のうち圧力の高い第2ティルト用電磁弁52を連続開閉させて断続的に開状態とすると同時に第1ティルト用電磁弁42を全開とする。一方、ティルトシリンダ19を後傾させる際は、CPU61は、第1ティルト用電磁弁42と第2ティルト用電磁弁52のうち圧力の高い第2ティルト用電磁弁52を連続開閉させて断続的に開状態とすると同時に、第1ティルト用電磁弁42を全開とする。このため、ティルトシリンダ19へ供給、排出される作動油の流量を電磁弁の連続開閉によって制御することにより、ティルトレバー23の操作量が微量なときでも安定したマスト13の前傾、後傾動作ができる。
【0095】
(14)CPU61は、操作角度θ3,θ4が微少操作帯を越えると、各電磁弁32,42,52を全開させると同時に、各ポンプモータ31,41を各操作回転数Nd1,Nd2で回転させる。すなわち、各ポンプモータ31,41を低回転で回転させる必要がなくなれば、各電磁弁32,42,52により作動油の流量を制御する必要がなくなるため、各電磁弁32,42,52を全開させることで操作角度θ3,θ4に応じた移動速度で各シリンダ14,19を動作させることができる。
【0096】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 各実施形態において、荷役用油圧制御装置の制御方法は、リフトシリンダ14だけ又はティルトシリンダ19だけに適用してもよい。
【0097】
○ リフト用始動回転数Ns1及びティルト用始動回転数Ns2は、油漏れ係数及び油粘度から演算して求めてもよい。
○ 各回転数は、メモリ62に記憶されたデータマップから求めてもよい。
【0098】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記荷役用油圧制御装置はフォークリフトに適用され、前記荷役用油圧シリンダは前記フォークリフトのティルトシリンダである請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の荷役用油圧制御方法。
【0099】
(ロ)前記荷役用油圧制御装置は、前記供給流路の圧力を検出する圧力センサを備え、前記始動回転数は、前記圧力センサによって検出された圧力値に比例して変更される請求項2に記載の荷役用油圧制御装置の制御方法。
【符号の説明】
【0100】
Ns1…リフト用始動回転数、Ns2…ティルト用始動回転数、Nd1…リフト用操作回転数、Nd2…ティルト用操作回転数、θ1,θ2,θ3,θ4…操作角度、11…フォークリフト、14…荷役用油圧シリンダとしてのリフトシリンダ、19…荷役用油圧シリンダとしてのティルトシリンダ、22…荷役用操作レバーとしてのリフトレバー、23…荷役用操作レバーとしてのティルトレバー、30…荷役用油圧ポンプとしてのリフト用油圧ポンプ、30a,30b,40a,40b,50a,50b…供給流路を構成する管路、31…荷役用ポンプモータとしてのリフト用ポンプモータ、32…開閉弁としてのリフト用電磁弁、40…荷役用油圧ポンプとしてのティルト用油圧ポンプ、41…荷役用ポンプモータとしてのティルト用ポンプモータ、42…開閉弁としての第1ティルト用電磁弁、52…開閉弁としての第2ティルト用電磁弁、60…制御部としての制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役用操作レバーと、
固定容量型の荷役用油圧ポンプと、
該荷役用油圧ポンプを駆動させる可変速の荷役用ポンプモータと、
前記荷役用油圧ポンプから供給される作動油により作動する荷役用油圧シリンダと、
前記荷役用油圧シリンダと前記荷役用油圧ポンプとを接続する供給流路を開閉する開閉弁と、
前記荷役用ポンプモータの駆動及び前記開閉弁の開閉を制御する制御部とを備え、前記荷役用操作レバーの操作角度が予め設定された不感帯にあるときは前記荷役用油圧シリンダが作動しないように構成された荷役用油圧制御装置の制御方法であって、
前記荷役用操作レバーの操作角度が0度のときは、前記制御部は前記開閉弁を閉状態とするとともに前記荷役用ポンプモータを駆動させず、
前記操作角度が0度ではなくかつ前記不感帯にあるときは、前記制御部は前記開閉弁を閉状態とするとともに、前記荷役用ポンプモータを、少なくとも前記荷役用油圧ポンプの油漏れ係数及び油粘度から決定される始動回転数で回転させ、
前記操作角度が前記不感帯を超えたときは、前記制御部は前記開閉弁を開状態とし、それ以降に、前記荷役用ポンプモータを、前記始動回転数に対し、前記操作角度に比例して上昇する回転数を加えた操作回転数で回転させる荷役用油圧制御装置の制御方法。
【請求項2】
前記始動回転数は、荷役操作によって扱われる負荷荷重の大きさに比例して変更される請求項1に記載の荷役用油圧制御装置の制御方法。
【請求項3】
前記荷役用油圧制御装置はフォークリフトに適用され、前記荷役用油圧シリンダは前記フォークリフトのリフトシリンダである請求項1又は請求項2に記載の荷役用油圧制御装置の制御方法。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作角度が前記不感帯を越えると前記開閉弁を全開させて前記開状態とさせると同時に、前記荷役用ポンプモータを前記操作回転数で回転させる請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の荷役用油圧制御装置の制御方法。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作角度が前記不感帯を越えてから予め設定された微少操作帯にあるときは、前記荷役用ポンプモータを前記始動回転数で回転させるとともに、前記開閉弁の開閉を連続的に行わせて断続的に前記開状態とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の荷役用油圧制御装置の制御方法。
【請求項6】
前記制御部は、前記操作角度が前記微少操作帯を越えると前記開閉弁を全開させて前記開状態とさせると同時に、前記荷役用ポンプモータを前記操作回転数で回転させる請求項5に記載の荷役用油圧制御装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−6262(P2011−6262A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104137(P2010−104137)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】