荷物移送用ロボットと該ロボットの制御方法
【課題】棚の上などにおいた荷物を所定位置に好適に押すことのできる荷物移送用ロボットを提供する。
【解決手段】荷物移送用ロボット1であって、車輪2dを有するベース2と、ベース2に対して傾動可能に設けられるボディ3と、ボディ3をベース2に対して傾動させる傾動装置8と、ボディ3に対して動作可能に設けられるアームと、アームをボディ3に対して動作させる動作装置10,11と、制御装置12を有する。制御装置12は、傾動装置8を制御してボディ3をベース2に対して傾動させてボディ3の傾動方向の反対側にスペース18を形成し、かつスペース18を形成した時に動作装置10,11を制御してスペース18にアームの一部または全部を移動させる制御モードを有する。
【解決手段】荷物移送用ロボット1であって、車輪2dを有するベース2と、ベース2に対して傾動可能に設けられるボディ3と、ボディ3をベース2に対して傾動させる傾動装置8と、ボディ3に対して動作可能に設けられるアームと、アームをボディ3に対して動作させる動作装置10,11と、制御装置12を有する。制御装置12は、傾動装置8を制御してボディ3をベース2に対して傾動させてボディ3の傾動方向の反対側にスペース18を形成し、かつスペース18を形成した時に動作装置10,11を制御してスペース18にアームの一部または全部を移動させる制御モードを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を移送し得る荷物移送用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を移送しかつ保管し得る自動倉庫が従来知られている(特許文献3参照)。自動倉庫は、一般に大きな装置であって、狭い場所に設置できない場合がある。そこで、狭い場所でも使用容易な荷物移送用ロボットが従来開発されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
従来の荷物移送用ロボットは、例えば車輪を有するベースと、ベースに傾動可能または上下動可能に取付けられるボディと、ボディに回転可能に取付けられる第一アームと、第一アームの端部に回転可能に取付けられる第二アームを有する。ボディは、ベースに対して第一アクチュエータによって傾動または上下動する。第一アームは、ボディに対して第二アクチュエータによって回転する。第二アームは、第一アームに対して第三アクチュエータによって回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260837号公報
【特許文献2】特開2008−23639号公報
【特許文献3】特開2009−143645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の荷物移送用ロボットは、荷物を持上げて移送するようにアクチュエータを制御する制御装置を有するものの、棚の上に置いた荷物を所定位置へ押すための概念を備える制御装置を有していない。そのため棚の上などにおいた荷物を所定位置に好適に押すことのできる荷物移送用ロボットが従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える荷物移送用ロボットであることを特徴とする。一つの特徴によると本発明の荷物移送用ロボットは、移動可能なベースと、ベースに対して傾動可能に設けられるボディと、ボディをベースに対して傾動させる傾動装置と、ボディに対して動作可能に設けられるアームと、アームをボディに対して動作させる動作装置と、制御装置を有する。制御装置は、傾動装置を制御してボディをベースに対して傾動させてボディの傾動の方向の反対側にスペースを形成し、かつスペースを形成した時に動作装置を制御してスペースにアームの一部または全部を移動させる制御モードを有する。
【0007】
したがって、このロボットは、ボディをベースに対して傾動させることでスペースを形成することができる。例えば、荷物をアーム等によって保持して運び、荷物を棚の上などに置き、アームを荷物から離した状態で、ボディを荷物から離れる方向に傾動させる。これにより、ボディと荷物との間にスペースが無い状態からボディと荷物の間にスペースを形成することができ、そのスペースにアームを移動させることができる。そのため車輪を回転させてロボット全体等を荷物から離してスペースを形成する場合に比べて、小さなエネルギーによってスペースを形成し得る。これによりスペースを短時間で形成し得る。またロボットを後退させる十分な広さを有しない場所においても前記スペースを形成し得る。そしてスペースに移動させたアームによって荷物を押すことで、荷物を棚の上などにおいて所定位置へ移動させることができる。
【発明の効果】
【0008】
したがってボディをベースに対して傾動させることでスペースを形成することができる。またロボットを後退させる十分な広さを有しない場所においても前記スペースを形成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】荷物移送用ロボットの斜視図である。
【図2】荷物を保持した際の荷物移送用ロボットの斜視図である。
【図3】アームの斜視図である。
【図4】荷物を移送する際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図5】荷物を棚に載置した際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図6】荷物を押す前の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図7】荷物を押す前の荷物移送用ロボットの上面図である。
【図8】荷物を押した後の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図9】荷物を押した後の荷物移送用ロボットの上面図である。
【図10】荷物を引っ掛けた際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図11】荷物を引っ掛けた際の荷物移送用ロボットの上面図である。
【図12】軽い荷物を持上げた際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図13】荷物を引き出した際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図14】重い荷物を持上げる前の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図15】重い荷物を持上げた際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図16】他の形態にかかる荷物移送用ロボットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一つの実施の形態を図1〜15にしたがって説明する。図1,2に示すように荷物移送用ロボット1は、ベース2とボディ3と一対のアーム1aを有する。
【0011】
ベース2は、図1,2に示すように本体部2aと、本体部2aの下部から前方に延出する一対の延出部2bを有する。本体部2aの上部には、操作盤2cが設けられる。操作盤2cには、使用者によって操作されるスイッチ、レバー、キーボード等が設けられる。本体部2aの下部には、一対の車輪2d(後輪2d2)が設けられる。本体部2aの内部には、電源2e、駆動アクチュエータ13、操舵アクチュエータ14が設けられる。
【0012】
駆動アクチュエータ13は、図1,2に示すように後輪2d2を前進方向または後進方向に所定速度で回転させる。操舵アクチュエータ14は、後輪2d2を支持する軸部材の向きを変えて、ロボット1の進行方向を決定する。各延出部2bの端部には、従動輪である車輪2d(前輪2d1)が取付けられる。一対の延出部2bには、昇降装置9が取付けられる。
【0013】
昇降装置9は、図1,2に示すように一対のアウタマスト9aと一対のインナマスト9bとアクチュエータ9cを有する。アウタマスト9aは、ベース2の延出部2bから上方に延出する。アウタマスト9aは、延出部2bに対して移動不能に取付けられても良いし、延出部2bに沿って移動可能に延出部2bに取付けられても良い。インナマスト9bは、アウタマスト9aに対して上下動可能に取付けられる。アクチュエータ9cは、例えば油圧シリンダであって、インナマスト9bをアウタマスト9aに対して昇降させる。
【0014】
一対のインナマスト9bの間には、図1,2に示すようにアタッチメント9dが上下動可能に取付けられる。アタッチメント9dには、チェーン9fの第一端部が取付けられる。チェーン9fは、アタッチメント9dから延出し、インナマスト9bの上部に設けられた滑車9eに掛けられる。チェーン9fの第二端部は、インナマスト9bに取付けられる。したがってアクチュエータ9cによってインナマスト9bを昇降させることで、アタッチメント9dがインナマスト9bに対して昇降する。
【0015】
アタッチメント9dには、図2,4に示すように取付ベース7が取付けられる。取付ベース7は、アタッチメント9dに直接、取付けられても良いし、アタッチメント9dに取付けられたフォーク(図示省略)に取付けられても良い。取付ベース7の後部には、制御装置(制御盤)12が設けられる。取付ベース7の前部には、ボディ3が傾動可能に取付けられる。取付ベース7とボディ3の間には、取付ベース7に対してボディ3を傾動させる傾動装置8が設けられる。傾動装置8は、例えば油圧シリンダである。
【0016】
ボディ3は、図1,4に示すように下部を中心に取付ベース7に対して前後方向に傾動する。ボディ3の前面には、台座6が取付けられる。台座6は、ボディ3の略中央から前方へ突出しており、荷物15が台座6の上に載せられ得る。台座6は、ボディ3に形成された上下方向に延出する溝3aに沿って上下動可能に取付けられる。ボディ3には、台座6を上下動させるアクチュエータ17が設けられる。したがって台座6は、荷物15の大きさ等に対応させてボディ3に対して高さが調整され得る。
【0017】
ボディ3の左面上部と右面上部には、図1,3に示すように一対のアーム1aが取付けられる。各アーム1aは、ボディ3に回転可能に取付けられる第一アーム4と、第一アーム4の端部に回転可能に取付けられる第二アーム5を有する。
【0018】
第一アーム4は、図1,3に示すように第一部材4aと第二部材4bを有する。第一部材4aは、ボディ3に対してA軸中心とB軸中心に回転可能に取付けられる。A軸は、ボディ3の幅方向と平行であり、B軸は、ロボット1の前後方向(ボディ3の厚み方向)と平行である。第二部材4bは、第一部材4aに対してC軸中心に回転可能に取付けられる。C軸は、第一アーム4の長手方向と平行であって、第一アーム4の軸中心線上に位置する。本実施形態において、A軸、B軸およびC軸は、それぞれ直交している。したがって第一アーム4は、ボディ3に対して回転3自由度にて取付けられる。
【0019】
図3に示すように第一アーム4とボディ3の間には、第一アーム4をボディ3に対して動作させる第一動作装置10が設けられる。第一動作装置10は、第一アーム4をボディ3に対してA軸中心に回転させるアクチュエータ10aと、B軸中心に回転させるアクチュエータ10bと、第二部材4bを第一部材4aに対してC軸中心に回転させるアクチュエータ10cを有する。アクチュエータ10a〜10cは、例えば電動モータとギヤ等を有する。
【0020】
第二アーム5は、図3に示すように長尺状の本体部材5aと、本体部材5aから突出する爪5bを有する。本体部材5aは、曲面状の外周面を有し、好ましくは本体部材5aの断面は、円形である。本体部材5aの第一端部5a1は、第一アーム4の端部にD軸中心に回転可能に取付けられる。D軸は、第二アーム5の延出方向に対して直交している。
【0021】
爪5bは、図3に示すように本体部材5aの第二端部5a2に設けられる。爪5bは、本体部材5aからD軸と平行な方向に突出する。爪5bは、アーム1aが初期状態において他方のアーム1aに向けて突出する。爪5bは、曲面状の外周面を有し、好ましくは爪5bの断面は、円形である。爪5bの先端部5b1は、半球形状に形成される。
【0022】
図3に示すように第一アーム4と第二アーム5の間には、第二アーム5を第一アーム4に対して動作させる第二動作装置11が設けられる。第二動作装置11は、例えば電動モータとギヤ等を有しており、第二アーム5をD軸(肘関節軸)を中心に第一アーム4に対して回転させる。
【0023】
ロボット1を操作する場合は、図1,2に示すように作業者が操作盤2cを操作する。操作盤2cは、操作されることで信号を制御装置12に発信する。制御装置12は、受信した信号に基づいて各種アクチュエータ(傾動装置8、アクチュエータ9c、13,14、動作装置10,11)を制御する。
【0024】
ロボット1によって荷物15を移送する場合は、図4に示すように作業者が操作盤2cを操作する。操作盤2cから発信された信号を受信した制御装置12は、動作装置10,11によって第二アーム5の爪5bをボディ3に向けて引き寄せる。これにより荷物15は、爪5bとボディ3によって挟持される。
【0025】
荷物15は、図4に示すように、好ましくは台座6の上に置かれる。これにより荷物15は、台座6によって下から支持される。ボディ3は、好ましくは傾動装置8によって取付ベース7に対して後傾される。これにより荷物15の重心がボディ3に近接し、荷物15がボディ3によって安定良く支えられる。制御装置12は、図4の状態においてアクチュエータ13,14を制御してロボット1を所定方向に移動させる。これにより荷物15は、所定方向に移動され得る。
【0026】
ロボット1によって荷物15を棚16の上に置く場合は、図5に示すように制御装置12が昇降装置9を制御して荷物15の高さを調整し、制御装置12が傾動装置8を制御して荷物15を棚16の上面16aに置く。次に、制御装置12は、動作装置10,11を制御して爪5bを荷物15から外す。
【0027】
ロボット1によって荷物15を押す準備として、図6,7に示すように制御装置12は、傾動装置8を制御してボディ3を取付ベース7に対して後傾させる。これによりボディ3と荷物15の間にスペース18が形成される。なおスペース18は、図示点線で示すように、棚16に置いた状態の荷物15とボディ3との間の空間である。次に、制御装置12は、動作装置10,11を制御してアーム1aの一部または全部をスペース18に設置する。スペース18において第一アーム4は、略水平であって、ボディ3から荷物15に向けて延出する。第二アーム5は、略水平であって、第一アーム4から他方の第二アーム5に向けて延出する。
【0028】
ロボット1によって荷物15を押す場合は、図8,9に示すように制御装置12が第二動作装置11を制御して第二アーム5を荷物15に向けて水平面上にて回転させる。これにより第二アーム5の端部が荷物15を押し、荷物15が棚16の上面16aを移動する。かくして荷物15が棚16の上において所定位置へ移動する。なお第二アーム5は、水平面上に移動することが好ましいが、必ずしも水平面上に移動しなくて良い。例えば第二アーム5が第一アーム4から下方に延出する位置にあり、第二アーム5の先端部を上方に移動するように第二アーム5を第一アーム4に対して回転させても良い。
【0029】
図4〜9の全工程は、操作盤2cの一操作により発信された信号に基づいて制御装置12が実行しても良いし、各工程に対応して操作された操作盤2cからの各信号に基づいて制御装置12が実行しても良い。なお荷物15は、略直方体であって、ダンボール製、樹脂製である。
【0030】
ロボット1によって荷物15を棚16から引き出す場合は、図10,11に示すように制御装置12が昇降装置9とアクチュエータ17を制御する。これにより第一アーム4とボディ3の接続部である肩が荷物15よりも上に位置し、台座6の上面が棚16の上面16aと同じ高さになる。次に、制御装置12は、動作装置10,11を制御して、アーム1aを荷物15の上において移動させ、第二アーム5の爪5bを荷物15の一端面(ボディ3の反対側に位置する面)に係止させる。
【0031】
次に、制御装置12は、図11に示すように第二動作装置11を制御して第二アーム5の爪5bをボディ3に向けて移動させる。これにより荷物15がボディ3に向けて移動してボディ3に当たり、荷物15の下面一部が台座6の上に載る。荷物15が軽い場合は、図12に示すように制御装置12が傾動装置8を制御してボディ3を後傾させる。これによりロボット1は、軽い荷物15を持上げることができる。
【0032】
荷物15が重い場合は、図13に示すように荷物15をボディ3に押し当てた後に、制御装置12が駆動アクチュエータ13を制御してベース2を後退させる。これにより荷物15が棚16の上を滑って、荷物15の一部が棚16から引き出される。かくして荷物15の下側には、ボディ3と棚16の間においてスペース19が形成される。
【0033】
次に、制御装置12は、図14に示すように動作装置10,11を制御して第二アーム5の爪5bを荷物15から外して、爪5bをスペース19に向けて移動させ、荷物15の下面に爪5bを係止させる。次に、制御装置12は、図15に示すように傾動装置8を制御してボディ3を後傾させる。これにより荷物15は、第二アーム5と台座6とボディ3の協働によって棚16から持上げられる。かくしてロボット1は、重い荷物15を持上げて移送することができる。
【0034】
図10〜15の全工程は、操作盤2cの一操作により発信された信号に基づいて制御装置12が実行しても良いし、あるいは各工程に対応する操作盤2cの各操作により発信された信号に基づいて制御装置12が実行しても良い。
【0035】
荷物15が重いか軽いかの判定は、例えば操作盤2cからの信号に基づいて制御装置12が行っても良い。あるいは荷物15の重さを検出し得るセンサがアーム1a等に設けられており、センサからの検知信号に基づいて制御装置12が判定しても良い。
【0036】
以上のように、荷物移送用ロボット1は、図6に示すように移動可能なベース2と、ベース2に対して傾動可能に設けられるボディ3と、ボディ3をベース2に対して傾動させる傾動装置8と、ボディ3に対して動作可能に設けられるアーム1aと、アーム1aをボディ3に対して動作させる動作装置10,11と、制御装置12を有する。制御装置12は、傾動装置8を制御してボディ3をベース2に対して傾動させてボディ3の傾動の方向の反対側にスペース18を形成し、かつスペース18を形成した時に動作装置10,11を制御してスペース18にアーム1aの一部または全部を移動させる制御モードを有する。
【0037】
したがって、このロボット1は、ボディ3をベース2に対して傾動させることでスペース18を形成することができる。例えば、荷物15をアーム1aによって保持して運び、荷物15を棚16の上などに置き、アーム1aを荷物15から離した状態で、ボディ3を荷物15から離れる方向に傾動させる。これにより、ボディ3と荷物15との間にスペースが無い状態からボディ3と荷物15の間にスペース18を形成することができ、該スペース18にアーム1aを移動させることができる。そのため車輪2dを回転させてロボット1全体等を荷物15から離してスペースを形成する場合に比べて、小さなエネルギーによってスペース18を形成し得る。これによりスペース18を短時間で形成し得る。またロボット1を後退させる十分な広さを有しない場所においてもスペース18を形成し得る。そしてスペース18に移動させたアーム1aによって荷物15を押すことで、荷物15を棚16の上などにおいて所定位置へ移動させることができる。
【0038】
ボディ3には、図4に示すようにボディ3から突出した台座6が設けられる。したがって荷物15をアーム1aによってボディ3に引き寄せることで、荷物15を台座6の上に載せることができる。かくしてアーム1aと台座6によって荷物15を保持することができる。
【0039】
アーム1aは、図3に示すようにボディ3に対して回転2自由度以上にて取付けられる第一アーム4と、第一アーム4に対して回転1自由度のみを有して取付けられる第二アーム5を有する。
【0040】
したがって第一アーム4は、ボディ3に対して自由度が大きいため、荷物15の大きさなどに対応して柔軟に第二アーム5をボディに対して位置移動させ得る。一方、第二アーム5は、自由度が小さいため、自由度が大きい構成に比べて軽量になる。そのため第一アーム4とボディ3の連結部に加わる負荷が小さくなる。かくして前記連結部の損傷を少なくし得る。また第二アーム5は、自由度が小さいため、自由度が大きい構成に比べて簡易な構成になる。そのため第二アーム5を第一アーム4に対して回転させる動作装置11として大きな出力を有するものを選択し得る。これにより第二アーム5によって荷物15を比較的大きな力で押すこと等ができる。
【0041】
第二アーム5は、図3に示すように第一アーム4に対して関節軸(D軸)を中心に回転可能に取付けられかつ第一アーム4から延出する本体部材5aと、本体部材5aの先端部から関節軸と平行して延出しかつ荷物15に引っ掛けられ得る爪5bとを有する。したがって関節軸を中心に第二アーム5を回転させることで、爪5bの側面が荷物15に当たり、あるいは荷物15から離れ得る。そのため爪5bは、確実に荷物15に対して当接・離間し得る。例えば、爪5bが本体部材5aから他の方向に延出する場合に比べて、爪5bは、確実に荷物15に対して当接・離間し得る。
【0042】
ロボット1によって荷物15を棚16の上の所定位置へ移動させる場合は、先ず、図4に示すように動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aによって荷物15をボディ3に引き寄せて荷物15をアーム1aとボディ3によって挟持する。図5に示すように傾動装置8を制御装置12によって制御することで、荷物15を棚16の上に置く。動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aを荷物15から外す。図6に示すように傾動装置8を制御装置12によって制御することで、ボディ3をベース2に対して傾動させてボディ3と荷物15の間にスペース18を形成する。図7に示すように動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aの一部または全部をスペース18に移動させる。図8,9に示すように動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aによって荷物15を押す。
【0043】
したがって、ロボット1の全体を後退させて荷物15とボディ3の間にスペースを形成する場合に比べて、小さなエネルギーでスペース18が形成され得る。そしてスペース18に移動させたアーム1aによって荷物15を押すことで、荷物15を棚16の上などにおいて所定位置へ移動させることができる。
【0044】
図3に示すように第二アーム5の本体部材5aと爪5bは、曲面形状の外周面を有する。そのため本体部材5aと爪5bは、荷物15に当たる角度に応じて、荷物15に加え得る力がほとんど変わらない。したがって第二アーム5によって荷物15が不本意に傷付けられることが軽減され得る。
【0045】
図6,8に示すように荷物15をアーム1aによって押す場合、第一アーム4は、ボディ3から荷物15を移動させる方向に延出する。そのため荷物15をアーム1aによって押す場合に、第一アーム4には、第一アーム4の延出方向に力を受ける。かくして第一アーム4には、トルクが発生し難く、荷物15を押す力が第一アーム4とボディ3とによって効率良く受止められ得る。
【0046】
図11に示すように第二アーム5は、荷物15の上方から荷物15に係止される。そのため荷物15の両側にスペースが小さい場合、例えば荷物15が狭い間隔で並べられた場合においても、荷物15を第二アーム5によって棚16から引き出すことができる。
【0047】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、他の形態においてロボット1は、図1に示すベース2と昇降装置9に代えて、図16に示すベース20と昇降装置22を有していても良い。
【0048】
図16に示すようにベース20の前部には、一対の前輪21a(車輪21)が設けられ、ベース20の後部には、一対の後輪21b(車輪21)が設けられる。ベース20の内部には、制御装置12、駆動アクチュエータ13、操舵アクチュエータ14および受信装置24が設けられる。受信装置24は、ロボット1から離れた場所に設けられたコントローラから発信された信号を受信し、各種アクチュエータ(動作装置10,11、アクチュエータ13,14,22c、傾動装置23)を操作する。ベース20と昇降装置22の間には、昇降装置22を傾動させる傾動装置23が設けられる。
【0049】
昇降装置22は、図16に示すようにベース20に傾動可能に取付けられる第一部材22aと、第一部材22aに対して昇降する第二部材22bと、第二部材22bを第一部材22aに対して昇降させるアクチュエータ22cを有する。第二部材22bにボディ3が装着され、ボディ3に一対のアーム1aが装着される。したがってボディ3は、昇降装置22を介してベース20に対して傾動する。
【0050】
他の形態において、ロボットは、ボディに回転可能に取付けられた第一アームと、第一アームにスライド可能に設けられた第二アームと、第二アームを第一アームに対してスライドさせる動作装置を有しており、第二アームを第一アームに対してスライドさせることでアームの全長が伸縮する構成であっても良い。
【0051】
他の形態において、アーム1aは、一端部がボディに対して回転可能に取付けられ、かつ伸縮可能な構成、例えば入子式であっても良い。
【0052】
他の形態において、ロボット1は、図1に示す昇降装置9をベース2に対して傾動させる傾動装置を有していても良い。この場合、図4に示す傾動装置8がロボット1に設けられても良いし、設けられていなくても良い。
【0053】
他の形態において、第一アーム4は、ボディ3に対して回転2自由度にて取付けられても良い。
【0054】
他の形態において、ロボット1は、一本のみのアーム1aを有していても良いし、あるいは三本以上のアーム1aを有していても良い。
【0055】
他の形態において、ロボット1は、一対のアーム1aによって荷物15を挟持して、荷物15を棚16の上に置き、一対のアーム1aを荷物15から離間させ、ボディ3をベース2に対して傾動させることでスペース18を形成し、スペース18にアーム1aの一部または全部を移動させても良い。
【0056】
他の形態において、ベース2には、車輪2dに代えて、他の自走手段または移動手段が設けられても良く、例えば牽引手段、磁力による移動手段等を有していても良い。
【0057】
他の形態において、爪5bは、他の形状、例えば断面が円形でなく多角形等であっても良く、先端部が半球状でなく平面状であっても良い。
【0058】
他の形態において、爪5bは、伸縮し得る構造を有していても良い。あるいは爪5bが本体部材5aに対して軸回転可能あるいは移動可能に取付けられても良い。
【0059】
他の形態において、第二動作装置11は、リンク機構とリンク機構を動かすアクチュエータを有して構成、あるいは電動油圧モータを有して構成されても良い。
【0060】
他の形態において、ロボット1は、荷物15を押す場合に、第二アーム5を水平面上に移動させない構成であっても良い(図8,9参照)。例えば、第二アーム5がスペース18において第一アーム4から下方に延出し、第二アーム5の先端部が上方に移動するように第二アーム5が第一アーム4に対して回転することで、第二アーム5が荷物15を押しても良い。
【符号の説明】
【0061】
1…荷物移送用ロボット
1a…アーム
2,20…ベース
2c…操作盤
2d,21…車輪
3…ボディ
4…第一アーム
5…第二アーム
5a…本体部材
5b…爪
6…台座
7…取付ベース
8,23…傾動装置
9,22…昇降装置
10…第一動作装置
11…第二動作装置
12…制御装置
15…荷物
16…棚
18,19…スペース
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を移送し得る荷物移送用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を移送しかつ保管し得る自動倉庫が従来知られている(特許文献3参照)。自動倉庫は、一般に大きな装置であって、狭い場所に設置できない場合がある。そこで、狭い場所でも使用容易な荷物移送用ロボットが従来開発されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
従来の荷物移送用ロボットは、例えば車輪を有するベースと、ベースに傾動可能または上下動可能に取付けられるボディと、ボディに回転可能に取付けられる第一アームと、第一アームの端部に回転可能に取付けられる第二アームを有する。ボディは、ベースに対して第一アクチュエータによって傾動または上下動する。第一アームは、ボディに対して第二アクチュエータによって回転する。第二アームは、第一アームに対して第三アクチュエータによって回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260837号公報
【特許文献2】特開2008−23639号公報
【特許文献3】特開2009−143645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の荷物移送用ロボットは、荷物を持上げて移送するようにアクチュエータを制御する制御装置を有するものの、棚の上に置いた荷物を所定位置へ押すための概念を備える制御装置を有していない。そのため棚の上などにおいた荷物を所定位置に好適に押すことのできる荷物移送用ロボットが従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える荷物移送用ロボットであることを特徴とする。一つの特徴によると本発明の荷物移送用ロボットは、移動可能なベースと、ベースに対して傾動可能に設けられるボディと、ボディをベースに対して傾動させる傾動装置と、ボディに対して動作可能に設けられるアームと、アームをボディに対して動作させる動作装置と、制御装置を有する。制御装置は、傾動装置を制御してボディをベースに対して傾動させてボディの傾動の方向の反対側にスペースを形成し、かつスペースを形成した時に動作装置を制御してスペースにアームの一部または全部を移動させる制御モードを有する。
【0007】
したがって、このロボットは、ボディをベースに対して傾動させることでスペースを形成することができる。例えば、荷物をアーム等によって保持して運び、荷物を棚の上などに置き、アームを荷物から離した状態で、ボディを荷物から離れる方向に傾動させる。これにより、ボディと荷物との間にスペースが無い状態からボディと荷物の間にスペースを形成することができ、そのスペースにアームを移動させることができる。そのため車輪を回転させてロボット全体等を荷物から離してスペースを形成する場合に比べて、小さなエネルギーによってスペースを形成し得る。これによりスペースを短時間で形成し得る。またロボットを後退させる十分な広さを有しない場所においても前記スペースを形成し得る。そしてスペースに移動させたアームによって荷物を押すことで、荷物を棚の上などにおいて所定位置へ移動させることができる。
【発明の効果】
【0008】
したがってボディをベースに対して傾動させることでスペースを形成することができる。またロボットを後退させる十分な広さを有しない場所においても前記スペースを形成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】荷物移送用ロボットの斜視図である。
【図2】荷物を保持した際の荷物移送用ロボットの斜視図である。
【図3】アームの斜視図である。
【図4】荷物を移送する際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図5】荷物を棚に載置した際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図6】荷物を押す前の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図7】荷物を押す前の荷物移送用ロボットの上面図である。
【図8】荷物を押した後の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図9】荷物を押した後の荷物移送用ロボットの上面図である。
【図10】荷物を引っ掛けた際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図11】荷物を引っ掛けた際の荷物移送用ロボットの上面図である。
【図12】軽い荷物を持上げた際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図13】荷物を引き出した際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図14】重い荷物を持上げる前の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図15】重い荷物を持上げた際の荷物移送用ロボットの側面図である。
【図16】他の形態にかかる荷物移送用ロボットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一つの実施の形態を図1〜15にしたがって説明する。図1,2に示すように荷物移送用ロボット1は、ベース2とボディ3と一対のアーム1aを有する。
【0011】
ベース2は、図1,2に示すように本体部2aと、本体部2aの下部から前方に延出する一対の延出部2bを有する。本体部2aの上部には、操作盤2cが設けられる。操作盤2cには、使用者によって操作されるスイッチ、レバー、キーボード等が設けられる。本体部2aの下部には、一対の車輪2d(後輪2d2)が設けられる。本体部2aの内部には、電源2e、駆動アクチュエータ13、操舵アクチュエータ14が設けられる。
【0012】
駆動アクチュエータ13は、図1,2に示すように後輪2d2を前進方向または後進方向に所定速度で回転させる。操舵アクチュエータ14は、後輪2d2を支持する軸部材の向きを変えて、ロボット1の進行方向を決定する。各延出部2bの端部には、従動輪である車輪2d(前輪2d1)が取付けられる。一対の延出部2bには、昇降装置9が取付けられる。
【0013】
昇降装置9は、図1,2に示すように一対のアウタマスト9aと一対のインナマスト9bとアクチュエータ9cを有する。アウタマスト9aは、ベース2の延出部2bから上方に延出する。アウタマスト9aは、延出部2bに対して移動不能に取付けられても良いし、延出部2bに沿って移動可能に延出部2bに取付けられても良い。インナマスト9bは、アウタマスト9aに対して上下動可能に取付けられる。アクチュエータ9cは、例えば油圧シリンダであって、インナマスト9bをアウタマスト9aに対して昇降させる。
【0014】
一対のインナマスト9bの間には、図1,2に示すようにアタッチメント9dが上下動可能に取付けられる。アタッチメント9dには、チェーン9fの第一端部が取付けられる。チェーン9fは、アタッチメント9dから延出し、インナマスト9bの上部に設けられた滑車9eに掛けられる。チェーン9fの第二端部は、インナマスト9bに取付けられる。したがってアクチュエータ9cによってインナマスト9bを昇降させることで、アタッチメント9dがインナマスト9bに対して昇降する。
【0015】
アタッチメント9dには、図2,4に示すように取付ベース7が取付けられる。取付ベース7は、アタッチメント9dに直接、取付けられても良いし、アタッチメント9dに取付けられたフォーク(図示省略)に取付けられても良い。取付ベース7の後部には、制御装置(制御盤)12が設けられる。取付ベース7の前部には、ボディ3が傾動可能に取付けられる。取付ベース7とボディ3の間には、取付ベース7に対してボディ3を傾動させる傾動装置8が設けられる。傾動装置8は、例えば油圧シリンダである。
【0016】
ボディ3は、図1,4に示すように下部を中心に取付ベース7に対して前後方向に傾動する。ボディ3の前面には、台座6が取付けられる。台座6は、ボディ3の略中央から前方へ突出しており、荷物15が台座6の上に載せられ得る。台座6は、ボディ3に形成された上下方向に延出する溝3aに沿って上下動可能に取付けられる。ボディ3には、台座6を上下動させるアクチュエータ17が設けられる。したがって台座6は、荷物15の大きさ等に対応させてボディ3に対して高さが調整され得る。
【0017】
ボディ3の左面上部と右面上部には、図1,3に示すように一対のアーム1aが取付けられる。各アーム1aは、ボディ3に回転可能に取付けられる第一アーム4と、第一アーム4の端部に回転可能に取付けられる第二アーム5を有する。
【0018】
第一アーム4は、図1,3に示すように第一部材4aと第二部材4bを有する。第一部材4aは、ボディ3に対してA軸中心とB軸中心に回転可能に取付けられる。A軸は、ボディ3の幅方向と平行であり、B軸は、ロボット1の前後方向(ボディ3の厚み方向)と平行である。第二部材4bは、第一部材4aに対してC軸中心に回転可能に取付けられる。C軸は、第一アーム4の長手方向と平行であって、第一アーム4の軸中心線上に位置する。本実施形態において、A軸、B軸およびC軸は、それぞれ直交している。したがって第一アーム4は、ボディ3に対して回転3自由度にて取付けられる。
【0019】
図3に示すように第一アーム4とボディ3の間には、第一アーム4をボディ3に対して動作させる第一動作装置10が設けられる。第一動作装置10は、第一アーム4をボディ3に対してA軸中心に回転させるアクチュエータ10aと、B軸中心に回転させるアクチュエータ10bと、第二部材4bを第一部材4aに対してC軸中心に回転させるアクチュエータ10cを有する。アクチュエータ10a〜10cは、例えば電動モータとギヤ等を有する。
【0020】
第二アーム5は、図3に示すように長尺状の本体部材5aと、本体部材5aから突出する爪5bを有する。本体部材5aは、曲面状の外周面を有し、好ましくは本体部材5aの断面は、円形である。本体部材5aの第一端部5a1は、第一アーム4の端部にD軸中心に回転可能に取付けられる。D軸は、第二アーム5の延出方向に対して直交している。
【0021】
爪5bは、図3に示すように本体部材5aの第二端部5a2に設けられる。爪5bは、本体部材5aからD軸と平行な方向に突出する。爪5bは、アーム1aが初期状態において他方のアーム1aに向けて突出する。爪5bは、曲面状の外周面を有し、好ましくは爪5bの断面は、円形である。爪5bの先端部5b1は、半球形状に形成される。
【0022】
図3に示すように第一アーム4と第二アーム5の間には、第二アーム5を第一アーム4に対して動作させる第二動作装置11が設けられる。第二動作装置11は、例えば電動モータとギヤ等を有しており、第二アーム5をD軸(肘関節軸)を中心に第一アーム4に対して回転させる。
【0023】
ロボット1を操作する場合は、図1,2に示すように作業者が操作盤2cを操作する。操作盤2cは、操作されることで信号を制御装置12に発信する。制御装置12は、受信した信号に基づいて各種アクチュエータ(傾動装置8、アクチュエータ9c、13,14、動作装置10,11)を制御する。
【0024】
ロボット1によって荷物15を移送する場合は、図4に示すように作業者が操作盤2cを操作する。操作盤2cから発信された信号を受信した制御装置12は、動作装置10,11によって第二アーム5の爪5bをボディ3に向けて引き寄せる。これにより荷物15は、爪5bとボディ3によって挟持される。
【0025】
荷物15は、図4に示すように、好ましくは台座6の上に置かれる。これにより荷物15は、台座6によって下から支持される。ボディ3は、好ましくは傾動装置8によって取付ベース7に対して後傾される。これにより荷物15の重心がボディ3に近接し、荷物15がボディ3によって安定良く支えられる。制御装置12は、図4の状態においてアクチュエータ13,14を制御してロボット1を所定方向に移動させる。これにより荷物15は、所定方向に移動され得る。
【0026】
ロボット1によって荷物15を棚16の上に置く場合は、図5に示すように制御装置12が昇降装置9を制御して荷物15の高さを調整し、制御装置12が傾動装置8を制御して荷物15を棚16の上面16aに置く。次に、制御装置12は、動作装置10,11を制御して爪5bを荷物15から外す。
【0027】
ロボット1によって荷物15を押す準備として、図6,7に示すように制御装置12は、傾動装置8を制御してボディ3を取付ベース7に対して後傾させる。これによりボディ3と荷物15の間にスペース18が形成される。なおスペース18は、図示点線で示すように、棚16に置いた状態の荷物15とボディ3との間の空間である。次に、制御装置12は、動作装置10,11を制御してアーム1aの一部または全部をスペース18に設置する。スペース18において第一アーム4は、略水平であって、ボディ3から荷物15に向けて延出する。第二アーム5は、略水平であって、第一アーム4から他方の第二アーム5に向けて延出する。
【0028】
ロボット1によって荷物15を押す場合は、図8,9に示すように制御装置12が第二動作装置11を制御して第二アーム5を荷物15に向けて水平面上にて回転させる。これにより第二アーム5の端部が荷物15を押し、荷物15が棚16の上面16aを移動する。かくして荷物15が棚16の上において所定位置へ移動する。なお第二アーム5は、水平面上に移動することが好ましいが、必ずしも水平面上に移動しなくて良い。例えば第二アーム5が第一アーム4から下方に延出する位置にあり、第二アーム5の先端部を上方に移動するように第二アーム5を第一アーム4に対して回転させても良い。
【0029】
図4〜9の全工程は、操作盤2cの一操作により発信された信号に基づいて制御装置12が実行しても良いし、各工程に対応して操作された操作盤2cからの各信号に基づいて制御装置12が実行しても良い。なお荷物15は、略直方体であって、ダンボール製、樹脂製である。
【0030】
ロボット1によって荷物15を棚16から引き出す場合は、図10,11に示すように制御装置12が昇降装置9とアクチュエータ17を制御する。これにより第一アーム4とボディ3の接続部である肩が荷物15よりも上に位置し、台座6の上面が棚16の上面16aと同じ高さになる。次に、制御装置12は、動作装置10,11を制御して、アーム1aを荷物15の上において移動させ、第二アーム5の爪5bを荷物15の一端面(ボディ3の反対側に位置する面)に係止させる。
【0031】
次に、制御装置12は、図11に示すように第二動作装置11を制御して第二アーム5の爪5bをボディ3に向けて移動させる。これにより荷物15がボディ3に向けて移動してボディ3に当たり、荷物15の下面一部が台座6の上に載る。荷物15が軽い場合は、図12に示すように制御装置12が傾動装置8を制御してボディ3を後傾させる。これによりロボット1は、軽い荷物15を持上げることができる。
【0032】
荷物15が重い場合は、図13に示すように荷物15をボディ3に押し当てた後に、制御装置12が駆動アクチュエータ13を制御してベース2を後退させる。これにより荷物15が棚16の上を滑って、荷物15の一部が棚16から引き出される。かくして荷物15の下側には、ボディ3と棚16の間においてスペース19が形成される。
【0033】
次に、制御装置12は、図14に示すように動作装置10,11を制御して第二アーム5の爪5bを荷物15から外して、爪5bをスペース19に向けて移動させ、荷物15の下面に爪5bを係止させる。次に、制御装置12は、図15に示すように傾動装置8を制御してボディ3を後傾させる。これにより荷物15は、第二アーム5と台座6とボディ3の協働によって棚16から持上げられる。かくしてロボット1は、重い荷物15を持上げて移送することができる。
【0034】
図10〜15の全工程は、操作盤2cの一操作により発信された信号に基づいて制御装置12が実行しても良いし、あるいは各工程に対応する操作盤2cの各操作により発信された信号に基づいて制御装置12が実行しても良い。
【0035】
荷物15が重いか軽いかの判定は、例えば操作盤2cからの信号に基づいて制御装置12が行っても良い。あるいは荷物15の重さを検出し得るセンサがアーム1a等に設けられており、センサからの検知信号に基づいて制御装置12が判定しても良い。
【0036】
以上のように、荷物移送用ロボット1は、図6に示すように移動可能なベース2と、ベース2に対して傾動可能に設けられるボディ3と、ボディ3をベース2に対して傾動させる傾動装置8と、ボディ3に対して動作可能に設けられるアーム1aと、アーム1aをボディ3に対して動作させる動作装置10,11と、制御装置12を有する。制御装置12は、傾動装置8を制御してボディ3をベース2に対して傾動させてボディ3の傾動の方向の反対側にスペース18を形成し、かつスペース18を形成した時に動作装置10,11を制御してスペース18にアーム1aの一部または全部を移動させる制御モードを有する。
【0037】
したがって、このロボット1は、ボディ3をベース2に対して傾動させることでスペース18を形成することができる。例えば、荷物15をアーム1aによって保持して運び、荷物15を棚16の上などに置き、アーム1aを荷物15から離した状態で、ボディ3を荷物15から離れる方向に傾動させる。これにより、ボディ3と荷物15との間にスペースが無い状態からボディ3と荷物15の間にスペース18を形成することができ、該スペース18にアーム1aを移動させることができる。そのため車輪2dを回転させてロボット1全体等を荷物15から離してスペースを形成する場合に比べて、小さなエネルギーによってスペース18を形成し得る。これによりスペース18を短時間で形成し得る。またロボット1を後退させる十分な広さを有しない場所においてもスペース18を形成し得る。そしてスペース18に移動させたアーム1aによって荷物15を押すことで、荷物15を棚16の上などにおいて所定位置へ移動させることができる。
【0038】
ボディ3には、図4に示すようにボディ3から突出した台座6が設けられる。したがって荷物15をアーム1aによってボディ3に引き寄せることで、荷物15を台座6の上に載せることができる。かくしてアーム1aと台座6によって荷物15を保持することができる。
【0039】
アーム1aは、図3に示すようにボディ3に対して回転2自由度以上にて取付けられる第一アーム4と、第一アーム4に対して回転1自由度のみを有して取付けられる第二アーム5を有する。
【0040】
したがって第一アーム4は、ボディ3に対して自由度が大きいため、荷物15の大きさなどに対応して柔軟に第二アーム5をボディに対して位置移動させ得る。一方、第二アーム5は、自由度が小さいため、自由度が大きい構成に比べて軽量になる。そのため第一アーム4とボディ3の連結部に加わる負荷が小さくなる。かくして前記連結部の損傷を少なくし得る。また第二アーム5は、自由度が小さいため、自由度が大きい構成に比べて簡易な構成になる。そのため第二アーム5を第一アーム4に対して回転させる動作装置11として大きな出力を有するものを選択し得る。これにより第二アーム5によって荷物15を比較的大きな力で押すこと等ができる。
【0041】
第二アーム5は、図3に示すように第一アーム4に対して関節軸(D軸)を中心に回転可能に取付けられかつ第一アーム4から延出する本体部材5aと、本体部材5aの先端部から関節軸と平行して延出しかつ荷物15に引っ掛けられ得る爪5bとを有する。したがって関節軸を中心に第二アーム5を回転させることで、爪5bの側面が荷物15に当たり、あるいは荷物15から離れ得る。そのため爪5bは、確実に荷物15に対して当接・離間し得る。例えば、爪5bが本体部材5aから他の方向に延出する場合に比べて、爪5bは、確実に荷物15に対して当接・離間し得る。
【0042】
ロボット1によって荷物15を棚16の上の所定位置へ移動させる場合は、先ず、図4に示すように動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aによって荷物15をボディ3に引き寄せて荷物15をアーム1aとボディ3によって挟持する。図5に示すように傾動装置8を制御装置12によって制御することで、荷物15を棚16の上に置く。動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aを荷物15から外す。図6に示すように傾動装置8を制御装置12によって制御することで、ボディ3をベース2に対して傾動させてボディ3と荷物15の間にスペース18を形成する。図7に示すように動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aの一部または全部をスペース18に移動させる。図8,9に示すように動作装置10,11を制御装置12によって制御することで、アーム1aによって荷物15を押す。
【0043】
したがって、ロボット1の全体を後退させて荷物15とボディ3の間にスペースを形成する場合に比べて、小さなエネルギーでスペース18が形成され得る。そしてスペース18に移動させたアーム1aによって荷物15を押すことで、荷物15を棚16の上などにおいて所定位置へ移動させることができる。
【0044】
図3に示すように第二アーム5の本体部材5aと爪5bは、曲面形状の外周面を有する。そのため本体部材5aと爪5bは、荷物15に当たる角度に応じて、荷物15に加え得る力がほとんど変わらない。したがって第二アーム5によって荷物15が不本意に傷付けられることが軽減され得る。
【0045】
図6,8に示すように荷物15をアーム1aによって押す場合、第一アーム4は、ボディ3から荷物15を移動させる方向に延出する。そのため荷物15をアーム1aによって押す場合に、第一アーム4には、第一アーム4の延出方向に力を受ける。かくして第一アーム4には、トルクが発生し難く、荷物15を押す力が第一アーム4とボディ3とによって効率良く受止められ得る。
【0046】
図11に示すように第二アーム5は、荷物15の上方から荷物15に係止される。そのため荷物15の両側にスペースが小さい場合、例えば荷物15が狭い間隔で並べられた場合においても、荷物15を第二アーム5によって棚16から引き出すことができる。
【0047】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、他の形態においてロボット1は、図1に示すベース2と昇降装置9に代えて、図16に示すベース20と昇降装置22を有していても良い。
【0048】
図16に示すようにベース20の前部には、一対の前輪21a(車輪21)が設けられ、ベース20の後部には、一対の後輪21b(車輪21)が設けられる。ベース20の内部には、制御装置12、駆動アクチュエータ13、操舵アクチュエータ14および受信装置24が設けられる。受信装置24は、ロボット1から離れた場所に設けられたコントローラから発信された信号を受信し、各種アクチュエータ(動作装置10,11、アクチュエータ13,14,22c、傾動装置23)を操作する。ベース20と昇降装置22の間には、昇降装置22を傾動させる傾動装置23が設けられる。
【0049】
昇降装置22は、図16に示すようにベース20に傾動可能に取付けられる第一部材22aと、第一部材22aに対して昇降する第二部材22bと、第二部材22bを第一部材22aに対して昇降させるアクチュエータ22cを有する。第二部材22bにボディ3が装着され、ボディ3に一対のアーム1aが装着される。したがってボディ3は、昇降装置22を介してベース20に対して傾動する。
【0050】
他の形態において、ロボットは、ボディに回転可能に取付けられた第一アームと、第一アームにスライド可能に設けられた第二アームと、第二アームを第一アームに対してスライドさせる動作装置を有しており、第二アームを第一アームに対してスライドさせることでアームの全長が伸縮する構成であっても良い。
【0051】
他の形態において、アーム1aは、一端部がボディに対して回転可能に取付けられ、かつ伸縮可能な構成、例えば入子式であっても良い。
【0052】
他の形態において、ロボット1は、図1に示す昇降装置9をベース2に対して傾動させる傾動装置を有していても良い。この場合、図4に示す傾動装置8がロボット1に設けられても良いし、設けられていなくても良い。
【0053】
他の形態において、第一アーム4は、ボディ3に対して回転2自由度にて取付けられても良い。
【0054】
他の形態において、ロボット1は、一本のみのアーム1aを有していても良いし、あるいは三本以上のアーム1aを有していても良い。
【0055】
他の形態において、ロボット1は、一対のアーム1aによって荷物15を挟持して、荷物15を棚16の上に置き、一対のアーム1aを荷物15から離間させ、ボディ3をベース2に対して傾動させることでスペース18を形成し、スペース18にアーム1aの一部または全部を移動させても良い。
【0056】
他の形態において、ベース2には、車輪2dに代えて、他の自走手段または移動手段が設けられても良く、例えば牽引手段、磁力による移動手段等を有していても良い。
【0057】
他の形態において、爪5bは、他の形状、例えば断面が円形でなく多角形等であっても良く、先端部が半球状でなく平面状であっても良い。
【0058】
他の形態において、爪5bは、伸縮し得る構造を有していても良い。あるいは爪5bが本体部材5aに対して軸回転可能あるいは移動可能に取付けられても良い。
【0059】
他の形態において、第二動作装置11は、リンク機構とリンク機構を動かすアクチュエータを有して構成、あるいは電動油圧モータを有して構成されても良い。
【0060】
他の形態において、ロボット1は、荷物15を押す場合に、第二アーム5を水平面上に移動させない構成であっても良い(図8,9参照)。例えば、第二アーム5がスペース18において第一アーム4から下方に延出し、第二アーム5の先端部が上方に移動するように第二アーム5が第一アーム4に対して回転することで、第二アーム5が荷物15を押しても良い。
【符号の説明】
【0061】
1…荷物移送用ロボット
1a…アーム
2,20…ベース
2c…操作盤
2d,21…車輪
3…ボディ
4…第一アーム
5…第二アーム
5a…本体部材
5b…爪
6…台座
7…取付ベース
8,23…傾動装置
9,22…昇降装置
10…第一動作装置
11…第二動作装置
12…制御装置
15…荷物
16…棚
18,19…スペース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なベースと、前記ベースに対して傾動可能に設けられるボディと、前記ボディを前記ベースに対して傾動させる傾動装置と、前記ボディに対して動作可能に設けられるアームと、前記アームを前記ボディに対して動作させる動作装置と、制御装置を有する荷物移送用ロボットであって、
前記制御装置は、前記傾動装置を制御して前記ボディを前記ベースに対して傾動させて前記ボディの前記傾動の方向の反対側にスペースを形成し、かつ前記スペースを形成した時に前記動作装置を制御して前記スペースに前記アームの一部または全部を移動させる制御モードを有することを特徴とする荷物移送用ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の荷物移送用ロボットであって、
前記ボディには、前記ボディから突出した台座が設けられる荷物移送用ロボット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷物移送用ロボットであって、
前記アームは、前記ボディに対して回転2自由度以上にて取付けられる第一アームと、前記第一アームに対して回転1自由度のみを有して取付けられる第二アームを有する荷物移送用ロボット。
【請求項4】
請求項3に記載の荷物移送用ロボットであって、
前記第二アームは、前記第一アームに対して関節軸を中心に回転可能に取付けられかつ前記第一アームから延出する本体部材と、前記本体部材の先端部から前記関節軸と平行して延出しかつ前記荷物に引っ掛けられ得る爪とを有する荷物移送用ロボット。
【請求項5】
移動可能なベースと、前記ベースに対して傾動可能に設けられるボディと、前記ボディに動作可能に設けられるアームを有する荷物移送用ロボットの制御方法であって、
前記アームを前記ボディに対して動作させる動作装置を制御装置によって制御することで、前記アームによって荷物を前記ボディに引き寄せて前記荷物を前記アームと前記ボディによって挟持し、
前記ボディを前記ベースに対して傾動させる傾動装置を前記制御装置によって制御することで、前記荷物を棚の上に置き、
前記動作装置を前記制御装置によって制御することで、前記アームを前記荷物から外し、
前記傾動装置を前記制御装置によって制御することで、前記ボディを前記ベースに対して傾動させて前記ボディと前記荷物の間にスペースを形成し、
前記動作装置を前記制御装置によって制御することで、前記アームの一部または全部を前記スペースに移動させ、
前記動作装置を前記制御装置によって制御することで、前記アームによって前記荷物を押す荷物移送用ロボットの制御方法。
【請求項1】
移動可能なベースと、前記ベースに対して傾動可能に設けられるボディと、前記ボディを前記ベースに対して傾動させる傾動装置と、前記ボディに対して動作可能に設けられるアームと、前記アームを前記ボディに対して動作させる動作装置と、制御装置を有する荷物移送用ロボットであって、
前記制御装置は、前記傾動装置を制御して前記ボディを前記ベースに対して傾動させて前記ボディの前記傾動の方向の反対側にスペースを形成し、かつ前記スペースを形成した時に前記動作装置を制御して前記スペースに前記アームの一部または全部を移動させる制御モードを有することを特徴とする荷物移送用ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の荷物移送用ロボットであって、
前記ボディには、前記ボディから突出した台座が設けられる荷物移送用ロボット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷物移送用ロボットであって、
前記アームは、前記ボディに対して回転2自由度以上にて取付けられる第一アームと、前記第一アームに対して回転1自由度のみを有して取付けられる第二アームを有する荷物移送用ロボット。
【請求項4】
請求項3に記載の荷物移送用ロボットであって、
前記第二アームは、前記第一アームに対して関節軸を中心に回転可能に取付けられかつ前記第一アームから延出する本体部材と、前記本体部材の先端部から前記関節軸と平行して延出しかつ前記荷物に引っ掛けられ得る爪とを有する荷物移送用ロボット。
【請求項5】
移動可能なベースと、前記ベースに対して傾動可能に設けられるボディと、前記ボディに動作可能に設けられるアームを有する荷物移送用ロボットの制御方法であって、
前記アームを前記ボディに対して動作させる動作装置を制御装置によって制御することで、前記アームによって荷物を前記ボディに引き寄せて前記荷物を前記アームと前記ボディによって挟持し、
前記ボディを前記ベースに対して傾動させる傾動装置を前記制御装置によって制御することで、前記荷物を棚の上に置き、
前記動作装置を前記制御装置によって制御することで、前記アームを前記荷物から外し、
前記傾動装置を前記制御装置によって制御することで、前記ボディを前記ベースに対して傾動させて前記ボディと前記荷物の間にスペースを形成し、
前記動作装置を前記制御装置によって制御することで、前記アームの一部または全部を前記スペースに移動させ、
前記動作装置を前記制御装置によって制御することで、前記アームによって前記荷物を押す荷物移送用ロボットの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−56661(P2012−56661A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199700(P2010−199700)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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