説明

荷重測定装置付転がり軸受ユニット

【課題】外輪3とハブ4との間に加わる荷重を、変位センサ等、荷重測定専用の部品を使用せずに測定自在な構造を実現する。
【解決手段】上記ハブ4に、特性を円周方向に関して交互に且つ等間隔に変化させたエンコーダ12を、このハブ4と同心に支持固定する。上記外輪3に支持したセンサ13の検出部を、このエンコーダ12の被検出面に近接対向させる。この被検出面に設けた第一、第二両被検出部の幅寸法は、検出すべき荷重が作用する方向に連続的に変化する。この荷重の変化に伴って、上記センサ13の出力信号が変化するパターンが変わるので、このパターンを観察する事により、上記荷重を求める。上記出力信号は、上記ハブ4の回転速度を求め、ABSやTCSの制御にも利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、例えば車両(自動車)の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪に加わる荷重の大きさを測定して、車両の安定運行の確保に利用する。或は、各種工作機械の主軸を支持する為の転がり軸受ユニットに組み込んで、この主軸に加わる荷重を測定し、工具の送り速度等を適切に調節する為に利用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為に、転がり軸受ユニットを使用する。又、車両の走行安定性を確保する為に、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)等の車両の走行状態安定化装置が広く使用されている。これらABSやTCS等の走行状態安定化装置によれば、制動時や加速時に於ける車両の走行状態を安定させる事はできるが、より厳しい条件でもこの安定性の確保を図る為には、車両の走行安定性に影響するより多くの情報を取り入れて、ブレーキやエンジンの制御を行なう事が必要になる。
【0003】
即ち、上記ABSやTCS等の従来の走行状態安定化装置の場合には、タイヤと路面との滑りを検知してブレーキやエンジンを制御する、所謂フィードバック制御を行なっている為、これらブレーキやエンジンの制御が一瞬とは言え遅れる。言い換えれば、厳しい条件下での性能向上を図るべく、所謂フィードフォワード制御により、タイヤと路面との間に滑りが発生しない様にしたり、左右の車輪の制動力が極端に異なる所謂ブレーキの片効きを防止する事はできない。更には、トラック等で、積載状態が不良である事に基づいて走行安定性が不良になるのを防止する事もできない。
【0004】
この様な問題に対応すべく、上記フィードフォワード制御等を行なう為には、懸架装置に対して車輪を支持する為の転がり軸受ユニットに、この車輪に加わるラジアル荷重とアキシアル荷重とのうちの一方又は双方を測定する為の荷重測定装置を組み込む事が考えられる。この様な場合に使用可能な荷重測定装置付車輪支持用転がり軸受ユニットとして従来から、特許文献1〜4に記載されたものが知られている。
【0005】
このうちの特許文献1には、ラジアル荷重を測定自在な、荷重測定装置付転がり軸受ユニットが記載されている。この従来構造の第1例の場合には、非接触式の変位センサにより、回転しない外輪と、この外輪の内径側で回転するハブとの径方向に関する変位を測定する事により、これら外輪とハブとの間に加わるラジアル荷重を求める様にしている。求めたラジアル荷重は、ABSを適正に制御する他、積載状態の不良を運転者に知らせる為に利用する。
【0006】
又、特許文献2には、転がり軸受ユニットに加わるアキシアル荷重を測定する構造が記載されている。この特許文献2に記載された従来構造の第2例の場合、外輪の外周面に設けた固定側フランジの内側面複数個所で、この固定側フランジをナックルに結合する為のボルトを螺合する為のねじ孔を囲む部分に、それぞれ荷重センサを添設している。上記外輪を上記ナックルに支持固定した状態でこれら各荷重センサは、このナックルの外側面と上記固定側フランジの内側面との間で挟持される。この様な従来構造の第2例の転がり軸受ユニットの荷重測定装置の場合、車輪と上記ナックルとの間に加わるアキシアル荷重は、上記各荷重センサにより測定される。
【0007】
又、特許文献3には、外輪の円周方向4個所位置に支持した変位センサユニットとハブに外嵌固定した断面L字形の被検出リングとにより、上記4個所位置での、上記外輪に対する上記ハブの、ラジアル方向及びスラスト方向の変位を検出し、各部の検出値に基づいて、このハブに加わる荷重の方向及びその大きさを求める構造が記載されている。
【0008】
更に、特許文献4には、一部の剛性を低くした外輪相当部材に動的歪みを検出する為のストレンゲージを設け、このストレンゲージが検出する転動体の通過周波数から転動体の公転速度を求め、この公転速度から、転がり軸受に加わるアキシアル荷重を測定する方法が記載されている。
【0009】
前述の特許文献1に記載された従来構造の第1例の場合、変位センサにより外輪とハブとの径方向に関する変位を測定する事で、転がり軸受ユニットに加わる荷重を測定する。但し、この径方向に関する変位量は僅かである為、この荷重を精度良く求める為には、上記変位センサとして、高精度のものを使用する必要がある。高精度の非接触式センサは高価である為、荷重測定装置付転がり軸受ユニット全体としてコストが嵩む事が避けられない。
【0010】
又、特許文献2に記載された従来構造の第2例の場合、ナックルに対し外輪を支持固定する為のボルトと同数だけ、荷重センサを設ける必要がある。この為、荷重センサ自体が高価である事と相まって、転がり軸受ユニットの荷重測定装置全体としてのコストが相当に嵩む事が避けられない。又、特許文献3に記載された構造は、外輪の周方向4個所位置にセンサを設置する為、上記特許文献1に記載された構造よりも更にコストが嵩む。更に、特許文献4に記載された方法は、外輪相当部材の一部の剛性を低くする必要があり、この外輪相当部材の耐久性確保が難しくなる可能性がある。
又、特許文献1〜4の何れに記載された構造及び方法も、転がり軸受ユニットに加わる荷重を測定する為に専用の機構を設けている。この為、コスト並びに重量が嵩む事が避けられない。
【0011】
尚、本発明に関連する技術として、特許文献5には、被検出面にN極とS極とを交互に配置したエンコーダを使用する事により、このエンコーダを支持した内輪の芯振れを検出する構造が記載されている。但し、上記特許文献5には、上記エンコーダを利用して、転がり軸受ユニットに加わる荷重を求める技術に関しては、この様な技術を示唆する記述を含めても記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−21577号公報
【特許文献2】特開平3−209016号公報
【特許文献3】特開2004−3918号公報
【特許文献4】特公昭62−3365号公報
【特許文献5】特開2004−77159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、小型且つ軽量に構成できて、転がり軸受ユニットに加わる荷重を求められる荷重測定装置付転がり軸受ユニットを実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、転がり軸受ユニットと荷重測定装置とを備える。
このうちの転がり軸受ユニットは、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、使用状態で回転する回転側軌道輪と、これら静止側軌道輪と回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に設けられた複数個の転動体とを備えたものである。
又、上記荷重測定装置は、上記回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪に結合固定されてこの回転側軌道輪と共に回転する部材の一部にこの回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪と共に回転する部材と同心に支持された、被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させたエンコーダと、その検出部をこの被検出面に対向させた状態で回転しない部分(例えば、上記静止側軌道輪若しくはこの静止側軌道輪を支持固定した懸架装置或はハウジングの一部)に支持され、この被検出面の特性変化に対応してその出力信号を変化させるセンサと、このセンサの出力信号に基づいて上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間に作用する荷重を算出する演算器とを備えたものである。
又、上記被検出面の特性が円周方向に関して変化するピッチ若しくは位相は、検出すべき荷重の作用方向に応じて(例えば作用方向に亙って)連続的に変化している。
そして、上記演算器は、上記センサの出力信号が変化するパターンに基づいて上記荷重を算出する機能を有するものである。
【0015】
本発明を実施する場合に、例えば請求項2〜3に記載した様に、検出すべき荷重を、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に径方向に作用するラジアル荷重とする。
この場合には、被検出面をエンコーダの軸方向側面とし、この被検出面に、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置する。
【0016】
そして、請求項2に記載した発明の場合には、上記両被検出部の円周方向に関する幅のうち、第一被検出部の幅を径方向外側程広く、第二被検出部の幅を径方向内側程広くする。
【0017】
又、請求項3に記載した発明の場合には、上記第一、第二両被検出部の境界を、上記エンコーダの直径方向に対し傾斜させると共に、この境界の直径方向に対する傾斜方向を、このエンコーダの直径方向中間部を境に互いに逆方向とする。そして、この直径方向中間部を挟んでこのエンコーダの直径方向に離隔した位置に設置された1対のセンサの検出部を、このエンコーダの被検出面に対向させる。
【0018】
上述の様な請求項2〜3に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項4に記載した様に、エンコーダを永久磁石製とする。そして、第一被検出部と第二被検出部とのうちの一方の被検出部をN極とし、他方の被検出部をS極とする。この為に、上記永久磁石を軸方向に着磁すると共に、着磁方向を円周方向に関して交互に変化させる。この場合、上記N極と上記S極とのうちの一方の極を、上記エンコーダの径方向外側に向かう程円周方向に関する幅が広くなる扇形(若しくは台形)とし、他方の極を、このエンコーダの径方向内側に向かう程円周方向に関する幅が広くなる逆扇形(若しくは倒立台形)とする。
又、この様な永久磁石製のエンコーダと組み合わされるセンサを、ホール素子、磁気抵抗素子等の磁気検出素子を備えた、アクティブ型の磁気センサとする。
この様な永久磁石製のエンコーダとアクティブ型のセンサとを組み合わせた場合、このセンサの出力信号の基準電位(例えば0V)に対する周期(基準電位に対して所定方向にずれたままとなる時間)は、上記扇形又は逆扇形の幅が広い程長くなり、同じく基準電位に対する変動(変化の大きさ)は、この扇形の幅が広い程大きくなる。
【0019】
又、上述の様な請求項2〜3に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項5又は請求項6に記載した様に、エンコーダの被検出面に設ける第一被検出部と第二被検出部とのうちの、一方の被検出部を透孔若しくは凹孔又は凸部とし、他方の被検出部を円周方向に隣り合う透孔若しくは凹孔又は凸部同士の間に存在する間部分若しくは凹部とする事も好ましい。上記請求項4に記載した様に、エンコーダを永久磁石製とする事も有効であるが、荷重をより高精度で検出する場合には、上記請求項5又は請求項6に記載した構造のエンコーダを使用する事が好ましい。
【0020】
この理由は、次の通りである。先ず、上記請求項4に記載した永久磁石製のエンコーダを得るには、エンコーダの被検出面の特定範囲を着磁する。ところが、この被検出面に存在するN極及びS極の形状を、扇形或は逆扇形にし、しかも着磁範囲を厳密に規制する為には、高度な着磁技術が必要となる。この為、永久磁石製のエンコーダは、製造コストが嵩む事が考えられる。これに対して、請求項5又は請求項6に記載した構造は、機械加工やプレス成形、或は射出成形(ダイキスト成形を含む)によってエンコーダを成形するだけで済み、形状精度及び寸法精度を確保する事が容易であり、エンコーダの製造コストを比較的低く抑えられる。従って、低コスト化を考えた場合、請求項4に記載した構造に比べて、請求項5又は請求項6に記載した構造が優れている。
【0021】
この場合に、上記エンコーダを構成する材質は、センサの種類によって選択する。例えば、このセンサが、永久磁石と、ホール素子或は磁気抵抗素子等の磁気検出素子とを備えた、アクティブ型の磁気センサである場合には、上記エンコーダを鋼板等の磁性金属製とする。この様な構造でも、上述した永久磁石製のエンコーダを使用した場合と同様に、上記エンコーダの被検出面のうちで上記センサの検出部が対向する部分の径方向位置の変化に伴って、このセンサの出力信号が変化する。
これに対して、上記センサが光学式のものであり、上記一方の被検出部が透孔である場合には、上記エンコーダは、光を遮る材質であれば良い。この場合には、このエンコーダの被検出面のうちで上記センサの検出部が対向する部分の径方向位置の変化に伴って、このセンサの出力信号が変化する周期が変化する(変化の大きさは変わらない)。
【0022】
上述の様な請求項5〜6に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項7に記載した様に、エンコーダを磁性材製とし、センサを、このエンコーダの被検出面の磁気特性の変化に対応して出力信号を変化させるものとする。そして、このエンコーダの径方向両端部に、第一、第二両被検出部同士の回転方向に関するピッチが径方向に関して変化しない非変化部を存在させる。
【0023】
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項8に記載した様に、検出すべき荷重を、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に径方向に作用するラジアル荷重とする。
この場合には、被検出面をエンコーダの軸方向側面とし、この被検出面に、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分より成る複数の被検出用組み合わせ部を、円周方向に亙り等間隔で配置する。
これら各被検出用組み合わせ部を構成する1対ずつの個性化部分同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部で、径方向に関して同じ方向に連続的に変化させる。
【0024】
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項9〜10に記載した様に、検出すべき荷重を、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に軸方向に作用するアキシアル荷重とする。
この場合には、被検出面をエンコーダの周面とし、この被検出面に、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置する。
【0025】
そして、請求項9に記載した発明の場合には、上記両被検出部の円周方向に関する幅のうち、第一被検出部の幅は軸方向一端側程広く、第二被検出部の幅は軸方向他端側程広くする。
【0026】
又、請求項10に記載した発明の場合には、第一、第二両被検出部の境界を、上記エンコーダの軸方向に対し傾斜させると共に、この境界の軸方向に対する傾斜方向を、このエンコーダの軸方向中間部を境に互いに逆方向とする。そして、この軸方向中間部を挟んでこのエンコーダの軸方向に離隔した位置に設置された1対のセンサを、このエンコーダの被検出面に対向させる。
【0027】
上述の様な請求項9〜10に記載した発明を実施する場合も、例えば請求項11に記載した様に、エンコーダを永久磁石製とする。そして、第一被検出部をN極とし、第二被検出部をS極とする。
或は、請求項12又は請求項13に記載した様に、第一被検出部を透孔若しくは凹孔又は凸部とし、第二被検出部を円周方向に隣り合う透孔若しくは凹孔又は凸部同士の間に存在する間部分又は凹部とする事も好ましい。この理由は、前述した請求項5又は請求項6に記載した構造部分で述べた様な理由により、上記請求項11に記載した永久磁石製のエンコーダに比べて、高精度のエンコーダを安価に造れ、荷重を精度良く検出できる構造を低コストで造れる為である。
【0028】
上述の様な請求項12〜13に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項14に記載した様に、エンコーダを磁性材製とし、センサを、このエンコーダの被検出面の磁気特性の変化に対応して出力信号を変化させるものとする。そして、このエンコーダの軸方向両端部に、第一、第二両被検出部同士の回転方向に関するピッチが軸方向に関して変化しない平行部を存在させる。
【0029】
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項15に記載した様に、検出すべき荷重を、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に軸方向に作用するアキシアル荷重とする。
この場合には、被検出面をエンコーダの周面とし、この被検出面に、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分より成る複数の被検出用組み合わせ部を、円周方向に亙り等間隔で配置する。
これら各被検出用組み合わせ部を構成する1対ずつの個性化部分同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部で、軸方向に関して同じ方向に連続的に変化させる。
【0030】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項16に記載した様に、エンコーダの被検出面のうちで円周方向に異なる3個所以上位置に、それぞれセンサの検出部を対向させる。そして、演算器は、これら各センサの出力信号を比較する事で、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に加わるモーメント荷重を算出する機能を有する。
この場合に例えば、請求項17に記載した様に、上記エンコーダの被検出面をこのエンコーダの周面とし、各センサの検出部をこのエンコーダの周面の円周方向等間隔位置に対向させる。
或は、請求項18に記載した様に、上記エンコーダの被検出面をこのエンコーダの軸方向側面とし、各センサの検出部をこのエンコーダの軸方向側面の円周方向等間隔位置に対向させる。
【0031】
又、本発明を実施するには、例えば請求項19に記載した様に、転がり軸受ユニットを、車輪支持用転がり軸受ユニットとする。この場合には、使用状態で、静止側軌道輪を懸架装置に支持固定し、回転側軌道輪に車輪を支持固定して、この回転側軌道輪を車輪と共に回転させる。
【0032】
或は、請求項20に記載した様に、転がり軸受ユニットを、工作機械の主軸をハウジングに回転自在に支持する為の転がり軸受ユニットとする。この場合には、使用状態で、静止側軌道輪である外輪を、このハウジング若しくはこのハウジングに固定された部分に内嵌固定し、回転側軌道輪である内輪を、上記主軸若しくはこの主軸と共に回転する部分に外嵌固定する。
【0033】
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項21〜24に記載した様に、転がり軸受ユニットを、車輪支持用転がり軸受ユニットであって、使用状態で、静止側軌道輪である外輪を懸架装置に支持固定し、回転側軌道輪であるハブを、車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するものとする。又、上記外輪の内周面に存在する、それぞれが静止側軌道である複列の外輪軌道と、上記ハブの外周面に存在する、それぞれが回転側軌道である複列の内輪軌道との間に転動体を、各列毎に複数個ずつ設けると共に、上記ハブの軸方向外端部に車輪を支持固定する為のフランジを設ける。
【0034】
そして、請求項21〜22に記載した発明の場合には、被検出面である外周面に凹部と凸部とを交互に配置したエンコーダを、上記ハブの軸方向内端部又は上記複列の内輪軌道の間部分に固定し、検出すべき荷重を、上記外輪と上記ハブとの間に軸方向に作用するアキシアル荷重とする。
そして、請求項21に記載した発明の場合には、上記エンコーダの外周面に存在する被検出面のうちの上部にセンサの検出部を、径方向に対向させる。又、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅を、軸方向内端側で広く、同じく外端側で狭くする。
又、請求項22に記載した発明の場合には、上記エンコーダの外周面に存在する被検出面のうちの下部にセンサの検出部を、径方向に対向させる。又、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅を、軸方向外端側で広く、同じく内端側で狭くする。
【0035】
一方、請求項23〜24に記載した発明の場合には、被検出面である軸方向内側面に凹部と凸部とを交互に配置したエンコーダを上記ハブの軸方向内端部に固定し、検出すべき荷重を、上記外輪とこのハブとの間に作用するアキシアル荷重とする。
そして、請求項23に記載した発明の場合には、上記エンコーダの軸方向内側面に存在する被検出面のうちの上部にセンサの検出部を、軸方向に対向させる。又、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅を、径方向外端側で広く、同じく内端側で狭くする。
又、請求項24に記載した発明の場合には、上記エンコーダの軸方向内側面に存在する被検出面のうちの下部にセンサの検出部を、軸方向に対向させる。又、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅を、径方向内端側で広く、同じく外端側で狭くする。
尚、上述した請求項21〜24に係る発明で言う凹部には、金属板を打ち抜いて成る透孔を含む。この場合に凸部とは、円周方向に隣り合う透孔同士の間部分を言う。
【0036】
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項25〜26に記載した様に、転がり軸受ユニットを車輪支持用転がり軸受ユニットとする。
この場合に、例えば請求項25に記載した様に、静止側軌道輪を、使用状態で懸架装置に支持固定されるものとし、回転側軌道輪を、車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するハブとする。そして、回転側軌道輪と共に回転する部材を、このハブに結合固定された、ディスクブレーキを構成するディスクロータとし、このディスクロータの外周面を被検出面とする。
或いは、請求項26に記載した様に、静止側軌道輪を、使用状態で懸架装置に支持固定される外輪とし、回転側軌道輪を、車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するハブとする。そして、回転側軌道輪と共に回転する部材を、このハブに結合固定された等速ジョイントとし、この等速ジョイントの一部外周面を被検出面とする。
【発明の効果】
【0037】
上述の様に構成する本発明の荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、以下の様に作用して、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に作用する荷重を求められる。先ず、これら両軌道輪同士の間に荷重が作用すると、これら両軌道輪同士が、静止側、回転側両軌道及び各転動体の弾性変形に伴って相対変位する。この結果、回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪に結合固定されてこの回転側軌道輪と共に回転する部材の一部に支持されたエンコーダの被検出面と、上記静止側軌道輪若しくは懸架装置の一部等の回転しない部分に支持されたセンサの検出部との位置関係が変化する。
【0038】
上記エンコーダの被検出面の特性が円周方向に関して変化するピッチ若しくは位相は、検出すべき荷重の作用方向に亙って連続的に変化している為、この荷重に基づいて上記両軌道輪同士が相対変位すると、上記回転側軌道輪の回転に伴って上記センサの出力信号が変化するパターン(変化の周期或は大きさ、若しくは位相)が変化する。このパターンの変化の程度と上記荷重の大きさとの間には相関関係があるので、このパターンに基づいて、この荷重の大きさを求められる。
【0039】
上記エンコーダとセンサとの組み合わせは、ABSやTCSの制御を行なう為に上記回転側軌道輪の回転速度を検出する為にも必要である(車輪支持用転がり軸受ユニットに関して実施する場合)。又、工作機械に関して実施する場合でも、主軸の回転速度を検出する為に必要である。本発明の荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、この様な回転速度を検出する為に必要な構造を工夫する事により上記荷重を求められる様に構成できて、転がり軸受ユニット部分に新たな部品を組み込む必要をなくせる。この為、この転がり軸受ユニットに加わる荷重を求める為の構造を、小型且つ軽量に構成できる。
【0040】
請求項2に記載した発明の場合、ラジアル荷重の変動に伴って、静止側軌道輪の中心軸に対し回転側軌道輪の中心軸が偏心すると、被検出面のうちでセンサの検出部が対向する部分の径方向位置が変化する。そして、上記ラジアル荷重の変動に伴って上記被検出面のうちでセンサの検出部が対向する部分の径方向位置が変化すると、上記検出部が対向する第一、第二両被検出部のうちの一方の被検出部の円周方向長さが長くなり、他方の被検出部の円周方向長さが短くなる。又、上記センサの出力信号が変化する周期或は変化する大きさは、上記検出部が対向する第一、第二両被検出部の円周方向長さに応じて変化する。そこで、上記センサの出力信号の変化のうちで、上記第一被検出部に対応した変化の周期或は大きさと、上記第二被検出部に対応した変化の周期或は大きさとの比を求めれば、上記両軌道輪の中心軸同士が径方向に偏心した程度、延てはこれら両軌道輪同士の間に作用しているラジアル荷重の大きさを求められる。
【0041】
又、請求項3に記載した発明の場合、ラジアル荷重の変動に伴って、静止側軌道輪の中心軸に対し回転側軌道輪の中心軸が偏心すると、被検出面のうちで1対のセンサの検出部が対向する部分の径方向位置が変化する。そして、上記ラジアル荷重の変動に伴って上記被検出面のうちで上記両センサの検出部が対向する部分の径方向位置が変化すると、一方のセンサの検出信号の位相が進むと同時に他方のセンサの検出信号の位相が遅れる。そこで、上記両センサの出力信号の位相のずれを求めれば、上記両軌道輪の中心軸同士が径方向に偏心した程度、延てはこれら両軌道輪同士の間に作用しているラジアル荷重の大きさを求められる。
【0042】
又、請求項7に記載した発明によれば、センサの検出部がエンコーダの被検出面の幅方向端部(外径側端部又は内径側端部)に対向した状態でも、これら検出部と被検出面との間の磁束の流れを安定させて、上記センサの出力信号を安定させる事ができる。
【0043】
又、請求項8に記載した発明の場合には、エンコーダの被検出面にその検出部を対向させたセンサの出力信号が、各個性化部分に対向する瞬間に変化するが、変化する間隔(周期)は、上記センサの検出部が対向する部分の径方向位置の変化に伴って変化する。
【0044】
又、請求項9に記載した発明の場合、アキシアル荷重の変動に伴って静止側軌道輪と回転側軌道輪との相対位置が軸方向にずれると、被検出面のうちでセンサの検出部が対向する部分の軸方向位置が変化する。
そこで、前述した請求項2に記載したラジアル荷重を求める場合と同様にして、上記両軌道輪同士の間に作用しているアキシアル荷重の大きさを求められる。
【0045】
又、請求項10に記載した発明の場合、アキシアル荷重の変動に伴って、静止側軌道輪に対し回転側軌道輪がアキシアル方向にずれると、被検出面のうちで1対のセンサの検出部が対向する部分の軸方向位置が変化する。そして、アキシアル荷重の変動に伴って上記被検出面のうちで上記両センサの検出部が対向する部分の軸方向位置が変化すると、一方のセンサの検出信号の位相が進むと同時に他方のセンサの検出信号の位相が遅れる。そこで、上記両センサの出力信号の位相のずれを求めれば、上記両軌道輪同士が軸方向にずれた程度、延てはこれら両軌道輪同士の間に作用しているアキシアル荷重の大きさを求められる。
【0046】
又、請求項14に記載した発明によれば、センサの検出部がエンコーダの被検出面の幅方向端部(軸方向両端部)に対向した状態でも、これら検出部と被検出面との間の磁束の流れを安定させて、上記センサの出力信号を安定させる事ができる。
【0047】
又、請求項15に記載した発明の場合には、エンコーダの被検出面にその検出部を対向させたセンサの出力信号が、各個性化部分に対向する瞬間に変化するが、変化する間隔(周期)は、上記センサの検出部が対向する部分の軸方向位置の変化に伴って変化する。
【0048】
又、請求項16に記載した発明によれば、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に加わる荷重のうち、ラジアル荷重成分やアキシアル荷重成分に限らず、これら両軌道輪同士の間に加わるモーメント荷重も求められる。
【0049】
又、請求項19に記載した発明によれば、車輪に加わる荷重の大きさを測定して、車両の安定運行の確保を図る為の制御の高度化を図れる。
【0050】
又、請求項20に記載した発明によれば、各種工作機械の主軸を支持する為の転がり軸受ユニットに組み込んで、この主軸に加わる荷重を測定し、工具の送り速度等を適切に調節して、被加工物の品質向上と加工能率の確保との両立を図れる。
【0051】
又、請求項21〜24に記載した発明によれば、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に作用する荷重の変動に伴うセンサの検出信号の変動を大きくして、この荷重の測定精度の向上を図れる。
【0052】
又、請求項25〜26に記載した発明によれば、車輪支持用転がり軸受ユニット側部分に、エンコーダやセンサを装着するスペースを確保できない場合でも、この車輪支持用転がり軸受ユニットに加わる荷重を測定できる構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】エンコーダ本体を取り出して図1の右方から見た図。
【図3】センサの検出部によるエンコーダの被検出面の走査部分を示す、図2と同様の図。
【図4】ラジアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図5】外輪とハブとの径方向変位とラジアル荷重との関係の1例を示す線図。
【図6】本発明の実施の形態の第2例に組み込むエンコーダの2例を示す斜視図及び正面図。
【図7】同第3例を示す断面図。
【図8】同第4例に組み込むエンコーダの3例を示す要部斜視図。
【図9】センサの検出部によるエンコーダの被検出面の走査部分を示す、エンコーダの被検出面を軸方向から見た図。
【図10】ラジアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図11】本発明の実施の形態の第5例を示す断面図。
【図12】同第5例に組み込むエンコーダの素材と組立状態とを示す斜視図。
【図13】アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図14】本発明の実施の形態の第6例を示す断面図。
【図15】同第7例に組み込むエンコーダの素材と組立状態とを示す斜視図。
【図16】同第8例を示す断面図。
【図17】同第8例に組み込むエンコーダの部分斜視図。
【図18】アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図19】本発明の実施の形態の第9例を示す断面図。
【図20】同第9例に組み込むエンコーダの斜視図。
【図21】アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図22】本発明の実施の形態の第10例を示す断面図。
【図23】同第10例に組み込むエンコーダの正面図。
【図24】本発明の実施の形態の第11例を示す部分断面図。
【図25】同第12例を示す断面図。
【図26】懸架装置と車輪との間への組み付け状態を示す略断面図。
【図27】変位に伴うセンサの出力信号の変動を説明する為の線図。
【図28】本発明の実施の形態の第13例を示す断面図。
【図29】同第14例を示す断面図。
【図30】同第15例を示す断面図。
【図31】同第16例を示す断面図。
【図32】同第17例を示す断面図。
【図33】同第17例に組み込むエンコーダの斜視図。
【図34】同じく展開図。
【図35】アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図36】本発明の実施の形態の第18例を示す断面図。
【図37】同第18例に組み込むエンコーダの斜視図。
【図38】同じく展開図。
【図39】アキシアル荷重の変動に伴って変化するセンサの出力信号を示す線図。
【図40】本発明の実施の形態の第19例を、中立状態と変位した状態とで示す部分断面図及び径方向から見た図。
【図41】エンコーダの被検出面と1対のセンサの検出部との位置関係を説明する為の、この被検出面を径方向から見た状態で示す図。
【図42】本発明の実施の形態の第20例を、中立状態と変位した状態とで示す部分断面図及び径方向から見た図。
【図43】本発明の実施の形態の第21例を示す、ディスクロータの外周縁部に設けた被検出面の形状の3例を示す略側面図。
【図44】センサの取付状態の1例を示す正面図及び側面図。
【図45】本発明の実施の形態の第22例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
[実施の形態の第1例]
図1〜5は、請求項1、2、4、19に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、車輪支持用転がり軸受ユニット1と、回転速度検出装置としての機能を兼ね備えた、荷重測定装置2とを備える。
このうちの車輪支持用転がり軸受ユニット1は、図1に示す様に、外輪3と、ハブ4と、複数の転動体5、5とを備える。このうちの外輪3は、使用状態で懸架装置に支持固定される静止側軌道輪であって、内周面に複列の外輪軌道6、6を、外周面にこの懸架装置に結合する為の外向フランジ状の取付部7を、それぞれ有する。又、上記ハブ4は、使用状態で車輪を支持固定してこの車輪と共に回転する回転側軌道輪であって、ハブ本体8と内輪9とを組み合わせ固定して成る。この様なハブ4は、外周面の軸方向外端部(懸架装置への組み付け状態で車体の幅方向外側となる端部)に車輪を支持固定する為のフランジ10を、軸方向中間部及び内輪9の外周面に複列の内輪軌道11、11を、それぞれ設けている。上記各転動体5、5は、これら各内輪軌道11、11と上記各外輪軌道6、6との間にそれぞれ複数個ずつ、転動自在に設けて、上記外輪3の内径側に上記ハブ4を、この外輪3と同心に回転自在に支持している。尚、図示の例では、転動体として玉を使用しているが、重量の嵩む車両の車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、各転動体として円すいころを使用する場合もある。転動体として玉を使用した構造の方が、同じく円すいころを使用した構造に比べて外輪とハブとの変位量を多くできるが、転動体として円すいころを使用した構造の場合にも、変位量は小さいものの変位はする為、本発明の対象となり得る。
【0055】
一方、上記荷重測定装置2は、図1に示す様に、エンコーダ12と、センサ13と、図示しない演算器とを備える。
このうちのエンコーダ12は、支持板14とエンコーダ本体15とから成る。このうちの支持板14は、軟鋼板等の磁性金属板を曲げ形成する事により、円輪部16と円筒部17とを傾斜部により連続させたもので、断面形状を大略J字形とし、全体を円環状としている。又、上記エンコーダ本体15は、ゴム磁石、プラスチック磁石等の永久磁石製で、全体を円輪状としており、上記円輪部16の軸方向内側面に、上記円筒部17と同心に添着固定されている。
【0056】
上記エンコーダ本体15を構成する永久磁石は、軸方向に着磁されており、その着磁方向を、円周方向に亙り、交互に且つ等間隔で変化させている。従って、被検出面である上記エンコーダ本体15の軸方向内側面には、N極とS極とが交互に、且つ、等間隔に配置されている。本例の場合には、これらN極に着磁された部分とS極に着磁された部分とが、上記エンコーダ12の被検出面に存在する、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とに対応する。そして、上記N極に着磁された部分とS極に着磁された部分との円周方向に関する幅のうち、N極に着磁された部分の幅を径方向外側程広く、S極に着磁された部分の幅を径方向内側程広くしている。これらN極とS極との着磁範囲は、図示の場合と逆にしても良い。
【0057】
上述の様に構成する上記エンコーダ12は、上記支持板14の円筒部17を前記内輪9の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌する事により、前記ハブ4の軸方向内端部に、このハブ4と同心に結合固定している。この状態で上記エンコーダ本体15の軸方向内側面は、上記ハブ4の中心軸に直交する仮想平面上に位置する。
【0058】
一方、前記センサ13は、前記外輪3の軸方向内端部に、カバー18を介して支持固定している。このカバー18は、合成樹脂を射出成形する事により、或は、金属板に絞り加工を施す事により、有底円筒状に形成されており、上記外輪3の内端開口部を塞ぐ状態で、この外輪3の内端部に嵌合固定されている。この様なカバー18を構成する底板部19の一部外径寄り部分で上記エンコーダ12の被検出面に対向する部分に取付孔20を、この底板部19を軸方向に貫通する状態で形成している。
【0059】
上記センサ13は、上記取付孔20を軸方向内方から外方に挿通する状態で、上記底板部19に支持固定されている。そして、上記センサ13の先端面(図1の左端面)に設けた検出部を、上記エンコーダ12の被検出面に、0.5〜2mm程度の測定隙間を介して、近接対向させている。又、アクティブ型の磁気センサである、上記センサ13の検出部には、ホール素子、磁気抵抗素子等の磁気検出素子を設けている。この様な磁気検出素子の特性は、N極に対向している状態とS極に対向している状態とで変化する。従って、前記ハブ4と共に上記エンコーダ12が回転すると、上記磁気検出素子の特性が変化し、上記センサ13の出力信号が変化する。
【0060】
この様にして上記センサ13の出力信号が変化する周期(周波数)は、上記ハブ4の回転速度に応じて変化する。具体的には、この回転速度が速くなる程、上記出力信号が変化する周期が短くなり、変化する周波数が高くなる。この為、この出力信号を車体側等に設けた図示しない制御器に送れば、上記エンコーダ12と共に回転する前記車輪の回転速度を求めて、ABSやTCSの制御を行なえる。この点に就いては、従来から知られている技術と同様である。
特に、本例の場合には、上記ハブ4と前記外輪3との間に作用するラジアル荷重の大きさに基づいて、上記出力信号が変化するパターンが変化する為、このパターンを観察する事により、上記ラジアル荷重を求める事ができる。この点に就いて、図3〜5を参照しつつ説明する。
【0061】
先ず、上記ラジアル荷重を求められる前提に就いて説明する。前述した特許文献1に記載されている様に、上記外輪3と上記ハブ4との径方向に関する相対位置は、これら外輪3とハブ4との間に加わるラジアル荷重の大きさに応じて変化する。この理由は、このラジアル荷重に基づいて、前記各転動体5、5、並びに、これら各転動体5、5の転動面が転がり接触する、前記各外輪軌道6、6及び前記各内輪軌道11、11の弾性変形量が変化する為である。上記特許文献1に記載されている従来技術の場合には、外輪とハブとの径方向に関する変位を変位センサにより直接測定する事により、これら外輪とハブとの間に加わるラジアル荷重を求める様にしていた。これに対して、本例の場合には、上記エンコーダ12と上記センサ13との相対変位に伴う上記出力信号の変化のパターンに基づいて、上記外輪3と上記ハブ4との間に加わるラジアル荷重の大きさを求める様にしている。この点に就いて、以下に説明する。
【0062】
上記外輪3と上記ハブ4との間に標準的なラジアル荷重(標準値)が加わっている場合に、上記センサ13の検出部が、上記エンコーダ12の被検出面の径方向中央部に対向していると仮定する。この場合に上記センサ13の検出部は、図3に鎖線αで示した、上記被検出面の中央部を走査する。この径方向中央部では、前記N極に着磁された部分の周方向に関する幅と、S極に着磁された部分の周方向に関する幅とが互いに等しいので、上記センサ13の出力信号は、図4の(A)に示す様に、基準電圧(例えば0V)を中心として両側に同じだけ振れる。即ち、上記出力信号の電圧がこの基準電圧よりも高くなる周期TH と低くなる周期TL とは互いに等しく(TH =TL )なる。又、上記出力信号の電圧の最大値と上記基準電圧との差△VH と、同じく最小値と基準電圧との差△VL とも、互いに等しく(△VH =△VL )なる。
【0063】
これに対して、上記外輪3と上記ハブ4との間に加わるラジアル荷重が標準値よりも大きくなると、このハブ4に対するこの外輪3の位置が下方にずれて、上記センサ13の検出部が、上記エンコーダ12の被検出面の径方向内側寄り部分に対向する。この場合に上記センサ13の検出部は、図3に鎖線βで示した、上記被検出面の径方向内寄り部分を走査する。この径方向内寄り部分では、上記N極に着磁された部分の周方向に関する幅が、S極に着磁された部分の周方向に関する幅よりも狭いので、上記センサ13の出力信号は、図4の(B)に示す様に、基準電圧(例えば0V)を中心として低位側に大きく振れる。即ち、上記出力信号の電圧がこの基準電圧よりも低くなる周期TL が高くなる周期TH よりも大きく(TH <TL )なる。又、上記出力信号の電圧の最小値と基準電圧との差△VL が、同じく最大値と基準電圧との差△VH よりも大きく(△VL >△VH )なる。
【0064】
更に、上述した場合とは逆に、上記外輪3と上記ハブ4との間に加わるラジアル荷重が標準値よりも小さくなると、このハブ4に対するこの外輪3の位置が上方にずれて、上記センサ13の検出部が、上記エンコーダ12の被検出面の径方向外側寄り部分に対向する。この場合に上記センサ13の検出部は、図3に鎖線γで示した、上記被検出面の径方向外寄り部分を走査する。この径方向外寄り部分では、上記N極に着磁された部分の周方向に関する幅が、S極に着磁された部分の周方向に関する幅よりも広いので、上記センサ13の出力信号は、図4の(C)に示す様に、基準電圧(例えば0V)を中心として高位側に大きく振れる。即ち、上記出力信号の電圧がこの基準電圧よりも高くなる周期TH が低くなる周期TL よりも大きく(TH >TL )なる。又、上記出力信号の電圧の最大値と上記基準電圧との差△VH が、同じく最小値と基準電圧との差△VL よりも大きく(△VH >△VL )なる。
【0065】
従って、上記センサ13の出力信号のパターンを見れば、上記外輪3の中心軸と上記ハブ4の中心軸とがずれている程度(径方向変位量)を求める事ができる。具体的には、この出力信号の電位が基準電圧よりも高くなる周期TH と低くなる周期TL との比「TH /TL 」を観察すれば、上記外輪3の中心軸と上記ハブ4の中心軸とがずれている程度(径方向変位量)を求める事ができる。又は、上記出力信号の電圧の最大値と上記基準電圧との差△VH と、同じく最小値と基準電圧との差△VL との比「△VH /△VL 」を観察する事によっても、上記径方向変位量を求められる。これら各比「TH /TL 」、「△VH /△VL 」と径方向変位量との関係は、何れの比に就いてもほぼ直線的であるから、容易に求められる。そして、求めた関係を、前記ラジアル荷重を算出する為の図示しない演算器(マイクロコンピュータ)にインストールするソフトウェア中に組み込んでおく。
【0066】
更に、上記径方向変位量と上記ラジアル荷重との関係は、計算により、或は実験により求められる。計算により求める場合には、前記転がり軸受ユニット1の諸元、即ち、前記各外輪軌道6、6及び前記各内輪軌道11、11の断面の曲率半径、前記各転動体5、5の数及び直径に加えて、上記外輪3及びハブ4の材質を基に、転がり軸受ユニットの技術分野で広く知られた理論に基づいて求める。又、実験により求める場合には、上記外輪3とハブ4との間に、それぞれが既知である、異なる大きさのラジアル荷重を加えつつ、これら外輪3とハブ4との径方向に関する相対変位量を測定する。何れにしても、上記径方向変位量と上記ラジアル荷重の大きさとに関して、図5に示す様な関係を求め、上記ソフトウェア中に組み込んでおく。
【0067】
本例は、上述の様に構成するので、転がり軸受ユニット部分に変位センサ等の新たな部品を組み込む必要なく、上記ラジアル荷重を求める事ができる。即ち、前記エンコーダ12とセンサ13との組み合わせは、ABSやTCSの制御を行なうべく、上記ハブ4の回転速度を検出する為にも必要である。本例の荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、この様な回転速度を検出する為に必要な構造を工夫する事により上記ラジアル荷重を求める構造である為、この転がり軸受ユニットに加わるラジアル荷重を求める為の構造を、小型且つ軽量に構成できる。
【0068】
尚、図4から明らかな通り、本例の場合、ラジアル荷重の大きさにより、上記センサ13の出力信号の電圧が基準電圧よりも高くなる周期TH と低くなる周期TL とが変化する。従って、上記ラジアル荷重の変動に関係なく、上記ハブ4の回転速度を正確に求める為には、上記両周期の和「TH +TL 」に基づいて、この回転速度を算出する。この和「TH +TL 」は、前記N極に着磁された部分及びS極に着磁された部分を、図2、3に示す様な扇形或は逆扇形にした場合でも、上記径方向変位に関係なくほぼ一定である為、上記回転速度を正確に求められる。
【0069】
[実施の形態の第2例]
図6の(A)は、請求項1、2、5に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、円輪状のエンコーダ12aの径方向中間部に透孔21、21を、円周方向に関して等間隔に形成している。本例の場合にこれら各透孔21、21は、上記エンコーダ12aの径方向外方に向かう程円周方向に関する幅が狭くなる逆扇形(若しくは倒立台形)としている。そして、円周方向に隣り合う透孔21、21同士の間部分22、22を、径方向外方に向かう程円周方向に関する幅が広くなる扇形(若しくは台形)としている。従って本例の場合には、上記各間部分22、22が請求項2に記載した第一被検出部となり、上記各透孔21、21部分が同じく第二被検出部となる。上述の場合とは逆に、図6の(B)に示す様に、透孔21a、21aの幅を径方向外方に向かう程大きくし、間部分22a、22aの幅を径方向外方に向かう程小さくする事もできる。
【0070】
何れの場合でも、適宜のセンサと組み合わせる事により、上述した実施の形態の第1例の場合と同様にして、このセンサを支持した外輪等の静止側軌道輪の中心軸と、上記エンコーダ12aを支持固定した、ハブ等の回転側軌道輪の中心軸との径方向に関する変位量を求められる。そして、これら静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に作用するラジアル荷重を求められる。尚、上記エンコーダ12aを構成する材質は、センサの種類によって選択する。
例えば、このセンサが、永久磁石と、ホール素子或は磁気抵抗素子等の磁気検出素子とを備えた、アクティブ型の磁気センサである場合には、上記エンコーダ12aを鋼板等の磁性金属製とする。上記センサが、永久磁石と、ポールピースと、コイルとから成る、パッシング型の磁気センサの場合も同様である。この様な構造でも、上記実施の形態の第1例の場合と同様に、このエンコーダ12aの被検出面のうちで上記センサの検出部が対向する部分の径方向位置の変化に伴って、このセンサの出力信号が変化する。磁気センサを使用する場合には、エンコーダの被検出面に、透孔に代えて、扇形或は逆扇形の凹部や凸部を形成する事もできる。被検出面にN極とS極とを配置した永久磁石製のエンコーダの場合には、磁束強度が不均一になる事に伴って、荷重の検出精度が悪化する可能性があるが、磁性金属に透孔、或は凹部や凸部を形成したエンコーダを使用すれば、この様な問題を生じないので、上記荷重の検出精度を確保し易い。
【0071】
これに対して、上記センサが光学式のものである場合には、上記エンコーダ12aの被検出面に形成する上記第一被検出部又は第二被検出部の一方の構造は透孔に限る。この場合には、このエンコーダ12aを構成する材質は、光を遮る材質であれば良い。光学式のセンサを使用する場合には、このエンコーダ12aの被検出面のうちで上記センサの検出部が対向する部分の径方向位置の変化に伴って、このセンサの出力信号が変化する周期が変化する(変化の大きさは変わらない)。
エンコーダ12a以外の部分の構造及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0072】
[実施の形態の第3例]
図7は、請求項1、2、19に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、ハブ4aの軸方向中間部で複列に配置された転動体5、5同士の間にエンコーダ12bを外嵌固定している。このエンコーダ12bは、断面L字形で全体を円環状に形成した支持板14aを備える。そして、この支持板14aの円輪部23の軸方向片側面に、前述の図2、3に示す様な永久磁石製のエンコーダ本体15を添着するか、上記円輪部23に前述の図6に示す様な透孔21、21a若しくは凹孔を形成する事で、この円輪部23自体にエンコーダとしての機能を持たせる。
【0073】
この様なエンコーダ12bと組み合わされるセンサ13aは、外輪3の軸方向中間部で複列の外輪軌道6、6の間部分に形成された取付孔20aに、この外輪3の径方向外方から内方に向け挿通している。そして、上記センサ13aの先端部で軸方向側面に設けた検出部を、上記円輪部23の軸方向側面に添着したエンコーダ本体15の被検出面又はこの円輪部23自身の側面に近接対向させている。
上記センサ13aの出力信号のパターンに基づいてハブ4aの中心軸と上記外輪3の中心軸とのずれを求め、このずれからこれらハブ4aと外輪3との間に作用するラジアル荷重を求める点に関しては、前述した実施の形態の第1例或は実施の形態の第2例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0074】
[実施の形態の第4例]
図8〜10は、請求項1、8に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、被検出面であるエンコーダ12cの軸方向側面に複数の被検出用組み合わせ部24、24を、円周方向に亙り等間隔で配置している。これら各被検出用組み合わせ部24、24は、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分25、25により構成している。この様な各個性化部分25、25としては、図8の(A)に示す様なスリット状の長孔、同じく(B)に示す様な凹孔、同じく(C)に示す様な土手状の凸部を採用可能である。上記各個性化部分25、25が何れのものであっても、上記各被検出用組み合わせ部24、24を構成する1対ずつの個性化部分25、25同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部24、24で、径方向に関して同じ方向に連続的に変化させる。図示の例では、各被検出用組み合わせ部24、24を構成する1対ずつの個性化部分25、25同士の円周方向に関する間隔が、上記エンコーダ12cの径方向外側程大きくなり、円周方向に隣り合う各被検出用組み合わせ部24、24を構成する個性化部分25、25同士の円周方向に関する間隔が、上記エンコーダ12cの径方向外側程小さくなる方向に傾斜している。
【0075】
上述の様なエンコーダ12cの被検出面にその検出部を対向させたセンサの出力信号は、図10に示す様に、上記各個性化部分25、25に対向する瞬間に変化する。そして、変化する間隔(周期)は、上記センサの検出部が対向する部分の径方向位置の変化に伴って変化する。
例えば、外輪等の静止側軌道輪とハブ等の回転側軌道輪との間に標準的なラジアル荷重(標準値)が加わっている場合、上記センサの検出部は、図9、10に鎖線αで示した、上記被検出面の中央部を走査する。この場合に上記センサの出力信号は、図10の(B)に示す様に変化する。
これに対して、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間に加わるラジアル荷重が標準値よりも大きくなると、上記センサの検出部は、例えば、図9、10に鎖線βで示した、上記被検出面の径方向内寄り部分を走査する。この場合に上記センサの出力信号は、図10の(A)に示す様に変化する。
更に、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間に加わるラジアル荷重が標準値よりも小さくなると、上記センサの検出部は、例えば、図9、10に鎖線γで示した、上記被検出面の径方向外寄り部分を走査する。この場合に上記センサの出力信号は、図10の(C)に示す様に変化する。
従って、本例の場合も、上記センサの出力信号のパターン(変化の間隔)を見れば、上記静止側軌道輪の中心軸と上記回転側軌道輪の中心軸とがずれている程度(径方向変位量)を求め、更にこのずれている程度から、これら両軌道輪同士の間に加わるラジアル荷重を求める事ができる。
【0076】
[実施の形態の第5例]
図11〜13は、請求項1、9、11、19に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、ハブ4aの軸方向中間部で複列に配置された転動体5、5同士の間部分に、エンコーダ12dを外嵌固定している。このエンコーダ12dは、図12の(A)に示す様な帯状の素材を丸める事により、図12の(B)に示す様に構成したもので、円筒状の支持板14bの外周面に同じく円筒状のエンコーダ本体15bを、全周に亙って添着固定して成る。
【0077】
上記エンコーダ本体15bは、ゴム磁石、プラスチック磁石等の永久磁石製で、径方向に着磁している。着磁方向は、円周方向に亙って交互に且つ等間隔で変化させている。従って、被検出面である上記エンコーダ本体15bの外周面には、N極とS極とが、交互に、且つ、等間隔で配置されている。このうち、第一被検出部であるN極に着磁された部分の円周方向に関する幅は、上記エンコーダ本体15bの軸方向一端部で広く、他端部で狭くしている。これに対して、第二被検出部であるS極に着磁された部分の円周方向に関する幅は、上記エンコーダ本体15bの軸方向一端部で狭く、他端部で広くしている。
【0078】
この様なエンコーダ12dと組み合わされるセンサ13bは、外輪3の軸方向中間部で複列の外輪軌道6、6の間部分に形成された取付孔20aに、この外輪3の径方向外方から内方に向け挿通している。そして、上記センサ13bの先端面に設けた検出部を、上記エンコーダ本体15bの外周面に近接対向させている。
【0079】
上述の様な構成を有する本例の場合、上記外輪3と上記ハブ4aとの間に加わるアキシアル荷重の変動に伴ってこれら外輪3とハブ4aとの相対位置が軸方向にずれると、上記エンコーダ本体15bの外周面のうちで上記センサ13bの検出部が対向する部分の軸方向位置が変化する。この結果、前述した実施の形態の第1例の場合と同様に、上記センサ13bの出力信号が変化するパターンは、図13に示す様に変わる。この図13に示す様なセンサ13bの出力信号が変化するパターンと、上記外輪3と上記ハブ4aとの間に加わるアキシアル荷重の大きさとの関係も、前述した実施の形態の第1例でのラジアル荷重と出力信号の変化のパターンとの関係と同様に、計算或は実験により求められる。従って、この出力信号の変化のパターンを観察する事で、上記アキシアル荷重の大きさを求める事ができる。
【0080】
[実施の形態の第6例]
図14は、請求項1、9、11、19に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合には、ハブ4aの軸方向内端部にエンコーダ12eを外嵌固定している。このエンコーダ12eは、支持板14cを備える。そして、この支持板14cの円筒部26の内周面に、その内周面にN極とS極とを、それぞれ扇形若しくは台形の範囲に着磁した状態で交互に配置した永久磁石製のエンコーダ本体を添着するか、上記円筒部26に扇形若しくは台形の透孔を形成する事で、この円筒部26自体にエンコーダとしての機能を持たせる。そして、外輪3の内端開口部に固定したカバー18aに支持固定したセンサ13cの検出部を、被検出面である上記エンコーダ12eの内周面に近接対向させている。
この様な本例の場合も、上記センサ13cの出力信号の変化のパターンを観察する事で、上記外輪3と上記ハブ4aとの間に作用するアキシアル荷重の大きさを求める事ができる。
【0081】
[実施の形態の第7例]
図15は、請求項1、15に対応する、本発明の実施の形態の第7例を示している。本例は、前述の図8〜10に示した実施の形態の第4例の構造を、アキシアル荷重の大きさを求める為に適用したものである。即ち、本例の場合には、被検出面である円筒状のエンコーダ12fの外周面(又は内周面)に、複数の被検出用組み合わせ部24、24を、円周方向に亙り等間隔で配置している。これら各被検出用組み合わせ部24、24は、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分25、25により構成している。この様な各個性化部分25、25として本例の場合には、スリット状の長孔を採用している。
【0082】
この様な各個性化部分25、25を有する上記エンコーダ12fは、図15の(A)に示す様な、予め上記各長孔を打ち抜き形成した帯状の磁性金属板を丸め、円周方向両端縁同士を突き合わせ溶接する事により造る。尚、上記各個性化部分25、25としては、前述の図8の(B)に示す様な凹孔、同じく(C)に示す様な土手状の凸部も採用可能である。本例の場合も、上記実施の形態の第4例の場合と同様に、上記各被検出用組み合わせ部24、24を構成する1対ずつの個性化部分25、25同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部24、24で軸方向に関して同じ方向に連続的に変化させる。即ち、各被検出用組み合わせ部24、24を構成する1対ずつの個性化部分25、25同士の円周方向に関する間隔が、上記エンコーダ12fの軸方向一端(図15の右下端)程小さくなり、円周方向に隣り合う各被検出用組み合わせ部24、24を構成する個性化部分25、25同士の円周方向に関する間隔が、上記エンコーダ12fの軸方向他端(図15の左上端)程小さくなる方向に傾斜している。
【0083】
上述の様なエンコーダ12fの被検出面である外周面(又は内周面)にその検出部を対向させたセンサの出力信号は、前述の実施の形態の第4例の場合と同様に、図10に示す様に、上記各個性化部分25、25に対向する瞬間に変化する。そして、変化する間隔(周期)は、上記センサの検出部が対向する部分の軸方向位置の変化に伴って変化する。従って、本例の場合も、上記センサの出力信号のパターンを見れば、静止側軌道輪と回転側軌道輪とが軸方向にずれている程度(軸方向変位量)を求め、更にこのずれている程度から、これら両軌道輪同士の間に加わるアキシアル荷重を求める事ができる。上記センサの出力信号のパターンから荷重を求める手法に関しては、求めるべき荷重がラジアル荷重からアキシアル荷重に変わった以外、上記実施の形態の第4例の場合と同様である。
尚、請求項12に対応する構造は図示しない。但し、図8の(A)に示した円輪状のエンコーダ12cの構造を図15の(B)に示した円筒状のエンコーダ12fに適用したのと同様に、図6に示した円輪状のエンコーダ12aの構造を円筒状のエンコーダに適用すれば、上記請求項12に対応する構造となる。
【0084】
[実施の形態の第8例]
図16〜18は、請求項1、9、13、19に対応する、本発明の実施の形態の第8例を示している。本例は、駆動輪用の車輪支持用転がり軸受ユニット1aで本発明を実施した場合に就いて示している。又、重量の嵩む車両に組み込む事を考慮して、転動体5a、5aとして円すいころを使用している。この様な本例の場合、ハブ4bの軸方向中間部で複列の内輪軌道11a、11a同士の間部分に、図17に示す様なエンコーダ12gを外嵌固定している。このエンコーダ12gは、磁性金属材により全体を円環状とされたもので、外周面に、第一被検出部である凸部27、27と、第二被検出部である凹部28、28とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で形成している。
【0085】
上述の様な構成を有する本例の場合、内周面に複列の外輪軌道6a、6aを形成した外輪3aと、上記ハブ4bとの間に加わるアキシアル荷重の変動に伴ってこれら外輪3aとハブ4bとの相対位置が軸方向にずれると、上記エンコーダ12gの外周面のうちでこの外輪3aの軸方向中間部に支持したセンサ13dの検出部が対向する部分の軸方向位置が変化する。この結果、前述した実施の形態の第5例の場合と同様に、上記センサ13dの出力信号が変化するパターン(デューティー比)が、図18に示す様に変わる。この図18に示す様なセンサ13dの出力信号が変化するパターンと、上記外輪3aと上記ハブ4bとの間に加わるアキシアル荷重の大きさとの関係も、前述した実施の形態の第5例と同様に、計算或は実験により求められる。従って、この出力信号の変化のパターンを観察する事で、上記アキシアル荷重の大きさを求める事ができる。
尚、本例の様に、台形若しくは倒立台形の凹部と凸部とを円周方向に関して交互に配置する構造を、被検出面を軸方向側面に形成したエンコーダに適用し、転がり軸受ユニットに加わるラジアル荷重測定に使用する事もできる。
【0086】
[実施の形態の第9例]
図19〜21は、請求項1、9、13、14、19に対応する、本発明の実施の形態の第9例を示している。本例は、上述した実施の形態の第8例の構造を基本として、ハブ4bの中間部に外嵌固定するエンコーダ12hの外周面に形成した凸部27a、27aと凹部28a、28aとの形状を工夫する事により、センサ13dの出力信号を安定させるものである。即ち、本例の場合には、上記各凸部27a、27a及び凹部28a、28aの軸方向両端部を、それぞれ上記エンコーダ12hの円周方向に関する幅寸法がこのエンコーダ12hの軸方向に関して変化しない、平行部29a、29b、30a、30bとしている。従って、上記エンコーダ12hの被検出面である外周面の特性が円周方向に関して変化するピッチは、この外周面の軸方向中間部では、軸方向位置により変動するが、軸方向両端部では軸方向位置に拘らず変動しない。
【0087】
本例の場合に、上記各平行部29a、29b、30a、30bを設ける事で、上記センサ13dの出力信号を安定させられる理由は、次の通りである。前述した通り、エンコーダとして磁性材製で被検出面に凹凸部を形成したものを使用する事により、永久磁石製のエンコーダに比べて被検出面の特性変化のピッチを高精度にできる。但し、上述した実施の形態の第8例の構造の場合には、この特性変化のピッチを短くすべく、凹部と凸部との間隔を短くすると、センサの検出部がエンコーダの被検出面の幅方向両端部(軸方向両端部)近傍に対向する状態で、これら検出部と被検出面との間を流れる磁束の流れが不安定になり、上記センサの出力が不安定になり易い。例えば、図17に示したエンコーダ12gで、凸部27、27と凹部28、28とのピッチを短くした場合、円周方向に隣り合う台形の凸部27、27の底辺同士が近接する。特に、上記エンコーダ12gとセンサ13dとが軸方向に大きくずれた場合でもハブ4bの回転速度検出を可能とすべく、これらエンコーダ12gとセンサ13dとの間で許容される軸方向に関する相対変位量を確保する為に、上記台形形状の高さ寸法を大きくした場合に、上述の様に円周方向に隣り合う台形の凸部27、27の底辺同士が近接する傾向が著しくなる。
【0088】
これに対して本例の場合には、上記各平行部29a、29b、30a、30bを設ける事に伴って、円周方向に隣り合う台形の凸部27a、27aの底辺同士が過度に近接する事を防止できる。そして、上記センサ13dの検出部が上記エンコーダ12hの外周面の軸方向端部で上記凸部27a、27aの底辺に対応する部分に対向した場合でも、上記センサ13dの検出部と上記エンコーダ12hの被検出面との間を流れる磁束の流れを安定させて、上記センサ13dの出力を安定させる事ができる。又、上記ハブ4bと外輪3aとの軸方向の変位量が多少大きくなっても、上記センサ13dによる、このハブ4bの回転速度検出を行なえる。
【0089】
尚、上記各平行部29a、29b、30a、30bの円周方向両側縁の形状は、直線としているが、この部分の形状は必ずしも直線でなくても良い。例えば、上記センサ13dの感度や感受範囲(スポット径)によって、軸方向に対し多少傾斜させたり、曲率半径の大きな円弧状にする事もできる。
又、上記エンコーダ12hと組み合わせる上記センサ13dの構造は、永久磁石を組み込んだものであれば、特にその型式を問わない。即ち、この永久磁石から出る磁束の流れを導くポールピースの周囲にコイルを巻回して成る、所謂パッシブ型のものであっても、磁束の密度に応じて特性を変化させる磁気検出素子を組み込んだ、所謂アクティブ型のものであっても使用できる。但し、図21に示す様に、上記センサ13dの検出部が上記エンコーダ12hの軸方向中間部に対向した状態で、このエンコーダ12hの外周面に存在する上記各凸部27a、27a及び前記凹部28a、28aの、回転方向に関する長さ寸法の比率をセンシングする必要上、上記センサ13dのスポット径は小さい方が、この比率を高精度で求める面から好ましい。
その他の部分の構造及び作用は、前述した実施の形態の第8例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0090】
[実施の形態の第10例]
図22〜23は、請求項1、2、5、7、19に対応する、本発明の実施の形態の第10例を示している。本例は、前述の図6の(A)に示したエンコーダの形状を工夫する事により、センサ13eの検出部がこのエンコーダの被検出面の外径寄り部分或は内径寄り部分に対向する場合にも、上記センサ13eの出力が安定する様にしている。即ち、本例の場合には、磁性金属板製のエンコーダ12iに形成した透孔21b、21bと間部分22b、22bとの内径側、外径側両端部に、非変化部31a、31b、32a、32bを設けている。これら各非変化部31a、31b、32a、32bの円周方向両端縁は、それぞれ上記エンコーダ12iの直径方向に存在する。従って上記各非変化部31a、31b、32a、32bでは、被検出面である上記エンコーダ12iの軸方向内側面の回転方向に関する特性変化のピッチが、径方向に関して変化しない。
本例の場合には、ラジアル荷重を測定する点に関しては、前述の図6に示した実施の形態の第2例と同様であり、磁束の流れを安定させてセンサ13eの出力を安定させる点に関しては、上述の実施の形態の第9例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0091】
[実施の形態の第11例]
図24は、請求項1、16に対応する、本発明の実施の形態の第11例を示している。本例の場合には、被検出面であるエンコーダ12jの外周面の円周方向等間隔の3個所位置に、それぞれセンサ13f、13g、13hの検出部を対向させている。そして、これら各センサ13f、13g、13hにより、ハブ4a(例えば図11参照)の回転速度と、このハブ4aと外輪3(例えば図11参照)との間に加わるアキシアル荷重と、これらハブ4aと外輪3との間に加わるモーメント荷重とを測定可能としている。尚、本例により求められるモーメント荷重は、上記ハブ4a及び外輪3の中心軸に対し直角方向の仮想軸の周りのモーメントである。
【0092】
この様な本例の場合には、上記ハブ4aと上記外輪3との間に加わるアキシアル荷重だけでなく、これらハブ4aと外輪3との間に加わるモーメント荷重を測定できる。即ち、これらハブ4aと外輪3との間にモーメント荷重が加わった結果、これらハブ4aの中心軸と外輪3の中心軸とがずれると、これらハブ4aと外輪3との間に生じる、アキシアル方向のずれが、上記各センサ13f、13g、13hの検出部が対向する部分毎に異なる。そして、上記モーメント荷重の方向に応じて、これら各センサ13f、13g、13hの出力信号が異なるパターン(これら各センサ13f、13g、13hの出力信号の大小関係)が異なる。又、上記モーメント荷重が大きくなる程、各センサ13f、13g、13hの出力信号同士の差が大きくなる。従って、これら各センサ13f、13g、13hの出力信号の大小関係と、上記モーメント荷重の作用方向及び大きさとの関係を、予め計算或は実験により求めて演算器にインストールするソフトウェアの計算式中に組み込んでおけば、上記ハブ4aと上記外輪3との間に加わるアキシアル荷重だけでなく、これらハブ4aと外輪3との間に加わるモーメント荷重を測定できる。
【0093】
例えば、上記各センサ13f、13g、13hの出力信号に基づいて、各部分に加わるアキシアル荷重を測定し、これら各部分のアキシアル荷重と、前記エンコーダ12jの直径とから、上記モーメント荷重を算出する。尚、上記アキシアル荷重は、上記各センサ13f、13g、13hの出力信号の平均値に基づいて求めるか、或はこれら各センサ13f、13g、13hの出力信号より求めたアキシアル荷重を平均する。この様にして求めたアキシアル荷重及びモーメント荷重、並びに上記ハブ4aの回転速度を表す信号は、他の実施の形態の場合と同様に、ABSやTCSの制御器に送り、車両の姿勢安定化の為の制御に利用する。
その他の部分の構造及び作用は、例えば前述の図11〜13に示した実施の形態の第5例、或は前述の図16〜18に示した実施の形態の第8例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0094】
[実施の形態の第12例]
図25〜27は、請求項1、19、21に対応する、本発明の実施の形態の第12例を示している。本例は、エンコーダ12gとセンサ13Aとの設置位置を工夫する事により、外輪3aとハブ4bとの間に作用するアキシアル荷重の測定精度を向上させる事を目的としたものである。先ず、この様な点を考慮した構造が必要になる理由に就いて、説明する。
前述した通り、エンコーダとして、図17に示す様に、磁性材製で被検出面に凹凸部を形成したものを使用する事により、永久磁石製のエンコーダに比べて被検出面の特性変化のピッチを高精度にできる。但し、被検出面にそれぞれが台形である凸部27、27と凹部28、28とを交互に形成した磁性材製のエンコーダ12gと、磁気検知式のセンサとを組み合わせた場合でも、このセンサの出力信号のデューティ比(出力信号の電圧の高位と低位との比)の変化量は僅かになる。この様にデューティ比の変化量が僅かである場合にも、上記センサの出力信号に基づいて上記荷重を正確に求める為には、この出力信号中に含まれるノイズ成分を補正(除去)すべく、ローパスフィルタ、ノッチフィルタ、適応フィルタ等のフィルタによるデータ処理が必要となる。これらのデータ処理のうちの適応フィルタ以外のデータ処理は応答遅れを伴うので、車両の走行状態安定化制御をより的確に行なう面からは好ましくない。又、応答フィルタは応答遅れがない代わりにコストが嵩む。
【0095】
これらの事を考慮した場合には、上記出力信号中に含まれるノイズ成分のレベルを小さくし、応答遅れを生じたりコストを増大させる様なフィルタによる後処理を極力避ける事が好ましい。上記ノイズ成分のレベルを相対的に小さく(S/N比を大きく)する為には、検出すべき荷重に基づく変位により上記出力信号のデューティ比が変化する程度を大きくすれば良い。この為には、上記各凸部27、27と上記各凹部28、28との境界部(段差部)の軸方向に対する傾斜角度を大きくする事が考えられる。この傾斜角度を大きくすれば、上記エンコーダ12gの軸方向の変位に関して、単位変位当たりのデューティ比の変化量を大きくできる。但し、上記傾斜角度を大きくすると、上記エンコーダ12gの全周に亙って形成できる上記各凸部27、27と上記各凹部28、28との数が少なく(特性変化に関する1ピッチの幅が大きく)なり、上記エンコーダ12gが1回転する間に前記センサ13Aの出力信号が変化する回数(パルス数)が減る。この結果、前記外輪3aと前記ハブ4bとの間に作用する荷重をよりリアルタイムで求める面から不利になる為、条件によっては使用できない。
本例は、上述の様な事情に鑑みて、上記境界部の軸方向に対する傾斜角度を特に大きくせずに、上記エンコーダ12gの単位変位当たりの、上記センサ13Aの出力信号のデューティ比の変化を大きくし、このエンコーダ12gの変位、延いては前記アキシアル荷重を精度良く測定可能とすべく発明したものである。
【0096】
上述の様な事情に鑑みて本例の場合には、被検出面である外周面に上記各凸部27、27と上記各凹部28、28とを交互に配置した上記エンコーダ12gを、回転側軌道輪であるハブ4bの軸方向内端部に外嵌固定している。又、外輪3a若しくは懸架装置を構成するナックル等、回転しない部分に支持したセンサ13Aを上記エンコーダ12gの上方に配置し、このセンサ13Aの検出部を、このエンコーダ12gの外周面の上端部に、径方向に対向させている。更に、このエンコーダ12gの外周面に形成した上記各凸部27、27と上記各凹部28、28とのうちで、これら各凹部28、28の円周方向に関する幅を、軸方向内端側(図25の右側)で広く、同じく外端側(図25の左側)で狭くしている。本例の場合には、この様な構成により、上記エンコーダ12gの単位変位当たりの、上記センサ13Aの出力信号のデューティ比の変化を大きくできて、このエンコーダ12gの変位、延いては前記アキシアル荷重を精度良く測定できる。
【0097】
即ち、図26に示す様に、路面と車輪支持用転がり軸受ユニット1aとの間には所定の高さ(車輪半径)が存在する為に、自動車の車輪(タイヤ)の外周面と路面との間で発生するアキシアル荷重は上記車輪支持用転がり軸受ユニット1aに、モーメント荷重を含む荷重として作用する。そして、このモーメント荷重を含む荷重により、上記ハブ4bと上記外輪3aとの間に相対的な変位が発生する。例えば路面から車体内側方向(図25の右方向)にアキシアル荷重が作用する場合、上記ハブ4b全体が車体内側方向に変位すると同時に、モーメント荷重によってこのハブ4bが図25の反時計方向に揺動する傾向になる。この結果、上記エンコーダ12gは、図25の右方向に変位すると共に上方向にも変位する。この様に上記アキシアル荷重は、モーメント荷重を含む荷重として上記ハブ4bと上記外輪3aとの間に加わり、これらハブ4bと外輪3aとが相対変位する。この場合に、上記モーメント荷重に基づく上記エンコーダ12gと上記センサ13Aとの相対変位の方向と、上記アキシアル荷重に基づく上記エンコーダ12gと上記センサ13Aとの相対変位の方向とを一致させる事が、上記出力信号のデューティ比の変化を大きくする面から有効である。本例は、この様な観点から発明したものである。
【0098】
前述の図16〜18に示した実施の形態の第8例部分の説明から明らかな様に、上記エンコーダ12gが右方向に変位する事により、上記センサ13Aの出力信号のデューティ比が変化する。同時に、上記エンコーダ12gが上方向に変位する事によっても、このデューティ比が変化する。この様にエンコーダ12gが上方向に変位する事によりこのデューティ比が変化する状態を、図27により説明する。この図27の縦軸は、上記センサ13Aの検出部と上記エンコーダ12gの外周面(被検出面)との相対変位を表している。但し、上記図27の縦軸を磁束密度と考えても同様である。何れにしても、このエンコーダ12gの外周面に存在する前記各凸部27、27と前記各凹部28、28との境界部にダレや面取りが存在する場合、或は、上記センサ13Aの検出部の直径(スポット径)が大きい場合には、このセンサ13Aの出力信号の波形は、完全な矩形波ではなく、正弦波に近い波形になる。
【0099】
この出力信号の波形がこの様な正弦波的な波形であると、この出力信号の立上り及び立下りのエッジを識別するスレッシュレベルが一定値の場合、上記エンコーダ12gが上記センサ13A側に変位すると、上記図27に示した波形は全体的にオフセットする。即ち、これらエンコーダ12gの被検出面とセンサ13Aの検出部との距離が短くなる事で、出力信号の電圧レベルが全体的に高くなる。この状態では、図27の上側の曲線とスレッシュレベルとの交点を見れば明らかな通り、上記出力信号の1周期に占める、凸部27、27と認識される部分の割合が増え、上記デューティ比が変化する。即ち、アキシアル方向(横方向)に変位しなくても、上記センサ13Aの出力信号のデューティ比が変化する。
【0100】
上述の説明から明らかな通り、図25に示す様に、センサ13Aが上記エンコーダ12gの上方に配置されている場合、このエンコーダ12gが上方に変位し、このエンコーダ12gの外周面と上記センサ13Aの検出部との距離(ギャップ)が小さくなると、このセンサ13Aの出力信号の1周期に占める、上記各凸部27、27と認識される部分の割合が増える。従って、モーメント荷重を含む荷重として作用する、軸方向内側(図25の右側)に向いたアキシアル荷重に基づく上記エンコーダ12gの変位が、上記各凸部27、27の割合が大きくなる方向にこのエンコーダ12gを装着しておけば、上記モーメント荷重に基づく上記エンコーダ12gと上記センサ13Aとの相対変位の方向と、上記アキシアル荷重に基づくこれらエンコーダ12gとセンサ13Aとの相対変位の方向とを一致させて、上記出力信号のデューティ比の変化を大きくできる。路面から車体外側方向(図25の左方向)にアキシアル荷重が作用する場合も、上述の説明で方向が逆になる以外、同じである。
【0101】
[実施の形態の第13例]
図28は、請求項1、19、22に対応する、本発明の実施の形態の第13例を示している。本例の場合には、エンコーダ12gの下方にセンサ13Aを配置し、このセンサ13Aの検出部を、被検出面である、このエンコーダ12gの外周面の下端部に対向させている。そして、このエンコーダ12gの外周面に形成された各凸部27、27と各凹部28、28(図17、27参照)とのうちの凹部28、28の円周方向に関する幅を、軸方向外端側で広く、同じく内端側で狭くしている。即ち、本例の場合には、上記センサ13Aの設置位置を上述した実施の形態の第12例と上下逆にすると同時に、上記各凹部28、28の配列を、この実施の形態の第12例と内外逆にしている。
【0102】
この様な本例の場合も、モーメント荷重に基づく上記エンコーダ12gと上記センサ13Aとの相対変位の方向と、アキシアル荷重に基づくこれらエンコーダ12gとセンサ13Aとの相対変位の方向とを一致させて、このセンサ13Aの出力信号のデューティ比の変化を大きくできる。尚、本例の様に、上記エンコーダ12gの下方に上記センサ13Aを設置すると、アキシアル荷重による横方向変位と、モーメント荷重による横変位との方向が一致するので、荷重の測定精度確保の面からは好ましい。但し、上記センサ13Aを上記エンコーダ12gの下方に設置すると、車輪が跳ね上げた石等の異物によりこのセンサ13Aが損傷を受け易くなるので、このセンサ13Aの強度等を勘案して、各部品13A、12gの設置位置及び設置方向を決定する。
【0103】
[実施の形態の第14例]
図29は、請求項1、19、23に対応する、本発明の実施の形態の第14例を示している。本例の場合には、被検出面である軸方向内側面に凹部と凸部とを交互に配置したエンコーダ12Aを、回転側軌道輪であるハブ4bの軸方向内端部に固定している。このエンコーダ12Aの軸方向内側面に存在する被検出面のうちの上部にセンサ13Bの検出部を、軸方向に対向させている。又、上記エンコーダ12Aの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅を、径方向外端側で広く、同じく内端側で狭くしている。
【0104】
車輪から車輪支持用転がり軸受ユニット1aに加わるアキシアル荷重を測定する為には、図25〜28に示す様に、円筒状のエンコーダ12gの周面に存在する被検出面にセンサ13Aを、径方向に対向させて、アキシアル荷重に伴う、このセンサ13Aの出力信号のデューティ比の変化を検出する方が好ましい。但し、設置スペース上の制約等により、上記エンコーダ12gやセンサ13Aの設置を行なえず、図29に示す様に、センサ13Bをエンコーダ12Aに対し、軸方向に対向させる可能性もある。前述した様に、車輪の外周面と路面との当接部から上記車輪支持用転がり軸受ユニット1aに加わるアキシアル荷重は、モーメント荷重を含む荷重として、この車輪支持用転がり軸受ユニット1aに作用する。従って、上述の様に、センサ13Bをエンコーダ12Aに対し、軸方向に対向させる構造でも、上記アキシアル荷重を求める事は可能である。
【0105】
この様な構造で上記車輪支持用転がり軸受ユニット1aに、例えば路面から軸方向内側(図29の右側)に向いたアキシアル荷重が作用する場合、上記エンコーダ12Aはアキシアル荷重に基づいて右方向に変位し、このエンコーダ12Aの被検出面と上記センサ13Bの検出部との距離(ギャップ)が小さくなる。同時に、このエンコーダ12Aは、上記モーメント荷重により上方向に変位する。従って、このモーメント荷重に基づく上方への変位により上記センサ13Bの出力信号のデューティ比が変化する方向(傾向)と、上記アキシアル荷重に基づく上記距離の低減によりこのデューティ比が変化する方向とが同じになれば、全体としてのデューティ比の変化を大きくできる。
【0106】
前述した様に、上記距離が小さくなると、上記出力信号の1周期に占める、凸部と認識される部分の割合が増える。従って、上記エンコーダ12Aの上方への変位によって、上記凸部と認識される部分の割合が大きくなる様に上記エンコーダ12Aの内側面に形成した凹凸を設定すれば、上記(モーメント荷重を含む)アキシアル荷重の変化に伴う、上記センサ13Bの出力信号のデューティ比の変化を大きくできる。本例の様に、上記エンコーダ12Aの上方に上記センサ13Bを設置すると共に、このエンコーダ12Aの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅を、径方向外端側で広く、同じく内端側で狭くすれば、モーメント荷重に基づく上記エンコーダ12Aと上記センサ13Bとの相対変位の方向と、上記アキシアル荷重に基づくこれらエンコーダ12Aとセンサ13Bとの相対変位の方向とを一致させて、上記出力信号のデューティ比の変化を大きくできる。
【0107】
[実施の形態の第15例]
図30は、請求項1、19、24に対応する、本発明の実施の形態の第15例を示している。本例の場合には、エンコーダ12Aの軸方向内側面に存在する被検出面のうちの下部にセンサ13Bの検出部を、軸方向に対向させている。又、上記エンコーダ12Aの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅を、径方向内端側で広く、同じく外端側で狭くしている。即ち、本例の場合には、上記センサ13Bの設置位置を上述した実施の形態の第14例と上下逆にすると同時に、上記各凹部の配列を、この実施の形態の第14例と径方向に関して内外逆にしている。
この様な本例の場合も、モーメント荷重に基づく上記エンコーダ12Aと上記センサ13Bとの相対変位の方向と、アキシアル荷重に基づくこれらエンコーダ12Aとセンサ13Bとの相対変位の方向とを一致させて、このセンサ13Bの出力信号のデューティ比の変化を大きくできる。
【0108】
[実施の形態の第16例]
図31は、請求項1、9、13、19に対応する、本発明の実施の形態の第16例を示している。本例の構造の様に、センサ13dを、外輪3aの軸方向中間部で複列に配置された転動体5a、5a同士の間に設置する場合には、エンコーダ12gの被検出面に存在する凹部及び凸部の方向を規制する事による効果は、このエンコーダ12gを軸方向内端部に設置する場合程顕著ではない。但し、上記センサ13dの出力信号のデューティ比を少しでも大きくする為には、上記方向を規制する事が好ましい。この場合の規制方向に就いては、次の様に考える。
【0109】
先ず、外周面を被検出面とした円筒状のエンコーダ12gに対してセンサを上方に配置し、このセンサの検出部をこのエンコーダ12gの外周面に径方向に対向させる場合は、このエンコーダ12gの外周面に存在する凹部と凸部とのうちの凹部の円周方向に関する幅が、軸方向内側(図31の右側)程大きくなる様にする。逆に、円筒状のエンコーダ12gに対してセンサを下方に配置し、このセンサの検出部をこのエンコーダ12gの外周面に径方向に対向させる場合は、このエンコーダ12gの外周面に存在する凹部と凸部とのうちの凹部の円周方向に関する幅が、軸方向外側(図31の左側)程大きくなる様にする。この様に構成すれば、前述の実施の形態の第12例或は実施の形態の第13例と同様に、モーメント荷重に基づく上記エンコーダ12gと上記センサとの相対変位の方向と、アキシアル荷重に基づくこれらエンコーダ12gとセンサとの相対変位の方向とを一致させて、このセンサの出力信号のデューティ比の変化を大きくできる。
【0110】
尚、仮に、センサを車輪支持用転がり軸受ユニットの軸方向外端部に設置した場合には、各部の設置位置並びに傾斜方向を総て逆にした構造が、モーメント荷重に基づく上記エンコーダと上記センサとの相対変位の方向と、アキシアル荷重に基づくこれらエンコーダとセンサとの相対変位の方向とを一致させて、このセンサの出力信号のデューティ比の変化を大きくする面からは好ましい。但し、スペース的な制約から、車輪支持用転がり軸受ユニットの軸方向外端部に設置する可能性は殆どないので、あまり意味はない。
【0111】
これに対して、センサを車輪支持用転がり軸受ユニットの軸方向中間部で複列に配置された転動体同士の間に設置する場合は多い。この様な場合に、車輪から車輪支持用転がり軸受ユニットのハブに対して、アキシアル荷重とモーメント荷重とを混ざり合った荷重が作用した場合、アキシアル荷重によってエンコーダ12gが横方向に変位する。又、上記モーメント荷重によってハブ4bが回転する傾向になるが、この回転中心は、上記エンコーダ12gの設置位置である、複列に配置された転動体5a、5a同士の間である為、上記モーメント荷重により、上記エンコーダ12gの上下位置が変動する事は殆どない。
【0112】
但し、上下荷重変化の影響により、多少なりとも上記エンコーダ12gが上下方向に変位する為、このエンコーダ12gを上記複列に配置された転動体5a、5a同士の間に配置した場合であっても、このエンコーダ12gに関する最適な取付方向がある。例えば、路面から車体の内側方向に向かってアキシアル荷重が作用するのは、自動車が旋回している時の外側車輪であり、この時は遠心力の影響で上下荷重(ラジアル荷重)が増加している場合が多い。逆に、例えば、路面から車体外側方向に向かって横荷重が作用するのは、自動車が旋回している時の内側車輪であり、この時は上下荷重が減少している場合が多い。
【0113】
この様な点を考慮して、前記図31に示した構造では、上記複列に配置された転動体5a、5a同士の間で下側(路面側)に設置した前記センサ13dの検出部を、上記エンコーダ12gの外周面の下端部に対向させている。例えば、路面からハブ4bに、車体外側方向に向かうアキシアル荷重が作用した場合には、このアキシアル荷重によって上記エンコーダ12gは、車体外側方向(図31の左方向)に変位する。同時に上下荷重が減少するので、多少ではあるが、上記センサ13dの検出部と上記エンコーダ12gとの間の距離(ギャップ)が小さくなる。前述の様に、この距離が小さくなると、上記センサ13dの検出信号の1周期に占める、凸部と認識される部分の割合が増える。そこで本例の場合には、上記エンコーダ12gが車体外側方向に変位した時に凸部と認識される割合が増える様に、凹部の円周方向に関する幅が、車体外側ほど大きくなる様に、上記エンコーダ12gを配置している。
【0114】
[実施の形態の第17例]
図32〜35は、請求項1、10、11に対応する、本発明の実施の形態の第17例を示している。本例の場合には、前述の図11〜13に示した実施の形態の第5例と同様に、ハブ4aの中間部に、永久磁石製のエンコーダ12kを外嵌固定している。被検出面である、このエンコーダ12kの外周面には、第一被検出部に相当するN極に着磁した部分と、第二被検出部に相当するS極に着磁した部分とが、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されている。特に、本例の場合には、上記第一、第二両被検出部に対応する、N極に着磁された部分とS極に着磁された部分との境界を、上記エンコーダ12kの軸方向に対し同じ角度だけ傾斜させると共に、この軸方向に対する傾斜方向を、このエンコーダ12kの軸方向中間部を境に互いに逆方向としている。従って、上記N極に着磁された部分とS極に着磁された部分とは、軸方向中間部が円周方向に関して最も突出した(又は凹んだ)、「く」字形となっている。
【0115】
一方、外輪3の軸方向中間部で複列に配置された転動体5、5同士の間部分に1対のセンサ13i、13iを設置し、これら両センサ13i、13iの検出部を、上記エンコーダ12kの外周面に、近接対向させている。これら両センサ13i、13iの検出部がこのエンコーダ12kの外周面に対向する位置は、このエンコーダ12kの円周方向に関して同じ位置としている。言い換えれば、上記両センサ13i、13iの検出部は、上記外輪3の中心軸に平行な仮想直線上に配置されている。又、この外輪3とハブ4aとの間にアキシアル荷重が作用しない状態で、上記N極に着磁された部分とS極に着磁された部分との軸方向中間部で円周方向に関して最も突出した部分(境界の傾斜方向が変化する部分)が、上記両センサ13i、13iの検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、各部材12k、13i、13iの設置位置を規制している。
【0116】
上述の様に構成する本例の場合、上記外輪3とハブ4aとの間にアキシアル荷重が作用すると、上記両センサ13i、13iの出力信号が変化する位相がずれる。即ち、上記外輪3とハブ4aとの間にアキシアル荷重が作用していない状態では、上記両センサ13i、13iの検出部は、図35の(A)の実線イ、イ上、即ち、上記最も突出した部分から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、上記両センサ13i、13iの出力信号の位相は、同図の(C)に示す様に一致する。これに対して、上記エンコーダ12kを固定したハブ4aに、図35の(A)で下向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ13i、13iの検出部は、図35の(A)の破線ロ、ロ上、即ち、上記最も突出した部分からの軸方向に関するずれが互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ13i、13iの出力信号の位相は、同図の(B)に示す様にずれる。更に、上記エンコーダ12kを固定したハブ4aに、図35の(A)で上向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ13i、13iの検出部は、図35の(A)の鎖線ハ、ハ上、即ち、上記最も突出した部分からの軸方向に関するずれが、逆方向に互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ13i、13iの出力信号の位相は、同図の(D)に示す様にずれる。
【0117】
上述の様に本例の場合には、上記両センサ13i、13iの出力信号の位相が、上記外輪3とハブ4aとの間に加わるアキシアル荷重の方向に応じた方向にずれる。又、このアキシアル荷重により上記両センサ13i、13iの出力信号の位相がずれる程度は、このアキシアル荷重が大きくなる程大きくなる。従って本例の場合には、上記両センサ13i、13iの出力信号の位相ずれの有無、ずれが存在する場合にはその方向及び大きさに基づいて、上記外輪3とハブ4aとの間に作用しているアキシアル荷重の方向及び大きさを求められる。
【0118】
[実施の形態の第18例]
尚、上述した実施の形態の第17例の様に、第一被検出部と第二被検出部との境界の傾斜方向を途中で変化させたエンコーダと1対のセンサとを組み合わせてアキシアル方向の荷重を求める発明は、図示の様な永久磁石製のエンコーダに限らずに実施できる。即ち、第一被検出部と第二被検出部とのうちの一方の被検出部を透孔若しくは凹孔又は凸部とし、他方の被検出部を円周方向に隣り合う透孔若しくは凹孔同士の間に存在する間部分又は凹部としたエンコーダと、適宜の、このエンコーダの性状に応じたセンサとを組み合わせても、アキシアル荷重の測定を行なえる。更には、エンコーダの被検出面である軸方向片側面に対向させて1対のセンサを、径方向にずらせて配置し、この被検出面に配置した第一被検出部と第二被検出部とをエンコーダの径方向に関して傾斜させると共に傾斜方向を途中で変化させた構造で、ラジアル荷重を測定する事もできる。
【0119】
図36〜38は、上述の様な事情に応じて考えた、本発明の実施の形態の第18例を示している。本例の場合には、ハブ4aの中間部に、磁性金属板製のエンコーダ12Bを外嵌固定している。被検出面である、このエンコーダ12Bの外周面には、第一被検出部に相当するスリット状の透孔33a、33bと、第二被検出部に相当する柱部34a、34bとが、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されている。尚、円周方向に隣り合う透孔33a、33b同士、或は柱部34a、34b同士のピッチは互いに等しいが、各透孔33a、33bの円周方向に関する幅と、各柱部34a、34bの円周方向に関する幅とが等しい必要はない。特に、本例の場合には、上記第一被検出部に対応する上記各透孔33a、33bと、第二被検出部に対応する上記各柱部34a、34bとを、上記エンコーダ12Bの軸方向に対し同じ角度だけ傾斜させると共に、この軸方向に対する傾斜方向を、このエンコーダ12Bの軸方向中間部を境に互いに逆方向としている。即ち、本例のエンコーダ12Bは、軸方向片半部に、上記軸方向に対し所定方向に同じだけ傾斜した透孔33a、33aを形成すると共に、軸方向他半部に、この所定方向と逆方向に同じ角度だけ傾斜した透孔33b、33bを形成している。
【0120】
一方、外輪3の軸方向中間部で複列に配置された転動体5、5同士の間部分に1対のセンサ13C、13Cを設置し、これら両センサ13C、13Cの検出部を、上記エンコーダ12Bの外周面に、近接対向させている。これら両センサ13C、13Cの検出部がこのエンコーダ12Bの外周面に対向する位置は、このエンコーダ12Bの円周方向に関して同じ位置としている。又、この外輪3とハブ4aとの間にアキシアル荷重が作用しない状態で、上記各透孔33a、33b同士の間に位置し、全周に連続するリム部35が、上記両センサ13C、13Cの検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、各部材12B、13C、13Cの設置位置を規制している。
【0121】
上述の様に構成する本例の場合、上記外輪3とハブ4aとの間にアキシアル荷重が作用すると、前述した実施の形態の第17例の場合と同様に、上記両センサ13C、13Cの出力信号が変化する位相がずれる。即ち、上記外輪3とハブ4aとの間にアキシアル荷重が作用していない状態では、上記両センサ13C、13Cの検出部は、図39の(A)の実線イ、イ上、即ち、上記リム部35から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、上記両センサ13C、13Cの出力信号の位相は、同図の(C)に示す様に一致する。これに対して、上記エンコーダ12Bを固定したハブ4aに、図39の(A)で下向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ13C、13Cの検出部は、図39の(A)の破線ロ、ロ上、即ち、上記リム部35からの軸方向に関するずれが互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ13C、13Cの出力信号の位相は、同図の(B)に示す様にずれる。更に、上記エンコーダ12Bを固定したハブ4aに、図39の(A)で上向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ13C、13Cの検出部は、図39の(A)の鎖線ハ、ハ上、即ち、上記リム部35からの軸方向に関するずれが、逆方向に互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ13C、13Cの出力信号の位相は、同図の(D)に示す様にずれる。
【0122】
上述の様に本例の場合も、上記実施の形態の第17例の場合と同様に、上記両センサ13C、13Cの出力信号の位相が、上記外輪3とハブ4aとの間に加わるアキシアル荷重の方向に応じた方向にずれる。又、このアキシアル荷重により上記両センサ13C、13Cの出力信号の位相がずれる程度は、このアキシアル荷重が大きくなる程大きくなる。従って本例の場合も、上記両センサ13C、13Cの出力信号の位相ずれの有無、ずれが存在する場合にはその方向及び大きさに基づいて、上記外輪3とハブ4aとの間に作用しているアキシアル荷重の方向及び大きさを求められる。
【0123】
尚、何れの実施の形態に就いても、センサの検出部の面積(スポット径)は小さい方が好ましい。この理由は、荷重変動に伴う、エンコーダの被検出面の特性変化のパターンの変化を求める為、このパターン変化を高精度で読み取れる様にする為である。又、上記センサの構造は、磁気式、光学式等、特に問わないが、磁気式のものが、低コストで必要とする精度を有するセンサを得易い事から好ましい。又、磁気式のセンサを使用する場合に、パッシブ型、アクティブ型、何れの構造のものも使用可能であるが、上記スポット径を小さくして精度の良い測定を行なえる事、低回転時から測定を行なえる事から、アクティブ型のセンサが、好ましく使用できる。更に、アクティブ型のセンサであれば、検出素子を通過する磁束の密度の変化に対応して出力の切換(ON・OFF)を行なうユニポーラ型を含め、各種構造の磁気センサを使用できる。
【0124】
[実施の形態の第19例]
図40〜41は、上述した実施の形態の第18例と同様の事情に応じて考えた、本発明の実施の形態の第19例を示している。本例の場合には、磁性金属板製のエンコーダ12Cの幅方向中央部に、それぞれが「く」字形であって互いに同じ大きさと形状とを有する多数の透孔33、33を、円周方向に亙り等間隔に形成している。これら各透孔33、33は、上記エンコーダ12Cの幅方向中央部を境とした、鏡面対称な形状に造られている。即ち、本例のエンコーダ12Cは、上述した実施の形態の第18例のエンコーダ12Bからリム部35(図37〜39参照)を省略した如き形状を有する。そして、上記各透孔33、33を形成した、幅寸法W33なる部分を、上記エンコーダ12Cの有効範囲としている。
【0125】
この様なエンコーダ12Cの被検出面(例えば外周面)に1対のセンサ13D、13Eの検出部を、近接対向させている。これら両センサ13D、13Eは、それぞれ、ホール素子等の磁気検知素子36と永久磁石37とを組み合わせて成る。この様な両センサ13D、13Eは、それぞれの検出部となる磁気検知素子36を上記エンコーダ12Cの被検出面に対向させた状態で、図示しないホルダを介して、やはり図示しない、静止側軌道輪等の固定部分に支持固定している。この状態で、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間にアキシアル荷重が作用せず、これら両軌道輪同士のアキシアル方向に関する位置関係が中立状態である場合に、上記両センサ13D、13Eの検出部が、図41の(A)に示す様に、上記エンコーダ12Cの被検出面の幅方向中央位置、即ち、上記各透孔33、33の傾斜方向が変化する境界位置から、この幅方向に同じ距離a、b(a=b)だけ離れた位置に対向する。
【0126】
尚、上記中立状態での幅方向中央位置からの距離a、bは、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪とがアキシアル方向に最も変位した状態での変位量cよりも大きく(a=b>c)している。従って、図41の(B)に示す様に、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪とがアキシアル方向に最も変位しても、上記両センサ13D、13Eの検出部が上記エンコーダ12Cの被検出面の幅方向に関して、上記幅方向中央位置を越えて変位する(検出部が被検出面の幅方向中央位置を跨ぐ)事はない。この為、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪とがアキシアル方向に変位する限り、上記両センサ13D、13Eの検出信号同士の位相差を、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪とのアキシアル方向に関する変位量に比例して大きくできる(位相差に基づいて変位量を求める際のゲインを大きくできる)。
【0127】
これに対して、上記幅方向中央位置からの距離a、bが、上記最も変位した状態での変位量cよりも小さいと、図41の(C)に示す様に、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪とがアキシアル方向に最も変位した状態で、上記両センサ13D、13Eの検出部が上記幅方向中央位置を越えて変位する(検出部が被検出面の幅方向中央位置を跨ぐ)。この結果、位相差に基づいて変位量を求める際のゲインが小さくなる(検出部が被検出面の幅方向中央位置を跨いだ後は、それまで増加していたゲインが減少し始める)だけでなく、異なる変位量に関して同じ位相差が出現する。この結果、この位相差に基づいてこの変位量を正確に求める事が難しくなる。これに対して(前述した実施の形態の第17例、第18例の場合も同様である事は勿論)本例の場合には、a=b>cとしている為、上述の様な、変位が大きくなる事に伴うゲインの減少や、異なる変位量に関して同じ位相差が出現する事を防止できる。
【0128】
又、上記エンコーダ12Cの円周方向に関する、上記両センサ13D、13Eの検出部の位置は、これら両センサ13D、13Eの設置スペース上の問題がない限り、一致させる事が好ましい。この理由は、一致させる事により、上記両センサ13D、13Eの検出部と上記エンコーダ12Cの被検出面との間の位相を適正に規制する作業が容易になる為である。但し、設置スペースが限られている場合には、図40に示す様に、上記両センサ13D、13Eを上記エンコーダ12Cの円周方向に関して互いにずらせて配置する事もできる。この場合でも、上記中立状態では、上記両センサ13D、13Eの検出部の上記各透孔33、33に関する位相を、互いに一致させる。言い換えれば、円周方向に関するずれ量Lを、これら各透孔33、33のピッチPの整数倍(L=n・P、nは自然数)とする。
【0129】
上述の様に構成する本例の場合も、前述の実施の形態の第18例と同様に、上記両センサ13D、13Eの出力信号の位相差に基づいて、前記静止側軌道輪と前記回転側軌道輪とのアキシアル方向に関する変位量を求め、更にこの変位量からアキシアル荷重を求める事ができる。即ち、これら両軌道輪同士の間にアキシアル荷重が作用していない状態では、図40の(A)及び図41の(A)に示す様に、上記両センサ13D、13Eの検出部が上記エンコーダ12Cの幅方向中央位置からこの幅方向に同じ距離a、bだけ離れた位置に存在し、上記両センサ13D、13Eの出力信号同士の間に位相差は存在しない。これに対して、上記両軌道輪同士の間にアキシアル荷重が作用した状態では、図40の(B)及び図41の(B)に示す様に、上記両センサ13D、13Eの検出部による上記エンコーダ12Cの被検出面の走査位置の、この被検出面の幅方向中央位置からの距離a1 、b1 が互いに異なる(a1 ≠b1 )状態となる。この結果、上記両センサ13D、13Eの出力信号同士の間に、アキシアル方向の変位量に比例した位相差を生じる。従って、この位相差から、上記実施の形態の第18例の場合と同様に、上記アキシアル荷重を求められる。
【0130】
[実施の形態の第20例]
図42は、本発明の実施の形態の第20例を示している。本例は、前述の図16〜18に示した実施の形態の第8例に就いて、エンコーダ12gの有効範囲と、センサ13dの検出部との位置関係を示したものである。この様な構造の場合、上記エンコーダ12gの被検出面の有効範囲W12は、このエンコーダ12gの全幅とほぼ一致する。そして、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間にアキシアル荷重が作用せず、これら両軌道輪同士のアキシアル方向に関する位置関係が中立状態である場合に、上記センサ13dの検出部が、図42の(A)に示す様に、このエンコーダ12gの被検出面の幅方向中央位置に対向する。これに対して、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間にアキシアル荷重が作用し、これら両軌道輪同士がアキシアル方向にずれると、上記センサ13dの検出部が、図42の(B)に鎖線で示す様に、上記エンコーダ12gの被検出面の幅方向中央位置から外れた位置に対向する。この場合でも、上記センサ13dの検出部が上記有効範囲W12から外れる事はない。
【0131】
[実施の形態の第21例]
図43〜44は、請求項1、25に対応する、本発明の実施の形態の第21例を示している。本例の場合も、例えば前述した各実施の形態を示す、図1、7、11、14、16、19、22、25、26、28〜32、36に示す様に、荷重測定装置を組み込む為の転がり軸受ユニットを、車輪支持用転がり軸受ユニットとしている。そして、静止側軌道輪である外輪を、使用状態で懸架装置に支持固定されるものとし、回転側軌道輪を、車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するハブとしている。特に、本例の場合には、エンコーダ12Dを、回転側軌道輪であるハブと共に回転する部材である、ディスクロータ38の外周縁部に設けている。
【0132】
周知の様にディスクロータ38は、前述の図26に示す様に、ハブ4bの外端部外周面に設けたフランジ10に結合固定して、このハブ4bと共に回転する。又、上記ディスクロータ38はこのハブ4bに対し、強固に結合固定される為、これらディスクロータ38とハブ4bとは、同期して(一体的に)変位する。従って、このディスクロータ38の外周縁部に上記エンコーダ12Dを設け、この外周縁部にセンサ13Fの検出部を対向させれば、上記ハブ4bと外輪3a(図26参照)との間に加わるアキシアル荷重を求められる。
【0133】
上記ディスクロータ38の外周縁部に上記エンコーダ12Dを設ける為の構造は、特に限定しない。鋳鉄等の磁性材製のディスクロータ38の場合には、外周縁部に直接、図43の(A)〜(C)に示す様な凹凸或いは孔(凹孔若しくは径方向の貫通孔)を形成して、上記ディスクロータ38の外周縁の磁気特性を変化させる事ができる。この場合に、このディスクロータ38がソリッド型である場合には、このディスクロータ38の外周面に、上記図43の(A)〜(C)に示す様な形状を有する凹凸を形成する。これに対して、このディスク38がベンチレーテッド型である場合には、このディスクロータ38に、断面形状が上記図43の(A)〜(C)に示す様なものであり、それぞれが径方向に貫通する貫通孔を形成する。一方、上記ディスクロータ38が、アルミニウム合金、アルミニウムコンポジット製等の非磁性材製である場合には、このディスクロータ38の外周縁部に、別途磁性材により円環状に形成した、上記エンコーダ12Dを外嵌固定する。この場合でも、上記ディスクロータ38がソリッド型である場合には、上記エンコーダ12Dの外周面に凹凸を、ベンチレーテッド型である場合には貫通孔を、それぞれ形成する。尚、以上の説明は、上記エンコーダ12Dと上記センサ13Fとの組み合わせが、磁気検知式の場合である。光学式等の場合には、上記ディスクロータ38が非磁性材製であっても、このディスクロータ38の外周面に上記凹凸或いは孔を直接形成して、この外周面を被検出面とする事ができる。
【0134】
一方、上記センサ13Fに関しては、前記車輪支持用転がり軸受ユニットに加わる荷重に拘らず変位しない部分に支持する。この様な部分としては、懸架装置を構成するナックル39(図26参照)や、上記ディスクロータ38と共にディスクブレーキを構成する制動用部材40(図44参照)が考えられる。この制動用部材40としては、このディスクブレーキが対向ピストン型である場合にはキャリパを、フローティングキャリパ型である場合にはサポートを、それぞれ採用可能である。図示の例の場合には、上記制動用部材40に上記センサ13Fを、支持腕41を介して支持している。この様な本例の構造によれば、上記車輪支持用転がり軸受ユニットに、上記エンコーダ12D及びセンサ13Fを設置する為の空間的余裕がない場合でも、荷重測定装置付転がり軸受ユニットを実現できる。尚、図示の場合とは逆に、ディスクロータ38のうちで、パッドを押圧する為の円輪状の摩擦板部の内周縁部にエンコーダを設ける事もできる。この場合にはセンサを、車輪支持用転がり軸受ユニットの外輪等の静止部材に設置する。
【0135】
[実施の形態の第22例]
図45は、請求項1、26に対応する、本発明の実施の形態の第22例を示している。本例の場合も、荷重測定装置を組み込む為の転がり軸受ユニットを、車輪支持用転がり軸受ユニットとしている。そして、静止側軌道輪である外輪3aを、使用状態で懸架装置に支持固定されるものとし、回転側軌道輪を、車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するハブ4bとしている。特に、本例の場合には、回転側軌道輪と共に回転する部材である、このハブ4bに結合固定された等速ジョイント42の中間部外周面を、被検出面としている。
【0136】
周知の様にこの等速ジョイント42は、上記ハブ4bを回転駆動する為のもので、このハブ4bと共に回転する。又、この等速ジョイント42はこのハブ4bに対し、強固に結合固定される為、これら等速ジョイント42とハブ4bとは、同期して(一体的に)変位する。従って、この等速ジョイント42の外周面にエンコーダ12Eを設け、このエンコーダ12Eの外周面にセンサ13G、13Gの検出部を対向させれば、上記ハブ4bと外輪3aとの間に加わるアキシアル荷重を求められる。この為に本例の場合には、上記等速ジョイント42の中間部に円筒状のエンコーダ12Eを外嵌固定している。そして、ナックル39に支持した上記両センサ13G、13Gの検出部を、上記エンコーダ12Eの外周面の2個所位置に近接対向させている。
この様な本例の構造によっても、上述した実施の形態の第21例の場合と同様に、車輪支持用転がり軸受ユニット側部分に、エンコーダやセンサを装着するスペースを確保できない場合でも、この車輪支持用転がり軸受ユニットに加わる荷重を測定できる構造を実現できる。
尚、本例の場合には、上記エンコーダ12E部分の温度上昇が限られているので、このエンコーダ12Eとして、磁性材製のものに限らず、永久磁石(磁性体)製のものも使用できる。
【符号の説明】
【0137】
1、1a 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 荷重測定装置
3、3a 外輪
4、4a、4b ハブ
5、5a 転動体
6、6a 外輪軌道
7 取付部
8 ハブ本体
9 内輪
10 フランジ
11、11a 内輪軌道
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、12h、12i、12j、12k、12A、12B、12C、12D、12E エンコーダ
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h、13i、13A、13B、13C、13D、13E、13F、13G センサ
14、14a、14b、14c 支持板
15、15a、15b エンコーダ本体
16 円輪部
17 円筒部
18、18a カバー
19 底板部
20、20a 取付孔
21、21a、21b 透孔
22、22a、22b 間部分
23 円輪部
24 被検出組み合わせ部
25 個性化部分
26 円筒部
27、27a 凸部
28、28a 凹部
29a、29b 平行部
30a、30b 平行部
31a、31b 非変化部
32a、32b 非変化部
33、33a、33b 透孔
34a、34b 柱部
35 リム部
36 磁気検知素子
37 永久磁石
38 ディスクロータ
39 ナックル
40 制動用部材
41 支持腕
42 等速ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受ユニットと荷重測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、使用状態でも回転しない静止側軌道輪と、使用状態で回転する回転側軌道輪と、これら静止側軌道輪と回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側軌道と回転側軌道との間に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
上記荷重測定装置は、上記回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪に結合固定されてこの回転側軌道輪と共に回転する部材の一部にこの回転側軌道輪若しくはこの回転側軌道輪と共に回転する部材と同心に支持された、被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させたエンコーダと、その検出部をこの被検出面に対向させた状態で回転しない部分に支持され、この被検出面の特性変化に対応してその出力信号を変化させるセンサと、このセンサの出力信号に基づいて上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との間に作用する荷重を算出する演算器とを備えたものであり、
上記被検出面の特性が円周方向に関して変化するピッチ若しくは位相は、検出すべき荷重の作用方向に応じて連続的に変化しており、
上記演算器は、上記センサの出力信号が変化するパターンに基づいて上記荷重を算出する機能を有するものである
荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項2】
検出すべき荷重が、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に径方向に作用するラジアル荷重であり、被検出面がエンコーダの軸方向側面であり、この被検出面に、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とが円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されており、これら両被検出部の円周方向に関する幅のうち、第一被検出部の幅は径方向外側程広く、第二被検出部の幅は径方向内側程広い、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項3】
検出すべき荷重が、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に径方向に作用するラジアル荷重であり、被検出面がエンコーダの軸方向側面であり、この被検出面に、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とが円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されており、これら第一、第二両被検出部の境界が、上記エンコーダの直径方向に対し傾斜すると共に、この境界の直径方向に対する傾斜方向が、このエンコーダの直径方向中間部を境に互いに逆方向であり、この直径方向中間部を挟んでこのエンコーダの直径方向に離隔した位置に設置された1対のセンサの検出部が、このエンコーダの被検出面に対向している、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項4】
エンコーダが永久磁石製であって、第一被検出部と第二被検出部とのうちの一方の被検出部がN極であり、他方の被検出部がS極である、請求項2〜3の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項5】
第一被検出部と第二被検出部とのうちの一方の被検出部が透孔若しくは凹孔であり、他方の被検出部が円周方向に隣り合う透孔若しくは凹孔同士の間に存在する間部分である、請求項2〜3の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項6】
第一被検出部と第二被検出部とのうちの一方の被検出部が凸部であり、他方の被検出部が円周方向に隣り合う凸部同士の間に存在する凹部である、請求項2〜3の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項7】
エンコーダが磁性材製で、センサがこのエンコーダの被検出面の磁気特性の変化に対応して出力信号を変化させるものであり、このエンコーダの径方向両端部に、第一、第二両被検出部同士の回転方向に関するピッチが径方向に関して変化しない非変化部が存在する、請求項5〜6の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項8】
検出すべき荷重が、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に径方向に作用するラジアル荷重であり、被検出面がエンコーダの軸方向側面であり、この被検出面に、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分より成る複数の被検出用組み合わせ部を、円周方向に亙り等間隔で配置しており、これら各被検出用組み合わせ部を構成する1対ずつの個性化部分同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部で径方向に関して同じ方向に連続的に変化している、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項9】
検出すべき荷重が、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に軸方向に作用するアキシアル荷重であり、被検出面がエンコーダの周面であり、この被検出面に、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とが円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されており、これら両被検出部の円周方向に関する幅のうち、第一被検出部の幅は軸方向一端側程広く、第二被検出部の幅は軸方向他端側程広い、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項10】
検出すべき荷重が、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に軸方向に作用するアキシアル荷重であり、被検出面がエンコーダの周面であり、この被検出面に、互いに異なる特性を有する第一被検出部と第二被検出部とが円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置されており、これら第一、第二両被検出部の境界が、上記エンコーダの軸方向に対し傾斜すると共に、この境界の軸方向に対する傾斜方向が、このエンコーダの軸方向中間部を境に互いに逆方向であり、この軸方向中間部を挟んでこのエンコーダの軸方向に離隔した位置に設置された1対のセンサが、このエンコーダの被検出面に対向している、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項11】
エンコーダが永久磁石製であって、第一被検出部がN極であり、第二被検出部がS極である、請求項9〜10の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項12】
第一被検出部が透孔若しくは凹孔であり、第二被検出部が円周方向に隣り合う透孔若しくは凹孔同士の間に存在する間部分である、請求項9〜10の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項13】
第一被検出部が凸部であり、第二被検出部が円周方向に隣り合う凸部同士の間に存在する凹部である、請求項9〜10の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項14】
エンコーダが磁性材製で、センサがこのエンコーダの被検出面の磁気特性の変化に対応して出力信号を変化させるものであり、このエンコーダの軸方向両端部に、第一、第二両被検出部同士の回転方向に関するピッチが軸方向に関して変化しない平行部が存在する、請求項12〜13の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項15】
検出すべき荷重が、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に軸方向に作用するアキシアル荷重であり、被検出面がエンコーダの周面であり、この被検出面に、それぞれが他の部分とは特性が異なる1対の個性化部分より成る複数の被検出用組み合わせ部を、円周方向に亙り等間隔で配置しており、これら各被検出用組み合わせ部を構成する1対ずつの個性化部分同士の円周方向に関する間隔は、総ての被検出用組み合わせ部で軸方向に関して同じ方向に連続的に変化している、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項16】
エンコーダの被検出面のうちで円周方向に異なる3個所以上位置に、それぞれセンサの検出部を対向させており、演算器は、これら各センサの出力信号を比較する事で、静止側軌道輪と回転側軌道輪との間に加わるモーメント荷重を算出する機能を有する、請求項1〜15の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項17】
エンコーダの被検出面がこのエンコーダの周面であり、各センサの検出部がこのエンコーダの周面の円周方向等間隔位置に対向している、請求項16に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項18】
エンコーダの被検出面がこのエンコーダの軸方向側面であり、各センサの検出部がこのエンコーダの軸方向側面の円周方向等間隔位置に対向している、請求項16に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項19】
転がり軸受ユニットが車輪支持用転がり軸受ユニットであり、使用状態で、静止側軌道輪が懸架装置に支持固定され、回転側軌道輪が車輪を支持固定してこの車輪と共に回転する、請求項1〜18の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項20】
転がり軸受ユニットが工作機械の主軸をハウジングに回転自在に支持する為のものであり、使用状態で、静止側軌道輪である外輪がこのハウジング若しくはこのハウジングに固定された部分に内嵌固定され、回転側軌道輪である内輪が上記主軸若しくはこの主軸と共に回転する部分に外嵌固定される、請求項1〜18の何れかに記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項21】
転がり軸受ユニットが車輪支持用転がり軸受ユニットであって、使用状態で、静止側軌道輪である外輪が懸架装置に支持固定され、回転側軌道輪であるハブが車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するものであり、上記外輪の内周面に存在する、それぞれが静止側軌道である複列の外輪軌道と、上記ハブの外周面に存在する、それぞれが回転側軌道である複列の内輪軌道との間に転動体が、各列毎に複数個ずつ設けられており、上記ハブの軸方向外端部に車輪を支持固定する為のフランジが設けられ、被検出面である外周面に凹部と凸部とを交互に配置したエンコーダが上記ハブの軸方向内端部又は上記複列の内輪軌道の間部分に固定されており、検出すべき荷重が、上記外輪と上記ハブとの間に軸方向に作用するアキシアル荷重であり、上記エンコーダの外周面に存在する被検出面のうちの上部にセンサの検出部を、径方向に対向させており、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅が、軸方向内端側で広く同じく外端側で狭い、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項22】
転がり軸受ユニットが車輪支持用転がり軸受ユニットであって、使用状態で、静止側軌道輪である外輪が懸架装置に支持固定され、回転側軌道輪であるハブが車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するものであり、上記外輪の内周面に存在する、それぞれが静止側軌道である複列の外輪軌道と、上記ハブの外周面に存在する、それぞれが回転側軌道である複列の内輪軌道との間に転動体が、各列毎に複数個ずつ設けられており、上記ハブの軸方向外端部に車輪を支持固定する為のフランジが設けられ、被検出面である外周面に凹部と凸部とを交互に配置したエンコーダが上記ハブの軸方向内端部又は上記複列の内輪軌道の間部分に固定されており、検出すべき荷重が、上記外輪と上記ハブとの間に軸方向に作用するアキシアル荷重であり、上記エンコーダの外周面に存在する被検出面のうちの下部にセンサの検出部を、径方向に対向させており、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅が、軸方向外端側で広く同じく内端側で狭い、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項23】
転がり軸受ユニットが車輪支持用転がり軸受ユニットであって、使用状態で、静止側軌道輪である外輪が懸架装置に支持固定され、回転側軌道輪であるハブが車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するものであり、上記外輪の内周面に存在する、それぞれが静止側軌道である複列の外輪軌道と、上記ハブの外周面に存在する、それぞれが回転側軌道である複列の内輪軌道との間に転動体が、各列毎に複数個ずつ設けられており、上記ハブの軸方向外端部に車輪を支持固定する為のフランジが設けられ、被検出面である軸方向内側面に凹部と凸部とを交互に配置したエンコーダが上記ハブの軸方向内端部に固定されており、検出すべき荷重が、上記外輪とこのハブとの間に軸方向に作用するアキシアル荷重であり、上記エンコーダの軸方向内側面に存在する被検出面のうちの上部にセンサの検出部を、軸方向に対向させており、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅が、径方向外端側で広く同じく内端側で狭い、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項24】
転がり軸受ユニットが車輪支持用転がり軸受ユニットであって、使用状態で、静止側軌道輪である外輪が懸架装置に支持固定され、回転側軌道輪であるハブが車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するものであり、上記外輪の内周面に存在する、それぞれが静止側軌道である複列の外輪軌道と、上記ハブの外周面に存在する、それぞれが回転側軌道である複列の内輪軌道との間に転動体が、各列毎に複数個ずつ設けられており、上記ハブの軸方向外端部に車輪を支持固定する為のフランジが設けられ、被検出面である軸方向内側面に凹部と凸部とを交互に配置したエンコーダが上記ハブの軸方向内端部に固定されており、検出すべき荷重が、上記外輪とこのハブとの間に軸方向に作用するアキシアル荷重であり、上記エンコーダの軸方向内側面に存在する被検出面のうちの下部にセンサの検出部を、軸方向に対向させており、上記エンコーダの被検出面に形成された凹凸のうちの凹部の円周方向に関する幅が、径方向内端側で広く同じく外端側で狭い、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項25】
転がり軸受ユニットが車輪支持用転がり軸受ユニットであり、使用状態で、静止側軌道輪が懸架装置に支持固定され、回転側軌道輪が、車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するハブであって、回転側軌道輪と共に回転する部材が、このハブに結合固定された、ディスクブレーキを構成するディスクロータであり、このディスクロータの外周面を被検出面としている、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。
【請求項26】
転がり軸受ユニットが車輪支持用転がり軸受ユニットであって、使用状態で、静止側軌道輪である外輪が懸架装置に支持固定され、回転側軌道輪であるハブが車輪を支持固定してこの車輪と共に回転するものであり、回転側軌道輪と共に回転する部材が、ハブに結合固定された等速ジョイントであって、この等速ジョイントの一部外周面を被検出面としている、請求項1に記載した荷重測定装置付転がり軸受ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate


【公開番号】特開2011−185944(P2011−185944A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98094(P2011−98094)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【分割の表示】特願2005−147642(P2005−147642)の分割
【原出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】