説明

蒸気発電方法及びシステム

【課題】 この発明は、ボイラーで生成した蒸気を利用して高い効率で発電することを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、ボイラーで生成した蒸気を高温加熱して高温過熱蒸気とし、この高温過熱蒸気に温水を吹き込み800℃以上の高温で10MPa以上の高圧蒸気とし、該高温高圧蒸気を発電用の高速蒸気タービンに用いて発電することを特徴とした蒸気発電方法により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラーで生成した蒸気を高温高圧蒸気として発電用蒸気タービンに給送し、発電することを目的とした蒸気発電方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来高温高圧蒸気を発電用蒸気タービンの動力源として該タービンを回転し、電気を生成することは、火力発電の基本形態であり、幾多の改善を経て高い効率で発電できるようになっている。
【0003】
前記火力発電においては、燃焼によるエネルギーを蒸気エネルギーに変換し、蒸気エネルギーを電気エネルギーに変換するという再度のエネルギー形態を変えているので、変換毎の効率の低下が認められ、高い効率での発電はむつかしいものとされていた。
【特許文献1】特開昭61−152908
【特許文献2】特開2005−30320
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の火力発電においては、重油等の燃焼熱を蒸気に変換し、この蒸気を加圧加熱して、蒸気タービンの原動力とし、この蒸気タービンにより発電機を回転して電気を生成している。前記のように、燃焼熱、蒸気の生成、その加熱加圧、蒸気タービン回転及び発電機の各エネルギー変換毎に損失を生じ、結局全発電システムとしては、効率の向上に上限を生じる問題点があった。
【0005】
即ち従来は、給水ポンプと、給水ポンプで昇圧された給水を加熱する給水加熱器と、前記給水加熱器からの蒸気を加熱するボイラーと、ボイラーからの蒸気又は前記ボイラーからの再加熱蒸気が供給されるタービンと、タービンに連結した発電機とにより改良発電装置が提案されているが(特許文献2)、効率向上の点で未だ不十分とする問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
然るにこの発明は、ボイラーで発生した蒸気をゼットガス炎によって直接加熱して高温過熱蒸気とすると共に、この高温過熱蒸気に水を噴霧することにより、気体の膨張力を利用して高圧高温蒸気とすることにより、前記従来の問題点を解決したのである。
【0007】
この発明において使用するゼットガスは、水素と酸素の混合ガス(ブラウンガスと同一)であって、爆発的燃焼により超高温を生成するが、燃焼後は水となるので、これを蒸発させて膨張する。前記ゼットガスの特性は表1のとおりである。
【表1】

【0008】
前記のように、燃焼速度が早く、急激に高温蒸気を生成する。この蒸気をそのまま取り出して膨張炉に導くので、圧力上昇は少ない(例えば2MPa程度)。前記高温蒸気(例えば900℃以上)を膨張炉に導き、膨張炉内へ温水(例えば85℃以上)を加圧噴霧すると、前記蒸気の温度(例えば900℃)により、前記噴霧が急激に膨張する。この場合に、膨張炉内へ適量の噴霧を吹き込むと、前記蒸気の高温により、噴霧は10倍位に膨張する(例えば、温度が800℃に低下して体積が10倍となる)。
【0009】
そこで膨張炉は一定容積であるから、圧力が10倍の高温高圧蒸気となって外部へ吹き出される(例えば20MPaとなって吹き出される)。そこで、前記高温高圧蒸気を発電用の蒸気タービンに供給し、該タービンを高速回転すれば、効率よく発電することができる。
【0010】
前記のように、この発明は、ゼットガス炎で直接加熱すること及び温水を噴霧して高温高圧蒸気を生成する点に、従来の蒸気発電を著しく改善した点がある。
【0011】
即ち方法の発明は、ボイラーで生成した蒸気を高温加熱して高温過熱蒸気とし、この高温過熱蒸気に温水を吹き込み800℃以上の高温で10MPa以上の高圧蒸気とし、該高温高圧蒸気を発電用の高速蒸気タービンに用いて発電することを特徴とした蒸気発電方法であり、ボイラーの熱源は廃棄物処理などの廃熱利用によるものとするものである。また、高温加熱はゼットガスの燃焼による直接加熱とするものであり、温水は、80℃〜90℃の水を1MPa〜10MPaに加圧して雰霧化するものである。
【0012】
次にシステムの発明は、蒸気発生手段と、この蒸気を加熱する過熱蒸気生成手段と、高圧高温蒸気生成手段と、蒸気タービンによる蒸気発電手段とを組み合せたことを特徴とする蒸気発電システムであり、高温過熱蒸気生成手段は、ボイラーで生成した蒸気を、ゼットガス燃焼炎により高温加熱するものであり、高温高圧蒸気は、高温過熱蒸気に、雰霧を加圧して吹き込むものである。
【0013】
前記ボイラーの加熱に、廃棄物焼却炉の排熱を使用すれば、熱エネルギー利用の総合としてきわめて合理的であり、廃物皆無の役割を果すことができる。
【0014】
またゼットガスは、この発明で生成した電気の一部を使用することにより、外部エネルギーの供給を可及的に少なくし、環状の自立エネルギー系を完成する一歩となる(外部から電気エネルギーを供給することなく自立系とする)。
【0015】
一定の規模の自治体又は工場などで、使用電気の一部又は全部を賄うことができるプラントとすることもできる。
【0016】
前記のように、加熱、加圧等に化石燃料を使用しないので、環境保全になることは勿論、COを皆無又は極めて少なくするエネルギー系を完成することができる。
【0017】
例えばボイラーを廃棄物の焼却熱で加熱する場合においても、廃棄物の焼却に関し、COの排出を極力少なくする方式を採用すれば(或いは、COの回収装置を付属させる)、結果的に排出COを激減させることができる(ゼットガスで燃焼させればCOは廃棄物燃焼分のみとなる)。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、加入すべきエネルギーを最少にして、最大電気量を得ることができる効果がある(熱効率の向上)。
【0019】
この発明によれば、水素と酸素を用いるエネルギー系を主として採用するので、環境を保全する効果がある。
【0020】
この発明によれば、加熱にゼットガス炎を直接使用するので、熱効率が抜群に良いと共に、排気に有害物を排出しない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明は、ボイラーで生成した蒸気をゼットガス炎により加熱して過熱蒸気とした後、これに温水を噴霧して、急速膨張させる。この急速膨張によって高温高圧蒸気を生成し、この蒸気を高速蒸気タービンに供給してタービンを回転させ、これにより発電機を回転して発電する。この場合に従来公知の高速、中速、低速の各タービンを回転して、効率よく発電する。最終排気(100℃以上)は、熱交換器で水を加温し、噴霧用水の加温に使用する。
【実施例1】
【0022】
この発明の実施例を図1について説明すると、ボイラーにより生成した蒸気を加熱炉に導き、加熱炉内でゼットガス炎で加熱させ、前記蒸気を加熱する(例えば、900℃に加熱)。ついでこの蒸気を膨張炉に導き、85℃以上に加温した温水を膨張炉内へ噴霧して、容積10倍以上に急速膨張させ、圧力を急上昇させる。例えば、2MPaの蒸気が、20MPaとなる。
【0023】
前記は、当初蒸気が900℃ならば、温水噴霧により800℃と温度低下すると共に、体積を増大させるが、炉容積一定の為に圧力の急上昇となり、例えば10倍の膨張で2MPaの圧力が20MPaの圧力になる。
【0024】
前記800℃、20MPaの蒸気を、タービンに給送して、タービンを回転し、このタービンに連結している発電機を回転して電気を生成する。
【実施例2】
【0025】
この発明の実施例を図2について説明すると、ボイラー1を燃焼器2からの熱で加熱し、発生した蒸気を矢示3のように加熱炉4に送る。前記加熱炉4には、ゼットガス燃焼器5が備えられ、ゼットガスの燃焼炎で、前記加熱炉4内の蒸気を直接加熱し、900℃以上の温度の過熱蒸気とする。この過熱蒸気を矢示6のように膨張炉7に送り込むと共に、送水器8による給水を、噴霧器9で霧化して、矢示10のように膨張炉7内へ加圧噴霧する。
【0026】
前記により生じた圧力20MPa以上、温度800℃以上の高圧蒸気を矢示11のようにタービン12に吹き込む。この場合に、複数のノズル13、13から、タービン12の羽根に吹きつけて、タービン12を高速回転する。前記タービン12と連結した発電機14で発電する。図中15は復水器であって、タービン12の排気を復水し、矢示16のようにボイラー1に給水する。図中17はポンプである。
【0027】
前記タービン12は、例えば、高速、中速、低速に分かれており、高速タービンの排気を中速タービンで受けるようにして順次活用し、低速タービンの排気を復水器へ排出する。この場合の排気が200℃〜300℃であれば熱交換器を介して温水とし、温水噴射の給水に使用し、100℃以下の排気として外界へ放出する。
【0028】
前記蒸気は、ゼットガス炎で直接加熱するが、ゼットガス炎は水素ガスと酸素ガスの燃焼で生じるから、有害気体は含まれていない。
【0029】
前記燃焼器2に代えて廃棄物燃焼炉を用いれば、廃棄物処理の熱を有効に使用することができる。この場合に、必要熱量に対し、廃棄物より生じる熱量が多ければ、温水利用、その他の加熱に使用し、少ない場合には適宜補充する(例えばゼットガス燃焼による補充)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施例のブロック図。
【図2】同じく実施例の模式図。
【符号の説明】
【0031】
1 ボイラー
2 燃焼器
4 加熱炉
5 ゼットガス燃焼器
7 膨張炉
8 送水器
9 噴霧器
12 タービン
13 ノズル
14 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラーで生成した蒸気を高温加熱して高温過熱蒸気とし、この高温過熱蒸気に温水を吹き込み800℃以上の高温で10MPa以上の高圧蒸気とし、該高温高圧蒸気を発電用の高速蒸気タービンに用いて発電することを特徴とした蒸気発電方法。
【請求項2】
ボイラーの熱源は廃棄物処理などの廃熱利用によるものとすることを特徴とした請求項1記載の蒸気発電方法。
【請求項3】
高温加熱はゼットガスの燃焼による直接加熱とすることを特徴とした請求項1記載の蒸気発電方法。
【請求項4】
温水は、80℃〜90℃の水を1MPa〜10MPaに加圧して雰霧化することを特徴とした請求項1記載の蒸気発電方法。
【請求項5】
蒸気発生手段と、この蒸気を加熱する過熱蒸気生成手段と、高圧高温蒸気生成手段と、蒸気タービンによる蒸気発電手段とを組み合せたことを特徴とする蒸気発電システム。
【請求項6】
高温過熱蒸気生成手段は、ボイラーで生成した蒸気を、ゼットガス燃焼炎により高温加熱することを特徴とした請求項5記載の蒸気発電システム。
【請求項7】
高温高圧蒸気は、高温過熱蒸気に、雰霧を加圧して吹き込むことを特徴とした請求項1記載の蒸気発電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−64588(P2007−64588A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254412(P2005−254412)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(305022129)株式会社ジパングエナジー (13)
【Fターム(参考)】