説明

蒸着膜を備えたプラスチック成形品

【課題】プラスチック基材としてPETやポリオレフィンを用いた場合には勿論のこと、ポリ乳酸を用いた場合においても、酸化劣化のみならず、熱変形や熱劣化などを生じることなく成膜が可能であり、しかも酸素や水分に対するバリア性も高く、密着性に優れ、且つ水分による膜剥離も有効に防止された蒸着膜を備えたプラスチック成形品を提供する。
【解決手段】プラスチック基板1と、該基板表面にプラズマCVD法によって形成された蒸着膜3とからなり、蒸着膜3は、元素比C/M(Mは金属元素である)が2.5乃至13であり且つ元素比O/Mが0.5以下の範囲にある有機金属系蒸着層3aと炭化水素系蒸着層3bとを含み、炭化水素系蒸着層3bは、厚みが40乃至180nmの範囲にあり、且つFT−IR測定で波数3200〜2600cm−1の領域にCH、CH及びCHに由来するピークを示し、CH比が35%以下及びCH比が40%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD法により蒸着膜が表面に形成されているプラスチック成形品に関する
【背景技術】
【0002】
従来、各種基材の特性を改善するために、その表面にプラズマCVD法による蒸着膜を形成することが行われており、包装材料の分野では、容器などのプラスチック基材に対して、プラズマCVD法により蒸着膜を形成させて、ガス遮断性を向上させることが公知である。例えば、有機ケイ素化合物と酸素との混合ガスを反応ガスとして用い、プラズマCVD法によりPETボトルなどのプラスチック容器の表面に、酸化ケイ素の蒸着膜を形成させることによってガスバリア性を高めることが行われている。
【0003】
ところで、上記のような酸化ケイ素膜は基本的に高剛性で堅く脆いため、プラスチック基板に蒸着した場合、プラスチック基板の変形に対する追順性が乏しく、剥離しやすく、密着性に乏しいという欠点があるため、プラスチック基板の表面に密着層を形成した後にケイ素酸化物の蒸着膜を形成することが必要である。例えば、特許文献1には、ケイ素酸化物の蒸着膜を形成するに先立って、有機ケイ素化合物濃度の高い反応ガスを使用して或いは低出力条件を採用してプラズマCVDを行うことにより、炭素元素(C)成分に富んだ密着層をプラスチック基板の表面に形成することが提案されている。
【0004】
また、酸化ケイ素以外の蒸着膜についても種々検討されており、例えば特許文献2には、プラスチック容器の表面にアモルファス炭素を主成分とする炭化水素系蒸着膜をプラズマCVDにより形成することが提案されており、さらに、特許文献3には、酸化ケイ素膜の上にダイヤモンド状炭素膜(炭化水素系蒸着膜)が形成された膜構造を有する蒸着膜をプラズマCVDによりプラスチック容器の内面に形成することが提案されている。
【特許文献1】特開2005−97678号
【特許文献2】特開2006−131306号
【特許文献3】特開2006−89073号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、各種分野で生分解性プラスチックとして代表的なポリ乳酸が環境問題などの観点から注目されており、包装材料の分野でも、ポリ乳酸製の容器が実用に供されている。しかし、ポリ乳酸容器はポリエチレンテレフタレート容器比べ、ガスバリア性や耐熱性が劣っており、前述した蒸着膜を形成することにより、ガスバリア性等の特性を改善する試みが行われている。
【0006】
しかるに、前述した特許文献1等に開示されている酸化ケイ素系の蒸着膜は、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器に適用された場合には、優れたガスバリア性を発揮するが、ポリ乳酸容器やポリオレフィン容器のように、ガラス転移点温度が低い低耐熱性の樹脂から製造された容器に適用された場合には種々の問題が生じる。特に、酸化ケイ素膜をポリ乳酸製の容器に適用した場合、蒸着膜を形成する際の酸素プラズマにより、プラスチック基板が熱変形したり、プラスチック基板が酸化劣化し異味異臭を発生するという問題がある。
【0007】
例えば、ポリ乳酸は、ガラス転移点(Tg)が58℃であり、PET等と比較すると熱的特性が劣っている(例えばPETのTgは70℃)。即ち、酸化ケイ素蒸着膜は、バリア性を発現するために、酸素ガスと有機金属ガスを用いた高出力(通常、マイクロ波で600W以上の出力で4sec以上の蒸着)条件の成膜が必要であるが、これらの高出力条件の蒸着は、蒸着過程で発生する酸素プラズマや他のプラズマの熱により、ポリ乳酸基材の熱変形や熱劣化を生じ、特にポリ乳酸容器に成膜した場合には、ボトル内に異臭が発生するなどの問題が発生してしまう。また、酸化ケイ素蒸着膜は、堅く脆いため、柔軟性に乏しく、また、シラノール基などの親水性基も形成されるため、プラスチック基材の変形に対する追順性が乏しく密着性が低いという問題や、水分に対するバリア性が低いという問題がある。
【0008】
一方、ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)などの炭化水素系蒸着膜は、着色するという問題はあるものの、酸化ケイ素膜と比較すると、低出力で且つ短時間で成膜が可能であるため、プラスチック基材の熱変形や熱劣化を生じることなく、ポリ乳酸基材表面に成膜できる利点がある。しかしながら、炭化水素系蒸着膜は、主に、炭素(C)元素と水素(H)元素から構成された膜であり、不活性であることから、プラスチック基材との化学的親和性に乏しく、密着性が問題となっている。一般に、基材と炭化水素系蒸着膜の密着性を向上させる手段として、炭化水素系膜に炭素(C)元素と水素(H)元素以外の不純物元素を導入する方法もある。この場合、プラスチック基材との密着性は向上するが、水分や酸素バリア性が低下する場合もあるため、バリア性を向上させ且つ基材との密着性を向上させるためには、炭素(C)元素と水素(H)元素以外の不純物元素含有量を少なくし、主に炭素(C)元素と水素(H)元素からなる炭化水素系蒸着膜であることが好ましい。
【0009】
例えば、特許文献2に開示されている炭化水素系蒸着膜では、膜中のCH,CH,CHの組成(FT−IR測定による吸収ピークから算出)が、これら3成分の合計を基準として、25%、60%、15%の割合となっているが、このような膜は、柔軟性が高く、PETなどに対しては優れた密着性を有しているものの、PETより親水性であるポリ乳酸に対しては未だ密着性能が不足であり、水分による膜剥離を回避することもできなく、また、水分や酸素に対するバリア性も低いという問題がある。
【0010】
また、特許文献3のような酸化ケイ素系蒸着膜の上にDLC(炭化水素系)蒸着膜を形成する場合、酸化ケイ素系蒸着膜を形成する際に生成する酸素プラズマにより、ポリ乳酸基材が熱変形したり、酸化劣化により異味異臭を生じ、水分による膜剥離も有効に回避することができない。また、水分に対するバリア性も不満足となっている。
【0011】
従って、本発明の目的は、プラスチック基材としてPETを用いた場合には勿論のこと、PETよりガラス転移点温度(Tg)が低く、熱変形温度の低い(耐熱性の低い)プラスチック基材、特に、ポリ乳酸やポリオレフィンを用いた場合においても、蒸着膜成膜時に熱変形や熱劣化が生じることなく、成膜が可能であり、しかも酸素や水分に対するバリア性が高く、プラスチック基材への密着性にも優れ、且つ、水分による膜剥離も有効に防止された蒸着膜を備えたプラスチック成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、プラスチック基板と、該プラスチック基板表面にプラズマCVD法によって形成された蒸着膜とからなるプラスチック成形品において、
前記蒸着膜は、前記プラスチック基板側に形成され、元素比C/M(Mは金属元素である)が2.5乃至13であり且つ元素比O/Mが0.5以下の範囲にある有機金属系蒸着層と、該有機金属系蒸着層上に形成された炭化水素系蒸着層とを含み、
前記炭化水素系蒸着層は、厚みが40乃至180nmの範囲にあり、且つFT−IR測定で波数3200〜2600cm−1の領域にCH、CH及びCHに由来するピークを示し、これらピークから算出されるCH、CH及びCHの合計当りのCH比が35%以下及びCH比が40%以上であることを特徴とするプラスチック成形品が提供される。
【0013】
本発明のプラスチック成形品においては、
(1)前記元素MがSiであること、
(2)前記有機金属系蒸着層の厚みが3乃至40nmの範囲にあること、
(3)前記プラスチック基板が生分解性プラスチック、特にポリ乳酸により形成されたものであること、
(4)前記プラスチック基板がボトルであり、該ボトルの少なくとも内面に前記蒸着膜が形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、プラスチック基板上に形成される蒸着膜は、炭化水素系蒸着層を有しているが、かかる炭化水素系蒸着層は、プラスチック基板表面に形成された有機金属系蒸着層上に形成されている点を特徴としている。即ち、プラスチック基板上に形成された有機金属系蒸着層は、元素比O/M(Oは酸素元素:Mは金属元素、以下同じ)が0.5以下と小さく(特に酸素含量が実質上ゼロである)、且つ、元素比C/Mが2.5乃至13であり、炭素元素の含有量が多く、有機性に富んだ有機金属系蒸着層となっている。
このような有機金属系蒸着層は、酸素ガスを使用せず、且つ、元素比O/Mが0.5以下と小さい有機金属化合物(特に好ましくは、酸素を含有していない有機金属化合物)のガスを反応ガスとして使用し、低出力でプラズマCVD成膜することにより形成することができる。このような方法を適用することによりプラスチック基板として耐熱性の低いプラスチック基板を用いた場合においても、成膜時の酸素プラズマによる熱変形や熱劣化を有効に回避することができ、プラスチック基材の酸化劣化による異味異臭の発生をも有効に防止することができる。また、このような蒸着層は、有機性に富んでいるため、可撓性に優れ、プラスチック基板との密着性が良好であり、従って、このような有機金属系蒸着層の上に炭化水素系蒸着膜を成膜することで、優れたバリア性を示す蒸着膜を提供できる。また、前記有機金属系蒸着層は、元素比O/M比が0.5以下と小さく、特に好ましくは酸素元素を実質上含有していないため、成膜時に形成するシラノール基の濃度が低く、親水和性を低減できることから、水分に対する有効なバリア性能を提供できる。例えば、酸素ガスと有機金属化合物ガスを用いた酸化物系金属蒸着層(SiOx:x=1.5以上)の場合、成膜時に副生成物としてSiOH構造が形成され、この構造が高い親水性を示すため、水分に対するバリア性が低下してしまうという欠点があるのに対し、前記有機金属系蒸着層は、酸化物系金属蒸着層に生じる化学的特性をも有効に改善することができる。
また、有機金属系蒸着層に、有機Siなどの有機金属を使うことによって、Siの結合基がプラスチック基板及び炭化水素系蒸着膜との結合に寄与し、水分に浸漬した場合でも剥離が生じなくなるのである。Siなどの金属を含有しない場合、このような効果はみられず、水分に浸漬した場合には蒸着膜が剥離してしまうものである。
【0015】
本発明において、上記のような特性を有する有機金属系蒸着層は密着層として機能し、プラスチック基板と炭化水素系蒸着層との間に介在させることにより、炭化水素系蒸着層を強固にプラスチック基板に接合せしめ、且つ炭化水素系蒸着層のバリア性を補強し、例えばポリ乳酸基板上に形成した場合にも、水分による膜剥離が有効に防止され、且つ、酸素や水分に対して優れたバリア性を示す蒸着膜を形成することが可能となるのである。
【0016】
また、上記の有機金属系蒸着層の上に形成される炭化水素系蒸着層は、CH基、CH基及びCH基を一定の割合で含有している組成を有していることも重要である。即ち、かかる炭化水素系蒸着層は、FT−IR測定により、波数3200〜2600cm−1の領域にCH、CH及びCHに由来するピークが観測される。例えば、後述する実験例で作成されたポリ乳酸基板状の蒸着膜中の炭化水素系蒸着層のFT−IRチャートを示す図2を参照されたい。この図2によれば、波数2960cm−1に非対称振動モードのCH結合に由来するピークが存在し、波数2925cm−1に非対称振動モードのCH結合に由来するピークが存在し、波数2915cm−1に非対称振動モードのCH結合に由来するピークが存在していることが示されている。本発明における炭化水素系蒸着層は、これらの非対称振動モードの同じ振動モードの吸収ピークに着目し、そのピーク強度を基準として算出され(詳細な算出方法は実験例参照)CH比が35%以下、CH比が40%以上となるような組成を有しているものであり、このような組成を有する蒸着層が有機金属系蒸着層の上に形成されているため、従来公知のDLC膜等に比して、酸素や水分に対するバリア性が著しく向上し、且つ水分による膜剥離も有効に防止されるのである。
【0017】
本発明において、上記のような組成の炭化水素系蒸着層の形成により、水分等に対するバリア性の向上や水分による膜剥離が防止される理由は正確に解明されたわけではないが、本発明者等は、次のように推定している。
即ち、CH比及びCH比が上記範囲内にあるということは、適度な柔軟性を有していると同時に、この層が枝分かれ構造が多い分子から形成され、緻密な構造を有していることを示しており、この結果、上記の水分や酸素に対するバリア性が向上し、しかも有機金属系蒸着層との密着性も向上し、例えばポリ乳酸基板上に蒸着膜を形成した場合においても、水分による膜剥離が有効に防止されるものと考えられる。例えば、前述した特許文献2提案の炭化水素系蒸着膜を上記の有機金属系蒸着層上に形成したときには、本発明に比してCH比が大きいため、膜組成が緻密ではなくルーズであるため、密着性能は満足するものの、満足できる水分や酸素バリア性を得ることができていない。また、水分に対するバリア性が低いため、例えば、ポリ乳酸基板に適用された場合には、有機金属系蒸着層との界面に水分が侵入し、蒸着膜の剥離を生じ易くなってしまう。また、CH比が低く、例えばCH比がゼロのような組成の炭化水素系蒸着層は、柔軟性が損なわれ、著しく硬質のため、基材や有機金属系蒸着層の変形に追順できず、膜が剥離し、所定のバリア性が得られない。
【0018】
さらに、本発明では、炭化水素系蒸着層の厚みが40乃至180nmの範囲にあることが好適である。即ち、上述した組成を有する炭化水素系蒸着層は、高出力、且つ、短時間でのプラズマCVDにより形成され、この結果、上記のような厚みを有するものとなり、酸素や水分に対する優れたバリア性がもたらされる。即ち、厚みが上記範囲よりも薄い場合には、CH、CH、CH比率が前記範囲に存在しても十分なバリア性能を得ることができず、バリア性が損なわれてしまうおそれがある。また、厚みが上記範囲よりも厚いと、膜が堅くなるため、柔軟性が損なわれ、下層の有機金属系蒸着層との密着性が損なわれ、やはり所定のバリア性が得られないおそれがある。
【0019】
上述した層構造を有する蒸着膜を備えた本発明のプラスチック成形品は、酸素や水分に対して優れたバリア性を有し、例えば、プラスチック基板としてポリ乳酸が使用された場合においても、高いバリア性を示し、さらに水分による膜剥離も有効に防止され、容器等の包装材の分野に特に好適に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明のプラスチック成形品の層構造を示すものであり、図1において、このプラスチック成形品は、プラスチック基板1と、その表面に形成されている蒸着膜3とからなっている。また、蒸着膜3は、プラスチック基板1の表面側に形成されている有機金属系蒸着層3aと、その上に形成されている炭化水素系層3bとからなっている。尚、図1の例では、プラスチック基板1の一方の表面にのみ蒸着膜3が形成されているが、勿論、このような蒸着膜3は、プラスチック基板1の両面に形成されていてもよい。
【0021】
<プラスチック基板1>
本発明において、蒸着膜3を形成すべきプラスチック基板1としては、それ自体公知の熱可塑性樹脂からなるもの、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、あるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン;環状オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル;ポリカーボネート;ポリフエニレンオキサイド;ポリブチレンサクシネート、ポリ(ヒドロキシブチレート)及びその共重合体やポリ乳酸に代表される生分解性プラスチック;及びこれらのブレンド物;などから形成されたものであってもよい。
【0022】
本発明においては、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックやポリオレフィン、特に生分解性プラスチックからなるプラスチック基板1を用いたときが、最も顕著な効果が発現する。即ち、このような生分解性プラスチックは、先にも述べたように、PETなどと比較してガラス転移点(Tg)が低く(一般に60℃以下)、耐熱性が低い。このため、蒸着膜の成膜時に生成するプラズマ熱により基材の熱変形や基材の酸化劣化による異味異臭が発生し易いが、本発明の蒸着膜では、成膜時の基材の熱変形や酸化劣化を有効に回避しながら満足すべきバリア性能を得ることが可能となっている。
【0023】
また、生分解性プラスチックとしては、包装材料の分野等での汎用性の観点からポリ乳酸が最も好適に使用される。このようなポリ乳酸としては、ポリ−L−乳酸或いはポリ−D−乳酸の何れであってもよく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶融ブレンド物でもよく、また、これらの共重合体であってもよい。さらには、生分解性を示すポリオキシ酸であるグリコール酸やカプロラクトンなどとの共重合体であってもよい、また、ポリグリコール酸、酢酸セルロース、ポリカプロラクトンなどがブレンドされていてもよい。
【0024】
プラスチック基板1の形態は、特に制限されず、フィルム、乃至、シートであってもよいし、またボトル、カップ、チューブ等の容器やその他の成形品の形であってよく、その用途に応じて、適宜の形態を有するものであってよいが、後述する蒸着膜3が優れたガスバリア性、及び、水分バリア性を示すことから、特にボトルの形態とし、ボトル内面に後述する蒸着膜3を形成することが好適である。また、二軸延伸ブロー成形、押出ダイレクトブローなど、プラスチック基材1の成形手段なども制限されない。
【0025】
また、プラスチック基板1は、前述した熱可塑性樹脂(好ましくはオレフィン系樹脂)を内外層とし、これらの内外層の間に酸素吸収性層を有するガスバリア性の多層構造物とすることも勿論可能である。
【0026】
<蒸着膜3>
本発明において、上述したプラスチック基板1上に形成される蒸着膜3は、有機金属系蒸着層3a及び炭化水素系蒸着層3bとからなるものであるが、これら蒸着層3a,3bの形成は、何れも所定の化合物ガスを含む反応性ガスを使用したプラズマCVD、例えばマイクロ波や高周波を利用してのグロー放電によるプラズマCVDにより行われる。尚、高周波による場合には、膜を形成すべきプラスチック基板1を一対の電極基板で挟持する必要があるため、ボトルなどの立体容器形状のプラスチック基板1に蒸着膜3を形成するときには、マイクロ波によるプラズマCVDを実行することが好適である(即ち、一対の電極基板により容器壁を挟持するためには、装置構造が複雑になってしまう)。
【0027】
このようなプラズマCVDは、例えば、所定の真空度に保持されたチャンバー内に成膜すべきプラスチック基板1を配置し、該基板1の成膜面側に所定の反応ガスを供給し、且つ所定の出力でマイクロ波を供給することにより、成膜することができる。高周波の場合には、プラスチック基板1を一対の電極の間に保持し、上記と同様、反応ガスを供給しながら所定の出力で高周波を印加することにより、成膜することとなる。
【0028】
−有機金属系蒸着層3a−
本発明において、蒸着膜3の内、プラスチック基板1の表面に形成されている有機金属系蒸着層3aは、密着性層として機能するものであり、炭化水素系蒸着層3bを高い密着性でプラスチック基板1上に設けるために形成されるものであり、このような有機金属系蒸着層3aの形成により、例えばポリ乳酸基板などの上にも高い密着性で炭化水素系蒸着層3bを形成し、しかも水分による炭化水素系蒸着層3bの剥離を有効に防止することが可能となるものである。
【0029】
このような有機金属系蒸着層3aは、酸化性ガスを使用せず、元素比O/Mが0.5以下の有機金属化合物のガス、特に好ましくは酸素原子を含有していない有機金属化合物のガスを反応ガスとして使用したプラズマCVDを行うことにより形成されるものであり、従って、元素比O/Mが0.5以下の酸素元素の少ない層、特に好ましくは非酸化物系の層で構成されている。即ち、かかる層3aは、酸素元素の含有量が少ないか或いは酸素が全く存在しない状態で成膜されるため、かかる成膜工程でのプラスチック基板1への酸素プラズマによる熱分解、或いは、酸化を確実に抑制できるばかりか、低出力及び短時間での成膜が可能となり、例えばポリ乳酸等のガラス転移点の低い樹脂を基材としたプラスチック基板1に適用された場合においても、その熱変形や熱劣化が有効に防止され、熱履歴に由来する異臭の発生や蒸着膜の剥がれなどを防止することが可能となる。
【0030】
このように、酸化性ガスを使用せず、酸素原子含有量がO/M比で0.5以下の有機金属化合物のガス或いは酸素原子を含有していない有機金属化合物のガスを反応ガスとした条件下での成膜により形成される有機金属系蒸着膜3aは、O/M比(Oは酸素元素:Mは金属元素)が0.5以下と低いか或いは酸素元素を実質上含んでおらず、有機金属化合物に由来する金属(M)と有機金属化合物の有機基に由来する炭素原子(C)とを含み、さらにはHを含有しており、原子比(C/M)は、2.5乃至13の範囲にある。即ち、この有機金属系蒸着層3aは、炭素成分を多く含んだ層であり、この結果、可撓性が高く、プラスチック基板1及び炭化水素系蒸着層3bに対して密着性に優れている。即ち、C/M比が上記範囲よりも小さいと、この上に形成される炭化水素系蒸着層3bとの密着性が損なわれ、一方、C量が多すぎて金属元素(M)の含有割合が低くなると、プラスチック基板1との密着性が低下するのである。
【0031】
また、かかる有機金属系蒸着層3aは、酸素含有量が少なく、特に好ましくは酸素元素を実質上含有していないため、シラノール基を代表とする極性基構造の生成量が低減でき、蒸着膜の親水性を抑制せしめる。
【0032】
上記のような有機金属系蒸着層3aの厚みは3乃至40nm以上、特に5乃至30nmの範囲にあることが好適である。即ち、この厚みが上記範囲よりも薄いと、以下に述べる炭化水素系蒸着層3bとの密着性が不満足となる傾向がある。また、有機金属系蒸着膜3aを厚く形成すると、コスト的に不利となってしまうばかりか、有機金属系蒸着層3aの形成に長い成膜時間が必要となり、結果的に成膜時のマイクロ波出力(熱量)が増加するため、プラスチック基材の熱変形や熱劣化を生じることとなる。
【0033】
このような有機金属系蒸着層3aは、有機金属化合物のガスを反応性ガスとして使用し、酸素ガスを使用せず、酸素の非存在下での低出力のプラズマ反応により成膜される。例えば、有機金属化合物のガスと共に酸素ガスを使用する場合は、酸素プラズマによる酸化劣化によりプラスチック基板1の熱変形及び熱劣化してしまうばかりか、シラノール基などの極性基の生成に伴い、親水性が増大し、水分に対するバリア性が低下する。
【0034】
従って、上記の有機金属化合物としては、分子中に酸素を含まない有機金属化合物、或いは、分子中に酸素元素を含んでいたとしても、分子鎖中のO/M元素比が0.5以下の有機金属化合物が使用され、特にガス化が容易なものが使用される。例えば、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、テトラアルキルチタンなどの有機チタン化合物、各種有機ケイ素化合物などを例示することができるが、特に、コスト、成膜性などの観点から有機ケイ素化合物が好適である。
【0035】
このような酸素原子を含有していない有機ケイ素化合物の例としては、これに限定されるものではないが、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルシラン、t-ブチルメチルシランなどのシラン化合物やシラザンなど、また、分子鎖中のO/M元素比が0.5以下の有機金属化合物の例としては、ヘキサメチルジシロキサン、メトキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシトリメチルシラン、プロピニルオキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、アリルオキシメチルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、イソプロピオキシトリメチルシラン、トリメチルプロピオキシシラン、トリメチルイソプロピオキシシラン、トリエチルシラノール、t-ブチルトリメチルシラン、メチルプロプオキシトリメチルシラン、イソブトキシトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシランなどのシラン化合物を挙げることができる。このような有機ケイ素化合物は、単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0036】
本発明においては、プラスチック基板1の中でも特にポリ乳酸基板に対して密着性に優れた有機金属系蒸着層3aを形成するという観点から、上記の有機ケイ素化合物の中でも、脂肪族不飽和基を有しているもの、例えば、下記式(1):
(R−Si(R4−n (1)
式中、Rは、ビニル基、アリル基などの脂肪族不飽和基を有する基であり、
は、アルキル基、アリール基、アラルキル基などの脂肪族若しくは芳香
族の炭化水素基であり、
nは、1乃至4の整数である、
で表されるシラン化合物を好適に使用することができる。このようなシラン化合物としては、ビニルトリメチルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどが挙げられるが、最も好適なものは、ガス化が容易であるという観点から、トリメチルビニルシランである。
【0037】
また、反応性ガスとして、上記の有機ケイ素化合物等の有機金属化合物のガスを単独で使用することもできるが、不飽和脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素のガス(以下、単に炭化水素系ガスと呼ぶことがある)と混合して使用することもできる。即ち、これらの炭化水素系ガスは、後述する炭化水素系蒸着層3bを成膜するためにも使用されるものであり、このような炭化水素系ガスの併用により、炭素に富んだ柔軟性の高い有機金属系蒸着層3aを形成し、プラスチック基板1との密着性を高めると同時に、炭化水素系蒸着層3bとの密着性も向上させることができる。また、後述する炭化水素系蒸着層3bの成膜を有機金属系蒸着層3aの成膜と連続して行うという観点からも、炭化水素系ガスの併用は有利である。さらに、このような炭化水素系ガスは、前述した式(1)で表される不飽和結合含有の有機ケイ素化合物との併用が最も効果的である。即ち、上記の炭化水素系ガスは、式(1)で表される有機ケイ素化合物と分子レベルで相溶化するため、膜特性のバラツキを生じることなく、安定して均質な組成の有機金属系蒸着層3aを形成することができるからである。
尚、有機金属系蒸着層3aは、炭素、金属、水素、あるいは酸素からなる構造を有するものであるが、それら以外に、窒素等その他の元素を含んでいてもよい。
【0038】
本発明において、上記の不飽和脂肪族炭化水素としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン類、アセチレン、メチルアセチレンなどのアルキン類、ブタジエン、ペンタジエン等のアルカジエン類、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロアルケン類を挙げることができ、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレンなどを例示することができる。本発明においては、膜特性などの観点から、不飽和脂肪族炭化水素が好適であり、特に、エチレン、アセチレンが最も好適である。
【0039】
また、上記の有機金属化合物と炭化水素との混合ガス(反応性ガス)において、有機金属化合物ガス濃度は、形成される膜中の元素比(C/M)が前述した範囲内となるように設定されるが、両ガスの相溶性の観点から、50モル%以上、特に60モル%以上の範囲にあるのがよい。有機金属化合物ガス濃度が、上記範囲外であるときには、おそらく両化合物の相溶性のバランスが低下するため、膜特性が不安定となり、プラスチック基材料と蒸着膜間で膜の剥離が生じやすくなり、また、酸素に対するバリア性、水分に対するバリア性などの膜特性が低下し、場合によってはクラックなどの発生により膜表面があれた状態となることがある。
【0040】
また、上述した反応性ガスとともに、希釈剤として各種のキャリアガスを用いて反応ガスのガス濃度を調整することもできる。このようなキャリアガスとしては、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを例示することができる。
【0041】
尚、本発明においては、酸素ガスを反応性ガスとして使用せず、また、有機金属化合物としても、O/M比0.5以下のもの或いは分子中に酸素元素を含有していないものを使用するため、形成される有機金属系蒸着層3a中の酸素含有量は少なく、例えばO/M比が0.5以下であるか、或いは実質的に酸素元素(O)が存在していない。また、コンタミとして反応性ガス中に空気が若干混入する場合もあるが、このような場合でも、O/M元素比が0.5以下の場合においては、成膜後の有機金属系蒸着層3aの特性は損なわれず、該層3aは密着層として機能することができる。つまり、含有する酸素元素量が金属元素量よりも低い場合は、M元素と酸素元素の結合形成の割合が低く、SiOx(x=1.5)以上で顕著に生成するシラノール基の親水性基の生成を抑えることができる。即ち、このように、有機金属化合物ガスの分子内に含有されている酸素元素の割合が、O/M比が0.5以下の含有量である場合、成膜した膜の膜特性(密着性・バリア性)は十分に満足するものであり、上記酸素元素の含有量を無視することができる。
【0042】
本発明において、上述した反応性ガスを用いてのプラズマCVDによる成膜は、低出力でのマイクロ波或いは高周波を利用してのグロー放電により行うのがよい。即ち、高出力で成膜を行うと、特にポリ乳酸の如きガラス転移点の低いプラスチック基板1に適用すると、プラズマ熱によりプラスチック基材が熱変形したり熱劣化を生じてしまう場合がある。従って、マイクロ波によりプラズマCVDを行う場合には、その出力を200乃至500Wの範囲とするのがよく、高周波による場合は、その出力を200乃至600Wの範囲とするのがよい。
【0043】
また、反応性ガスの流量や成膜時間(蒸着時間)は、形成される有機金属系蒸着層3aの厚みが前述した範囲(3乃至40nm、特に5乃至30nm)となるように設定されるが、一般に、成膜時間を0.1乃至4秒の範囲に設定し、かかる成膜時間で上記のような厚みの有機金属系蒸着層3aを形成するのがよい。即ち、成膜時間が必要以上に長いと、プラズマ熱が蓄積し、特にポリ乳酸の如きガラス転移点の低いプラスチック基板1が熱変形したり、熱劣化するおそれがある。
【0044】
−炭化水素系蒸着層3b−
本発明において、上述した有機金属系蒸着層3aの上に炭化水素系蒸着層3bが形成され、これにより、酸素等に対する優れたバリア性を示し、且つ水分に対しても優れたバリア性を確保することができ、しかも、かかる層3bは、有機金属系蒸着層3aに対して優れた密着性を示し、水分に対するバリア性が高いことも関連して、水分による膜剥離が有効に防止され、例えばポリ乳酸のように水分に対するバリア性の低いプラスチック基板上に蒸着膜3が形成されていた場合にも、水分による膜剥離が有効に防止され、長期間にわたって優れたバリア性が維持される。
【0045】
このような炭化水素系蒸着層3bは、反応性ガスとして炭化水素化合物のガスを使用してのプラズマCVDにより形成され、主成分として炭素元素(C)を含む層であるが、既に述べたように、CH結合、CH結合及びCH結合を含んでおり、例えばCH結合をほとんど含んでいない硬質のダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)とは異なる組成を有している。これらの結合の存在は、FT−IR測定により、3200〜2600cm−1の領域にCH、CH2及びCH3に由来するピークを示すことから確認できる。
【0046】
また、上記の各結合構造の存在比は、FT−IRから求まるスペクトルを基に算出でき、各ピーク強度にそれぞれの吸収ピーク固有の吸光度係数を掛けた値から求めることができる。具体的には、各結合成分量の総量に対して、CH比が35%以下、及びCH比が40%以上の範囲にあることがバリア性の観点から必要である。このような組成を有していることにより、炭化水素系蒸着層3bは、適度な柔軟性を示し、前述した有機金属系蒸着層3aに対して優れた密着性を示すと共に、緻密な構造を有し、酸素等に対して優れたバリア性を示す。この結果、蒸着膜3がポリ乳酸基板の表面に形成されている場合においても、水分の浸透などに起因する膜剥離を有効に回避することが可能となる。特に本発明においては、酸素や水分に対して優れたバリア性が発現するという観点から、CH比が35%以下及びCH比が40%以上、好ましくは、CH比が30%以下及びCH比が45%以上、特に好ましくは、CH比が20%以下及びCH比が55%以上であることが好適である。また、CH,CH,CHの相対比は、CH比が10〜40%、CH比が0〜35%、CH比が40〜85%の範囲にあることが好ましく、CH比が10〜40%、CH比が0〜30%、CH比が45〜85%の範囲にあることがより好ましく、CH比が10〜40%、CH比が0〜20%、CH比が55〜85%の範囲にあることが更に好ましい。
また、炭化水素系蒸着層は、炭素と水素からなるCH、CH、CHの構成比が前記範囲にあるものであるが、それらの構成元素である炭素、水素以外に、ケイ素など有機金属系蒸着層の金属、酸素、窒素等、その他の元素を含んでいてもよい。
【0047】
上記のような炭化水素系蒸着層3bは、厚みが40乃至180nm、好ましくは60乃至160nmの範囲にある。即ち、厚みが上記範囲を下回る場合、所定のバリア性を確保するのが難しく、上記範囲を上回る場合は、蒸着膜そのものの剛性が高まり、ボトル変形に時の変形に追順するのが困難となり、膜割れや剥離を生じ、結果的にバリア性が低下してしまう。
【0048】
本発明において、上記の炭化水素系蒸着層3bの形成に使用する炭化水素化合物としては、ガス化が容易であれば、特に制限されず、種々の炭化水素化合物を使用することができるが、一般的には、ガス化が容易であり、且つ有機金属系蒸着層3aに対して優れた密着性を有する層を形成するという観点から、不飽和脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素が好適である。かかる不飽和脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素は、前述した有機金属系蒸着層3aの成膜に際して、有機金属化合物のガスと併用されるものと同じであり、具体的には、不飽和脂肪族炭化水素として、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン類、アセチレン、メチルアセチレンなどのアルキン類、ブタジエン、ペンタジエン等のアルカジエン類、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロアルケン類を挙げることができ、芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレンなどを挙げることができ、不飽和脂肪族炭化水素が好適であり、特に、エチレン、アセチレンが最適である。
【0049】
また、上記の不飽和炭化水素や芳香族炭化水素のガス(反応性ガス)と共に、希釈剤として各種のキャリアガスを用いて、反応ガスのガス濃度を調整できることは、前述した有機金属系蒸着層3aを成膜する場合と全く同様である。
【0050】
本発明においては、上記のような炭化水素系化合物のガスを反応性ガスとして使用してのプラズマCVDは、マイクロ波、或いは、高周波を利用してのグロー放電により、炭化水素系蒸着層3bを形成するが、前述した組成を得るために、高出力でのマイクロ波や高周波によるグロー放電によってプラズマCVDを行う必要がある。具体的には、マイクロ波及び高周波の出力は、何れも450W以上とすべきであり、特にマイクロ波の場合は450乃至850Wの出力とするのが好適であり、高周波の場合は、450乃至950Wの出力が好ましい。即ち、低出力の場合には、CH比が前述した範囲よりも多くなってしまい、この結果、緻密な層とすることができず、酸素や水分に対するバリア性が不満足なものとなる。また、必要以上に出力を高くすると、CH比が必要以上に多くなり、この結果、炭化水素系蒸着層3bが著しく硬質なものとなってしまい、有機金属系蒸着層3aとの密着性が損なわれてしまい、やはり酸素や水分に対するバリア性が不満足なものとなってしまう。従って、マイクロ波或いは高周波の出力は、上記範囲とすることが好適である。
【0051】
また、上記のような高出力でのマイクロ波或いは高周波によりグロー放電でプラズマ反応を行うため、その成膜時間は、0.5乃至5秒の範囲とすることが好適であり、特にマイクロ波による場合の成膜時間は1乃至4秒の範囲が特に好ましく、高周波による場合は1乃至4秒の範囲が特に好適である。即ち、成膜時間が必要以上に長くなると、炭化水素系蒸着層3bが硬質化し、有機金属系蒸着層3aとの密着性が損なわれ、酸素や水分に対するバリア性が低下する傾向があるからである。
【0052】
本発明では、上記のような範囲の出力でのマイクロ波或いは高周波によるプラズマCVDを行い、且つ上記のような成膜時間とすることにより、CH、CH及びCHの各比が前述した範囲となり、且つ厚みが前述した範囲となる炭化水素系蒸着層3bが形成されることとなる。
【0053】
また、上記のようにして炭化水素系蒸着層3bの成膜を行う場合、反応性ガス流量を増大させると、CH2比が増大する傾向があり、従って、マイクロ波或いは高周波によるプラズマCVDに際しては、反応性ガス(炭化水素系ガス)の流量を10乃至100sccmの範囲とし、この範囲内でガス流量を調整して前記出力及び成膜時間で反応を行うことにより、CH、CH及びCHの各比が前述した範囲となるように組成を調整することができる。
【0054】
尚、上記のような炭化水素系蒸着層3bは高出力条件で成膜が行われるが、成膜時間が短時間であり、ポリ乳酸基板などを用いた場合においても、このような成膜に際しての熱変形や熱劣化が生じることがない。
【0055】
本発明においては、蒸着膜層3の成膜工程に際し、有機金属系蒸着層3aの上に炭化水素系蒸着層3bを蒸着する工程において、有機金属系蒸着層3aを蒸着後に、一旦、蒸着チャンバー内ガスを排気後、炭化水素系反応ガスを導入し、炭化水素系プラズマCVD蒸着層を形成する、2段階の蒸着工程で成膜する方法でもよく、また、有機金属系反応ガスと炭化水素系反応ガスの所定量を導入し、マイクロ波を連続出力しながら、有機金属系蒸着層3aの蒸着後に有機金属系反応ガスのみを遮断させて成膜する1段階蒸着工程でもよく。また、マイクロ波を連続出力しながら、有機金属系反応ガスと炭化水素系反応ガスのガス組成を、有機金属反応ガスの組成量が大きいガス組成から炭化水素系反応ガスの組成量が大きいガス組成に連続的、もしくは、段階的に変化させた混合ガスを用いる1段階蒸着工程でもよい。
【0056】
本発明においては、上記のようにしてプラスチック基板1上に有機金属系蒸着層3a及び炭化水素系蒸着層3bからなる蒸着膜3を形成することにより、酸素等に対するバリア性や水分に対するバリア性を向上させることができ、しかも水分による膜剥離も有効に防止することができ、またプラスチック基板1の酸化劣化や熱変形を有効に防止することができる。特に、ガラス転移点の低いポリ乳酸基板の表面に蒸着膜3を形成した場合においても、該基板の熱変形、熱劣化を有効に防止しすることができる。
【0057】
尚、上述した蒸着膜3を備えた本発明のプラスチック成形品においては、必要により、炭化水素系蒸着層3bの上に、さらにプラズマCVDによる蒸着を行うことにより、従来公知の酸化ケイ素膜やダイヤモンドライクカーボン膜などの蒸着層を形成することにより、そのガスバリア性などの特性を向上させることもできる。
【実施例】
【0058】
次に実験例をもって本発明を説明する。
【0059】
<実施例1〜14、比較例1〜6
[蒸着試験用ボトル]
蒸着試験用の容器として、以下のボトルA〜Cを用意した。
ボトルA:
ポリ乳酸(PLA)樹脂製プリフォームを二軸延伸ブロー成形して得られた内容積
400mlのポリ乳酸製ボトル。
ボトルB:
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製プリフォームを二軸延伸ブロー成型
し、得られた内容積400mlのポリエチレンテレフタレート樹脂製ボトル。
ボトルC:
ポリエチレン(HDPE)樹脂をダイレクトブロー成形して得られた内容積400
mlのポリエチレン製ボトル。
【0060】
[蒸着処理]
プラズマCVDによる蒸着は、次のように行った。
所定の真空度に保持されたチャンバー内に製膜すべき上記の試験用ボトルを収容後、反応ガスとして有機金属化合物ガスを試験用ボトル内部に導入し、2.45GHzのマイクロ波を出力することで有機金属系蒸着層を製膜した。次に、反応ガスとしてアセチレン30sccmをプラスチック容器内部に導入し、2.45GHzマイクロ波を出力することで有機金属系蒸着膜の上に炭化水素系膜を製膜した。
成膜後、ボトルを大気開放し、プラズマCVD蒸着装置より蒸着膜が形成された蒸着ボトルを取り出した。反応ガスを供給し、所定のマイクロ波を出力することで製膜を行った。
表1〜4には、各実施例及び比較例で採用した有機金属系蒸着層及び炭化水素系層の蒸着条件を示した。
【0061】
[蒸着ボトルの評価]
1.水分バリア性:
イオン交換水400mlを蒸着ボトルに室温充填し、ゴム栓で密栓後、重量測定した。次に、37℃、25%RH環境下に7日保存したあと、再度重量を測定し、ボトル表面積で換算して一日当たりの水分透過量とした(g/m・day)。この場合、水分透過量が7g/m2・day以下の値で水分バリア性があるとし、水分透過量が7g/m・dayを越えたときに水分バリア性が不十分とした。
【0062】
2.酸素バリア性:
蒸着ボトルを脱気グローボックスに挿入し、窒素ガスでガス置換後、ゴム栓で密封し、37℃、25%RH環境下に7日保存した。次に、ガスタイトシリンジで容器内ガスを1ml採取し、酸素濃度測定ガスクロマトグラフィーにて酸素濃度を測定し、該測定値からボトル表面積で換算して一日当たりの酸素透過量(cc/m・day)を算出した。
【0063】
3.膜剥離試験:
蒸着ボトルに400mlのイオン交換水を室温充填し、40℃恒温槽に30日保存した後、ボトルを100回振った。ボトル外面から目視観察し、ボトル内部にせん光性を示す透明フレークが浮遊した場合、蒸着膜が剥離したと判断した。一方、目視観察でせん光性を示す透明フレークの浮遊が確認できない場合、膜の剥離がないとした。
【0064】
4.水フレーバー性:
蒸着ボトルに蒸留水400mlを充填し、22℃に2週間保存後、内容水を取り出し、4点評価法により異味異臭の官能試験をおこなった。蒸留水を比較対照区(評点1)とし、水フレーバー性を評価した。評価基準は次の通りである。
1.0〜2.0未満:問題なし
2.0〜2.5未満:異味異臭大
2.5以上:異味異臭きわめて大
【0065】
5.総合評価:
上述した各試験での評価を基に、酸素バリア性が25cc/m・day以下であり、水分バリア性が7g/m・day以下であり、水充填保存時の膜の剥離がなく、水フレーバー評価の値が2.0未満の場合、総合判定を○とした。一方、前記4項のいずれかの項目で条件を満足しないものがあった場合、総合判定を×とした。
【0066】
[蒸着膜の分析]
1.炭化水素系蒸着膜の分析:
(測定試料の調整)
実施例及び比較例で作製された各蒸着ボトルに、有機溶媒を入れ、振動攪拌し蒸着膜を溶離させた。尚、ボトルA,C(ポリ乳酸ボトル、ポリエチレンボトル)では、有機溶媒としてクロロフォルムを用い、ボトルB(PETボトル)ではヘキサフルオロ−2−プロパノールを用いた。
次に、ボトル内の有機溶媒を回収し、5A濾紙で濾過した。蒸着膜は濾紙上に残査として残るため、更に、プラスチック基材溶出成分を洗い流すため、過剰な有機溶媒で濾過残査を洗浄濾過した。この後、濾紙上に残った残査部をクロロフォルムで分離回収した。クロロフォルムに分散した蒸着膜分散物をクロロフォルムと一緒にアルミ箔上に滴下し、乾燥させた。
【0067】
(FT−IR測定)
顕微赤外FT−IR装置を用い、カセグレイン鏡を用いた反射測定を行った(測定周波数範囲:600cm−1〜4000cm−1)。
実測スペクトルの内、炭化水素系吸収ピーク領域として2600cm−1から3200cm−1範囲を用い、2600cm−1から3200cm−1範囲外でベースライン補正した。
次に、D.S.Patil et al, Journal of Alloys and Compounds, 278(1998)
130-134文献に従い、非対称振動モードの吸収ピークとして、以下の吸収帯:
CH吸収バンド;2960cm−1
CH吸収バンド;2925cm−1
CH吸収バンド;2915cm−1
を選択し、さらに波形分離の都合上、対象振動モードの吸収バンド(CHとCHとの混合吸収バンド):2860cm−1も用い、カーブフィッテイングした。顕微赤外FT−IR装置付帯のカーブフィッテイングソフトを用いた。
非対象振動モードである2960cm−1(CH)、2925cm−1(CH)、2915cm−1(CH)のピーク強度(ピーク面積)にそれぞれのピークの吸光度係数をかけ(2960c:0.31、2925cm−1:0.29、2915cm−1:0.14)、それぞれのピーク強度値とした(参照文献:Polymer Analytical Handbook)。吸光光度係数を掛けて得られたピーク強度補正後の値を用い、(CH):2960cm−1、(CH):2925cm−1、(CH):2915cm−1の総和を100とし、下記式に従い、CH,CH,CH構造の組成比を求めた。解析結果の例を図2に示した。
【0068】
CH(%)=I(CH)/{I(CH)+I(CH)+I(CH)}
I(CH)=(CH:2960cm−1)カーブフィッティング値×吸収光度係数(0.31)
I(CH)=(CH:2925cm−1)カーブフィッティング値×吸収光度係数(0.29)
I(CH)=(CH:2915cm−1)カーブフィッティング値×吸収光度係数(0.14)
【0069】
(炭化水素系蒸着膜の膜厚測定)
試験ボトルの蒸着時にボトル内面に20mm×20mm片のシリコンウエハーを挿入し、シリコンウエハー上に実施例・比較例毎の蒸着膜を別途成膜した。
次に、斜入射X線(Grazing Incidence X-ray)測定装置を用い、CuKα線を用いて、入射角0.1°〜2.5°の入射角スキャン(ステップー:0.003°)を行い、X線の反射強度を測定した。測定X線反射曲線をX線装置付帯のWinGixaソフトにて解析し、膜厚を求めた。
【0070】
2.有機金属系蒸着膜の分析:
(元素組成分布と膜厚測定)
内面に蒸着膜を形成した蒸着ボトルの胴部を切り出し、PHI社製X線光電子分光分析装置(Quantum2000)により、蒸着膜の深さ方向のケイ素、酸素、炭素のそれぞれの組成分布を測定した。
膜厚みに関しては、溶融石英(SiO)で求めたスパッタ速度(1.9nm/分)と同じ条件で試料片をスパッタリングして、蒸着膜スパッタに要した時間を換算して膜厚とした。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表1、表2から、次のことが明らかである。
ブランク1に示したように、蒸着膜がついていないポリ乳酸(PLA)ボトルAは、酸素バリア性が55cc/m・dayで、水分バリア性は16g/m・dayと酸素・水分ともにバリア性が低い。
【0074】
実施例1〜3は、ポリ乳酸ボトルに有機金属系蒸着膜を蒸着する場合の有機金属化合物ガスをテトラメチルビニルシラン(TMVS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、t−ブチルジメチルシラン(BMS)を用いた例である。炭化水素膜の成膜は、反応ガスとしてアセチレンガスを用い、マイクロ波出力615Wで行われている。実施例1〜3では、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の何れも良好である。
実施例4は、炭化水素系蒸着膜の成膜用の反応ガスをアセチレンガスとベンゼンガス1:1の混合ガスを用いた他は、実施例1と同様に成膜が行われている。この実施例4でも、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の何れも良好である。
実施例5乃至7は、有機金属系蒸着膜の成膜時に用いた反応性ガスをTMVSガスとアセチレンガスとし、混合割合を5.25:1にした以外は実施例1同様に成膜が行われている。これらの例においても、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の何れもが良好である。
実施例8、9は、炭化水素系蒸着膜の成膜時間を4秒と1.2秒とした以外は実施例1と同様に成膜が行われている。これらの例でも、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の何れもが良好である。
実施例10は、炭化水素系蒸着膜の成膜時のマイクロ波出力を545Wとした以外は実施例1と同様に成膜が行われている。この例でも、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の何れもが良好である。
【0075】
比較例1は、有機金属系蒸着膜を成膜せず、炭化水素系蒸着膜のみボトルA(PLAボトル)に施した例である。酸素・水分バリア性が発現するものの、膜剥離試験で蒸着膜の剥離が生じた。
比較例2は、有機金属系蒸着膜の成膜時に用いた反応性ガスをTMVSガスとアセチレンガスとし、混合割合を2:3とした以外は実施例1と同様に成膜が行われている。この場合、C/Si比が14となり、良好な、酸素バリア性、水分バリア性、水フレーバー性が得られたものの、膜剥離試験で蒸着膜の剥離が生じた。
比較例3、4は、炭化水素系蒸着膜の成膜時のマイクロ波出力を430Wと340Wとした他は、実施例1と同様に成膜が行われている。この場合、良好な、耐膜剥離性、水フレーバー性が得られたものの、酸素バリア性、水分バリア性は不良であった。
比較例5は、ボトルA(PLAボトル)に有機金属系蒸着膜を蒸着する場合の反応性ガスとして、ヘキサメチルジシロキサン(O/M元素比=0.5)と酸素ガスの1:10混合比ガスを用い、マイクロ波出力を470Wにした以外は、実施例1と同様に成膜が行われている。この場合、良好な酸素バリア性が得られたものの、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性は不良であった。水フレーバー試験では、異味異臭が発生した。
【0076】
【表3】

【0077】
表3から、次のことが明らかである。
比較例6は、ボトルA(PLAボトル)に有機金属系蒸着膜を蒸着する場合の反応性ガスとして、ジエトキシメチルシラン(O/M元素比=2.0)を用いた以外は、実施例1と同様に成膜が行われている。この場合、良好な酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性が得られたものの、水フレーバー性は不良であった。水フレーバー試験では、異味異臭が発生した。
ブランク2に示したように、蒸着膜がついていないボトルB(PETボトル)は、酸素、水分バリア性ともに、ポリエチレンテレフタレートの樹脂性能そのものの性能であった。(ポリ乳酸ボトルAよりはバリア性は高いが、市場の要求性能はさらに高いバリア性を要求する場合がある。)
【0078】
実施例11は、ボトルB(PETボトル)に有機金属系蒸着膜を蒸着する場合の反応性ガスとして、TMVSガスを使用し、炭化水素系蒸着膜の成膜にアセチレンガスを用い、マイクロ波出力615W(蒸着時間4秒)で成膜した例である。酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の何れもが良好であった。
【0079】
実施例12は、ボトルBに有機金属系蒸着膜を蒸着する場合の反応性ガスとしてTMVSとアセチレンとの混合ガスを用い、ガス混合比を5.25:1とし、炭化水素系蒸着膜の層の蒸着時間を3秒にした以外は実施例11と同様に成膜が行われている。実施例12も、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の全てが良好である。
【0080】
【表4】

【0081】
表4から、次のことが明らかである。
ブランク3に示したように、蒸着膜がついていないボトルC(HDPEボトル)は、酸素、水分バリア性ともに、ポリエチレンの樹脂性能そのものの性能であった。ボトルA(PLAボトル)より水分バリア性は高いが、酸素バリア性が極めて低い値であった。
【0082】
実施例13は、ボトルCに有機金属系蒸着膜を蒸着する場合の有機金属化合物ガスとして、TMVSガスを使用し、炭化水素系蒸着膜の成膜にアセチレンガスを用い、マイクロ波出力615Wで成膜した例である。良好な、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性が得られた。
実施例14は、ボトルCに有機金属系蒸着膜を蒸着する場合の反応性ガスとして、TMVSとアセチレンの混合ガスを用い、ガス混合比を5.25:1とした以外は実施例13と同様に成膜を行ったものである。これらの例では、酸素バリア性、水分バリア性、耐膜剥離性、水フレーバー性の何れもが良好である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のプラスチック成形品の断面構造を示す図。
【図2】実験例で作成した本発明のプラスチック成形品における炭化水素系蒸着層のFT−IRチャート。
【符号の説明】
【0084】
1:プラスチック基板
3:蒸着膜
3a:有機金属系蒸着層
3b:炭化水素系蒸着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基板と、該プラスチック基板表面にプラズマCVD法によって形成された蒸着膜とからなるプラスチック成形品において、
前記蒸着膜は、前記プラスチック基板側に形成され、元素比C/M(Mは金属元素である)が2.5乃至13であり且つ元素比O/Mが0.5以下の範囲にある有機金属系蒸着層と、該有機金属系蒸着層上に形成された炭化水素系蒸着層とを含み、
前記炭化水素系蒸着層は、厚みが40乃至180nmの範囲にあり、且つFT−IR測定で波数3200〜2600cm−1の領域にCH、CH及びCHに由来するピークを示し、これらピークから算出されるCH、CH及びCHの合計当りのCH比が35%以下及びCH比が40%以上であることを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項2】
前記元素MがSiである請求項1に記載のプラスチック成形品。
【請求項3】
前記有機金属系蒸着層の厚みが3乃至40nmの範囲にある請求項1または2の何れかに記載のプラスチック成形品。
【請求項4】
前記プラスチック基板が生分解性プラスチックにより形成されたものである請求項1乃至3の何れかに記載のプラスチック成形品。
【請求項5】
前記生分解性プラスチックがポリ乳酸である請求項4に記載のプラスチック成形品。
【請求項6】
前記プラスチック基板がボトルであり、該ボトルの少なくとも内面に前記蒸着膜が形成されている請求項1乃至5の何れかに記載のプラスチック成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−83511(P2009−83511A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329605(P2008−329605)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2007−100755(P2007−100755)の分割
【原出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】