説明

薄膜製造装置、薄膜製造方法およびクリーニング方法

【課題】 薄膜製造時に発生する副生成物の収集、捕捉を効率良く、安価に行うことができ、チャンバおよび排気配管などへの副生成物の付着を防止することが可能な薄膜製造装置、薄膜製造方法、および薄膜製造装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】 プラズマを発生するのに必要な真空を確保する空間を構成するチャンバ1、チャンバ1内に配置されガス供給系13から薄膜製造に必要なガス(キャリアガス、反応ガス)および反応物質を供給される成膜部4を備え、チャンバ1と成膜部4の間にチャンバ1への副生成物の付着を防止する防着板2を配置している。防着板2はホッパ部3を備えてあり、ホッパ部3の外周面(チャンバ1に対向する面)にはホッパ部3(防着板2)に振動を与える振動発生部としての振動子5が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ(真空チャンバ:真空槽)を用いて薄膜を形成する薄膜製造装置、薄膜製造方法および薄膜製造装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化膜、窒化膜など半導体装置の製造に適用される薄膜の製造工程あるいは薄膜製造装置では、多種類のガス、化学物質を使用しており、発生する排ガス、生成物は、人体、環境にとって有害な場合もあることから、除害装置を用いて除外することにより無害化を図っている。
【0003】
また、除害装置に至るまでに発生し堆積した副生成物も、人体、環境にとって有害な場合があるだけでなく薄膜製造装置の内部、排気配管、排気装置などに付着堆積する場合がある。この副生成物を放置すれば、薄膜製造装置、排気配管、排気装置などの性能低下、故障、あるいは製品の品質低下などの原因となることから、定期的に清掃を行って除去するようにしている。
【0004】
その他に、フィルタなどを用いて捕捉する方法も提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。また、フッ素化合物などのエッチングガスを用いたクリーニング方法が知られている。
【特許文献1】実用新案登録 第3027369号公報
【特許文献2】実用新案登録 第3034732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の副生成物除去方法では、排ガス中に浮遊する副生成物についてはフィルタ等を用いて捕捉することはできるとしても、薄膜製造装置の内面を始め配管壁面などに堆積した副生成物を効率良く収集捕捉することは困難であった。
【0006】
また、フッ素化合物などのエッチングガスを用いたクリーニング方法では、装置が高価となり、また、ガスのランニングコストがかさみ、さらにはクリーニングガスの除害コストなどが必要となることから副生成物を安価に処理することができなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、薄膜製造装置のチャンバと成膜部との間に副生成物の付着を防止する防着板と、防着板の外周面に配置された振動発生部とを備えることにより、副生成物の収集捕捉を効率良く、安価に行うことができ、チャンバおよび排気配管などへの副生成物の付着を防止することが可能な薄膜製造装置、薄膜製造方法、および薄膜製造装置のクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る薄膜製造装置は、チャンバと、該チャンバ内に配置されて薄膜を生成する成膜部と、前記チャンバと成膜部との間に配置され前記チャンバへの副生成物の付着を防止する防着板とを備える薄膜製造装置において、前記防着板は、外周面に配置された振動発生部を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成により、副生成物がチャンバに付着することを防止でき、また、防着板を振動させることにより、防着板の内周面に付着した副生成物を防着板から分離、剥離することができるのでチャンバの内壁を清浄に維持することができ、清浄な状態のチャンバによる成膜が可能となり、薄膜製造の製造効率を向上し、製造コストを低減した、経済的な薄膜製造装置とすることが可能となる。
【0010】
本発明に係る薄膜製造装置では、前記振動発生部は、流体駆動により振動を発生する構成としてあることを特徴とする。
【0011】
この構成により、プラズマ発生下でも誤動作を生じることがなく、可燃性ガスの雰囲気中でも火花などの発生のない安全性が高く安定した薄膜製造装置となる。
【0012】
本発明に係る薄膜製造装置では、前記防着板は、温度制御部を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成により、防着板の温度を自由に設定することができることから、副生成物の発生量(付着度合い)を適宜調整することが可能となる。
【0014】
本発明に係る薄膜製造装置では、前記防着板は、副生成物捕捉用の狭窄路を有するホッパ部を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成により、狭窄路に副生成物を誘導して捕捉することが可能となり、捕捉した副生成物を確実に処理することができる。
【0016】
本発明に係る薄膜製造装置では、前記狭窄路は、加熱部を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成により、捕捉した副生成物を加熱して除外(不燃化)することが可能となり、安全性の高い安定した処理を行うことが可能となる。
【0018】
本発明に係る薄膜製造装置では、前記狭窄路は、排気配管に連通してあり、前記加熱部と前記排気配管との間に第1ゲート弁を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成により、加熱部を外気から分離できることから、確実に副生成物を加熱処理することが可能となり、加熱処理を施した後に、副生成物を外気(排気配管)へ導出することが可能となる。
【0020】
本発明に係る薄膜製造装置では、前記成膜部はプラズマCVDにより成膜することを特徴とする。
【0021】
この構成により、副生成物の捕捉収集を容易に行うことができることから、製造効率の高い安定したプラズマCVDを行うことが可能となる。
【0022】
本発明に係る薄膜製造方法は、チャンバと、該チャンバ内に配置されて薄膜を生成する成膜部と、前記チャンバと成膜部との間に配置されてチャンバへの副生成物の付着を防止する防着板とを備えた薄膜製造装置による薄膜製造方法において、前記防着板を振動させた後、振動を中止して薄膜を生成することを特徴とする。
【0023】
この構成により、副生成物を防着板から分離、剥離して収集、捕捉し、チャンバをクリーニングした後に、薄膜を生成することとなるから、清浄な状態としたチャンバで薄膜を生成することができるので、信頼性の高い清浄な薄膜を生成することができ、製造効率を向上し、製造コストを低減することにより、経済的な薄膜製造方法とすることができる。
【0024】
本発明に係る薄膜製造方法では、前記防着板の振動は、流体駆動により発生させることを特徴とする。
【0025】
この構成により、安全で安定した振動を発生させることができ、製造効率の良い薄膜製造方法となる。
【0026】
本発明に係る薄膜製造方法では、前記防着板の温度を制御することを特徴とする。
【0027】
この構成により、副生成物の発生量の制御を容易に行うことが可能となる。
【0028】
本発明に係る薄膜製造方法では、副生成物を捕捉して加熱処理することを特徴とする。
【0029】
この構成により、副生成物を除外(不燃化)することが可能となることから、副生成物を安全に処理することが可能となる。
【0030】
本発明に係るクリーニング方法は、チャンバと、該チャンバ内に配置されて薄膜を生成する成膜部と、前記チャンバと成膜部との間に配置されてチャンバへの副生成物の付着を防止する防着板とを備えた薄膜製造装置のクリーニング方法において、前記防着板を振動させることを特徴とする。
【0031】
本発明に係るクリーニング方法では、前記防着板の温度を制御することを特徴とする。
【0032】
本発明に係るクリーニング方法では、副生成物を捕捉して加熱処理することを特徴とする。
【0033】
本発明に係るクリーニング方法の構成によれば、本発明に係る薄膜製造方法と同様の作用を実現する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る薄膜製造装置によれば、チャンバと成膜部との間にチャンバへの副生成物の付着を防止する防着板と、該防着板の外周面に配置された振動発生部とを備えることにより、チャンバへの副生成物の付着を防止し、また、振動発生部により防着板を振動させて副生成物を防着板から分離、剥離して除去することから、清浄な状態のチャンバで成膜することが可能となり、清浄で信頼性の高い薄膜の製造を容易に行うことができ、製造効率の良い、経済的な薄膜製造装置を実現できるという効果を奏する。
【0035】
本発明に係る薄膜製造方法およびクリーニング方法によれば、防着板に設けた振動発生部により防着板を振動させて防着板の表面に堆積した副生成物を除去した後に薄膜を生成することから、清浄で信頼性の高い薄膜の製造を容易に行うことができ、製造効率の良い、経済的な薄膜製造方法およびクリーニング方法を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係る薄膜製造装置の中央部概要を断面的に示した概略説明図である。なお、一部のハッチングは省略している。
【0038】
本実施の形態に係る薄膜製造装置は、副生成物の発生が複雑であり、価格も高価であるプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)により成膜するプラズマCVD装置に適用することが好ましいが、その他の薄膜製造装置に適用可能であることは言うまでもない。
【0039】
本実施の形態に係る薄膜製造装置は、プラズマを発生するのに必要な真空を確保する空間を構成するチャンバ1、排気してチャンバ1を真空状態にするためにチャンバ1に連通して設けられた排気配管15a、排気配管15aに設けられチャンバ1を排気して真空を確保する真空弁7a、圧力制御弁12、および排気装置としてのポンプ6を備える。
【0040】
チャンバ1内には成膜部4が配置され、成膜部4に連通して設けられたガス供給系13から薄膜製造に必要なガス(キャリアガス、反応ガス)および反応物質が供給される。成膜部4は、成膜部4に適宜載置された半導体基板(不図示)に薄膜を生成する。成膜部4は、薄膜を生成するためのプラズマが発生するようにカソード電極およびアノード電極を有し、電極間に電界を加える構成としてある。
【0041】
チャンバ1と成膜部4の間にはチャンバ1への副生成物の付着を防止する防着板2を配置している。防着板2は、振動発生部としての振動子5を備える。つまり、防着板2の下部(防着板2の延長部)は、ホッパ部3を構成しており、ホッパ部3の外周面(チャンバ1に対向する面)にはホッパ部3(防着板2)に振動を与える振動発生部としての振動子5が配置してある。また、ホッパ部3は、先端に副生成物捕捉用の狭窄路3pを有する構成としてある。なお、振動子5は、振動が効率良く発生するように適宜の位置に配置することが可能であり、図示したようなホッパ部3に限らす、防着板2の側面(外周面)に配置しても良いことは言うまでもない。
【0042】
振動子5としては、プラズマ発生雰囲気下で誤動作せず、また可燃性ガス雰囲気中で使用しても火花などの発生がないことから、流体駆動方式の振動子を使用した。流体には不活性ガスの使用が望ましく、窒素を使用した。
【0043】
ホッパ部3(ホッパ下部)は狭窄路3pに連通してあり、狭窄路3pには加熱部8が配置してある。また、狭窄路3pには排ガスを排出するために排気配管15bが連通してあり、捕捉した副生成物の排出をオンオフ制御して、外部(外気)へ排出するための第1ゲート弁9が、加熱部8と排気配管15bとの間に備えてある。排気配管15bは適宜の真空弁7bを介して圧力制御弁12(排気配管15a)へ接続されている。
【0044】
防着板2、ホッパ部3は、温度制御部2tにより適宜温度制御される。成膜部4から排出された排ガスは防着板2、ホッパ部3に沿って流れて行き、その過程で副生成物が発生し、防着板2(およびホッパ部3)に付着して堆積する。通常、副生成物は低温で多量に発生することから、防着板2(およびホッパ部3)の温度を温度制御部2tにより適宜に制御することで、副生成物の発生量を制御することができる。
【0045】
たとえば、排ガス中の副生成物を積極的に捕捉する場合は、防着板2を冷却し、副生成物の発生を抑える場合には防着板2を加熱すればよい。本実施の形態では、防着板2に積極的に副生成物を捕捉するために低温に保つように温度制御を実施し、温度を約50℃±5℃に保った。
【0046】
防着板2(およびホッパ部3)に付着して堆積する堆積物は、通常粉体であることから、堆積した副生成物は、適当な期間を設定し振動子5で防着板2を振動させることにより、重力方向(狭窄路3p方向)に振り落とされ防着板2(およびホッパ部3)はクリーニングされる。ホッパ部3は、振り落とされた副生成物を狭窄路3pへ誘導して捕捉し、狭窄路3pで構成される第1副生成物捕捉部10に収集、捕捉する。
【0047】
振動子5の振動によりクリーニングした後、振動を中止して、薄膜を成膜するプロセスを開始することにより、クリーニングした清浄なチャンバ1で成膜を行うことから、歩留まりの良い成膜が可能となる。
【0048】
第1副生成物捕捉部10に収集、捕捉された副生成物が、反応性の物質であるような場合は、加熱部8により加熱処理することで除外し、安全で安定な物質に変換することが可能となる。例えば、モノシラン(SiH4)の反応により副生成された可燃性のポリシリコン粉体は約200℃に加熱することで不燃化することができた。なお、加熱部8のヒーターとしてはセラミックヒーターを使用することにより加熱部8の信頼性を向上することができる。
【0049】
狭窄路3pには、第1ゲート弁9と同様に第2ゲート弁14が設けてあり、第1ゲート弁9と第2ゲート弁14との間の狭窄路3p部は、第2副生成物捕捉部11を構成している。また、排気配管15bは、第1ゲート弁9と第2ゲート弁14との間の空間(第2副生成物捕捉部11)に接続してある。
【0050】
第1副生成物捕捉部10で安定化、安全化された副生成物は、第1ゲート弁9を開放することにより加熱部8とは分離されている第2副生成物捕捉部11に移動することができる。第2副生成物捕捉部11には、排気配管15bが接続してあることから、排気配管15aと別系統の排気配管15bから排ガス(気体)を適宜排出することができるので、チャンバ1の清浄度を維持保全することができる。
【0051】
また、副生成物を第1副生成物捕捉部10で安定化、安全化することから、排気配管15a、排気配管15bへの副生成物の流出を防止することができるので、配管系への副生成物の付着を防止することができる。
【0052】
また、固体の副生成物は、第1ゲート弁9を再度閉鎖し、その後、第2ゲート弁14を開放することで外部に取り出すことが容易にできる。第1ゲート弁9を閉鎖した状態で副生成物を外部へ取り出すことから、チャンバ1の清浄度を維持した状態で副生成物を効率良く確実に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る薄膜製造装置を側面から見て中央部概要を断面図的に示した側面概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 チャンバ
2 防着板
2t 温度制御部
3 ホッパ部
3p 狭窄路
4 成膜部
5 振動子(振動発生部)
6 ポンプ(排気装置)
7a、7b 真空弁
8 加熱部
9 第1ゲート弁
10 第1副生成物捕捉部
11 第2副生成物捕捉部
12 圧力制御弁
13 ガス供給系
14 第2ゲート弁
15a、15b 排気配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、該チャンバ内に配置されて薄膜を生成する成膜部と、前記チャンバと成膜部との間に配置され前記チャンバへの副生成物の付着を防止する防着板とを備える薄膜製造装置において、
前記防着板は、外周面に配置された振動発生部を備えることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項2】
前記振動発生部は、流体駆動により振動を発生する構成としてあることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。
【請求項3】
前記防着板は、温度制御部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜製造装置。
【請求項4】
前記防着板は、副生成物捕捉用の狭窄路を有するホッパ部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の薄膜製造装置。
【請求項5】
前記狭窄路は、加熱部を備えることを特徴とする請求項4に記載の薄膜製造装置。
【請求項6】
前記狭窄路は、排気配管に連通してあり、前記加熱部と前記排気配管との間に第1ゲート弁を備えることを特徴とする請求項5に記載の薄膜製造装置。
【請求項7】
前記成膜部はプラズマCVDにより成膜することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の薄膜製造装置。
【請求項8】
チャンバと、該チャンバ内に配置されて薄膜を生成する成膜部と、前記チャンバと成膜部との間に配置されてチャンバへの副生成物の付着を防止する防着板とを備えた薄膜製造装置による薄膜製造方法において、
前記防着板を振動させた後、振動を中止して薄膜を生成することを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項9】
前記防着板の振動は、流体駆動により発生させることを特徴とする請求項8に記載の薄膜製造方法。
【請求項10】
前記防着板の温度を制御することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の薄膜製造方法。
【請求項11】
副生成物を捕捉して加熱処理することを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか一つに記載の薄膜製造方法。
【請求項12】
チャンバと、該チャンバ内に配置されて薄膜を生成する成膜部と、前記チャンバと成膜部との間に配置されてチャンバへの副生成物の付着を防止する防着板とを備えた薄膜製造装置のクリーニング方法において、
前記防着板を振動させることを特徴とするクリーニング方法。
【請求項13】
前記防着板の温度を制御することを特徴とする請求項12に記載のクリーニング方法。
【請求項14】
副生成物を捕捉して加熱処理することを特徴とする請求項12または請求項13に記載のクリーニング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−12907(P2007−12907A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192411(P2005−192411)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】