説明

薬液供給システム

【課題】薬液ポンプのポンプ室内への気体の混入を確実に検出し、ひいては薬液ポンプによる薬液の吐出供給を好適に行わせる。
【解決手段】薬液ポンプ10において、ポンプハウジング11内には容積可変部材としてのベローズ式仕切部材12が収容されており、このベローズ式仕切部材12によってポンプ室13と圧力作用室14とが区画形成されている。圧力作用室14には電空レギュレータ28が接続されている。ベローズ式仕切部材12にはロッド33が連結され、そのロッド33の移動量が位置検出器36により検出される。コントローラ40は、ポンプ室13内を密閉した状態で、電空レギュレータ28に対して作動指令信号を出力するとともに、その際の位置検出器36による検出結果に基づいて、ポンプ室13内における気体の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液ポンプを用いて薬液の吸入及び吐出を実施する薬液供給システムに関するものであり、例えば薬液塗布工程など半導体製造装置の薬液使用工程に用いるのに好適な薬液供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の薬液使用工程においては、薬液を半導体ウエハに所定量ずつ塗布するために薬液ポンプが用いられる。その薬液ポンプとして、薬液を充填したポンプ室と圧縮空気を導入する圧力作用室とをベローズやダイアフラム等の仕切部材で仕切り、圧力作用室内のエア圧力を可変調整することにより仕切部材を変位させて薬液の吸引及び吐出を行うようにしたものがある。
【0003】
上記のような薬液ポンプを用いたシステムでは、薬液タンク等に通じる薬液供給配管が設けられており、この薬液供給配管を通じて薬液ポンプに薬液が逐次供給される。そして、前記仕切部材の変位に伴い薬液が薬液ポンプのポンプ室内に吸引されるとともに、その後、薬液吐出配管に吐出される。
【0004】
上記システムにおいて、例えば、薬液供給源たる薬液タンク内の薬液の残留量が減った場合には、薬液供給配管を通じて流れる薬液にエア(気体)が混じり、そのエアが薬液ポンプのポンプ室内に流入する。この場合、薬液タンクへの薬液の補充作業が行われるとともに、ポンプ室内のエア抜き作業が行われる。これに関連し、薬液タンクに液面検知センサを設け、液面検知センサにより検知した液面レベルに応じて残留薬液の減りを通知する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、薬液タンク内の薬液が無くなった場合など、薬液ポンプのポンプ室内にエアが混入した場合には、例えば薬液ポンプの吸引及び吐出が繰り返し行われてポンプ室内のエア抜きが行われる。しかしながら、エア抜きが完全に行われたかどうかの確認を行う手段はなく、ポンプ室内にエアが残ったまま薬液ポンプが使用されることで、望みとおりに薬液が吐出できなくなるおそれが生じる。特に薬液の定量吐出を行おうとする場合に、吐出量の精度が低下するといった不都合も生じる。また、薬液タンク内の薬液が無くなった場合以外にも、ポンプ室内にエアが混入する場合も想定され、ポンプ室内におけるエア混入の有無を判定するための技術が望まれる。
【特許文献1】特開2000−223393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薬液ポンプのポンプ室内への気体の混入を確実に検出し、ひいては薬液ポンプによる薬液の吐出供給を好適に行わせることができる薬液供給システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
手段1.薬液を充填するためのポンプ室(ポンプ室13)と、該ポンプ室の容積を可変とする容積可変部材(ベローズ式仕切部材12)とを有し、前記容積可変部材による前記ポンプ室の容積変化に基づいて薬液を吸引又は吐出する薬液ポンプ(薬液ポンプ10)と、
前記容積可変部材を作動させるための作動手段(電空レギュレータ28)と、
前記容積可変部材の作動量を検出する作動量検出手段(位置検出器36)と、
前記ポンプ室に通じる薬液出入り口を閉じた状態で、前記作動手段により容積可変部材を変位させるよう変位操作を行う変位操作手段(コントローラ40)と、
前記変位操作時において前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて前記ポンプ室内における気体の有無を判定する判定手段(コントローラ40)と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【0009】
手段1によれば、ポンプ室に通じる薬液出入り口を閉じた状態、すなわちポンプ室内を密閉とした状態で、作動手段により容積可変部材を変位させるよう変位操作が行われ、その際の作動量検出手段による作動量検出結果に基づいてポンプ室内における気体の有無が判定される。要するに、薬液は非圧縮性流体であるのに対し、気体は圧縮性流体である。そのため、ポンプ室内に薬液のみが存在していれば、ポンプ室密閉状態で容積可変部材の変位操作が行われても、ポンプ室内の容積が変化することはない(容積可変部材は作動しない)。これに対し、ポンプ室内に気体が混入していれば、ポンプ室密閉状態で容積可変部材の変位操作が行われると、気体の圧縮又は膨張分だけポンプ室内の容積が変化する(容積可変部材が作動する)。したがって、作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて、ポンプ室内における気体の有無を判定することができる。その結果、薬液ポンプのポンプ室内への気体の混入を確実に検出し、ひいては薬液ポンプによる薬液の吐出供給を好適に行わせることができるようになる。
【0010】
例えば、ポンプ室内への気体混入後にその気体の排出作業(エア抜き作業等)が行われる場合に、気体が完全に排出されたかどうかを確実に判断することも可能となる。
【0011】
手段2.薬液を充填するためのポンプ室(ポンプ室13)と、該ポンプ室の容積を可変とする容積可変部材(ベローズ式仕切部材12)と、該容積可変部材を所定方向に付勢する付勢手段(圧縮コイルバネ35)とを有し、前記付勢手段の付勢力に抗して前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて薬液を吸引又は吐出する薬液ポンプ(薬液ポンプ10)と、
前記容積可変部材を作動させるための作動手段(電空レギュレータ28)と、
前記容積可変部材の作動量を検出する作動量検出手段(位置検出器36)と、
前記ポンプ室に通じる薬液吸引口を開いた状態で、前記付勢手段の付勢力に抗して前記作動手段による容積可変部材の変位操作を行い、その後、前記ポンプ室を密閉するとともに前記作動手段による容積可変部材の変位操作を解除する変位操作手段(コントローラ40)と、
前記変位操作手段によって容積可変部材の変位操作が解除された後、前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて前記ポンプ室内における気体の有無を判定する判定手段(コントローラ40)と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【0012】
手段2によれば、ポンプ室に通じる薬液吸引口を開いた状態で、付勢手段の付勢力に抗して作動手段による容積可変部材の変位操作が行われ、その後、ポンプ室が密閉されるとともに作動手段による容積可変部材の変位操作が解除される。このとき、容積可変部材の変位操作の解除状態下では、付勢手段には元の状態に復帰しようとする力が作用する。そして、その容積可変部材の変位操作解除後において、作動量検出手段による作動量検出結果に基づいてポンプ室内における気体の有無が判定される。
【0013】
要するに、薬液は非圧縮性流体であるのに対し、気体は圧縮性流体である。そのため、ポンプ室内に薬液のみが存在していれば、ポンプ室密閉状態で容積可変部材の変位操作解除が行われても、ポンプ室内の容積が変化することはない(容積可変部材は作動しない)。これに対し、ポンプ室内に気体が混入していれば、ポンプ室密閉状態で容積可変部材の変位操作解除が行われると、付勢手段の付勢力によって、気体の圧縮又は膨張分だけポンプ室内の容積が変化する(容積可変部材が作動する)。したがって、作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて、ポンプ室内における気体の有無を判定することができる。その結果、薬液ポンプのポンプ室内への気体の混入を確実に検出し、ひいては薬液ポンプによる薬液の吐出供給を好適に行わせることができるようになる。
【0014】
手段3.前記薬液ポンプは、前記容積可変部材により前記ポンプ室から仕切られてなる圧力作用室(圧力作用室14)を有し、該圧力作用室内の気体圧力が前記作動手段に調整されることにより前記容積可変部材が作動する薬液供給システムにおいて、
前記変位操作手段は、前記作動手段により圧力作用室内の気体圧力を調整することで前記容積可変部材の変位操作を行う手段1又は2に記載の薬液供給システム。
【0015】
手段3では、圧力作用室に供給される気体の圧力が作動手段により調整されて容積可変部材の変位操作が行われるようになっており、その変位操作に伴い容積可変部材が作動する。そして、上記手段1や手段2のように容積可変部材の変位操作を行う場合には、作動手段によって圧力作用室内の気体圧力の調整が行われる。
【0016】
手段4.前記薬液ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において前記容積可変部材の目標作動量を設定するとともに、前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量が前記目標作動量に一致するよう前記作動手段の作動状態をフィードバック制御するフィードバック制御手段(コントローラ40)を備えた手段1乃至3のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0017】
手段4によれば、薬液ポンプによる薬液の吸引又は吐出時には、容積可変部材の目標作動量と実際の作動量とが一致するよう作動量フィードバック制御が実施される。ここで、容積可変部材の作動量とポンプ室の容積変化とは概ね相関を有するため、上記のような作動量フィードバック制御を実施することで、実質的にはポンプ室の容積変化が望みとおりに制御できるようになる。これにより、薬液の吸引流量又は吐出流量を所望とする流量に高精度に制御することが可能となる。
【0018】
またこの場合、作動量フィードバック制御を実施する上では、作動量検出手段は不可欠な構成要素である。その点、上記手段1や手段2では作動量検出手段の検出結果を用いてポンプ室内の気体有無を判定する構成としたため、気体有無の判定を行うために新規のセンサ等が必要となることはない。したがって、構成の簡素化を図る上で望ましいと言える。
【0019】
手段5.前記ポンプ室内の気体の有無判定に際し、前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて前記ポンプ室内における気体量(エア体積)を推定する手段1乃至4のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0020】
薬液ポンプのポンプ室内に気体が混入した場合、その気体量に応じて容積可変部材の作動量が変わり、気体量が多いほど容積可変部材の作動量が大きくなる。このとき、気体量と容積可変部材の作動量とには相関があると考えられる。それ故に、手段5によれば、ポンプ室内における気体量を適正に求めることができる。
【0021】
手段6.貯留容器(薬液タンク等)内に貯留された薬液を薬液配管(吸引配管21)を通じて前記薬液ポンプに供給するようにした薬液供給システムにおいて、
前記ポンプ室内の気体の有無判定に際し、前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて、前記貯留容器内に貯留された薬液が所定量以下となったことを判定する手段1乃至5のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0022】
貯留容器内に貯留された薬液が減少すると、それに伴い薬液配管を通じて薬液ポンプのポンプ室内に気体(エア)が流入する。かかる場合において、上記のようにポンプ室内における気体の有無が確実に判定できれば、貯留容器内の薬液が所定量以下となったこと(薬液ゼロの状態も含む)が容易に判定できる。
【0023】
このとき、ポンプ室内における気体量(推定値)が規定量以上となった場合に、貯留容器内の薬液が所定量以下になったと判定すると良い。又は、繰り返し行われる薬液の吸引及び吐出過程において、気体量(推定値)が次第に増えてきた場合に、貯留容器内の薬液が所定量以下になったと判定すると良い。
【0024】
手段7.前記薬液ポンプにおいて薬液の吸引及び吐出を交互に繰り返し実行するようにした薬液供給システムにおいて、
前記判定手段は、前記薬液ポンプでの吸引完了後であって次に薬液吐出を行うまでの間、又は吐出完了後であって次に薬液吸引を行うまでの間に、前記ポンプ室内における気体の有無を判定する手段1乃至6のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0025】
手段7によれば、薬液ポンプによる薬液の吸引行程及び吐出行程の途中に、ポンプ室内の気体の有無が確実に判定できる。これにより、予期しないタイミングでポンプ室内に気体が混入したとしても、それを適時判定できる。
【0026】
手段8.前記薬液ポンプのポンプ室を複数備え、これら複数のポンプ室を所定順序で用いて吸引動作及び吐出動作を行わせるようにした薬液供給システムにおいて、
前記判定手段は、各ポンプ室における薬液の吸引完了後であって次に薬液吐出を行うまでの間、又は吐出完了後であって次に薬液吸引を行うまでの間に、前記ポンプ室内における気体の有無を判定する手段1乃至6のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0027】
同一のポンプ室により薬液の吸引及び吐出が交互に繰り返される薬液ポンプの場合、単一の薬液ポンプを用いたシステムでは、薬液の吐出が間欠的に行われることになる。この点、手段8のように複数のポンプ室を所定順序で用いて吸引動作及び吐出動作を行わせることにより、薬液の吐出を途切れさせることなく連続的に実施することが可能となる。また上記構成では、薬液ポンプによる薬液の吸引行程及び吐出行程の途中に、ポンプ室内の気体の有無が確実に判定できる。これにより、予期しないタイミングでポンプ室内に気体が混入したとしても、それを適時判定できる。
【0028】
手段9.前記容積可変部材によるポンプ室の容積変化動作を、薬液吐出時よりも薬液吸引時の方を早くした手段7又は8に記載の薬液供給システム。
【0029】
手段9によれば、薬液吸引時において、容積可変部材によるポンプ室の容積変化動作が素早く行われる。そのため、薬液吸引後の余剰時間(次の薬液吸引までの余った時間)を用いて、ポンプ室内の気体の有無を判定することができる。このとき、ポンプ室内の容積変化速度は、薬液吸引時又は吐出時の薬液流量に相関するものであり、薬液吸引時の薬液流量は比較的ラフな精度で良いのに対し、薬液吐出時の薬液流量は高精度に制御されることが要求される。この点、上記のように薬液吸引時におけるポンプ室の容積変化動作を薬液吐出時よりも早くした構成は、それとは逆の構成(薬液吐出時におけるポンプ室の容積変化動作を薬液吸引時よりも早くした構成)に比して、薬液吐出時の薬液流量を高精度で制御する上で好適な構成であるといえる。
【0030】
手段10.前記判定手段により前記ポンプ室内に気体が入っていると判定された場合に、その旨を報知する手段を備えた手段1乃至9のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0031】
手段10によれば、ポンプ室内に気体が入っていると判定された場合に、その旨が報知されるため、作業者はポンプ室内に気体が混入したことを早期に知ることができる。したがって、例えば薬液供給源(薬液タンク内)の薬液が無くなった場合に、薬液の補充をいち早く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、半導体装置等の製造ラインにて使用される薬液供給システムについて具体化しており、該システムの基本的構成を図1に基づいて説明する。
【0033】
図1の薬液供給システムでは、薬液の吸引及び吐出を行うための薬液ポンプ10を備えている。薬液ポンプ10において、ポンプハウジング11内には容積可変部材としてのベローズ式仕切部材12が収容されており、このベローズ式仕切部材12によってポンプ室13と圧力作用室14とが区画形成されている。ベローズ式仕切部材12は、軸方向に伸縮自在のベローズ15と、該ベローズ15の一端部(図の下端部)に取り付けられた仕切板16とを有しており、ベローズ15の他端部(図の上端部)が環状の固定板17に固定されている。ベローズ15の伸縮により仕切板16が移動し、ポンプ室13と圧力作用室14との容積が各々変化する。この場合、ポンプ室13と圧力作用室14との合計容積は、ベローズ15の伸縮に関係なく不変であるため、例えばポンプ室13の容積増加量は圧力作用室14の容積減少量に相当する(もちろん増減が逆の場合も同様である)。
【0034】
ポンプハウジング11には、ポンプ室13に連通する吸引ポート18と吐出ポート19とが形成されており、吸引ポート18に吸引配管21が接続され、吐出ポート19に吐出配管22が接続されている。吸引配管21には吸引側開閉弁である吸引バルブ23が設けられており、吸引バルブ23は電磁弁24の通電状態に応じて開閉される。また、吐出配管22には吐出側開閉弁である吐出バルブ25が設けられており、吐出バルブ25は電磁弁26の通電状態に応じて開閉される。例えば、吸引バルブ23及び吐出バルブ25は、エア圧力により開閉操作されるエアオペレートバルブで構成されており、電磁弁24,26の通電状態に応じて各バルブ23,25に作用するエア圧力が調節され、それに伴い各バルブ23,25が開閉される。
【0035】
吸引配管21は、ポンプ室13に向けて薬液を供給するための薬液供給通路を構成するものであり、図示しない薬液タンク(薬液貯留容器)内に貯留された薬液、或いは工場の薬液配管より供給される薬液が吸引配管21を通じてポンプ室13に供給される。これにより、ポンプ室13内に薬液が充填される。また、吐出配管22は、ポンプ室13内に充填された薬液を排出するための薬液排出通路を構成するものであり、ポンプ室13から排出される薬液が吐出配管22を通じて薬液吐出ノズル(図示略)に供給される。薬液吐出ノズルは、下方に指向されるとともに、回転板等の上に載置された半導体ウエハの中心位置に薬液が滴下されるように配置されており、薬液吐出ノズルから半導体ウエハ上に適量の薬液が滴下されることで、ウエハ表面への薬液の塗布作業が行われるようになっている。
【0036】
同じくポンプハウジング11には、圧力作用室14に連通する給排ポート27が形成されており、この給排ポート27に電空レギュレータ28が接続されている。電空レギュレータ28は、圧力作用室14内のエア圧力を調整するためのエア圧力調整手段を構成するものであり、内蔵された電磁式切替弁の切替操作によって、圧力作用室14に圧縮エアを供給する圧縮エア供給状態と、同圧力作用室14内の圧縮エアを外部に排出する大気開放状態とが切り替えられるようになっている。
【0037】
ポンプハウジング11にはケース体31が組み付けられており、ポンプハウジング11に形成された貫通孔32にはケース体31側に突出するようにして細長円柱状のロッド33が摺動可能に挿通されている。すなわち、ロッド33は、一端が圧力作用室14内に突出し、他端がケース体31で囲まれた内部空間に突出している。ロッド33の圧力作用室14側の端部にはベローズ式仕切部材12の仕切板16が結合されており、仕切板16の移動(すなわちベローズ15の伸縮動作)に伴いロッド33が図の上下方向に往復動する。
【0038】
また、ロッド33のケース体31側の端部にはバネ受け板34が連結されており、このバネ受け板34とポンプハウジング11の外壁面との間には圧縮コイルバネ35が介在されている。ロッド33は、圧縮コイルバネ35の付勢力により常に図の上方へ付勢されている。圧縮コイルバネ35は、圧力作用室14内のエア圧力とは相反する向きにベローズ式仕切部材12を付勢するための付勢手段に相当する。
【0039】
上記構成により、圧力作用室14内に圧縮エアが導入されない状態(大気開放状態)では、圧縮コイルバネ35の付勢力によりベローズ式仕切部材12のベローズ15が収縮状態とされ、ポンプ室13内の容積が増加する。このとき、吸引バルブ23を開弁、吐出バルブ25を閉弁させることにより、吸引配管21を通じてポンプ室13内に薬液が吸入される。また、圧縮エア供給状態では、図示しない空圧源から供給される圧縮エアが電空レギュレータ28と給排ポート27とを通じて圧力作用室14内に導入され、圧力作用室14内のエア圧力と圧縮コイルバネ35の付勢力とのバランスに応じてベローズ15が伸長されてポンプ室13内の容積が減少する。このとき、吸引バルブ23を閉弁、吐出バルブ25を開弁させることにより、ポンプ室13内に充填されている薬液が吐出配管22を通じて排出される。
【0040】
ケース体31内には、ロッド33の移動量(すなわちベローズ15の伸縮量)を検出するための位置検出器36が設けられている。なお図1において、符号37はロッド33を往復動可能に保持するためのリニアベアリングであり、符号38は圧力作用室14からのエア漏れを防止するための軸シールである。
【0041】
コントローラ40は、CPUや各種メモリ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置であり、薬液ポンプ10による薬液の吸引及び吐出の状態を制御する。コントローラ40には、本システム全体を統括して管理する管理コンピュータ(図示略)から吸引/吐出信号、吸引速度指令及び吐出流量指令が入力されるとともに、位置検出器36から位置検出信号が入力される。そして、コントローラ40は、都度入力される信号に基づいて電磁弁24,26を通電又は非通電の状態として吸引バルブ23と吐出バルブ25の開閉状態を制御する一方、電空レギュレータ28に対する制御指令値(エア圧力指令値)を算出して該指令値により電空レギュレータ28の状態を制御する。このとき特に、コントローラ40は、薬液の吸引時及び吐出時においてベローズ15の伸縮に伴う仕切板16(ロッド33)の移動速度が目標の移動速度となるよう電空レギュレータ28の状態をフィードバック制御する。加えて、コントローラ40は、位置検出器36の位置検出信号に基づいて吐出流量値を算出し、該算出値を管理コンピュータ等に出力する。
【0042】
次に、コントローラ40における吐出流量制御の概要を図2を用いて説明する。
【0043】
コントローラ40は、吸引速度指令に基づいて薬液吸引時における仕切板16の移動速度を算出するとともに、吐出流量指令に基づいて薬液吐出時における仕切板16の移動速度を算出する。ここで、薬液吐出時における移動速度の算出時には、移動速度と吐出流量との関係を表すポンプ吐出特性に基づいて同移動速度の算出が行われる。具体的には、仕切板16の移動量と薬液ポンプ10の吐出量とは図3に示す関係にある。図3によれば、仕切板16の移動量に対するポンプ吐出量が線形となり、この関係を用いて仕切板16の移動速度が算出される。
【0044】
ここで、吐出流量をQ、ベローズ有効面積をA、仕切板16の移動距離をX、仕切板16の移動時間をtとして、ポンプ吐出特性を数式化すると、同特性は、
Q=A*X/t
として表される。上記数式において「X/t」が仕切板16の移動速度に相当し、該式によっても移動速度算出が可能となる。
【0045】
また、コントローラ40は、吸引/吐出信号に基づいて吸引時の移動速度と吐出時の移動速度との何れかを選択する。このとき選択される移動速度が、仕切板16の目標移動速度に相当する。そして、仕切板16の目標移動速度と仕切板16の実際の移動速度(実移動速度)との偏差に基づいてエア圧力指令値を算出するとともに、そのエア圧力指令値に基づいて電空レギュレータ28の駆動を制御する。
【0046】
一方、コントローラ40は、薬液ポンプ10に設けた位置検出器36の検出結果に基づいて仕切板16の実際の移動速度(実移動速度)を算出する。この実移動速度の算出値は、電空レギュレータ28のフィードバック制御に用いられる他、都度の吐出流量の演算に用いられる。吐出流量演算に関して、コントローラ40は、前述したポンプ吐出特性(例えば図3の関係)を用いて仕切板16の実移動速度を吐出流量に変換し、その結果を吐出流量値として管理コンピュータ等に出力する。
【0047】
ところで、上記構成の薬液供給システムにおいて、吸引配管21を通じて流れる薬液に気体が混じると、その気体が薬液ポンプ10のポンプ室13内に流入する。かかる場合、ポンプ室13内に気体が混入することで、薬液の吐出量に誤差が生じて吐出量制御精度が低下するおそれが生じる。また、薬液供給源である薬液タンク内の薬液が減った場合、或いは薬液が無くなった場合に上記のようにポンプ室13内に気体が混入する。そこで本実施の形態では、薬液ポンプ10のポンプ室13内に気体が混入したことを、電空レギュレータ28によるエア圧力と位置検出器36の検出結果とに基づいて判定する手法について提案する。
【0048】
要するに、薬液は非圧縮性流体であるのに対し、気体は圧縮性流体である。そのため、ポンプ室13内が薬液で満たされ、かつ同ポンプ室13の出入り口が共に閉鎖された状態(吸引バルブ23及び吐出バルブ25が共に閉じられた状態)では、電空レギュレータ28によるエア圧力が増加又は減少してもベローズ15は伸縮せず、位置検出器36により検出されるベローズ伸縮量(ベローズ長)は不変となる。これに対し、ポンプ室13内に気体が混入した場合には、同じくポンプ室13の出入り口が共に閉鎖された状態(吸引バルブ23及び吐出バルブ25が共に閉じられた状態)において、電空レギュレータ28によるエア圧力が増加又は減少するとそれに合わせてベローズ15が伸縮し、それが位置検出器36により検出される。
【0049】
その基本原理を図4により説明する。なお図4において、(a)は密閉空間であるシリンダS内が体積比で「液体:気体=1:0」となる場合を、(b)はシリンダS内が体積比で「液体:気体=1:1」となる場合を、(c)はシリンダS内が体積比で「液体:気体=0:1」となる場合を、それぞれ示している。そして、ピストンPに図の下方向の力F1を印加した時のピストンPの変位量ΔXを図示している。
【0050】
図4の(a)の場合、シリンダS内に液体のみが入っており、ピストンPに力F1を印加してもピストンPは変位しない(ΔX=0)。これに対し、(b),(c)の場合には、ピストンPに力F1を印加することに伴い、シリンダS内の気体の膨張分に相当する変位量ΔXだけピストンPが変位する。この場合、ピストンPが変位するかどうかによって、シリンダS内における気体の有無が判別できる。
【0051】
ここで、ピストンPの変位量ΔXはシリンダS内の気体量(エア体積)に対応するものとなり、概ね図5に示す関係が成立する。図5によれば、変位量ΔXが分かれば、シリンダS内の気体量(エア体積)を知ることができる。図5の関係は、気体の状態方程式(PV=nRT)に基づき求められる。
【0052】
図1のシステム構成においては、図6に示すように薬液の吸引及び吐出に合わせてエア混入の判定が行われる。図6において、(a)は電空レギュレータ28によるエア圧力の変化(すなわち、圧力作用室14内の圧力変化)を、(b),(c)は薬液ポンプ10におけるベローズ収縮の状態を、(d)は吸引バルブ23の開閉状態を、(e)は吐出バルブ25の開閉状態を、それぞれ示している。なお、(b),(c)のうち、(b)はポンプ室13内へのエア混入が生じていない場合を、(c)はエア混入が生じた場合を示す。本例では、コントローラ40によって、薬液ポンプ10による薬液の吸引行程(図6のt1〜t2)と吐出行程(図6のt3〜t4)との間にエア混入判定が行われるようになっている。
【0053】
図6において、まずタイミングt1では、吸引バルブ23=開放、吐出バルブ25=閉鎖とされ、その状態で電空レギュレータ28によりエア圧力が徐々に減じられる。それに伴いベローズ15が収縮し、吸引配管21を通じてポンプ室13内に薬液が吸引される。そして、タイミングt2で吸引バルブ23が閉鎖される。
【0054】
タイミングt2では、ポンプ室13内への薬液吸引が完了し、かつ同ポンプ室13が密閉された状態となる。この状態で、引き続き電空レギュレータ28によるエア圧力の低減が行われる。なおここでは、タイミングt2においてエア圧力をステップ的に減圧側に変化させている。このとき、ポンプ室13内にエアが混入していなければ、図6の(b)に示すように、ベローズ15が更に収縮することはない。これに対し、ポンプ室13内にエアが混入していると、図6の(c)に示すように、エア圧力変化に応じてベローズ15が収縮する(図6のA)。このベローズ15の収縮が位置検出器36により検出されることで、エア混入が判定できる。エア混入が発生していると判定された場合には、エア混入を報知するための報知信号がコントローラ40から警告装置等に出力される。
【0055】
このとき特に、コントローラ40は、位置検出器36の検出結果に基づいてエア混入の程度(すなわち、ポンプ室13内のエア体積)を推定する。そして、推定したエア体積が所定以上である場合に警告を行う。また、コントローラ40は、推定したエア体積と所定の液体切れ判定値とを比較し、エア体積>液体切れ判定値となった場合に、薬液供給源(薬液タンク)の薬液が無くなったと判定しても良い。その他、薬液吸引の都度行われるエア混入判定でエア混入発生が所定回繰り返して判定された場合、又はエア体積が増加傾向にある場合(エア体積が次第に増えてきた場合)に、警告や液体切れ判定を行うようにしても良い。
【0056】
そしてその後、タイミングt3では、吐出バルブ25が開放され、その状態で電空レギュレータ28によりエア圧力が徐々に増やされる。それに伴いベローズ15が伸長し、ポンプ室13内の薬液が吐出配管22側に吐出される。その後、タイミングt4で吐出バルブ25が閉鎖される。以降、上記のタイミングt1〜t4と同じ動作が繰り返し行われる。
【0057】
現実の薬液供給システムとしては薬液ポンプ10を複数設けており、各ポンプ10が交互に吐出動作と供給動作とを繰り返し実行することにより、連続的な薬液供給動作が実現可能となっている。図7には、2つの薬液ポンプ10a,10bを有するシステムについての概略構成を示す。図7に示す2つの薬液ポンプ10a,10bはいずれも前記図1で説明した薬液ポンプ10と同様の構成を有するものであり、各ポンプの構成部材については同様の符号を付すとともにその説明を省略する。なお、各薬液ポンプ10a,10bの吸引配管21は共通の吸引口(薬液タンク或いは工場の薬液配管)に接続されるとともに、吐出配管22は共通の吐出口(薬液吐出ノズル)に接続されている。
【0058】
図7において、左側の薬液ポンプ10aはベローズ15が収縮状態にあり、かかる状態では、その後ベローズ15が伸長することによりポンプ室13内に充填された薬液の吐出が行われる。また、右側の薬液ポンプ10bはベローズ15が伸長状態にあり、かかる状態では、その後ベローズ15が収縮することによりポンプ室13への薬液吸引が行われる。
【0059】
コントローラ40は、2つの薬液ポンプ10a,10bを制御対象として、前述したとおり都度入力される信号に基づいて吸引バルブ23と吐出バルブ25との開閉状態を制御する一方、各電空レギュレータ28に対する制御指令値(エア圧力指令値)を算出して該指令値により電空レギュレータ28の状態を制御する。また、コントローラ40は、前述したエア混入判定機能を有しており、各薬液ポンプ10a,10bに設けた位置検出器36の検出結果に応じてポンプごとにエア混入判定を実行する。
【0060】
図8は、本薬液供給システムにおける薬液吐出動作を説明するためのタイムチャートである。図8においては、2つの薬液ポンプ10a,10bが交互に吸引動作と吐出動作とを繰り返すことにより、半導体ウエハに対して連続的な薬液供給が実現される。なお図8の説明では便宜上、一方の薬液ポンプ10をポンプ(A)、他方の薬液ポンプ10をポンプ(B)とするとともに、吸引バルブ及び吐出バルブにも(A),(B)を付して区別する。
【0061】
さて、タイミングa以前は、ポンプ(A)が図7の薬液ポンプ10aの状態、ポンプ(B)が図7の薬液ポンプ10bの状態にあり、吸引バルブ及び吐出バルブは何れも閉鎖されている。そして、タイミングa以降、START信号の立ち上がりに伴い各ポンプでの薬液吸引及び吐出が行われる。
【0062】
すなわち、ポンプ(A)側では、タイミングaで吐出バルブ(A)が開放された後、電空レギュレータ28によるエア圧力上昇に伴いベローズ15が伸長し、薬液吐出が行われる(タイミングb〜g)。また、ポンプ(A)での薬液吐出に並行して、ポンプ(B)側では、タイミングc〜dで吸引バルブ(B)が開放されて薬液の吸引が行われる。
【0063】
そして、ポンプ(B)において、薬液の吸引完了後には、電空レギュレータ28によるエア圧力の一時的な減圧処理が行われ(タイミングd〜e)、そのエア圧力の減圧に対するポンプ挙動に応じてエア混入の有無が判定される。このとき、エア圧力の減圧に応じてベローズの伸縮が生じると、それが位置検出器36により検出され、ポンプ室13内へのエア混入があったと判定される。
【0064】
その後、タイミングfで吐出バルブ(B)が開放される。タイミングgでは、ポンプ(B)側で電空レギュレータ28によるエア圧力上昇に伴いベローズ15が伸長し、薬液吐出が行われる(タイミングg〜i)。ポンプ(A)で薬液の吸引が完了するタイミングhでは、電空レギュレータ28によるエア圧力の一時的な減圧処理が行われる。そして、前記同様、エア圧力の減圧に対するポンプ挙動に応じてエア混入の有無が判定される。
【0065】
以後、ポンプ(A),(B)で交互に吸引/吐出動作が行われ、薬液吐出ノズルの先端部からは連続的に薬液が吐出される。上記一連の行程によれば、ポンプ(A)による薬液の吐出期間TAと、ポンプ(B)による薬液の吐出期間TBとが連続して設定され、途切れることなく薬液が連続吐出される。また、薬液の吐出速度が一定に制御されることから、各吐出期間TA,TBが同一となり、薬液の安定供給が可能となる。
【0066】
ここで、各ポンプ(A),(B)における薬液の吸引速度と吐出速度とを比較すると、吸引速度の方が大きくなっている。すなわち、ポンプ室13内への薬液吸引に要する時間は、薬液の吐出に要する時間よりも短くなっている。したがって、薬液の吸引/吐出動作が繰り返される際に、薬液吸引を早くすませ、その薬液吸引後の余剰時間(次の薬液吸引までの余った時間)を用いて、ポンプ室13内のエア混入判定を実施することができる。これによって、上記のように薬液の吸引/吐出動作の途中にエア混入判定を行いつつも、ポンプ(A),(B)の各吐出期間TA,TBを同一とすることも可能となっている。
【0067】
なお、薬液吸引時の薬液流量は比較的ラフな精度で良いのに対し、薬液吐出時の薬液流量は高精度に制御されることが要求される。この点、上記のように薬液の吸引速度の方を大きくした構成は、それとは逆の構成(薬液の吐出速度の方を大きくした構成)に比して、薬液吐出時の薬液流量を高精度で制御する上で好適な構成であるといえる。
【0068】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0069】
薬液ポンプ10において、ポンプ室13内を密閉状態として電空レギュレータ28によりエア圧力を変化させ、その時のベローズ伸縮量(ベローズ長の変化)に基づいてエア混入判定を実施するようにしたため、ポンプ室13内にエアが混入した場合にそのエア混入を確実に検出することができる。エア混入の検出結果によれば、薬液タンクで薬液が無くなったことも判定できる。このとき、エア混入後にエア抜き作業が行われる場合に、気体が完全に排出されたかどうかを確実に判断することも可能となる。したがって、薬液ポンプ10による薬液の吐出供給を好適に行わせることができるようになる。
【0070】
薬液の吸引又は吐出時において、ベローズ式仕切部材12を構成する仕切板16の移動速度をフィードバック制御する構成(すなわち、作動量フィードバック制御を実施する構成)としたため、ポンプ室13の容積変化が望みとおりに制御できるようになる。これにより、薬液の吸引流量又は吐出流量を所望とする流量に高精度に制御することが可能となる。
【0071】
この場合、作動量フィードバック制御を実施する上では、位置検出器36は不可欠な構成要素である。その点、位置検出器36の検出結果を用いてポンプ室13内のエア混入を判定する上記構成では、エア混入判定を行うために新規のセンサ等が必要となることはない。したがって、構成の簡素化を図る上で望ましいと言える。例えば、薬液タンク内の液面レベルを検出する液面検知センサ等を用い、該センサの検出結果から液切れを判定する従来技術も存在するが、本実施の形態の構成では、液面検知センサが必要となることはなく構成が簡素化できる。
【0072】
薬液ポンプ10は、電空レギュレータ28により調整されるエア圧力を駆動源として薬液の吸引又は吐出を行うため、電動モータによる流量制御を行う電動式システムとは異なり、熱による弊害が生じるおそれがなく、温度管理を要する薬液であっても好適に使用できる。また、電動式アクチュエータの構成に比べて、ポンプ駆動系の構成の簡素化を図ることもできる。
【0073】
2つの薬液ポンプ10を用い、これら各ポンプ10を交互に吸引動作及び吐出動作させる構成としたため、薬液の吐出を途切れさせることなく連続的に実施することが可能となる。また、既述したとおりベローズ式仕切部材12(仕切板16)の移動速度をフィードバック制御する構成としたため、各ポンプでの薬液吐出に要する時間を毎回一定とすることができるため、薬液の安定供給が可能となる。
【0074】
薬液ポンプ10により連続吐出を行う場合に、薬液の吸引完了後であって次に薬液吐出を行うまでの間にエア混入判定を実施するようにしたため、予期しないタイミングでポンプ室13内にエアが混入したとしても、それを適時判定できる。
【0075】
薬液ポンプ10において、薬液の吸引速度を吐出速度よりも大きくし、薬液吸引後の余剰時間(次の薬液吸引までの余った時間)を用いてエア混入判定を実施するようにしたため、良好なる薬液吐出精度を維持しつつ、エア混入判定を適正に行うことができるようになる。
【0076】
(第2の実施の形態)
上記実施の形態では、薬液ポンプ10において、ポンプ室13内を密閉状態として電空レギュレータ28によりエア圧力を変化させ、その時のベローズ伸縮量に基づいてエア混入判定を実施したが、本第2の実施の形態では、エア混入判定に関する上記手法を変更する。すなわち、本実施の形態では、まず吸引バルブ23を開放して吸引可能とした後、電空レギュレータ28のエア圧力を制御し、圧縮コイルバネ35の付勢力に抗してベローズ式仕切部材12を変位させる。次に、ポンプ室13を密閉状態とし、その状態で電空レギュレータ28のエア圧力制御状態を解除する。そして、その時のベローズ長の変化に基づいてエア混入判定を実施する。
【0077】
本実施の形態におけるエア混入判定の概要を図9を用いてより具体的に説明する。なおここでは、ポンプ室13内へのエア混入が生じる場合を想定して説明する。
【0078】
まず図9の(a)に示すように、吸引バルブ23=開放、吐出バルブ25=閉鎖とした状態で、ベローズ長が所定の長さXになるよう電空レギュレータ28のエア圧力Pinを制御する。このとき、エア圧力Pinの上昇に伴い、圧縮コイルバネ35の付勢力に抗してベローズ式仕切部材12が変位する(図示の例ではベローズ15が伸長している)。
【0079】
次に、図9の(b)に示すように、吸引バルブ23と吐出バルブ25を共に閉鎖してポンプ室13を密閉状態とし、その状態で電空レギュレータ28のエア圧力Pinを0とする。すると、圧縮コイルバネ35には、元の状態(無負荷状態)に復帰しようとする力が作用する。すなわち、ベローズ式仕切部材12には、圧縮コイルバネ35のバネ力F2が図の下向きに作用し、そのバネ力F2によってポンプ室13内の混入エアが膨張する。これにより、ポンプ室13内の容積が増加し、ベローズ長がΔXだけ変動する。このベローズ長の変化を位置検出器36にて検出することにより、エア混入が判定できる。なお、ポンプ室13内にエアが混入していない場合には、電空レギュレータ28のエア圧力Pinを0とした後もポンプ室13内の容積が変化することはない(ΔX=0となる)。
【0080】
本実施の形態の場合、ベローズ長の変動量ΔXは圧縮コイルバネ35のバネ特性に依存したものとなり、その変動量とエア体積とは図10に示す関係となる。図10を用いることにより、ベローズ長の変動量ΔXが分かれば、ポンプ室13内のエア体積を知ることができる。
【0081】
以上第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様、ポンプ室13内にエアが混入した場合にそのエア混入を確実に検出することができる。したがって、薬液ポンプ10による薬液の吐出供給を好適に行わせることができるようになる。
【0082】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0083】
上記実施の形態では、薬液ポンプ10により連続吐出を行う場合に、薬液の吸引完了後であって次に薬液吐出を行うまでの間にエア混入判定を実施する構成としたが(図6参照)、これを変更し、薬液の吐出完了後であって次に薬液吸引を行うまでの間にエア混入判定を実施するようにしても良い。すなわち、薬液の吸引完了後にエア混入判定を行う構成に代えて、薬液の吸引開始前にエア混入判定を行う構成とする。
【0084】
上記実施の形態では、薬液ポンプ10において薬液の吸引/吐出動作が繰り返される都度、毎回エア混入判定を実施する構成としたが、これ以外に、所定回の吸引/吐出動作が行われる度にエア混入判定を実施するようにしても良い。また、作業者等による入力指示に従いエア混入判定を実施するようにしても良い。
【0085】
上記実施の形態では、エア混入判定を実施する際、電空レギュレータ28によるエア圧力をステップ的に減圧側に変化させたが、これに代えて、同エア圧力をステップ的に増圧側に変化させても良い。また、エア混入判定に際し、電空レギュレータ28によるエア圧力を減圧側又は増圧側に徐変させるようにしても良い。
【0086】
上記実施の形態では、圧力作用室14内のエア圧力を減圧する際、電空レギュレータ28を大気開放状態としたが、これを変更する。例えば、電空レギュレータ28に真空源を接続し、その真空源の作動により圧力作用室14内を負圧とする。こうしたエア圧力の操作によってベローズ等の作動量を任意に制御できる。この場合、ケース体31内に設けた圧縮コイルバネ35を無くすことが可能となる。
【0087】
上記実施の形態では、薬液ポンプ10として、ポンプ室13と圧力作用室14とをベローズ式仕切部材12により仕切り、圧力作用室14内のエア圧力に応じてベローズ式仕切部材12を作動させて薬液の吸引及び吐出を行わせる構成を採用したが、これとは異なる構成の薬液ポンプを用いる。例えば、容積可変部材として、ベローズ式仕切部材12に代えて、ダイアフラム膜を用いる構成としても良い。また、容積可変部材を電動式のピストン部材とし、該モータ等の駆動によりピストン位置を調整するようにしても良い。
【0088】
上記実施の形態では、複数の薬液ポンプを具備する薬液供給システムの具体例として、複数個の薬液ポンプを組み合わせて各ポンプ間を配管等により接続する構成としたが、それら複数個の薬液ポンプが一体化されたポンプユニットを採用するようにしても良い。これにより、配管等の削減や省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】発明の実施の形態における薬液供給システムの概略を示す構成図である。
【図2】コントローラにおける吐出流量制御の概要を示す図である。
【図3】ポンプ吐出特性を示す図である。
【図4】気体混入時のピストン変位の状態を示す図である。
【図5】ピストン変位量とシリンダ内のエア体積との関係を示す図である。
【図6】薬液ポンプによる吸引/吐出動作とエア混入判定とを説明するためのタイムチャートである。
【図7】2つの薬液ポンプを有するシステムの概略構成を示す図である。
【図8】薬液吐出動作を説明するためのタイムチャートである。
【図9】第2の実施の形態におけるエア混入判定の概要を説明するための図である。
【図10】ベローズ長の変動量とポンプ室内のエア体積との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10…薬液ポンプ、12…ベローズ式仕切部材、13…ポンプ室、14…圧力作用室、15…ベローズ、16…仕切板、23…吸引バルブ、25…吐出バルブ、28…電空レギュレータ、35…圧縮コイルバネ、36…位置検出器、40…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を充填するためのポンプ室と、該ポンプ室の容積を可変とする容積可変部材とを有し、前記容積可変部材による前記ポンプ室の容積変化に基づいて薬液を吸引又は吐出する薬液ポンプと、
前記容積可変部材を作動させるための作動手段と、
前記容積可変部材の作動量を検出する作動量検出手段と、
前記ポンプ室に通じる薬液出入り口を閉じた状態で、前記作動手段により容積可変部材を変位させるよう変位操作を行う変位操作手段と、
前記変位操作時において前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて前記ポンプ室内における気体の有無を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【請求項2】
薬液を充填するためのポンプ室と、該ポンプ室の容積を可変とする容積可変部材と、該容積可変部材を所定方向に付勢する付勢手段とを有し、前記付勢手段の付勢力に抗して前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて薬液を吸引又は吐出する薬液ポンプと、
前記容積可変部材を作動させるための作動手段と、
前記容積可変部材の作動量を検出する作動量検出手段と、
前記ポンプ室に通じる薬液吸引口を開いた状態で、前記付勢手段の付勢力に抗して前記作動手段による容積可変部材の変位操作を行い、その後、前記ポンプ室を密閉するとともに前記作動手段による容積可変部材の変位操作を解除する変位操作手段と、
前記変位操作手段によって容積可変部材の変位操作が解除された後、前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて前記ポンプ室内における気体の有無を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【請求項3】
前記薬液ポンプは、前記容積可変部材により前記ポンプ室から仕切られてなる圧力作用室を有し、該圧力作用室内の気体圧力が前記作動手段に調整されることにより前記容積可変部材が作動する薬液供給システムにおいて、
前記変位操作手段は、前記作動手段により圧力作用室内の気体圧力を調整することで前記容積可変部材の変位操作を行う請求項1又は2に記載の薬液供給システム。
【請求項4】
前記薬液ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において前記容積可変部材の目標作動量を設定するとともに、前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量が前記目標作動量に一致するよう前記作動手段の作動状態をフィードバック制御するフィードバック制御手段を備えた請求項1乃至3のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項5】
前記ポンプ室内の気体の有無判定に際し、前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて前記ポンプ室内における気体量を推定する請求項1乃至4のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項6】
貯留容器内に貯留された薬液を薬液配管を通じて前記薬液ポンプに供給するようにした薬液供給システムにおいて、
前記ポンプ室内の気体の有無判定に際し、前記作動量検出手段による作動量検出結果に基づいて、前記貯留容器内に貯留された薬液が所定量以下となったことを判定する請求項1乃至5のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項7】
前記薬液ポンプにおいて薬液の吸引及び吐出を交互に繰り返し実行するようにした薬液供給システムにおいて、
前記判定手段は、前記薬液ポンプでの吸引完了後であって次に薬液吐出を行うまでの間、又は吐出完了後であって次に薬液吸引を行うまでの間に、前記ポンプ室内における気体の有無を判定する請求項1乃至6のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項8】
前記薬液ポンプのポンプ室を複数備え、これら複数のポンプ室を所定順序で用いて吸引動作及び吐出動作を行わせるようにした薬液供給システムにおいて、
前記判定手段は、各ポンプ室における薬液の吸引完了後であって次に薬液吐出を行うまでの間、又は吐出完了後であって次に薬液吸引を行うまでの間に、前記ポンプ室内における気体の有無を判定する請求項1乃至6のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項9】
前記容積可変部材によるポンプ室の容積変化動作を、薬液吐出時よりも薬液吸引時の方を早くした請求項7又は8に記載の薬液供給システム。
【請求項10】
前記判定手段により前記ポンプ室内に気体が入っていると判定された場合に、その旨を報知する手段を備えた請求項1乃至9のいずれかに記載の薬液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−198272(P2007−198272A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18504(P2006−18504)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】