説明

蛍光体フィルム、画像形成組立体およびそれらの検査方法並びにフィルム形成方法、

【課題】適正な量子検出効率と高SN比を維持し、患者へのX線照射線量を抑制したデジタル放射線像形成組立体を得る。
【解決手段】高適合性画像形成組立体は、入射放射線を受けかつ対応する光信号を放出するように構成された単体蛍光体フィルム10、単体蛍光体フィルム10に結合される電子装置12、着脱可能な電子強化層14で構成する。電子装置12は、単体蛍光体フィルム10から光信号を受信しかつ画像形成信号を生成する。単体蛍光体フィルム10は、シリコーン結合剤内に分散されたX線蛍光体粒子を含む。単体蛍光体フィルム10の厚さは、1mmより薄く、要件に応じて変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には画像形成組立体及び検査方法に関する。より具体的には、本発明は、着脱式かつ交換式層を組み込んだデジタル放射線画像形成組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
X線蛍光体は、X線又は他の高エネルギー電磁光子によって刺激を受けると可視又は近可視放射線を放出する高密度蛍光物質であり、従って様々な産業用及び医用放射線撮影装置に幅広く使用される。X線蛍光体を光ダイオード、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS装置)及び光電子倍増管(PMT)との組み合わせは、X線を電気信号に変換する有効な方法である。この開発には、高いX線変換効率、速い発光減衰時間、低い残光、高い放射線場安定性等の優れた特性を有する最新のX線蛍光体のみならず、X線変換スクリーンと電子検出器との良好な結合もまた必要である。X線蛍光体は、電磁スペクトル(可視及び近可視)領域におけるX線放射線の光放射線への効率的なコンバータでなければならず、電磁スペクトルは光電子倍増管又は光ダイオードのような光センサによって最も効率的に検出される。X線蛍光体本体内の深い位置で発生する光放射線は外部配置の光検出器による検出から逸脱するので、X線蛍光体は、高い光透明度を有する、すなわち光トラッピングを避けるように効率的に光放射線を伝えることもまた望ましい。このことは、適正な量子検出効率及び高い信号対雑音比を維持しながらX線量を可能な限り小さくして患者照射線量を最少にすることが望ましい医用診断用途において特に重要である。
【0003】
残光は、X線励起の終了後しばらくの間にわたって光放射線を放出し続けるX線蛍光体の性向であり、これが、時間の経過と共に情報保持信号をあいまいなものにする。例えば運動する身体器官の画像形成におけるような高速連続スキャンを必要とする用途においては、短時間の残光は非常に望ましい。ヒステリシスは、これによって光出力が同一のX線励起においてもX線蛍光体の放射線履歴に基づいて変化するX線蛍光体材料の特性である。コンピュータ断層撮影においては各X線蛍光体セルからの光出力を反復して正確に測定することが要求され、その場合光出力は、X線蛍光体本体に衝突する同一のX線照射ついて実質的に同一でなければならないため、ヒステリシスは望ましくない。一般的な検出精度は、比較的高速で撮影する多数の連続測定の場合に1/1000部のオーダである。リアルタイムX線透視において、ヒステリシスにより画像ゴーストが生じる可能性があり、その場合、過去の画像形成履歴が現在の放射線影像に重複する。このことには、誤った診断又は解釈を招くおそれがある。有効なX線検出には、高いX線阻止能が望ましい。使用する蛍光体スクリーンは、X線を阻止するべきであると同時に、光検出装置によって捕捉するための連続光放出の妨げになってはならない。
【特許文献1】米国特許第4,549,083号公報
【特許文献2】米国特許第5,663,005号公報
【特許文献3】米国特許第6,744,056号公報
【特許文献4】欧州特許公開第0393662号公報
【特許文献5】欧州特許公開第0648254号公報
【特許文献6】国際特許公開第0071637号公報
【特許文献7】国際特許公開第9400531号公報
【非特許文献1】WO 2004/041964, E. R. Holland et al., "PROCESS FOR PREPARING INORGANIC PHOSPHORS," May 21, 2004.
【非特許文献2】US 2003/0111955, McNulty et al., "LIGHT-EMITTING DEVICE WITH ORGANIC ELECTROLUMINESCENT MATERIAL AND PHOTOLUMINESCENT MATERIALS," June 19, 2003.
【非特許文献3】US 2004/0262536, Van den Berg et al., "RARE EARTH ACTIVATED RARE EARTH OXYSULFIDE PHOSPHOR FOR DIRECT X-RAY DETECTION," December 30, 2004.
【非特許文献4】US 2005/002490, Berg et al., "RARE EARTH ACTIVATED LUTETIUM OXYORTHOSILICATE PHOSPHOR FOR DIRECT X-RAY DETECTION," January 6, 2005.
【非特許文献5】D. Hreniak et al., "STRUCTURAL AND SPECTROSCOPIC STUDIES OF Lu2O3/Eu 3+ NANOCRYSTALLITES EMBEDDED IN SiO2 SOL-GEL CERAMICS," Journal of Physics and Chemistry of Solids, 2003, pp. 111-119.
【非特許文献6】J. Trojan-Piegza et al., "PREPARATION OF NANOCRYSTALLINE Lu2O3:Eu PHOSPHOR VIA A MOLTEN SALTS ROUTE," Journal of Alloys and Compounds, 2004, pp. 118-122.
【非特許文献7】C. Le Luyer et al., "ELABORATION AND SCINTILLATION PROPERTIES OF Eu3+-DOPED Gd2O3 and Lu2O3 SOL-GEL FILMS," Abstract, pp. 1-2.
【非特許文献8】C.Brecher et al., "HOLE TRAPS IN Lu2O3:Eu CERAMIC SCINTILLATORS. I PERSISTENT AFTERGLOW," Journal of Luminescence, 2004, pp. 159-168.
【非特許文献9】A. Lempicki, PI et al., "SCITILLATION MATERIALS FOR MEDICAL APPLICATIONS," Final Report, Boston University Department of Chemistry, Grant No: DE-FG02-90ER60133, Dec 1, 1997- Nov. 30, 1999. pp. 1-26.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当技術分野で公知の放射線画像形成システムは、これらの欠点の1つ又はそれ以上に苦慮している。従って、高い感度及び良好な性能を有する放射線画像形成システムを設計することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの及び他の要求を満たす。つまり、本発明の1つの実施形態によると、高適合性画像形成組立体を提供する。本高適合性画像形成組立体は、入射放射線を受けかつ対応する光信号を放出するように構成された単体蛍光体フィルムを含む。単体蛍光体フィルムに結合された電子装置が設けられる。電子装置は、単体蛍光体フィルムから光信号を受信しかつ画像形成信号を生成するように構成される。
【0006】
別の実施形態によると、構成要素を検査する方法を提供する。本方法は、構成要素及び単体蛍光体フィルムを放射線に露出する段階と、単体蛍光体フィルムで対応する光信号を生成する段階と、単体蛍光体フィルムに結合された電子装置で光信号を受信する段階と、電子装置を用いて画像形成信号を生成する段階とを含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、シリコーン結合剤内に分散されたX線蛍光体粒子を含む単体蛍光体フィルムを提供する。
【0008】
さらに別の実施形態では、単体蛍光体フィルムを形成する方法を提供する。本方法は、X線蛍光体を含む蛍光体粉末を調製する段階と、シリコーン結合剤及び硬化剤を含む結合剤溶液を調製する段階と、結合剤溶液と蛍光体粉末とを混合することによってスラリーを調製する段階と、スラリーを基板上に塗布することによって該基板上に蛍光体層を形成する段階と、蛍光体層を硬化させて蛍光体フィルムを得る段階と、基板から蛍光体フィルムを取外して単体蛍光体フィルムを得る段階とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、図面を通して同様の符合が同様の部分を表す添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより一層良く理解されるようになるであろう。
【0010】
図1を参照して高適合性画像形成組立体20を説明する。例えば図1に示すように、高適合性画像形成組立体20は、入射放射線を受けそれに対応する光信号を放出するように構成された単体蛍光体フィルム10を含む。単体蛍光体フィルム10及びフィルム10を製造する方法は、以下でより詳細に説明する。放射線源は用途に基づいて変えてもよく、実施例では、X線、ガンマ線、熱中性子線及び高エネルギー素粒子放射線源が含まれる。熱中性子線の場合は、マイラー支持体のような支持基板が、入射熱中性子画像形成ビームパターンを大きく減衰させ、信号対雑音を低下させる。熱中性子は、マイラーのような水素含有材料に非常に吸収される。尚、これらは単なる実施例であり、用いることができる放射線の種類を制限するように解釈してはならない。本明細書で用いる場合、「光信号」という用語は、光を意味すると理解されたい。蛍光体フィルム10によって放出される光の波長は、用いる蛍光体の種類によって決まる。高適合性画像形成組立体20はさらに、単体蛍光体フィルム10に結合された電子装置12を含む。電子装置12は、単体蛍光体フィルム10から光信号を受信しかつ画像形成信号を生成するように構成される。電子装置12は、光結合(例えば、光ファイバプレートを用いた)、直接結合及びレンズ結合を含む幾つかの方法で単体蛍光体フィルム10に結合することができる。例示的な電子装置12には、CCD、CMOS、光ダイオードアレイ、光アバランシェアレイ、α‐Si(アモルファスシリコン)アレイが含まれる。一般的には、電子装置12は、アレイの形態で配置された多数の光感知ピクセルを含む。アレイは、直線アレイ又は領域アレイとすることができる。他の実施形態では、光電子増倍管(PMT)のような単一のピクセル装置を使用することができる。
【0011】
特定の実施形態によると、単体蛍光体フィルム10と電子装置12との間に光結合流体(図示せず)又は光接合剤(図示せず)を用いて、各素子のそれぞれの屈折率を一致させるような改善が得られる。この実施形態は、それによって光結合効率及び光収集を高めることになる。例示的な光接合剤には、それに限定されないが、UV硬化接合剤及び光エポキシが含まれる。
【0012】
例示的な実施形態によると、単体蛍光体フィルム10は、シリコーン結合剤内に分散されたX線蛍光体粒子を含み、図6は、そのようなフィルムの実施例を示す。これらの用途に適したX線蛍光体の非限定的な実施例には、それに限定されないが、GdS:Tb、GdS:Eu、CaWO、YS:Tb、(YSr)TaO、(YSr)TaO:Gd、(YSr)TaO:Nb、BaFCl:Eu、Lu:Eu、CsI:Tl及びこれら蛍光体の組合せ又はテルビウム及びユーロピウムのようなよく知られた活性剤との組合せが含まれる。特定の材料又は材料の組合せの選択は、特定の用途に応じて決まる。単体フィルム10については、図5、図6及び図7を参照して以下により詳細に説明する。
【0013】
混合蛍光体の実施形態では、単体蛍光体フィルム10は、少なくとも2つの蛍光体粉末を含む。この混合蛍光体は、アモルファスシリコンパネルを含む特定の用途に望ましい。アモルファスシリコンパネルは、緑色光に対してより敏感であるので、Lu:Eu及びGOS:Tbの混合が有用なものとなる。この構成では、Lu:Euは、X線阻止力能及び良好なX線・光変換効率をもたらすが、スペクトルの赤色領域では放出する。GOS:Tbは、阻止能が中程度であるが、変換効率も良好でありかつアモルファスシリコン光検出器との良好な適合性をもたらす。
【0014】
図1の例示的な実施形態では、高適合性画像形成組立体20はさらに、単体蛍光体フィルム10に結合された電子強化層14を含み、電子強化層14は、単体蛍光体フィルム10上への入射に先だって入射放射線を受けるように構成される。例示的な電子強化層14には、鉛のような原子番号が高い金属で形成された金属層が含まれる。電子強化層14は、X線散乱を低減する利点がある。特定の実施形態によると、電子強化層14は、単体蛍光体フィルム10に直接結合される。この直接結合は、単体フィルム10が、Mylar(登録商標)裏当てのような基板を有しないことによって可能になる。(Mylar(登録商標)は、DuPont−Teijin Filmsの登録商標である。)これによって、フィルム10の両側での直接結合が可能になる。単体蛍光体フィルム10の別の利点は、Mylar(登録商標)裏当てを有する従来型の蛍光体スクリーンで一般的に起こるような低X線エネルギー(<400kV)で金属スクリーンから放出される低エネルギー電子が阻止されないことである。
【0015】
特定の実施形態によると、電子強化層14は、着脱可能(着脱式)かつ交換可能(交換式)である。電子強化層を着脱式に構成することによって、高エネルギー(>1MeV)用途の場合には電子強化層を含み、低エネルギー(<150kV)用途の場合には電子強化層を除去することができる利点がある。同様に、電子強化層14を交換式に構成することによって、異なる画像形成用途の場合には、異なる電子強化層14(組成又は厚さに関していずれか又はその両方の)を使用することができる。
【0016】
別の例示的な実施形態では、単体蛍光体フィルム10の厚さが、調整可能である。例えば、特定の画像形成用途の場合には単一の100ミクロン蛍光体層を使用し、他の画像形成用途の場合には100ミクロン厚さの1つ又はそれ以上の付加層を単体蛍光体フィルム10の厚さを増加させるように付加することができる。この実施形態では、付加蛍光体層は、最初の蛍光体層に対して同じ又は異なる蛍光体を含むことができる。
【0017】
特定の実施形態によると、単体蛍光体フィルム10は交換式である。交換式蛍光体フィルム10を使用することによって、異なる画像形成用途の場合に異なる蛍光体及び/又は異なるフィルム厚さを使用することができる利点がある。例えば、鋳造品における小さな割れ又は小さな空隙の高空間分解能低エネルギー画像形成の場合には、GOS:Tbで構成した50〜100ミクロンの単体蛍光体は、アモルファスシリコン光検出器に直接取付けた状態で使用することができ、また非破壊検査を実施するように使用することができる。より厚い鋳造品又はより大型の鋼構成要素のより高いエネルギー照射の場合には、ここでも最適なX線捕捉のための適正な厚さを有する重蛍光体を用いることができる。より具体的には、後者の場合ではまた、500ミクロンの鉛又はタングステンのような金属スクリーンを有するように構成してX線画質をさらに向上させることができる。加えて、補修目的のために交換作業を実施することができる。
【0018】
特定の実施形態によると、単体蛍光体フィルム10は、電子装置12に取付けられる。これは、単体蛍光体フィルム10を電子装置12に圧入することを含む多くの方法で行うことができる。例えば蛍光体は、前面カバープレートを用いて装置上に圧着させることができる。別の実施形態では、さらにフレームも使用することができる。より具体的には、フィルムは、フレームに圧入される。
【0019】
図8は、高適合性画像形成組立体20の別の例示的な実施形態の組を示す。図8に示すように、高適合性画像形成組立体20はさらに、単体蛍光体フィルム10と電子装置12との間に配置された光ファイバプレート(FOP)52を含む。FOPは、非シンチレーション型又はシンチレーション型とすることができる。FOPの開口数をより浅い角度の入射光を受け入れるように調整して、高適合性画像形成組立体20の分解能を高めることができる利点がある。これによって、空間分解能及びコントラストの調整を改善することが可能になる。特定の実施形態によると、電子装置12は、アモルファスシリコンパネルである。FOPは、光結合流体又は光接合剤と組合せることができる利点がある。例えば、光結合流体又は光接合剤(図示せず)は、単体蛍光体フィルム10とFOP52との間に配置することができる。さらに、光結合流体又は光接合剤は、FOP52と電子装置12との間に配置することもできる。
【0020】
高適合性画像形成組立体20は、構成要素30を検査するのに用いることができ、構成要素の実施例には、それに限定されないが、タービンブレード、鋳造品、溶接組立体及び航空機機体フレームが含まれる。図2及び図3は、本発明の別の実施形態を示し、この実施形態は、構成要素30を検査する方法を対象とする。図2に示すように、本方法は、ステップ22における、構想要素30及び単体蛍光体フィルム10を放射線に露出する段階と、ステップ24における、単体蛍光体フィルム10で対応する光信号を生成する段階と、ステップ26における、単体蛍光体フィルム10に結合された電子装置12で光信号を受信する段階とを含む。本検査方法はさらに、ステップ28における、電子装置12を用いて画像形成信号を生成する段階を含む。図3の例示的な実施形態では、画像形成信号は、プロセッサ18において幾つかの処理段階(図示せず)を受け、構成要素30の画像が、1つ又はそれ以上の画像形成信号に基づいて生成される。多くの実施形態では、画像は、図3に示すように表示装置16に表示される。
【0021】
特定の実施形態によると、本方法はさらに、以下の作業、すなわち単体蛍光体フィルム10の厚さを調整すること、例えば図4に示すように最初の単体蛍光体フィルム10に対して別の単体蛍光体フィルム10’(最初のフィルム10と同じ又は異なる蛍光体を有することができる)の少なくとも1つの層を付加すること、及び単体蛍光体フィルム10を別の単体蛍光体フィルム(例えば、組成及び/又は厚さが異なる)と交換することの少なくとも1つを実施する段階を含む。後者の交換作業は、単体蛍光体フィルム10を修正するか又は補修するかのいずれかを行うのに用いることができる。
【0022】
特定の実施形態によると、本方法はさらに、高原子番号の電子強化層14を単体蛍光体フィルム10に結合することによって放射線散乱を低減する段階を含む。本明細書で用いる場合、「高原子番号」という用語は、少なくとも26の原子番号を示す。このようにして、金属スクリーンは、散乱の阻止をもたらすことができるだけでなく、また金属スクリーンから放出される光電子の更なる捕捉、従って金属層による強化の改善をもたらすことになる。金属層は一般的に、産業用フィルム画像形成において用いられており、その場合、産業用X線フィルムと緊密接触させた状態で鉛のような金属を配置している。これにより、エネルギーX線を約100kVを超える中程度のものにするための一次捕捉媒体が得られる。単体蛍光体フィルムは、前面における光検出器アレイとの、及び背面における金属「強化」スクリーンとの両方との直接接触がもたらされる。そのより具体的な実施形態では、本方法はさらに、以下の作業、すなわち電子強化層14の厚さを調整すること、電子強化層14を交換すること、及び電子強化層14を除去することの少なくとも1つを実施する段階を含む。
【0023】
本発明の別の態様は、シリコーン結合剤内に分散されたX線蛍光体粒子を含む単体蛍光体フィルム10を提供することである。この用途に適したX線蛍光体の非限定的な実施例には、それに限定されないが、GdS:Tb、GdS:Eu、CaWO、YS:Tb、(YSr)TaO、(YSr)TaO:Gd、(YSr)TaO:Nb、BaFCl:Eu、Lu:Eu、CsI:Tl及びこれら蛍光体の組合せが含まれる。特定の材料又は材料の組合せの選択は、特定の用途に応じて決まる。幾つかの例示的な実施形態では、X線蛍光体は、Lu:Euである。Lu:Euは、高密度、従って良好なX線阻止、及びCCDのスペクトル応答に適合する610nmの狭帯域放出の明白な利点を有する。
【0024】
特定の実施形態では、単体蛍光体フィルムは、少なくとも2つの異なる蛍光体を含む混合蛍光体を含む。1つの特定の実施形態では、混合蛍光体は、GOS:Tb3+とLu:EUとを含む。混合蛍光体は、特定の用途に適した蛍光体の組合せを含むことができる。例えば、緑色に対してより高感度であるアモルファスシリコンパネルの場合には、Lu:EuとGOS:Tbとの混合が、有用なものとなる。これらの異なる蛍光体は、混合して混合物を形成するか、又は異なる層として使用することができる。
【0025】
着脱式及び交換式の層は、容易な取扱いを可能にする。これらは、反復して再使用することができる。蛍光体フィルムは、関連する電子機器に従って変更することができる。例えば、PMTは青色放射線に敏感であり、従ってBaFCl:Eu2+蛍光体が有用である。一方、CCDは赤色に対してより敏感であり、従ってこのケースではLu:Euが有用なものとなる。
【0026】
単体蛍光体フィルムの厚さは、特定の要件に応じて変えることができる。イメージャ組立体の感度は、蛍光体フィルムの化学組成、その結晶構造、粒子形状、フィルム内の蛍光体含有重量及び蛍光体フィルムの厚さによって決まる。幾つかの実施形態では、単体蛍光体フィルムの厚さは1ミリメートルよりも小さい。他の実施形態では、蛍光体フィルムは、約100ミクロン〜約500ミクロンの範囲の厚さを有する。本明細書で用いる場合、「約」という用語は、記載した厚さの10%以内であることを意味すると理解されたい。従って、「約100ミクロン」は、100+/−10ミクロンなどを意味すると理解されたい。
【0027】
図5は、本発明の1つの実施形態による、単体蛍光体フィルムを形成する方法の流れ図(その全体を参照符号32で示す)を示す。本方法は、ステップ34における、X線蛍光体を含む蛍光体の粉末を調製する段階を含む。本方法は、ステップ36における、シリコーン結合剤及び硬化剤を含む結合剤溶液を調製する段階を含む。ステップ38において、結合剤溶液と蛍光体粉末とを混合することによって、スラリーが調製される。ステップ40は、スラリーを基板上に塗布することによって該基板上に蛍光体層を形成する段階を含む。ステップ42において、蛍光体層を硬化させて蛍光体フィルムを得る。ステップ44は、基板から蛍光体フィルムを取外して単体蛍光体フィルム10を得る段階を含む。
【0028】
ステップ34において、X線蛍光体粉末を含む蛍光体粉末が調製される。蛍光体粉末は、当技術分野では公知のあらゆる合成方法によって調製することができる。有用な合成方法には、固体合成法、共沈法、ゾル・ゲル合成法、コロイド法、フレーム溶射熱分解法、逆マイクロエマルジョン法、燃焼法、シュウ酸エステル沈殿法及びマイクロ波合成法が含まれる。1つの例示的な実施形態では、沈殿剤として尿素を用いる共沈法が使用される。この方法は、正確な粒径及び粒子形態をもつLu:Eu蛍光体粉末の調製に特に有用である。別の実施形態では、沈殿剤として炭酸アンモニウムを用いる。この方法もまた、調整した粒径、狭い粒径分布及び正確な粒子形態をもつLu:Eu蛍光体粉末の調整に有用である。合成方法及び処理条件は、必要とする蛍光体粒子の粒径及び形状に応じて選択することができる。特定の実施形態によると、蛍光体粒子の平均粒径は、約1ミクロン〜約25ミクロンの範囲で変化する。幾つかの特定の実施形態では、平均粒径は、約4ミクロン〜約5ミクロンの範囲である。
【0029】
共沈法は、極度に狭い粒径分布及び均一な球状形態をもつ蛍光体粒子を生成するのに有用であることがわかっている。粒径及び粒子形状は、スラリーのレオロジー特性に大きな影響を及ぼす。粒径及び粒子形態は、フィルムの充填密度に影響を及ぼす。さらに、より小さい平均粒径の蛍光体粒子で、より鮮明な画像が得られることが知られている。しかしながら、光照射効率は、粒径が小さくなるにつれて低下する。従って、所定の用途に最適な平均粒径は、画像形成のための所望速度と画像鮮明度との間の妥協である。
【0030】
ステップ36において、結合剤と硬化剤とを含む結合剤溶液が調整される。結合剤は、蛍光体システムに適合するあらゆる結合剤とすることができる。幾つかの例示的な実施形態では、シリコーン結合剤が用いられる。シリコーン結合剤は、蛍光体粒子との間で良好な屈折率整合特性をもたらし、光が深層から放出されるのを可能にし、従って厚い蛍光体プレートを使用することを可能にする。ステップ38において、結合剤溶液と蛍光体粉末とを混合することによってスラリーが調整される。スラリー内の蛍光体粉末の量は一般的に、最良のレオロジー特性を有するように調整される。さらに、分散性を高めて急速な沈下を防止するための分散剤及び結合剤と蛍光体粒子との間の結合力を高めて割れの危険性を低減するための可塑剤のような添加剤を、スラリー中に混合することができる。特定の実施形態によると、本方法は、よりよい結果を得るためにスラリーの凝集阻止及び脱気の任意選択的な付加的段階を含む。ステップ40は、スラリーを基板上に塗布することによって該基板上に蛍光体層を形成する段階を含む。蛍光体層を形成するために、当技術分野で公知の層を調整するためのあらゆる方法を使用することができる。有用な形成法の非限定な実施例には、それに限定されないが、噴霧、スクリーン印刷、インクジェット印刷、注型、ワイヤバーコーティング、押出しコーティング、グラビアコーティング、ロールコーティング及びこれらの組合せが含まれる。幾つかの例示的な実施形態では、テープ注型のような注型法が用いられる。テープ注型は、調整した厚さ及び微細構造をもつ広い面積の薄いセラミックシートを注型するのに有用であることがわかっている。フィルムを製造するのに、それに限定されないが、プラスチック、ガラス、雲母、金属基板及びセラミック基板を含む様々な基板を用いることができる。ステップ42は、蛍光体層を硬化させて蛍光体フィルムを得る段階を含む。例示的な硬化法には、特定温度での特定の継続時間にわたる加熱、マイクロ波照射、電子ビーム照射、又はUV光照射又はこれらの組合せを含むことができる。ステップ44において、基板から蛍光体フィルムを取外して、単体蛍光体フィルム10を得る。例えば、蛍光体フィルムは、手で剥がすことができる。
【0031】
実施例
以下に本発明の実施例を説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0032】
単体蛍光体フィルムの形成
以下の実施例は、Lu:Euの単体蛍光体フィルムの形成方法を説明する。5ミクロンの平均粒径及び球状形態をもつLu:Eu蛍光体粒子を、尿素支援共沈法によって調製した。2.5mlの蛍光体粉末を計量し、100メッシュのふるいにかけた。7.02gのダウコーニング製Sylgard184基剤を50mlビーカー内で7gmの硬化剤と混合して結合剤溶液を形成した。ビーカー内の結合剤溶液に蛍光体粉末を加え、凝集体を排除するように5分間勢いよく混合した。真空乾燥器内にビーカーを配置し、真空から1気圧のサイクルを数回行って懸濁液を脱気した。所望の寸法のガラス基板を清浄にし、標準的なドクターブレード法によって懸濁液を所望の厚さの蛍光体層に形成した。テープは、80℃で15時間加熱した。ガラス基板から蛍光体フィルムを剥がして、単体Lu:Euフィルムを得た。
【0033】
図6は、方法32によって調製したLu:Eu3+の可撓性単体蛍光体フィルム(46)を示す。これら可撓性単体フィルムは、上述のイメージャ組立体において用いることができる。これらの単体フィルムは、可撓性であり、パネルとの緊密接触を可能にする。例えば図7は、金属プレート(50)とSiウェーハ(48)との間に緊密接触状態で配置したLu:Eu3+の単体フィルム(46)を示す。
【0034】
本明細書で説明したイメージャ組立体は、多種多様な用途を有することができる。例えば、本イメージャ組立体は、高エネルギー放射線の電気信号への変換が必要であるあらゆるシステムにおいて有用なものとなる。具体的には、本イメージャ組立体は、X線撮影、マンモグラフィ、口腔内放射線撮影(歯科における)、フルオロスコピー、X線コンピュータ断層撮影、陽電子放出断層撮影のような放射性核種画像形成、産業用非破壊検査、手荷物及びコンテナの受動的及び能動的スクリーニングを含む様々な産業用及び医用画像形成用途で有用なものとなる。
【0035】
本明細書では本発明の特定の特徴のみを例示しかつ説明してきたが、当業者には多くの修正及び変更が思い浮かぶであろう。従って、特許請求の範囲は、全てのそのような修正及び変更を本発明の技術思想の範囲内に属するものとして保護しようとするものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の高適合性画像形成組立体の実施形態を示す概略図。
【図2】本発明の検査方法の実施形態を示す流れ図。
【図3】図2の検査方法をさらに示す図。
【図4】複数の単体蛍光体フィルムを備えた高適合性画像形成組立体の特定の実施形態を示す図。
【図5】本発明の1つの実施形態により単体蛍光体フィルムを形成する流れ図。
【図6】例示的なLu:Eu3+の可撓性単体蛍光体フィルムを示す図。
【図7】金属プレートとSiウェーハとの間に配置された例示的なLu:Eu3+の可撓性単体蛍光体フィルムを示す図。
【図8】光ファイバプレートを使用する本発明の高適合性画像形成組立体の実施形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0037】
10 単体蛍光体フィルム
12 電子装置
14 電子強化層
16 表示装置
18 プロセッサ
30 構成要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン結合剤内に分散した複数のX線蛍光体粒子を含む、入射放射線を受けかつ対応する複数の光信号を放出するように構成された単体蛍光体フィルム(10)と、
前記単体蛍光体フィルム(10)に結合され、該単体蛍光体フィルムから前記光信号を受信して画像形成信号を生成するように構成された電子装置(12)と、を含むことを特徴とする高適合性画像形成組立体(20)。
【請求項2】
前記単体蛍光体フィルム(10)に結合され、該単体蛍光体フィルム上への入射に先だって前記入射放射線を受けるように構成された電子強化層(14)をさらに含み、前記電子強化層(14)が着脱式かつ交換式であることを特徴とする請求項1記載の高適合性画像形成組立体(20)。
【請求項3】
前記単体蛍光体フィルム(10)が着脱式であることを特徴とする請求項1記載の高適合性画像形成組立体(20)。
【請求項4】
前記単体蛍光体フィルム(10)と電子装置(12)との間に配置された光ファイバプレート(FOP)(52)をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の高適合性画像形成組立体(20)。
【請求項5】
構成要素(30)を検査する方法であって、
前記構成要素及び単体蛍光体フィルム(10)を放射線に露出する段階(22)と、
前記単体蛍光体フィルム(10)で複数の対応する光信号を生成する段階(24)と、
前記単体蛍光体フィルム(10)に結合された電子装置(12)で前記光信号を受信する段階(26)と、
前記電子装置(12)を用いて画像形成信号を生成する段階(28)とヲ有することを特徴とする検査方法。
【請求項6】
前記単体蛍光体フィルム(10)の厚さを調整する段階、
別の単体蛍光体フィルムの少なくとも1つの層を付加する段階、及び
前記単体蛍光体フィルムを交換する段階
の少なくとも1つを実施する段階をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
シリコーン結合剤内に分散された複数のX線蛍光体粒子を含む、単体蛍光体フィルム(10)。
【請求項8】
前記X線蛍光体粒子が、GdS:Tb、GdS:Eu、CaWO、YS:Tb、(YSr)TaO、(YSr)TaO:Gd、(YSr)TaO:Nb、BaFCl:Eu、Lu:Eu、CsI:Tl及びこれらの組合せから成る群から選択された少なくとも1つの蛍光体を含むことを特徴とする請求項7記載の単体蛍光体フィルム。
【請求項9】
前記X線蛍光体粒子が、少なくとも2つの異なる蛍光体を含む混合蛍光体を形成することを特徴とする請求項7記載の単体蛍光体フィルム。
【請求項10】
単体蛍光体フィルム(10)を形成する方法(32)であって、
(a)X線蛍光体を含む蛍光体粉末を調製する段階(34)と、
(b)シリコーン結合剤及び硬化剤を含む結合剤溶液を調製する段階(36)と、
(c)前記結合剤溶液と前記蛍光体粉末とを混合することによってスラリーを調製する段階(38)と、
(d)前記スラリーを基板上に塗布することによって該基板上に蛍光体層を形成する段階(40)と、
(e)前記蛍光体層を乾燥させて蛍光体フィルムを得る段階(42)と、
を具備することを特徴とする蛍光体フィルム形成方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−267099(P2006−267099A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63558(P2006−63558)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】