説明

蛍光体表面処理方法、蛍光体、蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置

【課題】 耐候性、分散性向上に優れた蛍光体表面処理方法、および耐湿性、分散性に優れた蛍光体を提供する。また、前記蛍光体を用いた高品質の蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置を提供する。
【解決手段】 雰囲気温度0℃以上20℃以下で金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を含むことを特徴とする蛍光体表面処理方法。および/または、金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を2回以上含むことを特徴とする蛍光体表面処理方法。並びに、金属酸化物皮膜を有する蛍光体であって、前記金属酸化物皮膜が所定の条件を満たすことを特徴とする蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体表面処理方法、蛍光体、蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置に関する。詳しくは、耐候性および分散性の向上に優れた蛍光体表面処理方法、耐候性および分散性に優れた蛍光体、および前記蛍光体を含有する蛍光体含有組成物、および前記蛍光体を用いて形成された発光装置、ならびに前記発光装置を用いて形成された照明装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は従来からCRT、蛍光ランプなどに工業的に大量に使用されてきたが、これらの
用途では蛍光体を塗布する際に水性スラリーとして使用する方法が工業的に確立されており、水分で劣化する蛍光体は使用できなかった。
一方、近年、半導体発光チップから発する光を蛍光体により波長変換し、白色発光装置を作製する技術が実用化されている。ここで使用される蛍光体は、前記のCRT、蛍光ラン
プとは異なり製造工程上水性スラリーとする必要がない。従って、発光特性に優れていれば、水分による劣化が多少認められても、封止剤により蛍光体を封入することにより、短期的な使用については問題にならない場合がある。
【0003】
しかしながら、長期的な使用については実用性に不十分な点が多く、かかる蛍光体の水分による劣化対策が求められていた。
蛍光体の表面処理方法としては、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着させる方法(特許文献1、特許文献2)、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法(特許文献3)、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法(特許文献4)などが古くから開示されているが、これらは、CRT用蛍光体のガラス面カブリ特性の向上、輝度の向上
などを目的としたものであり、蛍光体の耐湿性向上などの効果は十分ではなかった。
【0004】
また、蛍光体の耐湿性等の向上を目的として、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法(特許文献5)、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特許文献6)、金属化合物の粒子を付着させる方法(特許文献7)等の方法が開示されている。しかしながら、長期的な使用における耐湿性の向上にはさらなる検討が必要であった。
【特許文献1】特開平2−209989号公報
【特許文献2】特開平2−233794号公報
【特許文献3】特開平3−231987号公報
【特許文献4】特開平6−314593号公報
【特許文献5】特開2002−223008号公報
【特許文献6】特開2005−82788号公報
【特許文献7】特開2006−28458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、耐湿性が低く、水分により劣化を生じる蛍光体に耐湿性等の耐候性を付与し、長期的にも経時劣化しない蛍光体表面処理方法、蛍光体、蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ね、金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を比較的低温で行なった場合、および/または金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を2回以上行なう場合に上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。また、金属酸化物皮膜が特定の条件を満足する場合に上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。また、かかる表面処理方法により製造された蛍光体または上記特定の皮膜特性を有する蛍光体は、さらに分散性にも優れるため、例えば発光装置の蛍光体含有樹脂部における樹脂に対する分散性を向上させ得ることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の要旨は下記の〔1〕〜〔8〕に存する。
〔1〕雰囲気温度0℃以上20℃以下で金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を含むことを特徴とする蛍光体表面処理方法。
〔2〕金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を2回以上含むことを特徴とする蛍光体表面処理方法。
〔3〕前記〔1〕または〔2〕に記載の蛍光体表面処理方法より表面処理された蛍光体。〔4〕金属酸化物皮膜を有する蛍光体であって、前記金属酸化物皮膜が下記(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とする蛍光体。
(1)金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合してなるものであること
(2)透過型電子顕微鏡により実質的に連続性が観察されること、
(3)膜厚が1nm以上10000nm以下であること
(4)下記(i)〜(iii)による吸湿量測定試験により測定される吸湿増加率が5重量%以下であること
[吸湿量測定試験]
(i)橙色蛍光体SrBaSiO:Eu(以下SBSと略称する。重量メジアン径D50=20±3μm)に任意の方法で前記金属酸化物皮膜を形成する。
(ii)温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で100時間放置する。
(iii)吸湿増加率(重量%)=(吸湿試験後重量−吸湿試験前重量)/(吸湿試験前重量)×100を測定する。
〔5〕前記〔3〕または〔4〕に記載の蛍光体を含有する蛍光体含有組成物。
〔6〕前記〔3〕または〔4〕に記載の蛍光体を用いた発光装置。
〔7〕前記〔6〕に記載の発光装置を用いた画像表示装置。
〔8〕前記〔6〕に記載の発光装置を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蛍光体表面処理方法、および蛍光体は、以下の優れた効果を奏する。
(i)本発明の蛍光体の母体となる表面処理前の蛍光体(以後、基体蛍光体と呼ぶことがある)の耐湿性等の耐候性を一層向上させることができる。
(ii)発光装置の蛍光体含有樹脂部における樹脂に対する分散性を基体蛍光体に比べて向上させることができる。
【0009】
また、本発明の蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置は、前記蛍光体を用いているので、長期的な耐候性に優れ、高品質である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]蛍光体表面処理方法
第一の本発明の蛍光体表面処理方法は、雰囲気温度0℃以上20℃以下で金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を含むことが必須である
(請求
項1)。
第二の本発明の蛍光体表面処理方法は、金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を2回以上含むことが必須である(請求項2)。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0011】
[1−1]金属アルコキシドおよび/またはその誘導体
本発明に用いられる金属アルコキシドは、アルコキシル基に金属が結合した化合物をいい、通常、一般式 M(OR)n(Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸価
数を表す。)で表される。
【0012】
前記一般式において、Mは、好ましくはSi、Ti、Zr、Nb、Vを挙げることができる。また、Rのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜3である。
本発明に用いられる金属アルコキシドとしては、具体的には反応性や工業規模での入手の容易さなどから炭素数1〜3のシリコンアルコキシド、すなわち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランなどが好適に用いられる。
【0013】
金属アルコキシドの誘導体としては、例えば金属アルコキシドを部分的に加水分解、縮重合して得られる低縮合物誘導体を挙げることができる。具体的には、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランなどのシリコンアルコキシドを部分的に加水分解、縮重合して得られる低縮合物誘導体を挙げることができる。
[1−2]基体蛍光体
本発明の表面処理方法の対象となる蛍光体(基体蛍光体)は、特に限定は無いが、発光特性が優れているが耐湿性が低い蛍光体は、本発明の表面処理方法により、発光装置等に好ましく利用することができるので好適である。基体蛍光体の具体例については、[2]章において後述する。
【0014】
[1−3]加水分解、脱水重合工程
本発明の蛍光体表面処理方法は、金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を雰囲気温度0℃以上20℃以下の低温で行うこと(以下、「低温処理」と称することがある。)、および/または、2回以上行なうこと(以下、「複数回処理」と称することがある。)を特徴とする。かかる工程を行なうことで、基体蛍光体に緻密、かつ強固な皮膜が形成され、耐湿性向上、分散性向上が達成される。以下、詳細に説明する。
[1−3−1]低温処理
第一の本発明の蛍光体表面処理方法は、金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を雰囲気温度0℃以上20℃以下の低温で行う。これにより、基体蛍光体の表面に、均一な連続皮膜を形成することができる。液温は、好ましくは0℃以上であり、さらに好ましくは5℃以上である。また、好ましくは10℃以下である。各溶液が凝固しなければ低温であるほうが皮膜厚みを増やす上では好ましいが、あまりに低温であると局所的に金属酸化物が多く析出して不均一な表面皮膜となりやすいため、好ましくない。
具体的には、例えば[1−4−3]で後述する様に、金属アルコキシド溶液と基体蛍光体含有溶液を雰囲気温度0℃以上20℃以下で混合する方法を挙げることができる。
【0015】
[1−3−2]複数回処理
第二の本発明の蛍光体表面処理方法は、金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を2回以上行う。これにより、一旦形成された皮膜をさらにもう一層の別の皮膜で覆うことになり、強固な皮膜を構成することができる。また、第
一層の皮膜に生じたクラックが第二層の皮膜で覆われて、蛍光体に水分が浸入することを抑制することができる。処理回数は、好ましくは3回以上である。処理回数を増やすと皮膜の水分バリア性はその分増大するが、処理回数を重ねる毎に水分バリア性の改善積み上げは小さくなってくるため、5回以上処理しても手間の割に効果は少ない。
具体的には、例えば[1−4−6]で後述する様に、金属アルコキシド溶液と基体蛍光体含有溶液を混合し、洗浄、乾燥する工程を複数回繰り返す方法を挙げることができる。
【0016】
[1−4]処理条件
本発明の蛍光体表面処理方法は、前記の金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を含むものであれば、特に限定はないが、通常、以下の(i)〜(v)工程を経ることにより行なわれる。以下、各工程について詳述する。
(i)金属アルコキシド溶液(以下TAOM溶液と略する)を調製する工程
(ii)基体蛍光体含有溶液(以下PHOS溶液と略する)を調製する工程
(iii)前記(i)及び(ii)の工程で得られた溶液を混合する混合表面処理工程
(iv)洗浄工程
(v)乾燥工程
【0017】
[1−4−1](i)金属アルコキシド溶液(TAOM溶液)調製工程
金属アルコキシドを有機溶媒により希釈する。使用する有機溶媒としては、アルコール類、あるいはグリコール誘導体、エステル類、ケトン類、エーテル類等のうち1種、または2種以上を混合して使用することができる。
前記溶媒のうち、基体蛍光体への皮膜の付着性の観点から、アルコール類が好ましく、炭素数1〜4のアルコールがさらに好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノールが挙げられる。中でも、メタノール、エタノールが好ましい。溶媒の配合量は金属アルコキシド100重量部に対し200重量部以上、好ましくは400重量部以上である。
【0018】
溶媒の配合量が少なすぎると、基体蛍光体表面に充分な厚みの連続的な皮膜が得られない場合がある。即ち、TAOM溶液が高濃度となるため、後述する [1−4−2] の工程において、アンモニア水を含有するPHOS溶液に滴下した際、局所的にTAOM濃度が高くなり、基体蛍光体表面に到達する前に重合し、皮膜の代わりに専ら球状金属酸化物が生成する。
【0019】
[1−4−2](ii)基体蛍光体含有溶液(PHOS溶液)調製工程
基体蛍光体を有機溶媒と、加水分解に必要な水分及び必要に応じて加水分解促進用触媒を加えスラリーとする。有機溶媒としては上記金属アルコキシド溶液に使用したものがそのまま使用できる。また、金属アルコキシドの加水分解反応の触媒としては、例えばアンモニア水が使用できる。さらにスラリーの好適な例として、エタノールにアンモニア水を加えた溶液に基体蛍光体を分散させたものを使用できる。基体蛍光体は、反応溶液中で撹拌することにより充分に分散されれば添加量に制限はないが、特に比重や粒径が大きな基体蛍光体の場合は反応溶液中で沈降して皮膜形成反応が不均一になりやすいため、基体蛍光体の量を少なくして反応液中で良く分散させる必要がある。かかる観点より、基体蛍光体は全反応溶液に対し、通常1重量%以上、20重量%以下である。 また、加水分解用
触媒の割合にも特に制限はないが、反応溶液中で球状金属酸化物の生成を抑制して皮膜形成を活発にさせるためには、全反応溶液に対して5重量%以上、20%重量以下が好ましい。
【0020】
[1−4−3](iii)混合表面処理工程
前記(ii)工程で得られたPHOS溶液を基体蛍光体が沈降しないように十分撹拌しながら前記(i)工程で得られたTAOM溶液を所定の速度で滴下する。PHOS溶液の
撹拌速度は蛍光体の粒径分布及び密度により異なるが、容器の底部に沈殿が生じない速度で撹拌するのが好ましい。
TAOM溶液の添加速度は、速すぎると加水分解速度が高くなり過ぎ粒子が生成して皮膜が得られないため、添加は通常30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上かけて均等に行なうことが好ましい。
滴下時のPHOS溶液の液温は、各溶液が凝固しなければ低温であることが皮膜厚みを増やす上では好ましいが、あまりに低温であると局所的に金属酸化物が多く析出して不均一な表面皮膜となりやすいため、通常0℃以上、20℃以下、好ましくは10℃以下とする。また、用いる金属アルコキシドの使用量は処理される蛍光体の重量に対し、金属元素の量に換算して通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。金属アルコキシドの使用量が少なすぎると 皮膜
の形成が不充分になって皮膜の連続性が失われるため、充分な耐湿性が得られない場合がある。また、多すぎると 皮膜が厚くなりすぎてクラックが発生したり剥離が生じたりし
て皮膜の連続性が失われるため、充分な耐湿性が得られない場合がある。
【0021】
[1−4−4](iv)洗浄工程
前記(iii)工程で得られた混合溶液を静置し、皮膜とならなかった球状金属酸化物等を上澄み液ごと除去する。ついでアルコール類などの溶媒を添加し、撹拌後再度静置し、上澄み液を廃棄する。この洗浄作業を数回繰返した後、デカンテーション、ろ過または遠心分離などの方法により固液分離を行う。洗浄の繰返し回数は通常2回以上、好ましくは3回以上である。繰返し回数に制限はないが洗浄液が透明となればそれ以上洗浄工程繰り返す必要はない。
【0022】
[1−4−5](v)乾燥工程
(iv)で得られたケーキを加熱装置を有する真空乾燥機中で減圧乾燥を行う。例えば、
初期の30分は50℃に加熱し、ついで150℃に昇温し、2時間保持する方法が挙げられる。
[1−4−6]皮膜処理
得られた蛍光体の皮膜付着量が所望の量に達しない場合は、得られた蛍光体により、再度蛍光体含有溶液を調製し、上記(iii)工程以下を繰り返してもよい。
【0023】
特に、上述の[1−4−5]の乾燥工程において、皮膜の乾燥が速すぎると皮膜にクラックが入ることがあり、クラックから水分が侵入して蛍光体を劣化させるおそれがあるので、好ましくない。その場合、上述の[1−4−1]から[1−4−5]の工程を繰り返すことによって、一旦形成された皮膜をさらにもう一層の別の皮膜で覆うことができる。第一層の皮膜に生じたクラックが第二層の皮膜で覆われて、蛍光体に水分が浸入することを抑制することができる。この場合、第二層の皮膜にクラックができても構わない。第一層と第二層の皮膜が偶然に連通しない限り、クラックを通じた水分侵入は蛍光体にまで届かないからである。
【0024】
また、上述の[1−4−4]の洗浄工程の後に、上述の[1−4−1]から[1−4−5]の工程を行なうことによって、皮膜厚みを増加させ、蛍光体の耐湿性をさらに向上させることも可能である。
[2]蛍光体
第一の本発明の蛍光体は、上述の蛍光体表面処理方法より表面処理された蛍光体である(請求項3)。
第二の本発明の蛍光体は、金属酸化物皮膜を有する蛍光体であって、前記金属酸化物皮膜が下記(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とする蛍光体である(請求項4)。
(1)金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合してなるもので
あること
(2)透過型電子顕微鏡により実質的に連続性が観察されること、
(3)膜厚が1nm以上10000nm以下であること
(4)下記(i)〜(iii)による吸湿量測定試験により測定される吸湿増加率が5重量%以下であること
【0025】
[吸湿量測定試験]
(i)橙色蛍光体SrBaSiO:Eu(以下SBSと略称する。重量メジアン径D50=20±3μm)に任意の方法で前記金属酸化物皮膜を形成する。
(ii)温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で100時間放置する。
(iii)吸湿増加率(重量%)=(吸湿試験後重量−吸湿試験前重量)/(吸湿試験前重量)×100を測定する。
以下、各成分について詳述する。
【0026】
[2−1]基体蛍光体
第一および第二の本発明の蛍光体表面処理方法は、耐水性向上の観点から、水分と反応しやすい蛍光体に対してその効果が好適に発揮される。
[2−1−1]水分と反応しやすい蛍光体
本発明の蛍光体の母体となる蛍光体、すなわち基体蛍光体となる水分と反応しやすい蛍光体としては、無機蛍光体と有機蛍光体が挙げられる。
【0027】
無機蛍光体としては、例えば母体結晶としてMSiO、MS、MGa、MAlSiN、MSi、MSiからなる群(ただし、Mは、Ca,Sr,Baからなる群から選ばれる1種、または2種以上を表す)の少なくとも一つを含有し、かつ付活剤としてCr,Mn,Fe,Bi,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybの少なくとも一つを含有する蛍光体が挙げられる。
【0028】
上記蛍光体の具体例としては、たとえば、
BaSiO:Eu、(Sr1-aBaSiO:Eu、SrSiO:Eu

CaS:Eu、SrS:Eu、BaS:Eu、CaS:Ce、SrS:Ce、BaS:Ce、
CaGa:Eu、SrGa:Eu、BaGa:Eu、CaGa:Ce、SrGa:Ce、BaGa:Ce、
CaAlSiN:Eu、SrAlSiN:Eu、(Ca1-aSr)AlSiN
Eu、CaAlSiN:Ce、SrAlSiN:Ce、(Ca1-aSr)AlSi
:Ce、
CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、(Ca1-aSr)Si:Eu、CaSi:Ce、SrSi:Ce、B
Si:Ce、(Ca1-aSr)Si:Ce、
CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、CaSi:Ce、SrSi:Ce、BaSi:Ce
(以上に関し、aは0≦a≦1を満たす。)が挙げられる。
中でも、SrBaSiO:Eu、CaS、CaGa:Eu、SrGa:Eu、(Sr0.8Ca0.2)AlSiN:Eu、SrAlSiN:Euを好ましいものとして挙げることが出来る。
【0029】
[2−1−2]その他の蛍光体
また、水分と反応しやすい蛍光体以外にも、耐久性向上、分散性向上等、目的に応じてその他の蛍光体を基体蛍光体として用いることもできる。
かかる基体蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるY、ZnSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(
PO)Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化
物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが好ましい。
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物、YS等の酸硫化物、(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,C
a)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119
、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩、YSiO、ZnSiO等の珪酸塩、SnO、Y等の酸化物、GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩、Ca10(PO)(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl等のハロリン酸塩、Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0030】
ただし、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、基体蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる基体蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、構造の一部のみが異なる基体蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0031】
[2−1−2−1]橙色ないし赤色蛍光体
橙色ないし赤色の蛍光を発する基体蛍光体(以下適宜、「橙色ないし赤色蛍光体」とい
う。)としては、以下のものが挙げられる。橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常580nm以上、好ましくは585nm以上、また通常780nm以下、好ましくは700nm以下の波長範囲にあることが好適である。このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。 更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0032】
また、その他、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等の
Eu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY(SiO:Eu、Ca(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)SiNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−x−yScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0033】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0034】
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Mg)(PO:Sn2+等のSn付活リン酸塩蛍光体等が挙げられる。
以上例示した赤色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。 以上の例示の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce、(La,Y)S:Euが好ましく、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、(La,Y)S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)SiO:Euが好ましい。
【0035】
[2−1−2−2]緑色蛍光体
緑色の蛍光を発する基体蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という。)としては、以下
のものが挙げられる。緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常490nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは515nm以上、また、通常560nm以下、好ましく
は540nm以下、より好ましくは535nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0036】
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0037】
また、その他、緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Mg,Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi:Eu、MSi10:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0038】
[2−1−2−3]青色蛍光体
青色の蛍光を発する基体蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という。)としては以下の
ものが挙げられる。青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは470nm以下、より好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0039】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状
としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)(POCl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0040】
また、その他、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0041】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。 以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Ca,Mg)SiO:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Euが好ましく、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
【0042】
[2−1−2−4]黄色蛍光体
黄色の蛍光を発する基体蛍光体(以下適宜、「黄色蛍光体」という。)としては、以下
のものが挙げられる。黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
【0043】
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やM12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、C
a、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0044】
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。 また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G
(Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0045】
[2−1−3]基体蛍光体の物性
本発明の蛍光体に使用する基体蛍光体の粒径には特に制限はないが、中央粒径(D50)で通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。D50が小さすぎると、輝度が低下し、基体蛍光体粒子が凝集してしまう虞がある。一方、D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる虞がある。
【0046】
基体蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。また、基体蛍光体粒子の形状は、特に限定されない。
【0047】
なお、本発明において、中央粒径(D50)、粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から得ることが出来る。前記重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールなどの溶媒に蛍光体を分散させる。
レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定する。
この重量基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を中央粒径D50と表記する。また、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDが小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0048】
[2−2]金属酸化物皮膜
[2−2−1]組成
第一および第二の本発明の蛍光体は、金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させて得られた金属酸化物で被覆されていることを特徴とする。金属アルコキシドおよびその誘導体については、前述の[1−1]におけると同様である。
[2−2−2]皮膜の連続性
第一の本発明の蛍光体の好ましい形態および第二の本発明の蛍光体は、透過型電子顕微鏡により実質的に金属酸化物皮膜の連続性が観察されることが特徴である。
ここで、「実質的に連続性が観察される」とは、皮膜がほぼ完全に基体蛍光体を被覆している状態が観察されることを意味する。具体的には、以下の透過型電子顕微鏡による皮膜性状観察法により、皮膜が、切れ目がないかほとんど切れ目のない状態で基体蛍光体の周囲に観察されることにより確認することができる。
【0049】
〔透過型電子顕微鏡による皮膜性状観察法〕
蛍光体をエタノール中に分散させ、マイクログリッド(透過型電子顕微鏡(TEM)用穴あきカーボン膜を張ったメッシュ)上に滴下し、自然乾燥する。TEMによりマイクログリッド上の蛍光体の表面状態を観察する。使用するTEMは特に制限はないが、蛍光体を電子が透過せず、生成した皮膜が観測できる加速電圧にて観察する。
【0050】
[2−2−3]膜厚
第一の本発明の蛍光体の好ましい形態および第二の本発明の蛍光体は、金属酸化物皮膜の膜厚が通常1nm以上、好ましくは100nm以上、さらに好ましくは200nm以上であり、通常10000nm以下、好ましくは5000nm以下、さらに好ましくは2000nm以下である。また、前記金属酸化物皮膜の平均膜厚は、通常10nm以上、好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、通常2000nm以下、好ましくは1500nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。膜厚が厚すぎると励起光の反射・吸収などが起きる可能性があり、薄すぎると皮膜の連続性が損なわれ、耐湿性が不十分となるおそれがある。
【0051】
また、平均膜厚と局所的な膜厚が大きく異なる場合、即ち蛍光体皮膜の膜厚ムラが大きい場合は、膜厚の大きな部分に歪がかかってその部分が剥落するおそれがあるので、膜厚のバラツキが小さく、各所の膜厚と平均膜厚に大きな乖離がないことが好ましい。
金属酸化物皮膜の膜厚は、前述の透過型電子顕微鏡による皮膜性状観察法により観察される膜厚を測定することにより得られる。平均膜厚は、前述の透過型電子顕微鏡写真の画像解析等により、皮膜部分の平均値により得られる。
【0052】
[2−2−4]吸湿増加率
第一の本発明の蛍光体の好ましい形態および第二の本発明の蛍光体は、下記(i)〜(iii)による吸湿量測定試験により測定される金属酸化物皮膜の吸湿増加率が5重量%以下であることが特徴である。
[吸湿量測定試験]
(i)橙色蛍光体SrBaSiO:Eu(以下SBSと略称する。D50=20±3μm)に前記皮膜を形成する。
(ii)温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で100時間放置する。
(iii)吸湿増加率(重量%)=(吸湿試験後重量−吸湿試験前重量)/(吸湿試験前重量)×100を測定する。
吸湿増加率は、好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下である。また、通常1重量%以上である。吸湿増加率が多すぎると、基体蛍光体への吸湿抑制効果が弱く、長期的な耐候性を得ることができない。
【0053】
[2−2−5]金属酸化物の被覆量
本発明の蛍光体の金属酸化物の被覆量は、基体蛍光体の物性により異なるが、基体蛍光体に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。被覆量が少なすぎると皮膜の連続性が損なわれ、耐湿性が不十分となる場合がある。被覆量が多すぎると励起光の反射・吸収などが起きる場合がある。
【0054】
[2−2−6]分散性
また、本発明の蛍光体は、優れた分散性を有する。蛍光体の分散性は、後述する蛍光体含有組成物を構成する液状媒体中に充分分散させた後、静置し、透明な上澄み層の生成速度を測定することにより確認することができる。
後述する本発明の蛍光体含有組成物で半導体発光素子などを多数封止する場合に、封止
工程初期の製品と末期の製品で品質の変化を起こさないため、本発明の蛍光体は本試験の結果、沈降速度が遅いほど好ましい。6時間静置後に液面に無色透明な上澄み層が見られないことが好ましく、10時間静置後にも無色透明な上澄み層が見られないことがさらに好ましい。
【0055】
但し、液状媒体の粘度が高く測定に時間を要する場合は類似の骨格を持つ他の液状媒体でこの試験を代替することができる。例えば、液状媒体としてシリコーン樹脂を用いる場合は、その代替としてシリコーンオイルを用いて分散性を評価することもできる。本発明の蛍光体は、金属酸化物皮膜を形成しなかった基体蛍光体に比べて、封止樹脂よりなる蛍光体含有組成物中での沈降速度が小さくなるという特長を有することがある。その理由は必ずしも明らかではないが、比重の小さな金属酸化物皮膜で覆われることによって蛍光体粒子の平均比重が低下すること、表面皮膜の凹凸によって粘性液体中での沈降運動に対する抵抗が生ずること、などが推定される。
また、封止樹脂としてシリコーン系樹脂、金属酸化物皮膜としてシリカ皮膜を用いた場合は、シリコーンとシリカの濡れ性が良いため、シリカ皮膜蛍光体の分散性が向上するという効果も期待される。
【0056】
[3]蛍光体含有組成物
本発明の蛍光体含有組成物は前記の本発明の蛍光体を含有することを必須要件とする。
本発明の蛍光体含有組成物は、例えば以下に記載される様に、液状媒体、およびその他の任意成分を含有して構成される。
【0057】
[3−1]液状媒体
使用される液状媒体としては有機系材料と無機系材料が使用できる。
有機系材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。特に照明など大出力の発光装置が必要な場合、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用するのが好ましい。
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0058】
[3−1−1]シリコーン系材料
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば一般組成式(1)で表される化合物及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
(RSiO1/2M(RSiO2/2D(RSiO3/2T(SiO4/2Q
・・・式(1)
ここで、RからRは同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。またM、D、T及びQは0から1未満であり、M+D+T+Q=1を
満足する数である。
シリコーン系材料を半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
【0059】
[3−1−2]シリコーン系材料の種類
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0060】
[3−1−2−1]付加型シリコーン系材料
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0061】
[3−1−2−2]縮合型シリコーン系材料
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(1)及び/又は(2)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0062】
【化1】

【0063】
(式(1)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を
表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
【0064】
【化2】

【0065】
(式(2)中、
Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
また、硬化触媒としては、例えば金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば特願2006−47274号〜47277号明細書及び特願2006−176468号明細書に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
また、使用される液状媒体における無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、
セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0066】
[3−2]その他の成分
本発明の蛍光体含有組成物は、上記成分の他に、硬化剤、硬化促進剤、硬化触媒、重合抑制剤、色素、酸化防止剤、安定化剤(燐系加工安定化剤などの加工安定化剤、酸化安定化剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤などの耐光性安定化剤など)、シランカップリング剤、光拡散材、本発明に依らない蛍光体、フィラーなど、当該分野で公知の添加物のいずれをも用いることができる。
【0067】
[3−3]蛍光体含有組成物の製造方法
本発明の蛍光体含有組成物の製造法には特に制限はなく、本発明の蛍光体および必要に応じて添加する添加物が液状媒体中に均一に分散する方法であれば良い。
液状樹脂中に均一に分散する方法としては、従来公知の方法およびその改良された方法が挙げられる。具体的には、例えば以下の方法が挙げられる。即ち、液状樹脂、蛍光体ならびにシリカ微粒子等のフィラー、架橋剤、硬化触媒およびその他の添加剤を配合し、ミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、ニーダー等で混合することができる。この場合、前記成分を全て混合して、1液の形態として液状樹脂組成物を製造することができる。また、(i)液状樹脂と蛍光体を主成分とする樹脂組成物と、(ii)架橋剤と硬化触媒を主成分とする架橋剤液の2液を調製しておき、使用直前に樹脂組成物と架橋剤液を混合して最終的な液状樹脂組成物を製造しても良い。
【0068】
本発明の蛍光体の配合量は通常、液状樹脂100重量部に対して通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上である。また、通常100重量部以下、好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。蛍光体の配合量が少なすぎると、望みの色の発光量が不十分であり、多すぎるとコストがかかり経済面で不利である。
【0069】
[3−4]蛍光体含有組成物の物性
[3−4−1]粘度
本発明の蛍光体含有組成物の粘度は、通常500mPa・s以上、好ましくは1000mPa・s以上、さらに好ましくは2000mPa・s以上であり、通常15000mPa・s以下、10000mPa・s以下、好ましくは8000mPa・s以下である。粘度が高すぎると注入時に配管の閉塞などトラブルの原因となりやすく、また気泡が抜けにくい、更には半導体素子のリードワイヤーの断線が起こりやすいなどの悪影響をもたらす。一方、粘度が低すぎると蛍光体粒子の沈降が起こるので好ましくない。
【0070】
[3−4−2]硬化
本発明の蛍光体含有組成物が上述のように液状の場合、半導体発光素子などを配置した基板上に液状組成物を注入・充填・滴下・塗布などを行なうことによって発光素子を液状組成物で覆った後、加熱・光照射・加湿などによって組成物を硬化させることによって、発光素子を固相の蛍光体含有封止層で封止した構造とすることができる。
また、液状の蛍光体含有組成物を先にフィルム状・シート状に硬化・成型した後、発光素子などを覆うように配置することによって発光素子を封止した構造とすることもできる。
蛍光体含有組成物の硬化物を、半田リフロー試験で例えば260℃の高熱に曝したり、温度サイクル試験で例えば100℃の高温と−50℃の低温を往復させたりした場合、蛍光体と封止樹脂との間に剥離が生じて蛍光体が発する蛍光の取り出し効率が損なわれるおそれがあるが、本発明で封止樹脂としてシリコーン樹脂を用い、蛍光体表面皮膜をシリカ
皮膜とした場合には、シリコーン樹脂とシリカ皮膜のなじみが良いため、表面皮膜を持たない蛍光体を用いた場合に比べて界面剥離の発生が抑制され、半田リフロー耐性や温度サイクル耐性に優れた蛍光体含有封止層となることが期待される。
【0071】
[4]発光装置
本発明の発光装置は、[3]に記載の蛍光体含有組成物を用いて、公知の方法により形成される。以下、本発明の発光装置について説明する。
[4−1]光源
本発明の発光装置における光源は、前記[2]の蛍光体を励起する光を発光するものである。光源の発光波長は、発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光体が使用される。この光源としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(LED)や半導体レーザーダイオード(LD)等が使用できる。
【0072】
中でも、光源としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、同じ電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlxGayN発光層、GaN発光層、又はInxGayN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInxGayN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InxGayN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0073】
なお、上記においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlxGayN層、GaN層、又はInxGayN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0074】
[4−2]蛍光体の選択
本発明の発光装置において、前述の蛍光体(本発明に依る赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体等、ならびに必要に応じて本発明に依らない蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、1種以上の蛍光体を適切に組み合わせればよい。光源として青色発光素子を使用する場合は蛍光体として青色の補色関係にある黄色蛍光体を、より演色性の高い白色を得るには赤、及び緑色蛍光体を使用することが好ましい。近紫外光を発する半導体発光素子を用いる場合は赤、緑、青の3色の蛍光体を使用するのが好ましい。
【0075】
具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、光源と、蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、以下の(i)〜(iii)の組み合わせ
が挙げられる。
(i)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体および
緑色蛍光体を使用する。
(ii)光源として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、蛍光体として赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を併用する。
(iii)光源として青色発光体(青色LED等)を使用し、橙色蛍光体および緑色蛍光体
を使用する。
【0076】
[4−3]発光装置の構成
本発明の発光装置は、上述の光源および本発明の蛍光体含有組成物を備えていればよく、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の光源および蛍光体含有組成物を配置してなる。蛍光体含有組成物が液状の場合には、光源を配置した基板に液状蛍光体組成物を注入・充填・滴下・塗布し、その後で加熱もしくは光照射などによって組成物を硬化させることにより、光源を硬化物で封止した構造とすることができる。蛍光体含有組成物が固相である場合には、フィルム状・シート状に成型して光源を覆うように配することによって、光源を封止した構造とすることができる。この際、光源の発光によって蛍光体が励起されて発光を生じ、且つ、この光源の発光および/または蛍光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、赤色蛍光体は、緑色蛍光体、青色蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、赤色蛍光体を含有する層の上に青色蛍光体と緑色蛍光体を含有する層が積層されていてもよい。
【0077】
[4−4]発光装置の実施形態
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置1は、フレーム2と、光源である青色LED3と、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し、それとは異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4からなる。
フレーム2は、青色LED3、蛍光体含有部4を保持するための金属製の基部である。フレーム2の上面には、図1中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成されている。これにより、フレーム2はカップ形状となっているため、発光装置1から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。更に、フレーム2の凹部2A内面は、銀などの金属メッキにより、可視光域全般の光の反射率を高められており、これにより、フレーム2の凹部2A内面に当たった光も、発光装置1から所定方向に向けて放出できるようになっている。
【0078】
フレーム2の凹部2Aの底部には、光源として青色LED3が設置されている。青色LED3は、電力を供給されることにより青色の光を発するLEDである。この青色LED3から発せられた青色光の一部は、蛍光体含有部4内の発光物質(蛍光体)に励起光として吸収され、また別の一部は、発光装置1から所定方向に向けて放出されるようになっている。
【0079】
また、青色LED3は前記のようにフレーム2の凹部2Aの底部に設置されているが、ここではフレーム2と青色LED3との間は銀ペースト(接着剤に銀粒子を混合したもの)5によって接着され、これにより、青色LED3はフレーム2に設置されている。更に、この銀ペースト5は、青色LED3で発生した熱をフレーム2に効率よく放熱する役割も果たしている。
【0080】
更に、フレーム2には、青色LED3に電力を供給するための金製のワイヤ6が取り付けられている。つまり、青色LED3の上面に設けられた電極(図示省略)とは、ワイヤ
6を用いてワイヤボンディングによって結線されていて、このワイヤ6を通電することによって青色LED3に電力が供給され、青色LED3が青色光を発するようになっている。なお、ワイヤ6は青色LED3の構造にあわせて1本又は複数本が取り付けられる。
【0081】
更に、フレーム2の凹部2Aには、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4が設けられている。蛍光体含有部4は、本発明の蛍光体含有組成物で形成されている。蛍光体は、青色LED3が発する青色光により励起されて、青色光よりも長波長の光である光を発する物質である。蛍光体含有部4を構成する蛍光体は一種類であっても良いし、複数からなる混合物であってもよく、青色LED3の発する光と蛍光体発光部4の発する光の総和が所望の色になるように選べばよい。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と白色との間の中間的な色であっても良い。
【0082】
モールド部7は、青色LED3、蛍光体含有部4、ワイヤ6などを外部から保護するとともに、配光特性を制御するためのレンズとしての機能を持つ。モールド部7には主にエポキシ樹脂を用いることができる。
図2は、図1に示す発光装置1を組み込んだ面発光照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。図2において、8は面発光照明装置、9は拡散板、10は保持ケースである。
【0083】
この面発光照明装置8は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース10の底面に、多数の発光装置1を、その外側に発光装置1の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置したものである。発光の均一化のために、保持ケース10の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板9を固定している。
そして、面発光照明装置8を駆動して、発光装置1の青色LED3に電圧を印加することにより青色光等を発光させる。その発光の一部を、蛍光体含有部4において波長変換材料である本発明の蛍光体と必要に応じて添加した別の蛍光体が吸収し、より長波長の光に変換し、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により、高輝度の発光が得られる。この光が拡散板9を透過して、図面上方に出射され、保持ケース10の拡散板9面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0084】
また、本発明の発光装置において、特に励起光源として面発光型のものを使用する場合、蛍光体含有部を膜状とするのが好ましい。即ち、面発光型の発光体からの光は断面積が十分大きいので、蛍光体含有部をその断面の方向に膜状とすると、第1の発光体からの蛍光体への照射断面積が蛍光体単位量あたり大きくなるので、蛍光体からの発光の強度をより大きくすることができる。
【0085】
また、光源として面発光型のものを使用し、蛍光体含有部として膜状のものを用いる場合、光源の発光面に、直接膜状の蛍光体含有部を接触させた形状とするのが好ましい。ここでいう接触とは、光源と蛍光体含有部とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、光源からの光が蛍光体含有部の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0086】
図3は、このように、光源として面発光型のものを用い、蛍光体含有部として膜状のものを適用した発光装置の一例を示す模式的斜視図である。図3中、11は、前記蛍光体を有する膜状の蛍光体含有部、12は光源としての面発光型GaN系LD、13は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、光源12のLDと蛍光体含有部11とそれぞれ別個につくっておいてそれらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、光源12の発光面上に蛍光体含有部11を製膜(成型)させても良い。これらの結果
、光源12と第2の蛍光体含有部11とを接触した状態とすることができる。
【0087】
[4−5]発光装置の用途
本発明の発光装置は使用する蛍光体の種類、量により各色の発光が可能であるが照明用途などは、白色光を発するもの発光装置が有用である。本発明の発光装置は、白色光を発する場合には、発光効率(JISZ8113)が通常20lm/W以上、好ましくは22lm/W以上、より好ましくは25lm/W以上であり、特に好ましくは28lm/W以上であり、平均演色評価指数(JISZ8726)Raが80以上、好ましくは85以上、より好ましくは88以上である。
【0088】
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。また、単独で、又は複数個を組み合わせて用いても良い。具体的には、例えば、照明ランプ、液晶パネル用等のバックライト、超薄型照明等の種々の照明装置、画像表示装置の光源として使用することができる。なお、本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、カラーフィルターと併用してもよい。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[1]表面処理方法
[1−1]使用材料
表面処理を行なう基体蛍光体として、橙色蛍光体SrBaSiO:Eu(D50=21μm)(以下、「SBS」と表記する)を使用した。この蛍光体は、原料化合物としてSrCO、BaCO、SiO、EuをSr:Ba:Si:Eu=1.98:1:1:0.02の比率となるように秤量し、メノウ乳鉢でエタノールとともに粉砕混合を行い、エタノールを気化して除去した後、得られた混合物を錠剤に成型して、モリブデン箔上で水素3%混合した窒素雰囲気中1450℃・6時間加熱することにより反応させ、引き続いて粉砕処理を行なうことにより粉末として得た。
テトラエトキシシラン(以下、「TEOS」と表記する)は東京化成社製、純度95%以上を使用した。
エタノールはキシダ化学社製、特級純度99.5%を使用した。
アンモニア水はキシダ化学社製、特級純度28%を使用した。
【0090】
[1−2]表面処理操作(実施例1、2、及び比較例1、2)
[1−2−1]実施例1(温度5℃で表面処理を行なった。)
金属アルコキシドとしてTEOSを用いた。
500mLフラスコにTEOS50g とエタノール224g を入れて均一に混合して金属アルコキシド溶液(TAOM溶液)を調製した。
ジャケット付きの1Lセパラブルフラスコにエタノール 310g 、アンモニア水 1
00g を入れて均一に混合した後、SBS粉末を 50g 投入して基体蛍光体含有溶液(PHOS溶液)を調製した。
【0091】
セパラブルフラスコのジャケットには温度調節された冷却水を流して反応溶液の温度を5℃で一定に保ち、SBS粉末が沈降しないように、モーター付きの撹拌羽根でPHOS溶液を激しく撹拌してSBS粉末を舞い上げながら、そこにTAOM溶液を定量ポンプで約4時間かけて滴下した。
TAOM溶液の滴下が終了した後、反応溶液を静置して橙色蛍光体が沈降してから、シリカ微粒子で白濁した液相をデカンテーションで除去した。その後500mL のエタノ
ールを加え、軽く撹拌した後静置して、白濁の残る液層をデカンテーションで除去した。このエタノール洗浄を、液層が無色透明になるまで4回繰り返し、セパラブルフラスコご
と50℃、30分間の減圧乾燥を行い、その後150℃、2時間の減圧乾燥を行い、表面シリカコートされたSBS蛍光体粉末を得た。
【0092】
[1−2−2]実施例2(温度15℃で表面処理を行なった。)
反応溶液の温度を15℃とした以外は実施例1と同じ方法でSBSの表面処理を行なった。
[1−2−3]実施例3(温度5℃の表面処理を2回で表面処理を行なった。)
実施例1で作製した表面処理SBS蛍光体を原料として、再度、実施例1の表面処理操作を行なった。
[1−2−4]比較例1(SBSに表面処理は行なわなかった。)
基体SBS蛍光体に表面処理を行なわず、そのまま試験に供した。
[1−2−5]比較例2(温度25℃で表面処理を行なった。)
反応溶液の温度を25℃とした以外は実施例1と同じ方法でSBSの表面処理を行なった。
【0093】
[2]特性試験方法
実施例1、2、3及び比較例1、2を以下の分析、及び評価に供した。
[2−1]透過型電子顕微鏡による観察
蛍光体をエタノール中に分散させ、マイクログリッド(透過型電子顕微鏡(TEM)用穴あきカーボン膜を張ったメッシュ)上に滴下し、自然乾燥した。TEM(日立製作所製「H−9000UHR」)を使用し、加速電圧300kVにて観察した。
結果を表1に示す。
図4に実施例3の、図5に比較例2のTEM写真を示す。
また、参考のため図6に実施例3の、図7に比較例2の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
[2−2]蛍光体吸湿試験
実施例1、2、3及び比較例1、2の蛍光体を60℃、相対湿度90%で保持し、所定時間後の蛍光体の重量増加を測定した。
結果を表1に示す。
【0094】
[3]結果
表1に示す結果から次のことが明らかとなった。
(A)透過型電子顕微鏡を用いる方法により、実質的に連続性が観察される層を有し、膜厚1nm以上10000nm以下であり、金属アルコキシドを加水分解してなる金属酸化物皮膜であって、下記(i)〜(iii)による吸湿量測定試験により測定される吸湿増加率が5重量%以下である皮膜を有する蛍光体の吸湿速度が小さいことがわかった。
【0095】
[吸湿量測定試験]
(i)橙色蛍光体SrBaSiO:Eu(以下SBSと略称する。重量メジアン径D50=20±3μm)に前記皮膜を形成する。
(ii)温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で100時間放置する。
(iii)吸湿増加率(重量%)=(吸湿試験後重量−吸湿試験前重量)/(吸湿試験前重量)×100を測定する。
(B)0℃以上20℃以下で金属アルコキシドを加水分解させる工程を含む蛍光体表面処理方法により得られた蛍光体は吸湿速度が小さいことがわかった。
(C)金属アルコキシドを加水分解させる工程を2回以上含む蛍光体表面処理方法により得られた蛍光体は吸湿速度が小さいことがわかった。
【0096】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の蛍光体表面処理方法、および蛍光体は、下記の点で極めて優れた効果を奏する点で、産業上の利用可能性が極めて高い。
(i)本発明の蛍光体の母体となる表面処理前の蛍光体(以後、基体蛍光体と呼ぶことがある)の耐湿性等の耐候性を一層向上させることができる。
(ii)発光装置の蛍光体含有樹脂部における樹脂に対する分散性を基体蛍光体に比べて向上させることができる。
【0098】
また、本発明の蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置、および照明装置は、前記蛍光体を用いているので、長期的な耐光性に優れ、高品質であるため、当該各分野における産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の発光装置を用いた面発光照明装置の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の発光装置の他の実施の形態を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明の表面処理を行った蛍光体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明とは異なる表面処理を行なった蛍光体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の表面処理を行った蛍光体の走査電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明とは異なる表面処理を行なった蛍光体の走査電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0100】
1 発光装置
2 フレーム
2A フレームの凹部
3 青色LED(第1の発光体)
4 蛍光体含有部(第2の発光体)
5 銀ペースト
6 ワイヤ
7 モールド部
8 面発光照明装置
9 拡散板
10 保持ケース
11 蛍光体含有部
12 光源
13 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気温度0℃以上20℃以下で金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を含むことを特徴とする蛍光体表面処理方法。
【請求項2】
金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合させる工程を2回以上含むことを特徴とする蛍光体表面処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光体表面処理方法より表面処理された蛍光体。
【請求項4】
金属酸化物皮膜を有する蛍光体であって、前記金属酸化物皮膜が下記(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とする蛍光体。
(1)金属アルコキシドおよび/またはその誘導体を加水分解、脱水重合してなるものであること
(2)透過型電子顕微鏡により実質的に連続性が観察されること、
(3)膜厚が1nm以上10000nm以下であること
(4)下記(i)〜(iii)による吸湿量測定試験により測定される吸湿増加率が5重量%以下であること
[吸湿量測定試験]
(i)橙色蛍光体SrBaSiO:Eu(以下SBSと略称する。重量メジアン径D50=20±3μm)に任意の方法で前記金属酸化物皮膜を形成する。
(ii)温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で100時間放置する。
(iii)吸湿増加率(重量%)=(吸湿試験後重量−吸湿試験前重量)/(吸湿試験前重量)×100を測定する。
【請求項5】
請求項3または4に記載の蛍光体を含有する蛍光体含有組成物。
【請求項6】
請求項3または4に記載の蛍光体を用いた発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置を用いた画像表示装置。
【請求項8】
請求項6に記載の発光装置を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−111080(P2008−111080A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296239(P2006−296239)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】