説明

蛍光検出系を含む硬化性シリコーン組成物

本発明は、検出目的のための蛍光剤を含み、シリコーン組成物に改善された硬化深度を持たせることを可能とする硬化系を有する硬化性シリコーン組成物に関する。このシリコーン組成物は光硬化性であり、また水分または加熱硬化性であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性シリコーン組成物に関する。さらに具体的に言えば、本発明は、改善された硬化深度を有し、蛍光剤検出系を含む硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シーラント、ガスケット、絶縁保護コーティング、ポッティングコンパウンド、カプセル化材等として使用されてもよい様々なシリコーン組成物が開発されている。創り出された多数のシリコーン組成物の中の幾つかは、これらの硬化のためには大気湿度および/または組成物が適用される基体上に存在する水分に依存する。そのような水分硬化性シリコーン系は、良好な物性および完全に硬化した場合の機能を与えることができるが、これらは、水分硬化作用が相対的に遅いと言う不利益を有している。
【0003】
そこで、水分硬化作用を受けるものよりも著しく速いその他の硬化作用によるシリコーン組成物が開発された。特に、通常の水分硬化性シリコーンに対してはるかに優れた速い硬化速度を与える光硬化性(例えば、UV硬化性)シリコーンが開発された。これらのシリコーン組成物は、速くてさらに有効な硬化を与える光開始剤を含んでいてもよい。水分硬化性と光硬化性のいずれでもあるシリコーン組成物は、また迅速な硬化を与えるものとして開発されている。これらの例は、全てが参照として本明細書に組み込まれるチュー等(Chu et al.)に対する米国特許第5663269号、第5516812号、第5498642号および第5348986号、デカト等(DeCato et al.)に対する米国特許第6451870号、レバンドスキー等(Levandoski et al.)に対する米国特許第6140444号、リーン等(Lien et al.)に対する米国特許第4528081号、およびナコス等(Nakos et al.)に対する米国特許第4699802号を含むヘンケル社(Hekel Corporation)に譲渡された幾つかの特許に記載されている。
【0004】
硬化速度に加えて、硬化浸透深度(CTD)、また時に硬化浸透体積(CTV)とも称される硬化浸透深度は、多数の用途に対して重要な特性である。通常の光および/または二元硬化性シリコーンは限定された硬化深度を示すに過ぎない。多くのシリコーン組成物、特に光硬化性シリコーン組成物は、5〜8mmを超える深度で完全に硬化することができない。多くの用途、例えば、電子部品のポッティングおよび間隙充填は、相対的に大きな深度または体積で効果的に硬化することのできる組成物を必要とする。
【0005】
様々な異なる光開始剤はシリコーンを硬化するのに有用であることが一般的に知られているが、CTDの実質的な増加を生み出したことが知られているのは1つだけである。その1つは、アシルホスフィンオキシドおよび少なくとも1つの極性キャリヤーを含むプレミックスを含む光硬化性シリコーン組成物を開示するリン等(Lin et al.)に対する米国特許第6627672号において開示されているものである。この特許は、また、光/水分硬化性シリコーン、アシルホスフィンオキシドを含む第1の光開始剤と、第1の光開始剤とは異なる第2の光開始剤および少なくとも1つの極性溶剤を含むプレミックスとを含む光/水分・二元硬化性シリコーン組成物を開示している。
【0006】
重合性シリコーン組成物は、硬化した場合、殆ど澄んでいて透明である。その結果、硬化した組成物を見ることが難しい場合がある。したがって、シリコーンの存在または適用範囲の量は、確かめることおよび/または補正することが難しい。
【0007】
様々な作用剤が一般的に検出の目的のためにポリマー系に含まれている。蛍光剤は、硬化したフィルムの検査および同定、ならびに製品上の組成物の適切なコーティングを確実にするための非破壊的な方法を提供するために硬化性組成物中に含まれている。例えば、キャンター(Cantor)に対する米国特許第6080450号は、蛍光剤を含む重合性アクリレート配合物を開示している。また、染料および顔料も、硬化性樹脂に対する可視同定手段を与えるために使用される知られている作用剤である。しかしながら、そのような作用剤は、これらが、重合を開始するための光の能力を損なうので光硬化性樹脂では必ずしも有用ではない。さらに、蛍光剤は、重合にとって必要とされる光を吸収するので光硬化性組成物での硬化深度を減少させることが知られている。その結果、光硬化性シリコーン樹脂は蛍光剤を含んでいなかった。さらに、高深度光硬化性シリコーンは蛍光剤の導入により特に妨害されることが予想される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、改善されたCTDを有し、蛍光剤の導入により、硬化したポリマーの検出を可能にする光硬化性シリコーンに対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光、水分または光と水分の組合せを使用して硬化することができる硬化性シリコーン組成物を提供する。場合により、組成物の硬化を促進または開始するために加熱もまた、単独でまたは光および/または水分に加えて使用してもよい。本発明の組成物は、蛍光検出剤および硬化系を含み、この組合せは、蛍光により簡単に検出ができ、大きな深度まで浸透し硬化する能力を有する硬化生成物を提供する。好ましくは、シリコーンポリマー組成物は可視光線および紫外線(UV)条件のいずれでも光硬化可能であり、有利には、硬化の選択肢を増し、更なる適用の選択を与えるための水分硬化性基を含んでもよい。
【0010】
主に、硬化のために必要な光が組成物の全深度に浸透することが困難なため、CTDは、光硬化性シリコーン組成物に関する古くからの課題であった。不完全な硬化は機能性に影響を及ぼし、一般に望ましくない。光硬化系と競合する作用剤、例えば、蛍光剤等の導入は、蛍光剤の存在により硬化能、特に商業的に許容される深度での硬化能がさらに阻害されると予想されるので慣行に反すると思われる。本発明は、溶剤と組み合わせて固体光開始剤をさらに含むことによりこの難点を解消する。この組合せは、高深度で完全に光硬化する能力を有する検出可能なシリコーン組成物を提供する。
【0011】
本発明の1つの態様においては、硬化性シリコーン組成物、光開始剤および蛍光染料が含まれる。光開始剤は、可視およびUV光線の範囲のいずれでも有用であってもよい。光開始剤は固体光開始剤であってもよく、組成物中へのその導入を促進するための溶剤を含んでもよい。
【0012】
本発明のその他の態様においては、a)光硬化性シリコーン樹脂と、b)固体光開始剤と、c)固体光開始剤のための非極性溶剤とを含む硬化性シリコーン組成物が提供される。また、組成物は蛍光染料を含んでもよい。
【0013】
その他の態様においては、本発明は、a)硬化性シリコーン樹脂、b)固体光開始剤を含む硬化系、および蛍光染料とを含む硬化性シリコーン組成物に関する。この組成物は、光開始剤のための溶剤をさらに含んでもよい。
【0014】
本発明の更なる態様は、a)硬化性シリコーン樹脂を用意する工程、およびb)硬化性シリコーン樹脂を、i)固体光開始剤を含む硬化系およびii)蛍光染料と混合する工程とを含む光硬化性シリコーン組成物を調製する方法に関する。
【0015】
本発明の更なるその他の態様は、a)光硬化性シリコーン樹脂の反応生成物と、b)固体光開始剤および固体光開始剤のための溶剤のプレミックスを含む硬化系と蛍光染料とを含むシリコーン組成物に関する。好ましくは、溶剤は本明細書の後で言及される非極性溶剤であってもよい。
【0016】
その他の態様においては、シリコーン組成物の存在を検出するための方法は、基体上に本発明のシリコーン組成物を用意する工程、シリコーン組成物の光硬化を引き起すことなしに蛍光剤による光学的応答を誘発するための適当な波長の光にシリコーン組成物を曝露する工程、およびシリコーン組成物の存在の表示としてその後の蛍光発光を観察する工程を含む。波長の選択および光の曝露の時間の量は、蛍光剤が吸収、反射、さもなければ蛍光発光の形態における光学的応答を誘発する原因となることができる様に選択することができる。組成物が未だ硬化していない場合には、これは、観察者に、基体上の組成物の意図した範囲の検出、検証および/または変更を可能とする。
【0017】
本発明のその他の態様においては、本発明によるシリコーン組成物を用意する工程、光学的応答、例えば蛍光剤による蛍光色発光等を誘発するのに十分な光の波長に組成物を曝露する工程およびシリコーン組成物の存在を検出するために光学的応答を観察する工程を含むシリコーン組成物の存在を検出するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
組成物
本発明のシリコーン樹脂成分は、当業者に知られている任意の適当な光硬化性シリコーンポリマーであってもよい。1つの態様においては、シリコーン樹脂成分は、メタクリルオキシ、アクリルオキシ、ビニル、およびこれらの組合せから選択されるフリーラジカル硬化性基を有するシリコーンポリマーを含む。
【0019】
シリコーン樹脂成分としては、参照として組み込まれる特許において上で言及されたシリコーンポリマー、例えば一般式:
【0020】
【化1】

(式中、Aは、ポリウレタン、シリコーン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル等の任意の数の組合せであることのできるポリマーまたはコポリマーバックボーンを表し、RおよびRは同じかまたは異なっていてもよい、10個までの炭素原子を有する1価の炭化水素基、またはハロもしくはシアノ置換炭化水素基であり、RおよびRは同じかまたは異なる1価の基であってよく、エチレン性不飽和重合性二重結合を含んでいてもよく、Rはメチル、エチル、イソプロピルまたは−CHCHOCHであり、aは0、1または2であり、a+bは1または2であり、Rは1価の炭化水素基または
【0021】
【化2】

である)等の内に入るものを挙げることができる。
【0022】
望ましくは、シリコーンは水分硬化性能および光硬化性能の両方を有するものである。そのような好ましいシリコーンは、式:
【0023】
【化3】

(式中、MAはメタクリルオキシアルキル基(例えばメタクリルオキシプロピル等)であり、RおよびRは上述の通りであり、nは1〜1,200である)に一致するものであってもよい。
【0024】
1つの態様においては、シリコーンポリマーは、アルコキシ、アセトキシ、エノールオキシ、アリールオキシ、オキシム、アミノ、N,N−ジアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノキシ、N−アルキルアミド、およびこれらの組合せの1つまたは複数からなる群から選択される水分硬化性基を含む。
【0025】
したがって、本発明の組成物は、また、硬化速度をさらに増大または調節するために水分硬化性触媒を含んでいてもよい。水分硬化性触媒の非限定的な例としては、チタン、スズまたはジルコニウム等の金属化合物が挙げられる。水分触媒は硬化するのに有効な量で使用され、この量は一般に約0.05〜約5重量%、好ましくは約0.1〜約2.5%である。オクタン酸スズ、チタン酸テトライソプロポキシおよびチタン酸テトラブトキシが特に好ましい。米国特許第4111890号は、有用なものとして多数のその他の水分硬化性触媒を挙げている。
【0026】
硬化性シリコーン成分は様々な方法で作製することができるが、1つの好ましい方法は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5663269号で言及されている方法である。
【0027】
本発明の固体光開始剤成分は、当業者に知られている任意の適当な固体光開始剤であってよい。適当な固体光開始剤としては、UV光開始剤、可視光線光開始剤、およびこれらの組合せが挙げられる。好ましくは、光開始剤はアシルホスフィンオキシド光開始剤である。アシルホスフィンオキシドは、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、例えばジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、またはこれらの組合せであってもよい。好ましい態様においては、固体光開始剤はジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシドである。
【0028】
固体光開始剤は、固体光開始剤とは異なる第2の光開始剤と組み合わせてもよい。第2の光開始剤は、UVまたは可視光線光開始剤であってもよく、ベンゾフェノン、アセトフェノン、置換アセトフェノン、ベンゾインおよびこのアルキルエステル、キサントン、置換キサントン、ショウノウキノンペルオキシエステル開始剤、9−フルオレンカルボン酸ペルオキシエステル開始剤、イソプロピルチオキサントン等のアルキルチオキサントン、およびこれらの組合せを含む様々な知られている光開始剤から選択されてもよい。
【0029】
第2の光開始剤として有用な具体的な光開始剤としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、アルファ,アルファ−ジメトキシ−アルファ−ヒドロキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチル−カルバゾール、4、4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルベンゼンメタンアルミニウムクロライド、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよびこれらの組合せが挙げられる。好ましくは、第2の光開始剤は2,2−ジエトキシアセトフェノンである。
【0030】
本発明の溶剤成分は、固体光開始剤とシリコーン樹脂成分との相溶性を促進するのに役立つ。例えば、ホスフィンオキシドは、殆どシリコーンに溶けずまたは混和せず、したがって、そのような組成物には一般に有用ではない。存在する多数のメタクリル含有基を有するシリコーン組成物では溶解性および/または混和性は増加するが、そのような場合でも比較的少量のホスフィンオキシドに対してだけである。多くの市販のシリコーン組成物は、商業的に生き残ることのできる製品を与えるために十分なホスフィンオキシドとの相溶性を可能にするために十分なメタクリル含有量をこれらのポリマー構造の一部として有していない。溶剤は広範囲の溶剤から選択されてもよく、硬化性シリコーンと非反応性または反応性であってもよい。本発明の1つの態様においては、溶剤は、非極性、例えばシラン等、液体光開始剤、またはこれらの組合せである。例えば、1つの望ましい非極性溶剤の部類は液体UV光開始剤、例えばN,N−ジエトキシアセトフェノン等、またはシラン、例えばビニルトリメトキシシラン等である。
【0031】
固体光開始剤のためのその他の有用な溶剤としては、その開示が参照として本明細書に組み込まれるリン等(Lin et al.)に対する米国特許第6627672B1号に記載されているものが挙げられる。米国特許第6627672B1号における溶剤は極性溶剤として記載されている。
【0032】
溶剤は、ホスフィンオキシド単独にまたは第2の光開始剤との組合せに対して反応性シリコーンとの相溶性を付与するのに十分な量、即ち完全にまたは実質的に完全に安定な均質組成物中に混和できるのに十分な量で存在する。
【0033】
溶剤または分散体中の光開始剤の組合せは、得られる組成物の均一性および混和性を促進するために、反応性シリコーンに対してプレミックスとして添加するのが望ましい。したがって、その他の態様においては、本発明は、硬化性シリコーンと、液体光開始剤に溶解したまたは分散した固体光開始剤を含む硬化系と、蛍光剤とを含む硬化性シリコーン組成物に関し、硬化性シリコーンポリマー、固体光開始剤、液体光開始剤および蛍光剤は本明細書において言及された通りのものである。
【0034】
その他の態様においては、本発明は、a)上述のシリコーンポリマーと、b)固体光開始剤および固体光開始剤のための溶剤を含む硬化系とを含む、硬化性シリコーン組成物の反応生成物に関する。有利には、溶剤は液体光開始剤、シラン、およびこれらの組合せから選択される。固体光開始剤のための溶剤として有用な液体光開始剤およびシランは上で検討されたものである。
【0035】
有利には、本発明の組成物はCTDを約50mm(ミリメーター)までとすることができる。さらに好ましくは、CTD範囲は約30mmまでである。13mm〜50mmのCTDは特に有用であり多くの用途に適応することが分かった。配合物は高強度のまたは長期間の硬化性の光に曝露した場合に大きな深度まで硬化する。配合物は様々な装置を使用して光硬化することができる。例えば、水銀アークランプ、ハロゲン化金属、UVA、UVB、UVCで高強度の光を発するフュージョンH、フュージョンDまたはフュージョンV電球および可視光線領域を使用することが有効である。有用なUV光線の波長例は、200nm〜400nmの範囲であってもよく、これに対して有用な可視光線の波長の例は400nm〜500nmの範囲であってもよい。一般的な光硬化性は、例えば、UV光線では365nmでまたは可視光線源では405nmで測定して、70mW/cmの強度で約60秒の期間で発生されてもよい。硬化条件の選択は変動してもよい。時間および強度、加えて選択される波長は、選択される組成物、深度および適用のタイプで変動してもよい。一般的に、5秒〜分の硬化時間の期間として約20〜180mW/cmの強度が実用的である。
【0036】
成分の量は所望の用途によって変動してもよい。一般的に、固体光開始剤の量は全組成物の約0.01重量%〜約1.0重量%の範囲であってもよい。非極性溶剤は全組成物の約0.5重量%〜約40重量%、好ましくは全組成物の約0.5重量%〜約25重量%、なおさらに好ましくは全組成物の約0.5重量%〜約10重量%の範囲で存在してもよい。
【0037】
可視光線光開始剤も本発明の組成物に含まれてもよい。可視光線光開始剤としては、カンファーキノンペルオキシエステル開始剤、9−フルオレンカルボン酸ペルオキシエステル開始剤およびアルキルチオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントンが挙げられる。
【0038】
本発明の組成物は、望ましくは、適当な波長の光に曝露した場合に輝きを発する蛍光剤または染料を含んでいてもよい。本発明の目的に対して、「染料」および「作用剤」と言う用語は互換的に使用される。蛍光染料は当業者に知られている任意の適当な蛍光染料であってもよい。そのような蛍光染料およびホスフィンオキシドは殆ど同じ波長領域において光、即ちUV光線を吸収することが多いので、蛍光染料の存在はホスフィンオキシド光開始剤を含む化合物の硬化深度に悪影響を及ぼすことが予想される。しかしながら、このことはこの場合には見出されなかった。1つの有用な蛍光染料は、Natmar Services Companyから「Scanning Compound#5」(登録商標)の商品名で市販されている。有用なその他の蛍光剤としては、Uvitex OB(Ciga Geigy社製)およびKeyfluor White CM(Keystone社製)が挙げられる。その他の蛍光染料、例えば、Fluorescent yellow LX9740(Pylam products社製)等は有用であるが、これらは殆どの場合に生成物を着色し、硬化深度を減少させるので望ましくない。硬化深度があまり重要ではない場合は、有用な波長範囲で場合により誘発されるその他の染料を使用してもよい。
【0039】
蛍光染料は検出を可能にするのに十分な量で存在してもよい。好ましくは、染料は全組成物の約0.002重量%〜約0.02重量%の量で含まれる。さらに好ましくは、染料は約0.003%〜約0.01%の量で存在する。
【0040】
例えば充填剤、架橋剤、接着促進剤、レオロジー変性剤、可塑剤、開始剤、触媒、およびこれらの組合せ等の様々な追加の有用な成分は本発明組成物に添加されてもよい。これらの添加剤は、これらの意図した目的を達成するのに適切な量で存在してもよい。
【0041】
方法
本発明は、また、本発明の組成物の調製および使用方法に関する。本発明の組成物は、ガスケット、特にCIPG(現場硬化型ガスケット)、ポッティングコンパウンド、カプセル化材、コーティングおよびシーラントとしての使用、さらに上述の任意のその他の使用を含むがこれらに限定されないそれ自体広範囲の使用に適合する。
【0042】
1つの態様においては、本発明は、a)硬化性シリコーンポリマーを用意する工程、およびb)硬化性シリコーンポリマーを、i)液体光開始剤およびその中に可溶の固体光開始剤を含む硬化系およびii)蛍光染料と混合する工程を含む、光硬化性組成物を調製する方法を提供する。
【0043】
本発明のその他の態様は、a)組成物を2つの基体表面の少なくとも1つに適用する工程、b)隣接関係にある基体表面を一致させて組立品を形成する工程、(c)組成物を硬化条件に曝露する工程、および(d)組成物を硬化可能とするのに十分な時間、隣接関係を維持する工程を含む、2つの基体を結合および/または封止するために本発明の組成物を使用する方法に関する。
【実施例】
【0044】
表I、II、III、IVおよびVにおいて以下で記載される組成物は本発明の組成物の代表である。
【0045】
【表1】

【0046】
組成物A〜Lは、本発明のUV−可視/アセトキシ組成物であり、これらはセルフレベリングポッティングまたはシーリングコンパウンド、カプセル化材、コーティングとしてまたは接着剤として特に有用である。組成物A、B、CおよびDは、異なるレベルのホスフィンオキシド光開始剤で硬化深度がまた維持されていることを示す。組成物D、EおよびFは、蛍光剤を伴うまたは伴わず、異なる液体光開始剤を使用すると、硬化深度がどのように影響されるかを示す。組成物GおよびHは、利用するホスフィンオキシドのタイプによる硬化深度の相対的な差を示す。組成物I、J、KおよびLは、異なる液体キャリヤーを使用することの効果を示す。組成物JおよびKは、更なる蛍光剤が硬化性の深度を減少することの関連性を示す。
【0047】
組成物M〜Rは、本発明のUV−可視/アセトキシ組成物の例であり、これらは結合、カプセル化、ガスケット化における高強度接着剤に対する媒体としてまたはシーラントとして特に有用である。組成物MおよびNは、水分硬化触媒を伴うまたは伴わずに、半セルフレベリングである。この例では、組成物Mは剥離に10分掛かるのに対して組成物Nでは60分掛かり、組成物Mの方がより速く剥離する。組成物O、P、QおよびRは、光硬化後の高い初期強度を有する一般的な非流動性組成物である。組成物QおよびRは、蛍光剤の導入の差を示す。比較すると、異なるサイズの充填剤をさらに多く使用する配合物OおよびPは、これらが蛍光剤を含んでいるにも拘わらず、良好な硬化深度をなお有している。
【0048】
組成物S〜Vは、本発明のUV−可視/アルコキシまたは中性硬化性組成物の例であり、これらはセルフレベリングポッティングコンパウンド、カプセル化材またはコーティング接着剤として特に有用である。組成物SおよびTは、任意の極性溶剤および蛍光剤を伴うおよび伴わずに、異なるホスフィンオキシド光開始剤を使用する際の硬化深度の差を示す。組成物UおよびVは、異なる反応性ポリマー系を利用する際の硬化深度における更なる改善を示す。
【0049】
組成物W〜DDは、本発明のUV−可視/アルコキシまたは中性硬化性組成物の例であり、これらは結合、カプセル化、ガスケット化における高強度接着剤に対する媒体としてまたはシーラントとして特に有用である。組成物W、XおよびYは、蛍光剤を伴うおよび伴わず、液体キャリヤー、反応性ポリマーの差を利用した、等しく十分硬化するセルフレベリング組成物である。組成物AA、BB、CCおよびDDは、幾つかの可能な変化および硬化深度に対する効果を示す非流動性組成物である。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
表I〜Vの本発明の組成物のそれぞれは、次の通りに作製した。初めに、強化充填剤を、充填剤を乾燥する必要性に応じて30℃〜110℃の制御された温度下で、反応性ポリマーに混合した。充填剤を適切に分散するために高剪断および真空を使用して混合を30分〜2時間続けた。次いで、表I、IIおよびIIIの組成物は、メタクリルオキシプロピルトリアセトキシシランを使用して末端をキャップして反応性ポリジメチルシロキサン(PDMS)を生成したのに対して、表IVおよびVの組成物は、混合前に適当な反応性PDMSを用いて開始した。次いで、組成物を、その他の液体および固体成分を添加する前に25℃〜40℃の温度に冷却した。
【0055】
次いで、固体成分と液体キャリヤー成分の1つまたは複数とを窒素下で組合せ、50℃までの加熱を使用して約20〜60分間混合することにより、ホスフィンオキシド/蛍光剤を含むプレミックスを別々に調製した。
【0056】
次いで、表I〜Vに示すそれぞれのプレミックスおよび残りの液体成分ならびに水分触媒を、先に形成されたシリコーン混合物に添加し、十分な時間、約30分間、真空下でブレンドし均一な混合物を用意した。
【0057】
次いで、組成物を、水銀アークランプで60秒間、70mW/cm(波長365nmで測定した)での硬化を使用して硬化した。組成物のそれぞれに対する硬化深度の結果は、表I〜Vに配合物と一緒に列挙する。41mmの最大深度を有する不透明なプラスチックカップは、より不透明な容器を使用した組成物Dを除く全てのサンプルに対して使用した。データが示す通り、組成物は、これらの条件下で15mm〜50mmを超える厚さの硬化深度を与える。
【0058】
本発明の組成物のそれぞれは、また、表VIにおける組成物Aについて得られた硬化深度のデータで示される通り、その他の光源によっても硬化可能であった。組成物Aは、異なる強度および時間間隔で異なるUVおよび可視光源(水銀アーク、ハロゲン化金属、フュージョンD、フュージョンHおよびフュージョンV電球)に曝露した。示した通り、本発明の組成物は、また、等しく十分に可視光線(例えば、約400nmを超える波長)により硬化可能であることが分かった。さらに、曝露時間の増加は組成物の硬化深度をさらに改善するが、これに対して従来の組成物は直ちに最大硬化深度に達する。
【0059】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光硬化性シリコーン樹脂と、
(b)光開始剤と、
(c)蛍光染料と
を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記光開始剤が固体光開始剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記光開始剤が溶剤に溶解する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記光開始剤が非極性溶剤に溶解する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記光開始剤が、液体光開始剤、シランおよびこれらの組合せからなる群から選択される溶剤に溶解する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記光開始剤が、UV開始剤、可視光線開始剤、UVおよび可視光線の範囲のいずれでも誘発される開始剤ならびにこれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記光開始剤が、ビスアシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシドおよびこれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記光硬化性シリコーンが、水分および/または加熱硬化性基をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
水分硬化性触媒をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
(a)光硬化性シリコーン樹脂と、
(b)固体光開始剤と、
(c)前記固体光開始剤のための非極性溶剤と
を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項11】
蛍光染料をさらに含む請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記非極性溶剤が、シラン、液体光開始剤およびこれらの組合せからなる群から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記固体光開始剤が、UV開始剤、可視光線開始剤およびこれらの組合せから選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記固体光開始剤が、ビスアシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシドおよびこれらの組合せからなる群から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記シリコーンポリマーが、メタクリルオキシ、ビニルおよびこれらの組合せからなる群から選択されるフリーラジカル硬化性基を含む請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記シリコーンポリマーが、アルコキシ、アセトキシ、エノールオキシ、メタクリルオキシ、アクリルオキシ、オキシム、ビニル、アミノ、N,N−ジアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノキシ、N−アルキルアミド、およびこれらの組合せからなる群から選択される水分硬化性基を含む請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
水分硬化触媒をさらに含む請求項10に記載の組成物。
【請求項18】
(a)硬化性シリコーン樹脂と、
(b)液体光開始剤に溶解した固体光開始剤のプレミックスを含む硬化系と
を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項19】
前記固体光開始剤が、UVおよび/または可視光線により開始される請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
蛍光染料をさらに含む請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
(a)光硬化性シリコーンポリマーと、
(b)蛍光染料と、
(c)ビスアシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシドおよびこれらの組合せからなる群から選択される構成成分を含む第1の光開始剤、
前記第1の光開始剤とは異なる第2の光開始剤、
少なくとも1つの非極性溶剤を含むプレミックスと
を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項22】
(a)光−水分硬化性シリコーン成分と、
(b)溶剤キャリヤーにおける光開始剤のプレミックスと、
(c)蛍光染料と
を含む、増大した硬化浸透深度を有する光/水分・二元硬化性シリコーン組成物。
【請求項23】
(a)光硬化性シリコーン樹脂を用意する工程と、
(b)前記硬化性シリコーンポリマーを光開始剤および蛍光染料と混合する工程と
を含む、光硬化性シリコーン組成物の調製方法。
【請求項24】
(a)光硬化性シリコーン樹脂と、
(b)固体光開始剤および前記固体光開始剤のための溶剤のプレミックスと、
(c)蛍光染料と
の反応生成物を含む組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のシリコーン組成物を用意する工程と、
適当な波長の光を照らして蛍光剤に吸収させる工程と、
前記シリコーン組成物の存在の表示として、その後の蛍光発光を観察する工程と
を含む、シリコーン組成物の存在を検出する方法。
【請求項26】
(a)組成物を2つの基体の表面の少なくとも1つに適用する工程と、
(b)隣接関係にある前記基体表面を一致させて組立品を形成する工程と、
(c)前記組成物を硬化条件に曝露する工程と、
(d)前記組成物を硬化可能とするのに十分な時間、前記隣接関係を維持する工程と
を含む、2つの基体を結合および/または封止するために請求項1に記載の組成物を使用する方法。

【公表番号】特表2008−522006(P2008−522006A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544376(P2007−544376)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041894
【国際公開番号】WO2006/060189
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】