説明

衛星測位システム

【課題】移動端末が自局の位置を高精度で測位できる衛星測位システムを安価に実現する。
【解決手段】複数個の準天頂衛星201、301a〜301dを用いた衛星測位システムにおいて、複数個の準天頂衛星が一体として衛星軌道に向けて打ち上げられ、複数個の準天頂衛星が一体として衛星軌道に沿って安定に飛行する段階において、比較的に高い仰角に位置する複数個の準天頂衛星の内の1個を基準局201とし、残りの準天頂衛星を中継局301a〜301dとして基準局の周辺の所定の軌道に分散させて、基準局から送信される第1の測位信号と各中継局から送信する第2の測位信号とを同期させることによって、移動端末が自局の位置を高精度で測位できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、比較的に高い仰角に位置する複数個の準天頂衛星の内の1個を基準局とし、前記基準局の周辺に配置された残りの準天頂衛星を中継局として構成され、前記基準局から送信される第1の測位信号と各中継局から送信する第2の測位信号とを同期させることによって、移動端末が自局の位置を高精度で測位できる衛星測位システムを安価に実現するためのものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、準天頂衛星を利用して移動体の位置を測位する装置あるいはシステムが提案されている。(例えば、特許文献1〜4参照)
【特許文献1】特開2003−187395号公報
【特許文献2】特開2004−144709号公報
【特許文献3】特開2004−309364号公報
【特許文献4】特開2005−106568号公報
【0003】
図9は、特許文献1に記載されている従来の「準天頂衛星用車載器、準天頂衛星及び準天頂衛星システム」である。図9において、移動体と衛星との間で各種情報を授受する方法として、高い軌道で地球の自転に同期して周回する同期軌道衛星−例えば、静止衛星−を用いる方法がある。この場合、衛星の仰角が45゜程度と低いため、移動しながら各種情報の授受を行うと、建物、地形等に遮られて各種情報授受が途切れるという問題があった。
静止衛星等と比較して高い仰角に位置する数個の準天頂衛星を使用することで、建物、地形等に各種情報授受が遮られることが無い。また、準天頂衛星は仰角が高く、常に上方にあるため、静止衛星を使用するときの様に衛星の方向を気にする必要が無く、よってアンテナなどの駆動機構を要しない構成となるとされている。
しかしながら、数個の準天頂衛星を使用して移動端末の位置を測位する具体的な方法が記述されいない問題点がある。
【0004】
また、特許文献2では、例えば準天頂衛星から測位信号を受信する測位信号受信部と、センター局から測位信号に含まれる誤差を補正する誤差補正データが含まれたセンターデータを受信するセンターデータ受信部と、測位信号を用いて移動体端末の位置を測位するとともに、誤差補正データを用いて移動体端末の位置を補正して位置データを出力する測位処理部とを備えた。このため、移動体端末の位置をcm級の測位精度で測位する。また、補正後の位置データをセンター局に送信する端末データ送信部を備えた。このため、センター局側で、センター局が管理する移動体端末の位置をcm級の精度で一括管理するとされている。
しかしながら、準天頂衛星局と非準天頂衛星局たが混在しているため、センター局から測位信号に含まれる誤差を補正する誤差補正データを受信する必要があり、複雑なシステムとなる問題点がある。
【0005】
また、特許文献3では、準天頂衛星140から送信される信号に基づい測位情報を提供する。地上に置かれた複数の基準局110が複数の測位衛星170、181、182からの信号を受信する。通信局130は基準局が受信した信号を補正して準天頂衛星に送信する。測位情報提供装置150は準天頂衛星から送信された信号と自己の測位情報とを測位装置160に送信するとされている。
しかしながら、準天頂衛星局と非準天頂衛星局たが混在しているため、基準局が受信した信号を補正して準天頂衛星に送信する必要があり、複雑なシステムとなる問題点がある。
【0006】
また、特許文献4では、衛星方向検出部10は、1機の準天頂衛星システム500の存在する方向を検出する。抽出部30は、前記1機の準天頂衛星システム500の送信した測位情報の中から、前記衛星方向検出部10が検出した前記方向に対応する衛星方向対応情報を抽出する。測位位置概算部61は、検出した前記方向と抽出した前記衛星方向対応情報とにより、ユーザ粗位置を求める。レンジ方程式作成・算出部62aは、1機の準天頂衛星システム500から送信された3つの異なる時刻における3つの測位情報を用いてレンジ方程式を作成し、ユーザ位置候補を算出する。比較決定部62bは、レンジ方程式作成・算出部62aが算出したユーザ位置候補を前記ユーザ粗位置と比較することにより、ユーザ位置候補の中からユーザ位置を決定するとされている。
しかしながら、1機の準天頂衛星システム500の存在する方向を検出する必要があり、パラボラアンテナを有する測位装置が必要であり、複雑なシステムとなる問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、比較的に高い仰角に位置する複数個の衛星の内の1個を基準局とし、前記基準局の周辺に配置される残りの衛星を中継局として構成され、前記基準局から送信される測位信号と各中継局から送信する測位信号とを同期させることによって、移動端末が高精度で位置を測位できる衛星測位システムを安価に実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる衛星測位システムでは、複数個の衛星局をロケットを使って個別に打ち上げ、所定の軌道に乗せるためには大きなコストが発生するのに対して、基準となる衛星局(以下基準局と称する)に複数個の衛星局(以下中継局と称する)を付属させて一体として単一のロケットを使って打ち上げ、前記複数個の衛星が一体として衛星軌道に沿って安定に飛行する段階において、前記複数個の衛星の内の少なくとも1個を位置の基準となる基準局とし、前記基準局を中心として残りの衛星が中継局として切り離されて所定の軌道に分散して配置することで、前記打ち上げコストを大幅に節約することができるメリットが得られる。
なお、前記複数個の中継局を分散して配置するためには、前記基準局と各中継局との間の3次元の相対位置を高精度で検知し、前記検知した3次元の相対位置を用いて各中継局のスラスタを制御して3次元の相対位置を所定の誤差内に収める必要がある。
【0009】
また、前記基準局および複数個の中継局から地上に向けて測位信号を含む無線信号を送信する場合、前記基準局で生成される測位信号と各中継局で生成される測位信号とは高精度で同期している必要があり、かつ搬送波信号の周波数も同一である必要がある。
前記基準局と各中継局との間の3次元の相対位置を高精度で検知する課題については、前記基準局と各中継局との間の距離を高精度で測定し、かつ各中継局が位置する方向を高精度で測定して、距離と方向との測定結果から3次元の相対位置を高精度で検知することで解決できる。
【0010】
一方、前記基準局で生成される測位信号と各中継局で生成される測位信号とを高精度で同期させかつ搬送波信号の周波数を同一にする課題については、前記基準局から送信される第1の測位信号を含む無線信号を中継局によって受信し、無線信号の搬送波信号の周波数を同一にしたままで、前記第1の測位信号に同期しあるいは直交しかつ異なった拡散符号の第2の測位信号を含む無線信号に変換して移動端末に向けて送信することで解決できる。
なお、前記基準局と各中継局との間の3次元の相対位置を高精度で維持するためには各中継局の位置制御のための燃料消費が大きくなるので、ある程度の相対位置の誤差を許容し、該3次元の相対位置の誤差情報を前記基準局、各中継局、もしくはこれらの両方から送信する測位信号の中にデータとして含めることで解決できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛星測位システムでは、複数個の衛星が一体として衛星軌道に沿って安定に飛行する段階において、前記複数個の衛星の内の少なくとも1個が位置の基準となる基準局を中心とし、残りの衛星が中継局として切り離されて所定の軌道に分散して配置し、前記基準局信から送信される測位信号と、前記基準局の周辺に配置された複数個の中継局から送信する測位信号とを高精度で同期させ、かつ搬送波信号の周波数を同一とすることによって、移動端末の位置を高精度で測位する衛星測位システムを安価に実現できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係わる衛星測位システムは、図1、図3、図5、および請求項1に本発明の第1の実施の形態を示すように、複数個の衛星201、301a〜301dを用いた衛星測位システムにおいて、前記複数個の衛星が一体として衛星軌道に向けて打ち上げられ、前記複数個の衛星が一体として該衛星軌道に沿って安定に飛行する段階において、前記複数個の衛星の内の少なくとも1個を位置の基準となる基準局201とし、残りの衛星を中継局301a〜301dとして前記基準局の周辺の所定の軌道に分散させて配置し、
【0013】
前記基準局201が、少なくとも、第1の位置検知手段と、遠隔制御手段と、送信手段とを有し、前記第1の位置検知手段が、前記各中継局301a〜301dからの距離と前記各中継局が位置する方向とを測定して、前記各中継局との3次元の相対位置を検知し、前記遠隔制御手段が、前記第1の位置検知手段が検知した結果を用いて前記各中継局301a〜301dとの3次元の相対位置を規定値内に保持するよう遠隔制御し、前記送信手段が、基準となる第1の測位信号を含む無線信号を、前記移動端末101、各中継局301a〜301d、もしくはこれらの両方に向けて送信し、前記各中継局301a〜301dが、少なくとも、第2の位置検知手段と、位置制御手段と、無線中継手段とを有し、
【0014】
前記第2の位置検知手段が、前記基準局201からの距離と前記基準局が位置する方向とを測定して、前記基準局との3次元の相対位置を検知し、前記位置制御手段が、前記第2の位置検知手段が検知した結果を用い、かつ/または前記基準局の遠隔制御手段からの指示に従って、前記基準局からの3次元の相対位置を規定値内に保持するよう自局の位置を制御し、前記無線中継手段が、前記基準局から送信される第1の測位信号を含む無線信号を受信して、前記第1の測位信号に同期しあるいは直交しかつ異なった拡散符号の第2の測位信号を含む無線信号に変換して移動端末に向けて送信し、
【0015】
前記移動端末が、少なくとも、受信手段と、測位信号再生手段と、同期発振手段と、位相測定手段と、位置測位手段とを有し、前記受信手段が、前記基準局から送信される無線信号、前記各中継局から送信される無線信号、もしくはこれらの両方を受信して、前記第1の測位信号、第2の測位信号、もしくはこれらの両方を再生し、前記同期発振手段が、前記再生した第1の測位信号、第2の測位信号、もしくはこれらの両方と高精度で同期しあるいは直交するクロック信号を生成し、前記位相測定手段が、前記クロック信号から、前記第1の測位信号、前記第2の測位信号、もしくはこれらの両方の、伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定し、あるいはこれらの両方の差を測定し、前記位置測位手段が、前記測定結果から自局の位置を高精度で測位する。
【0016】
また、請求項2に示すように、前記複数個の衛星201、301a〜301dの一部あるいは全部が複数個の準天頂衛星である。
また、図2、図5、図6、図7、図8、および請求項3に本発明の第2の実施の形態を示すように、前記第1の位置検知手段10と第2の位置検知手段10が、少なくとも、送信手段12と、受信手段13と、制御手段11と、アンテナ切替手段14と、複数の指向性アンテナ15a〜15dとを含み、前記送信手段が、少なくとも、起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組み合わせを含む無線信号を、前記アンテナ切替手段によって複数の指向性アンテナを周期的に切替えかつ/または送信手段に時分割で切替えて送信し、
【0017】
前記受信手段が、前記無線信号を、前記アンテナ切替手段によって複数の指向性アンテナを周期的に切替えかつ/または受信手段に時分割で切替えて受信し、前記制御手段が、少なくとも、前記起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組み合わせを生成するための信号生成手段と、前記起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組合せを再生するための信号再生手段と、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の立上がり点、立下がり点、もしくはゼロ交差点のタイミングを高精度で検出するための同期検出手段と、
【0018】
前記検出されたタイミングで、前記起点信号もしくは距離測定信号と、短時間で同期を確立し、同期を保持してクロック信号を生成するための同期発振手段と、前記再生された距離測定信号の位相と方向測定信号の位相とを高精度でリアルタイムに測定するための位相測定手段と、前記測定した位相から、前記第1の位置検知手段と第2の位置検知段との間の3次元の相対位置を算出するための位置算出手段とを含む。
また、請求項4に示すように、前記起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組み合わせが、搬送波信号、副搬送波信号、変調信号、スペクトル拡散符号、もしくはこれらの組合せである。
【0019】
また、請求項5に示すように、前記中継局の無線中継手段が、少なくとも、受信アンテナと、受信手段と、同期発振手段と、第2の測位信号生成手段と、中間周波増幅手段と、送信手段と、送信アンテナとを有し、前記受信アンテナが基準局から送信される無線信号を受信し、前記受信手段が受信した無線信号から搬送波信号と第1の測位信号とを再生し、前記同期発振手段が再生した第1の測位信号と高精度で同期を確立してクロック信号を生成し、
【0020】
前記第2の測位信号生成手段がクロック信号に同期しあるいは直交し少なくとも拡散符号が異なる第2の測位信号を生成し、前記中間周波増幅手段が再生された搬送波信号を中間周波信号に変換して増幅し、元の搬送波信号と同一の周波数の搬送波信号に変換し、記送信手段が増幅した搬送波信号を生成した第2の測位信号によってスペクトル拡散し、前記送信アンテナがスペクトル拡散した無線信号を再送信する。
また、請求項6に示すように、前記受信アンテナと送信アンテナとの間の結合損が、前記中間周波信号増幅手段の増幅度からスペクトル拡散された測位信号のプロセス利得を差し引いた値より大きいことが必要である。
【0021】
また、請求項7に示すように、前記移動端末が自局の位置を測位する際に、前記同期発振手段が生成するクロック信号の周波数を前記位相測定手段の測位レンジに応じて可変とし、あるいは前記同期発振手段が生成する周波数が異なる複数のクロック信号の中から前記位相測定手段の測位レンジに応じて最適なものを選択することによって、高い測位精度を実現する。
また、請求項8に示すように、前記位相測定手段の測位レンジを長い尺度のものから順次短い尺度のものに変化させ、あるいは前記位相測定手段の測位レンジを長い尺度のものから順次短い尺度のものに切替えて選択することによって、最適の測位レンジを用いて自局の位置を高精度で測位する。
【0022】
また、請求項9に示すように、前記信号生成手段、信号再生手段、もしくはこれらの両方において、前記起点信号、距離測定信号、もしくは方向測定信号が、無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号である場合には、直接群遅延歪みおよび遅延誤差の少ない帯域通過フイルタを通し、あるいは無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号を変調した変調信号である場合には、遅延誤差の少ないアナログ復調器もしくは高い周波数のクロック信号を用いた遅延誤差の少ないデジタル復調器によって復調した後に前記帯域通過フイルタを通して再生する。
【0023】
また、請求項10に示すように、前記同期発振手段が、位相同期振器によって駆動される、セットあるいはリセット付きのカウンタあるいは数値制御発振器によって構成され、前記同期検出手段によって、少なくとも16MHz以上の周波数のクロック信号を用いて検出した、前記起点信号もしくは距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングで、前記カウンタあるいは数値制御発振器をセットしもしくはリセットすることによって、前記起点信号もしくは距離測定信号と短時間で同期を確立し、かつ前記起点信号もしくは距離測定信号が消滅した後も、比較的に長時間、同期を保持できる。
【0024】
また、請求項11に示すように、前記位相測定手段が、測定する信号周波数の4の整数倍のサンプリング周波数で、かつ4ビット以上のアナログデジタル変換器を用いてデジタル信号に変換し、Sinのルックアップテーブルとして0、1、0、−1、もしくは1、1、−1、−1、を用い、Cosのルックアップテーブルとして1、0、−1、0もしくは1、−1、−1、1、を用い、前記変換したデジタル信号とルックアップテーブルとの積和演算を行う。
また、請求項12に示すように、前記無線信号の周波数として、GPSに割当てられた周波数、その近傍の周波数、法令によって定められた周波数、基準局および各中継局で異なる拡散符号、もしくはこれらの組み合わせを割当てる。
【0025】
(実施の形態1)
図1、図3、図4は本発明の第1の実施の形態による衛星測位システムの構成図、およびタイミングチャートである。図1において、101は移動端末、201は基準局、301a〜301dは中継局、1a〜1dは基準局から中継局に向けて送信される無線信号の伝搬経路、2、3a〜3dは中継局301a〜301dによって中継され、地上400に存在する移動端末101に向けて送信される無線信号の伝搬経路である。
【0026】
複数個の衛星201、301a〜301dを用いた衛星測位システムにおいて、前記複数個の衛星が一体として衛星軌道に向けて打ち上げられ、前記複数個の衛星が一体として該衛星軌道に沿って安定に飛行する段階において、前記複数個の衛星の内の少なくとも1個を位置の基準となる基準局201とし、残りの衛星を中継局301a〜301dとして前記基準局の周辺の所定の軌道に分散させて配置し、
【0027】
前記基準局201が、少なくとも、第1の位置検知手段と、遠隔制御手段と、送信手段とを有し、前記第1の位置検知手段が、前記各中継局301a〜301dからの距離と前記各中継局が位置する方向とを測定して、前記各中継局との3次元の相対位置を検知し、前記遠隔制御手段が、前記第1の位置検知手段が検知した結果を用いて前記各中継局301a〜301dとの3次元の相対位置を規定値内に保持するよう遠隔制御し、前記送信手段が、基準となる第1の測位信号を含む無線信号を、前記移動端末101、各中継局301a〜301d、もしくはこれらの両方に向けて送信し、少なくとも、前記基準局201から送信される第1の測位信号に、前記各中継局との3次元の相対位置に関するデータを含むよう構成され、
【0028】
前記各中継局301a〜301dが、少なくとも、第2の位置検知手段と、位置制御手段と、無線中継手段とを有し、前記第2の位置検知手段が、前記基準局201からの距離と前記基準局が位置する方向とを測定して、前記基準局との3次元の相対位置を検知し、前記位置制御手段が、前記第2の位置検知手段が検知した結果を用い、かつ/または前記基準局の遠隔制御手段からの指示に従って、前記基準局からの3次元の相対位置を規定値内に保持するよう自局の位置を制御し、前記無線中継手段が、前記基準局から送信される第1の測位信号を含む無線信号を受信して、前記第1の測位信号に同期しあるいは直交しかつ異なった拡散符号の第2の測位信号を含む無線信号に変換して移動端末に向けて送信し、
【0029】
前記移動端末が、少なくとも、受信手段と、測位信号再生手段と、同期発振手段と、位相測定手段と、位置測位手段とを有し、前記受信手段が、前記基準局から送信される無線信号、前記各中継局から送信される無線信号、もしくはこれらの両方を受信して、前記第1の測位信号、第2の測位信号、もしくはこれらの両方を再生し、前記同期発振手段が、前記再生した第1の測位信号、第2の測位信号、もしくはこれらの両方と高精度で同期しあるいは直交するクロック信号を生成し、
【0030】
前記位相測定手段が、前記クロック信号から、前記第1の測位信号、前記第2の測位信号、もしくはこれらの両方の、伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定し、あるいはこれらの両方の差を測定し、前記位置測位手段が、前記測定結果から自局の位置を高精度で測位し、別途受信した前記各中継局301a〜301dとの3次元の相対位置に関するデータによって前記測位結果を補正する。
【0031】
また、図3において、400は地面、301a、301bは中継局、302aは前記中継局の中間点の真下の位置、302bは前記中継局301bの真下の位置、302cは前記中間点の真下の位置302aから10,000kmの位置、303aは各中継局の間隔、303bは各中継局の高度、303c、303dは中間点の真下302aから、地点302b、地点302cまでの距離である。各中継局301a、301bが準天頂衛星であり、高度303bの周回軌道は地面400の上空40,000kmであり、間隔303aは24km程度であるとする。
【0032】
移動端末101が地点302aにある場合には各中継局301a、301bから受信する無線信号に含まれる第2の測位信号は同相であるが、地点302b、302cにある場合には中継局301aから受信する無線信号に含まれる第2の測位信号の方が中継局301b受信する無線信号に含まれる第2の測位信号より遅れていることになる。ここで、中継局301aから地点302bまでの距離は40,000,007.2mであり、中継局301bから地点302bまでの距離より7.2m長いことになる。
【0033】
前記移動端末101の同期発振手段が生成するクロック信号の周波数を30MHzとすると、前記測位レンジは10mとなるので、前記7.2mの距離差に対応する位相差ΔΦは、ΔΦ=360°×(7.2m/10m)=259.2°である。前記位相測定手段の位相測定精度として10ミリ秒間の平均値として±1°程度が実現可能であるので、1秒間の移動平均値では±0.1°程度が実現できるので、位置の測位精度ΔLは、距離303cが12kmであることから、ΔL=0.1×(12km/7.2m)/259.2°≒±64cmとなる。これらの他に、4個の中継局を利用して双曲線航法により測位をすると、測位誤差は更に2分の1程度に削減でき、測位誤差として±30cm程度が実現できることになる。
【0034】
また、中継局301aから地点302cまでの距離は約41,236,883m、中継局301bから地点302cまでの距離は約41,231,056mから、両者の距離差は5,827mとなる。前記移動端末101の同期発振手段が生成するクロック信号の周波数を50kHzとすると、前記測位レンジは6,000mとなるので、前記5,827mの距離差に対応する位相差ΔΦは、ΔΦ=360°×(5,827m/6,000m)=349.6°である。位置の測位精度ΔLは、距離303dが10,024kmであることから、ΔL=0.1×(10,024km/5,827m)/349.6°≒±49cmとなり、双曲線航法により測位をすると、測位誤差として±30cm程度が実現できることになる。
【0035】
一方、図4において、61aは基準局201から送信される第1の測位信号、61bは中継局301aによって受信される第1の測位信号、62aは中継局301aによって再送信される第2の測位信号、63aは移動端末101によって受信される第2の測位信号、64aは前記第2の測位信号に同期した第2クロック信号、61cは中継局301bによって受信される第1の測位信号、62bは中継局301bによって再送信される第2の測位信号、63bは移動端末101によって受信される第2の測位信号、64bは前記第2の測位信号に同期した第1のクロック信号、65は第1のクロック信号と第2のクロック信号との位相差、66aは基準局201の時間軸、67a、68aは中継局301aの時間軸、67b、68bは中継局301bの時間軸、69a、69b、70a、70bは移動端末101の時間軸、1a、1b、3a、3bは伝搬経路である。
【0036】
ここで、中継局301aで受信される第1の測定信号61bと中継局301aで生成される第2の測定信号62aと、および中継局301bで受信される第1の測定信号61cと中継局301bで生成される第2の測定信号62bとは、拡散符号は異なるが高精度で同期しているものとする。
また、第1のクロック信号の周波数と第2のクロック信号の周波数は、測位レンジに応じて切替えられあるいは選択されうものとする。
また、各拡散符号系列のヘッダ部分は共通とし、クロック信号との同期起点として用いるものとする。
【0037】
(実施の形態2)
図2、図5、図6、図7、図8は本発明の第2の実施の形態による衛星測位システムの構成図、およびタイミングチャートである。図2において、201は基準局、301a〜301dは中継局、4a〜4dは基準局と中継局との間で送信し受信される無線信号の伝搬経路であり、
【0038】
前記基準局201が、少なくとも、前記各中継局301a〜301dからの距離と前記各中継局が位置する方向とを前記伝搬経路4a〜4dを介して測定し、前記各中継局との3次元の相対位置を検知するための第1の位置検知手段10と、前記第1の位置検知手段が検知した結果を用いて前記各中継局との3次元の相対位置を規定値内に保持するよう遠隔制御するための遠隔制御手段と、
【0039】
前記各中継局301a〜301dが、少なくとも、前記基準局201からの距離と前記基準局201が位置する方向とを前記伝搬経路4a〜4dを介して測定し、前記基準局201との3次元の相対位置を検知するための第2の位置検知手段10と、前記第2の位置検知手段が検知した結果を用い、かつ前記遠隔制御手段からの指示に従って、前記基準局からの3次元の相対位置を規定値内に配置されるよう位置を制御するための位置制御手段とを有する。
【0040】
また、図5、図6において、10aは第1の位置検知手段、10bは第2の位置検知手段、11は制御手段、12は送信手段、13は受信手段、14はアンテナ切替手段、15a〜15dは複数の指向性アンテナ、41は基準発振器、42は位置特定手段、43は位相測定手段、44は距離測定信号再生手段、45は起点信号生成手段、46は同期発振手段、47は距離測定信号生成手段、48は位相同期発振器、49は同期検出手段、50は起点信号再生手段である。
【0041】
前記第1の位置検知手段10aの起点信号生成手段45が起点信号を生成し、前記送信手段12が、少なくとも、前記起点信号と、システム同期信号と、識別番号とを含む無線信号を、バースト信号としてかつ間欠的に、アンテナ15a〜15dを前記送信手段12に切替え、かつ周期的に切替えながら、伝搬経路4a〜4dを経由して送信し、前記第2の位置検知手段10bの受信手段13が、前記無線信号を、アンテナ15a〜15dを前記受信手段13に切替え、かつ周期的に切替えながら、伝搬経路4a〜4dを経由して受信し、
【0042】
前記第2の位置検知手段10bの起点信号再生手段50が、前記第1の位置検知手段10aから受信する無線信号に含まれる起点信号を再生し、前記同期検出手段49が、前記再生した起点信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記同期発振手段46が、前記検出したタイミングで、起点信号と瞬時に同期を確立し、かつ同期を保持してクロック信号を生成し、前記距離信号生成手段47が、前記クロック信号と同期しあるいは直交する距離測定信号を生成し、これとは別に生成した方向測定信号とともに、前記送信手段12から、少なくとも、前記生成した距離測定信号と方向測定信号とを含む無線信号を、時分割の間隔でかつバースト信号として、アンテナ15a〜15dを介し、伝搬経路4a〜4dを経由して送信し、
【0043】
前記第1の位置検知手段10aの受信手段13が、前記第2の位置検知手段10bから送信される無線信号を、アンテナ15a〜15dを介して受信し、前記距離測定信号再生手段44が、前記第2の位置検知手段10bから受信した無線信号に含まれる距離信号と方向測定信号を再生し、前記位相測定手段43が、自局で生成した起点信号を基準として、前記距離測定信号の位相を測定し、これとは別に、アンテナ15a〜15dに対応した方向測定信号の位相を測定し、前記位置特定手段42が、前記距離測定信号の位相と方向測定信号の位相との測定結果から、前記第2の位置検知手段10bの位置を検知するとともに、
【0044】
前記同期検出手段49が、前記再生した距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングを検出し、前記同期発振手段46が、前記検出したタイミングで、距離測定と瞬時に同期を確立し、かつ同期を保持してクロック信号を生成し、前記距離信号生成手段47が、前記クロック信号と同期しあるいは直交する距離測定信号を生成し、これとは別に生成した方向測定信号とともに、前記送信手段12から、少なくとも、前記生成した距離測定信号と方向測定信号とを含む無線信号を、時分割の間隔でかつバースト信号として、アンテナ15a〜15dを介し、伝搬経路4a〜4dを経由して送信し、
【0045】
前記第2の位置検知手段10bの受信手段13が、前記第1の位置検知手段10aから送信される無線信号を、アンテナ15a〜15dを介して受信し、前記距離測定信号再生手段44が、前記第1の位置検知手段10aから受信した無線信号に含まれる距離信号と方向測定信号を再生し、前記位相測定手段43が、自局で生成した距離測定信号を基準として、前記受信した距離測定信号の位相を測定し、これとは別に、アンテナ15a〜15dに対応して受信した方向測定信号の位相を測定し、前記位置特定手段42が、前記距離測定信号の位相と方向測定信号の位相との測定結果から、前記第1の位置検知手段10aの3次元の位置を検知する。
【0046】
上記の手順によって、前記第1の位置検知手段10aと第2の位置検知手段10bの両側において、相手の位置を高精度で検知することができるので、これらの検知結果を利用して、遠隔制御手段により相手を遠隔制御し、あるいは位置制御手段によって自局の位置を制御することができる。
なお、前記検知手段10a、10bが受信した無線信号の電力あるいは信号対雑音比を測定した結果から回線品質を分析し、前記位置の検知結果をフイルタリングし、荷重平均し、補正し、補完し、あるいはこれらの組み合わせを行うことで、位置検知精度を改善できる。
【0047】
また、前記起点信号、距離測定信号、もしくはこれらの両方が、搬送波信号、副搬送波信号、変調信号、スペクトル拡散符号、もしくはこれらの組合せである。
また、前記起点信号再生手段50もしくは距離測定信号再生手段44において、前記起点信号、距離測定信号、もしくは方向測定信号が、無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号である場合には、直接群遅延歪みおよび遅延誤差の少ない帯域通過フイルタを通し、あるいは無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号を変調した変調信号である場合には、遅延誤差の少ないアナログ復調器もしくは高い周波数のクロック信号を用いた遅延誤差の少ないデジタル復調器によって復調した後に前記帯域通過フイルタを通して再生することで、位置特定精度を向上させることができる。
【0048】
また、前記同期発振手段46が位相同期発振器48によって駆動される、セットあるいはリセット付きのカウンタあるいは数値制御発振器によって構成され、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の立上がり点、立下がり点、もしくはゼロ交差点のタイミングを、同期検出手段49によって少なくとも16MHz以上のサンプリング周波数を用いて検出し、前記検出したタイミングで、前記カウンタあるいは数値制御発振器をセットしもしくはリセットすることによって、前記起点信号もしくは距離測定信号と短時間で同期を確立し、かつ前記起点信号もしくは距離測定信号が消滅した後も、比較的に長時間、同期を保持することができる。
【0049】
また、前記位相測定手段が、測定する信号周波数の4倍以上のサンプリング周波数で、かつ4ビット以上のアナログデジタル変換器を用いてデジタル信号に変換し、Sinのルックアップテーブルとして0、1、0、−1、もしくは1、1、−1、−1、を用い、Cosのルックアップテーブルとして1、0、−1、0もしくは1、−1、−1、1、を用い、前記変換したデジタル信号とルックアップテーブルとの積和演算を行うことで、高精度でかつリアルタイムに位相を測定することができる。
【0050】
図7は、本発明の衛星測位システムで用いられる無線信号の構成図であり、71a〜71fはシステム同期信号、72a〜72fはMACレイヤ、73a〜73fは起点信号もしくは距離測定信号、74は基準局から送信される無線信号の時間軸、74は中継局から送信される無線信号の時間軸である。なお、太線で囲まれた部分は送信されるものを、細線の部分は受信されるものを示す。
【0051】
前記システム同期信号71a〜71fは複数ビットのユニークワードであり、±100ナノ秒程度の精度で前記基準局と中継局との間の制御タイミングを合わせることができるが、この程度の精度で前記位相差を検出すると、距離の測定誤差が数十mと大きくなる問題点がある。
前記MACレイヤ72a〜72fは、少なくとも、符号長、識別番号、相手先番号、報知信号、誤り訂正符号、もしくはこれらの組合せから構成され、前記システム同期信号71a〜71fとセットになって生成される。
【0052】
最初、基準局から、システム同期信号71aと、MACレイヤ72aと、起点信号73aとが送信され、引き続き時分割の間隔後に、中継局からシステム同期信号71dと、MACレイヤ72dと、第1の距離起点信号73dとが送信され、引き続き時分割の間隔後に、基準局からシステム同期信号71eと、MACレイヤ72eと、第2の距離起点信号73eとが送信される。
【0053】
ここで、前記MACレイヤ72a〜72fの継続時間を各々0.5ms〜1ms程度とし、前記起点信号もしくは距離測定信号73a〜73fの継続時間を各々1ms程度とすると、合計で1.5ms〜2ms程度の継続時間となるので、基準発振器の周波数安定度を±0.25ppm程度にすると、同期保持誤差は±2nsとなるので、高精度で同期を保持できる。
【0054】
図8は、本発明の第2の実施の形態による無線信号のタイミングチャートであり、81aは第1の位置検知手段10aで生成される起点信号、81bは第2の位置検知手段10bで受信される起点信号、82aは第2の位置検知手段10bで生成される第1の距離測定信号、82bは第1の位置検知手段10aで再生される第1の距離測定信号、83aは第1の位置検知手段10bで生成される第2の距離測定信号、83bは第2の位置検知手段10bで受信される第2の距離測定信号、4aa、4acは第1の位置検知手段10aから第2の位置検知手段10bに向けた無線信号の伝搬経路、4abは第1の位置検知手段10aから第2の位置検知手段10bに向けた無線信号の伝搬経路、
【0055】
84aは第1の位置検知手段10aで生成された起点信号の位相と再生された第1の距離測定信号との位相差、84bは第2の位置検知手段10bで生成された第1の距離測定信号と再生された第2の距離測定信号との位相差、85a、85bは時分割の間隔、86a〜86cは第1の位置検知手段10aの時間軸、87a〜87cは第2の位置検知手段10bの時間軸である。
【0056】
前記第1の位置検知手段10aで生成され基準局201から送信される起点信号81aをASin(2πf1t)とすると、前記起点信号81aが、距離L1(m)の伝搬経路4aaを伝搬し、前記中継局301aによって受信され、第2の位置検知手段10bで起点信号81bとして再生されると、BSin{2πf1t+(2πL1(f1/C)}に位相が変化する。
前記再生された起点信号81bと、同期確立誤差がゼロで同期した距離測定信号82aを生成すると、生成された距離測定信号82aは、同じくBSin{2πf1t+(2πL1(f1/C)}で表される。
【0057】
前記時分割の間隔85a後に、前記生成された距離測定信号82aが、前記中継局301aから送信され、距離L1(m)の伝搬経路4abを伝搬し、前記基準局の第1の位置検知手段10aで再生される距離測定信号82bは、CSin{2πf1t+(2L1)(2πf1)/C)}で表わされる。ここで、Cは光の速度とする。
【0058】
前記第1の位置検知手段10aで生成された起点信号と同期したクロック信号を用いて、前記第1の位置検知手段10aで再生された距離測定信号75aの位相を測定すると、位相差84aが測定され、ΔΦ={4π(2L1)(f1/C)}となることから、L1=CΔΦ/4πf1から、距離L1(m)が算出できる。
同様に、位相差84bから、中継局301a側でも、距離L1(m)が算出できる。
【0059】
以上の説明では、前記中継局から送信される距離測定信号として、単一の周波数の距離測定信号を再送信する場合について説明したが、単一の周波数の距離測定信号を用いる場合、ΔΦの変化を0<ΔΦ<2πに制限する必要があることから、再生された起点信号81bに同期しあるいは直交し少なくとも周波数が異なる複数の距離測定信号を用いると、複数の測位レンジで位置を検知できることになり、検知したい位置に最適の測位レンジを合わせることで、精密な位置の検知が可能となるメリットが得られる。
【0060】
また、前記中継局から送信する距離測定信号は、周波数分割多重方式で同時送信することができる。
また、前記中継局と中継局のいずれか一方あるいは両方に、複数のアンテナを接続し、周期的に切替えながら距離測定信号を発受信して前記複数のアンテナに対応する位相差を測定することで、無線信号の伝搬路で生じるマルチパスによって生じる検知誤差を軽減し、補正し、あるいは補完することによって、信頼性の高い高精度の位置検知システムを実現できる。
【0061】
また、前記無線信号として、超音波信号、高周波信号、もしくは光信号を用いることができる。なお、超音波信号もしくは光信号の場合には、アンテナの代わりに、送受波器を用いる。
また、無線信号として、時分割同時送受話(TDD)方式の代わりに、周波数分割同時送受話(FDD)方式を用いても同様な効果が得られる。
また、前記無線信号の周波数として、GPSに割当てられた周波数、その近傍の周波数、法令に定められた周波数、基準局および各中継局で異なる拡散符号、もしくはこれらの組み合わせによる周波数を割当てることが出来れば、GPSを補完することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、複数個の準天頂衛星を経済的な方法で打ち上げられ、しかも高精度の衛星測位システムが実現できるので、現在のGPSを補完することができる。
なお、本発明の衛星測位技術は基盤技術であり、上記以外に多分野での利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態による衛星測位システムの構成図
【図2】本発明の第2の実施の形態による衛星測位システムの構成図
【図3】本発明の第1の実施の形態による衛星測位システムの他の構成図
【図4】本発明の第1の実施の形態による測位信号のタイミングチャート
【図5】本発明の第2の実施の形態による位置検知手段の構成図
【図6】本発明の第2の実施の形態による制御手段の構成図
【図7】本発明の第2の実施の形態による無線信号の構成図
【図8】本発明の第2の実施の形態による無線信号のタイミングチャート
【図9】従来の実施例を示す構成図
【符号の説明】
【0064】
1a〜1d 基準局と中継局の間の無線測位信号の伝搬経路
2、3a〜3d 移動端末と基準局と、移動端末と中継局との間の無線信号の伝搬経路
4a〜4d 基準局と中継局との間の位置検知信号の伝搬経路
100 衛星測位システム
101 移動端末
200 中継局の位置制御システム
201 基準局
301a〜301d 中継局
10a、10b 第1、第2の位置検知手段
11 制御手段
12 送信手段
13 受信手段
14 アンテナ切替手段
15a〜15d 複数のアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の衛星を利用して移動端末の位置を高精度で測位するための衛星測位システムにおいて、
前記複数個の衛星が一体として衛星軌道に向けて打ち上げられ、前記複数個の衛星が一体として該衛星軌道に沿って安定に飛行する段階において、前記複数個の衛星の内の少なくとも1個を位置の基準となる基準局とし、残りの衛星を中継局として前記基準局の周辺の所定の軌道に分散させて配置し、
前記基準局が、少なくとも、第1の位置検知手段と、遠隔制御手段と、送信手段とを有し、
前記第1の位置検知手段が、前記各中継局からの距離と前記各中継局が位置する方向とを測定して、前記各中継局との相対位置を検知し、
前記遠隔制御手段が、前記第1の位置検知手段が検知した結果を用いて前記各中継局との相対位置を規定値内に保持するよう遠隔制御し、
前記送信手段が、基準となる第1の測位信号を含む無線信号を、前記移動端末、各中継局、もしくはこれらの両方に向けて送信し、
前記各中継局が、少なくとも、第2の位置検知手段と、位置制御手段と、無線中継手段とを有し、
前記第2の位置検知手段が、前記基準局からの距離と前記基準局が位置する方向とを測定して、前記基準局との相対位置を検知し、
前記位置制御手段が、前記第2の位置検知手段が検知した結果を用い、かつ/または前記基準局の遠隔制御手段からの指示に従って、前記基準局からの相対位置を規定値内に保持するよう自局の位置を制御し、
前記無線中継手段が、前記基準局から送信される第1の測位信号を含む無線信号を受信して、前記第1の測位信号に同期しあるいは直交しかつ異なった拡散符号の第2の測位信号を含む無線信号に変換して移動端末に向けて送信し、
前記移動端末が、少なくとも、受信手段と、測位信号再生手段と、同期発振手段と、位相測定手段と、位置測位手段とを有し、
前記受信手段が、前記基準局から送信される無線信号、前記各中継局から送信される無線信号、もしくはこれらの両方を受信して、前記第1の測位信号、第2の測位信号、もしくはこれらの両方を再生し、
前記同期発振手段が、前記再生した第1の測位信号、第2の測位信号、もしくはこれらの両方と高精度で同期しあるいは直交するクロック信号を生成し、
前記位相測定手段が、前記クロック信号から、前記第1の測位信号、前記第2の測位信号、もしくはこれらの両方の、伝搬時間、伝搬位相、もしくはこれらの両方を測定し、あるいはこれらの両方の差を測定し、
前記位置測位手段が、前記測定結果から自局の位置を高精度で測位する
ことを特徴とする衛星測位システム。
【請求項2】
前記複数個の衛星の一部あるいは全部が準天頂衛星であることを特徴とする請求項第1項に記載の衛星測位システム。
【請求項3】
前記第1の位置検知手段と第2の位置検知手段が、少なくとも、送信手段と、受信手段と、制御手段と、アンテナ切替手段と、複数の指向性アンテナとを含み、
前記送信手段が、少なくとも、起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組み合わせを含む無線信号を、前記アンテナ切替手段によって複数の指向性アンテナを周期的に切替えかつ/または送信手段に時分割で切替えて送信し、
前記受信手段が、前記無線信号を、前記アンテナ切替手段によって複数の指向性アンテナを周期的に切替えかつ/または受信手段に時分割で切替えて受信し、
前記制御手段が、少なくとも、前記起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組み合わせを生成するための信号生成手段と、前記起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組合せを再生するための信号再生手段と、前記再生された起点信号もしくは距離測定信号の立上がり点、立下がり点、もしくはゼロ交差点のタイミングを高精度で検出するための同期検出手段と、前記検出されたタイミングで、前記起点信号もしくは距離測定信号と、短時間で同期を確立し、同期を保持してクロック信号を生成するための同期発振手段と、前記再生された距離測定信号の位相と方向測定信号の位相とを高精度でリアルタイムに測定するための位相測定手段と、前記測定した位相から、前記第1の位置検知手段と第2の位置検知段との間の相対位置を算出するための位置算出手段とを含むことを特徴とする請求項第1項に記載の衛星測位システム。
【請求項4】
前記起点信号、距離測定信号、方向測定信号、もしくはこれらの組み合わせが、搬送波信号、副搬送波信号、変調信号、スペクトル拡散符号、もしくはこれらの組合せであることを特徴とする請求項第3項に記載の衛星測位システム。
【請求項5】
前記中継局の無線中継手段が、少なくとも、受信アンテナと、受信手段と、同期発振手段と、第2の測位信号生成手段と、中間周波増幅手段と、送信手段と、送信アンテナとを有し、
前記受信アンテナが基準局から送信される無線信号を受信し、前記受信手段が受信した無線信号から搬送波信号と第1の測位信号とを再生し、前記同期発振手段が再生した第1の測位信号と高精度で同期を確立してクロック信号を生成し、前記第2の測位信号生成手段がクロック信号に同期しあるいは直交し少なくとも拡散符号が異なる第2の測位信号を生成し、前記中間周波増幅手段が再生した搬送波信号を中間周波信号に変換して増幅し、元の搬送波信号と同一の周波数の搬送波信号に変換し、記送信手段が増幅した搬送波信号を生成した第2の測位信号によってスペクトル拡散し、前記送信アンテナがスペクトル拡散した無線信号を再送信することを特徴とする請求項第1項に記載の衛星測位システム。
【請求項6】
前記受信アンテナと送信アンテナとの間の結合損が、前記中間周波信号増幅手段の増幅度からスペクトル拡散された測位信号のプロセス利得を差し引いた値より大きいことを特徴とする請求項第5項に記載の衛星測位システム。
【請求項7】
前記移動端末が自局の位置を測位する際に、前記同期発振手段が生成するクロック信号の周波数を前記位相測定手段の測位レンジに応じて可変とし、あるいは前記同期発振手段が生成する周波数が異なる複数のクロック信号の中から前記位相測定手段の測位レンジに応じて最適なものを選択することによって、高い測位精度を実現することを特徴とする請求項第1項に記載の衛星測位システム。
【請求項8】
前記位相測定手段の測位レンジを長い尺度のものから順次短い尺度のものに変化させ、あるいは前記位相測定手段の測位レンジを長い尺度のものから順次短い尺度のものに切替えて選択することによって、最適の測位レンジを用いて自局の位置を高精度で測位することを特徴とする請求項第7項に記載の衛星測位システム。
【請求項9】
前記信号生成手段、信号再生手段、もしくはこれらの両方において、前記起点信号、距離測定信号、もしくは方向測定信号が、無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号である場合には、直接群遅延歪みおよび遅延誤差の少ない帯域通過フイルタを通し、あるいは無線信号の搬送波信号あるいは副搬送波信号を変調した変調信号である場合には、遅延誤差の少ないアナログ復調器もしくは高い周波数のクロック信号を用いた遅延誤差の少ないデジタル復調器によって復調した後に前記帯域通過フイルタを通して再生することを特徴とする請求項第1項、第3項もしくは第5項の何れかに記載の衛星測位システム。
【請求項10】
前記同期発振手段が、位相同期振器によって駆動される、セットあるいはリセット付きのカウンタあるいは数値制御発振器によって構成され、前記同期検出手段によって、少なくとも16MHz以上の周波数のクロック信号を用いて検出した、前記起点信号もしくは距離測定信号の立上り点、立下り点、あるいはゼロ交差点のタイミングで、前記カウンタあるいは数値制御発振器をセットしもしくはリセットすることによって、前記起点信号もしくは距離測定信号と短時間で同期を確立し、かつ前記起点信号もしくは距離測定信号が消滅した後も、比較的に長時間、同期を保持できることを特徴とする請求項第1項、第3項もしくは第5項の何れかに記載の衛星測位システム。
【請求項11】
前記位相測定手段が、測定する信号周波数の4の整数倍のサンプリング周波数で、かつ4ビット以上のアナログデジタル変換器を用いてデジタル信号に変換し、Sinのルックアップテーブルとして0、1、0、−1、もしくは1、1、−1、−1、を用い、Cosのルックアップテーブルとして1、0、−1、0もしくは1、−1、−1、1、を用い、前記変換したデジタル信号とルックアップテーブルとの積和演算を行うことを特徴とする請求項第1項、第3項もしくは第5項の何れかに記載の衛星測位システム。
【請求項12】
前記無線信号の周波数として、GPSに割当てられた周波数、その近傍の周波数、法令によって定められた周波数、基準局および各中継局で異なる拡散符号、もしくはこれらの組み合わせを割当てることを特徴とする請求項第1項に記載する衛星測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−163833(P2011−163833A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24811(P2010−24811)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(395007299)有限会社アール・シー・エス (51)
【Fターム(参考)】