説明

表皮材及びその積層体

【課題】外観を損なわずにソフト感を向上させることのできる表皮材及びその表皮材を用いた積層体を提供する。
【解決手段】表皮材は合成樹脂製であり、片面に凸部10を有し、該凸部10の体積が全体の12.5%〜90%を占める。また上記凸部を有する面40の垂直投影面に対し、該凸部10の垂直投影面の占める面積の割合が10%を超え100%未満である。積層体は、上記表皮材の凸部を有する面40に隣接して、密度100kg/m〜250kg/mの半硬質熱硬化性ウレタンフォームなどの発泡材を積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内装などに用いることのできる表皮材及びその積層体に係り、更に詳細には、外観を損なわずにソフト感を向上させることのできる表皮材及びその表皮材を用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内装用の表皮材に関連する技術として、例えば、塩化ビニル共重合体を含む組成物をカレンダー成形や押出成形することで得られるシートを真空成形した塩化ビニル共重合体系真空成形物(特許文献1参照)や、ポリプロピレン樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーとを含む材料から成るシートを、絞面を有したメス引き真空成形型にて成形することで表皮層を得るというインストルメントパネルパッドの製造方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
また、最近では、粉状熱可塑性合成樹脂成形材料を用いてスラッシュ成形型により表皮体を製造する合成樹脂表皮体の製造方法(特許文献3参照)、ポリオレフィン系樹脂とエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムとを含む熱可塑性エラストマーのパウダーが、シボ模様転写用金型の内表面に溶融付着することにより表面にシボ模様が形成されて成るシボ模様付熱可塑性エラストマー成形物とその製造方法(特許文献4参照)、粉末スラッシュ成形型に用いるための熱可塑性ポリウレタン系樹脂粉末を主体とする樹脂組成物であって、成形温度で溶融しない粒径0.5〜200μmのマレイミド重合体微粒子粉末を含有する粉末成形用樹脂組成物とこれを素材とした表面にシボ模様を有する艶消しされた樹脂成形品(特許文献5参照)が提案されている。
更に、ウレタンエラストマーを使用したスプレー工法により形成された表皮材とその製造方法(特許文献6参照)が提案されている。
【0004】
また更に、塩化ビニル共重合体を含む組成物をカレンダー成形や押出成形して得たシートや、ポリプロピレン樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーとを含む材料から成るシートと、芯材となるPPとを低圧射出成形プレスで一体成形するために、これらのシート裏面に梨地等の粗面化処理を施してシートと芯材との接着性を付与したもの(特許文献7参照)が提案されている。
【特許文献1】特公昭60−37784号公報
【特許文献2】特公昭63−4776号公報
【特許文献3】特公平2−12733号公報
【特許文献4】特許第2517073号明細書
【特許文献5】特許第3637694号明細書
【特許文献6】特表平10−500366号公報
【特許文献7】特開平9−239739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されている表皮材では、表皮材の材質、厚み及び意匠面絞によって触感をコントロールすることはできるが、ソフト感を向上させることが難しいため、ユーザーの高級感を満足させることのできる触感を得ることができない。
人が感じる触感の良さは、なでる方向の触感だけではなく、押す方向の触感、即ち表皮材を押したときのたわみ量(侵入量)に依存するソフト感にも左右されるものであるが、これらの表皮材では、なでる方向の触感については意匠面絞のチューニングによって向上させることができても、ソフト感についてはコントロールすることが難しいからである。
【0006】
また、特許文献3、特許文献4及び特許文献5に記載されているパウダースラッシュ成形では、金型の意匠面に接触して溶融した材料によって表皮材が形成されるので、厚みのコントロールができない。従って、これらの表皮材では、材質や意匠面絞によって触感をコントロールすることは可能であるが、特許文献1の表皮材等と同様にソフト感を向上させることは難しい。
同様に、特許文献6に記載されているスプレー成形による表皮材も金型の意匠面に接触した材料によって表皮材が形成されるので、厚みをコントロールすることができないため、材質や意匠面絞によって触感をコントロールすることはできても、ソフト感を向上させることは難しい。
【0007】
また、特許文献7に記載されている芯材との接着性付与を目的とした梨地等のシート裏面の粗面化処理では、細かい絞によって接着性の向上には寄与することはできるが、ソフト感を向上させるほどの効果を与えることは難しい。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外観を損なわずにソフト感を向上させることのできる表皮材及びその表皮材を用いた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、合成樹脂から成る表皮材の片面に凸部を設け、その凸部が表皮材全体に占める体積の割合を所定の値とすることで上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の表皮材は、合成樹脂製であり、凸部を片面に備え、該凸部の体積が全体の12.5%〜90%を占めることを特徴とする。
【0011】
また本発明の積層体は、本発明の表皮材の凸部を備えた面に隣接して発泡材を積層したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、合成樹脂から成る表皮材の片面に凸部を設け、その凸部が表皮材全体に占める体積の割合を所定の値としたため、外観を損なわずにソフト感を向上させることのできる表皮材及びその表皮材を用いた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の表皮材及び積層体について図面を用いて詳細に説明する。なお、本明細書において、濃度及び含有量等についての「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0014】
(1)表皮材
図1は、本発明の表皮材の一実施形態を示す部分断面図である。図2は本発明の表皮材の別の実施形態を示す部分斜視図である。図3は本発明の表皮材の更に別の実施形態を示す部分斜視図である。
【0015】
上述の如く、本発明の表皮材は合成樹脂から成り、その一方の面に凸部10を備えている。また上記凸部10の体積が、表皮材全体の体積に占める割合は12.5%〜90%であり、好ましくは15%〜50%、更に好ましくは20%〜30%である。
このような構成とすることにより、施工後の内装表皮の表面、即ち凸部を有さない面50を上から押した時のたわみ量(侵入量)を大きくすることができるため、板厚が均一で、外観を損なわずにソフト感が向上した表皮材とすることができる。
【0016】
また上記凸部10の垂直投影面積の占める割合は、凸部を備えた面40の垂直投影面積に対し10%を超え100%未満であることが好ましく、25%を超え80%未満であることがより好ましく、25%を超え50%未満であることが更に好ましい。
【0017】
上記凸部10の体積の占める割合が12.5%未満であると、谷の部分に応力が集中するため、12.5%未満のような薄い表皮の場合、強度が不足する。上記凸部10の体積の占める割合が90%を超えると、たとえ上記凸部10の垂直投影面積の占める割合が10%を超え100%未満であっても、表皮材の断面方向に対する厚肉部と薄肉部との差が大きくなるため、その収縮差から表面が波打ったり、ヒケたり、また表面から凸部10が透けて見えたりして外観を損ねる。
【0018】
また上記凸部10の垂直投影面積の占める割合が10%以下であると、凸部と凸部の間隔が離れすぎるため優れたソフト感が得られない場合がある。なお、上記凸部10の垂直投影面積の占める割合を100%とすることは構造的に不可能である。
【0019】
凸部10の形状は、任意の形態とすることができ、例えば底面が円、三角形、多角形、ヒトデ形又は星形等の錐又は柱とすることや、その側面を図3に例示する階段状とすることや、一部又は全部を斜面とすることができる。また、凸部と凸部の間隙部分には、任意の形状の凹陥部を設けることもできる。
【0020】
上記合成樹脂は、オレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリスチレン系などのエラストマー又はこれらの任意の混合物等のエラストマーであることが好ましい。表皮材をエラストマー樹脂とすると、その柔軟性により凸部10の根本に応力を集中させることができるので、更なるソフト感が得られるからである。
また、触感をより向上させるという観点から、該エラストマーは反応射出成形で合成された非熱可塑性のウレタンエラストマーであることが更に好ましい。
【0021】
凸部を有さない面50は、本発明の表皮材が自動車の内装などに施された際には表面となるので、人が触れた時の触感を高めるために絞形状や、微細な絞形状を重ね合わせて形成した形状などを有していても良い。絞形状としては、例えば革の反転から採取した革絞形状や、意匠性を付与するために規則的、半規則的に模様を施した大柄な絞形状等を挙げることができる。
【0022】
また、更にその触感を高めるために、触感向上パウダーを用いることができる。触感向上パウダーは、少なくともその一部が表面に露出した状態におくと効果を発揮し易いため、使用する際には、表皮材の製造用金型に塗布する離型剤に添加して表皮材の表面に付着させる方法や、表面を塗装する塗膜に含有させる方法などを取ることができる。
【0023】
該触感向上パウダーとしては、例えば、籾殻、わら、竹、ケナフ、麻、及びこれらの任意の組合せに係る植物由来素材から成る微粒子パウダー、革、シルク、コラーゲン、ウール、キチン、キトサン、及びこれらの任意の組合せに係る動物由来素材から成る微粒子パウダー、高分子吸収体、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、及びこれらの任意の組合せに係る合成素材から成る微粒子パウダー、並びにこれらの任意の組合せに係る微粒子パウダー等を挙げることができる。
【0024】
これらの触感向上パウダーの平均粒径は8μm〜30μmであることが好ましい。平均粒径が8μm未満の場合には、触感向上効果が得られ難いことがある。一方、平均粒径が30μmを超える場合には、外観を損ねることがある。
【0025】
また、本発明の表皮材におけるこれらの触感向上パウダーの含有量は、0.1g/m〜2.0g/mであることが好ましい。0.1g/m未満の場合には、パウダーなし品と比べて、触感向上について優位差が出ないことがあり、2.0g/mを超える場合には、表皮材の色味や艶に変化が起こり、悪影響を及ぼすおそれがある。更には、表面に露出していない触感向上パウダーの割合が増え、表皮材の耐摩耗性が低下するおそれもある。
【0026】
(2)積層体
図4は、本発明の積層体の一実施形態を示す部分断面図である。上述の如く、本発明の積層体は、本発明の表皮材100と発泡材200の少なくとも二層を積層したものであり、該発泡材は表皮材の凸部を備えた面40に隣接して積層されている。このような構成とすることにより、板厚が均一で、外観を損なわずにソフト感が向上した積層体となり、自動車内装などに好適に用いることができる。なお本発明の積層体は二層の積層体であっても三層以上の積層体であってもよい。
【0027】
上記発泡材は、好ましくは密度100kg/m〜250kg/m、更に好ましくは密度120kg/m〜180kg/mの半硬質熱硬化性ウレタンフォームから成ることが好ましい。ここで「半硬質熱硬化性ウレタンフォーム」とは、オープンセル構造が90%以上のウレタンフォームをいう。
発泡材の密度が100kg/m未満の場合には、製造時や取り出し時のハンドリングで圧跡がつきやすいなどのためハンドリングが悪くなることがあり、250kg/mを超える場合には、中間層が固すぎて、表皮材のやわらかさに悪影響を及ぼすことがある。
【0028】
また本発明の積層体は、更に上記発泡材200に隣接して芯材300を積層することができる。
上記芯材は、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート(PC)/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)又はこれらの任意の組合せに係る熱可塑性樹脂から成ることが好ましい。芯材がこれらの熱可塑性樹脂から成る場合には、三次元の複雑な形状を安定的に大量生産できる傾向にあり、生産効率の向上やコスト削減に寄与し得るからである。
【0029】
(3)製造方法
本発明の表皮材の製造方法の一実施形態について説明する。
最初に表皮材製造用の金型として、表皮材の凸部を有さない面(表面)側には、本革を模した形状等をエッチング工程により作成した表皮材表面側形成用金型いわゆるキャビティ金型を、反対側の凸部を備えた面(裏面)側には、製造後の凸部の体積割合が12.5%〜90%となる凹パターン、好ましくはこの条件に加え、更に投影面積が10%を超え100%未満となる条件をも満たす凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した表皮材裏面側形成用金型いわゆるコア金型を配した金型を準備する。
【0030】
次いで、上記金型を30℃〜80℃に加熱し、上記表皮材表面側形成用金型及び上記表皮材裏面側形成用金型に、離型剤をスプレーガン等で均一に塗布し乾燥させる。上記離型剤としては、フッ素系離型剤、ナイロン系離型剤又はシリコン系離型剤、又はこれらの任意の組合せに係る離型剤など、射出成形に用いられ離型剤層自体が剥がれ難い従来公知の離型剤や、離型剤層自体が剥がれ易い従来公知の離型剤を適用することができる。なお、上述のように触感向上パウダーをこれらの離型剤に添加し、表皮材の表面に付着させることができる。
【0031】
更に、例えば黒色顔料等を含有したアクリル塗料等の表皮材表面形成用原料を塗装(インモールドコート)することができる。当該塗装方法は、成型後の後塗装と比較して均一な塗膜を得ることができ、また添加する顔料や添加剤の種類を変えることで様々なカラーバリエーションの表皮材や、耐候性などの機能を有する表皮材を容易に得ることができる点で有利である。
【0032】
その後、裏面側形成用金型と表面側形成用金型とを型閉じして密閉空間を形成し、該密閉空間内に微発泡のポリウレタンエラストマー等を形成する表皮材形成用原料を射出し、反応させて固化し、型開きして所望の表皮材を得ることができる。
【0033】
また本発明の積層体の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば表皮材と発泡材、必要であれば芯材等を別個に成形したあと、4ペンギンセメント378Vクロロプレン系などの接着剤を使用して2つ又は3つ以上の部材を積層して層構造を形成する方法や、表皮材と芯材を成形した後に金型内にこれらを配置し、発泡材の層と一体成形して層構造を形成する方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例
に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
表皮材の製造
図5は本例における表皮材を示す部分斜視図である。また図9は、該表皮材の製造過程の断面模式図である。
まず、下記の要領で図9に示す平板金型を準備した。
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側には表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が80%、投影面積が25%、凸部の底面の形状が八角形状、側面の形状が2段の階段状11A、11Bになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
【0036】
次いで、上記平板金型を80℃に加熱し、表皮材表面側形成用金型500A及び表皮材裏面側形成用金型500Bに、離型剤70(シリコン系離型剤:ACMOS社製ACMOSIL)を15g/mの塗布量となるようにスプレーガン(IWATA W−100)で均一に塗布し、離型剤を乾燥させた(図9(a))。更に、表皮材表面側形成用金型500Aに、黒色顔料を含有した表皮材表面形成用原料80の一例であるアクリル系塗料(Red Spot社製 アクアフレッシュ)を厚みが40μmとなるようにスプレーガンで均一に塗布し、乾燥させて表皮材の表面を形成した(図9(b))。
平板金型を閉じ、表皮材の厚みが1mmとなるように、ポリウレタン高圧注入機(Krauss Maffei社 トランスファーミキシングヘッド)によって、表皮材形成用原料90(ポリウレタンエラストマー)を注入し、完全にキュア硬化させて、表皮材を形成した(図9(c))。しかる後、平板金型を開け、本例の表皮材101Aを得た(図9(d))。
【0037】
積層体の製造
次に、下記要領でウレタン発泡層を表皮材と芯材の間に形成し、積層体を得た。
表皮材表面側形成用金型500Aには先に成形した表皮材101Aを、表皮材裏面側形成用金型500Bには予めフレーム処理しておいた基材(芯材)用PP平板をセットした。ポリオールとイソシアネートを混合したウレタン発泡原液を表皮材裏面に注入し、表皮材裏面側形成用金型500Bを閉じた。ウレタン発泡原液を注型すると直ちに発泡、硬化してウレタン発泡層が形成され、表皮材、ウレタン発泡材(層)及び基材(芯材)の順に積層した3層の積層体が得られた。
【0038】
(実施例2)
図5は本例における表皮材を示す部分斜視図である。
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が80%、投影面積が50%、底面の形状が八角形状、側面の形状が2段の階段状11A、11Bになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の積層体を得た。
【0039】
(実施例3)
図5は本例における表皮材を示す部分斜視図である。
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が80%、投影面積が75%、底面の形状が八角形状、側面の形状が2段の階段状11A、11Bになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の積層体を得た。
【0040】
(実施例4)
図6は本例における表皮材を示す部分斜視図である。
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が80%、投影面積が25%、底面の形状が四角形状、側面の形状が2段の階段状11C、11Dになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の積層体を得た。
【0041】
(実施例5)
図7は本例における表皮材を示す部分斜視図である。
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が80%、投影面積が25%、底面の形状が八角形状、側面の形状が1段の階段状11Eになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の積層体を得た。
【0042】
(実施例6)
図5は本例における表皮材を示す部分斜視図である。
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が20%、投影面積が25%、底面の形状が八角形状、側面の形状が2段の階段状11A、11Bになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の積層体を得た。
【0043】
(実施例7)
図8は本例における表皮材を示す部分斜視図である。
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が80%、投影面積が25%、底面の形状がヒトデ形状、側面の形状が2段の階段状11F、11Gになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の積層体を得た。
【0044】
(比較例1)
表皮材として、カレンダー成形により成形したPVCシート(板厚1mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本比較例の積層体を得た。
【0045】
(比較例2)
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が95%、投影面積が25%、底面の形状が八角形状、側面の形状が2段の階段状11A、11Bになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本比較例の積層体を得た。
【0046】
(比較例3)
表皮材表面側形成用金型500Aとして意匠面側に本革を模した形状をエッチング工程により作成した金型を配し、反対側の表皮材裏面側形成用金型500Bとして製造後の凸部の体積割合が10%、投影面積が5%、底面の形状が八角形状、側面の形状が2段の階段状11A、11Bになるようにした凹パターン(製品では凸パターン)をエッチング工程により作成した金型を配し、平板金型を得た。
このような平板金型を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本比較例の積層体を得た。
【0047】
実施例1〜7及び比較例1〜3の積層体について以下の評価を行った。
[官能評価]
<触感評価>
触感評価は、ブラインド(視覚から感じる“しっとりしているように見える”、“柔らかそうに見える”などの感覚を加えない、触感のみを評価する方法)で行い、手のひらで触った際に、手触りの良さを5段階評価で評価した。用いたサンプルのサイズは手のひらを動かすことが可能な範囲とし、A4サイズで行った。
裏面に凸部を設けていない従来の表皮材(比較例1)を基準点(3点)とし、それと同様の手触りだったものを3点、それよりもやや手触りが良いものを4点、非常に手触りが良いものを5点、やや手触りが良くないものを2点。非常に手触りが良くないものを1点とした。得られた結果を表1に示す。
【0048】
<外観評価>
外観評価は、触感評価を行ったものと同様のサンプルを視覚のみで評価した。裏面に凸部を設けていない従来の表皮材(比較例1)を基準点(3点)とし、それと同様の外観であったものを3点、外観が向上したものを4点、外観を損ねたものを2点とした。得られた結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例3〜4及び比較例1の表皮材について、たわみ量(侵入量)を評価した。
測定条件は、以下の通りである。
(1)装置:ハンディー圧縮試験機KES−G5〔カトーテック(株)製〕
(2)圧子:球状治具(直径10mm)
(3)評価サンプル台:装置本体の台座(直置き台)
<測定方法>
(1)環境:標準状態 JIS Z 8703(試験場所の標準状態)の標準温度20℃2級(温度20±2℃)標準湿度65%5級(相対湿度65±5%)とする。
(2)計測条件;
圧子:球
荷重:200gf/cm
速度:0.04mm/sec.
(3)計測回数:有効データ数n=3になるまで計測を行う。
結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
本発明においては、裏面に凸部を設けた表皮材において、触感評価が4点以上、外観評価が3点以上である表皮材を「裏面に凸部を設けても外観を損なうことなくソフト感を向上させることのできる表皮材」であると判断した。
【0053】
表1に示した結果より、上記の判断手法によれば、本発明の範囲に属する実施例1〜7の表皮材は「裏面に凸部を設けても外観を損なうことなくソフト感を向上させることのできる表皮材」となり、本発明の範囲に属さない比較例2〜3は、ソフト感が悪くなる表皮材や、ソフト感、外観が悪くなる表皮材となることが分かった。
また、表2に示した結果より、本発明の表皮材では、たわみ量の値が大きくなるため、良好なソフト感が得られることが分かった。
【0054】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例により詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
上記の実施形態や実施例においては、凸部の存在頻度を投影面積で説明したが、その配列は一定の範囲内で不均一とした場合も本発明の範囲に含まれる。
また、本発明の表皮材は、特にインパネやドアトリムなどの自動車内装用に好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、家具用など別の用途の製品においても応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の表皮材の一実施形態を示す部分断面図である
【図2】本発明の表皮材の別の実施形態を示す部分斜視図である。
【図3】本発明の表皮材の更に別の実施形態を示す部分斜視図である。
【図4】本発明の積層体の一実施形態を示す部分断面図である。
【図5】実施例1〜3及び6における表皮材を示す部分斜視図である。
【図6】実施例4における表皮材を示す部分斜視図である。
【図7】実施例5における表皮材を示す部分斜視図である。
【図8】実施例7における表皮材を示す部分斜視図である。
【図9】本発明の表皮材の製造過程を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0056】
10 凸部
11A 階段状凸部
11B 階段状凸部
11C 階段状凸部
11D 階段状凸部
11E 階段状凸部
11F 階段状凸部
11G 階段状凸部
40 凸部を備えた面
50 凸部を有さない面
70 離型剤
80 表皮材表面形成用原料
90 表皮材形成用原料
100 表皮材
101A 表皮材
101B 表皮材
101C 表皮材
101D 表皮材
200 発泡材
300 芯材
500A 表皮材表面側形成用金型
500B 表皮材裏面側形成用金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂から成る表皮材であって、
片面に凸部を備え、
上記凸部の体積が全体の12.5%〜90%を占めることを特徴とする表皮材。
【請求項2】
上記凸部を備えた面の垂直投影面に対し、上記凸部の垂直投影面の占める面積の割合が10%を超え100%未満であることを特徴とする請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
上記凸部の側面が、階段状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項4】
上記凸部の側面が、斜面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項5】
上記合成樹脂がエラストマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の表皮材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の表皮材と、発泡材とを積層した積層体であって、
上記凸部を備えた面に隣接して上記発泡材を積層したことを特徴とする積層体。
【請求項7】
上記発泡材が、密度100kg/m〜250kg/mの半硬質熱硬化性ウレタンフォームから成ることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
更に、上記発泡材に隣接して芯材を積層したことを特徴とする請求項6又は7に記載の積層体。
【請求項9】
上記芯材が、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、及びポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種類を含有する熱可塑性樹脂から成ることを特徴とする請求項8に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−297934(P2009−297934A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152547(P2008−152547)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】