説明

表面処理方法、および表面処理装置

【課題】 本発明は、樹脂製基板等の表面処理を行う方法であって、処理される基板の選択性が広く、また効率面やコスト面でも好ましい表面処理方法、およびその表面処理に用いられる表面処理装置を提供することを主目的としている。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、基体、および前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板の前記光触媒含有層と、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面が処理される被表面処理面を有する処理用基板の前記被表面処理面とを対向させて配置し、所定の方向からUV−LEDを用いて紫外光を照射することにより、被表面処理面の処理を行うことを特徴とする表面処理方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV−LEDを利用した表面処理方法、およびその表面処理に用いられる表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製のフィルム等の基板の表面改質や洗浄等、基板の表面を処理する方法としては、プラズマ処理や高いエネルギーを有する波長の短い紫外光を照射する方法が用いられてきた。しかしながら、プラズマや波長の短い紫外光を照射した場合、基板自体に影響を与える場合があり、またこれらの光源から発せられる熱線によって基板自体の劣化や変形等が生じてしまう場合があること等から、基板を選択する必要があった。
【0003】
ここで、近年、熱線を発生せず、低コストで紫外光を照射可能なLEDが開発されており、LEDからの紫外光であれば、基板の劣化や変形等が生じないものとすることができる。しかしながら、上記LEDは、通常365nm以上の比較的長波長の紫外光のみ照射可能であり、上記基板の洗浄や表面改質といった用途には、用いることができない、という問題があった。
【0004】
また、本発明者等によって、例えば特許文献1に示されるように、基板と、光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板とを対向させて配置し、水銀ランプやメタルハライドランプ等によって露光を行うことにより、基板の表面を処理する方法が提案されている。この方法によれば、エネルギー照射に伴う光触媒の作用を利用して、短時間で効率的に表面処理を行うことができ、上記プラズマ処理等と比較して基板が受けるダメージ等が少ない、という利点を有する。しかしながら、この場合においても、照射に用いられるエネルギーが連続的な波長分布を有しており、熱線を発生するものであることから、光触媒含有層側基板が反ってしまったり、光触媒含有層が剥がれてしまう場合等があり、基板に対して均一に光触媒の作用を及ぼすことが困難となる等の問題があった。
【0005】
なお、このような問題を解決するために、熱線カットフィルター等を光源と基体との間に挟む方法も挙げられるが、この場合、光源と光触媒含有層との距離が遠くなること等からエネルギーの利用効率が下がり、処理効率が低下する、という問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−103218
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、基板の表面処理を行う方法であって、処理される基板の選択性が広く、また効率面やコスト面でも好ましい表面処理方法、およびその表面処理に用いられる表面処理装置の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基体、および上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板の上記光触媒含有層と、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面が処理される被表面処理面を有する処理用基板の上記被表面処理面とを対向させて配置し、所定の方向からUV−LEDを用いて紫外光を照射することにより、被表面処理面の処理を行うことを特徴とする表面処理方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、表面処理に上記光触媒含有層側基板を用いることから、エネルギー源として光触媒含有層中に含有される光触媒を励起させるのに十分な紫外光を照射することが可能なものを用いればよく、UV−LEDを用いることが可能となる。したがって、特別な装置等を必要とせず、低コストで処理用基板の表面処理を行うことができるのである。また、本発明においては、特定の波長の紫外光のみ照射可能なUV−LEDを光源として用いることから、熱線が発せられないものとすることができ、光触媒含有層側基板が反ったり、光触媒含有層が剥がれたりすることがないものとすることができ、処理用基板に対して均一に表面処理を行うことが可能となる。またさらに、表面処理の際に上記熱線が発せられないことから、UV−LEDと光触媒含有層側基板や処理用基板との距離を近いものとすることができ、効率よく上記処理用基板の表面処理を行うことができる、という利点も有する。
【0010】
また、上記発明においては、上記UV−LEDを、上記基体との距離が100mm以下となる位置に配置して、上記基体側から紫外光を照射することにより、上記被表面処理面の処理を行うことが好ましい。これにより、上記光触媒を励起される紫外光の利用効率が良好となり、少ないエネルギー量で効率よく上記処理用基板の表面処理を行うことができるからである。
【0011】
また、本発明においては、基体、および上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板を支持する光触媒含有層側基板支持部と、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面が処理される被表面処理面を有する処理用基板の上記被表面処理面が上記光触媒含有層と対向するように上記処理用基板を支持する処理用基板支持部と、上記光触媒含有層に紫外光を照射するために用いられるUV−LEDが配置された紫外光照射部とを有することを特徴とする表面処理装置を提供する。
【0012】
本発明の表面処理装置を用いることにより、上記光触媒含有層側基板の光触媒含有層と、処理用基板の被表面処理面とを対向させて配置して、紫外光を照射することができ、紫外光照射に伴う光触媒の作用によって、処理用基板の処理を容易に行うことができる。またこの際、光触媒含有層中に含有される光触媒を励起させる紫外光の光源として、特定の波長の紫外光のみ照射可能なUV−LEDが用いられることから、紫外光照射部から熱線が発せられることのないものとすることができ、上記光触媒含有層側基板が反ること等がなく、均一に処理用基板の表面処理を行うことができる。また、処理用基板の選択性も広がり、様々な処理用基板の表面処理を行うことが可能な表面処理装置とすることができるのである。
【0013】
また、上記発明においては、上記光触媒含有層側基板支持部に支持される光触媒含有層側基板の上記基体と、上記UV−LEDとの距離が100mm以下となるように、上記光触媒含有層側基板支持部と上記紫外光照射部とが配置されていることが好ましい。これにより、エネルギーの利用効率が良好なものとすることができ、低コストで効率よく、処理用基板の表面処理を行うことが可能な表面処理装置とすることができるからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、UV−LEDを光源として用いて処理用基板の処理を行うことができ、特別な装置等を必要とすることがなく、コスト等の面で好ましい方法とすることができる。また、本発明においては、上記UV−LEDを用いることから、表面処理の際に熱線が発生せず、光触媒含有層側基板が反ったり、光触媒含有層が剥がれたりしないものとすることができる。したがって、均一に処理用基板の処理を行うことができ、また光触媒含有層側基板と光源との距離が近いものとすることができることから、エネルギーの利用効率を良好なものとすることもできる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、UV−LEDを利用した表面処理方法、およびその表面処理に用いられる表面処理装置に関するものである。以下、それぞれについてわけて説明する。
【0016】
A.表面処理方法
まず、本発明の表面処理方法について説明する。本発明の表面処理方法は、基体、および上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板の上記光触媒含有層と、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面が処理される被表面処理面を有する処理用基板の上記被表面処理面とを対向させて配置し、所定の方向からUV−LEDを用いて紫外光を照射することにより、被表面処理面の処理を行うことを特徴とする方法である。
【0017】
本発明の表面処理方法を、図1を用いて説明する。本発明の表面処理方法は、例えば図1に示すように、基体1および、その基体1上に形成された光触媒含有層2を有する光触媒含有層側基板3の光触媒含有層2と、上記処理用基板5の被表面処理面4とが対向するように配置し、所定の方向からUV−LED6用いて紫外光を照射することにより、上記処理用基板5の被表面処理面4を処理する方法である。
【0018】
本発明によれば、UV−LEDから照射される紫外光によって光触媒含有層中に含有される光触媒を励起させることができ、この光触媒の作用により上記処理用基板の処理を行うことができる。ここでUV−LEDは寿命が長く、点灯後すぐに安定発光することから、ランニングコストが低い。したがって、本発明によれば、特別な装置等を用いることなく、低コストで処理用基板の表面処理を行うことができるのである。
【0019】
また従来の、光触媒含有層側基板を用いて表面処理をする方法においては、エネルギー照射が、連続な波長分布を有するメタルハライドランプや、水銀ランプ等を用いて行われていたことから、光源から熱線も同時に発せられ、光触媒含有層側基板や処理用基板に耐熱性の低い材料を用いることができなかった。また、光源からの熱によって、上記光触媒含有層側基板が反ってしまったり、光触媒含有層と基体との熱膨張率の差等によって光触媒含有層が剥がれてしまうこと等があり、均一に処理用基板の表面処理を行うことができない場合があった。
【0020】
一方、本発明においては、特定の波長の紫外光のみ照射可能なUV−LEDを用いることから、光源から熱線が発せられないものとすることができ、表面処理可能な処理用基板の選択性や、上記光触媒含有層側基板に用いられる基体の選択性を広いものとすることができる。また、光触媒含有層側基板が反ったり光触媒含有層が剥がれたりすること等がないことから、処理用基板の表面処理を均一に行うことができる。またさらに本発明によれば、表面処理の際、熱線が照射されないことから、上記光触媒含有層側基板と光源、もしくは上記処理用基板と光源とを近接して配置した状態で表面処理を行うことができ、少ないエネルギーで効率よく表面処理を行うことができるのである。
以下、本発明の表面処理方法に用いられるUV−LED、光触媒含有層側基板、処理用基板、および紫外光の照射方法について説明する。
【0021】
1.UV−LED
まず、本発明の表面処理方法に用いられるUV−LEDについて説明する。本発明に用いられるUV−LEDとしては、一般的にUV−LEDとして用いられているものであって、後述する光触媒含有層中に含有される光触媒を励起させることが可能な波長の紫外光を照射可能なものであれば特に限定されるものではない。本発明においては、400nm以下、中でも300nm〜380nmの範囲内、特に350nm〜370nmの範囲内の波長を照射可能なものが用いられることが好ましい。これは、後述するように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させる紫外光として、上述した波長の光が好ましいからである。
【0022】
なお、本発明においては、このようなUV−LEDの光源を1つのみ用いて後述する紫外光照射を行ってもよく、また2つ以上のUV−LEDを用いて紫外光照射を行ってもよい。このようなUV−LEDを光源とする表面処理装置については、後述する「B.表面処理装置」の項で詳しく説明するので、ここでの説明は省略する。
【0023】
2.光触媒含有層側基板
次に、本発明に用いられる光触媒含有層側基板について説明する。本発明に用いられる光触媒含有層側基板は、基体と、その基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層とを有するものであれば特に限定されるものではない。以下、それぞれについて説明する。
【0024】
(光触媒含有層)
本発明に用いられる光触媒含有層は、後述する基体上に形成されるものであり、少なくとも光触媒を含有するものであって、光触媒含有層中に含有される光触媒の作用により、対向されて配置された処理用基板の表面処理を行うことが可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0025】
このような光触媒含有層は、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、また光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の濡れ性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、表面処理の効率が向上し、表面処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0026】
本発明に用いられる光触媒含有層中に含有される光触媒としては、半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができる。また半導体以外としては、金属錯体や銀なども用いることができる。本発明においては、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0028】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0029】
また光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0030】
上述したような光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能である。また、有機基の分解や変性等を均一に行うことが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に表面処理を行うことができる。
【0031】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基体上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0032】
一方、光触媒含有層にバインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0033】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基体上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0034】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0035】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基体上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜80重量%、好ましくは20〜70重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0037】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0038】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0039】
(基体)
次に、本発明に用いられる基体について説明する。本発明に用いられる基体としては、上記光触媒含有層が形成可能なものであれば、特に限定されるものではない。このような基体としては、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよく、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。本発明においては、表面処理の際の光源として、上記UV−LEDが用いられることから、基体として耐熱性の低い樹脂製フィルム等も用いることができる。
【0040】
また、本発明において、基体の紫外光透過性については、上記UV−LEDからの紫外光の照射方向により適宜選択される。例えばUV−LEDからの紫外光照射が、後述する処理用基板側から行われる場合には、上記紫外光に対する透過性は必要とされないが、上記紫外光照射が光触媒含有層側基板側から行われる場合には、上記紫外光に対する透過性が高いものが基体として用いられる。
【0041】
ここで、本発明においては、上記基体表面と上記光触媒含有層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0042】
3.処理用基板
次に、本発明の表面処理方法により表面処理される処理用基板について説明する。本発明の表面処理方法により処理される処理用基板としては、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面処理される被表面処理面を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0043】
上記被表面処理面としては、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面処理されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば上記光触媒の作用により表面の不純物等が分解等され、表面が洗浄される面であってもよく、また上記光触媒の作用により表面の有機基が分解または変性等して濡れ性が変化する面等であってもよい。また例えば表面の帯電性が改良される面や、表面の密着性が改良される面等であってもよい。
【0044】
本発明に用いられる処理用基板は、上記被表面処理面を有するものであれば、1層からなるものであってもよく、また2層以上の層が積層されたもの等であってもよい。例えばシリコン、ガラス、セラミックス等の無機材料や、金、銀、銅、鉄等の金属材料からなるもの等であってもよく、またポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルフロライド、アセタール樹脂、ナイロン、ABS、PTFE、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン等の樹脂等からなるものであってもい。なお、本発明においては、表面処理の際に光源として、上記UV−LEDが用いられることから、処理用基板として、例えば耐熱性の低い樹脂製フィルム等も用いることができる。また、上記基板の形状としても特に限定されるものではなく、例えばフィルム状であってもよく、また板状等であってもよい。
【0045】
4.紫外光の照射方法
次に、本発明における紫外光の照射方法について説明する。本発明における紫外光の照射は、上記光触媒含有層側基板の光触媒含有層と、上記処理用基板の被表面処理面とを対向させて配置し、所定の方向から上記UV−LEDを用いて紫外光を照射することにより行われる。この際、紫外光の照射方向は、上記処理用基板の紫外光透過性等により適宜選択することができる。例えば上記処理用基板がUV−LEDから照射される紫外光に対して透過性を有する場合には、処理用基板側にUV−LEDを配置して紫外光照射を行うことができる。また光触媒含有層側基板の基体に、紫外光透過性の高いものを用いた場合には、UV−LEDを光触媒含有層側基板の基体側に配置して、光触媒含有層側基板側から紫外光照射を行うことができる。
【0046】
本発明においては、特に上記UV−LEDを光触媒含有層側基板側に配置し、光触媒含有層側基板側から紫外光を照射することが好ましく、基体とUV−LEDとの距離が100mm以下、中でも10mm以下、特に1mm以下となる位置にUV−LEDを配置して紫外光を照射することが好ましい。これにより、UV−LEDから照射された紫外光を拡散させることなく、光触媒含有層に到達させることができ、エネルギーの利用効率を高いものとすることができる。したがって、低コストで効率よく表面処理を行うことができるからである。なお、本発明における上記UV−LEDと基体との距離とは、UV−LEDの発光面から基体表面までの距離をいうこととする。
【0047】
また、上記処理用基板および光触媒含有層側基板を、上記処理用基板の被表面処理面と光触媒含有層との距離が10cm以下、中でも1cm以下、特に500μm以下となるように配置して紫外光照射を行うことが好ましい。これにより、上記光触媒含有層中に含有される光触媒の作用を、効率よく被表面処理面に及ぼすことが可能となるからである。
【0048】
また本発明における表面処理は、上記処理用基板全面に行うものであってもよく、また処理用基板の一部のみに行うものであってもよい。また、紫外光の照射量としては、上記処理用基板の被表面処理面が処理されるのに必要な量とされる。なお、本発明においては、このような光触媒含有層側基板やUV−LEDの配置状態は、少なくとも紫外光照射の間だけ維持されればよい。
【0049】
また、本発明においては、上記紫外光照射の際、上記UV−LEDからの紫外光以外に、例えば他の光源から照射される波長の異なる光等のエネルギーを併せて用いてもよい。このようなエネルギーとしては、例えば処理用基板の位置を測定するためのエネルギー等が挙げられる。
【0050】
B.表面処理装置
次に、本発明の表面処理装置について説明する。本発明の表面処理装置は、基体、および前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板を支持する光触媒含有層側基板支持部と、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面が処理される被表面処理面を有する処理用基板の前記被表面処理面が前記光触媒含有層と対向するように前記処理用基板を支持する処理用基板支持部と、前記光触媒含有層に紫外光を照射するために用いられるUV−LEDが配置された紫外光照射部とを有することを特徴とするものである。
【0051】
本発明の表面処理装置は、例えば図2に示すように、光触媒含有層側基板を支持する光触媒含有層側基板支持部11と、処理用基板を支持する処理用基板支持部12と、光触媒含有層に紫外光を照射するUV−LED13が配置された紫外光照射部14とを有するものである。
【0052】
本発明の表面処理装置を用いることにより、上記光触媒含有層側基板の光触媒含有層と、処理用基板の被表面処理面とを対向させて配置して、紫外光を照射することができ、紫外光照射に伴う光触媒の作用によって、処理用基板の処理を行うことができる。またこの際、光触媒含有層中に含有される光触媒を励起させる紫外光の光源として、特定の波長の紫外光のみ照射可能なUV−LEDが用いられることから、紫外光照射部から熱線が発せられることのないものとすることができ、上記光触媒含有層側基板に用いられる基体や、上記処理用基板の材料選択性が広いものとすることができる。また、熱線が発せられないことから、光触媒含有層側基板が反ったり、光触媒含有層と基体との熱膨張率の差等により光触媒含有層が剥がれてしまうこと等がないものとすることができ、処理用基板に対して均一に表面処理を行うことが可能となる。
以下、本発明の表面処理装置の各構成ごとに詳しく説明する。
【0053】
1.紫外光照射部
まず、本発明に用いられる紫外光照射部について説明する。本発明に用いられる紫外光照射部は、光触媒含有層に紫外光を照射するUV−LEDが配置されたものであれば、特に限定されるものではなく、UV−LEDが1つのみ配置されたものであってもよく、また複数のUV−LEDが配置されたものであってもよい。また、例えば図2に示すように、処理用基板全面を一時に表面処理するように、処理用基板が支持される領域全面にUV−LED13が配置されていてもよく、また処理用基板の一部を表面処理するように、ライン状等にUV−LEDが配置されていてもよい。また、例えば上記処理用基板をスポットで表面処理するようにUV−LEDが配置されていてもよい。
【0054】
ここで本発明において、上記紫外光照射部が形成される位置としては、光触媒含有層側基板支持部に支持された光触媒含有層中の光触媒を励起させることが可能な位置であれば特に限定されるものではない。例えば、光触媒含有層側基板支持部に支持された光触媒含有層側基板側から紫外光を照射するように、光触媒含有層側基板と近接して形成されていてもよく、また処理用基板支持部に支持された支持用基板側から紫外光を照射するように、紫外光照射部が処理用基板支持部と近接して形成されていてもよい。
【0055】
本発明においては、特に上記紫外光照射部が、光触媒含有層側基板と近接して形成されていることが好ましく、紫外光照射部内のUV−LEDと、光触媒含有層側基板保持部に保持された光触媒含有層側基板の基体との距離が100mm以下、中でも10mm以下、特に1mm以下となるように形成されていることが好ましい。これにより、UV−LEDから照射された紫外光を拡散させることなく、光触媒含有層に到達させることができ、エネルギーの利用効率が高く、低コストで効率よく表面処理を行うことが可能な表面処理装置とすることができるからである。ここで、本発明における上記UV−LEDと基体との距離とは、UV−LEDの発光面から基体表面までの距離をいう。
【0056】
なお、本発明に用いられる紫外光照射部に配置されるUV−LEDとしては、上述した「A.表面処理方法」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0057】
また、本発明においては、上記紫外光照射部に、UV−LED以外の光源を有していてもよい。このような光源としては、例えば処理用基板の位置を測定するためのエネルギーを照射する光源等が挙げられる。
【0058】
2.光触媒含有層側基板支持部
次に、本発明に用いられる光触媒含有層側基板支持部について説明する。本発明に用いられる光触媒含有層側基板支持部は、光触媒含有層側基板を、表面処理装置中で安定して支持することが可能なものであれば特に限定されるものではない。その光触媒含有層側基板支持部の形状等は、光触媒含有層側基板の大きさや形状等に合わせて適宜選択されることとなる。
【0059】
例えば光触媒含有層側基板の全面を支えるような構造であってもよく、また光触媒含有層側基板の一部を支持するような構造であってもよい。
【0060】
このような光触媒含有層側基板支持部は、光触媒含有層側基板を支持することが可能な強度を有するものであれば、その材料等は特に限定されるものではなく、例えば金属やセラミック等の無機材料や、プラスチック等の有機材料も用いることができる。
【0061】
3.処理用基板支持部
次に、本発明に用いられる処理用基板支持部について説明する。本発明に用いられる処理用基板支持部は、上記光触媒含有層側基板支持部によって支持された光触媒含有層側基板の光触媒含有層と、処理用基板の表面処理される側の被表面処理面とが向かい合うように、処理用基板を支持することが可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0062】
本発明においては特に、処理用基板支持部に支持された処理用基板の被表面処理面と、光触媒含有層側基板支持部により支持された光触媒含有層側基板の光触媒含有層との距離が10cm以下、中でも1cm以下、特に500μm以下となるような位置に処理用基板支持部が形成されていることが好ましい。これにより、上記光触媒含有層中に含有される光触媒の作用を、効率よく被表面処理面に及ぼすことが可能となるからである。
【0063】
また、上記処理用基板支持部の形状等は、処理用基板の大きさや形状等に合わせて適宜選択されることとなる。例えば処理用基板の全面を支えるような構造であってもよく、また処理用基板の一部を支持するような構造であってもよい。
【0064】
また本発明においては、例えば図2や図4に示すように、処理用基板支持部12が、処理用基板5を一定の場所に支持するものであってもよいが、例えば図3に示すように、処理用基板支持部12が、処理用基板5を支持しながら搬送するもの等としてもよい。このような処理用基板を支持しながら搬送する処理用基板支持部としては、例えば一般的な基板の搬送手段に用いられるローラーや、コンベア等と同様の構造を有するものとすることができる。
【0065】
4.表面処理装置
本発明の表面処理装置は、上記紫外光照射部、光触媒含有層側基板支持部、処理用基板支持部を有するものであれば、特に限定されるものではない。本発明においては、例えば図2に示すように、光触媒含有層側基板支持部11および処理用基板支持部12に、それぞれ光触媒含有層側基板および処理用基板を支持させた状態で、紫外光照射部14から紫外光を照射して、処理用基板の被表面処理面を処理する装置等としてもよい。
また、例えば図3に示すように、処理用基板支持部12が、処理用基板5の搬送機能を有するもの等とすることもできる。この場合、光触媒含有層側基板支持部11に支持された光触媒含有層側基板3、およびその近傍に配置された紫外光照射部14の下を、処理用基板5が通過する際に、処理用基板5の被表面処理面4が処理されることとなる。
【0066】
また、例えば表面処理装置を開閉可能な箱状の装置とし、たとえば上蓋に光触媒含有層側基板支持部11と、紫外光照射部14とを配置し、箱の内側に処理用基板支持部12を配置したもの等としてもよい。この場合、光触媒含有層側基板支持部11および処理用基板支持部12に、それぞれ光触媒含有層側基板3および処理用基板5を支持させて、上蓋を閉めた状態で紫外光照射部14から紫外光を照射することにより、処理用基板5の表面処理を行うことができる。
【0067】
なお、本発明においては、上記部材以外にも必要に応じて適宜他の部材を有していてもよい。
【0068】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0070】
[実施例1]
<処理用基板の作製>
フルオロアルキルシラン(TSL8233 GE東芝シリコーン製)1.5g、テトラメトキシシラン(TSL8114 GE東芝シリコーン製)5.0g、及び0.01N塩酸2.5gを24時間常温にて攪拌して撥液付与剤を作製した。
前記撥液付与剤をイソプロピルアルコールにて20倍に希釈し、特性変化層形成用組成物を調整した。前記特性変化層形成用組成物をガラス基板(NA−35 NHテクノガラス製)上にスピンコートすることにより処理用基板を作製した。
【0071】
<光触媒含有層側基板の作製>
チタニアゾル(STS‐01 石原産業製)を水とイソプロパノールとの混合液(重量比=1:1)にてTiO濃度が0.5wt%となるように希釈し、光触媒含有層形成用組成物とした。
前記光触媒含有層形成用組成物を、石英ガラス基板上にスピンコートし、200℃で15分間焼成することにより光触媒含有層側基板を作製した。
【0072】
<露光>
前記処理用基板の特性変化層と前記光触媒含有層側基板の光触媒含有層とを1mmの間隔となるように配置し、前記光触媒含有層側基板側からUV−LED(日亜化学製NCCU033)により紫外光を120秒照射することにより露光を行った。その結果、水との接触角が110°であった処理用基板の被表面処理面(特性変化層表面)の水との接触角が10°以下となった。なお、この時の、UV−LEDと光触媒含有層側基板との距離は1mmであった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の表面処理方法を説明するための説明図である。
【図2】本発明の表面処理装置の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の表面処理装置の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の表面処理装置の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 …基体
2 …光触媒含有層
3 …光触媒含有層側基板
4 …被表面処理面
5 …処理用基板
6、13 …UV−LED
11…光触媒含有層側基板支持部
12…処理用基板支持部
14…紫外光照射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、および前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板の前記光触媒含有層と、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面が処理される被表面処理面を有する処理用基板の前記被表面処理面とを対向させて配置し、所定の方向からUV−LEDを用いて紫外光を照射することにより、被表面処理面の処理を行うことを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記UV−LEDを、前記基体との距離が100mm以下となる位置に配置して、前記基体側から紫外光を照射することにより、前記被表面処理面の処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
基体、および前記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板を支持する光触媒含有層側基板支持部と、紫外光照射に伴う光触媒の作用により表面が処理される被表面処理面を有する処理用基板の前記被表面処理面が前記光触媒含有層と対向するように前記処理用基板を支持する処理用基板支持部と、前記光触媒含有層に紫外光を照射するために用いられるUV−LEDが配置された紫外光照射部とを有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】
前記光触媒含有層側基板支持部に支持される光触媒含有層側基板の前記基体と、前記UV−LEDとの距離が100mm以下となるように、前記光触媒含有層側基板支持部と前記紫外光照射部とが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−225751(P2006−225751A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44779(P2005−44779)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】