説明

表面処理装置および表面処理方法

【課題】 自己放電型の表面処理装置および表面処理方法において、自己バイアス電圧の変化に関係なく安定した表面処理を実現し、ひいては安定した表面処理結果を得る。
【解決手段】 本発明に係るプラズマCVD装置10によれば、真空槽10と被処理物としての各基板18,18,…とを一対の電極として、これらに放電用電力としての正弦波電力Wpが供給される。このとき、各基板18,18,…の表面に負の直流電圧である自己バイアス電圧が現れる。併せて、真空槽10を陽極とし、各基板18,18,…を陰極として、これらに直流電力Waが供給される。これによって、各基板18,18,…には、自己バイアス電圧を含む直流電圧Vaが印加された状態となる。ゆえに、自己バイアス電圧が変化したとしても、この自己バイアス電圧を含む直流電圧Vaは一定であるので、安定した表面処理が実現され、ひいては安定した表面処理結果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置および表面処理方法に関し、特に、基準電位に接続された真空槽とこの真空槽の内部に収容された被処理物とを一対の電極としてこれらに交流の放電用電力を供給することによって真空槽の内部にプラズマを発生させながら被処理物に表面処理を施す、いわゆる自己放電型の表面処理装置および表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の表面処理装置および表面処理方法として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。即ち、この特許文献1には、真空槽としてのチャンバーと、このチャンバー内において被処理物としての基材を保持する基材ホルダーと、チャンバー内に処理ガスを導入するガス導入経路と、チャンバー内に周波数が50kHz〜500kHzの高周波出力を供給する高周波電源と、を具備する構成が、開示されている。なお、特許文献1には明記されていないが、チャンバーは、接地電位に接続された高周波電源の一方出力端子と同様、当該接地電位に接続されているものと、推察される。
【0003】
このような構成の従来技術によれば、チャンバー内にガス導入経路を介して処理ガスが導入されると共に、当該チャンバー内に高周波電源から高周波出力が供給されると、厳密には当該チャンバーと基材ホルダーとを一対の電極としてこれらに高周波電源からの高周波出力が供給されると、当該チャンバー内にプラズマが発生する。そして、このプラズマを利用した表面処理、例えばイオン窒化処理やDLC(Diamond
Like Carbon)膜の生成処理が、基材に施される。ここで、プラズマを発生させるための放電用電源として周波数が50kHz〜500kHzという言わば長中波帯の高周波電源が採用されることで、当該放電用電源として直流電源が採用される場合と、当該放電用電源として周波数が13.56MHzという短波帯の高周波電源が採用される場合と、の両方の利点が得られる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−38217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来技術のように放電用電源として交流電源が採用される場合は、被処理物の表面に自己バイアス電圧が現れる。この自己バイアス電圧は、接地電位を基準とする負の直流電圧である。この自己バイアス電圧が現れることによって、プラズマ内のイオンが被処理物の表面に積極的に入射され、表面処理が促進される。つまり、自己バイアス電圧は、表面処理に必須の要素である。その一方で、自己バイアス電圧は、表面処理の結果に影響を及ぼす要素でもある。ところが、自己バイアス電圧は、真空槽内の容積や真空度、被処理物の表面積等の諸条件によって変わる。例えば、被処理物の表面積以外の条件が一定であるとしても、当該被処理物の表面積が変わると、自己バイアス電圧が変わる。言い換えれば、被処理物の表面積に合わせて、それ以外の条件が設定されたとしても、自己バイアス電圧が一定になるとは限らない。従来技術では、この自己バイアス電圧が一定でないために、安定した表面処理を実現することができず、ひいては安定した表面処理結果が得られない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、従来よりも安定した表面処理結果を得ることができる表面処理装置および表面処理方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明のうちの第1発明は、基準電位に接続されると共に内部に被処理物が収容される真空槽を有し、この真空槽と被処理物とを一対の電極としてこれらに交流の放電用電力を供給することによって真空槽の内部にプラズマを発生させながら被処理物に表面処理を施す表面処理装置を、前提とする。この前提の下、真空槽を陽極とし被処理物を陰極としてこれらに直流電力を供給する直流電力供給手段を、具備する。ここで、直流電力の電圧成分の絶対値は、放電用電力の供給によって被処理物の表面に現れる自己バイアス電圧の絶対値よりも大きい、というものである。
【0008】
この構成によれば、真空槽と被処理物とを一対の電極として、これらに交流の放電用電力が供給される。これにより、真空槽内にプラズマが発生し、このプラズマを利用した表面処理が被処理物に施される。このとき、被処理物の表面に自己バイアス電圧が現れる。この自己バイアス電圧は、真空槽が接続された基準電位に対して負の直流電圧である。併せて、真空槽を陽極とし、被処理物を陰極として、これらに直流電力供給手段から直流電力が供給される。これにより、交流の放電用電力に当該直流電力が重畳される。この直流電力の電圧成分の絶対値は、自己バイアス電圧の絶対値よりも大きい。ゆえに、自己バイアス電圧は、当該直流電力の電圧成分によって包含された(埋もれた)状態になる。この結果、被処理物に対して自己バイアス電圧を含む一定の直流電圧が印加された状態になる。このように自己バイアス電圧を含む一定の直流電圧が印加されることで、安定した表面処理が実現される。
【0009】
なお、直流電力供給手段は、直流電力の電圧成分の絶対値を任意に変更可能であるのが、望ましい。つまり、自己バイアス電圧を含む直流電圧が任意に変更可能とされることで、この直流電圧による表面処理への影響(作用度合)が制御可能となり、ひいては様々な表面処理に柔軟に対応することができる。
【0010】
ここで言う表面処理は、DLC膜の生成処理を含む。この場合、例えば当該DLC膜という高硬度被膜のさらなる高硬度化を図ることができる。しかも、一定の表面処理結果を得ることができる。
【0011】
また、当該表面処理は、イオン窒化処理をも含むものとしてもよい。この場合、例えば当該イオン窒化処理による被処理物の表面のさらなる改質を図ることができる。そして、一定の表面処理結果を得ることができる。
【0012】
加えて、放電用電力は、正弦波電力であるのが、望ましい。これは、周囲へのノイズの影響を防止するためである。即ち、放電用電力として例えば矩形波電力等のパルス電力が採用される場合、このパルス電力は、一般に、その生成過程で必然的に発生するn次の高調波を含むため、当該n次の高調波がノイズとなって周囲に悪影響を及ぼす恐れがある。これに対して、正弦波電力は、そのような高調波を含まないので、当該高調波による周囲への影響はない。ゆえに、放電用電力としては正弦波電力が好適である。
【0013】
さらに、放電用電力の周波数は、100kHz〜1MHzであるのが、望ましい。このように放電用電力の周波数が規定されるのは、特に100kHzという下限周波数が規定されるのは、異常放電の一種であるアークの発生を抑制するためである。即ち、表面処理としてDLC膜等の絶縁性被膜の生成処理が行われる場合、当該絶縁性被膜によって絶縁化された被処理物の表面に正の電荷が蓄積されるという、いわゆるチャージアップ現象が生じる。このチャージアップ現象は、放電用電力の極性に応じて被処理物の電位が基準電位に対して負電位になったときに生じ、当該被処理物の電位が基準電位に対して正電位になると解消する。このチャージアップ現象が長期間にわたって生じると、要するに放電用電力の周波数が低いために被処理物の電位が連続して負電位になる期間が長いと、アークが発生し易くなる。このアークが発生すると、プラズマの状態が変わるため、表面処理の結果が変わる。そればかりか、被処理物が高温となり、ひいては溶融する恐れがある。種々の実験の結果、放電用電力の周波数が100kHz以上であれば、言い換えれば被処理物の電位が連続して負電位になる期間が当該100kHz以上という周波数に応じた期間内に抑えられれば、アークの発生が抑制されることが、判明した。このことから、放電用電力の下限周波数は100kHzに規定される。一方、1MHzという上限周波数が規定されるのは、放電用電力の供給源としての電源装置およびその従属機器としてのインピーダンス整合器(マッチングボックス)の調達性による。即ち、周波数が1MHz以下の電源装置であれば、それよりも周波数の高い例えば上述の13.56MHz用の電源装置に比べて安価であり、調達し易い。そして、この電源装置と被処理物を含む負荷側とのインピーダンス整合も比較的に容易であるので、これを担うインピーダンス整合器もまた安価であり、調達し易い。このことから、放電用電力の上限周波数は1MHzに規定される。
【0014】
ただし、このように放電用電力の周波数が規定されても、特に100kHzという下限周波数が規定されても、アークが発生する場合がある。例えば、放電用電力の周波数が100kHzであるとしても、この放電用電力が矩形波電力であり、かつ、そのデューティ比の兼ね合いによって被処理物の電位が連続して負電位に成る期間が連続して正電位になる期間に比べて極端に長い場合(つまりデューティ比が0.5よりも極端に小さい場合)が、これに当たる。種々の実験の結果、放電用電力の1周期において、被処理物の電位が負電位になる期間が5μs未満であれば、アークの発生が確実に抑制されることが、判明した。このことから、放電用電力の1周期において、被処理物の電位が負電位になる期間が5μs未満であるのが、望ましい。
【0015】
本発明の第2発明は、第1発明に対応する方法発明であり、即ち、基準電位に接続された真空槽とこの真空槽の内部に収容された被処理物とを一対の電極としてこれらに交流の放電用電力を供給することによって真空槽の内部にプラズマを発生させながら被処理物に表面処理を施す表面処理方法を、前提とする。この前提の下、真空槽を陽極とし被処理物を陰極としてこれらに直流電力を供給する直流電力供給過程を具備する。ここで、直流電力の電圧成分の絶対値は、放電用電力の供給によって被処理物の表面に現れる自己バイアス電圧の絶対値よりも大きい、というものである。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明によれば、被処理物に対して自己バイアス電圧を含む一定の直流電圧が印加される。従って例えば、自己バイアス電圧が変化したとしても、この自己バイアス電圧を含む直流電圧全体としては一定であるので、安定した表面処理が実現される。ゆえに、自己バイアス電圧の影響によって安定した表面処理を行うことのできない上述の従来技術に比べて、安定した表面処理結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図2】同実施形態における各基板に印加される電圧の波形を示す図解図である。
【図3】同実施形態の具体的実施例としての実験の条件を示す一覧である。
【図4】同条件の細部を示す一覧である。
【図5】同実験の結果を示す一覧である。
【図6】同実施形態の別の実施例として先の実験に加えられるイオン窒化処理の条件を示す一覧である。
【図7】同イオン窒化処理が加えられた実験の結果を示す一覧である。
【図8】同イオン窒化処理による効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について、プラズマCVD装置10を例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るプラズマCVD装置10は、概略円筒形の真空槽12を備えている。この真空槽12は、当該円筒形の両端に当たる部分を上下に位置させた状態で設置されており、当該両端に当たる部分は上面および下面として閉鎖されている。なお、この真空槽12の内部空間の直径は、例えば約600mmであり、高さ寸法は、例えば約500mmである。また、真空槽12は、耐食性および耐熱性の高い金属、例えばSUS304等のステンレス鋼製であり、その壁部は、基準電位としての接地電位に接続されている。
【0020】
さらに、真空槽12の壁部の適宜位置、例えば下面の中央よりも外方寄りの位置には、排気口14が設けられている。この排気口14には、図示しない排気管を介して、真空槽12の外部に設けられた図示しない排気手段としての真空ポンプが結合されている。この真空ポンプとしては、例えばルーツポンプとロータリポンプとの組合せが採用される。勿論、これ以外のポンプも採用可能であるが、後述する真空引きにおいて真空槽12内の圧力Pを1Pa程度にまで下げられるものであればよく、ゆえに、ターボ分子ポンプや油拡散ポンプ等の高性能ポンプは必要ない。真空引き後は、この真空ポンプのモータの回転数によって真空槽12内の圧力Pが制御される。つまり、真空ポンプは、真空槽12内の圧力Pを制御する圧力制御手段としても機能する。加えて、排気管の途中には、図示しないバルブが設けられており、このバルブもまた、圧力制御手段として機能する。
【0021】
真空槽12内には、横方から見た形状が概略櫛形の言わば櫛形電極16が設けられている。そして、この櫛形電極16に、被処理物としての複数の基板18,18,…がセットされる。
【0022】
具体的には、櫛形電極16は、1本の丸棒状の支柱20と、この支柱20に取り付けられた複数の円盤状の基板台22,22,…と、によって構成されている。このうちの支柱20は、耐食性および耐熱性に優れた金属、例えばステンレス鋼またはアルミニウム合金製であり、真空槽12内の略中央を当該真空槽12の下面側から上面側に向かって略鉛直に延伸するように設けられている。なお、支柱20の下方端側は、後述する絶縁碍子24を介して、真空槽12の下面の略中央に固定されている。そして、支柱22の上方端は、自由端とされており、真空槽12の上面よりも少し下方の位置にある。つまり、真空槽12の上面と支柱22の上方端との間に、適当な空間が設けられている。
【0023】
各基板台22,22,…もまた、支柱20と同様、ステンレス鋼またはアルミニウム合金製である。これら各基板台22,22,…は、互いに同じ仕様のものであり、支柱20を中心として同軸状に、かつ、当該支柱20の長さ方向(鉛直方向)において互いに一定の距離Dを置いた状態で、取り付けられている。それぞれの基板台22の上面には、1以上、例えば複数の、凹状の収容部26,26,…が設けられており、それぞれの収容部26に、基板18がその被処理面を上方に向けた状態でセットされる。このため、それぞれの収容部26の形状および大きさは、基板18の形状および大きさに合わせて設計されている。そして、収容部26(基板18)の形状および大きさ、さらには数に応じて、基板台22の大きさ、詳しくは直径φおよび厚さ寸法tが、定められる。また、基板台22の大きさや数によって、支柱22の長さや直径、さらには各基板台22および22間の距離Dが定められる。
【0024】
上述の絶縁碍子24は、概略円柱状のものであり、真空槽12の下面の略中央において当該真空槽12の下面を貫通するように設けられている。そして、この絶縁碍子24を介して、櫛形電極16の支柱20の下方端が、真空槽12の外部に引き出されている。つまり、櫛形電極16と真空槽12とは、互いに電気的に絶縁されている。
【0025】
真空槽12の外部に引き出された櫛形電極16の支柱20の下方端は、インピーダンス整合器28を介して、放電用電源手段としての長中波電源装置30の一方出力端子に接続されている。長中波電源装置30は、周波数fpが100kHz〜1MHzという長中波帯の正弦波電力Wpを出力するものであり、当該正弦波電力(出力パワー)Wpおよび周波数fpは、可変である。この長中波電源装置30の他方出力端子は、接地電位に接続されている。
【0026】
併せて、櫛形電極16の支柱20の下方端は、交流遮断用のローパスフィルタ32を介して、直流電力供給手段としての直流電源装置34の陰極端子に接続されている。そして、この直流電源装置34の陽極端子は、接地電位に接続されている。即ち、櫛形電極16と接地電位との間、言い換えれば各基板18,18,…(図1における点Q)と真空槽12との間に、ローパスフィルタ32と直流電源装置34との直列回路と、インピーダンス整合器28と長中波電源装置30との直流回路とが、並列に接続されている。なお、直流電源装置34から出力される直流電力Waの電圧成分Vaは、可変である。
【0027】
さらに、真空槽12内における当該真空槽12の上面と櫛形電極16の支柱20の上方端との間の空間に、ガス拡散手段としてのガスノズル36が設けられている。このガスノズル36は、ガス導入管38を介して、真空槽12の外部に設けられた図示しないガス供給手段としてのガス供給装置に結合されている。ガス供給装置は、放電用ガスとしてのアルゴン(Ar)ガスと、放電用ガスおよび洗浄用ガスとしての水素(H)ガスと、材料ガスとしてのテトラメチルシラン(Si(CH;以下TMSと言う。)ガスおよびメタン(CH)ガスと、イオン窒化用ガスとしての窒素(N)ガスと、のそれぞれの供給源を備えている。なお、図示しないが、ガス導入管38には、各ガスの流量を個別に調整するための流量調整手段、例えばマスフローコントローラと、当該各ガスの流通路を個別に開閉するための開閉手段、例えば開閉バルブとが、設けられている。
【0028】
加えて、真空槽12内の適当な位置に、当該真空槽12の内壁を100℃〜600℃程度に加熱するための図示しない加熱手段としてのヒータが設けられている。そして、このヒータ用の図示しない電源装置が、真空槽12の外部に設けられている。
【0029】
このように構成されたプラズマCVD装置10によれば、DLC膜の生成処理を実現することができる。
【0030】
具体的には、まず、当該DLC膜の生成処理に先立って、真空引きが行われる。即ち、真空槽12内が真空ポンプによって排気されて、当該真空槽12内の圧力Pが5Pa以下、例えば1Pa程度、とされる。
【0031】
この真空引きが行われた後、放電洗浄処理が行われる。即ち、上述のガス供給装置からガス導入管38およびガスノズル36を介して真空槽12内にアルゴンガスおよび水素ガスが導入される。これらのガスは、ガスノズル36によるガス拡散作用によって、真空槽12内に均一に拡散される。この状態で、長中波電源装置30から放電用電力としての正弦波電力Wpが出力されると、この正弦波電力Wpは、インピーダンス整合器28を介して各基板18,18,…に供給され、厳密には当該各基板18,18,…と真空槽12とを一対の電極として、これらに供給される。これにより、真空槽12内のアルゴンガスおよび水素ガスの各粒子(原子または分子)が放電して、プラズマが発生する。このとき、各基板18,18,…の表面(被処理面)に負の直流電圧である自己バイアス電圧Vdcが現れる。この自己バイアス電圧Vdcが現れることによって、各基板18,18,…の表面にプラズマ内のアルゴンイオンおよび水素イオンが入射し、その入射エネルギにより、当該各基板18,18,…の表面が洗浄(エッチング)される。
【0032】
この放電洗浄処理の後、DLC膜の密着性を向上させるための中間層としての炭化珪素(SiC)膜の生成処理が行われる。即ち、上述のアルゴンガスおよび水素ガスに加えて、TMSガスが、真空槽12内に導入される。すると、このTMSガスの粒子が放電して、珪素(Si)イオンおよび炭素(C)イオンが生成される。そして、これら珪素イオンおよび炭素イオンが各基板18,18,…の表面に入射することにより、当該各基板18,18,…の表面に珪素および炭素の化合物である炭化珪素膜が生成される。
【0033】
さらに、この中間層としての炭化珪素膜の高硬度化を図るべく、真空槽12内への水素ガスの導入が停止されると共に、これに代えて、当該真空槽12内にメタンガスが導入される。すると、このメタンガスの粒子が放電して、炭素イオンが生成される。そして、この炭素イオンが各基板18,18,…の表面に追加的に入射することで、当該各基板18,18,…の表面に高硬度な炭化珪素膜が生成される。
【0034】
その上で、DLC膜の生成処理が行われる。即ち、真空槽12内へのTMSガスの導入が停止される。つまり、真空槽12内に導入される材料ガスがメタンガスのみとされる。これにより、メタンガスから生成される炭素イオンが各基板18,18,…の表面に入射され、当該各基板18,18,…の表面に硬質炭素膜であるDLC膜が生成される。なお、DLC膜は絶縁性被膜であるため、このDLC膜が真空槽12の内壁に付着すると、当該内壁の電極としての機能が低下し、ひいてはプラズマが不安定になることが懸念される。この懸念を払拭するために、上述のヒータによって真空槽12の内壁が加熱される。すると、その内壁に付着したDLC膜が導電性を示すようになり、当該内壁の電極としての機能が維持される。
【0035】
ところで、上述の自己バイアス電圧Vdcは、各基板18,18,…の表面へのイオンの入射を促進する等、表面処理において重要な役割を果たす必須の要素である。その一方で、自己バイアス電圧Vdcは、表面処理の結果に影響する。ところが、この自己バイアス電圧Vdcは、表面処理時の諸条件によって変わり、例えば基板18,18,…の表面積が変わると、当該自己バイアス電圧Vdcも変わる。そして、この自己バイアス電圧Vdcが変わると、表面処理結果が変わり、例えばDLC膜の生成処理においては当該DLC膜の品質が安定しない(つまり再現性が低い)等の不都合が生じる。この不都合を解消するべく、本実施形態では、上述の直流電源装置34が設けられる。
【0036】
即ち、真空槽12を陽極とし、各基板18,18,…を陰極として、これらに直流電源装置34から直流電力Waが供給される。この直流電力Waは、放電用電力としての正弦波電力Wpに重畳され、これにより、当該直流電力Waの電圧成分、つまり直流電圧Vaが、各基板18,18,…に印加される。この直流電圧Vaは、図2に示すように負電圧であり、その絶対値|Va|は、自己バイアス電圧Vdcの絶対値|Vdc|よりも大きく(|Va|>|Vdc|)、厳密にはそうなるように直流電源装置34によって調整される。この結果、自己バイアス電圧Vdcは、当該直流電圧Vaによって包含された状態になる。言い換えれば、各基板18,18,…に自己バイアス電圧Vdcを含む一定の直流電圧Vaが印加された状態になる。従って例えば、自己バイアス電圧Vdcが変化したとしても、この自己バイアス電圧Vdcを含む直流電圧Va全体としては一定であるため、安定した表面処理を実現することができ、ひいては安定した表面処理結果を得ることができる。また、直流電圧Vaが適宜に調整されることによって、当該直流電圧Vaによる表面処理への影響が制御され、ひいては様々な表面処理に柔軟に対応することができる。例えば、DLC膜の成膜処理においては、当該DLC膜のさらなる高硬度化を図ることができる。
【0037】
なお、直流電圧Vaの絶対値|Va|は、正弦波電力Wpの電圧成分(正弦波電圧)のピーク・トゥー・ピーク値Vppの1/2未満(|Va|<Vpp/2)であることが、肝要である。そうでなければ、各基板18,18,…の電位が常に負電位となり、特にDLC膜等の絶縁性被膜の生成処理において、上述したチャージアップ現象が常に生じることになり、言い換えれば当該チャージアップ現象が解消される機会がないことになる。この場合、上述したアークの発生が懸念されるが、そもそも表面処理が進まない。ゆえに、|Va|<Vpp/2という直流電圧Vaの絶対値|Va|の上限が規定される。
【0038】
ただし、このように直流電圧Vaの絶対値|Va|の上限(|Va|<Vpp/2)が規定されても、放電用電力としての正弦波電力Wpの周波数fpが低いと、各基板18,18,…の電位が連続して負電位になる期間Tmが長くなり、アークの発生が懸念される。そのために、当該正弦波電力Wpの周波数fpについて、上述の如く100kHz〜1MHzという範囲が規定されており、特に100kHzという下限が規定されている。即ち、種々の実験の結果、正弦波電力Wpの周波数fpが100kHz以上であれば、要するに各基板18,18,…の電位が連続して負電位になる期間Tmが当該100kHz以上という周波数fpに応じた期間内に抑えられれば、アークの発生が抑制されることが、判明した。このことから、正弦波電力Wpの周波数fpの下限が100kHzに規定されている。
【0039】
一方、正弦波電力Wpの周波数fpの上限が1MHzに規定されるのは、放電用電源装置としての長中波電源装置30およびその従属機器としてのインピーダンス整合器28の調達性によるところが大きい。即ち、周波数fpが1MHz以下の、厳密には100kHz〜1MHzという長中波帯の、正弦波電力Wpを出力する長中波電源装置30は、それよりも高周波数の、例えば上述した13.56MHzという短波帯の、高周波電力を出力する高周波電源装置に比べて、安価であり、調達し易い。そして、長中波電源装置30と各基板18,18,…を含む負荷側とのインピーダンス整合も比較的に容易であるので、これを担うインピーダンス整合器28もまた、安価であり、調達し易い。このことから、正弦波電力Wpの周波数fpの上限が1MHzに規定されている。
【0040】
さらに、アークの発生がより確実に抑制されるようにするために、正弦波電力Wpの1周期において、各基板18,18,…の電位が負電位になる期間Tmが5μs未満とされる。即ち、正弦波電力Wpの周波数fpの特に下限が上述の如く100kHzに規定されるのみならず、当該期間Tmについてもその絶対的な値が規定されることで、アークの発生が確実に抑制されることが、実験によって判明した。
【0041】
また、本実施形態において、放電用電力として正弦波電力Wpが採用されるのは、周囲へのノイズの影響を防止するためである。即ち、放電用電力として例えば矩形波電力等のパルス電力が採用される場合、このパルス電力は、一般に、その生成過程で必然的に発生するn次の高調波を含むため、このn次の高調波がノイズとなって周囲に悪影響を及ぼす恐れがある。これに対して、正弦波電力Wpは、そのような高調波を含まないので、当該高調波による周囲への影響はない。このことから、本実施形態においては、放電用電力として正弦波電力Wpが採用される。
【実施例1】
【0042】
本実施形態の具体的実施例として、次の要領でDLC膜の成膜処理を行った。なお、各基板18,18,…として、材質が高速度鋼のSKH51(ロックウェル硬さ:62HRC)のものと、合金工具鋼のSKD11(ロックウェル硬さ:62HRC)のものと、非調質のステンレス鋼のSUS440C(ロックウェル硬さ:9HRC)のものとが、採用される。いずれも、長さ寸法が20mm、幅寸法が12mm、厚さ寸法が5mmの方形板状のものであり、これらは、上述したように各基板台22,22,…の各収容部26,26,…に1つずつ収容される。また、各基板台22,22,…の直径φは150mmであり、厚さ寸法tは7mmである。そして、各基板台22,22,…間の距離Dは20mmである。
【0043】
まず、DLC膜の生成処理に先立って、真空引きが行われる。具体的には、真空槽12内の圧力Pが5Pa以下になるまで排気される。
【0044】
この真空引きの後、放電洗浄処置が行われる。具体的には、図3に示すように、真空槽12内にアルゴンガスが400mL/minという流量で導入されると共に、水素ガスが600mL/minという流量で導入される。そして、真空槽12内の圧力Pが133Paに保たれる。この状態で、40Wの正弦波電力Wpが供給される。なお、この正弦波電力Wpの周波数fpは450kHzとされ、これ以降も変わらない。また、この時点では、直流電力Waの供給はない。この条件による放電洗浄処理が、20分間にわたって行われる。
【0045】
この放電洗浄処理の後、中間層としての炭化珪素膜の生成処理が行われる。具体的には、アルゴンガスおよび水素ガスに加えて、TMSガスが10mL/minという流量で真空槽12内に導入される。そして、真空槽12内の圧力Pが140Paに保たれる。なお、正弦波電力Wpについては、後で説明する。また、この時点から、直流電力Waが供給されるが、これについても、後で説明する。この炭化珪素膜の生成処理は、10分間にわたって行われる。
【0046】
さらに、この炭化珪素膜の高硬度化を図るために、真空槽12内への水素ガスの導入が停止される。これに代えて、真空槽12内にメタンガスが50mL/minという流量で導入される。併せて、アルゴンガスの流量が400mL/minから600mL/minに増大される。そして、真空槽12内の圧力Pが105Paに保たれる。なお、正弦波電力Wpおよび直流電力Waについては、後で説明する。この炭化珪素膜の高硬度化処理は、10分間にわたって行われる。
【0047】
その上で、DLC膜の生成処理が行われる。具体的には、真空槽12内へのTMSガスの導入が停止される。そして、真空槽12内の圧力Pが100Paに保たれる。なお、正弦波電力Wpおよび直流電力Waについては、後で説明する。また、このDLC膜の生成処理においては、上述のヒータによって真空槽12の内壁が約500℃に加熱される。これにより、当該内壁の電極としての機能が維持される。このDLC膜の生成処理は、60分間にわたって行われる。
【0048】
このDLC膜の生成処理が終わると、正弦波電力Wpおよび直流電力Waの供給が停止されると共に、ヒータへの通電が停止される。併せて、真空槽12内へのメタンガスおよびアルゴンガスの導入が停止される。さらに、真空槽12内の圧力Pが徐々に大気圧と同程度に戻される。そして、約20分間の冷却期間が置かれた後、真空槽12内が開放されて、当該真空槽12内から各基板18,18,…が取り出される。これをもって、DLC膜の生成処理を含む一連の表面処理が終了する。
【0049】
さて、上述の中間層としての炭化珪素膜の生成処理と、当該炭化珪素膜の高硬度化処理と、DLC膜の生成処理と、においては、正弦波電力Wpおよび直流電力Waに関して、図4に示すような3つの条件A,BおよびCが試される。即ち、条件Aでは、正弦波電力Wpが40Wとされ、直流電力Waの電圧成分Vaが−150Vとされる。なお、この−150Vという直流電圧Vaには、自己バイアス電圧Vdaが含まれている。また、このときの直流電源装置34の出力電流を測定したところ、当該出力電流は0.1Aであり、つまり直流電力Waは15Wであった。そして、条件Bは、条件Aの比較対照用であり、この条件Bでは、正弦波電力Wpが40Wとされ、直流電力Waの供給はない。このときの自己バイアス電圧Vdaを測定したところ、当該自己バイアス電圧Vdaは極小であり、概ね0Vであった。条件Cもまた、条件Aの比較対照用であり、この条件Cでは、正弦波電力Wpが60Wとされ、直流電力Waの供給はない。このときの自己バイアス電圧Vdcは約−1Vであった。
【0050】
これらの条件A,BおよびCによって各基板18,18,…の表面に最終的に生成されたDLC膜の膜厚を測定したところ、いずれも約1.5μmであった。つまり、DLC膜の膜厚に関しては、各条件A,BおよびCの違いによる特段な差異はなかった。そして、DLC膜の硬さ、例えばヌープ硬さ、を測定したところ、各条件A,BおよびC別、ならびに上述したSKH51,SKD11およびSUS440Cという各基板18,18,…の材質別に、図5に示すような結果が得られた。なお、このヌープ硬さの測定時の試験荷重は25gである。
【0051】
この図5によれば、各基板18,18,…の材質の違いによって、ヌープ硬さに差異があるものの、いずれの材質についても、条件Aの方が条件BおよびCに比べてヌープ硬さの高いDLC膜が生成されることが分かる。つまり、直流電力Waが供給されることによって、DLC膜の高硬度化が図られることが分かる。また、条件BおよびCによる各ヌープ硬さを比較すると、両者には大差がない。つまり、放電用電力としての正弦波電力Wpが増大されるだけでは、DLC膜の高硬度化が有効に図られないことが分かる。このことからも、直流電力Waの供給がDLC膜の高硬度化に大きく貢献することが分かる。
【0052】
併せて、条件Aによれば、高い再現性が得られることが確認された。即ち、条件Aによる表面処理を繰り返し行い、その都度、DLC膜の膜厚およびヌープ硬さを測定したところ、毎回ほぼ同様の結果が得られた。加えて、上述したアークの発生も確認されなかった。これは、長時間にわたる表面処理、例えばDLC膜の厚膜化、が可能であることを意味する。
【実施例2】
【0053】
本実施形態の別の実施例として、先の実施例における放電洗浄処理の後であって、中間層としての炭化珪素膜の生成処理の前に、イオン窒化処理を行った。
【0054】
具体的には、図6に示すように、アルゴンガスの流量は放電洗浄処理のときと同じ400mL/minのままで、水素ガスの流量が600mL/minから300mL/minに低減される。加えて、窒素ガスが1100mL/minという流量で真空槽12内に導入される。そして、真空槽12内の圧力Pが210Paに保たれる。さらに、放電用電力としての正弦波電力Wpが300Wとされると共に、直流電力Waの電圧成分Vaが−400Vとされる。この条件によるイオン窒化処理が、60分間にわたって行われる。これ以降は、先の実施例と同様である。
【0055】
このイオン窒化処理が追加されることによって、上述した各条件A,BおよびC別、ならびにSKH51,SKD11およびSUS440Cという各基板18,18,…の材質別に、図7に示すような結果が得られた。
【0056】
この図7によれば、上述の図5と比較して、いずれの条件A,BおよびCにおいても、また、各基板18,18,…の材質に拘らず、イオン窒化処理が追加されることによって、DLC膜のさらなる高硬度化が図られることが分かる。なお、直流電力Waが供給された方(条件A)が、そうでない場合(条件BおよびC)よりも、やはり高硬度なDLC膜が得られることは、図5に示した先の実施例と同様である。加えて、図5では、いずれの条件A,BおよびCにおいても、SUS440Cのヌープ硬さが他のSKH51およびSKD11のヌープ硬さに比べて大きく劣るのに対して、図7では、当該SUS440Cのヌープ硬さが他のSKH51およびSKD11のヌープ硬さと概ね同程度にまで増大している。つまり、SUS440Cについては、その高硬度化を図るのにイオン窒化処理が極めて効果的であることが分かる。このことは、(具体的な検証はしていないが)当該イオン窒化処理においても直流電力Waが供給されることが大きく貢献しているからであると、推察される。
【0057】
さらに、条件AによるSKH51について、イオン窒化処理が追加された場合と、そうでない場合との、DLC膜の密着性を、ロックウェル圧痕試験によって評価した。その結果を、図8に示す。
【0058】
この図8に示すように、(a)のイオン窒化処理がない場合の圧痕試験結果によれば、当該圧痕の周辺の比較的に広い範囲にわたってDLC膜の剥離があることが分かる。これに対して、(b)のイオン窒化処理が追加された場合の圧痕試験結果によれば、(a)のイオン窒化処理がない場合とは異なり、当該圧痕の剥離が見受けられない。即ち、イオン窒化処理が追加されることによって、DLC膜の密着性が飛躍的に向上することが確認された。このことは、条件Aによる他のSKD11およびSUS440Cについても、同様である。
【0059】
なお、本実施形態において説明した内容は、本発明を実現するための具体例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
例えば、DLC膜を生成処理における材料ガスとして、メタンガスが採用されたが、これに限らない。アセチレン(C)やベンゼン(C)ガス等の当該メタンガス以外の炭化水素系ガスが採用されてもよい。また、中間層としての炭化珪素膜を生成するための材料ガスとして、TMSガスが採用されたが、モノメチルシラン(CHSiH)等の当該TMSガス以外の炭化珪素形ガスが採用されてもよい。
【0061】
さらに、中間層として、炭化珪素膜が生成されることとしたが、これに限らず、チタン(Ti)系やタングステン(W)系の膜が生成されてもよい。この場合、スパッタリング法等のCVD法以外の表面処理法が採用されてもよい。また、DLC膜に限らず、これ以外の絶縁性被膜、或いは導電性被膜の生成にも、本発明の適用が可能である。勿論、イオン窒化処理のみに特化されてもよい。
【0062】
加えて、櫛形電極16以外の形状の電極が採用されてもよいし、収容部26が設けられなくてもよい。また、基板18は、金属であっても非金属であってもよいし、その数や形状ならびに大きさについても、特段な制限はない。
【0063】
また、放電用電力としての正弦波電力Wpの周波数fpについて、100kHz〜1MHzの範囲内で可変としたが、この範囲内であれば固定であってもよい。
【0064】
そして、放電用電力としては、正弦波電力Wpに限らず、矩形波電力等のパルス電力が採用されてもよい。ただし、この場合は、当該パルス電力に含まれるn次の高調波がノイズとなって周囲に悪影響を及ぼす恐れがあるので、その対策を講ずる必要がある。また、当該パルス電力の1周期において、各基板18,18,…の電位が負電位になる期間が5μs未満となるように、そのデューティ比を設定することも、肝要である。
【符号の説明】
【0065】
10 プラズマCVD装置
12 真空槽
16 櫛形電極
18 基板
30 長中波電源装置
34 直流電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電位に接続されると共に内部に被処理物が収容される真空槽を有し、該真空槽と該被処理物とを一対の電極として該真空槽と該被処理物とに交流の放電用電力を供給することによって該真空槽の内部にプラズマを発生させながら該被処理物に表面処理を施す表面処理装置において、
上記真空槽を陽極とし上記被処理物を陰極として該真空槽と該被処理物とに直流電力を供給する直流電力供給手段を具備し、
上記直流電力の電圧成分の絶対値は上記放電用電力の供給によって上記被処理物の表面に現れる自己バイアス電圧の絶対値よりも大きいこと、
を特徴とする、表面処理装置。
【請求項2】
上記直流電力供給手段は上記直流電力の電圧成分の絶対値を任意に変更可能である、
請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
上記表面処理はDLC膜の生成処理を含む、
請求項1または2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
上記表面処理はイオン窒化処理を含む、
請求項1ないし3のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項5】
上記放電用電力は正弦波電力である、
請求項1ないし4のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項6】
上記放電用電力の周波数は100kHzないし1MHzである、
請求項1ないし5のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項7】
上記放電用電力の1周期において上記被処理物の電位が上記基準電位に対して負電位になる期間が5μs未満である、
請求項1ないし6のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項8】
基準電位に接続された真空槽と該真空槽の内部に収容された被処理物とを一対の電極として該真空槽と該被処理物とに交流の放電用電力を供給することによって該真空槽の内部にプラズマを発生させながら該被処理物に表面処理を施す表面処理方法において、
上記真空槽を陽極とし上記被処理物を陰極として該真空槽と該被処理物とに直流電力を供給する直流電力供給過程を具備し、
上記直流電力の電圧成分の絶対値は上記放電用電力の供給によって上記被処理物の表面に現れる自己バイアス電圧の絶対値よりも大きいこと、
を特徴とする、表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224925(P2012−224925A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94980(P2011−94980)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】