説明

表面検査装置および表面検査方法

【課題】レールや形鋼などの立体的形状を有する検査対象物の表面疵などの表面状態を安定的に検査することが可能な表面検査装置および表面検査方法の提供。
【解決手段】検査対象物に対して上方から板状光線を投光する上部光線源1aと、検査対象物に上部光線源1aにより投光された板状光線を検査対象物の上方から撮像する上部カメラ1bと、検査対象物に対して側方から板状光線を投光する側部光線源2a,3aと、検査対象物に側部光線源2a,3aにより投光された板状光線を検査対象物の側方から撮像する側部カメラ2b,3bと、上部カメラ1bにより撮像された画像から検査対象物の搬送位置のずれを算出する搬送位置算出手段6と、搬送位置算出手段6により算出された搬送位置のずれに基づいて側部光線源2a,3aおよび側部カメラ2b,3bの位置を調整する検査位置調整手段7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールや形鋼などの立体的形状を有する検査対象物の表面状態を検査する表面検査装置および表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面疵検査は搬送中の熱間スラブや鋼板などの平面的形状を有する検査対象物に対して実施されている。例えば、特許文献1には、検査対象物の表面に上方から板状光線を照射し、その検査対象物からの反射光をカメラで検出することにより、検査対象物の表面形状に沿って光切断像を連続的に形成することにより、検査対象物の形状を測定する光切断像方式の形状測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2913903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように熱間スラブや鋼板などの検査対象物は搬送中に表面疵検査が行われるが、検査対象物は搬送中に蛇行いわゆるウォークが発生する。このとき、上記のような熱間スラブや鋼板などの平面的形状を有する検査対象物の場合には、上方から投光する板状光線の光線源およびその反射光を検出するカメラと検査対象物との間の距離は変化しない。
【0005】
しかしながら、検査対象物がレールや形鋼などの立体的形状を有する検査対象物の場合には、上方からのみならず、側方からも板状光線を投光し、その反射光を検出する必要がある。ところが、検査対象物の側方に光線源およびカメラを配置した場合、検査対象物のウォークが発生すると、光線源およびカメラと検査対象物との間の距離が変化してしまうため、検査対象物が視野から外れてしまうことがあり、安定的な表面疵検査が困難となる。
【0006】
そこで、本発明においては、レールや形鋼などの立体的形状を有する検査対象物の表面疵などの表面状態を安定的に検査することが可能な表面検査装置および表面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面検査装置は、搬送中の立体的形状を有する検査対象物の表面状態を検査する表面検査装置であって、検査対象物に対して上方から板状光線を投光する上部光線源と、検査対象物に上部光線源により投光された板状光線を検査対象物の上方から撮像する上部カメラと、検査対象物に対して側方から板状光線を投光する側部光線源と、検査対象物に側部光線源により投光された板状光線を検査対象物の側方から撮像する側部カメラと、上部カメラにより撮像された画像から検査対象物の搬送位置のずれを算出する搬送位置算出手段と、搬送位置算出手段により算出された搬送位置のずれに基づいて側部光線源および側部カメラの位置を調整する検査位置調整手段とを有するものである。
【0008】
また、本発明の表面検査方法は、搬送中の立体的形状を有する検査対象物の表面状態を検査する表面検査方法であって、検査対象物に対して上方から上部光線源により投光された板状光線を検査対象物の上方から上部カメラにより撮像すること、検査対象物に対して側方から側部光線源により投光された板状光線を検査対象物の側方から側部カメラにより撮像すること、上部カメラにより撮像された画像から検査対象物の搬送位置のずれを算出すること、算出された搬送位置のずれに基づいて側部光線源および側部カメラの位置を調整することを特徴とする。
【0009】
これらの発明によれば、検査対象物の上方から板状光線を投光して上部カメラにより撮像して表面状態を検査するとともに、この上部カメラにより撮像された画像から検査対象物の搬送位置のずれを算出し、算出された搬送位置のずれに基づいて、検査対象物の側方から表面状態を検査するための側部光線源および側部カメラの位置を調整することで、検査対象物の表面状態を安定的に検査することが可能となる。
【0010】
ここで、側部光線源および側部カメラの位置の調整は、前回搬送した検査対象物の搬送位置のずれに基づいて調整する構成とすることが可能である。レールや形鋼等の条鋼を連続的に搬送して検査する場合、同じロット内ではほぼ同じ搬送位置で搬送されるため、前回搬送した検査対象物の搬送位置のずれに基づいて検査位置調整手段により側部光線源および側部カメラの位置を調整することで、同じロット内では安定的に検査することが可能となる。なお、検査中の検査対象物の搬送位置のずれに基づいてリアルタイムに調整する構成とすることも可能である。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明によれば、立体的形状を有する検査対象物の搬送位置のずれに基づいて、側部光線源および側部カメラの位置を調整することで、視野外れを発生させることなく安定的な表面検査が可能となる。
(2)光線源およびカメラの他に、検査対象物の搬送位置を算出するために変位計や距離計などの装置を別途設計したり設置したりすることは不要であり、設備コストを抑えることができる。
(3)レールや形鋼等の全長、全断面の表面性状や形状等の定量的把握を行うことが可能となり、矯正機や圧延機等へのフィードバック制御などの操業改善にも活用することができる。
(4)インラインで検査を行うことが可能となるため、レールや形鋼等の長尺化に伴う検査場(置き場)の設置や確保が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における表面検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の表面検査装置の検査対象物に対するカメラおよび光線源の位置関係を示す縦断面図である。
【図3】光学系の1つにより疵検出するイメージを示す斜視図である。
【図4】図3のカメラにより撮像された画像を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における表面検査装置による対策前後を比較するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施の形態における表面検査装置の概略構成を示すブロック図、図2は図1の表面検査装置の検査対象物に対するカメラおよび光線源の位置関係を示す縦断面図、図3は光学系の1つにより疵検出するイメージを示す斜視図、図4は図3のカメラにより撮像された画像を示す図である。
【0014】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態における表面検査装置は、搬送ローラLによって搬送される検査対象物としてのレールRの表面疵を検出するものであり、4つの光学系1,2,3,4と、4つの光学系1〜4を制御して疵検出処理を行う検査手段5と、レールRの搬送位置のずれを算出する搬送位置算出手段6と、光学系2,3の位置を調整する検査位置調整手段7とを有する。
【0015】
光学系1は、レールRの頭頂部に対して上方から板状光線を投光する上部光線源1aと、レールRに上部光線源1aにより投光された板状光線をレールRの頭頂部の上方から撮像する上部カメラ1bとから構成される。図3に示す例では、上部光線源1aはレールRの搬送方向の上流側、上部カメラ1bは下流側に配置されている。逆に、上部光線源1aはレールRの搬送方向の下流側、上部カメラ1bは上流側に配置されていてもよい。
【0016】
上部光線源1aはグリーンレーザを射出するレーザ光源である。レールRが高温の場合は、グリーンレーザ光源を用いるとレールRの赤外線自発光による感度低下を防止でき確実に撮像できるが、低温の場合はレッドレーザ光源でもよい。この上部光線源1aから射出される細いビームはレンズ(図示せず。)により、レールRの幅方向(搬送方向に対して直角方向)に扇状に広げられて板状光線とされる。なお、本実施形態において、上部光線源1aから投光される板状光線の投光角度は、鉛直線方向から45°に設定されている。
【0017】
上部カメラ1bはブルーおよびレッドの波長光をカットし、かつグリーンの波長光をスルーするバンドパスフィルタを備えたものである。なお、レールRが低温の場合は、バンドパスフィルタは必ずしも必要ではない。また、本実施形態においては、上部カメラ1bの撮像角度は、上部光線源1aにより投光された板状光線を鉛直方向から撮像するように設定されている。
【0018】
光学系2は、レールRの左頭側部に対して左側方から板状光線を投光する左側部光線源2aと、レールRに左側部光線源2aにより投光された板状光線をレールRの左頭側部の左側方から撮像する左側部カメラ2bとから構成される。同様に、光学系3は、レールRの右頭側部に対して右側方から板状光線を投光する右側部光線源3aと、レールRに右側部光線源3aにより投光された板状光線をレールRの右頭側部の右側方から撮像する右側部カメラ3bとから構成される。
【0019】
なお、図示しないが、前述の光学系1と同様、左側部光線源2aおよび右側部光線源3aはレールRの搬送方向の上流側、左側部カメラ2bおよび右側部カメラ3bは下流側に配置されている。左側部光線源2aおよび右側部光線源3aは上部光線源1aと同様である。左側部光線源2aおよび右側部光線源3aの投光角度、左側部カメラ2bおよび右側部カメラ3bの撮像角度も光学系1と同様である。なお、左側部光線源2aおよび右側部光線源3aはレールRの搬送方向の下流側、左側部カメラ2bおよび右側部カメラ3bは上流側に配置されていてもよい。
【0020】
また、光学系2,3には、レールRの搬送方向に対して直角方向かつ水平方向に移動可能なように可動機構(図示せず。)が設けられている。詳細は後述するが、この可動機構によって光学系2,3は図2に実線および1点鎖線で示すようにその位置を調整可能となっている。
【0021】
光学系4は、レールRの足裏部に対して下方から板状光線を投光する下部光線源4aと、レールRに下部光線源4aにより投光された板状光線をレールRの足裏部の下方から撮像する下部カメラ4bとから構成される。この光学系4についても光学系1と同様、下部光線源4aはレールRの搬送方向の上流側、下部カメラ4bは下流側に配置されている。下部光線源4aは上部光線源1aと同様であり、投光角度および撮像角度等も同様である。なお、下部光線源4aはレールRの搬送方向の下流側、下部カメラ4bは上流側に配置されていてもよい。
【0022】
検査手段5は、4つの光学系1〜4を制御して疵検出処理を行うものである。検査手段5は光学系1〜4のそれぞれの光線源1a〜4aから板状光線を投光し、この反射光をそれぞれのカメラ1b〜4bにより撮像して光切断像方式により検査を行う。光切断像方式による疵検出については周知であるため詳細な説明は省略するが、図4に示すように、それぞれのカメラ1b〜4bにより撮像された画像の縞の歪み(位相差)から疵Sの深さを算出する。
【0023】
搬送位置算出手段6は、上部カメラ1bにより撮像された画像からレールRの搬送位置のずれを算出するものである。上部カメラ1bとレールRとの距離はレールRの搬送位置のずれに関わらず一定であり、撮像された画像からレールRの位置を検出することで、レールの搬送位置のずれを算出することが可能である。
【0024】
なお、搬送位置算出手段6によるレールRの搬送位置のずれの算出は、例えば以下の方法により行うことが可能である。
(1)形状不良および曲がりのある先端部分および尾端部分は除外し、画像処理によって撮像フレームごとのレールRの中心を算出し、平均値を採る。
(2)(1)と同様に先端部分および尾端部分を除いた全撮像フレームにてレールRの中心を算出する。
(3)(1)と同様に先端部分および尾端部分を除いた全撮像フレームでの最左端および最右端からレールRの中心を算出する。
【0025】
検査位置調整手段7は、搬送位置算出手段6により算出された搬送位置のずれに基づいて光学系2,3の位置をそれぞれの可動機構によって調整するものである。なお、本実施形態においては、検査位置調整手段7は、ロットごとに最初に搬送されるレールRについて搬送位置算出手段6により算出された搬送位置のずれに基づいて光学系2,3の位置を調整し、同じロット内では光学系2,3を固定するが、リアルタイムに調整する構成とすることも可能である。
【0026】
以上のように、本実施形態における表面検査装置では、レールRの上方から板状光線を投光して上部カメラ1bにより撮像して表面状態を検査するとともに、この上部カメラ1bにより撮像された画像からレールRの搬送位置のずれを算出し、算出された搬送位置のずれに基づいて、レールRの左右側方から表面状態を検査するための光学系2,3の位置を調整することで、光学系2,3の視野外れを発生させることなく、レールRの表面状態を安定的に検査することが可能である。
【0027】
したがって、本実施形態における表面検査装置では、光学系1〜4の他に、レールRの搬送位置を算出するために変位計や距離計などの装置を別途設計したり設置したりすることは不要であり、設備コストを抑えることができる。また、レールRの全長、全断面の表面性状や形状等の定量的把握を行うことが可能となり、矯正機や圧延機等へのフィードバック制御などの操業改善にも活用することができる。また、インラインで検査を行うことが可能となるため、レールRの長尺化に伴う検査場(置き場)の設置や確保が不要となる。
【実施例】
【0028】
図5は上記本発明の実施の形態における表面検査装置による対策前後を比較するグラフを示す図であって、(a)は対策前を示す図、(b)は対策後を示す図である。なお、図5において、横軸はレールR(全長約150m)の長手位置、縦軸はレールRを頭頂部から見たときの左右エッジ位置(mm)、中心はレールRの左右エッジ位置の平均中心位置(mm)、センターは頭頂部の光学系1の中心位置(=±0mm)を示している。
【0029】
図5(a)に示すように、本実施形態における表面検査装置による対策前では、レールRの中心と頭頂部の光学系1のセンターとの間の距離が30mmであるのに対し、図5(b)に示すように、本実施形態における表面検査装置による対策後では14mmとなった。レールRの中心と頭頂部の光学系1のセンターとの間の距離が±20mm以上では左右頭側部の光学系2,3での視野外れが発生するが、本実施形態における表面検査装置によってこの視野外れを防止できたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、レールの他、形鋼などの条鋼などの立体的形状を有する検査対象物の表面状態を検査する表面検査装置および表面検査方法として有用である。
【符号の説明】
【0031】
1,2,3,4 光学系
1a,2a,3a,4a 光線源
1b,2b,3b,4b カメラ
5 検査手段
6 搬送位置算出手段
7 検査位置調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の立体的形状を有する検査対象物の表面状態を検査する表面検査装置であって、
前記検査対象物に対して上方から板状光線を投光する上部光線源と、
前記検査対象物に前記上部光線源により投光された板状光線を前記検査対象物の上方から撮像する上部カメラと、
前記検査対象物に対して側方から板状光線を投光する側部光線源と、
前記検査対象物に前記側部光線源により投光された板状光線を前記検査対象物の側方から撮像する側部カメラと、
前記上部カメラにより撮像された画像から前記検査対象物の搬送位置のずれを算出する搬送位置算出手段と、
前記搬送位置算出手段により算出された搬送位置のずれに基づいて前記側部光線源および前記側部カメラの位置を調整する検査位置調整手段と
を有する表面検査装置。
【請求項2】
前記検査位置調整手段は、前回搬送した検査対象物の搬送位置のずれに基づいて調整するものである請求項1記載の表面検査装置。
【請求項3】
搬送中の立体的形状を有する検査対象物の表面状態を検査する表面検査方法であって、
前記検査対象物に対して上方から上部光線源により投光された板状光線を前記検査対象物の上方から上部カメラにより撮像すること、
前記検査対象物に対して側方から側部光線源により投光された板状光線を前記検査対象物の側方から側部カメラにより撮像すること、
前記上部カメラにより撮像された画像から前記検査対象物の搬送位置のずれを算出すること、
前記算出された搬送位置のずれに基づいて前記側部光線源および前記側部カメラの位置を調整すること
を含む表面検査方法。
【請求項4】
前記側部光線源および前記側部カメラの位置の調整は、前回搬送した検査対象物の搬送位置のずれに基づいて調整することを特徴とする請求項3記載の表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−209041(P2011−209041A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75717(P2010−75717)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】