説明

表面特性観察方法、表面特性観察方法に供される試料の製造方法、及び表面特性観察方法に供される試料

【課題】nmオーダーの表面傷の観察が可能な技術を提供することである。
【解決手段】基体の表面特性を観察する方法であって、基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程と、前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程と、前記膜除去工程後の基体の表面を電子顕微鏡で観察する観察工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面観察技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェハ、磁気ディスク等の表面は平滑性が要求されている。勿論、表面平滑性の要求は前記製品に限られない。平滑な表面を得る為、通常、研磨が行われる。この研磨が適した研磨であるか否か、或いは研磨技術の改良が必要か否かは、研磨の出来栄え、即ち、平滑性が評価されなければならない。平滑性は表面における傷の有無に左右される。
【0003】
CMP技術大系(グローバルネット株式会社 平成18年6月20日 初版)の505ページには、KLAテンコール社製のSP−1(光学式検査装置)によるスクラッチの観察写真が掲載されている。
【0004】
ところで、磁性体や強誘電体材料等の結晶粒子中には或る大きさで分極の方向が揃った領域(ドメイン)が有り、このドメインの観察に偏光顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡などが用いられて来た。前記ドメインは、分極の方向が異なるのみで、表面状態や組成に殆ど変化が無い。この為、通常の観察方法ではドメイン観察が出来ない。そこで、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合には、70度程度傾斜した試料に電子線を照射して結晶配向を測定する電子後方散乱回折(EBSD)法や、試料の観察面を鏡面研磨した後に化学的にエッチングし、更にカーボンを蒸着して二次電子像で観察する方法、観察面を鏡面研磨し蒸着しないで二次電子像で観察する方法を用いる必要があった。しかしながら、EBSD法では分解能が低く、ドメインの大きさによっては観察できない。更に、観察倍率によっては、極狭い領域のみの測定しか出来ず、広い領域に亘る観察を行なうには莫大な時間が掛り、現実的ではない。又、観察面を鏡面研磨した後に化学的にエッチングし、更にカーボンを蒸着して二次電子像で観察する方法では、酸などの薬品を用いる必要が有り、材料ごとにエッチング条件を探す必要が有り、その作業には熟練を要する。更には、廃液処理も必要である。観察面を鏡面研磨し蒸着をしないで二次電子像で観察する方法では、絶縁材料を無蒸着で観察する方法であることから、チャージアップの影響で安定した観察が行えず、観察に熟練を要する。このようなことから、走査型電子顕微鏡を用いて、観察試料に電子線を照射して得られる反射電子像によりドメイン観察を行なう試料観察方法であって、試料を鏡面研磨し、研磨面に導電性を有する蒸着膜を形成して前記観察試料を作製する試料準備工程と、前記観察試料を、走査型電子顕微鏡で、前記電子線の加速電圧を3kV以上10kV以下となるように設定するとともに、反射電子走査画像の輝度及び分布量を表示可能な輝度範囲内に平均的に分布するように設定するコントラストの条件に比べてコントラストを強調する条件で観察する観察工程とを有する試料観察方法が提案(特開2010−197269号公報)されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】CMP技術大系(グローバルネット株式会社 平成18年6月20日 初版)505ページ
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−197269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、半導体ウェハや磁気ディスク等においては、近年、nmオーダーの微細な傷(欠陥)の有無のチェックが求められている。
【0008】
しかしながら、非特許文献1の技術では、nmオーダーの微細な傷(欠陥)の有無のチェックは出来ない。非特許文献1の技術で検出されたスクラッチの寸法は幅1μmで長さ数十μm程度である。すなわち、μmオーダーのスクラッチが検出されているものの、nmオーダーのスクラッチ(欠陥)は検出できてない。
【0009】
特許文献1の技術は、磁性体や強誘電体材料等の結晶粒子中のドメイン(或る大きさで分極の方向が揃った領域)の観察に開発されたものであって、表面におけるnmオーダーの傷の観察に用いることは出来ない。このことは、特許文献1の段落番号[0003]において、「ドメインは、分極の方向が異なるのみで、表面状態や組成に殆ど変化が無い。」と記載されていることからも、理解される。
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、nmオーダーの表面傷の観察が可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題は、
基体の表面特性を観察する方法であって、
基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程と、
前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程と、
前記膜除去工程後の基体の表面を電子顕微鏡で観察する観察工程
とを具備することを特徴とする表面特性観察方法によって解決される。
【0012】
前記の課題は、
基体の表面特性を観察する方法であって、
基体表面が研磨される研磨工程と、
前記研磨工程で研磨された基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程と、
前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程と、
前記膜除去工程後の基体の表面を電子顕微鏡で観察する観察工程
とを具備することを特徴とする表面特性観察方法によって解決される。
【0013】
前記表面特性観察方法であって、好ましくは、膜構成材料表面から電子が放出されるエネルギーをXeV、基体表面から電子が放出されるエネルギーをXeVとした場合、|X−X|≧0.3であるように膜材料が選定されることを特徴とする表面特性観察方法によって解決される。
【0014】
前記表面特性観察方法であって、好ましくは、基体表面構成材料が金属材料または半導体材料である場合、膜構成材料が絶縁性材料であることを特徴とする表面特性観察方法によって解決される。或いは、前記表面特性観察方法であって、好ましくは、基体表面構成材料が絶縁性材料である場合、膜構成材料が金属材料または半導体材料であることを特徴とする表面特性観察方法によって解決される。
【0015】
前記の課題は、前記表面特性観察方法に供される試料の製造方法であって、
基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程と、
前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程
とを具備することを特徴とする表面特性観察方法に供される試料の製造方法によって解決される。
【0016】
前記の課題は、前記表面特性観察方法に供される試料の製造方法であって、
基体表面が研磨される研磨工程と、
前記研磨工程で研磨された基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程と、
前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程
とを具備することを特徴とする表面特性観察方法に供される試料の製造方法によって解決される。
【0017】
前記の課題は、前記表面特性観察方法に供される試料の製造方法によって得られてなることを特徴とする表面特性観察方法に供される試料によって解決される。
【発明の効果】
【0018】
nmオーダーの表面傷の観察が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態における基体の断面図
【図2】実施形態における研磨後の基体の断面図
【図3】実施形態における研磨後の基体表面に成膜が行われた後の断面図
【図4】実施形態における成膜された膜が除去された後の断面図
【図5】比較例になる試料のSEM写真
【図6】比較例になる試料のSEM写真
【図7】比較例になる試料のSEM写真
【図8】本実施形態になる試料のSEM写真
【図9】本実施形態になる試料のSEM写真
【図10】本実施形態になる試料のSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の本発明は基体の表面特性を観察する方法である。本観察方法は、基体の表面に膜が設けられる成膜工程を具備する。本成膜工程は、PVDやCVD等の乾式メッキ手段、又は電気メッキや無電解メッキ等の湿式メッキ手段が採用される。塗布手段を採用することも出来る。本成膜工程においては、基体の表面に微細な凹部(傷:穴)が有る場合、この凹部(傷:穴)内に膜構成材料が充填され、凹部(傷:穴)内が膜構成材料で埋められる。勿論、凹部(傷:穴)が無い場合には、膜構成材料で埋められることは無い。本成膜工程で成膜される膜は、前記基体表面を構成する材料の仕事関数とは異なる仕事関数を有する材料で構成される。本観察方法は、前記成膜工程で成膜された膜を除去する膜除去工程を具備する。この膜除去工程は、例えば研磨工程である。但し、本膜除去工程では、基体表面に設けられた膜が除去されるものの、前記凹部(傷:穴)内に充填された(埋められた)膜構成材料が完全に除去されることは無い。すなわち、本膜除去工程(例えば、研磨工程)の後においても、凹部(傷:穴)内には膜構成材料が充填されており、凹部(傷:穴)内が膜構成材料で埋められている。そして、凹部(傷:穴)が存在しない箇所にあっては、成膜工程で設けられた膜は存在しない。尚、凹部(傷:穴)内の膜構成材料は全く除去されず、かつ、凹部(傷:穴)以外の箇所にあっては、成膜工程で設けられた膜が完全に除去される場合も理論上は有り得る。しかしながら、本工程が研磨による場合、オーバー研磨によって実施されることが多い。従って、凹部(傷:穴)内に充填された(埋められた)膜構成材料も、多少は、除去されることも多い。本観察方法は、前記膜除去工程後の基体の表面が電子顕微鏡、例えば走査型電子顕微鏡で観察される観察工程を具備する。本観察方法は、好ましくは、成膜工程の前に基体の表面が研磨される研磨工程を具備する。すなわち、本観察方法は、例えば本研磨工程で研磨面に出来た傷(研磨キズ)の程度・有無をチェックする為に採用されるとも言える。本観察方法は研磨面の観察方法であるとも言える。特に、研磨面におけるnmオーダーと言った微細な欠陥(傷:穴:凹部)を観察する方法であるとも言える。例えば、ディスクやウェハと言った基体の表面平滑性を高める為に研磨が行われる。この研磨によって傷が出来ているか否かのチェックは製品の信頼性の面から非常に大事である。そこで、例えば採用しようとする研磨方法が妥当であるか否かを検討する為、研磨が行われた基体の表面(研磨面)上に、例えば導電性を有する膜を形成する。この後、再度、研磨を行い、前記導電性膜を除去する。この除去に際しては、研磨によって出来た凹部(傷:穴:欠陥)内に埋まっている導電性材料は残るようにする。この後、電子顕微鏡で観察すると、前記凹部(傷:穴:欠陥)がnmオーダーの非常に微細なものであっても、この凹部(傷:穴:欠陥)内に残存している導電性材料の存在によって、凹部(傷:穴:欠陥)の存在が明確に観察される。尚、2回目の研磨によっても、凹部(傷:穴:欠陥)以外における導電性材料が除去されていない場合には、凹部(傷:穴:欠陥)においてのみ導電性材料が存在していると言う状態が実現されない。従って、凹部(傷:穴:欠陥)チェックは正確には出来難い。例えば、上記1回目の研磨はウェハやディスク等を平坦化(平滑化)する為の本来の研磨であるのに対して、上記2回目の研磨は1回目の本来の研磨で出来た研磨キズ等の凹部(傷:穴:欠陥)を観察可能にする為の研磨である。そして、1回目の研磨を行った後で、例えば導電性を有する膜を形成することで、1回目の研磨で発生した研磨キズに導電性を有する膜が埋め込まれ、2回目の研磨で研磨面平坦部の導電性を有する膜が除去され、研磨キズの中にのみ導電性膜が残るように研磨が行われると、研磨キズの観察が容易なものとなる。本観察方法にあっては、好ましくは、膜構成材料表面から電子が放出されるエネルギーをXeV、基体表面から電子が放出されるエネルギーをXeVとした場合、|X−X|≧0.3であるように膜材料が選定される。更に好ましくは、|X−X|≧1であるように膜材料が選定される。もっと好ましくは、|X−X|≧5であるように膜材料が選定される。このようにした場合、SEM(走査型電子顕微鏡)で表面を観察した場合、傷が存在していた場合には、その傷が鮮明に観察される。例えば、基体表面構成材料が金属材料または半導体材料である場合、膜構成材料としては絶縁性材料が選定される。基体表面構成材料が絶縁性材料である場合、膜構成材料としては金属材料または半導体材料が選定される。
【0021】
上記実施形態の技術によれば、研磨面をそのままSEMで観察する方法や光学式顕微鏡観察では検出できなかったnmオーダーの研磨キズの観察(チェック)がSEM観察により可能になる。すなわち、研磨キズ箇所の表面と研磨キズ周辺部の表面とは異なる材料が存することから、SEM観察におけるコントラストが向上し、チェックが容易となる。その理由は次のような理由によると考えられた。SEMでは、電子銃から発射された電子線束は電子レンズ(集束レンズおよび対物レンズ)により集束(電子プローブ)され、この電子線束が偏向コイルで2次元的に試料表面を走査し、試料面から発生する2次電子を2次電子検出器(シンチレータ)で集め、更に光電子増倍管で電気信号に変えて増幅し、2次元的な走査像を得る。この時、試料面から発生する2次電子の量がキズの部分とその周辺部分とで異なるようにした為、明確なコントラストを得ることが出来る。すなわち、試料をそのまま観察する従来の場合よりも、キズの部分とその周りの部分との材料が異なる(仕事関数が異なる)為、試料面から発生する二次電子の量が異なるようになり、微細なキズまで観察することが可能になる。
【0022】
第2の本発明は試料の製造方法である。特に、前記表面特性観察方法に供される試料の製造方法である。本製造方法は、基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程を具備する。本成膜工程の詳細は前記観察方法の成膜工程に準じる。本製造方法は、前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程を具備する。本膜除去工程の詳細は前記観察方法の膜除去工程に準じる。本製造方法は、好ましくは、成膜工程の前に基体の表面が研磨される研磨工程を具備する。すなわち、本方法は、例えば本研磨工程で形成された試料における傷の程度・有無をチェックする為のものであるとも言える。
【0023】
第3の本発明は試料である。特に、前記表面特性観察方法に供される試料の製造方法によって得られてなる試料である。
【0024】
以下、更に詳しく説明する。尚、以下で説明される実施例に本発明は限定されず、本発明の技術思想の範囲内において実施例は適宜変更され得ることは明らかである。
【0025】
[実施例]
図1〜図4は本発明の一実施例を示す説明する為に用いられる基体の断面図である。
【0026】
シリコン基板(ウェハ)1上にシリコン酸化膜2が形成された試料の断面図が図1に示されている。シリコン酸化膜2は、例えばTEOSと酸素との混合ガス、又はモノシランガスSiHと亜酸化窒素NOとの混合ガスが、プラズマCVD装置に数torrの割合で供給され、この減圧状態で放電が行われることにより形成される。勿論、この手法に限られるものでは無い。例えば、熱CVD装置を用いることでも形成される。
【0027】
図1に示される基板の表面(シリコン酸化膜2表面)が研磨装置により研磨される。例えば、CMP(化学的機械的研磨)装置が用いられた。そして、例えばKOHを含むアルカリ性水溶液中にヒュームドシリカ砥粒を含むスラリとポリウレタンパッドとが用いられて研磨が行われた。すなわち、シリコン酸化膜2表面を平坦(平滑)なものとする為に、研磨が行われた。この研磨に際しては研磨キズの発生が無いのが好ましい。しかしながら、スラリ中に含まれている砥粒の直径が大きかったりすると、研磨キズが発生する。従って、製品製造前に、実施しようとする研磨が好適な研磨であるか否かのチェックが必要である。すなわち、基準以上の研磨キズが発生しない(研磨キズが少ない)研磨であるか否かのチェックが必要である。研磨後の試料の断面図が図2に示されている。図2では、仮に、研磨キズ3が発生した場合の例である。
【0028】
尚、図2に示される状態の試料がSEM(走査型電子顕微鏡)により観察された。しかしながら、このSEM写真が示される図5,6,7(図5と図6と図7とは倍率が相違するのみ。)によれば、研磨キズを観察できない。
【0029】
図2に示される基板の表面(シリコン酸化膜2表面)に膜4が設けられた。この膜4の構成材料は、シリコン酸化膜2とは異なる材料である。すなわち、異なる仕事関数を有する材料による膜である。尚、仕事関数は固体表面から電子を放出する為のエネルギーを意味する。仕事関数は、二酸化珪素のような絶縁材料では、一般的に、10eV以上である。金属材料では、2〜6eVである。例えば、Alは3.2eV、Tiは4.1eV、Wは4.5eV程度である。従って、Al,Ti,Wの何れの材料で膜4を構成しても良い。その他にも、Ta等も挙げられる。更には、導電性の金属窒化物も挙げられる。本実施例では、半導体産業において一般的に使われているTiで膜4を構成した。成膜にはPVDが用いられた。その厚さは10nmである。そして、シリコン酸化膜2の全表面に亘ってTi膜4が設けられた。勿論、この際、研磨キズ3の凹部内にもTiが充填された。この状態が図3に示される。5は、研磨キズ3の凹部内に充填された膜4の構成材料(Ti)である。
【0030】
図3に示される試料が、再度、CMP装置に装填され、研磨が行われた。この研磨により、Ti膜4が除去された。用いられた研磨用スラリは半導体の銅配線形成工程におけるバリア研磨用スラリ(例えば、日立化成工業製のHS−T815)であった。勿論、これに限られ無い。この研磨後の状態が図4に示される。図4からも判る通り、研磨後にあっても、研磨キズ3内のTi5は残存している。勿論、研磨キズ3以外の箇所の表面のTi膜は完全に除去されている。研磨キズ3以外の箇所の表面はシリコン酸化膜である。
【0031】
この図4に示される試料がSEMで観察された。その結果が図8,9,10に示される。このSEM写真(図8,9,10:図8と図9と図10とは倍率が異なるのみ。)では、図5,6,7では全く観察できなかった研磨キズが観察される。
【0032】
尚、上記実施形態においては、基板1上に設けられた膜2に対して研磨が行われた場合である。しかしながら、膜2が設けられてない場合でも、本発明は適用できる。すなわち、基板1表面が研磨された場合でも、本発明は適用できる。基板の表面は平面であっても、曲面であっても、本発明は適用できる。基板(又は基板表面に設けられた膜)は、酸化膜に限られない。例えば、金属材料、有機材料、半導体材料、SiO以外の絶縁材料でも、本発明は適用できる。但し、研磨層の構成材料と、研磨後に研磨層上に設けられる膜の構成材料とは、互いに、仕事関数が異なるものが選定される。例えば、研磨層がW膜である場合、研磨後に研磨層上に設けられる膜として酸化ケイ素と言った絶縁材料が選定される。仕事関数は、一般的に、絶縁材料では大きく、金属材料や半導体材料では小さい。研磨層が酸化ケイ素膜である場合、研磨後に研磨層上に設けられる膜として窒化チタン膜が選定されても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 シリコン基板(ウェハ)
2 シリコン酸化膜
3 研磨キズ
4 Ti膜(シリコン酸化膜とは異なる材料の膜)
5 研磨キズ3内に充填された膜4の構成材料



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面特性を観察する方法であって、
基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程と、
前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程と、
前記膜除去工程後の基体の表面を電子顕微鏡で観察する観察工程
とを具備することを特徴とする表面特性観察方法。
【請求項2】
成膜工程の前に基体の表面が研磨される研磨工程を具備する
ことを特徴とする請求項1の表面特性観察方法。
【請求項3】
膜構成材料表面から電子が放出されるエネルギーをXeV、基体表面から電子が放出されるエネルギーをXeVとした場合、|X−X|≧0.3であるように膜材料が選定される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の表面特性観察方法。
【請求項4】
基体表面構成材料が金属材料または半導体材料である場合、膜構成材料が絶縁性材料である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの表面特性観察方法。
【請求項5】
基体表面構成材料が絶縁性材料である場合、膜構成材料が金属材料または半導体材料である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの表面特性観察方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5いずれかの表面特性観察方法に供される試料の製造方法であって、
基体の表面に、該基体表面を構成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料で構成される膜を設ける成膜工程と、
前記成膜工程において設けられた前記基体表面に存する凹部を埋めた該膜の構成材料が残存するように該基体表面に設けられた膜を除去する膜除去工程
とを具備することを特徴とする表面特性観察方法に供される試料の製造方法。
【請求項7】
成膜工程の前に基体の表面が研磨される研磨工程を具備する
ことを特徴とする請求項6の表面特性観察方法に供される試料の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7の表面特性観察方法に供される試料の製造方法によって得られてなることを特徴とする表面特性観察方法に供される試料。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−177583(P2012−177583A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39875(P2011−39875)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(504371594)次世代半導体材料技術研究組合 (82)
【Fターム(参考)】