説明

複合スイッチ

【課題】各種電子機器の入力操作部に搭載される複合スイッチに関し、多段出力の内の一つがスイッチ信号以外の信号が得られ、十字キーなどの構成も可能なものを提供する。
【解決手段】スイッチ素子21およびその周囲を取り囲むように配された内周配線部13Aおよび外周配線部13Bを備えた配線基板11上に、円筒状の感圧導電ゴム31を上記両者の配線部13A、13Bに当接させて配し、さらにその上方から弾性押圧部材41および操作釦45を配した構成とし、操作釦45への押し下げ操作で、まずスイッチ素子21がON状態に移行し、更なる操作で、弾性押圧部材41の周囲押圧部41Aで感圧導電ゴム31が圧縮されて上記スイッチ素子21からの信号に続いて上記感圧導電ゴム31の圧縮による出力が連続的に得られるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部に搭載される複合スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の入力操作部に搭載される入力操作用の電子部品としては、様々な操作形態のものが用いられるようになっており、一つの操作釦への所定操作で各種の入力操作ができるものが好まれている。
【0003】
例えば、携帯電話においては、その各種の操作をするためにテンキー以外に十字キーを備えさせたものが多く普及しており、その十字キーの構成としては、一つの操作釦の下方に、五つの単体スイッチを並べて配したものや多方向スイッチを配して構成したものが多い。
【0004】
ここで、携帯電話においては、各種サービスが充実してきていると共に、インターネットブラウザの閲覧が頻繁に行われ、ディスプレイ上のカーソルを自在に移動させる必要性なども生じている。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002−278695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来に用いていた十字キーの構成のものでは、操作時にスイッチ信号しか得られず、例えば長押し時の使用状態なども含めて用いられていたが、機器メーカ側からの要望としては、複数の出力が連続的に得られ、その出力としても単なるスイッチ信号以外の出力を含み、しかも十字キーにも構成できる新たなものへの開発要望が高まっていた。
【0007】
ここで、十字キーを構成する際には、通常では、筐体の前後左右側に応じて周囲位置の単体スイッチが配置されており、その隣り合う周囲位置どうしの単体スイッチ間の角度位置に残ってしまう領域は活用し難く、上記要望においては、その領域を含む投影面積内で上記出力仕様としてなるものが前提となっていた。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、操作釦への操作で複数の信号が連続して得られ、その中の一つがスイッチ信号以外の信号であり、かつ十字キーを構成する際にも周囲位置どうしの単体スイッチ間の角度領域を含む投影面積内に納まる形態で構成できる複合スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明は、操作釦と、その下方に配され上記操作釦への押し下げ操作で状態遷移がなされるスイッチ素子と、そのスイッチ素子における状態遷移タイミングよりも若干前後して上記操作釦への継続される押し下げ操作に伴って圧縮されるように上記スイッチ素子の周囲位置に配され、その圧縮状態に応じた出力が得られる感圧導電ゴムとを備え、上記操作釦への継続する押し下げ操作に応じて上記スイッチ素子からの出力および上記感圧導電ゴムの圧縮による出力が連続的に得られる複合スイッチとしたものである。
【0011】
これによれば、一つの操作釦に対する操作に基づき複数の出力信号が連続的に得られ、しかもその中の一つがスイッチ信号以外の感圧導電ゴムの圧縮による出力が得られるものとして実現できるという作用を有する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、スイッチ素子が、円形ドーム状の可動接点と、その可動接点により接続される複数の固定接点から構成され、感圧導電ゴムとして、上記スイッチ素子の周囲を囲う外形円筒状のものを用いたものであり、部品点数も少なくて簡素かつコンパクトな構成のものとして実現することができるという作用を有する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、四つのスイッチ素子が十字状の端部位置に配され、そのスイッチ素子どうしの間の角度位置に感圧導電ゴムがそれぞれ配されたものとすると共に、傾倒動作可能に保持されている一つの操作釦で上記各スイッチ素子が個別に押圧可能に構成され、上記操作釦への傾倒操作で上記所定のスイッチ素子の状態遷移がなされ、その後の上記操作釦への継続する傾倒操作で、上記所定のスイッチ素子の両隣に配された感圧導電ゴムが圧縮される構成とされたものであり、従来の十字キーにおける周囲位置どうしの単体スイッチ間の角度領域を含んだ投影面積内で収まる形態で多段出力が得られるものとして実現することができ、さらにその感圧導電ゴムの圧縮量によって変化する二段目の出力によりカーソル移動速度などを変移させることなども可能なものにできるという作用を有する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、操作釦への操作で複数の信号が連続して得られ、その中の一つがスイッチ信号以外の信号であり、かつ十字キーを構成する際にも周囲位置どうしの単体スイッチ間の角度領域を含む投影面積内に納まる形態で構成できる複合スイッチを提供することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図13を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態による複合スイッチの正面断面図、図2は同外観斜視図、図3は同分解斜視図である。
【0017】
同図において、11は、配線基板であり、その上面には中央固定接点12Aおよび外側固定接点12Bが形成されている。
【0018】
その外側固定接点12B上に、弾性金属薄板製の上方凸型で円形ドーム状に形成された可動接点15の外周下端が載せられてスイッチ素子21が構成されている。この可動接点15は、上方から押し下げると中央部分が節度感を伴って反転動作し、その力を除くと自身の弾性復元力によって元の上方凸型の形状に自己復元する自己復帰型のものを用いている。
【0019】
さらに、そのスイッチ素子21の外周にあたる配線基板11上の位置には、そのスイッチ素子21外周を囲むように、内周配線部13Aおよび外周配線部13Bが、互いに独立した同心の円形リング状で形成され、それぞれ外方に引き出されている。なお、各配線部13Aおよび13Bは、両者とも完全に繋がった円形リングでも、その一部が切断状態に形成された略リング状であってもよいが、両者からの引き出し部分は互いに絶縁状態で引き出されている。また、詳細な図示などは省略するが、配線基板11のテール部を除く領域には、下面側に剛体からなる板状体が貼り合わせるなどして一体化されている。
【0020】
そして、31は、外形が円筒状に形成され、その下端面が上記内周配線部13Aおよび外周配線部13Bのいずれにも当接させた状態に配された感圧導電ゴムである。この感圧導電ゴム31としては、中央貫通孔が伸びる上下方向に圧縮させると抵抗値が下がるものを用いている。
【0021】
35は、下面に粘着層を有する絶縁フィルムである。その下面の粘着層の形成領域としては、少なくとも、上記可動接点15の上面位置に応じた箇所ならびに配線基板11上への貼り合わせ部位に相当する箇所に粘着層が形成されたものを用いている。そして、この絶縁フィルム35が、下面の粘着層で配線基板11上に貼り付けられることにより、上記可動接点15および感圧導電ゴム31は上記配置状態に位置決めされている。当該構成とすれば、スイッチ素子21自身の接触部や感圧導電ゴム31の各配線部13A、13Bとの接触部分を保護できて防塵防水性等に優れるものにでき好ましい。なお、絶縁フィルム35を用いることなく可動接点15や感圧導電ゴム31を配線基板11に固着させてもよく、その場合には、絶縁フィルム35をなくした構成としてもよい。なお、スイッチ素子21の構成も上記に説明したものに限定されることもない。
【0022】
そして、絶縁フィルム35の上には、円筒部41Cの上方開口部が天面41Dで覆われた形状に形成された弾性押圧部材41が配されている。
【0023】
この弾性押圧部材41は、天面41Dに、下方に向けて突出形成された周囲押圧部41Aと中央押圧部41Bを備えている。周囲押圧部41Aは、円形リング状で形成されている。なお、この弾性押圧部材41はシリコンゴムなどのゴム材で構成されている。
【0024】
上記弾性押圧部材41は、スイッチ素子21や感圧導電ゴム31を下方開口部分内に収容するようにして配され、その円筒部41Cの下端面が、感圧導電ゴム31の周囲位置にあたる絶縁フィルム35上に載せられている。その状態で、上記円形リング状の周囲押圧部41Aは、絶縁フィルム35を介して感圧導電ゴム31の上面位置に所定間隔Aをあけて対峙しており、中央押圧部41Bは絶縁フィルム35を介して可動接点15上に当接している。なお、弾性押圧部材41の円筒部41Cの下端面を絶縁フィルム35上に載せている当該構成であれば、絶縁フィルム35の粘着状態を補助する作用も得られる。
【0025】
そして、上記弾性押圧部材41上には、樹脂などから形成された剛体製の操作釦45が配されている。この操作釦45は、底面が平坦面で構成された略円板状で、外周に突出するフランジ部45Aおよび上面中央位置に円形で上方に突出形成された操作部45Bを有した形状のものとなっている。
【0026】
そして、47は金属カバーであり、その上面中央部に貫通孔47Aを有し、その貫通孔47A周囲から段部を介して一段下がった周囲部に下方に曲げ下ろされた側壁部を備えている。この金属カバー47は、上記操作釦45の操作部45Bを貫通孔47Aから上方に突出させるようにして上方側から組み込まれており、その組み合わせ状態で、フランジ部45Aは段部内に収容されている。また、金属カバー47の側壁部下端には脚部が設けられており、その脚部が配線基板11の下面にカシメられることによって、配線基板11、弾性押圧部材41、操作釦45は結合されている。なお、操作釦45は、上述したようにフランジ部45Aが金属カバー47に設けられた段部内に位置され、かつ操作部45B周囲が貫通孔47Aの内周端で規制されることによって上方への抜け止めおよび側方などへの位置規制がなされている。
【0027】
以上のように当該複合スイッチは構成され、次に、その動作を説明する。
【0028】
まず、操作釦45の操作部45Bに押し下げ力を加えると、操作釦45を介して弾性押圧部材41の天面41Dに下方への押し下げ力が加わり、弾性押圧部材41の円筒部41Cに一体形成されている天面41Dが下がっていく。それにより、中央押圧部41Bが絶縁フィルム35を介して可動接点15に押し下げ力を加えていく。そして、その力が所定の大きさを超えると、図4の断面図に示したように、可動接点15が節度を伴って反転動作して可動接点15の中央下面が中央固定接点12Aに接触し、可動接点15を介して外側と中央固定接点12Bと12Aとの間が電気的に接続したスイッチON状態に移行して一段目の出力が得られるようになる。この状態では、上記周囲押圧部41Aは、感圧導電ゴム31には押圧力を加えないように上記所定間隔Aは設定されている。
【0029】
そして、続いて、操作部45Bに押し下げ力を加えていくと、中央押圧部41Bが潰れるなどして更に弾性押圧部材41の天面41Dの位置が下がり、上記周囲押圧部41Aで感圧導電ゴム31が押圧されて圧縮されるようになる。これにより、内周配線部13Aと外周配線部13Bとの抵抗が指数関数的に下がり、その押圧操作状態に応じて導通状態に近くなっていく二段目の出力が内周および外周配線部13Aおよび13B間から得られる。なお、その圧縮量に応じた出力状態は、用いる感圧導電ゴム31により異なるため、必要に応じて感圧導電ゴム31を選択することが重要である。
【0030】
ここで、図5に、上記操作釦45の押し下げ操作時での動作ストロークを横軸にとって、スイッチ素子21の荷重を実線で、また感圧導電ゴム31の抵抗値を点線でまとめて示す。
【0031】
同図に示したように、当該構成のものであれば、スイッチ素子21がON状態となり、それに続いて感圧導電ゴム31の抵抗値が指数関数的に下がり、上記スイッチ信号に連続して感圧導電ゴム31から押し下げ力に応じた値が得られるものにできる。
【0032】
そして、上記操作部45Bへの押し下げ力を解除すると、圧縮された感圧導電ゴム31が元の厚みに戻ると共に可動接点15も元の形状に自己復元して周囲押圧部41Aや中央押圧部41Bを押し上げてスイッチOFF状態に戻り、さらに弾性押圧部材41の元の形状に戻る復元力も加わって操作釦45が元の位置に押し戻される。
【0033】
このように当該複合スイッチは、押し下げ操作すると、節度を伴ってスイッチ素子21の状態移行ができ、その状態からのさらなる押し下げ操作で、上記スイッチ状態を維持しつつ、その操作状態に応じた感圧導電ゴム31からの出力が連続して得られるものとして実現することができ、特に当該構成のものであれば、部品点数も少なくて簡素かつコンパクトなものにできる。
【0034】
(実施の形態2)
当該実施の形態による複合スイッチは、実施の形態1によるものの思想を十字キーに転用した事例を説明するものである。
【0035】
図6は本発明の第2の実施の形態による複合スイッチの分解斜視図、図7は同上面図、図8は図7のX−X線における断面図、図9は図7のY−Y線における断面図である。
【0036】
なお、上記実施の形態1と同様構成の部分には同一符号を付して、詳細の説明は省略する。
【0037】
同図において、51は、機器側の配線基板であり、その上面に四つのスイッチ素子用の固定接点52A〜52Dが十字状の端部位置に配され、その中央に一つのスイッチ素子用の固定接点52Eが配されている。なお、各固定接点52A〜52Eは、上記実施の形態1によるものと同様に、それぞれ電気的に独立した一対のもので構成されている。
【0038】
そして、上記各固定接点52A〜52Eに対応する五つの各可動接点15は、一枚ものの第1の絶縁フィルム55下面の粘着層により保持され、各々対応する固定接点52A〜52Eに対し、実施の形態1に説明したと同様に組み合わせられて独立した単体の五つのスイッチ素子として構成されている。
【0039】
その配置位置としては、中央位置に中央スイッチ素子65が配され、それを中心とした十字が構成されるように、周囲スイッチ素子61〜64は中央スイッチ素子65から等距離で機器筐体の前後左右方向に応じた位置に90度間隔で配されている。なお、その周囲スイッチ素子61〜64は、以下では、説明を判り易くするために必要に応じて前側スイッチ素子61と、後ろ側スイッチ素子62、左側スイッチ素子63、右側スイッチ素子64とも記載している。
【0040】
そして、周囲スイッチ素子61〜64において互いに隣り合うものの中間角度位置にあたる第1の絶縁フィルム55の各位置には小孔55Aが設けられている。つまり、上面視では、各スイッチ素子61〜65と小孔55Aは、三行三列のマトリクスを構成するようにしてそれぞれが配置されている。その四つの小孔55Aに応じた配線基板51上のそれぞれの位置には、感圧導電ゴム用の配線部53A〜53Dが設けられている。各配線部53A〜53Dのそれぞれは、独立した2つの導電部から構成されている。
【0041】
ここで、当該実施の形態によるものは、感圧導電ゴムの配設数量およびそれらの配置位置などが前述したものとは異なっている。すなわち、図6にも示したように、当該構成によるものは、独立状態で個々に円板状に形成された四つの感圧導電ゴム75〜78を用いたものとすると共に、その感圧導電ゴム75〜78の配置位置としても上記第1の絶縁フィルム55上に配したものとしている。
【0042】
そして、各感圧導電ゴム75〜78としては、小孔55Aよりも外形が大きくて可動接点15とほぼ同じ径のものを用い、その感圧導電ゴム75〜78のそれぞれで各小孔55Aが塞がれるように感圧導電ゴム75〜78が上記第1の絶縁フィルム55上に配されている。
【0043】
その感圧導電ゴム75〜78は、更に上方から配された第2の絶縁フィルム80で上方が覆われて位置決めされている。つまり、第2の絶縁フィルム80には、感圧導電ゴム75〜78それぞれの周囲位置にあたる下面部分に粘着層が形成されており、上記粘着層により第2の絶縁フィルム80が上記第1の絶縁フィルム55上に貼り付けられることによって、感圧導電ゴム75〜78は、第1および第2の絶縁フィルム55および80で挟持状態とされて位置決めされている。なお、第2の絶縁フィルム80においては、各スイッチ素子61〜65の操作フィーリングを低下させないようにするため、各スイッチ素子61〜65の配置位置に応じた位置に貫通する孔部が設けられている。
【0044】
そして、85は、弾性押圧部材としてなる薄板状のゴムシートであり、その下面には、各スイッチ素子61〜65を押圧するための第1押圧部85A〜85E、さらに感圧導電ゴム75〜78を押圧するための第2押圧部85F〜85Iを一体で備えている。
【0045】
ゴムシート85は、図示しない機器の筐体などで保持されて水平状態で配され、操作されていない通常状態では、第1押圧部85A〜85E(85Bは図には表れず。)は、対応する各スイッチ素子61〜65上に当接状態で位置し、第2押圧部85F〜85I(85Hと85Iは図には表れず。)は、対応する感圧導電ゴム75〜78上を覆っている第2の絶縁フィルム80上との間が所定間隔Bをあけた対峙状態となっている。
【0046】
そして、ゴムシート85上には操作釦90が載せられている。
【0047】
この操作釦90は、周囲釦部90Aと、その周囲釦部90Aの上下に貫通した中央孔内に独立して上下動可能に組み合わされた中央釦部90Bとから構成されている。周囲釦部90Aは周囲スイッチ素子61〜64に対応して配され、中央釦部90Bは中央スイッチ素子65に対応して配されている。
【0048】
中央釦部90Bは、外周のフランジ部が、周囲釦部90Aの中央孔底部位置に設けられた凹部内に収容されて配され、そのフランジ部上面が上記凹部天面に係合することにより上方への抜け止めがなされている。なお、中央釦部90Bにおいては、その下端が中央スイッチ素子65に直接当接した構成とされていてもよい。
【0049】
周囲釦部90Aは、詳細な図示は省略するが機器の筐体下面などに外周のフランジ部上面が当接した係合状態で配されている。その係合箇所による係合によって、周囲釦部90Aは、上方への向け止めがなされ、かつ傾倒動作も可能となっている。その周囲釦部90Aの外形は、周囲スイッチ素子61〜64と感圧導電ゴム75〜78とで構成される上面視で正方形のリングに対応されて、それよりも広幅の正方形リング形状のものとして形成されている。なお、ゴムシート85上に載せられる下面は平坦面で構成されている。
【0050】
以上のように、当該複合スイッチは構成されており、次にその動作について説明する。
【0051】
まず、図9に示した状態から操作釦90の中央釦部90Bを押し下げ操作すると、中央釦部90Bのみが独立して下方に移動して、これによりゴムシート85の中央箇所が部分的に下方に押し下げられて第1押圧部85Eが第1の絶縁フィルム55を介して中央スイッチ素子65に押圧力を加えていく。そして、その力が所定の大きさを超えると、中央スイッチ素子65の可動接点15が節度感を伴って反転動作して、上記可動接点15の中央部下面が一対の固定接点52Eに接触して両者間を導通させてスイッチON状態となり、上記中央釦部90Bへの力を解除すると上記可動接点15が元の形状に自己復帰するなどして押圧前のスイッチOFF状態に戻る。なお、この中央スイッチ素子65の作動信号で、決定や確定機能が作動する構成などにすれば好ましい。上記操作時には、他のスイッチ素子61〜64や感圧導電ゴム75〜78には操作力は加わらず、それらから出力はされない。
【0052】
次に、操作釦90の周囲釦部90Aに対し、その正方形のリングを構成する辺部分を押し下げる動作状態について、前方の辺部分を押圧した状態を例として説明する。
【0053】
図8に示した通常状態から周囲釦部90Aの前方の辺部分が下がるように周囲釦部90Aに押し下げ力を加えると、周囲釦部90Aは、その対辺となる後方の辺部分に設けられた外周のフランジ部が筐体と係合しているため、その係合箇所を支点として前方の辺部分が下がる傾倒動作する。これによって、下方に下がった前方の辺部分に配されている第1押圧部85Aで、対応する前側スイッチ素子61が押圧され、その力が所定の大きさを超えると、図10に示したように、前側スイッチ素子61の可動接点15が反転動作してスイッチON状態となり、一段目の出力が得られる。
【0054】
このとき左側および右側の辺部分も前方側が低くなる傾斜状態となって、それらの辺に設けられた第1押圧部85C、85Dおよび中央位置の第1押圧部85Eも対応する左側スイッチ素子63、右側スイッチ素子64および中央スイッチ素子65に若干の押し下げ力を加えるが、その力の大きさは上記各スイッチ素子63、64および65の可動接点15を反転動作させる力までにはいたらず、上記各スイッチ素子63〜65は共にOFF状態が維持される。
【0055】
また、上記操作により周囲釦部90Aが傾倒して前方の辺部分が下がると、前方側の第1押圧部85Aの両隣に形成された第2押圧部85F、85Gも同時に下方に移動するが、前側スイッチ素子61のスイッチON状態となった時点では、上記第2押圧部85F、85Gは、図10にも示しているように、各々対応する感圧導電ゴム75、76上を覆う第2の絶縁フィルム80上に当接もしくは若干の間隙のあく状態となるように、上記所定隙間Bを設定している。
【0056】
そして、上記図10に示した状態からさらに周囲釦部90Aの前方の辺部分が下がるように周囲釦部90Aに押し下げ力を加えると、周囲釦部90Aがさらなる傾倒動作をして、前側スイッチ素子61のスイッチON状態を維持したままで第1押圧部85Aが潰れつつ、第2押圧部85F、85Gは、各々対応する感圧導電ゴム75、76に対して上方から押圧力を加えるようになる。なお、当該動作においては、前側スイッチ素子61を作動させている第1押圧部85Aなどがゴムシート(弾性押圧部材)85からなるものであるため、上記周囲釦部90Aのさらなる傾倒動作で前側スイッチ素子61が不用意に損傷することなども防止できる。
【0057】
そして、上記動作に伴って上方から第2押圧部85F、85Gに応じた箇所が押圧される感圧導電ゴム75、76は、図11に示したように、その下面がそれぞれ第1の絶縁フィルム55の小孔55Aを介して配線基板51上に設けられた感圧導電ゴム用の対応する配線部53A、53Bに接触して圧縮されるようになり、その圧縮状態に応じた所定出力が得られるようになる。この出力が二段目の出力である。なお、このときにも、上記の左側スイッチ素子63、右側スイッチ素子64、中央スイッチ素子65などは、OFF状態を維持しており、また感圧導電ゴム77、78からの出力もされない。
【0058】
なお、当該動作時における個々の感圧導電ゴム75、76から得られる出力状態は上述した実施の形態1によるものと同様であるため、詳細説明は省略するが、当該構成のものであれば二つの感圧導電ゴム75、76からの値が得られるようになる。そして、上記二つの感圧導電ゴム75、76からの値を個々に得た後、いずれを選択するかはマイクロコンピュータなどを用いて決定させてもよいが、その仕様では引き出し箇所が多くなる。その改善を図るためには、感圧導電ゴム75〜78に応じて個々に一対毎で配された配線部の一方側どうしを予め接続した構成としておき、最も低い出力のみが得られる構成とする等とすれば好ましい。
【0059】
そして、上記操作力を除くと、感圧導電ゴム75、76や前側スイッチ素子61の可動接点15などが元の形状に復元して、感圧導電ゴム75、76の抵抗値が元に戻ると共に前側スイッチ素子61がスイッチOFF状態に戻り、さらにゴムシート85の元の形状に復元する復元力なども加わり、それらの力によって、周囲釦部90Aなどは操作前の水平状態に戻る。
【0060】
なお、上記の周囲釦部90Aへの傾倒動作状態は、他の辺部分に対して行った場合にも同様の動作となるのでその詳細説明は省略するが、いずれの辺部分を下がる方向に向けて押し下げ操作しても、その辺に対応して設けたスイッチ素子がスイッチON状態に移行し、それに引き続いて、同様にその辺に対応して設けられた感圧導電ゴムからの出力が連続的に得られるものとなる。
【0061】
このように、当該複合スイッチは、従来の十字キーと同様の操作状態で、従来と同じスイッチ信号が得られる上、更なる操作で連続的にスイッチ信号とは形態が異なる感圧導電ゴムからの出力が得られ、その感圧導電ゴムから得られる出力は、図5に示したように、操作状態に応じて推移する形態の値のものであるため、さまざまな用途に適用可能である。
【0062】
例えば、当該複合スイッチは、機器の表示部に表示されているカーソルやポインタの上下左右方向への移動時に用いると好ましい。この場合には、周囲スイッチ素子61〜64からのスイッチ信号を用いて希望する移動方向の決定をさせ、その後の更なる押し下げ操作で得られる感圧導電ゴム75〜78からの二段目の出力でカーソル移動速度を制御するものなどとすればよい。当該仕様のものであれば、上記の更なる操作の操作力を変えれば感圧導電ゴムからの出力状態も追従して変化するもののため、操作状態に合わせて速度の微調整なども可能なものに構成することができる。また、当該構成であれば、スイッチ信号が得られる際に節度感触が得られるため、続けての操作状態の始まりが触覚的にも判り易く、これによっても操作性に優れたものに実現できる。
【0063】
さらに、当該複合スイッチを、双方向のみの操作状態で用いることもでき、その場合には例えば音量や音質、バランス制御などの用途に適用して用いることもできる。
【0064】
なお、当該複合スイッチの用途は、上記に説明した用途のみに限定されることはない。
【0065】
そして、当該複合スイッチは、投影面積的にも、周囲位置どうしの単体スイッチ間の角度領域を含む投影面積内に納まる形態で構成されているために、従来の十字キーの置き換え用としても有用で、従来のものよりも出力数が増え、かつその中の一つの信号は単なるスイッチ信号でない分、さらなる機能割り当てや従来では実現し得なかった機能を割り当てることなども可能となり、機器の使い勝手の向上にも寄与することができる。
【0066】
そして、上述した各実施の形態によるいずれの複合スイッチも、スイッチ信号が得られた後に感圧導電ゴムの圧縮に応じた出力が得られるものとして説明したが、上記所定間隔AやBの寸法を調整等して、スイッチ信号が得られる直前から二つ目の信号が得られる仕様のもの等としても、スイッチ素子からの信号および感圧導電ゴムの圧縮による出力が連続的に得られるものにできる。また、上記には何れも配線基板を用いて構成したものを説明したが、その代わりに樹脂ケースを用いたものなどとしてあってもよい。
【0067】
さらには、上記に説明したもの以外の構成であってもよく、例えば、図12および図13に示すように、操作釦95の一端が回動可能にケース96に保持され、その支点部とは逆の他端位置に感圧導電ゴム97が配され、また、その中間位置にスイッチ素子98が配されたものとし、操作釦95への押し下げ操作で、操作釦95を上記支点部を中心として回動させ、操作釦95下方に重ねて介在させたシリコンゴムなどからなる弾性押圧部材99でスイッチ素子98が作動され、更なる押圧操作で操作釦95の先端で感圧導電ゴム97が押圧されるものなどとしてもよい。
【0068】
なお、本発明は、上述した構成のものに限られず、それ以外であっても、操作釦への操作でスイッチ素子からの信号および感圧導電ゴムの圧縮による出力が連続的に得られる構成とされたものは本発明の範疇に入る。
【0069】
なお、感圧導電ゴムの出力は、微小な圧縮状態でも変移する。そして、これを考慮し、操作釦などを復帰方向側に押し戻すバネ材を介在させておき、操作力を除いた際、そのバネ材の復帰力により感圧導電ゴムの圧縮状態が迅速に解除される構成とするとさらに好ましく、本発明は、そのような構成のものまでを含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明による複合スイッチは、操作釦への操作で複数の信号が連続して得られ、その中の一つがスイッチ信号以外の信号であり、かつ十字キーを構成する際にも周囲位置どうしの単体スイッチ間の角度領域を含む投影面積内に納まる形態で構成できるものに実現できるという有利な効果を有し、各種電子機器の入力操作部を構成する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態による複合スイッチの正面断面図
【図2】同外観斜視図
【図3】同分解斜視図
【図4】同動作状態を示す断面図
【図5】同動作時におけるスイッチ素子の荷重と感圧導電ゴムの抵抗値を示す図
【図6】本発明の第2の実施の形態による複合スイッチの分解斜視図
【図7】同上面図
【図8】図7のX−X線における断面図
【図9】図7のY−Y線における断面図
【図10】同動作状態時での図7のX−X線における断面図
【図11】同動作状態時での図7のX−X線における断面図
【図12】同他の構成事例を示す断面図
【図13】同分解斜視図
【符号の説明】
【0072】
11、51 配線基板
12A 中央固定接点
12B 外側固定接点
13A 内周配線部
13B 外周配線部
15 可動接点
21、98 スイッチ素子
31、75〜78、97 感圧導電ゴム
35 絶縁フィルム
41、99 弾性押圧部材
41A 周囲押圧部
41B 中央押圧部
41C 円筒部
41D 天面
45、90、95 操作釦
45A フランジ部
45B 操作部
47 金属カバー
47A 貫通孔
52A〜52E 固定接点
53A〜53D 配線部
55 第1の絶縁フィルム
55A 小孔
61〜64 周囲スイッチ素子
65 中央スイッチ素子
80 第2の絶縁フィルム
85 ゴムシート(弾性押圧部材)
85A〜85E 第1押圧部
85F〜85I 第2押圧部
90A 周囲釦部
90B 中央釦部
96 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作釦と、その下方に配され上記操作釦への押し下げ操作で状態遷移がなされるスイッチ素子と、そのスイッチ素子における状態遷移タイミングよりも若干前後して上記操作釦への継続される押し下げ操作に伴って圧縮されるように上記スイッチ素子の周囲位置に配され、その圧縮状態に応じた出力が得られる感圧導電ゴムとを備え、上記操作釦への継続する押し下げ操作に応じて上記スイッチ素子からの出力および上記感圧導電ゴムの圧縮による出力が連続的に得られる複合スイッチ。
【請求項2】
スイッチ素子が、円形ドーム状の可動接点と、その可動接点により接続される複数の固定接点から構成され、感圧導電ゴムとして、上記スイッチ素子の周囲を囲う外形円筒状のものを用いた請求項1記載の複合スイッチ。
【請求項3】
四つのスイッチ素子が十字状の端部位置に配され、そのスイッチ素子どうしの間の角度位置に感圧導電ゴムがそれぞれ配されたものとすると共に、傾倒動作可能に保持されている一つの操作釦で上記各スイッチ素子が個別に押圧可能に構成され、上記操作釦への傾倒操作で上記所定のスイッチ素子の状態遷移がなされ、その後の上記操作釦への継続する傾倒操作で、上記所定のスイッチ素子の両隣に配された感圧導電ゴムが圧縮される構成とされた請求項1記載の複合スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−159512(P2008−159512A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349175(P2006−349175)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】