説明

複合基板の製造方法および複合基板

【課題】所望の反りを有する複合基板の製造方法および複合基板を提供する。
【解決手段】各々が表面および裏面を有する単結晶基板群10が準備される。単結晶基板群10の各々の表面が互いに傾くように単結晶基板群10が配置される。この配置は、単結晶基板10群の各々の表面が全体として凸面状および凹面状のいずれかの形状をなすように行われる。単結晶基板群10の各々の裏面とベース基板30とが対向させられる。単結晶基板群10の各々の裏面とベース基板30とが接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合基板の製造方法および複合基板に関し、特に単結晶基板群を有する複合基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造に用いられる半導体基板として化合物半導体の採用が進められつつある。たとえば炭化珪素は、より一般的に用いられているシリコンに比べて大きなバンドギャップを有する。そのため炭化珪素基板を用いた半導体装置は、耐圧が高く、オン抵抗が低く、また高温環境下での特性の低下が小さい、といった利点を有する。
【0003】
半導体装置を効率的に製造するためには、ある程度以上の基板の大きさが求められる。米国特許第7314520号明細書(特許文献1)によれば、76mm(3インチ)以上の炭化珪素基板を製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7314520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭化珪素基板の大きさは工業的には100mm(4インチ)程度にとどまっており、このため大型の基板を用いて半導体装置を効率よく製造することができないという問題がある。特に六方晶系の炭化珪素において、(0001)面以外の面の特性が利用される場合、上記の問題が特に深刻となる。このことについて、以下に説明する。
【0006】
欠陥の少ない炭化珪素基板は、通常、積層欠陥の生じにくい(0001)面成長で得られた炭化珪素インゴットから切り出されることで製造される。このため(0001)面以外の面方位を有する炭化珪素基板は、成長面に対して非平行に切り出されることになる。このため基板の大きさを十分確保することが困難であったり、インゴットの多くの部分が有効に利用できなかったりする。このため、炭化珪素の(0001)面以外の面を利用した半導体装置は、効率よく製造することが特に困難である。
【0007】
上記のように困難をともなう炭化珪素基板の大型化に代わって、単結晶基板群と、その各々に接合されたベース基板とを有する複合基板を用いることが考えられる。ベース基板は、結晶欠陥密度が高くても差し支えないことが多く、よって大型のものを比較的容易に準備することができる。そして単結晶基板群が有する単結晶基板の数を増やすことで、必要に応じて複合基板を大きくすることができる。
【0008】
このような複合基板を用いた半導体装置の製造工程において、複合基板に過剰な反りが生じることがある。たとえば複合基板上への成膜が行われると、膜応力に起因した複合基板の反りが生じ得る。また複合基板の研磨に起因して反りが生じる場合もある。
【0009】
基板に過剰な反りが生じると、半導体装置の製造工程に支障が生じ得る。たとえば基板のチャッキングが困難になることがあり、また極端な場合、基板が割れてしまうことがある。特に基板が複合基板の場合は単純な基板と異なり、単結晶基板群の各々の間に境界が存在し、また単結晶基板群とベース基板との間に界面が存在するので、この境界または界面を基点として割れが生じ得る。
【0010】
上記のような過剰な反りを防止するための一策として、問題となる反りと反対方向に、複合基板を予め反らしておくことが考えられる。これにより、予め設けられた反りと、半導体装置の製造工程において生じる反りとが相殺されるので、過剰な反りの発生を防止することができる。予め設けられる反りは、この相殺に適したものである必要があることから、反りの方向および反り量が制御される必要がある。しかしながら複合基板に対して所望の反りを付与する方法はこれまで十分に検討されていなかった。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の反りを有する複合基板の製造方法および複合基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の複合基板の製造方法は、以下の工程を有する。各々が表面および裏面を有する単結晶基板群が準備される。単結晶基板群の各々の表面が互いに傾くように単結晶基板群が配置される。配置する工程は、単結晶基板群の各々の表面が全体として凸面状および凹面状のいずれかの形状をなすように行われる。単結晶基板群の各々の裏面とベース基板とが対向させられる。単結晶基板群の各々の裏面とベース基板とが接合される。
【0013】
本発明の複合基板の製造方法によれば、複合基板の表面を構成する単結晶基板群の各々の表面は互いに傾けられており、この傾きは単結晶基板群の配置によって任意に調整することができることから、複合基板の表面に所望の反りを付与することができる。つまり所望の反りを有する複合基板を得ることができる。
【0014】
好ましくは、ベース基板および単結晶基板群は、炭化珪素および窒化ガリウムのいずれかから作られている。これより炭化珪素および窒化ガリウムのいずれかからなる表面を有する複合基板を得ることができる。またこの場合、炭化珪素および窒化ガリウムのいずれも昇華する材料であることから、接合工程において昇華法が用いられ得る。
【0015】
好ましくは、接合する工程は、ベース基板から昇華ガスを生成させる工程と、昇華ガスを単結晶基板群の各々の裏面上で再結晶させる工程とを含む。これにより、単結晶基板群の裏面とベース基板とが対向させられた際に両者の間に隙間があっても、この隙間中へベース基板から昇華ガスが生成され、この昇華ガスが単結晶基板群の裏面上で再結晶することによって、両者の間を接合することができる。
【0016】
好ましくは、配置する工程は、グラファイトから作られた台座の上に単結晶基板群を載置することによって行われる。高い耐熱性を有するグラファイトによって台座が作られることによって、単結晶基板群とベース基板との接合の際に高い処理温度を用いることができる。
【0017】
本発明の複合基板は単結晶基板群およびベース基板を有する。単結晶基板群の各々は表面および裏面を有する。ベース基板は単結晶基板群の各々の裏面に接合されている。単結晶基板群の各々の表面は、露出されており、かつ互いに傾いている。
【0018】
本発明の複合基板によれば、複合基板の表面を構成する単結晶基板群の各々の表面は互いに傾けられている。この傾きは単結晶基板群の配置によって任意に調整することができるので、複合基板の表面に所望の反りを付与することができる。つまり所望の反りを有する複合基板を得ることができる。
【0019】
好ましくは、ベース基板および単結晶基板群は、炭化珪素および窒化ガリウムのいずれかから作られている。これより炭化珪素および窒化ガリウムのいずれかからなる表面を有する複合基板を得ることができる。またこの場合、炭化珪素および窒化ガリウムのいずれも昇華する材料であることから、接合工程において昇華法が用いられ得る。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、所望の反りを有する複合基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における複合基板の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における複合基板の製造方法の第1工程を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における複合基板の製造方法の第2工程を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における複合基板の製造方法の第3工程を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における複合基板の構成を概略的に示す平面図である。
【図7】図6の線VII−VIIに沿う概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における複合基板の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の概略的なフロー図である。
【図11】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す部分断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す部分断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第3工程を概略的に示す部分断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第4工程を概略的に示す部分断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3における半導体装置の製造方法の第5工程を概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1および図2に示すように、本実施の形態の複合基板81は単結晶基板群10およびベース基板30を有する。本実施の形態においては、単結晶基板群10およびベース基板30は炭化珪素から作られている。
【0023】
単結晶基板群10は単結晶基板11〜19を有する。単結晶基板群10の各々は、裏面と、露出された表面とを有する。たとえば、単結晶基板11は裏面B1および表面F1を有し、単結晶基板12は裏面B2および表面F2を有する。単結晶基板群10の各々の厚さは、たとえば400μmである。
【0024】
ベース基板30は、互いに対向する主面P1およびP2を有する。ベース基板30の厚さは、たとえば400μmである。
【0025】
ベース基板30の主面P1は、単結晶基板群10の各々の裏面に接合されている。これにより単結晶基板11〜19は互いに固定されている。単結晶基板11〜19のそれぞれは同一平面上において露出した表面(表面F1、F2など)を有し、これにより複合基板81は、単結晶基板11〜19の各々に比して大きな表面を有する。よって単結晶基板11〜19の各々を単独で用いる場合に比して、複合基板81を用いる場合の方が、半導体装置をより効率よく製造することができる。
【0026】
単結晶基板群10の各々の表面は、露出されており、かつ互いに傾いている。この傾きによって、単結晶基板群10の各々の表面は全体として凹面状の形状をなしている。凹面状の形状をなすためのこの傾きは、具体的には、図中、単結晶基板群10の各々の表面の法線ベクトル(図中の直線矢印)として示されている。すなわち複合基板81の表面(図1に示す面)の平面視において、法線ベクトルは複合基板81の中心CPに近づくような成分を有しており、好ましくはほぼ中心CPの方を向いている。このため複合基板81は、表面側が凹面状、裏面側が凸面状となるように、反り量W1だけ反っている。
【0027】
好ましくは複合基板81の反り量W1は0.1μm以上100μm以下とされる。また好ましくは複合基板81のTTV(Total Thickness Variation)は50μm以下とされる。ここでTTVとは、一般に、基板裏面を基準面として厚み方向に測定した高さの基板全面における最大値と最小値の差のことをいう。ただし本実施の形態においては、単結晶基板群10の各々の間の境界部分をTTVの算出に考慮しないものとする。なぜならばこの境界部分には、通常、デバイスが形成されず、よってこの部分には精密な高さ制御が求められないからである。
【0028】
次に、複数の複合基板81の製造方法について説明する。
図3を参照して、単結晶基板群10が準備される。単結晶基板群10の各々は、たとえば、六方晶系における(0001)面で成長したSiCインゴットを(0−33−8)面に沿って切断することによって準備される。この場合、好ましくは、(0−33−8)面側が表面として用いられ、(03−38)面側が裏面として用いられる。
【0029】
また第1の加熱部材91(台座)が準備される。第1の加熱部材91の表面(図3における上面)は、上述した複合基板81の表面と逆方向に反っている。すなわち第1の加熱部材91の表面は凸面状となっている。好ましくは第1の加熱部材91はグラファイトから作られており、より好ましくはグラファイトの空隙率はできるだけ小さくされる。
【0030】
次に単結晶基板群10の表面(図3における下面)と第1の加熱部材91の表面(図3における上面)とが対向するように、単結晶基板群10が、台座としての第1の加熱部材91の上に配置される。これにより単結晶基板群10の各々の表面が、全体として凹面状の形状をなすように、互いに傾けられる。
【0031】
図4を参照して、単結晶基板群10の上にベース基板30が載置される。これにより単結晶基板群10の各々の裏面とベース基板30とが対向させられる。またベース基板30の上に第2の加熱部材92が載置される。第2の加熱部材92は、第1の加熱部材と同様の材料から作られ得る。
【0032】
さらに図5を参照して、加熱装置が準備される。加熱装置は、断熱容器40と、ヒータ50と、ヒータ電源150とを有する。断熱容器40は、断熱性の高い材料から形成されている。ヒータ50は、たとえば電気抵抗ヒータである。
【0033】
次に、上記のように準備された、第1の加熱部材91、単結晶基板群10、ベース基板30、および第2の加熱部材92が、断熱容器40内に収められる。この際、第2の加熱部材92は第1の加熱部材91に比してヒータ50の近くに配置されることが好ましい。
【0034】
次に断熱容器40内の雰囲気が、大気雰囲気の減圧によって得られた雰囲気、または不活性ガス雰囲気とされる。不活性ガスとしては、たとえば、He、Arなどの希ガス、窒素ガス、または希ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いることができる。断熱容器40内の圧力は、たとえば0.01〜100Paとされる。
【0035】
次にヒータ電源150からの電力の供給によりヒータ50から熱が放射される。第1および第2の加熱部材91、92は、この放射熱を吸収して得た熱を再放射することによって、ベース基板30および単結晶基板群10を加熱する。
【0036】
この加熱は、炭化珪素が昇華し得る温度、たとえば1800℃以上2500℃以下の温度、より好ましくは2000℃以上2300℃以下の温度にベース基板30が達するように行われる。加熱時間は、たとえば1〜24時間とされる。
【0037】
またこの加熱は、単結晶基板群10からベース基板30に向かう方向(図5の上方向)に向かって温度が高くなるような温度勾配が形成されるように行われる。このような温度勾配は、たとえば、ヒータ50が第1の加熱部材91に比して第2の加熱部材92の近くに位置することによって得られる。またこの温度勾配は、好ましくは0.1℃/mm以上20℃/mm以下である。
【0038】
上記の加熱が開始される段階では、ベース基板30は単結晶基板群10の上に載置されているだけであって接合はされていない。このため、図4に示すように、単結晶基板群10の裏面(裏面B1、B2など)の各々と、ベース基板30の主面P1との間には、ミクロ的には空隙GQが存在する。空隙GQの平均高さ(図4における縦方向の寸法)は、たとえば数十μmである。また本実施の形態においては、単結晶基板群10の各々の間の傾きの存在によって、中央付近には比較的小さい空隙G0(図4)が形成され、外周付近には比較的大きい空隙G1(図4)が形成される。
【0039】
空隙GQにおいては、前述した温度勾配によって、昇華および再結晶による炭化珪素の物質移動が生じる。具体的には、ベース基板30から炭化珪素の昇華ガスが生成され、このガスは単結晶基板群10の各々の裏面上で再結晶する。この物質移動によって、単結晶基板群10の各々の裏面とベース基板30とが接合される。以上により複合基板81(図1および図2)が製造される。
【0040】
本実施の形態によれば、複合基板81(図1および図2)の表面を構成する単結晶基板群10の各々の表面は互いに傾けられており、この傾きは第1の加熱部材91(図3)の表面の形状に対応して定められる単結晶基板群10の配置によって任意に調整することができる。よって複合基板81の表面に所望の反りを付与することができる。つまり所望の反りを有する複合基板81を得ることができる。
【0041】
なお単結晶基板群10の表面の反りは、接合前(図3の状態)に比して、接合後(図2の状態)の方が小さくなる傾向がある。したがって単結晶基板群10を配列する工程(図3)における単結晶基板群10の表面(図3の下面)の反りは、複合基板81に付与しようとする反りよりも大きくされることが好ましい。言い換えると、得ようとする複合基板81の単結晶基板群10の各々の表面の間の傾き(図2の実線矢印間の方向の差異)よりも、図3の工程における単結晶基板群10の各々の表面の間の傾き(図3の実線矢印間の方向の差異)の方が大きくされることが好ましい。
【0042】
また本実施の形態によれば、単結晶基板群10の裏面とベース基板30とが対向させられた際に両者の間に比較的大きな空隙G1(図4)があっても、この空隙中へベース基板30から昇華ガスが生成され、この昇華ガスが単結晶基板群10の裏面上で再結晶することによって、両者の間を接合することができる。
【0043】
また単結晶基板群10およびベース基板30は、炭化珪素から作られている。これにより、上記の昇華および再結晶を特に安定的に生じさせることができる。
【0044】
また高い耐熱性を有するグラファイトによって第1の加熱部材91(台座)が作られることによって、単結晶基板群10とベース基板30との接合の際に、高い処理温度を用いることができる。
【0045】
好ましくは、複合基板81の反り量W1は0.1μm以上100μm以下とされる。また好ましくは、複合基板81のTTVは、50μm以下とされる。これにより、複合基板81の表面に対するフォトリソグラフィにおいて、露光装置の焦点合わせが容易となる。
【0046】
好ましくは、ベース基板30の不純物濃度は、単結晶基板群10の各々の不純物濃度よりも高くされる。すなわち相対的に、ベース基板30の不純物濃度は高く、また単結晶基板群10の不純物濃度は低くされる。ベース基板30の不純物濃度が高いことによってベース基板30の抵抗率を小さくすることができるので、複合基板81を流れる電流に対する抵抗が低減される。また単結晶基板群10の不純物濃度が低いことによって、その結晶欠陥をより容易に低減することができる。なお不純物としては、たとえば、窒素、リン、ボロン、またはアルミニウムを用いることができる。
【0047】
単結晶基板群10の各単結晶基板の炭化珪素の結晶構造は六方晶系であることが好ましく、4H型または6H型であることがより好ましい。また好ましくは、単結晶基板の(000−1)面に対する表面(表面F1など)のオフ角は50°以上65°以下である。より好ましくは、表面のオフ方位と単結晶基板の<1−100>方向とのなす角は5°以下である。さらに好ましくは、単結晶基板の<1−100>方向における(0−33−8)面に対する表面のオフ角は−3°以上5°以下である。このような結晶構造が用いられることによって、複合基板81を用いた半導体装置のチャネル移動度を高くすることができる。なお「<1−100>方向における(0−33−8)面に対する表面のオフ角」とは、<1−100>方向および<0001>方向の張る射影面への表面の法線の正射影と、(0−33−8)面の法線とのなす角度であり、その符号は、上記正射影が<1−100>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。また表面の好ましいオフ方位として、上記以外に、単結晶基板11の<11−20>方向とのなす角が5°以下となるようなオフ方位を用いることもできる。
【0048】
なお本実施の形態においては単結晶基板群10およびベース基板30は炭化珪素から作られたものであるが、炭化珪素の代わりに窒化ガリウムが用いられてもよい。窒化ガリウムも炭化珪素と同様に昇華する材料であることから、上記と同様に昇華現象を用いて接合工程を行い得る。
【0049】
また図4に示す工程において空隙G1がほぼなくなるようにベース基板30が単結晶基板群10に接触させられる場合は、上記のような昇華現象を用いた接合工程を用いなくても、ベース基板30と単結晶基板群10とを接合することができる。このための工程としては、たとえば、互いに接触させられたベース基板30および単結晶基板群10の間の界面を加熱によって接合する方法がある。
【0050】
(実施の形態2)
図6および図7に示すように、本実施の形態の複合基板81Vの単結晶基板群10の各々の表面は、露出されており、かつ互いに傾いている。この傾きによって、単結晶基板群10の各々の表面は全体として凸面状の形状をなしている。凸面状の形状をなすためのこの傾きは、具体的には、単結晶基板群10の各々の表面の法線ベクトル(図中の直線矢印)として示されている。すなわち複合基板81Vの表面(図6に示す面)の平面視において、法線ベクトルは複合基板81Vの中心CPから遠ざかる成分を有しており、好ましくは、中心CPに向かう方向とほぼ反対の方を向いている。このため複合基板81は、表面側が凸面状、裏面側が凹面状となるように、反り量W2だけ反っている。すなわち本実施の形態の複合基板81Vは、複合基板81(図1および図2)とは反対方向に反り量W2を有するものである。
【0051】
図8を参照して、複合基板81Vの製造のためには、第1の加熱部材91(図4)の表面の反りと反対方向の反りを有する表面が形成された第1の加熱部材91Vが台座として準備される。次に単結晶基板群10の表面(図8における下面)と第1の加熱部材91Vの表面(図8における上面)とが対向するように、単結晶基板群10が、台座としての第1の加熱部材91Vの上に配置される。これにより単結晶基板群10の各々の表面が、全体として凸面状の形状をなすように、互いに傾けられる。以降、実施の形態1と同様の工程が行われる。
【0052】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0053】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、複合基板81(図1および図2)を用いた半導体装置の製造について説明する。なお説明を簡単にするために複合基板81が有する単結晶基板11〜19のうち単結晶基板11にのみ言及する場合があるが、他の単結晶基板12〜19の各々もほぼ同様に扱われる。
【0054】
図9を参照して、本実施の形態の半導体装置100は、縦型DiMOSFET(Double Implanted Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であって、ベース基板30、単結晶基板11、バッファ層121、耐圧保持層122、p領域123、n+領域124、p+領域125、酸化膜126、ソース電極111、上部ソース電極127、ゲート電極110、およびドレイン電極112を有する。半導体装置100の平面形状(図9の上方向から見た形状)は、たとえば、2mm以上の長さの辺からなる長方形または正方形である。
【0055】
ドレイン電極112はベース基板30上に設けられ、またバッファ層121は単結晶基板11上に設けられている。この配置により、ゲート電極110によってキャリアの流れが制御される領域は、ベース基板30ではなく単結晶基板11の上に配置されている。
【0056】
ベース基板30、単結晶基板11、およびバッファ層121は、n型の導電型を有する。バッファ層121におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3である。またバッファ層121の厚さは、たとえば0.5μmである。
【0057】
耐圧保持層122は、バッファ層121上に形成されており、また導電型がn型のSiCからなる。たとえば、耐圧保持層122の厚さは10μmであり、そのn型の導電性不純物の濃度は5×1015cm-3である。
【0058】
この耐圧保持層122の表面には、導電型がp型である複数のp領域123が互いに間隔を隔てて形成されている。p領域123の内部において、p領域123の表面層にn+領域124が形成されている。また、このn+領域124に隣接する位置には、p+領域125が形成されている。複数のp領域123の間から露出する耐圧保持層122上には酸化膜126が形成されている。具体的には、酸化膜126は、一方のp領域123におけるn+領域124上から、p領域123、2つのp領域123の間において露出する耐圧保持層122、他方のp領域123および当該他方のp領域123におけるn+領域124上にまで延在するように形成されている。酸化膜126上にはゲート電極110が形成されている。また、n+領域124およびp+領域125上にはソース電極111が形成されている。このソース電極111上には上部ソース電極127が形成されている。
【0059】
酸化膜126と、半導体層としてのn+領域124、p+領域125、p領域123および耐圧保持層122との界面から10nm以内の領域における窒素原子濃度の最大値は1×1021cm-3以上となっている。これにより、特に酸化膜126下のチャネル領域(酸化膜126に接する部分であって、n+領域124と耐圧保持層122との間のp領域123の部分)の移動度を向上させることができる。
【0060】
次に半導体装置100の製造方法について説明する。まず基板準備工程(ステップS110:図10)にて、複合基板81(図1および図2)が準備される。
【0061】
図11を参照して、エピタキシャル層形成工程(ステップS120:図10)により、エピタキシャル層、すなわちバッファ層121および耐圧保持層122が形成される。この結果、エピタキシャル層の膜応力によって、図中矢印に示すような反り(図11の矢印)が生じる。この反りは、予め複合基板81に形成されていた反りによって相殺される。これにより複合基板81に過度な反りが生じることが防止される。
【0062】
上記のエピタキシャル層形成工程は、具体的には、以下のように行われる。
単結晶基板群10の表面上にバッファ層121が形成される。バッファ層121は、導電型がn型のSiCからなり、たとえば厚さ0.5μmのエピタキシャル層である。またバッファ層121における導電型不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3とされる。
【0063】
次にバッファ層121上に耐圧保持層122が形成される。具体的には、導電型がn型のSiCからなる層が、エピタキシャル成長法によって形成される。耐圧保持層122の厚さは、たとえば10μmとされる。また耐圧保持層122におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1015cm-3である。
【0064】
図12を参照して、注入工程(ステップS130:図10)により、p領域123と、n+領域124と、p+領域125とが、以下のように形成される。
【0065】
まずp型の導電性不純物が耐圧保持層122の一部に選択的に注入されることで、p領域123が形成される。次に、n型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってn+領域124が形成され、またp型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってp+領域125が形成される。なお不純物の選択的な注入は、たとえば酸化膜からなるマスクを用いて行われる。
【0066】
このような注入工程の後、活性化アニール処理が行われる。たとえば、アルゴン雰囲気中、加熱温度1700℃で30分間のアニールが行われる。
【0067】
図13を参照して、ゲート絶縁膜形成工程(ステップS140:図10)が行われる。具体的には、耐圧保持層122と、p領域123と、n+領域124と、p+領域125との上を覆うように、酸化膜126が形成される。この形成はドライ酸化(熱酸化)により行われてもよい。ドライ酸化の条件は、たとえば、加熱温度が1200℃であり、また加熱時間が30分である。
【0068】
その後、窒化処理工程(ステップS150)が行われる。具体的には、一酸化窒素(NO)雰囲気中でのアニール処理が行われる。この処理の条件は、たとえば加熱温度が1100℃であり、加熱時間が120分である。この結果、耐圧保持層122、p領域123、n+領域124、およびp+領域125の各々と、酸化膜126との界面近傍に、窒素原子が導入される。
【0069】
なおこの一酸化窒素を用いたアニール工程の後、さらに不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用いたアニール処理が行われてもよい。この処理の条件は、たとえば、加熱温度が1100℃であり、加熱時間が60分である。
【0070】
次に電極形成工程(ステップS160:図10)により、ソース電極111およびドレイン電極112が、以下のように形成される。
【0071】
図14を参照して、酸化膜126上に、フォトリソグラフィ法を用いて、パターンを有するレジスト膜が形成される。このレジスト膜をマスクとして用いて、酸化膜126のうちn+領域124およびp+領域125上に位置する部分がエッチングにより除去される。これにより酸化膜126に開口部が形成される。次に、この開口部においてn+領域124およびp+領域125の各々と接触するように導体膜が形成される。次にレジスト膜を除去することにより、上記導体膜のうちレジスト膜上に位置していた部分の除去(リフトオフ)が行われる。この導体膜は、金属膜であってもよく、たとえばニッケル(Ni)からなる。このリフトオフの結果、ソース電極111が形成される。
【0072】
なお、ここでアロイ化のための熱処理が行なわれることが好ましい。たとえば、不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスの雰囲気中、加熱温度950℃で2分の熱処理が行なわれる。
【0073】
図15を参照して、ソース電極111上に上部ソース電極127が形成される。また、酸化膜126上にゲート電極110が形成される。また、複合基板81の裏面上にドレイン電極112が形成される。
【0074】
次に、ダイシング工程(ステップS170:図10)により、破線DCに示すようにダイシングが行われる。これにより複数の半導体装置100(図9)が切り出される。
【0075】
なお上記の説明においてはエピタキシャル層の形成にともなう反りの相殺について説明したが、相殺される反りは、エピタキシャル層の形成にともなうものに限定されない。たとえばトランジスタの電極の形成にともなう反りが相殺されてもよい。
【0076】
また半導体装置の製造工程において複合基板81の表面側が凸となるような反り(図11の矢印に示す反り)が生じる場合について説明したが、工程条件によっては、逆方向に反りが生じる場合がある。そのような場合は、複合基板81(図1および図2)の代わりに複合基板81V(図6および図7)が用いられればよい。
【0077】
また上記の各実施の形態において、導電型が入れ替えられた構成、すなわちp型とn型とが入れ替えられた構成を用いることもできる。また縦型DiMOSFETを例示したが、本発明の半導体基板を用いて他の半導体装置が製造されてもよく、たとえばRESURF−JFET(Reduced Surface Field-Junction Field Effect Transistor)またはショットキーダイオードが製造されてもよい。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
10 単結晶基板群、11〜19 単結晶基板、30 ベース基板、81,81V 複合基板、91,91V 第1の加熱部材(台座)、100 半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が表面および裏面を有する単結晶基板群を準備する工程と、
前記単結晶基板群の各々の前記表面が互いに傾くように、前記単結晶基板群を配置する工程とを備え、
前記配置する工程は、前記単結晶基板群の各々の前記表面が全体として凸面状および凹面状のいずれかの形状をなすように行われ、さらに
前記単結晶基板群の各々の裏面とベース基板とを対向させる工程と、
前記単結晶基板群の各々の裏面と前記ベース基板とを接合する工程とを備える、複合基板の製造方法。
【請求項2】
前記ベース基板および前記単結晶基板群は、炭化珪素および窒化ガリウムのいずれかから作られている、請求項1に記載の複合基板の製造方法。
【請求項3】
前記接合する工程は、前記ベース基板から昇華ガスを生成させる工程と、前記昇華ガスを前記単結晶基板群の各々の裏面上で再結晶させる工程とを含む、請求項1または2に記載の複合基板の製造方法。
【請求項4】
前記配置する工程は、グラファイトから作られた台座の上に前記単結晶基板群を載置することによって行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合基板の製造方法。
【請求項5】
各々が表面および裏面を有する単結晶基板群と、
前記単結晶基板群の各々の裏面に接合されたベース基板とを備え、
前記単結晶基板群の各々の前記表面は、露出されており、かつ互いに傾いている、複合基板。
【請求項6】
前記ベース基板および前記単結晶基板群は、炭化珪素および窒化ガリウムのいずれかから作られている、請求項5に記載の複合基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−4296(P2012−4296A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137232(P2010−137232)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】