説明

複合溶接装置

【課題】良好な溶込みとビードを形成することができる複合溶接装置を提供することにある。
【解決手段】被溶接物の表面におけるレーザビームのビーム直径を設定するビーム直径設定手段と、レーザビームのレーザ出力を設定する出力設定手段と、ビーム直径設定手段からのビーム直径設定値と前記出力設定手段からのレーザ出力設定値を入力して前記ビーム直径設定値に対するレーザ出力設定値の適否を判定してその判定結果を前記制御手段に出力する出力判定手段と、出力判定手段からの出力を入力する警告手段を設け、レーザビームで被溶接物にキーホールを形成しながら溶接すると共に、アークを溶接線に沿って先行させ、レーザビームを前記アークよりも後行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄を主成分とする被溶接物の同一箇所をレーザ溶接とアーク溶接を用いて溶接線に沿って同時に溶接する複合溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接は、高エネルギー密度のため熱影響部の狭い高速溶接ができる。しかし、被溶接物にギャップがあると、レーザビームがそのギャップから抜けてしまい溶接ができなくなる欠点があった。一方、消耗電極式アーク溶接はギャップ裕度が広がるが、前記レーザ溶接と比較して溶接速度が遅い欠点があった。
【0003】
そこで、前記レーザ溶接とアーク溶接との利点を活かしつつその欠点を補完するために、レーザ溶接と消耗電極式アーク溶接とを複合する方法が提案されていた。図12にこのような従来の複合溶接装置のブロック図を示す。
【0004】
図において、レーザ発生手段1は、レーザ発振器2とレーザ伝送手段3と集光光学系4とからなり、レーザビーム5を被溶接物6の溶接位置に照射するものである。前記レーザ発振器2は、外部の制御装置、例えば後述する制御装置12でそのレーザ出力と出力タイミングを制御してよい。前記レーザ伝送手段3は、光ファイバーであってもよく、レンズで組み合わせた伝送系であってもよい。前記集光光学系4は、一枚あるいは複数のレンズから構成されてよい。
【0005】
また、アーク発生手段7は、溶接開始時にワイヤ8をワイヤ送給手段9によってトーチ10を通して前記被溶接物6の溶接位置に供給し、前記ワイヤ8と前記被溶接物6との間にアーク11を発生するよう制御するが、溶接終了時には前記ワイヤ送給手段9による前記ワイヤ8の供給を停止すると共に、前記アーク11を停止するよう制御するものである。前記アーク発生手段7は、外部の制御装置、例えば後述する制御手段12でその出力と出力タイミングを制御してよい。
【0006】
また、制御手段12は、溶接開始または終了命令を受け、前記レーザ発生手段1と前記アーク発生手段7とを制御するものである。前述の通り、前記制御手段12は、前記レーザ発生手段1から発生するレーザビーム5の照射タイミングとその出力とを制御すると共に、前記アーク発生手段7から発生するアーク11のタイミングとその出力とを制御してよい。前記制御手段12として、コンピュータを使用してもよいが、コンピュータのような演算機能を有する部品、デバイス、装置あるいはそれらの組み合わせを使用してもよい。また、前記制御手段12として、ロボットを使用してもよい。ロボットを使用する際には、前記ロボットのマニピュレータ部に前記集光光学系4と前記トーチ10とを固定して使用してよい。
【0007】
このような従来の複合溶接装置の動作としては、溶接開始時には、溶接開始命令を受けた前記制御手段12は前記レーザ発生手段1にレーザ溶接開始信号を送り、レーザビーム5の照射を開始すると共に、前記アーク発生手段7にアーク溶接開始信号を送り、アーク11を開始するが、溶接終了時には、溶接終了命令を受けた前記制御手段12は前記レーザ発生手段1にレーザ溶接終了信号を送り、レーザビーム5の照射を終了すると共に、前記アーク発生手段7にアーク溶接終了信号を送り、前記アーク11を終了する。
【0008】
複合溶接では、レーザ溶接とアーク溶接とをいかに設置するかは重要であるが、前記レーザ溶接と前記アーク溶接との配置が決まると、どのくらいのレーザ出力とビーム直径を使用すればよいかが重要になってくる。
【0009】
複合溶接に使用するレーザ溶接のレーザ出力についての提案は、従来から多数開示されている(例えば、特許文献1または2参照)。しかし、いずれの提案もレーザ出力のみの提案であり、ビーム直径を考慮したものではなかった。
【0010】
実際の複合溶接では、ビーム直径も重要なパラメータである(非特許文献1参照)。この非特許文献1によると、レーザビーム5のパワー密度に応じて形成される溶接ビードの溶込み形状が異なる。その内容について、図11を参照して説明する。図11はレーザビーム5のパワー密度が異なった場合に形成する溶込み断面形状を示す模式図である。図11(a)はパワー密度の低い時に相当し、溶融池101の形成はレーザビーム5からのレーザ吸収と熱伝導102とによって支配されるが、溶込みは熱伝導型であり、その深さはその幅の1/2を超えることがない。一方、図11(b)はパワー密度の高い時に相当し、被溶接物6の表面がレーザビーム5の照射を受け激しい蒸発103を発生し、レーザから得た熱と激しい蒸発の蒸発反力によって加工点にキーホール104と呼ばれる深い穴が形成されながら溶接が進行するため、溶融池105が次第に深くなり、安定状態では前記キーホール104と熱伝導106とのバランスで溶融池107を形成し、ビード幅をはるかに超えた溶込み深さが得られる。上述の通り、レーザ出力のみではなく、ビーム直径も溶接結果を左右する重要なパラメータである。
【0011】
一方、複合溶接では、レーザ溶接とアーク溶接との配置が一旦決まると、レーザ溶接を先行させるかまたはアーク溶接を先行させるかが重要になってくる。これは、両者では溶込みとビードの形成現象が異なるためである。溶込みとビードの形成現象は、特に鉄を主成分とする被溶接物6を溶接する際に考えるべき重要な要素である。複合溶接では、溶接速度が従来のアーク溶接と比較して飛躍的に増加するので、ハンピングを含めアンダーカットなどの溶接欠陥の形成を防止する必要があった。レーザ溶接を先行にするかまたはアーク溶接を先行にするかについての提案は、従来から多数開示されている(例えば、特許文献3から特許文献5参照)。特許文献3では、アーク同士の複合溶接におけるアークの相互干渉を避けるために先行熱源としてTIGまたはMIGアークを使用するが、後行熱源としてエネルギービームを使用することを提案している。特許文献4では、開先内にアークを誘導するためにレーザをMAGアークに先行して照射する方法を提案している。特許文献5では、アーク溶接の前方を余熱すべく先行熱源としてCOガスレーザビームまたはYAGレーザビームを使用することを提案している。
【0012】
上述の通り、溶込みとビードの形成現象はレーザ溶接を先行させるかまたはアーク溶接を先行させるかを決定する上で非常に重要要素であるものの、従来技術ではそれを考慮していなかった。
【特許文献1】特開平10−272577号公報
【特許文献2】特開2002−336982号公報
【特許文献3】特開昭53−137044号公報
【特許文献4】特開平10−272577号公報
【特許文献5】特開昭61−3682号公報
【非特許文献1】レーザプロセス技術ハンドブック、朝倉書店、1992.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、従来の技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、良好な溶込みとビードを形成することができる複合溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため本発明は、鉄を主成分とする被溶接物に照射するレーザビームを発生するレーザ発生手段と、鉄を主成分とするワイヤと前記被溶接物との間にアークを発生するアーク発生手段と、前記レーザ発生手段と前記アーク発生手段とを制御する制御手段と、前記被溶接物の表面における前記レーザビームのビーム直径を設定するビーム直径設定手段と、前記レーザビームのレーザ出力を設定する出力設定手段と、前記ビーム直径設定手段からのビーム直径設定値と前記出力設定手段からのレーザ出力設定値を入力して前記ビーム直径設定値に対する前記レーザ出力設定値の適否を判定してその判定結果を前記制御手段に出力する出力判定手段と、前記出力判定手段からの出力を入力する警告手段を設け、前記レーザビームで前記被溶接物にキーホールを形成しながら溶接すると共に、前記アークを溶接線に沿って先行させ、前記レーザビームを前記アークよりも後行させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明は、鉄を主成分とするワイヤを使用し鉄を主成分とする被溶接物の同一箇所を溶接線に沿って同時に溶接する複合溶接において、レーザ溶接でキーホールを形成しながら溶接すると共に、アークを先行させ、前記レーザビームを後行させることによって良好なビードを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における複合溶接の現象を説明するもので、具体的にはアーク形態、溶融池形状及び溶融池内流れを示す模式図で、図(a)は横から見た断面、図(b)は上方から見た図である。
【0017】
本実施の形態1に用いる複合溶接装置は、後述する図5に示す複合溶接装置を用いるが、実施の形態2に示す複合溶接装置を用いてもよい。
【0018】
なお、図12に示す従来例と同様の構成及び動作と作用効果を奏するところには同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0019】
図1では、溶接方向を矢印Aと、ワイヤ8の中心軸をaa’と、被溶接物6の表面における溶接線をbb’と、レーザビーム5の光軸をcc’と、溶融池を108と、ビードを109と、前記溶融池108の振動を示す溶融池振動を矢印Bと、前記ワイヤ8の先端から離脱して前記溶融池108に移行する溶滴を201と、前記レーザビーム5の照射によって前記溶融池108に形成するキーホールを202と、前記溶滴201が移行して前記溶融池108と接触する部分のほぼ両サイドを示す溶融池サイド点をKとLと、それぞれ前記溶融池108の前方と後方とを示す溶融池前方点と溶融池後方点をMとNと、前記溶融池108の前方(前記キーホール202の前方)において、溶融金属が前記溶融池サイド点Kと前記溶融池サイド点Lとに向かって流れる方向を110aと110bと、前記溶融池108の後方(前記キーホール202の後方)において、溶融金属が前記溶融池108の両サイドを流れる方向を111aと111bと、前記溶融池108の後方(前記キーホール202の後方)において、溶融金属が前記溶融池108の中央部を流れる方向を111cと示している。
【0020】
なお、前記ワイヤ8は、図示の通り被溶接物6に対して垂直方向に描いたが、ワイヤ8aまたはワイヤ8bの位置にしてもよい。前記ワイヤ8とレーザビーム5との干渉を考慮すると、ワイヤ8bの位置がよいが、前記ワイヤ8aと前記レーザビーム5との干渉さえなければワイヤ8aの位置でもよい。
【0021】
上記実施の形態における溶接中の挙動について説明する。
【0022】
溶接中、溶接池108の溶融金属は、溶滴201の衝撃とアーク11のアーク力とを受け、絶えず溶融池振動Bで示すように振動する。
【0023】
図示の通り、レーザビーム5が前記溶融池108に照射して前記溶滴201が前記溶融池108と接触する位置の溶融池後方にキーホール202を形成するので、前記キーホール202は、前記溶滴201を含む前記溶融池108の前方の溶融金属と前記溶融池108の後方の溶融金属とを分断する。
【0024】
その結果、溶接の進行と共に前記溶融池108に移行した後の溶滴201または前記溶融池108の前方の溶融金属が前記溶融池108の後方に流れる前に、図示の通り、一旦溶融池サイド点Kと溶融池サイド点Lとに向かった流れである流れ110aと流れ110とを形成する。
【0025】
その後、前記キーホール202の両サイドを迂回しながら、前記溶融池108の後方に向かう流れである流れ111aと流れ111bとを形成する。この時、言うまでもなく、前記キーホール202の後ろには前記溶融池108の中心部を流れる流れ111cを形成する。溶接時には前記溶融池108は、前記溶融池振動Bに示すように絶えず振動しているが、それを分断する前記キーホール202の存在は、前記キーホール202の両サイドを迂回する流れ111aと流れ111とを形成することによって溶融池サイド点Kと溶融池サイド点Lへの溶融金属の供給をスムーズにすると共に、前記溶融池108の溶融池振動Bを抑える役割を果たす。
【0026】
その結果、ハンピングビードの形成を防ぐのみでなく、高速溶接時にビード止端部に形成しやすいアンダーカットの形成をも防ぐことができる。
【0027】
上記実施の形態でハンピングビードまたはアンダーカットの溶接欠陥を防止できるかについて、図2と図3とに示す方法を参照しつつ説明する。
【0028】
図2は、アーク溶接単独時のアーク形態、溶融池形状及び溶融池内流れを示す模式図で、図(a)は横から見た断面、図(b)は上方から見た図である。
【0029】
図3は、レーザが溶融池前方に照射した場合のアーク形態、溶融池形状及び溶融池内流れを示す模式図で、図(a)は横から見た断面、図(b)は上方から見た図である。
【0030】
なお、図1に示す図面と同様の構成及び動作と作用効果を奏するところには同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なるところの動作及び作用について中心に説明する。
【0031】
図2では、溶接方向を矢印Xと、アーク溶接単独時の溶融池を112と、ビードを113と、前記溶融池112の振動を示す溶融池振動を矢印Cと、前記溶融池112内の両サイドの溶融金属の流れ方向を114aと114bと、前記溶融池112内の中心部の溶融金属の流れ方向を114cと示している。
【0032】
溶接中、前記溶接池112の溶融金属は溶滴201の衝撃とアーク11のアーク力とを受け、前記流れ114aと流れ114bと流れ114cとに示す方向に流れながら、絶えず溶融池振動Cで示すように振動する。
【0033】
また、溶接速度が速い場合は、前記溶融池112に対して前記アーク11は先行気味になるので、ワイヤ8の先端から移行してきた溶滴201は溶融池前方点Mの固体部分付近に落ちやすくなり、前記溶融池前方点Mの固体部分とのなじみが悪くなる場合がある。
【0034】
その結果、高速溶接時には、前記溶融池振動Cに対するキーホールの抑制効果が少ないのみでなく、前記溶融池前方点Mの固体部分付近のなじみが悪化することが原因で、ハンピングビードを形成しやすくなる。前記ハンピングビードが形成しなくても、溶接速度が速い場合には前記流れ114cが強くなり溶融池サイド点Kまたは溶融池サイド点Lへの溶融金属の供給が不足になり、アンダーカットを形成しやすくなる。
【0035】
図2に示すアーク溶接単独時と比較して、図3に示す方法をもっても、ハンピングビードの形成をある程度防止できるが、アンダーカットの形成を防止することが難しい。その内容について、図3を参照しつつ説明する。
【0036】
図3では、溶接方向を矢印Yと、レーザビーム5が前記溶融池115の前方に照射した際の溶融池を115と、ビードを116と、前記溶融池115の振動を示す溶融池振動を矢印Dと、レーザビーム5の照射によって前記溶融池115の前方に形成するキーホールを203と、前記溶融池115内の両サイドの溶融金属の流れ方向を117aと117bと、前記溶融池115内の中心部の溶融金属の流れ方向を117cと示しており、レーザビーム5とワイヤ8との配置位置に関しては、図1とちょうど正反対としている。
【0037】
溶接中、前記溶接池115の溶融金属は、溶滴201の衝撃とアーク11のアーク力とを受け、前記流れ117aと流れ117bと流れ117cとに示す方向に流れながら、絶えず溶融池振動Dで示すように振動をする。
【0038】
図示の通り、前記レーザビーム5は前記溶融池115の溶融池前方点Mの付近に照射し、前記キーホール203を形成するので、前記溶融池115の溶融金属の流れ117aと流れ117bと流れ117cとは、前記キーホール203の影響を受けることが少ない。
【0039】
また、図1と比較すると、前記キーホール203の前記溶融池振動Dに対する抑制効果も少ない。但し、前記溶融池115に移行する溶滴201の前方に前記レーザビーム5が照射してキーホール203を形成するので、図2に示すような、溶融池前方点Mの固体付近における溶融金属のなじみ悪化が発生しにくい。
【0040】
その結果、高速溶接を行ってもハンピングビードが形成しにくい。しかし、前記の通り、前記流れ117aと前記流れ117bとに比較して前記流れ117bは、前記キーホール203の影響を受けずに発達しやすいため、溶融池サイド点Kまたは溶融池サイド点Lへの溶融金属の補給が不十分になりがちであり、ハンピングが形成しなくてもアンダーカットが形成することがある。
【0041】
本発明の実施の形態で形成した良好なビードの止端部の模式図を図4(a)に、図2と図3に示す方法で形成した不良なビードの止端部の模式図を図4(b)に示す。
【0042】
図4では、溶込み領域を118と119と、止端部をSとTとQとRと示している。
【0043】
図示の通り、図(b)におけるアンダーカットが発生した止端部Qと止端部Rとに対して、図(a)では、良好な止端部Sと止端部Tが得られる。
【0044】
図(b)では、図2または図3の方法で得られる溶込み領域118の形状を同様に描いたが、実際の溶接では、図2の方法で得られた溶込み領域118の深さは、図3の方法より深い。
【0045】
本実施の形態では、図1に示すように、鉄を主成分とするワイヤを使用して鉄を主成分とする被溶接物の同一箇所を溶接線に沿って同時に複合溶接する場合、レーザ溶接にはキーホールを形成しながら溶接すると共に、アークを先行させ、前記レーザビームを後行させることによって良好なビードを得ることができる。
【0046】
図1において、溶接線bb’を直線として描いたが、前記溶接線bb’が曲線であってもよい。この場合、被溶接物6の表面におけるレーザビーム5の照射点とワイヤ8の狙い点とを通す直線を前記曲線状の溶接線bb’の切線と一致するように配置すればよい。
【0047】
この実施の形態における複合溶接装置の構成を示す模式図を図5に示す。
【0048】
図5では、図12に示す従来例または図1に示す実施の形態1と同様の構成及び動作と作用効果を奏するところには同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0049】
図5では、レーザビーム5のレーザ出力を設定する出力設定手段14で設定したレーザ出力設定値Pと、被溶接物6の表面におけるレーザビーム5のビーム直径φを設定するビーム直径設定手段15で設定したビーム直径設定値φとを入力し、前記ビーム直径設定値φに対する前記レーザ出力設定値Pの適否を判定してその判定結果を制御手段12と警告手段16とに出力する出力判定手段を13で示している。
【0050】
また、前記出力判定手段13からの入力を受け、レーザ発生手段1とアーク発生手段7とを御する制御手段を17で示している。
【0051】
前記出力判定手段13と前記制御手段17として、コンピュータを使用してもよいが、コンピュータのような演算機能を有する部品、デバイス、装置あるいはそれらの組み合わせを使用してもよい。前記警告手段16として、音を発する部品または装置を使用してよく、ランプを使用してそれを点灯または点滅させてもよい。
【0052】
上記実施の形態の動作について説明する。
【0053】
溶接開始する際に、前記出力判定手段13では、レーザ出力設定手段14で設定したレーザ出力設定値Pとビーム直径設定手段15で設定したビーム直径設定値φとを入力して、前記ビーム直径設定値φと前記レーザ出力Pとの組合せで溶融池108においてキーホール202が形成できるかどうかを計算する。
【0054】
計算の結果、前記レーザ出力設定値Pと前記ビーム直径設定値φとの組合せで前記キーホール202が形成できる場合は、前記出力判定手段13は、前記レーザ出力設定値Pをそのまま制御手段17に出力する。
【0055】
前記制御手段17は、溶接開始信号を受けてから一定期間以内に前記出力判定手段13から前記レーザ出力設定値Pを受けると、レーザ発生手段1とアーク発生手段7とを制御して複合溶接を行う。
【0056】
一方、前記出力判定手段13の計算結果で前記レーザ出力設定値Pと前記ビーム直径設定値φとの組合せで前記キーホール202が形成できない場合は、前記出力判定手段13は、前記制御手段17に溶接不可信号を出力すると共に、警告信号を警告手段16に出力する。
【0057】
前記制御手段17は、溶接開始信号を受けてから一定期間以内に前記出力判定手段13から溶接不可信号を受けると、レーザ発生手段1とアーク発生手段7とを制御して、複合溶接を行わないよう動作する。それと同時に、前記警告手段16は、出力判定手段13から警告信号を受けると、直ちに溶接不可状態を示すよう警告(音、ランプの点灯または点滅)を発する。
【0058】
以上の動作によって、ビーム直径設定値φとレーザ出力設定値Pとの組合せでキーホール溶接ができた場合のみ溶接を行うことが可能となり、良好なビードを得ると共に、不良ビードの発生を未然に防止することができる。
【0059】
出力判定手段13の計算または判定方法について、図6を参照しつつ説明する。
【0060】
図6は、鉄を主成分とする被溶接物6のレーザ溶接においてレーザ出力とビーム直径とによって決まる溶込み形状を示す関係図である。
【0061】
図6中の「○」印は測定点であり、直線C1は前記測定点を近似的に示す直線で、前記直線1よりレーザ出力が大きく、またはビーム直径が小さくなる方向を矢印KHと示しており、その領域は、キーホール領域である。また、前記直線1よりレーザ出力が小さく、またはビーム直径が大きくなる方向を矢印HTと示しておち、その領域は、熱伝導領域である。前記直線C1は、次の(数1)に示す近似式によって表すことができる。
【0062】
【数1】

但し、Pはキーホールを得るためのレーザ出力最小値(kW)であり、φは被溶接物表面におけるレーザビームのビーム直径(mm)である。α、βは被溶接物の材質と対応する定数であり、鉄を主成分とする被溶接物ではそれぞれα=2.0〜3.0、β=0.9〜1.1であるが、望ましいのはα=2.5、β=1.0である。
【0063】
溶接時には、出力判定手段13は出力設定手段14からレーザ出力設定値Pを、ビーム直径設定手段15からビーム直径設定値φを入力し、数式1から前記ビーム直径設定値φと対応するキーホールを得るためのレーザ出力最小値Pを算出する。
【0064】
前記出力設定値Pが前記レーザ出力最小値Pと同等またはPより大きければ、前記出力判定手段13は前記レーザ出力設定値Pをそのまま制御手段17に出力する。その後の動作は前述の通りである。
【0065】
一方、前記出力設定値Pが前記レーザ出力最小値Pより小さければ、前記出力判定手段13は前記制御手段17に溶接不可信号を出力すると共に、警告手段16に警告信号を出力する。
【0066】
その後の動作は、前述の通りである。すなわち、良好なビードを得るためには、図6の矢印KHで示すキーホール領域のレーザ出力とビーム直径との組合せの条件を使用すればよい。
【0067】
本実施の形態では、図5に示すように、鉄を主成分とするワイヤを使用して鉄を主成分とする被溶接物の同一箇所を溶接線に沿って同時に複合溶接する場合、レーザ溶接にはキーホールを形成しながら溶接すると共に、アークを先行させ、前記レーザビームを後行させることによって良好なビードを得ると共に、不良なビード形成を未然に防止することができる。
【0068】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2における複合溶接装置の構成を示す模式図である。
【0069】
図7では、図12に示す従来例または図5に示す実施の形態2と同様の構成及び動作と作用効果を奏するところには同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0070】
図7では、図5における出力判定手段13と制御手段17との代わりに、レーザビーム5のレーザ出力を設定する出力設定手段14で設定したレーザ出力設定値Pと、被溶接物6の表面におけるレーザビーム5のビーム直径φを設定するビーム直径設定手段15で設定したビーム直径設定値φとを入力し、前記ビーム直径設定値φに対する適正なレーザ出力算出値Pを自動的に算出する出力算出手段18と、前記レーザ出力算出値Pを入力してレーザ発生手段1とアーク発生手段7とを制御する制御手段19とを使用する。
【0071】
上記実施の形態の動作について説明する。
【0072】
溶接開始する際に、前記出力算出手段18では、レーザ出力設定手段14で設定したレーザ出力設定値Pとビーム直径設定手段15で設定したビーム直径設定値φとを入力し、前記ビーム直径設定値φと対応する前記レーザ出力設定値Pでキーホール溶接を実現できる場合は、前記レーザ出力設定値Pをそのまま前記制御手段19に出力するが(この場合、レーザ出力算出値P=レーザ出力設定値P)、前記ビーム直径設定値φと対応する前記レーザ出力設定値Pでキーホール溶接を実現できない場合は、前記ビーム直径設定値φに基づき新たにレーザ出力算出値Pを算出して、それを前記制御手段19に出力する。前記制御手段19は、前記出力算出手段18からレーザ出力算出値Pを入力し、前記レーザ発生手段1とアーク発生手段7とを制御して複合溶接を行う。
【0073】
出力算出手段18の計算方法まだは動作について、図8を参照して説明する。
【0074】
図8は、鉄を主成分とする被溶接物6のレーザ溶接においてレーザ出力とビーム直径とによって決まる溶込み形状とレーザ出力算出方法とを示す模式図である。なお、図6と数式1と同様のものには同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0075】
図8では、レーザ出力設定値Pとビーム直径設定値φとが設定した場合の設定点をWEL0を示している。
【0076】
図示の通り、キーホール溶接が実現できない。キーホール溶接を実現するためには、少なくともレーザ出力を設定点WEL0のビーム直径設定値φと対応する、直線C1上にある対応点WEL0’の値以上にする必要がある。前記対応点WEL0’のレーザ出力は、前述の通り、(数1)に示すレーザ出力最小値Pから算出できる。ここで出力算出手段18は、前記設定点WEL0と対する算出点WEL1のレーザ出力を算出し、出力する。算出は、(数2)に従う。
【0077】
【数2】

但し、Pはキーホールを得るためのレーザ出力算出値(kW)であり、前記出力算出手段18からのレーザ出力算出値Pである(P=P)。γは裕度係数である(γ≧1)。
【0078】
裕度係数について説明する。図において、(数3)
【0079】
【数3】

は、前記レーザ出力算出値Pと前記レーザ出力最小値Pとの差を示すレーザ出力差を示しており、キーホール溶接を実現するためのレーザ出力の裕度である。
【0080】
γ>1であれば、前記算出点WEL1と前記対応点WEL0’との間にレーザ出力差ΔPの差が発生するが、これは、キーホールを形成するための裕度である。
【0081】
言うまでもなく、γ=1ではΔP=0となり、前記算出点WEL1と前記対応点WEL0’が一致する。この場合でも、前述の通りキーホール溶接が実現できる。前述した裕度係数γは、予め出力算出手段18に記憶されたものをそのまま使用してよい。
【0082】
本実施の形態では、図7に示すように、図5において出力判定手段13と制御手段17との代わりに出力算出手段18と制御手段19とを使用することによって前記レーザビームを後行させることによって良好なビードを得ると共に、不良なビード形成を未然に防止することができる。
【0083】
実施の形態1と実施の形態2とでは、(数1)または(数2)においてレーザビーム5のビーム直径φは、被溶接物6の表面で測定した集光スポットの直径の測定値に相当する。
【0084】
図示していないが、前記測定値はビーム直径φとしてビーム直径設定手段15に設定される。前記集光スポットが概略的に円形の場合には前記ビーム直径φとしては前記集光スポットの概略的直径を使用してよく、前記集光スポットが概略的に楕円形の場合には前記ビーム直径φとしては前記集光スポットの概略的楕円形の長軸と短軸との値から、(数4)の通り算出してよい。
【0085】
【数4】

但し、φとφとは、集光スポットが概略的楕円形の場合の楕円形の長軸と短軸である。また、前記集光スポットが円形または楕円形のいずれでもない場合には、(数5)を使用して算出してよい。
【0086】
【数5】

但し、Sspotは集光スポットの面積であり、πは円周率である。
【0087】
上記実施の形態では、レーザ溶接とアーク溶接との配置間隔については特に規定していないが、言うまでもなく、前記レーザビーム5の照射位置とワイヤ8の狙い位置との間隔を被溶接物6の表面における前記レーザビーム5のビーム直径φと前記ワイヤ8の直径との和の値以上、6mm以下とすることによって同様の効果を得ることができる。
【0088】
これは、前記間隔を設けることによって、前記レーザビーム5によって形成したキーホール202の中心位置とアーク11の溶融池108における作用位置の中心位置は近くなり、最も深い溶込みを得ることができるためである。
【0089】
また、上記実施の形態では、アーク溶接としてパルスアーク溶接を使用することによって同様の効果を得ると共に、溶接中に発生するスパッタ量を低減する効果も期待できる。これは、パルスアーク溶接では、短絡移行のアーク溶接と比較してワイヤ8と溶融池108の表面との接触がほとんどないままで溶融ワイヤの移行が行われるためである。アーク溶接に使用するシールドガスとしては、5〜40%炭酸ガスを含有する、アルゴンと炭酸ガスとの混合ガスを使用することによって最も大きいスパッタ低減の効果を得ることができる。これは、前記組成のシールドガスの中でパルスアーク溶接が最も安定に行えるためである。
【0090】
また、上記実施の形態では、レーザ溶接に使用するレーザビーム5として波長700〜1100nmのものを使用することによって同様の効果を得ることができる。これは、この波長領域のレーザビーム5は鉄を主成分とする被溶接物によって最も吸収されやすいだけでなく、溶接中に前記レーザビーム5によって誘起されるプラズマの前記レーザビーム5に対する吸収が少ないためである。
【0091】
(実施の形態3)
図9は本発明の実施の形態3におけるレーザ照射とワイヤ狙いとの相関関係を示す模式図である。なお、図1に示す内容と同様の構成及び動作と作用効果を奏するところには同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0092】
図9では、被溶接物6の表面上における溶接線をbb’と、レーザビーム5の光軸cc’と前記溶接線bb’との溶接方向Aの方向になす角度を示すレーザビーム傾斜角をθと、ワイヤ8の中心軸aa’と前記溶接線bb’との前記溶接方向Aの方向になす角度を示すワイヤ傾斜角をθと示している。
【0093】
このように図に示す通り、レーザビーム傾斜角θとワイヤ傾斜角θとは共に鋭角または鈍角であるので、前記光軸cc’と前記中心軸aa’とのなす角度を小さくすることが可能であり、狭い場所での溶接施工が容易である。
【0094】
また、図において、レーザビーム傾斜角θとワイヤ傾斜角θとを鋭角に描いたが、言うまでもなく、鈍角であってもよい。
【0095】
本実施の形態では、図9に示すように、レーザビームの光軸と溶接線との溶接方向になす角度と、ワイヤの中心軸と溶接線との溶接方向になす角度とを共に鋭角または鈍角とすることによって同様の効果を得ることができるのみでなく、狭い場所での溶接施工を容易にすることができる。
【0096】
(実施の形態4)
図10は本発明の実施の形態4に使用するワイヤ8のSiとMnとの成分範囲を示す模式図である。
【0097】
前記Siと前記Mnと製造上極微量の不可避不純物とを除き、残部はFeである。前記ワイヤ8としては、Cuめっきをしてもよいが、図10に示す組成は、Cuめっきの部分を除いた部分の組成を指す。
【0098】
図10では、Si=0.40質量%とSi=0.75質量%を示す直線をそれぞれC2とC3と、それぞれMn=0.90質量%とMn=1.30質量%を示す直線をそれぞれC4とC5と、Si+Mn=1.4質量%とSi+Mn=2.0質量%を示す直線をそれぞれC6とC7と、前記直線C2〜C7で囲んだ成分領域をMSと示している。
【0099】
次に、前記ワイヤ8に含まれるSiとMnとの量と、溶接施工の容易さと、溶接継手強度との関係について説明する。
【0100】
図示の通り、SiまたはMnの量として、Si量が直線C3で示すSi量より多い、またはMn量が直線C5で示すMn量より多い、またはSi+Mn量が直線C7で示すSi+Mn量より多い場合、すなわち、矢印MS1で示す方向では、溶融金属の湯流れが悪化する。極端な場合には、溶融不良またはアンダーカットなどの溶接欠陥が形成してしまう。
【0101】
一方、Si量が直線C2で示すSi量より少ない、またはMn量が直線C4で示すMn量より少ない、またはSi+Mn量が直線C6で示すSi+Mn量より少ない場合、すなわち、矢印MS2で示す方向では、溶融金属の湯流れの悪化がないが、溶接継手の強度が不足してしまう。
【0102】
したがって、前記成分領域MS内にある組成を有するワイヤ8を使用することによって、溶接欠陥のない良好な溶接ビードを得ると共に、十分な溶接継手強度を確保することができる。
【0103】
本実施の形態では、図10に示すように、ワイヤとしてCuめっきをしてもよいが、Cuめっきの部分を除いた芯線の組成は製造上極微量の不可避不純物を除き、C:0.02〜0.12質量%、Si:0.40〜0.75質量%、Mn:0.90〜1.30質量%、Si+Mn:1.4〜2.0質量%、Fe:残部、の組成を有するものを使用することによって良好なビードを得ると共に、十分な溶接継手性能を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本発明に係る複合溶接装置は、鉄を主成分とするワイヤを使用して鉄を主成分とする被溶接物の同一箇所をレーザ溶接とアーク溶接で溶接線に沿って同時に溶接する際に良好なビードを得ることができる複合溶接装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアーク形態、溶融池形状及び溶融池内流れを示す模式図
【図2】アーク溶接単独時のアーク形態、溶融池形状及び溶融池内流れを示す模式図
【図3】レーザが溶融池前方に照射した場合のアーク形態、溶融池形状及び溶融池内流れを示す模式図
【図4】(a)本発明の実施の形態1の方法で形成した良好なビードの止端部の模式図、(b)図2と図3とに示す方法で形成した不良なビードの止端部の模式図
【図5】本発明の実施の形態1における複合溶接装置の構成を示す模式図
【図6】鉄を主成分とする被溶接物のレーザ溶接においてレーザ出力とビーム直径とによって決まる溶込み形状を示す関係図
【図7】本発明の実施の形態2における複合溶接装置の構成を示す模式図
【図8】鉄を主成分とする被溶接物のレーザ溶接においてレーザ出力とビーム直径とによって決まる溶込み形状とレーザ出力算出方法とを示す模式図
【図9】本発明の実施の形態3における複合溶接方法または複合溶接装置のレーザ照射とワイヤ狙いとの相関関係を示す模式図
【図10】本発明の実施の形態4に使用するワイヤのSiとMnとの成分範囲を示す模式図
【図11】レーザのパワー密度が異なった場合に形成する溶込み断面形状を示す模式図
【図12】従来技術の複合溶接装置のブロック図
【符号の説明】
【0106】
1 レーザ発生手段
2 レーザ発振器
3 レーザ伝送手段
4 集光光学系
5 レーザビーム
6 被溶接物
7 アーク発生手段
8 ワイヤ
8a ワイヤ
8b ワイヤ
9 ワイヤ送給手段
10 トーチ
11 アーク
12 制御手段
13 出力判定手段
14 出力設定手段
15 ビーム直径設定手段
16 警告手段
17 制御手段
18 出力算出手段
19 制御手段
101 溶融池
102 熱伝導
103 蒸発
104 キーホール
105 溶融池
106 熱伝導
107 溶融池
108 溶融池
109 ビード
110a 流れ
110b 流れ
111a 流れ
111b 流れ
111c 流れ
112 溶融池
113 ビード
114a 流れ
114b 流れ
114c 流れ
115 溶融池
116 ビード
117a 流れ
117b 流れ
117c 流れ
118 溶込み領域
119 溶込み領域
201 溶滴
202 キーホール
203 キーホール
aa’ 中心軸
bb’ 溶接線
cc’ 光軸
A 溶接方向
B 溶融池振動
C 溶融池振動
C1 直線
C2 直線
C3 直線
C4 直線
C5 直線
C6 直線
C7 直線
D 溶融池振動
HT 矢印
K 溶融池サイド点
KH 矢印
L 溶融池サイド点
M 溶融池前方点
MS 成分領域
MS1 矢印
MS2 矢印
N 溶融池前方点
P レーザ出力設定値(kW)
P0 レーザ出力最小値(kW)
P1 レーザ出力算出値(kW)
PL レーザ出力算出値(kW)
Q 止端部
R 止端部
S 止端部
T 止端部
WEL0 設定点
WEL0’ 対応点
WEL1 算出点
X 溶接方向
Y 溶接方向
φ ビーム直径設定値
α 被溶接物の材質と対応する定数
β 被溶接物の材質と対応する定数
γ 裕度係数
θL レーザビーム傾斜角
θA ワイヤ傾斜角
ΔP レーザ出力差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を主成分とする被溶接物に照射するレーザビームを発生するレーザ発生手段と、鉄を主成分とするワイヤと前記被溶接物との間にアークを発生するアーク発生手段と、前記レーザ発生手段と前記アーク発生手段とを制御する制御手段と、前記被溶接物の表面における前記レーザビームのビーム直径を設定するビーム直径設定手段と、前記レーザビームのレーザ出力を設定する出力設定手段と、前記ビーム直径設定手段からのビーム直径設定値と前記出力設定手段からのレーザ出力設定値を入力して前記ビーム直径設定値に対する前記レーザ出力設定値の適否を判定してその判定結果を前記制御手段に出力する出力判定手段と、前記出力判定手段からの出力を入力する警告手段を設け、前記レーザビームで前記被溶接物にキーホールを形成しながら溶接すると共に、前記アークを溶接線に沿って先行させ、前記レーザビームを前記アークよりも後行させることを特徴とする複合溶接装置。
【請求項2】
前記出力判定手段は、前記被溶接物表面におけるレーザビームのビーム直径に対応する前記被溶接物に固有のキーホールを得るためのレーザ出力最小値以上に前記レーザ出力設定値が設定されているか判定する複合溶接装置。
【請求項3】
鉄を主成分とする被溶接物に照射するレーザビームを発生するレーザ発生手段と、鉄を主成分とするワイヤと前記被溶接物との間にアークを発生するアーク発生手段と、前記レーザ発生手段と前記アーク発生手段とを制御する制御手段と、前記被溶接物の表面における前記レーザビームのビーム直径を設定するビーム直径設定手段と、前記レーザビームのレーザ出力を設定する出力設定手段と、前記ビーム直径設定手段からのビーム直径設定値と前記出力設定手段からのレーザ出力設定値を入力して前記ビーム直径設定値に対応するレーザ出力算出値を算出して前記制御手段に出力する出力算出手段とを設け、前記レーザビームで前記被溶接物にキーホールを形成しながら溶接すると共に、前記アークを溶接線に沿って先行させ、前記レーザビームを前記アークよりも後行させることを特徴とする複合溶接装置。
【請求項4】
前記出力算出手段は、前記被溶接物表面におけるレーザビームのビーム直径に対応する前記被溶接物に固有のキーホールを得るためのレーザ出力算出値を算出する請求項3記載の複合溶接装置。
【請求項5】
前記レーザビームの照射位置と前記ワイヤの狙い位置との間隔は、前記被溶接物表面におけるレーザビームのビーム直径とワイヤの直径との和の値以上、6mm以下とする請求項1から4の何れかに記載の複合溶接装置。
【請求項6】
前記アーク溶接として、パルスアーク溶接を使用する請求項1から5の何れかに記載の複合溶接装置。
【請求項7】
前記アーク溶接に使用するシールドガスとして、5〜40%炭酸ガスを含有する、アルゴンと炭酸ガスとの混合ガスを使用する請求項6記載の複合溶接装置。
【請求項8】
前記レーザ溶接に使用するレーザとして、波長700〜1100nmのレーザを使用する請求項1から7の何れかに記載の複合溶接装置。
【請求項9】
前記レーザビームの光軸と前記溶接線との溶接方向になす角度と、前記ワイヤの中心軸と前記溶接線との溶接方向になす角度を、共に90度未満とするか、または共に90度以上とする請求項1から請求項8の何れかに記載の複合溶接装置。
【請求項10】
ワイヤとして、芯線の組成は製造上極微量の不可避不純物を除き、C:0.02〜0.12質量%、Si:0.40〜0.75質量%、Mn:0.90〜1.30質量%、Si+Mn:1.4〜2.0質量%、Fe:残部の組成を有するものを使用する請求項1から9の何れかに記載の複合溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−207875(P2010−207875A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57704(P2009−57704)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】