説明

複合部材

【課題】設置対象に効率よく放熱できる複合部材、この複合部材を用いた放熱部材、この放熱部材を具える半導体装置を提供する。
【解決手段】複合部材1aは、マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとが複合された複合材料からなる基板2と、基板2の表面に形成された金属被覆層3,4とを具え、一面に半導体素子などが実装され、他面が冷却装置などの設置対象に固定されて、半導体素子の放熱部材として利用される。複合部材1aは、冷却側面及び素子側面の少なくとも一面が反った形状である。冷却側面の反りを押し潰すように複合部材1aを設置対象に固定する。この押圧力により、複合部材1aを設置対象に密着できる。従って、複合部材1aは、半導体素子などの熱を設置対象に効率よく放出でき、半導体装置の放熱部材に好適に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム(いわゆる純マグネシウム)又はマグネシウム合金とSiCとの複合材料を主成分とする複合部材に関するものである。特に、半導体素子などの放熱部材に利用されて、設置対象に効率よく放熱可能な複合部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の放熱部材(ヒートスプレッダ)の構成材料として、Al-SiCといった、金属と非金属無機材料(代表的にはセラミックス)との複合材料が利用されている。近年、複合部材の軽量化を主目的として、アルミニウム(Al)よりも軽量であるマグネシウム(Mg)やその合金をマトリクス金属とするマグネシウム基複合材料が検討されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記複合部材は、代表的には、平板材であり、一面に半導体素子などが実装され、他面を水冷器などの冷却装置に接触させ、ボルトなどで固定して、放熱部材に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-106362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器の高出力化に伴い、電子機器に具える半導体素子の作動時の発熱量がますます増加する傾向にあり、放熱性を更に高めることが望まれている。
【0006】
上記複合部材を上記冷却装置といった設置対象に密着させることで、半導体素子などの熱を設置対象に速やかに伝達して効率よく放出でき、放熱性を向上することができる。そこで、上記複合部材と設置対象との間にグリースなどの潤滑油剤を塗布して、複合部材と設置対象との間に隙間が生じないようにすることが考えられる。しかし、潤滑油剤を介在させるだけでは、放熱性の更なる向上の要求に対して十分な対策とはいえない。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、半導体素子などの熱を効率よく放出できる複合部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複合部材を特定の形状とすることで上記目的を達成する。
【0009】
本発明は、マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとが複合された複合材料からなる基板を具える複合部材に係るものであり、この複合部材は、以下の反り度を満たす。
(反り度)
上記複合部材の一面に対して、その最長辺に沿って表面の変位を測定し、測定した変位の最大値と最小値との差をlmax、上記最長辺の長さをDmaxとするとき、上記最長辺の長さDmaxに対する上記差lmaxの割合:lmax/Dmaxを反り度とし、上記反り度は、0.01×10-3以上10×10-3以下である。
【0010】
本発明複合部材は、その少なくとも一面が特定の反り形状となっており、この反った面を冷却装置といった設置対象に接触させる一面(以下、冷却側面と呼ぶ)とすることができる。そして、この反った面:冷却側面を設置対象に押し付けて当該反りを押し潰して当該面が平坦になるようにし、この平坦な状態で本発明複合部材を設置対象に固定することができる。このように本発明複合部材は、設置対象に加圧状態で接触し、この接触状態がボルトなどにより維持されることで、設置対象に十分に密着できる。特に、本発明複合部材と設置対象との間にグリースなどの潤滑油剤を介在させる場合、上記押圧により、本発明複合部材の冷却側面全体に亘って当該潤滑油剤を十分に塗り広げられるため、本発明複合部材と設置対象との間に当該潤滑油剤を満遍なく存在させられ、設置対象との間に隙間が生じ難い。このように本発明複合部材は、設置対象に密着することができ、冷却側面全体を利用して、半導体素子などの熱を放出できるため、放熱性に優れる。
【0011】
本発明複合部材の一形態として、上記基板の少なくとも一部に金属被覆層を有する形態が挙げられる。
【0012】
金属被覆層は複合材料よりもはんだとの濡れ性に優れる。従って、上記基板の冷却側面に金属被覆層を具える場合、本発明複合部材と設置対象とをはんだにより接合して両者を密着させることで、放熱性をより高められる。或いは、上記冷却側面に対向する面であって、半導体素子などが実装される面(以下、素子側面と呼ぶ)に金属被覆層を具える場合、本発明複合部材と半導体素子などとをはんだにより接合して両者を密着することで、放熱性を高められる。また、上記形態によれば、金属被覆層の上にめっき層を更に具える形態とする場合に金属被覆層を電気めっきの導通層に利用できるため、めっき層を容易に形成できる。めっき層を有する形態は、例えば、耐食性や意匠性を高められる。そして、上記形態によれば、後述するように金属被覆層を特定の条件で製造することで、上記特定の反り形状を有する本発明複合部材を容易に製造することができる。
【0013】
本発明複合部材の一形態として、上記基板の両面に金属被覆層を有し、上記基板の一面の金属被覆層の最大厚さをt1max、上記基板の他面の金属被覆層の最大厚さをt2maxとするとき、最大厚さの差:|t1max−t2max|が0.02mm以上である形態が挙げられる。
【0014】
金属被覆層は、上述のようにはんだの下地層やめっきの導通層として利用できれば、薄くてもよく、上記形態のように基板の各面に具える金属被覆層の厚さが異なっていてもよい。特に、上記形態のように基板の各面の金属被覆層の厚さが異なるように、好ましくは上記厚さの差(絶対値)が大きくなるように金属被覆層を後述の特定の条件で製造することで、金属被覆層の厚さの差異による熱伸縮量の差を利用して、上記特定の反り形状を有する本発明複合部材を容易に製造することができる。従って、上記形態によれば、例えば、切削や研磨などの表面処理、その他の加工・処理を行うことなく製造でき、本発明複合部材の生産性に優れる。
【0015】
本発明複合部材の一形態として、上記基板の一面に金属被覆層を有しており、この金属被覆層は、その表面が平坦であり、かつその厚さ方向の断面形状が湾曲形状であり、その厚さ方向の断面における最大厚さと最小厚さとの差が0.03mm以上である形態が挙げられる。
【0016】
上記形態によれば、金属被覆層の一面が平坦であることで、この面を半導体素子などの実装面とする場合、実装面積を十分に確保できる。また、上記形態では、金属被覆層が厚くなるように、金属被覆層を後述の特定の条件で形成することで、当該金属被覆層の熱収縮を利用して上記特定の反り形状を有する本発明複合部材を容易に製造でき、生産性に優れる。更に、金属被覆層の表面を切削や研磨などすることで、上記平坦な表面の金属被覆層を有する本発明複合部材を容易に製造できる。
【0017】
上記金属被覆層を具える形態として、上記金属被覆層の最大厚さが0.1mm以上である形態が挙げられる。
【0018】
複合部材の金属被覆層が上記厚さを満たすように、後述の特定の条件で金属被覆層を厚く形成することで、上述のように金属被覆層の熱収縮を利用して特定の反り形状を有する本発明複合部材を容易に製造できる。
【0019】
本発明複合部材の一形態として、上記基板中のSiCの含有量が50体積%以上90体積%以下である形態が挙げられる。
【0020】
上記形態によれば、基板の熱膨張係数が小さく、かつ熱伝導率が高いことから、金属被覆層を含む複合部材全体の熱膨張係数も比較的小さくなり易く半導体素子やその周辺部品の熱膨張係数との整合性に優れる上に、放熱性に優れる。従って、上記形態によれば、半導体素子の放熱部材として好適に利用することができる。
【0021】
本発明複合部材の一形態として、上記基板の熱膨張係数が4ppm/K以上15ppm/K以下であり、熱伝導率が180W/m・K以上である形態が挙げられる。
【0022】
上記形態によれば、基板の熱膨張係数が半導体素子やその周辺部品の熱膨張係数(4ppm/K〜8ppm/K程度)と同程度、或いは差が小さく、熱膨張係数の整合性に優れる。そのため、上記形態の複合部材を半導体素子の放熱部材に利用した場合にヒートサイクルを受けても、半導体素子やその周辺部品が剥離し難い。また、上記形態によれば、基板の熱伝導率も十分に高いことから、半導体素子などの熱を効率よく放出できる。従って、上記形態によれば、反り形状による密着性の向上に加えて、複合部材の主たる構成要素である基板自体も放熱性に優れるため、半導体素子の放熱部材として好適に利用できる。更に、基板自体の熱膨張係数が小さかったり、熱伝導率が高いことで、金属被覆層を有する形態も、熱膨張係数が小さくなり易く、かつ熱伝導性に優れる。
【0023】
本発明複合部材は、半導体素子などの放熱部材に好適に利用することができる。従って、本発明放熱部材として、本発明複合部材により構成されたものが挙げられる。また、本発明半導体装置として、本発明放熱部材と、この放熱部材に搭載される半導体素子とを具えるものが挙げられる。
【0024】
上記本発明放熱部材は、上述のように設置対象に密着できる本発明複合部材で構成されることで、放熱性に優れる。また、本発明半導体装置は、半導体素子の熱を本発明放熱部材を介して効率よく設置対象に放出できるため、放熱性に優れる。本発明半導体装置は、代表的にはパワーモジュールといった半導体モジュールが挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明複合部材及び本発明放熱部材は、設置対象との密着性に優れ、効率よく放熱できる。本発明半導体装置は、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、種々の実施形態の複合部材の概略図、及び製造工程を説明する工程説明図である。
【図2】図2は、別の実施形態の複合部材の概略図、及び製造工程を説明する工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をより詳細に説明する。
≪複合部材≫
まず、複合部材の主たる構成要素である、マトリクス金属と非金属無機材料との複合材料からなる基板を説明する。
〔基板〕
[マトリクス金属:マグネシウム又はマグネシウム合金]
上記基板の金属成分は、99.8質量%以上のMg及び不純物からなるいわゆる純マグネシウム、又は添加元素と残部がMg及び不純物からなるマグネシウム合金とする。金属成分が純マグネシウムである場合、熱伝導性の向上、組織の均一性といった利点を有し、マグネシウム合金である場合、液相線温度の低下による溶融温度の低下、基板の耐食性や機械的特性(強度など)の向上といった利点を有する。添加元素は、Li,Ag,Ni,Ca,Al,Zn,Mn,Si,Cu,Zr,Be,Sr,Y,Sn,Ce,希土類元素(Y,Ceを除く)の少なくとも1種が挙げられる。これらの元素は、含有量が多くなると熱伝導率の低下を招くため、合計で20質量%以下(合金全体を100質量%とする。以下、添加元素の含有量について同様)が好ましい。特に、Alは3質量%以下、Znは5質量%以下、その他の元素はそれぞれ10質量%以下が好ましい。Liを添加すると、基板の軽量化、及び基板の加工性の向上の効果がある。公知のマグネシウム合金、例えば、AZ系,AS系,AM系,ZK系,ZC系,LA系,WE系などを利用できる。所望の組成となるようにマトリクス金属の原料を用意する。
【0028】
[非金属無機材料:SiC]
<組成>
SiCは、(1)熱膨張係数が3ppm/K〜4ppm/K程度であり半導体素子やその周辺部品の熱膨張係数に近い、(2)非金属無機材料の中でも熱伝導率が特に高い(単結晶:390W/m・K〜490W/m・K程度)、(3)種々の形状、大きさの粉末や焼結体が市販されている、(4)機械的強度が高い、といった優れた効果を奏する。従って、本発明複合部材では、SiCを構成要素とする。その他、熱膨張係数がMgよりも小さく、熱伝導性に優れ、かつMgと反応し難い非金属無機材料、例えば、Si3N4、Si、MgO、Mg2Si、MgB2、Al2O3、AlN、ダイヤモンド、グラファイトの少なくとも1種を含有することができる。
【0029】
<存在状態>
基板中のSiCの存在状態は、マトリクス金属中にSiC粒がばらばらに分散した形態(以下、分散形態と呼ぶ)、SiC同士を結合するネットワーク部により連結された形態(以下、結合形態と呼ぶ)が挙げられる。分散形態は、(1)原料にSiC粉末を利用して製造可能であり、上記ネットワーク部の形成が不要のため、生産性に優れる、(2)比較的切削し易い、(3)靭性が高く、クラックが伝播し難い、(4)結合形態よりもヤング率が低いため、後述する金属被覆層の熱収縮を利用して反りを形成する場合、金属被覆層が薄くても反りを大きくし易い、(5)設置対象にボルトなどで固定し易い、といった利点がある。結合形態は、SiCがネットワーク部により連続することで連続的な熱伝導の経路が形成されるため、熱伝導率が高い基板や熱膨張係数が小さい基板となり易い。特に、SiCの全体がネットワーク部により連結され、SiC間にマトリクス金属が充填された形態や、この構成に加えて閉気孔が少ない形態(基板中のSiCの全体積に対して閉気孔が10体積%以下、好ましくは3体積%以下)であると、マトリクス金属が十分に存在することで、熱伝導性に更に優れる。ネットワーク部は、代表的には、SiCにより構成される形態が挙げられ、その他、上述したSiC以外の非金属無機材料により構成される形態も有り得る。基板中のネットワーク部の存在や閉気孔の割合は、例えば、当該基板の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで確認したり、測定したりすることができる。
【0030】
<含有量>
上記基板中のSiCの含有量が多いほど、熱伝導率が高まる上、熱膨張係数が小さくなり易い。基板を100体積%とするとき、SiCの含有量が50体積%以上であると、基板の熱膨張係数が3.5ppm/K程度〜15ppm/K程度となり、金属被覆層も含めた複合部材全体の熱膨張係数が4ppm/K以上15ppm/K以下になり易い。SiCの含有量が60体積%以上、更に65体積%以上であると、熱伝導性を更に高められる。SiCの含有量が90体積%以下、更に85体積%以下であると、熱特性に優れる上に、基板の工業的生産性にも優れる。
【0031】
[基板の外形]
上記基板の外形(平面形状)は、代表的には長方形状といった矩形状が挙げられる。矩形状は、(1)容易に形成でき、製造性に優れる、(2)半導体素子などの実装部品の設置面積を十分に確保できる、といった利点を有する。実装部品の形状・数や設置対象などに応じて種々の形状をとることができる。例えば、基板の外形として、固定用のボルト孔が設けられた突出部を有する異形状、円形状などの曲線部を有する形状などが挙げられる。なお、種々の形状の基板にボルト孔などの貫通孔を有した形態としてもよい。
【0032】
[基板の外寸]
上記基板の外寸(幅、長さ)や平面面積は、用途や上記形状に応じて適宜選択することができる。基板が長方形状である場合、例えば、長さ及び幅の少なくとも一方が100mm超の大型な形態である場合、半導体素子などの実装部品の実装面積を大きく確保することができ、大型な放熱部材として利用できる。特に、長さ100mm×幅50mm以上、更に長さ150mm×120mm以上といった大型な複合部材では、設置対象との接触が望まれる面積の絶対値も大きくなるため、複合部材と設置対象との間に隙間が生じて非接触箇所が生じ易い。即ち、上記大型な複合部材では、設置対象に対して非接触な面積の絶対値が大きくなり易い。このような大型な複合部材が特定の反り形状を有する本発明複合部材であると、上記隙間の発生を効果的に低減して、設置対象との接触面積を十分に確保できる。
【0033】
[基板の厚さ]
上記基板の厚さは、適宜選択できるが、半導体素子の放熱部材として利用する場合、10mm以下、特に6mm以下が好ましい。
【0034】
[基板の熱特性]
上記基板中のSiCの含有量が50体積%以上である場合、基板のみの熱膨張係数は上述のように小さい上に、基板のみの熱伝導率も高く、例えば、180W/m・K以上、更に200W/m・K以上、特に220W/m・K以上という基板とすることができる。
【0035】
〔金属被覆層〕
[形成領域]
本発明複合部材は、上記基板のみの形態とすることができる。この場合、熱膨張係数が小さい複合部材になり易い。一方、上記基板の対向する一対の面の少なくとも一部に金属被覆層を具える形態とすることができる。基板における金属被覆層の形成領域は適宜選択することができる。本発明複合部材を半導体素子の放熱部材に利用する場合、上記基板の対向する一対の面のうち、半導体素子などの実装部品が実装される素子側面や冷却装置といった設置対象に接する冷却側面において、少なくともはんだが塗布される領域や電気めっきが施される領域に金属被覆層を具えると、はんだとの濡れ性に優れたり、金属被覆層を導通層に利用できたりして好ましい。基板の各面の全面に亘って金属被覆層を具える形態、基板の各面のそれぞれについて一部のみ金属被覆層を具える形態、いずれか一面のみの全面に亘って金属被覆層を具える形態、いずれか一面の一部にのみ金属被覆層を具える形態のいずれの形態でもよい。
【0036】
[組成]
金属被覆層はマトリクス金属と連続する組織から構成された形態であると、基板との密着性に優れるため剥離し難い上に、熱伝達が良く好ましい。この形態は、例えば、原料のSiCと鋳型との間に隙間が形成されるように原料のSiCを鋳型に収納し、このSiCにマトリクス金属を溶浸させて基板を製造する際に同時に金属被覆層を形成できるため、生産性に優れる。また、上記連続組織から構成された形態では、当該金属被覆層を後述の特定の条件で形成することで、特定の反り形状を形成する本発明複合部材を製造できるため、この形態は、本発明複合部材の生産性に優れる。
【0037】
或いは、金属被覆層の組成は、マトリクス金属と異なる組成から構成される形態とすることができる。具体的な組成は、例えば、純度が99%以上のAl,Cu,Ni、及びAl,Cu,Niを主成分とする合金(Al,Cu,Niを50質量%超含有する合金)からなる群から選択される1種の金属が挙げられる。これらの金属は、耐食性に優れることで、マトリクス金属の腐食を抑制できる、といった利点を有する。
【0038】
金属被覆層の上に、更に、別の被覆層を具えた形態とすることができる。この被覆層は、例えば、めっき層が挙げられる。めっきの材質は、Cu,Ni,Zn、及びCu,Ni,Znを主成分とする合金(Cu,Ni,Znを50質量%超含有する合金)からなる群から選択される1種の金属が挙げられる。めっき法は、無電解めっき法でもよいが、上記金属被覆層を導通層として電気めっき法を利用すると、めっき層を容易に形成できる。めっき前にジンケート処理などの前処理を適宜施すと、金属被覆層とめっき層との密着性を高められる。
【0039】
[厚さ]
基板の各面に設けられた金属被覆層は、各金属被覆層の全体がそれぞれ均一的な厚さである形態(例えば、図1(A)に示す複合部材1aなど)、少なくとも一方の金属被覆層の厚さが部分的に異なる形態(例えば、図1(B)に示す複合部材1bなど)とすることができる。いずれの形態も金属被覆層における最小厚さが1μm以上であると、はんだの下地層やめっきの導通層などに好適に利用できる。また、いずれの形態も金属被覆層における最大厚さが0.01mm(10μm)以上、好ましくは0.1mm(100μm)以上であると、上述のように金属被覆層の形成時の熱収縮などを利用して、特定の反り形状の本発明複合部材を容易に製造できる。金属被覆層の厚さを厚くするほど、反りを大きくし易く、最大厚さが0.3mm以上、更に0.5mm以上の形態が挙げられる。金属被覆層が厚過ぎると、金属被覆層を含む複合部材全体の熱膨張係数の増加や複合部材の熱伝導率の低下を招くため、各面に設けられた金属被覆層の最大厚さは、1.5mm以下、更に1mm以下、とりわけ0.5mm以下が好ましい。また、複合部材中における金属被覆層が占める厚さ割合は、50%以下、更に20%以下が好ましい。
【0040】
基板の一面に設けられた金属被覆層において部分的に厚さが異なる形態とは、例えば、本発明複合部材の厚さ方向の断面において、金属被覆層の中央部の厚さが最も厚く、縁部に向かって薄くなる、といった凸型湾曲形状である形態(例えば、図2(F)に示す複合部材1f)、金属被覆層の中央部の厚さが最も薄く、縁部に向かって厚くなる、といったな凹型湾曲形状である形態が挙げられる。基板の一面にのみ金属被覆層が設けられており、この金属被覆層の厚さ方向の断面における最大厚さと最小厚さとの差が0.03mm以上であって、その表面が平坦である形態(例えば、図2(H)に示す複合部材1h)の場合、この金属被覆層は、厚く形成しておいて研磨などの表面処理を施すことで得られる。そのため、厚い金属被覆層の熱収縮を利用して、特定の反り形状を有する当該形態の本発明複合部材を容易に製造できる。上記差が大きいほど、反りが大きくなる傾向にあり、当該差が0.1mm以上、更に0.2mm以上である形態が挙げられる。
【0041】
基板の両面に金属被覆層を具える形態では、各面の金属被覆層の最大厚さが等しい形態とすることができる(例えば、図2(J)に示す複合部材1j)。或いは、基板の各面の金属被覆層の最大厚さが異なる形態とすることができる(例えば、図1(A)に示す複合部材1aなど)。この形態では、金属基板の両面に金属被覆層を形成するに当たり、最大厚さの差が大きくなるように両層を形成することで、両層の熱伸縮量の差を利用して特定の反り形状を有する本発明複合部材を容易に製造できる。特に、基板の一面の金属被覆層の最大厚さ:t1maxと、基板の他面の金属被覆層の最大厚さ:t2maxとの差:|t1max−t2max|が0.02mm以上であれば、別途切削や研磨などの表面処理を施すことなく、上記熱伸縮量の差を利用して特定の反りを設けられる。最大厚さの差:|t1max−t2max|が大きいほど、反りが大きくなる傾向にあり、当該差が0.1mm以上、更に0.3mm以上、とりわけ0.5mm以上である形態が挙げられる。但し、上記最大厚さの差が大き過ぎると、金属被覆層の厚さ自体が厚くなることから、当該差は、1.5mm以下、更に1.0mm以下が好ましい。
【0042】
〔反り度〕
そして、本発明複合部材は、上述のように特定の反り形状となっていることを最大の特徴とする。反り度:lmax/Dmaxが0.01×10-3以上(1×10-5以上)であることで、本発明複合部材を設置対象に固定するに当たり、反りを押し潰すように当該複合部材を設置対象に押し付けて固定することで、本発明複合部材を設置対象に密着させることができる。そのため、本発明複合部材に実装される半導体素子などの発熱対象の熱を設置対象に効率よく放出でき、本発明複合部材は、放熱性に優れる。上記反り度が大きいほど、設置対象に十分に押し付けられるため、反り度は、0.05×10-3以上(5×10-5以上)、更に0.1×10-3以上(10×10-5(1×10-4)以上)が好ましい。反り度が大き過ぎると、ボルトなどで固定しても複合部材と設置対象との間に隙間が生じる恐れがあるため、10×10-3以下(1000×10-5(1×10-2)以下)とする。反り度は、5×10-3以下(500×10-5以下)、とりわけ0.2×10-3〜2×10-3が好ましい。また、反り度が1×10-3以下(100×10-5以下)といった形態とすることができる。
【0043】
上記反り度は、本発明複合部材において対向する一対の面(冷却側面及び素子側面)の少なくとも一方が満たせばよく、上記反り度を満たす面を冷却側面に利用するとよい。
【0044】
複合部材の一面における最長辺とは、代表的には、複合部材が長方形状である場合、対角線が挙げられ、最長辺の長さ:Dmaxは、当該対角線の長さが挙げられる。複合部材が円形状の場合、最長辺は直径、楕円形状の場合、最長辺は長径が挙げられる。最長辺における表面の変位は、レーザー変位測定装置など、市販の3次元形状測定装置を利用することで容易に測定可能である。上述の変位の差:lmaxを自動的に演算可能な装置を利用してもよい。簡略的には、以下の測定方法を利用することができる。複合部材を水平台に静置したとき、当該複合部材において水平台に対向配置される面であって水平台に非接触の面と水平台の表面との間の鉛直方向の最大距離と最小距離との差をlmax、当該複合部材の最長辺の長さをDmaxとして、反り度:lmax/Dmaxを求められる。
【0045】
具体的な反り量(mm)は、複合部材の大きさ(外寸:長さ×幅)によって異なるものの、例えば、長さ:137.5mm×幅:70.5mm〜長さ:187.5mm×幅:137.5mmの長方形状の複合部材の場合、変位の差:lmaxが0.05mm〜0.3mmが挙げられる(反り度:0.2×10-3(20×10-5)程度〜3×10-3(300×10-5)程度)。
【0046】
〔複合部材の熱特性〕
上述した金属被覆層を具える形態は、基板のみの場合と比較して熱膨張係数が大きくなる傾向にあるものの、金属被覆層の厚さや材質などを選択することで、4ppm/K以上15ppm/K以下を満たす形態とすることができ、この形態は、半導体素子及びその周辺機器との熱膨張係数の整合性に優れる。また、本発明複合部材は、上述のようにSiCを特定量含有する基板を具えることで熱伝導率が高く、金属被覆層を具える形態でも、例えば、180W/m・K以上を満たす。上述のようにSiCの充填率を高めたり、ネットワーク部を有したり、金属被覆層の合計厚さを薄めにしたりすることで、熱膨張係数がより小さく、熱伝導率がより高い複合部材とすることができる。例えば、熱伝導率が200W/m・K以上、更に250W/m・K以上、とりわけ300W/m・K以上の複合部材とすることができる。このように複合部材自体の熱伝導率が高く、かつ上記特定の反りを具えることで設置対象との密着性に優れて半導体素子などの熱を効率よく設置対象に放出できることから、本発明複合部材は、放熱性に優れる。なお、金属被覆層を具える複合部材では、市販の装置により熱膨張係数や熱伝導率を測定できる他、当該複合部材を構成する各材料の剛性などを考慮して複合則により熱膨張係数を算出できる。
【0047】
〔その他の構成〕
本発明複合部材は、そのままで半導体素子用の放熱部材に利用できる。その他、この複合部材は、設置対象に固定するためのボルトといった固定部材が挿通される貫通孔を適宜な箇所(代表的は基板の角部や周縁の近傍)に具えた形態とすることができる。貫通孔は、複合部材の形成時に金属管などを一体化して複合部材と同時に形成したり、基板の適宜な箇所に金属片を配置して一体化した複合部材を作製し、この金属片に穴あけ加工を行ったり、作製した複合部材の適宜な箇所にレーザーや放電加工などにより形成したりすることが挙げられる。上記金属片や金属管の材質は、基板の金属成分と同じ金属でもよいし、少なくとも一部が異なる材質、例えば、ステンレス鋼やカーボンなどの非金属高強度材料(繊維状のものも含む)を含んでいてもよい。上記高強度材料を含むことで、ボルトの軸力を低下させ難い。貫通孔は、ねじ孔でもねじ加工がなされていない平滑な孔のいずれでもよい。
【0048】
≪製造方法≫
本発明複合部材は、代表的には、以下の製造方法により製造することができる。
〔製造方法1:金属被覆層を利用して反り形状を自動的に形成する形態〕
この形態の製造方法では、金属被覆層の形成と同時に上記特定の反り形状を有する本発明複合部材が得られる。
【0049】
[製造方法1-1.基板の両面に金属被覆層を有する場合]
この複合部材の製造方法は、マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとを複合して、複合材料からなる板状の複合部材を製造する方法に係るものであり、
マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとの複合材料からなる基板と、この基板の対向する一対の面のそれぞれにおいて、少なくとも一部に金属被覆層を具える被覆成形体を溶浸法により製造する工程を具え、
上記基板の一面の金属被覆層の最大厚さをt1max、上記基板の他面の金属被覆層の最大厚さをt2maxとするとき、最大厚さの差:|t1max−t2max|が0.02mm以上となるように上記各金属被覆層を形成することを特徴とする。
【0050】
[製造方法1-2.基板の一面にのみ金属被覆層を有する場合]
この複合部材の製造方法は、マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとを複合して、複合材料からなる板状の複合部材を製造する方法に係るものであり、
マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとの複合材料からなる基板と、この基板の対向する一対の面のうち、一面の少なくとも一部に金属被覆層を具える被覆成形体を溶浸法により製造する工程を具え、
上記金属被覆層の最大厚さが0.01mm以上となるように当該金属被覆層を形成することを特徴とする。
【0051】
上記製造方法1の一形態として、更に、上記被覆成形体の対向する一対の面のうち、少なくとも一面に表面処理を施して、上記反り度を満たす複合部材を形成する工程を具える形態とすることができる。上記表面処理は、切削や研磨が挙げられる。
【0052】
上記製造方法1の一形態として、上記溶浸法に用いる鋳型として、金属被覆層を形成する面が湾曲形状である湾曲鋳型を利用する形態が挙げられる。
【0053】
〔製造方法2:表面処理により反り形状を形成する形態〕
この形態の製造方法では、金属被覆層の有無に係わらず、上記特定の反り形状を有する本発明複合部材が得られる。
この複合部材の製造方法は、マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとを複合して、複合材料からなる板状の複合部材を製造する方法に係るものであり、
マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとの複合材料からなる基板を製造する工程と、
上記基板の少なくとも一面に表面処理を施して、上記反り度を満たす複合部材を形成する工程とを具えることを特徴とする。上記表面処理は、切削や研磨が挙げられる。
【0054】
上記製造方法2の一形態として、更に、上記反り度を満たす基板に金属被覆層を形成する工程を具える形態とすることができる。
【0055】
上記製造方法2の一形態として、上記基板に金属被覆層を形成する工程を具え、上記金属被覆層を具える基板に上記表面処理を施す形態とすることができる。
【0056】
上記製造方法2の一形態として、上記基板は溶浸法により製造し、上記溶浸法に用いる鋳型として、上記基板の一面を形成する面が湾曲形状である湾曲鋳型を利用する形態とすることができる。
【0057】
以下、上記製造方法をより詳細に説明する。
【0058】
[原料]
マトリクス金属には、純マグネシウム又はマグネシウム合金のインゴットを好適に利用できる。SiCの原料には、例えば、SiC粉末が利用できる。特に、粒子状や繊維状のSiC粉末であって、平均粒径(繊維状の場合、平均短径)が1μm以上3000μm以下、特に5μm以上200μm以下であると、後述する粉末成形体などを製造し易い。平均粒径が異なる複数種の粉末を組み合わせて用いると、SiCの充填率を高め易い。
【0059】
原料に用いたSiCといった非金属無機材料は、複合部材に具える基板中にほぼそのままの状態で存在することから、基板中のSiCや気孔の体積割合、ネットワーク部の存在状態は、用いた原料に依存し、当該原料に実質的に等しい。従って、基板が所望の熱特性を有するように、原料の材質や量を適宜選択する。また、基板が所定の形状、大きさとなるように鋳型(金型)の形状や大きさを適宜選択する。
【0060】
SiC粉末は、そのまま用いて所望の鋳型にタッピングなどにより充填してもよいし、ハンドリングが可能な成形体(代表的には粉末成形体、更に粉末成形体を焼結した焼結体)にしてもよい。粉末成形体は、例えば、スリップキャスト(原料の粉末と水及び分散材とを用いたスラリーを成形後、乾燥させる)、加圧成形(乾式プレス、湿式プレス、一軸加圧成形、CIP(静水圧プレス)、押出成形など)、及びドクターブレード法(原料の粉末と溶媒、消泡剤、樹脂などとを用いたスラリーをドクターブレードに流した後、溶媒を蒸発させる)のいずれか一つにより形成した形態が挙げられる。焼結体は、上記粉末成形体、或いはタッピングした粉末集合体を焼結した形態(代表的にはネットワーク部を有するSiC多孔体)が挙げられる。基板中のSiCの含有量を例えば70体積%以上に高める場合、粉末成形体の形成には、スリップキャスト、加圧成形、ドクターブレード法が好適に利用できる。基板中のSiCの含有量が低い場合には、タッピングを利用するとよい。
【0061】
上記焼結体は、(1)上記粉末成形体よりも強度が高く、鋳型に収納する際などで欠けなどが生じ難く扱い易い、(2)多孔体を容易に作製できる、(3)焼結温度や保持時間を調節することで、焼結体を緻密化させてSiCの充填率を向上し易い、といった利点がある。焼結条件は、例えば、(1)真空雰囲気、加熱温度:800℃〜1300℃未満、保持時間:10分〜2時間程度、(2)大気雰囲気、加熱温度:800℃〜1500℃、保持時間:10分〜2時間程度が挙げられる。条件(1),(2)では、ネットワーク部を有していないSiC成形体が得られる傾向にある。一方、真空雰囲気、加熱温度:1300℃以上2500℃以下、保持時間:2時間〜100時間の条件で焼結すると、SiC同士を直接結合させられ、ネットワーク部がSiCにより形成されたSiC多孔体が得られる。ネットワーク部を有する焼結体(代表的にはSiC多孔体)を原料に利用することで、ネットワーク部を有する基板が容易に得られる。市販のSiC焼結体(開気孔を有するもの)を利用してもよい。特に、閉気孔が少なく(焼結体の全体積に対して10体積%以下、好ましくは3体積%以下)かつ開気孔を有する多孔体を原料に用いると、多孔体にマトリクス金属の溶湯が十分に溶浸でき、熱特性に優れる複合部材が得られる。
【0062】
[酸化膜の形成]
原料のSiCとして、その表面に酸化膜を具えるものを利用すると、SiCとマトリクス金属との濡れ性が高められ、SiC間の隙間が非常に小さい場合であっても、毛管現象によりマトリクス金属の溶湯が浸透し易い。酸化膜は、SiC粉末に形成してもよいし、上述した粉末成形体や焼結体に形成してもよい。上記酸化膜の形成条件は、粉末の場合も焼結体などの場合も同様であり、加熱温度は、700℃以上、特に750℃以上、更に800℃以上が好ましく、とりわけ850℃以上、更に875℃以上1000℃以下が好ましい。
【0063】
[複合]
上記製造方法1の被覆成形体や製造方法2の基板の形成には、溶浸法を好適に利用できる。溶浸法は、鋳型に収納したSiC粉末や焼結体などに、溶融したマトリクス金属(マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯)を溶浸させて複合させる方法であり、溶浸させたマトリクス金属を凝固させることで、マグネシウム基複合材料からなる基板が得られる。製造方法2の基板の形成には、溶浸法の他、粉末冶金法や溶融法などを利用することができる。
【0064】
上記複合は、0.1×10-5MPa以上大気圧(概ね0.1MPa(1atm))以下の雰囲気で行うと、溶湯を取り扱い易い上に、雰囲気中のガスの取り込みによる気孔が生じ難い。また、複合は、Arといった不活性雰囲気で行うと、Mg成分と雰囲気ガスとの反応を防止でき、反応生成物の存在に伴う熱特性の劣化を抑制できる。溶浸温度は、マトリクス金属がマグネシウム(純Mg)の場合、650℃以上が好ましく、溶浸温度が高いほど濡れ性が高まるため、700℃以上、特に800℃以上、更に850℃以上が好ましい。但し、1000℃超とすると、引け巣やガスホールといった欠陥が生じたり、Mgが沸騰する恐れがあるため、溶浸温度は1000℃以下が好ましい。また、過剰な酸化や晶出物の生成を抑制するために900℃以下がより好ましい。
【0065】
マトリクス金属の凝固時、複合物の冷却方向や冷却速度を制御することで、内部欠陥や表面欠陥の少ない基板や金属被覆層が得られると期待される。例えば、鋳型に収納されたSiCにおいて溶湯が供給される側と反対側から一方向に冷却する、即ち、溶湯が既に供給された側から、これから供給される側に向かって冷却すると、既に凝固した部分の体積減少分を未凝固の溶湯が補填しながら冷却が進んでいくため、上記欠陥の発生を低減し易い。特に、大型な複合部材を形成する場合にこの冷却方法を利用すると、欠陥が少なく、熱特性に優れる複合部材が得られて好ましい。冷却速度は、例えば、0.1℃/mm以上、特に0.5℃/mm以上の温度勾配が設けられるように調整することが好ましい。
【0066】
〔製造方法1〕
上記被覆成形体を溶浸法で形成する場合、特許文献1に記載するように、鋳型に適宜なスペーサを配置することで、金属被覆層を複合時に同時に形成できる。スペーサの材質は、ナフタレン、カーボン、鉄、ステンレス鋼(例えば、SUS430)などが挙げられ、スペーサの形状は、帯状体、線状体などが挙げられる。適宜な大きさ(厚さ)のスペーサを利用することで、スペーサの大きさに応じた厚さを有する金属被覆層を容易に形成できる。金属被覆層の厚さに応じて所望の大きさのスペーサを利用するとよい。スペーサは、複合部材に内蔵されたままでもよいし、除去してもよい。また、複合時の熱によって除去できるもの(ナフタレンなど)を利用すると、除去工程が不要である。
【0067】
上記製造方法1-1.では、大きさの異なるスペーサを利用することで、厚さの異なる金属被覆層を容易に形成できる。形成する金属被覆層の厚さを異ならせることで、冷却時の各金属被覆層の熱伸縮量の差を利用して複合部材を反らすことができる。具体的には、金属被覆層の厚い方が熱収縮量が大きいため、金属被覆層が薄い側を引っ張るようにして被覆成形体が反る。代表的には、金属被覆層が薄い側が凸状、金属被覆層が厚い側が凹状となる。そして、上記反り度を満たす本発明複合部材を製造するには、上述のように、最大厚さ:t1maxと最大厚さ:t2maxとの差が0.02mm以上となるように、スペーサの大きさを調整するとよい。
【0068】
上記製造方法1-2.では、基板の一面にのみ金属被覆層を形成することで、冷却時の金属被覆層の熱収縮を利用して複合部材を反らすことができる。具体的には、金属被覆層を有する側が大きく熱収縮するため、金属被覆層を有していない側を引っ張るようにして基板が反る。代表的には、金属被覆層を有していない側が凸状、金属被覆層を有する側が凹状となる。そして、上記反り度を満たす本発明複合部材を製造するには、上述のように、金属被覆層の最大厚さが0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上となるようにスペーサの大きさを調整するとよい。
【0069】
上記製造方法1により得られた被覆成形体に切削や研磨といった表面処理を施すことで、反りの過不足を容易に調整できるため、反り度を容易に調整できる。また、表面処理を施すと、表面粗さを小さくできるため、設置対象との密着性を高められる。この点は、製造方法2も同様である。金属被覆層に上記表面処理を施す場合、金属被覆層を予め厚く形成してもよい。表面処理の対象が金属であると、複合材料を切削などする場合に比較して加工性がよい。金属被覆層がマグネシウムやマグネシウム合金から構成される場合、粉塵の飛散防止のために湿式処理とすることが好ましい。マグネシウムやマグネシウム合金は、快削材であり、容易に切削や研磨を行える。複合材料からなる基板に切削や研磨といった表面処理を施す場合、ダイヤモンド工具などの高硬度工具やレーザー加工、放電加工を用いるとよい。
【0070】
溶浸法により形成した金属被覆層に上記表面処理を施す場合、被覆成形体が得られた直後に表面処理を施すと、当該表面処理中の金属被覆層の残留応力の変化によって、所望の反り度とならない場合がある。そのため、被覆成形体を形成後、金属被覆層の内部応力を十分に解放してから当該表面処理を行うと、所望の反り度を満たす複合部材を精度良く得られて好ましい。内部応力の解放は、適宜な熱処理(例えば、100℃〜200℃×100時間〜1000時間)を施すと、十分に解放できる。常温(20℃〜30℃程度)で長時間放置する(例えば、30日〜100日程度)ことでも、内部応力を解放できると期待される。例えば、本発明複合部材を倉庫などで保管しており、反り度が変化した場合でも、電子機器に組み込む直前に上記表面処理を施すことで、反り度を調整できる。或いは、表面処理後の反りを想定して表面処理量を設定し、所望の反り度が得られるようにしてもよい。
【0071】
その他、上述の湾曲鋳型を用いると、金属被覆層を形成する面が平面である平坦鋳型を用いる場合と比較して、反り度を大きくし易い。湾曲鋳型の湾曲度合いは、所望の反り度となるように適宜選択することができる。湾曲鋳型は、金属被覆層を形成する面が凸状のもの、凹状のもののいずれも利用できる。凹状の湾曲鋳型を利用すると、反り度を小さくし易い。このように鋳型の形状を変更することでも、反り度を調整できる。この湾曲鋳型に関する事項は、製造方法2においても概ね同様に適用される。
【0072】
〔製造方法2〕
製造方法2では、上述のように溶浸法などで基板を製造して、切削などの表面処理により特定の反りを形成することから、金属被覆層を有しない本発明複合部材を形成できる。特定の反りを有する基板に金属被覆層を形成することで、製造方法2を利用した場合でも、金属被覆層を有する本発明複合部材が得られる。特定の反りを有する基板に対して金属被覆層を形成するには、無電解めっき、溶融めっき、蒸着、コールドスプレー法などを利用したり、適宜な形状の金属板を用いて、ロウ付け、超音波接合、酸化物ソルダー法、無機接着剤による接合などを利用したりすることが挙げられる。これらの手法を利用することで、マトリクス金属と異なる組成からなる金属被覆層を有する本発明複合部材を容易に製造できる。
【0073】
或いは、上記基板に金属被覆層を形成してから、表面処理により反りを形成してもよい。この場合、基板の両面が平坦なものを利用できるため、金属被覆層を形成し易い。金属被覆層の形成には、無電解めっき、溶融めっき、蒸着、コールドスプレー法、ロウ付け、超音波接合、鋳ぐるみ、圧延(クラッド圧延)、ホットプレス、酸化物ソルダー法、無機接着剤による接合などを利用できる。この場合も、上述のように種々の組成の金属被覆層を容易に形成できる。
【0074】
〔その他の製造方法〕
その他、金属被覆層を有する本発明複合部材は、鋳型に所望の組成からなる金属板を配置して、上記複合と同時に鋳ぐるむことで被覆成形体を作製し、得られた被覆成形体に上述した表面処理を施すことで製造することができる。或いは、上記製造方法1のように溶浸法により被覆成形体(代表的には反りを実質的に有してないもの)を作製し、この被覆成形体に特定の反り度を満たすように上記表面処理を施すことで本発明複合部材を製造することができる。一方、金属被覆層を有しない本発明複合部材は、上述した湾曲鋳型を用いて溶浸法を利用することでも製造できる。
【0075】
或いは、溶浸法などにより複合材料からなる基板(反りを実質的に有していない平坦なもの(金属被覆層があっても無くてもよい))を作製し、この基板に切削などの表面処理を施すことに代えて、反り形状の一対の金型(基板に接する一面が凹状面の第一の湾曲金型、及びこの凹に対応した凸状面を有する第二の湾曲金型)で上記基板を挟み、加熱状態で荷重を加えることにより、上記特定の反り度を満たす複合部材を形成することができる。金型の凹凸は、所望の反り形状が得られるように適宜選択することができる。加熱温度は、100℃以上470℃以下が好ましい。470℃以下とすることで、マトリクス金属(マグネシウム又はその合金)の自然発火の恐れを低減でき、100℃以上とすることで、上記複合材料からなる基板を比較的短時間で反らせる(変形する)ことができる。加熱温度が高いほど変形に必要な荷重を小さくでき、大出力のプレス機を利用することなく、特定の反り度を満たす複合部材を形成できる。また、上記範囲で加熱温度が低いと、高出力の加熱手段が不要、加熱時間の短縮、金型の長寿命化を図ることができる。従って、加熱温度は、150℃以上、特に200℃以上が好ましく、350℃以下、特に300℃以下が好ましい。荷重は、10kg/cm2以上が好ましく、大き過ぎると上述のように大出力のプレス機が必要になったり、金型の寿命が縮まったりするため、500kg/cm2以下が好ましい。荷重は、上記加熱温度や形成する反り度に応じて選択することができる。例えば、上記温度範囲における低温域では荷重を大きく、高温域では荷重を小さくすることができる。また、上記温度範囲において、100℃〜200℃の温度域では荷重を50kg/cm2以上とすると、上記特定の反り度を満たす複合部材を良好に形成できる。この製造方法では、SiC粉末を用いて作製した分散形態の基板を利用することが好ましい。
【0076】
≪具体的な複合部材の形態と製造方法≫
以下、図1,図2を参照して、金属被覆層を具える本発明複合部材のより具体的な形態とその製造方法を説明する。図1,図2において同一名称物及び同一箇所は、同一の符号で示す。また、図1,図2に示す複合部材や被覆成形体において、上方側を素子側、対向する下方側を冷却側と呼ぶ。なお、図1,図2では、分かり易いように反りを誇張して示す本発明複合部材は、基板の対向する一対の面の双方が反り形状である形態、基板の対向する一対の面のうち、一面のみが反り形状であり、他面が平坦な形態の二つの形態が挙げられる。
【0077】
〔基板の両面が反り形状〕
図1(A)〜図1(D)に示す複合部材1a〜1dは、マグネシウム又はその合金からなるマトリクス金属とSiCとの複合材料からなる基板2と、基板2の対向する一対の面のうち、一面(ここでは素子側面)に形成された素子側の金属被覆層3、及び他面(ここでは冷却側面)に形成された冷却側の金属被覆層4の少なくとも一方を具え、素子側が凹、冷却側が凸となった反り形状である。
【0078】
図1(A),図1(B)に示す複合部材1a,1bは、金属被覆層3,4の双方を具え、素子側の金属被覆層3の最大厚さt1が冷却側の金属被覆層4の最大厚さt3よりも厚い。
【0079】
図1(A)に示す複合部材1aは、金属被覆層3,4のそれぞれが均一的な厚さであり、両層3,4の最大厚さが大きく異なる。この複合部材1aは、例えば、平坦鋳型200に適宜な大きさのスペーサ300と、原料のSiC集合体(上述したSiC粉末や成形体)100とを収納して、マグネシウムなどの溶融金属110を供給する。スペーサ300を利用する製造方法では、SiC集合体100として、上述した粉末成形体や焼結体といった成形体を利用すると、SiC集合体100と鋳型との間に金属被覆層の形成に十分な隙間を容易に設けられて好ましい。図1(A)に示す平坦鋳型200では、基板の対向する一対の面を形成するSiC集合体の面のうち、スペーサ300に接していない面の上に、溶融金属110を供給する量を調整することで、金属被覆層(ここでは、素子側の金属被覆層3)の厚さを調整できる。
【0080】
製造方法1で説明したように、一方の金属被覆層(ここでは素子側の金属被覆層3)の厚さを十分に厚くすると、溶融金属110の冷却時、両金属被覆層3,4の熱収縮量の差により基板が変形し、冷却後、平坦鋳型200から取り出した複合部材1aは、図1(A)に示すように特定の反り形状である。
【0081】
なお、図1,図2に示す鋳型の形態は例示であり、金属被覆層3,4を形成する面が左右に配置された鋳型を利用してもよい。この場合、基板の対向する一対の面のそれぞれを形成するSiC集合体の各面と鋳型との間にそれぞれスペーサを配置することで、基板の両面に金属被覆層を形成することができる。また、図1,図2のいずれの形態も平坦鋳型200に代えて、金属被覆層を形成する面、或いは複合材料を形成する面を所定の反り形状とした湾曲鋳型210(図1(D)参照)を利用することができる。湾曲鋳型210を利用すると、当該鋳型210の反りを複合部材に転写させられる。従って、湾曲鋳型210の反り状態を調整することで、特定の反り形状を有する複合部材を容易に形成できる、或いは、複合部材の反り量を調整することができる。代表的には、鋳型の反り量に応じて、複合部材の反りをより大きくできる。切削などの表面処理を施して反り量を調整したり、湾曲鋳型の使用と表面処理との双方を利用して反り量を調整したりすることもできる。
【0082】
図1(B)に示す複合部材1bは、素子側の金属被覆層3が均一的な厚さであり、冷却側の金属被覆層4はその中央部が厚く、中央部から縁側に向かうに従って厚さが薄くなっている。また、複合部材1bは、両層3,4の最大厚さの差が小さい。この複合部材1bは、例えば、複合部材1aと同様に、平坦鋳型200に適宜な大きさのスペーサ300と、SiC集合体100とを収納し、溶融金属110を充填して溶浸することで得られる。但し、この複合部材1bでは、両層3,4の厚さの差が小さくなるように、スペーサ300の大きさ、溶融金属110の供給量を調整する。鋳型200から取り出した被覆成形体10bは、両層3,4bの厚さの差が小さいことから、図1(B)に示すように反りが小さい。そこで、被覆成形体10bの冷却側の金属被覆層4bに切削などの表面処理を施して、反りを調整する。上述のように湾曲鋳型210を利用して、反り量を調整してもよい。
【0083】
図1(C),図1(D)に示す複合部材1c,1dは、素子側の金属被覆層3のみを具え、この金属被覆層3は均一的な厚さである。複合部材1cでは、金属被覆層3が厚く、複合部材1dでは、金属被覆層3が薄い。これら複合部材1c,1dは、例えば、平坦鋳型200にSiC集合体100と、溶融金属110を充填して溶浸することで得られる。複合部材1cは、金属被覆層3が十分に厚いことで、金属被覆層3の熱収縮により冷却側(複合材料側)を引っ張るように凝固する。従って、鋳型200から取り出した複合部材1cは、図1(C)に示すように特定の反り形状である。一方、被覆成形体10dは、金属被覆層3が薄いことで、平坦鋳型200を用いた場合、図1(D)に示すように複合材料側が十分に反らない。そこで、被覆成形体10dの基板2dに切削などの表面処理を施して、反りを調整する。或いは、上述のように湾曲鋳型210を利用することで、表面処理を施すことなく複合部材1dを作製してもよい。或いは、湾曲鋳型210を利用して反りを調整してもよい。
【0084】
〔基板の一面のみが反り形状〕
図2(E)〜図2(J)に示す複合部材1e〜1jは、基板2と、素子側の金属被覆層3及び冷却側の金属被覆層4の少なくとも一方を具え、素子側が平坦であり、冷却側のみが凸となった反り形状である。
【0085】
図2(E),図2(F)に示す複合部材1e,1fは、金属被覆層3,4の双方を具え、素子側の金属被覆層3の最大厚さt1と冷却側の金属被覆層4の最大厚さt3とが等しく、素子側の金属被覆層3は、その中央部が厚く、中央部から縁側に向かうに従って厚さが薄くなっている。
【0086】
図2(E)に示す複合部材1eの冷却側の金属被覆層4は均一的な厚さである。この複合部材1eは、例えば、まず、複合部材1aと同様にして被覆成形体10eを作製する。得られた被覆成形体10eは、素子側の金属被覆層3eを十分に厚くしていることで、複合部材1aと同様に反り形状であり、素子側の金属被覆層3eも反っている。この反った素子側の金属被覆層3eに研磨などの表面処理を施して、表面を平坦にすることで複合部材1eが得られる。金属被覆層3eは、複合材料と比較して切削し易く、表面処理を施し易い。
【0087】
図2(F)に示す複合部材1fは、金属被覆層3,4の双方とも、その中央部が厚く、中央部から縁側に向かうに従って厚さが薄い。この複合部材1fは、上述した図1(B)に示す複合部材1bと同様に被覆成形体10fを作製する。被覆成形体10fは、素子側の金属被覆層3fと冷却側の金属被覆層4fとの厚さの差が小さいため、素子側の反りが小さく、冷却側の反りが実質的にない。この被覆成形体10fに研磨や切削などの表面処理を施して、素子側の金属被覆層3fの表面を平坦にすると共に、冷却側の金属被覆層4fを反り形状とすることで、両層3,4の最大厚さが等しい複合部材1fが得られる。
【0088】
図2(G),図2(H)に示す複合部材1g,1hは、素子側の金属被覆層3のみを具える。図2(G)に示す複合部材1gの金属被覆層3は、均一的な厚さであり、図2(H)に示す複合部材1hの金属被覆層3は、その中央部が厚く、中央部から縁側に向かうに従って厚さが薄くなっている。
【0089】
図2(G)に示す複合部材1gは、素子側の金属被覆層3が薄い。そのため、上述した図1(D)に示す複合部材1dと同様に、平坦鋳型200を用いて作製した被覆成形体10gは、実質的に反っておらず、素子側及び冷却側の双方が平坦である。この被覆成形体10gの基板2gに切削などの表面処理を施すことで、複合部材1gが得られる。或いは、上述のように湾曲鋳型210を利用すると、SiCを含有する基板2gの表面処理を省略でき、複合部材の製造性に優れる。
【0090】
図2(H)に示す複合部材1hは、素子側の金属被覆層3の最大厚さが厚い。そのため、図1(C)に示す複合部材1cと同様にして平坦鋳型200を利用して被覆成形体10hを作製し、反り上がった素子側の金属被覆層3hに研磨などの表面処理を施すことで、複合部材1hが得られる。素子側の金属被覆層3hの厚さを調整することで反りを調整してもよいし、上述のように湾曲鋳型210を利用してもよい。
【0091】
図2(I),図2(J)に示す複合部材1i,1jは、金属被覆層3,4の双方を具え、素子側の金属被覆層3の最大厚さt1と冷却側の金属被覆層4の最大厚さt3とが等しい。
【0092】
図2(I)に示す複合部材1iは、金属被覆層3,4のそれぞれが均一的な厚さである。この複合部材1iは、例えば、図2(I)に示すように平坦鋳型200に、SiC集合体100を収納して溶融金属を含浸させて複合材料からなる基板2iを作製し、この基板2iに切削などの表面処理を施すことで、特定の反りを有する基板2iが得られる。或いは、平坦鋳型200に代えて、湾曲鋳型210を利用すると、表面処理を行うことなく、特定の反りを有する基板2iをでき、製造性に優れる。この特定の反りを有する基板2iに上述した溶融めっき法などの適宜な手法で金属被覆層3,4を形成することで、複合部材1iが得られる。この形態は、上述のように金属被覆層の組成を種々選択することができる。
【0093】
図2(J)に示す複合部材1jは、素子側の金属被覆層3が均一的な厚さであり、冷却側の金属被覆層4はその中央部が厚く、中央部から縁側に向かうに従って厚さが薄くなっている。この複合部材1jは、例えば、平坦鋳型200に適宜な大きさのスペーサ300とSiC集合体100とを収納して溶融金属110を溶浸させて被覆成形体10jを作製する。但し、両金属被覆層3,4jの厚さが等しくなるように、スペーサ300の大きさ及び溶融金属110の供給量を調整する。被覆成形体10jの素子側の金属被覆層3及び冷却側の金属被覆層4jは厚さが等しいことで、被覆成形体10jは実質的に反っておらず、素子側及び冷却側の双方が平坦である。この被覆成形体10jの冷却側に切削などの表面処理を施すことで、特定の反りを有する複合部材1jが得られる。
【0094】
金属被覆層を有さない本発明複合部材は、例えば、図2(I)で説明したように、複合材料からなる基板2iに表面処理を施したり、湾曲鋳型を用いて基板を作製することで得られる。
【0095】
なお、図1,図2の湾曲鋳型210は、冷却側が凸状の形態を示すが、冷却側が凹状の形態のものを利用して、冷却側が凹状の複合部材を形成することができる。また、図1,図2では、冷却側が凸状となるように表面処理を施す形態を示すが、冷却側が凹状となるように表面処理を施してもよい。
【0096】
≪試験例1≫
純マグネシウムとSiCとを複合した複合材料からなる基板と、適宜金属被覆層とを具える複合部材を作製し、形状を調べた。
【0097】
各試料は、以下のようにして作製した。
溶融金属の原料として、99.8質量%以上のMg及び不純物からなる純マグネシウムのインゴット(市販品)を用意した。原料のSiCとして、表1,表2に「粉末」と記載した各試料では、SiC粉末(平均粒径:90μm、875℃×2時間の酸化処理を施したもの)を用意し、得られる複合材料(基板)中のSiCの含有量が70体積%となるように、SiC粉末の量を調整した。原料のSiCとして、表2に「成形体」と記載の各試料では、市販の板状のSiC焼結体(ネットワーク部がSiCから構成された多孔質体。相対密度:80%)を用意し、各SiC焼結体に875℃×2時間の酸化処理を施して酸化膜を形成したものを用意した。各試料はいずれも、金属被覆層を含む複合部材の合計厚さが5mm、長さ(mm)×幅(mm)が表1,表2に示す大きさとなるように、原料のSiC、鋳型の大きさ、適宜スペーサの厚さを調整した。即ち、金属被覆層を有する試料では、金属被覆層の厚さが表1,表2に示す厚さになるように、成形体の厚さや鋳型の大きさ、適宜スペーサの厚さを調整した。
【0098】
原料のSiC集合体(焼結体又は粉末)を鋳型に収納して、溶融した純マグネシウムをSiC集合体に溶浸させた後、純マグネシウムを凝固する。金属被覆層を有する試料のうち、SiC焼結体を用いた試料では、表1に示す厚さ(mm)の金属被覆層が形成されるように、表1に示す厚さの平板状のスペーサ(ここではカーボン製)を用意して、SiC焼結体と共に鋳型に収納した。こうすることで、鋳型とSiC焼結体との間にスペーサの厚さに応じた隙間が設けられ、この隙間に溶融金属が充填されることで、金属被覆層が形成できる。低融点ガラスや低融点塩、水ガラスなどでスペーサをSiC焼結体に接着すると、スペーサの位置ずれを防止できる。SiC粉末を用いた試料では、表2に示す厚さ(mm)の金属被覆層が基板の素子側に形成されるように、溶融金属の充填量を調整した。
【0099】
上記鋳型は、カーボン製とし、反り量:なしのものは一方が開口した直方体状の箱体(平坦鋳型)、表1に示す反り量(mm)を有するものは、一方が開口した直方体状の箱体であって、冷却側の一面を形成する一面が凸形状、又は凹形状であるもの(湾曲鋳型)を用意した。この凸部分の最大突出量(図1(D),図2(H)の湾曲金型210の最大突出量td参照)、又は凹部分の最大凹み量が表1の反り量に相当する。各鋳型の内部空間がSiC集合体、適宜スペーサの収納空間として利用されるため、作製する鋳物(ここでは複合材料からなる基板、被覆成形体、金属被覆層を具える複合部材のいずれか)の大きさに応じて、内部空間の大きさを選択するとよい。
【0100】
上記鋳型は、一体成形されたものを利用してもよいが、複数の分割片を組み合わせて一体に形成されるものを利用すると、鋳物が取り出し易い。また、鋳型の内周面においてSiC集合体が接触する箇所に市販の離型剤を塗布すると、鋳物が取り出し易い。
【0101】
上記鋳型は、開口部の周縁にインゴット載置部が連結され、このインゴット載置部に用意した上記インゴットを配置し、この鋳型を所定の温度に加熱することで当該インゴットを溶融する。鋳型の加熱は、加熱可能な雰囲気炉に鋳型を装入することで行う。
【0102】
ここでは、溶浸温度:875℃、Ar雰囲気、雰囲気圧力:大気圧となるように上記雰囲気炉を調整する。溶融した純マグネシウムは、鋳型の開口部から鋳型の内部空間に流入して、当該内部空間に配置されたSiC集合体に溶浸される。上記加熱状態を保持して(ここでは2時間)、SiC集合体と上記溶融した純マグネシウムとを複合化した後、Ar雰囲気下で冷却を行い(ここでは水冷)、純マグネシウムを凝固した。
【0103】
上記工程により、Mg-SiC複合材料からなる長方形状の基板を有する複合部材、或いは、上記基板と、基板の対向する一対の面のうち、少なくとも一面の全面に亘って、純マグネシウムからなる金属被覆層とを具える複合部材(被覆成形体)が得られる。
【0104】
得られた複合部材(被覆成形体)の成分をEDX装置により調べたところ、基板:Mg及びSiC、残部:不純物、金属被覆層は、純マグネシウムであった。また、スペーサを用いて作製した金属被覆層の厚さは、用いたスペーサの厚さに実質的に等しいことを確認した。更に、SiC焼結体を用いた複合部材(被覆成形体)にCP(クロスセクションポリッシング)加工を施して厚さ方向の断面をとり、この断面をSEM観察により調べたところ、基板中のSiCは網目状であり、SiC同士がSiCにより結合された多孔質体、即ち、ネットワーク部がSiCにより構成された多孔質体となっており、用いた原料のSiC焼結体と同様であった。上記断面を光学顕微鏡で観察したところ、SiC間の隙間に純マグネシウムが溶浸されていること、基板の表面に形成された金属被覆層と基板のマトリクス金属とが連続した組織であることが確認できた。
【0105】
また、各試料の基板中のSiCの含有量を測定したところ、SiC焼結体を用いた試料は、80体積%、SiC粉末を用いた試料は、70体積%であった。SiCの含有量は、以下のように求める。CP加工を施して複合部材の厚さ方向の断面をとり、この断面において基板部分を光学顕微鏡(50倍)で観察する。この観察像を市販の画像解析装置で画像処理して、この基板部分中のSiCの合計面積を求める。この合計面積を体積割合に換算した値をこの断面に基づく体積割合とし(面積割合≒体積割合)、n=3の断面の体積割合を求め、これらの平均値をSiCの含有量とする。
【0106】
得られた被覆成形体のうち一部の試料については、素子側の金属被覆層に表面処理(ここでは、平面研磨)を施して、素子側の金属被覆層の表面が平坦になるようにした。また、得られた被覆成形体のうち一部の試料については、冷却側の金属被覆層に表面処理(ここでは、切削)を施して、反りを形成した。具体的には、冷却側の金属被覆層の中央部が厚く、縁側に向かうにつれて薄くなるように切削し、最大切削量(縁側)が表1に示す量(μm)となるように表面処理を施した。
【0107】
得られた各複合部材の反り量(mm)及び反り度(×10-3)を調べた。その結果を表1,表2に示す。反り量(mm)は、各複合部材(長さ190mm×幅140mm)の対向する一対の面の双方に対して、各面の最長辺である対角線(長さDmax:約236mm)に沿って表面の変位を測定し、測定した変位の最大値と最大値との差:lmaxとした。ここでは、各面の差lmaxのうち、大きい方を用い、反り度(×10-3)は、対角線の長さDmaxに対する反り量:lmaxの割合とした。
【0108】
また、表1,表2に、得られた複合部材の具体的な形態例を図1,図2に示す符号で示す。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
表1,表2に示すように、溶浸法により基板を形成する際、基板の少なくとも一面に金属被覆層を同時に形成すると共に金属被覆層の厚さを調整したり、特定の形状の鋳型を用いたり、適宜な表面処理を施したりすることで、反り度(絶対値):0.01×10-3以上10×10-3以下を満たす複合部材が得られることが分かる。この特定の反り度を有する複合部材は、半導体素子の放熱部材に利用する場合、ボルトなどで設置対象に固定するとき、この反りを押し潰すように固定することで、当該複合部材と設置対象を密着さられるため、半導体素子などの熱を設置対象に効率よく放出でき、放熱性に優れる。
【0112】
以下、より詳細に述べる。試料No.1-2〜1-19,2-2〜2-19に示すように、基板の一面に金属被覆層を形成する場合、金属被覆層の厚さを0.01mm以上と厚くすることで、特定の反り度を満たす複合部材が得られること、また、上記厚さを厚くするほど、反り量を大きくできることが分かる。特に、この試験では、SiC粉末を用いた場合、金属被覆層が1mm以下(複合部材の合計厚さ:5mmの20%以下)、SiC焼結体を用いた場合、金属被覆層が0.6mm以下(複合部材の合計厚さ:5mmの12%以下)であると、特定の反り度を満たす複合部材が得られると言える。
【0113】
試料No.1-20〜1-23,1-27,1-28に示すように、金属被覆層を形成しなくても、湾曲鋳型を用いることで、特定の反り度を満たす複合部材が得られることが分かる。また、試料No.1-24,1-25,1-26に示すように、金属被覆層の形成と共に、湾曲鋳型を併用することで、反り度を調整できることが分かる。特に、凹形状の湾曲鋳型を用いても、複合部材の反りを調整できることが分かる。このように、金属被覆層の厚さと鋳型の形状とを組み合わせることで、反り量を調整してもよい。試料No.1-29,1-30に示すように、金属被覆層に表面処理を施すことで、反り量を調整したり、表面を平坦にできることが分かる。試料No.1-29,1-30は、金属被覆層の厚さ方向の断面における最大厚さが0.1mmであり、最大厚さと最小厚さとの差が0.03mm以上を満たす。
【0114】
基板の両面に金属被覆層を形成する場合、試料No.2-20に示すように両層の厚さが等しいと実質的に反らず、平坦な複合部材が得られ、試料No.2-21,2-22に示すように両層の差:|t1max−t2max|が0.02mm以上であると、特定の反りを有する複合部材が得られること、また、上記差が大きいほど、反りをより大きくできることが分かる。試料No.2-23,2-24,2-25に示すように金属被覆層を厚めに形成しておき、表面処理により、その厚さを調整することでも反り量を調整できるが分かる。これら試料No.2-23,2-24,2-25は、素子側の表面が平坦になっており、金属被覆層の厚さ方向の断面における最大厚さが0.1mm、最大厚さと最小厚さとの差が0.03mm以上を満たす。更に、試料No.2-26,2-27に示すように両層の厚さが等しい場合でも、表面処理を施すことで、特定の反りを有する複合部材が得られることが分かる。
【0115】
上記表面処理を施した試料は、溶融金属を冷却後直ちに表面処理を施している。被覆成形体に適宜な熱処理(例えば、30℃×144000分(100日))を施した後、表面処理を施すこともできる。このような熱処理を施した場合、表面処理時における反り量の変化が小さくなる傾向にある。表面処理を施す時期を異ならせたり、適宜な熱処理を施すことで、反り量を異ならせることができる。
【0116】
その他、試料No.3-1〜3-4,4-1〜4-4に示すように、複合部材の大きさを変えても、同様な反り形状が得られることが分かる。
【0117】
なお、得られた各試料の複合部材について、各試料の複合材料部分(基板)から試験片を切り出し、市販の測定器を用いて熱膨張係数(ppm/K)、熱伝導率(W/m・K)を調べた。熱膨張係数は、30℃〜150℃の範囲について測定した。その結果、SiC粉末を用いた試料(SiC含有量:70体積%)は、7.5ppm/K、230W/m・K、SiC焼結体を用いた試料(SiC含有量:80体積%)は、4.5ppm/K、300W/m・Kであった。
【0118】
SiC粉末を用いて、SiCの含有量を50体積%〜80体積%の範囲で変化させて、上記試験例の試料No.1-10と同様にして、基板の一面に金属被覆層を有するマグネシウム基複合部材を作製したところ、反り度:0.01×10-3以上10×10-3以下を満たすものが得られた。基板中のSiCの充填密度を高める場合、平均粒径が異なる複数種の粉末を適宜利用することができる。また、SiC集合体として、焼結しない粉末成形体(タッピングやスリップキャストによる成形体など)を利用することができる。
【0119】
基板の両面に金属被覆層を具える複合部材において、両層の厚さの差が0.02mm以上を満たし、かつ試料No.2-21,2-22の金属被覆層と実際の厚さが異なる金属被覆層を有する試料を作製したところ、試料No.2-21,2-22と同様な反り度が得られた。
【0120】
≪試験例2≫
純マグネシウムとSiCとを複合した複合材料からなる基板を作製し、この基板を一対の金型で挟んで、反り形状を有する複合部材を作製した。
【0121】
この試験では、試験例1の試料No.1-1と同様にしてMg-SiC複合材料からなる基板(長さ190mm×幅140mm×厚さ5mm)を複数作製した。また、表3に示す球面半径を有する凹状面を有する第一の湾曲金型、及び同じ球面半径の凸状面を有する第二の湾曲金型を具える一対の金型を複数用意した。ここでは、表3に示すように球面半径:SRが2000mm〜300000mmである金型をそれぞれ用意した。表3に示す金型の反り量は、凹状面の最大凹み量、凸状面の最大突出量である。金型はいずれもダイス鋼(SKD)を使用した。用意した各金型の第一湾曲金型と第二湾曲金型とで作製した基板を挟み、表3に示す加熱温度に加熱した後、この加熱温度及び表3に示す荷重を加えた状態で10分間保持し、金型から基板を取り出した。取り出した基板の反り量(μm)及び反り度(×10-3)を試験例1と同様にして測定した。その結果を表3に示す。
【0122】
【表3】

【0123】
表3に示すように、特定の加熱温度で特定の荷重を加えることでも、0.01×10-3以上10×10-3以下を満たす複合部材が得られることが分かる。また、この試験に示すように、金型の反り量や加熱温度、荷重を適宜選択することで、所望の反り度を有する複合部材が得られることが分かる。その他、この試験から、加熱温度を100℃〜200℃程度とする場合、荷重は50kg/cm2以上とすると、上記特定の反り度を有する複合部材が得られること、加熱温度をより高くする場合(ここでは250℃)、荷重を10kg/cm2以上とすると、上記特定の反り度を有する複合部材が得られることが分かる。
【0124】
≪試験例3≫
上記試験例1,2で作製した上記特定の反り度を満たす複合部材に対して、当該複合部材の素子側面にめっき層を適宜な方法で設けた後、絶縁基板をはんだにより接合したところ、接合後の接合物も接合前の複合部材の反りと同様の反り状態を維持していた。
【0125】
上記特定の反り度を満たす複合部材を放熱部材として、パワーモジュール(半導体装置:発明品)を作製した。具体的には、上記絶縁基板を具える複合部材の素子側面に半導体素子をはんだにより接合して、パワーモジュールとした。このパワーモジュールの複合部材の冷却側面に市販の放熱グリスを塗布した後、このパワーモジュールを冷却装置にボルトにより取り付けた。ボルト締結時、この複合部材がボルトの締付により冷却装置に押圧されることで、当該複合部材の冷却側面の全体に亘って上記グリスを塗り広げられて、余剰のグリスが複合部材と冷却装置との間から押し出された。上記取り付け後、上記複合部材と冷却装置との接触面をX線CTで確認したところ、両者間に直径1mm以上の気泡が認められず、両者間にグリスが十分に塗り広げられたことを確認した。
【0126】
一方、上記特定の反り度を満たしていない複合部材を放熱部材として、上記発明品と同様にパワーモジュール(比較品)を作製し、上記発明品と同様に放熱グリスを介して当該パワーモジュールを冷却装置に取り付けた。すると、このパワーモジュール(比較品)では、ボルト締結時に余剰のグリスが押し出されず、全体的にグリスが厚かった。また、上記発明品と同様にこのパワーモジュール(比較品)の複合部材と冷却装置との接触面をX線CTで確認したところ、両者間に直径1mm以上の気泡が各所に確認できた。更に、気泡の面積割合を調べたところ、複合部材の冷却側面の平面積を100%として、気泡の面積割合が5%〜10%と多かった。この結果から、パワーモジュール(比較品)では、複合部材と冷却装置との間にグリスが十分に塗り広げられていないことを確認した。
【0127】
上記特定の反り度を満たす複合部材を放熱部材としたパワーモジュール(発明品)と、上記特定の反り度を満たしていない複合部材を放熱部材としたパワーモジュール(比較品)とを同様の条件で動作させて、半導体素子の温度を測定した。その結果、パワーモジュール(発明品)は、パワーモジュール(比較品)と比較して、半導体素子の温度が5℃程度低かった。このことから、パワーモジュール(発明品)は、放熱性に優れることが分かる。
【0128】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、基板中のSiCの含有量、SiCの存在形態、マトリクス金属の組成(例えば、マグネシウム合金)、複合部材の形状・長さ・幅・厚さ、金属被覆層の厚さ、金属被覆層の形成領域、複合時の条件を適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明複合部材は、各種の電子機器に設けられる半導体装置に具える半導体素子などのヒートスプレッダに好適に利用することができる。本発明放熱部材は、半導体装置の構成部材に好適に利用することができる。本発明半導体装置は、種々の電子機器の構成部品に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1a〜1j 複合部材 2 基板 3 素子側の金属被覆層 4 冷却側の金属被覆層
10b,10d,10e,10f,10g,10h,10j 被覆成形体
2d,2g,2i 被覆成形体の基板
3e,3f,3h,4b,4f,4j 被覆成形体の金属被覆層
100 SiC集合体 110 溶融金属 200 平坦鋳型 210 湾曲鋳型 300 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム又はマグネシウム合金とSiCとが複合された複合材料からなる基板を具える複合部材であって、
以下の反り度を満たすことを特徴とする複合部材。
(反り度)
前記複合部材の一面に対して、その最長辺に沿って表面の変位を測定し、測定した変位の最大値と最小値との差をlmax、前記最長辺の長さをDmaxとするとき、前記最長辺の長さDmaxに対する前記差lmaxの割合:lmax/Dmaxを反り度とし、前記反り度が0.01×10-3以上10×10-3以下である。
【請求項2】
前記基板の少なくとも一部に金属被覆層を有することを特徴とする請求項1に記載の複合部材。
【請求項3】
前記基板の両面に金属被覆層を有し、
前記基板の一面の金属被覆層の最大厚さをt1max、前記基板の他面の金属被覆層の最大厚さをt2maxとするとき、最大厚さの差:|t1max−t2max|が0.02mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合部材。
【請求項4】
前記基板の一面に金属被覆層を有しており、
前記金属被覆層は、その表面が平坦であり、かつその厚さ方向の断面形状が湾曲形状であり、その厚さ方向の断面における最大厚さと最小厚さとの差が0.03mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合部材。
【請求項5】
前記金属被覆層の最大厚さが0.1mm以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項6】
前記基板中のSiCの含有量が50体積%以上90体積%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項7】
前記基板の熱膨張係数が4ppm/K以上15ppm/K以下であり、熱伝導率が180W/m・K以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合部材により構成されたことを特徴とする放熱部材。
【請求項9】
請求項8に記載の放熱部材と、この放熱部材に搭載される半導体素子とを具えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−197496(P2012−197496A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63209(P2011−63209)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】