説明

複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法及び装置

【課題】高粘度の成形材料の高速塗布及び高精度塗布を可能にするとともに、塗布速度の変化に応じて塗布ガンからの溶融成形材料の吐出量を制御できるようにした複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法及び装置を提供する。
【解決手段】押出機33からの成形材料を成形材料送給用ポンプ34で成形材料吐出用ポンプ32へ定量送給し、成形材料吐出用ポンプ32により成形材料を塗布ガン31から一定の圧力で吐出させて複層ガラスパネル21の周縁部21aに塗布するとともに成形材料吐出用ポンプ32の回転数を複層ガラスパネル21と塗布ガン31との間の相対移動による移動速度に応じ制御して該塗布ガン31からの成形材料の吐出量を調節する。また、成形材料吐出用ポンプ32への成形材料の送給量と成形材料吐出用ポンプ32の吸入量との差分に相当する成形材料を循環用可撓性ホース39により押出機33へ還流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法及び装置に関し、さらに詳しくは、複層ガラスパネルに高粘度の熱可塑性エストラマーを直接塗布してグレージングガスケットを形成できるようにした複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複層ガラスパネルは、一般に2枚のガラス板と、この2枚のガラス板の間にスペーサを介して空気層を形成することにより構成される。このような構造の複層ガラスパネルは優れた断熱性を有するため、住宅やビルのサッシに装着して使用することで省エネルギー化に寄与している。
【0003】
複層ガラスパネルのサッシへの最も典型的な装着方法としては、チャンネル状のグレージングガスケットを押出し成形し、この連続するグレージングガスケットを複層ガラスパネルの縦、横の各寸法に合わせて切断し、これを複層ガラスパネルの縦、横の周縁部に全長に亘り係合した後、この複層ガラスパネルの周縁部をグレージングガスケットごとサッシの溝部に嵌め込むことで複層ガラスパネルをサッシに装着する方式のものが知られている。
このような従来のグレージングガスケット装着方法は、グレージングガスケットを手作業で嵌め込むものであるため、作業が煩雑となり、生産性も低いという問題がある。したがって、最近では、生産性を向上するために、成形ダイを用いて成形材料を押出機により複層ガラスパネルの周縁部に直接押出しながら塗布してグレージングガスケットを形成する成形方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
以下、従来における複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法について図4を参照して説明する。
図4は、グレージングガスケットを塗布方式で複層ガラスパネルに形成する場合の装置の概略図を示すもので、熱可塑性樹脂をペレット状に加工してなる成形材料を溶融して押し出す押出機1と、この押出機1の溶融成形材料押出口に成形材料供給管2及びバルブ3を介して接続された成形材料送給用の一対のショットポンプ4a,4bと、この一対のショットポンプ4a,4bの成形材料吐出端に可撓性で加熱タイプの成形材料供給管5a,5bを介して連通され、複層ガラスパネルに接着剤の層とグレージングガスケットの層を同時に塗布できるように構成された一対の塗布ガン6a,6bと、一対の塗布ガン6a,6bに可撓性で加熱タイプの接着剤供給管7a,7b介して連通された接着剤送給用の一対のショットポンプ8a,8bと、この一対のショットポンプ8a,8bに接着剤供給管9及びバルブ10を介して連通された接着剤供給ポンプ11とから構成されている。
【0005】
次に、上記構成の装置を用いて複層ガラスパネルに成形材料を塗布しグレージングガスケットを成形する場合の動作について説明する。
成形材料の塗布に際し、複層ガラスパネル12は図5に示すように支持台13上に鉛直に載置保持され、一対の塗布ガン6a,6bのうち、一方の塗布ガン6aは複層ガラスパネル12の周縁部12aの表面に近接して配置され、他方の塗布ガン6bは複層ガラスパネル12の周縁部12aの裏面に近接して配置される。
【0006】
かかる状態において、押出機1から溶融した成形材料を所定量、供給管2及びバルブ3を通してショットポンプ4a,4bに供給し、そこに一時的に貯留する。この成形材料供給動作に並行して、接着剤供給ポンプ11からホットメルト型の接着剤を所定量、供給管9及びバルブ10を通してショットポンプ8a,8bに供給し、そこに一時的に貯留する。次いで、バルブ10を閉じるとともにショットポンプ8a,8bを駆動することにより、ショットポンプ8a,8bに貯留されている接着剤を、供給管7a,7bを通して一対の塗布ガン6a,6bに圧送し、この各塗布ガン6a,6bから接着剤を複層ガラスパネル12の周縁部の表面と裏面に向け吐出することで、接着剤13を周縁部の表面と裏面に塗布する。これと同時に、バルブ3を閉じるとともにショットポンプ4a,4bを駆動することにより、ショットポンプ4a,4bに貯留されている溶融成形材料を、供給管5a,5bを通して一対の塗布ガン6a,6bに圧送し、この各塗布ガン6a,6bから吐出される溶融成形材料14を上記周縁部の表面と裏面に塗布された接着剤13の上に塗布する。この場合、塗布ガン6a,6b及び複層ガラスパネル12の何れか一方または両方が、図示省略した送り機構により複層ガラスパネル12の周縁部の長手方向に相対的に移動される。これにより、複層ガラスパネル12の周縁部の表面と裏面に接着剤13と溶融成形材料14が2層に塗布されことでグレージングガスケット15が形成される。
【特許文献1】WO2004/046349
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、グレージングガスケットの成形材料には、オレフィン系やポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エストラマー樹脂が使用されるが、このエストラマー樹脂を複層ガラスパネルに直接塗布してグレージングガスケットを成形できる粘度にするには、その溶融温度を180℃程度に保持しておく必要がある。
しかしながら、上記成形材料の溶融温度が180℃程度に保持されていても、その粘度が高く流動性が低いため、ショットポンプを駆動して溶融成形材料を送り出しても、この溶融成形材料はショットポンプの起動開始時点より遅れて塗布ガン6a,6bから複層ガラスパネルに向け吐出され、その結果、上述のような従来の装置では、複層ガラスパネルへの成形材料の高速かつ高精度の塗布が不可能である。その理由は、塗布ガンへの溶融成形材料の送給にショットポンプを使用しているとともに、塗布ガンとショットポンプとの間は数メートルの長さ(例えば2m)の供給管により連結されているためである。
また、ショットポンプが、その駆動用サーボモータの回転数を制御することで塗布ガンへの成形材料の送給量を調整できる方式のものであっても、成形材料の高粘度性、圧縮性及び供給経路が長尺であることによって、ショットポンプの起動タイミングと塗布ガンからの成形材料の吐出タイミングとの間に時間差が生じ、これが塗布ガンからの成形材料の吐出量を正確に制御できなくする要因になっているとともに複層ガラスパネルに塗布される成形材料の厚さや量が不均一になり、高精度のグレージングガスケット成形ができなくなるほか、成形材料の高速塗布ができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、高粘度の成形材料の高速塗布及び高精度塗布を可能にするとともに、塗布速度の変化に応じて塗布ガンからの溶融成形材料の吐出量を制御できるようにした複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、複層ガラスパネルと塗布ガンとを前記複層ガラスパネルの周縁部に沿い相対移動しながら前記複層ガラスパネルの周縁部に前記塗布ガンにより成形材料を吐出し塗布して前記複層ガラスパネルの周縁部にグレージングガスケットを成形するグレージングガスケット成形方法であって、前記塗布ガンに連結され前記塗布ガンから前記成形材料を吐出させる成形材料吐出用ポンプ、前記成形材料を押し出す押出機、前記押出機から押し出された前記成形材料を前記成形材料吐出用ポンプに送給する成形材料送給用ポンプを設け、前記成形材料吐出用ポンプと前記押出機もしくは前記成形材料吐出用ポンプと前記成形材料送給用ポンプとの間を連通する循環路を設け、前記押出機から押出される前記成形材料を前記成形材料送給用ポンプにより前記成形材料吐出用ポンプへ定量送給し、前記成形材料吐出用ポンプにより前記成形材料を吸入し一定の圧力で前記塗布ガンに供給するとともに前記成形材料吐出用ポンプの回転数を前記複層ガラスパネルと前記塗布ガンとの間の相対移動による移動速度に応じ制御して当該塗布ガンから吐出される成形材料の吐出量を調節し、前記成形材送給用ポンプから前記成形材料吐出用ポンプへの成形材料の送給量が、前記成形材料吐出用ポンプによる成形材料の吸入量以上になった時の前記送給量と前記吸入量との差分に相当する成形材料を、前記循環路を通して前記押出機もしくは前記成形材料送給用ポンプへ還流することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複層ガラスパネルと塗布ガンとを前記複層ガラスパネルの周縁部に沿い相対移動しながら前記複層ガラスパネルの周縁部に前記塗布ガンにより成形材料を吐出し塗布して前記複層ガラスパネルの周縁部にグレージングガスケットを成形するグレージングガスケット成形装置であって、前記塗布ガンに連結され前記塗布ガンから前記成形材料を吐出させる成形材料吐出用ポンプと、前記成形材料を溶融して押し出す押出機と、前記押出機から押出される成形材料を前記塗布ガン側へ連続して定量送給する成形材料送給用ポンプと、前記押出機から押し出された前記成形材料を前記成形材料吐出用ポンプに送給する成形材料送給用ポンプと、前記成形材料吐出用ポンプの回転数を前記複層ガラスパネルと前記塗布ガンとの間の相対移動による移動速度に応じ制御して当該塗布ガンから吐出される成形材料の吐出量を調節する制御手段と、前記成形材料吐出用ポンプと前記押出機もしくは前記成形材料送給用ポンプとの間を連通するように設けられた循環路とを備え、前記成形材送給用ポンプから前記成形材料吐出用ポンプへの成形材料の送給量が、前記成形材料吐出用ポンプによる成形材料の吸入量以上になった時の前記送給量と前記吸入量との差分に相当する成形材料を、前記循環路を通して前記押出機もしくは前記成形材料送給用ポンプへ還流するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法及び装置によれば、押出機から押出される成形材料を成形材料送給用ポンプにより成形材料吐出用ポンプへ定量送給し、成形材料吐出用ポンプにより成形材料を吸入し一定の圧力で塗布ガンに供給して塗布ガンから吐出させることで複層ガラスパネルの周縁部に塗布するとともに成形材料吐出用ポンプの回転数を複層ガラスパネルと塗布ガンとの間の相対移動による移動速度に応じ制御して当該塗布ガンから吐出される成形材料の吐出量を調節した。そして、成形材料送給用ポンプから成形材料吐出用ポンプへの成形材料の送給量が、成形材料吐出用ポンプによる成形材料の吸入量以上になった時の前記送給量と前記吸入量との差分に相当する成形材料を、循環路を通して押出機もしくは成形材料送給用ポンプへ還流するようにした。そのため、成形材料が高粘度で圧縮性があり、かつ成形材料送給用ポンプから成形材料吐出用ポンプへの成形材料の供給路が長尺で、しかも成形材料吐出用ポンプが停止状態にあっても、これらに左右されることなく、成形材料を成形材料送給用ポンプから成形材料吐出用ポンプへ常に流動させることができる。これにより、成形材料吐出用ポンプの吸入側における成形材料の圧力を常に一定に保持できるとともに、高粘度成形材料の複層ガラスパネルへの高速塗布が可能になり、かつ塗布開始時の高速立ち上げが可能になる。しかも、成形材料吐出用ポンプの回転数を複層ガラスパネルと塗布ガンとの間の相対移動による移動速度に応じて制御できるため、上記移動速度に応じて塗布ガンからの成形材料の吐出量を調節することができ、一定した厚さのグレージングガスケットを高精度に成形できるほか、グレージングガスケット成形の自動化が可能になる。
また、前記成形材料の押出機もしくは成形材料送給用ポンプへの還流時に成形材料吐出用ポンプの吸入側圧、すなわち成形材料の還流量に合わせて押出機による成形材料の押出量を制御することで、一定量の成形材料が循環路を通して循環するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法を適用したグレージングガスケット成形装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明にかかる複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法及び装置は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
図1において、グレージングガスケット成形装置は、図2、図3に示す複層ガラスパネル21の周縁部21aの表面または裏面に成形材料22と接着剤23とを2層にして塗布する塗布ガン31と、この塗布ガン31から成形材料を吐出させる成形材料吐出用ポンプ32と、成形材料を溶融して押し出す押出機33と、この押出機33から押出される成形材料を成形材料吐出用ポンプ32へ連続して定量送給する成形材料送給用ポンプ34と、塗布ガン31に接着剤を供給する接着剤供給手段35とを含んで構成される。
【0014】
前記塗布ガン31と成形材料吐出用ポンプ32はヘッド本体30に一体に組み込まれている。また、成形材料吐出用ポンプ32はギアポンプ32aから構成され、このギアポンプ32aの吐出側は塗布ガン31に短い流路31aを介して連通されている。そして、ギアポンプ32aはサーボモータ32bにより駆動され、サーボモータ32bの回転速度、すなわちギアポンプ32aの回転数は、複層ガラスパネル20と塗布ガン31との相対移動による移動速度に応じて制御部36により制御される。
前記成形材料送給用ポンプ34はトロコイドポンプ34aから構成され、このトロコイドポンプ34aはサーボモータ34bで駆動され、このサーボモータ34bを制御部36により一定の回転数で駆動することでトロコイドポンプ34aから成形材料吐出用ポンプ32へ成形材料を定量送給する。
【0015】
前記押出機33は、ペレット状またはパウダー状の成形材料を加熱乾燥して押出機33のホッパー33aに供給するホッパーローダ兼用の樹脂乾燥装置331を備え、樹脂乾燥装置331からホッパー33aに投入された成形材料は押出機33の加熱シリンダ33b内をスクリュウ部33cにより吐出端33d方向へ押出される間に溶融される。
押出機33の吐出端33dは、ヒータ内蔵の耐圧・高温の可撓性ホース37を介して成形材料送給用ポンプ34、すなわちトロコイドポンプ34aの吸入端に連通されている。また、成形材料送給用ポンプ34、すなわちトロコイドポンプ35aの吐出端は、ヒータ内蔵の耐圧・高温の可撓性ホース38を介して成形材料吐出用ポンプ32、すなわちギアポンプ32aの吸入端に連通されている。
さらに、上記可撓性ホース38のギアポンプ32aの吸入端近傍と上記押出機33の吐出端33d近傍との間はヒータ内蔵の耐圧・高温の循環用可撓性ホース39(特許請求の範囲に記載した循環路に相当する)により連通されている。また、循環用可撓性ホース39の途中には、押出機33から押出される成形材料が循環用可撓性ホース39を通して成形材料吐出用ポンプ32の吸入側へ流動するのを防止する逆流防止バルブ40が設けられている。
【0016】
前記接着剤供給手段35は、塗布ガン31に接着剤23を供給し該接着剤23を塗布ガン31から吐出させるショットポンプ351と、このショットポンプ351に接着剤23を供給する接着剤供給ポンプ352とを備える。塗布ガン31とショットポンプ351の吐出端との間は、接着剤を塗布可能な溶融状態に加熱するヒータ内蔵の可撓性ホース353により連通され、さらに、ショットポンプ351に近接する可撓性ホース353の途中には開閉バルブ356が設けられている。また、ショットポンプ351と接着剤供給ポンプ352の間は、接着剤を溶融状態に加熱するヒータ内蔵の可撓性ホース354により開閉バルブ355を介して連通されている。
【0017】
塗布ガン31及び成形材料吐出用ポンプ32を含むヘッド本体30は、グレージングガスケット成形用の走行ロボット26に装着されている。
上記走行ロボット26は、図2及び図3に示すように、ワークテーブル260の相対向する両側位置にY方向に延在して互いに平行に配設された一対の案内レール261と、この一対の案内レール261上に案内レール261と直交するように差し渡し状態に載置され、かつ案内レール261上をY方向に走行するY軸走行体262と、このY軸走行体262にX方向に走行可能に設けられたX軸走行体263とを備え、X軸走行体263にヘッド本体30が装着されている。
なお、図示省略したが、Y軸走行体262は、これをY方向に自動的に走行させるためのサーボモータ等からなる駆動手段を備えている。同様にして、X軸走行体263も、これをX方向に自動的に走行させるためのサーボモータ等からなる駆動手段を備えている。
【0018】
次に、上記構成のグレージングガスケット成形装置を用いて複層ガラスパネルに成形材料を塗布しグレージングガスケットを成形する場合の動作について説明する。
成形材料の塗布に際し、複層ガラスパネル21は図2及び図3に示すようにワークテーブル25上に水平に載置され位置決め保持される。また、塗布ガン31及び成形材料吐出用ポンプ32を含むヘッド本体30は、ワークテーブル260のパネル載置面と平行な平面内を互いに直交するX,Y方向に移動する走行ロボット26に設置され、塗布ガン31を複層ガラスパネル21の周縁部と対向するスタート位置に位置決めする。
【0019】
かかる状態において、押出機33から溶融した成形材料22を、可撓性ホース37を通して成形材料送給用ポンプ34に供給する。そして、この成形材料送給用ポンプ34のトロコイドポンプ34aをサーボモータ34bで回転駆動することにより、可撓性ホース38を通して成形材料22を成形材料吐出用ポンプ32に定量送給する。
一方、上記成形材料吐出用ポンプ32への成形材料の送給動作に並行して、接着剤供給手段35の接着剤供給ポンプ352を起動することにより、ホットメルト型の接着剤23を所定量、可撓性ホース354及び開閉バルブ355を通してショットポンプ351に供給し、そこに一時的に貯留する。次いで、バルブ355を閉じるとともにショットポンプ351を駆動することにより、ショットポンプ351に貯留されている接着剤23に15〜20MPaの予圧を加えておく。そして、開閉バルブ356を開くことにより接着剤23を、可撓性ホース353を通して塗布ガン31に圧送し、塗布ガン31から複層ガラスパネル21の周縁部21aに向け接着剤を吐出することにより、周縁部21aの表面に接着剤23を塗布する。これと同時に、成形材料吐出用ポンプ32のギアポンプ32aを駆動してトロコイドポンプ34aからの成形材料を塗布ガン31に圧送する。これにより、塗布ガン31から吐出される成形材料22が上記周縁部21aの表面に塗布された接着剤23の上に2層に重ねて同時に塗布される。
【0020】
この場合、塗布ガン31及び成形材料吐出用ポンプ32を含むヘッド本体30はX軸走行体263によって、図2の矢印X1方向に移動される。これにより、複層ガラスパネル21の周縁部21aの表面に接着剤23と成形材料22が2層に塗布されることでグレージングガスケット27が成形される。
以下同様にして、Y軸走行体262とX軸走行体263を複層ガラスパネル21の周縁部21aに沿ってスクェア状に移動することにより、複層ガラスパネル21の表面側の四辺に相当する周縁部21aにグレージングガスケット27を連続して成形することができる。
また、複層ガラスパネル21の裏面側の周縁部にグレージングガスケットを成形する場合は、複層ガラスパネル21の表面側周縁部へのグレージングガスケットの成形が終了した後に、複層ガラスパネル21を、その裏面側がヘッド本体30と相対向するように反転してワークテーブル25上に載置し位置決め保持する。以下、上記複層ガラスパネル21の表面側周縁部へのグレージングガスケット成形時と同様にして、複層ガラスパネル21の裏面側の四辺に相当する周縁部にもグレージングガスケットを成形できる。
なお、複層ガラスパネル21の表面側及び裏面側の周縁部21a全長に亘りグレージングガスケット27が形成された段階では、開閉バルブ356が閉じられる。これは、成形材料の粘度より低い粘度の接着剤23が予圧によって、塗布ガン31からみだりに吐出されるのを防止するためである。
【0021】
また、複層ガラスパネル21のコーナ部分に位置する周縁部にグレージングガスケットを成形する場合、これへの塗布速度は、複層ガラスパネル21の直線領域にグレージングガスケットを成形する場合より遅くなる。その結果、コーナ部分における塗布ガン31から成形材料の吐出量は、直線領域における成形材料の吐出量より少ない。このような場合、成形材料送給用ポンプ34から成形材料吐出用ポンプ32への成形材料の送給量が、成形材料吐出用ポンプ32による成形材料の吸入量以上になった時の前記送給量と前記吸入量との差分に相当する余分な成形材料は、循環用可撓性ホース39を通して押出機33の吐出端33d近傍へ還流される。これにより、成形材料吐出用ポンプ32のギアポンプ32aの吸入側における成形材料の圧力を15MPa以内で一定に保持することが可能になり、しかも、400mm/secの高速塗布が可能になるとともに、高速運転(400mm/sec)から低速運転(20mm/sec)の範囲での可変速運転における塗布ガン31からの成形材料の吐出量を高精度に制御することが可能になる。
【0022】
このような本実施の形態によれば、押出機33から押出される成形材料を成形材料送給用ポンプ34により成形材料吐出用ポンプ32へ定量送給し、成形材料吐出用ポンプ32により成形材料を吸入し一定の圧力で塗布ガン31に供給して塗布ガン31から吐出させることで複層ガラスパネル21の周縁部21aに塗布するとともに成形材料吐出用ポンプ32の回転数を複層ガラスパネル21と塗布ガン31との間の相対移動による移動速度に応じ制御して該塗布ガン31から吐出される成形材料の吐出量を調節した。そして、成形材料送給用ポンプ34から成形材料吐出用ポンプ32への成形材料の送給量が、成形材料吐出用ポンプ32による成形材料の吸入量以上になった時の前記送給量と前記吸入量との差分に相当する成形材料を、循環用可撓性ホース39を通して押出機33内の吐出端近傍へ還流するようにした。そのため、成形材料が高粘度で圧縮性があり、かつ成形材料送給用ポンプ34から成形材料吐出用ポンプ32への成形材料の供給路が長尺で、しかも成形材料吐出用ポンプ32が停止状態にあっても、これらに左右されることなく、成形材料を成形材料送給用ポンプ34から成形材料吐出用ポンプ32へ常に流動させることができる。これにより、成形材料吐出用ポンプ32の吸入側における成形材料の圧力を常に一定に保持できるとともに、高粘度成形材料の複層ガラスパネル21への高速塗布が可能になる。しかも、成形材料吐出用ポンプ32の回転数を複層ガラスパネル21と塗布ガン31との間の相対移動による移動速度に応じて制御できるため、上記移動速度に応じて塗布ガン31からの成形材料の吐出量を高精度に調節することができ、一定した厚さのグレージングガスケットを高精度に成形でき、しかも、グレージングガスケット成形の自動化が可能になる。
【0023】
また、本実施の形態によれば、接着剤供給手段35により複層ガラスパネル21の周縁部に成形材料が塗布される前に塗布ガン31から接着剤を塗布するようにしたので、耐剥離性に優れたグレージングガスケットを複層ガラスパネルに形成することができる。
また、本実施の形態によれば、成形材料送給用ポンプ34にトロコイドポンプ34aを用い、成形材料吐出用ポンプ32にギアポンプ32aを用い、そして、このトロコイドポンプ34aとギアポンプ32aとの間をヒータ内蔵の可撓性ホース38により連通し、かつ循環路をヒータ内蔵の可撓性ホース39から構成し、これらの可撓性ホース内を流動する成形材料を塗布可能な溶融状態に加熱するようにしたので、これら可撓性ホース内での成形材料の流動性を補償できるとともに、ギアポンプ32aの加減速運転時において、ギアポンプ32aの吸入側への高粘度成形材料の供給遅れを克服でき、塗布ガン31からの成形材料の吐出量を容易に制御することができる。
【0024】
上記実施の形態では、ギアポンプ32aの吸入側における成形材料の圧力を一定に保持するために成形材送給用ポンプ34から成形材料吐出用ポンプ32へ送給される成形材料の一部を循環用可撓性ホース39を通して押出機33の吐出端33a近傍へ還流する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、成形材料吐出用ポンプ32の吸入側と成形材料送給用ポンプ34の吸入側との間を、一部が図1の2点鎖線で示される循環用可撓性ホース39により連通するようにしても、同様な作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法を適用したグレージングガスケット成形装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態における塗布ガンの走行ロボットと複層ガラスパネルとの位置関係及びグレージングガスケット成形時の動作説明用平面図である。
【図3】図2に示す塗布ガンの走行ロボットと複層ガラスパネルを正面から見た正面図である。
【図4】従来におけるグレージングガスケット成形装置の構成図である。
【図5】従来におけるグレージングガスケット成形時の動作説明用斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
21……複層ガラスパネル、21a……周縁部、22……成形材料、23……接着剤、26……走行ロボット、30……ヘッド本体、31……塗布ガン、32……成形材料吐出用ポンプ、32a……ギアポンプ、32b……サーボモータ、33……押出機、34……成形材料送給用ポンプ、34a……トロコイドポンプ、34b……サーボモータ、35……接着剤供給手段、351……ショットポンプ、352……接着剤供給ポンプ、354,354……可撓性ホース、37,38……可撓性ホース、39……循環用可撓性ホース、40……逆流防止バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層ガラスパネルと塗布ガンとを前記複層ガラスパネルの周縁部に沿い相対移動しながら前記複層ガラスパネルの周縁部に前記塗布ガンにより成形材料を吐出し塗布して前記複層ガラスパネルの周縁部にグレージングガスケットを成形するグレージングガスケット成形方法であって、
前記塗布ガンに連結され前記塗布ガンから前記成形材料を吐出させる成形材料吐出用ポンプ、前記成形材料を押し出す押出機、前記押出機から押し出された前記成形材料を前記成形材料吐出用ポンプに送給する成形材料送給用ポンプを設け、
前記成形材料吐出用ポンプと前記押出機もしくは前記成形材料吐出用ポンプと前記成形材料送給用ポンプとの間を連通する循環路を設け、
前記押出機から押出される前記成形材料を前記成形材料送給用ポンプにより前記成形材料吐出用ポンプへ定量送給し、
前記成形材料吐出用ポンプにより前記成形材料を吸入し一定の圧力で前記塗布ガンに供給するとともに前記成形材料吐出用ポンプの回転数を前記複層ガラスパネルと前記塗布ガンとの間の相対移動による移動速度に応じ制御して当該塗布ガンから吐出される成形材料の吐出量を調節し、
前記成形材料送給用ポンプから前記成形材料吐出用ポンプへの成形材料の送給量が、前記成形材料吐出用ポンプによる成形材料の吸入量以上になった時の前記送給量と前記吸入量との差分に相当する成形材料を、前記循環路を通して前記押出機もしくは前記成形材料送給用ポンプへ還流する、
ことを特徴とする複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法。
【請求項2】
前記塗布ガンからの成形材料の吐出量の調節は、前記複層ガラスパネルと前記塗布ガンとの間の相対移動による移動速度に応じて前記成形材料吐出用ポンプの回転数を制御することで行われることを特徴とする複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法。
【請求項3】
前記塗布ガンに接着剤を供給する接着剤供給手段が設けられ、
前記接着剤供給手段から前記塗布ガンに供給される接着剤と前記成形材料吐出用ポンプから前記塗布ガンに供給される前記成形材料を前記複層ガラスパネルの周縁部に2層に重ねて塗布することを特徴とする請求項1記載の複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法。
【請求項4】
前記成形材料送給用ポンプはサーボモータで駆動されるトロコイドポンプからなり、
前記成形材料吐出用ポンプはサーボモータで駆動されるギアポンプからなる、
ことを特徴とする請求項1記載の複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形方法。
【請求項5】
複層ガラスパネルと塗布ガンとを前記複層ガラスパネルの周縁部に沿い相対移動しながら前記複層ガラスパネルの周縁部に前記塗布ガンにより成形材料を吐出し塗布して前記複層ガラスパネルの周縁部にグレージングガスケットを成形するグレージングガスケット成形装置であって、
前記塗布ガンに連結され前記塗布ガンから前記成形材料を吐出させる成形材料吐出用ポンプと、
前記成形材料を溶融して押し出す押出機と、
前記押出機から押し出された前記成形材料を前記成形材料吐出用ポンプに送給する成形材料送給用ポンプと、
前記成形材料吐出用ポンプの回転数を前記複層ガラスパネルと前記塗布ガンとの間の相対移動による移動速度に応じ制御して当該塗布ガンから吐出される成形材料の吐出量を調節する制御手段と、
前記成形材料吐出用ポンプと前記押出機もしくは前記成形材料送給用ポンプとの間を連通するように設けられた循環路とを備え、
前記成形材料送給用ポンプから前記成形材料吐出用ポンプへの成形材料の送給量が、前記成形材料吐出用ポンプによる成形材料の吸入量以上になった時の前記送給量と前記吸入量との差分に相当する成形材料を、前記循環路を通して前記押出機もしくは前記成形材料送給用ポンプへ還流するように構成した、
ことを特徴とする複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形装置。
【請求項6】
前記塗布ガンに接着剤を供給する接着剤供給手段が設けられ、
前記接着剤供給手段から前記塗布ガンに供給される接着剤と前記成形材料吐出用ポンプから前記塗布ガンに供給される前記成形材料を前記複層ガラスパネルの周縁部に2層に重ねて塗布することを特徴とする請求項4記載の複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形装置。
【請求項7】
前記成形材料送給用ポンプと前記成形材料吐出用ポンプとの間は、前記成形材料送給用ポンプから前記成形材料吐出用ポンプへ送給される成形材料を塗布可能な溶融状態に加熱するヒータ内蔵の可撓性ホースにより連通されていることを特徴とする請求項5記載の複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形装置。
【請求項8】
前記循環路は、該循環路を還流する成形材料を溶融状態に加熱するヒータ内蔵の可撓性ホースから構成されていることを特徴とする請求項5記載の複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形装置。
【請求項9】
前記接着剤供給手段は、前記塗布ガンに接着剤を供給し該接着剤を前記塗布ガンから吐出させるショットポンプと、前記ショットポンプに接着剤を供給する接着剤供給ポンプとから構成され、前記塗布ガンと前記ショットポンプとの間は、接着剤を塗布可能な溶融状態に加熱するヒータ内蔵の可撓性ホースにより連通されていることを特徴とする請求項6記載の複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形装置。
【請求項10】
前記成形材料送給用ポンプはサーボモータで駆動されるトロコイドポンプからなり、前記成形材料吐出用ポンプはサーボモータで駆動されるギアポンプからなることを特徴とする請求項5記載の複層ガラスパネルのグレージングガスケット成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137209(P2009−137209A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317378(P2007−317378)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】