説明

視界補助装置

【課題】赤外線の反射映像を提供する視界補助装置を自動起動する際に、無駄な作動機会を低減し、運転者が必要であると望む場合には確実に作動させる。
【解決手段】ヘッドライトスイッチ182が点灯操作が検出され、かつ、照度センサ510によって周囲環境が所定レベルより暗いと判断した場合に、起動制御回路150によって視界補助装置を起動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間の走行時に目視では見えづらい道路状況を、運転者に映像として提供する視界補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような視界補助装置の一例が、例えば実開平6−68989号に開示されている。この実開平6−68989号では、照度センサの検出結果に基づいて車両の周囲が暗いと判定された場合に、撮像領域に照明光を投光し、その撮像結果を運転者に提供するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−68989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように照度センサの検出結果に基づいて車両の周囲が暗いと判定して、視界補助装置を作動させているが、どの程度の照度においてこのような視界補助が必要かは、個人差や周囲の状況、或いは運転状態などによって異なる。そこで、余裕を見込んで、比較的に明るい状態から視界補助装置を作動させることも考えられるが、この場合には、必要以上に視界補助装置の作動機会が増えてしまい、その分、消費電力が増大し、また、装置劣化が早期に進んでしまう。
【0005】
従って、運転者が本当に必要であると望む場合にのみ、視界補助装置を作動させることが望ましいが、この場合の好適な作動条件設定が困難となってしまう。このため、視界補助装置が作動してもおかしくない状況下でも、視界補助装置が作動しないような事態も生じ得るため、このような場合には、装置が正常に作動しているのか否かが、使用者にわかりにくくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、その目的は、視界補助装置の無駄な作動機会を低減し、運転者が必要であると望む場合には確実に作動させることが可能な視界補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る視界補助装置は、撮像した車両外部の赤外線映像を、運転者に対向する被投射面に対して投射する映像投射手段と、映像投射手段を遮蔽し得る可動遮蔽部材とを備える。
【0008】
また、本発明に係る視界補助装置において、周辺環境の照度を検出する照度検出手段を備えており、照度が明るいと検知された場合、可動遮蔽部材は前記映像投射手段を遮蔽する。
【0009】
また、本発明に係る視界補助装置において、周辺環境の照度を検出する照度検出手段を備えており、照度が暗いと検知された場合、可動遮蔽部材は映像投射手段を表出させる請求項1記載の視界補助装置。
【0010】
また、本発明に係る視界補助装置において、被投射面は、フロントガラスである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、視界補助装置の無駄な作動機会を低減し、運転者が必要であると望む場合には確実に作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】視界補助装置の全体的な構成概略的に示すブロック図である。
【図2】赤外線投射ランプの構成を概略的に示す説明図である。
【図3】(a)は車内における撮像カメラASSYの取り付け位置を概略的に示す説明図、(b)は撮像カメラASSYの外観を概略的に示す斜視図である。
【図4】表示装置の取り付け位置と、運転者が視覚する赤外線反射映像の表示位置とを示す説明図である。
【図5】(a)は表示装置の平面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面のうち、シャッター及びその駆動機構を主に示す概略断面図である。
【図6】赤外線投射ランプ、撮像カメラASSY及び表示装置における、車両に対する配設位置を示す説明図である。
【図7】各スイッチ操作等の入力状況と、それに対する視界補助装置の制御状態を示す作動理論表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に実施形態にかかる視界補助装置の全体的な構成を概略的に示す。視界補助装置は、この視界補助装置の各種制御を行う中央制御装置100、車両前方の被写領域に近赤外光を照射する赤外線投射ランプ(以下、「IRランプ」と記す)200、被写領域に投射された近赤外光の反射像を撮像する撮像カメラASSY300、撮像カメラASSY300で撮像された赤外線反射映像を表示する表示装置(HUD:Headup Displasy)400などによって構成する。
【0015】
図2に概略的に示すように、IRランプ200は、800nm〜1000nm程度の波長域の近赤外光を投射する視界補助装置専用の投射ランプであり、光源にハロゲンランプ210を使用し、可視光をカットする可視光カットフィルタ220を備えて構成している。これにより、ヘッドライトのハイ(Hi)ビーム相当の照射範囲で近赤外光を投射することができる。なお、IRランプ200は、図6に示すようにバンパー部に設けられたフォグランプ付近に、左右1つずつ計2つ搭載している。
【0016】
撮像カメラASSY300は、図3(a)及び図6に示すように、車内におけるオーバーヘッドコンソール10の下方であって、インナーミラー20の背面側に搭載されており、固定ボックス310内に収容された状態で、フロントガラス(ウインドシールド)30の内側に貼着して固定している。図3(b)に概略的に示すように、撮像カメラASSY300は、本体302の前面部にレンズ304を備えるとともに、レンズ304に対向するように本体302内に、近赤外光の反射光を撮像する赤外線カメラ306(図1)を搭載しており、レンズ304を介して入射した赤外線反射映像が赤外線カメラ306で撮像される。
【0017】
表示装置400は、図1に概略的に示すように、赤外線カメラ306で撮像された近赤外光による映像を表示するための液晶ディスプレイ(LCD)410を備え、その背面側には投射光源となる調光可能なバックライト412を配設して構成しており、液晶ディスプレイ410で表示された映像をフロントガラス30に反射させることで、運転者に映像(虚像)を提供する装置である。
【0018】
表示装置400の取り付け位置は、図4に示すように、スピードメータ等が配置されたコンビネーションメータの背面側であって、運転席前方のインストロメントパネル40上に配設されており、前述したように映像をウインドシールド30に反射させて運転者に表示するという、一回の反射によって虚像を表示させるシステムであるため、液晶ディスプレイ410が上を向くような状態で固定されている。なお、図示は省略したが、映像を反射させるフロントガラス30の反射領域には、室内側の表面に半透明の反射薄膜を形成している。
【0019】
表示装置400の液晶ディスプレイ410は、このように上を向くような状態となっているために直射日光の影響を受けて高温になりやすい。そこで、このような直射日光の影響を避けるために、表示装置400の非作動時に液晶ディスプレイ410上を覆うようなシャッター420を設けている。
【0020】
この構造を図5(a),図5(b)に示す。表示装置本体の開口部402の下方に液晶ディスプレイ410が配設されており、開口部402と液晶ディスプレイ410との隙間に位置するように、板状のシャッター420が配設されている。シャッター420は、その両サイドに配設されたガイドレール430によって往復動自在に支持されており、シャッター420の裏面側には、両ガイドレール430の内側に沿うように、それぞれラックレール440が設けられている。このラックレール440は、噛面を下にしてシャッター420側に固定されており、このラックレール440の噛面に対してそれぞれギヤ450が噛み合っている。そして、両ギヤ450はその中心部を貫通する駆動軸460にそれぞれ固定されており、駆動軸460は駆動モータ470によって回転駆動される機構となっている。従って、モータ470を駆動することで、ギヤ450と噛合したラックレール440とシャッター420が一体的に送り出されて、シャッター420は液晶ディスプレイ410上を覆うように移動する。また、駆動モータ470を反転駆動することで、同様な作用により、もとの位置に復帰するようにシャッター420が移動して、再び液晶ディスプレイ410を表出させる機構となっている。
【0021】
前述したように、IRランプ200の点灯制御、撮像カメラASSY300及び表示装置400の動作制御などを含め、視界補助装置の各種制御は、すべて中央制御装置100によって行われる。
【0022】
中央制御装置100は、撮像カメラASSY300に対する電源の供給制御を行う電源コントロール回路110を備えており、撮像カメラASSY300で撮像された赤外線反射映像は、中央制御装置100内で処理され、映像データに変換されて表示装置400に入力される。
【0023】
また中央制御装置100には、表示装置400に対する制御系として、表示装置400における表示制御を行う表示ドライバ回路120や、前述したシャッター420の開閉制御を行うべく駆動モータ470の動作制御を行うモータ制御回路130を備えている。また、調光操作部480の操作状態をもとに、表示装置400におけるバックライト412の明るさを制御しており、運転者の好みに応じて表示装置400によって表示される赤外線映像の明るさを、独立して調節することができる。
【0024】
このほかにも、中央制御装置100には、車速センサ160で検出される車速情報、視界補助装置の起動を許可する許可状態と起動を禁止する禁止状態とに切り換え可能なメインスイッチ170の操作状態、及び、複数の車外照明系のスイッチ類を一体化したコンビネーションスイッチ180の操作状態を示す各信号が与えられる。
【0025】
コンビネーションスイッチ180は、全ライトを消灯させるOFF位置、テールランプ及びスモールランプ(車幅灯)を点灯させるTAIL位置、テールランプ、スモールランプ及びヘッドライトを点灯させるHEAD位置の3つの位置に切り換え可能なヘッドライトスイッチ182、後述するライトコントロールシステム500の作動/停止を切り換えるライトコントロールスイッチ184、ヘッドライトのハイビーム状態とロービーム状態とに切り換えるディマスイッチ186等を備えている。
【0026】
一方、この車両には、周囲の明るさを感知して、ヘッドライト等を自動的に点灯、消灯させるライトコントロールシステム(コンライト)500が搭載されており、例えば薄暮時にはテールランプとスモールランプ(車幅灯)などを自動的に点灯させ、また、夜間やトンネル内ではヘッドライトを自動的に点灯させ、明るくなった時点で自動的に消灯させるシステムとなっている。
【0027】
ライトコントロールシステム500では、このような周囲の明るさを検出するための照度センサ(フォトセンサ)510を、インストロメントパネル40上に備えている。この照度センサ510からは、検出された照度に応じた照度信号が出力されるが、中央制御装置100にもこの照度信号が与えられており、中央制御装置100側でも車両周辺の照度がどの程度の明るさ(暗さ)であるかを把握するシステムとなっている。従って、1つの照度センサ510を、ライトコントロールシステム500と視界補助装置とで共用している状態となっている。
【0028】
中央制御装置100には、このような照度センサ510、車速センサ160、メインスイッチ170、コンビネーションスイッチ180、イグニションスイッチ190などの検出信号や操作信号が与えられており、中央制御装置100の点灯制御回路140では、これらの信号を総合的に判断して、リレースイッチ230のオン・オフ制御を実施してIRランプ200の点灯制御を行っており、また、中央制御装置100の起動制御回路150では、視界補助装置を自動的に起動させる起動制御を実施している。
【0029】
またこの車両には、メインスイッチ170のオン状態/オフ状態を運転者に表示するメインスイッチインジケータ602、赤外線投射ランプ200が投射状態であるか否かを運転者に表示する投射インジケータ604、及び視界補助装置が作動中であることを示す作動状態インジケータ606を備えている。これは、起動制御回路150によって所定の条件が成立した場合に視界補助装置を自動的に起動させるシステムを採用しているためであり、メインスイッチ170がオン操作されている場合であっても、例えば昼間などのように、後述する自動起動システム側の起動条件が満足しない状況では視界補助装置が作動しない場合も生じる。そこで、このような状況でもシステムがREADY状態にあること、すなわちメインスイッチ170のオン操作が受け付けられて、視界補助装置が待機中であることを運転者に知らしめるため、メインスイッチインジケータ602及び作動状態インジケータ606を設けている。また、この視界補助装置で用いる近赤外光は、その投光状態が肉眼では確認できないため、投射インジケータ604を点灯させることで、運転者に投光状態であることをしらせるものである。なお、このようなインジケータ602,604、606の発光制御は、中央制御装置100のインジケータ制御回路600によって実施される。
【0030】
なお、メインスイッチインジケータ602及び作動状態インジケータ606は、1つの表示灯によって構成することもできる。例えば、メインスイッチ170がオフ状態では、この表示灯を消灯状態とし、オン操作された場合に点灯させるが、この際、表示灯の発光色を視界補助装置の作動状態に応じて変化させる。一例としては、起動条件が満たされずに視界補助装置が待機中の場合には、この表示灯を黄色に点灯させ、実際に視界補助装置が作動した状態では、この表示灯を青色に点灯させる。
【0031】
ここでメインスイッチ170の機能について説明しておく。メインスイッチ170は、イグニションスイッチ190をオフ操作すると、常にオフ状態にリセットされるシステムを採用しているため、イグニションスイッチ190をオン操作した時点では、メインスイッチ170は常にオフ状態、(メインスイッチ170の初期状態がオフ状態)となる。従って、メインスイッチ170をオン操作することによって、視界補助用の赤外線映像の提供を受けたいとする、運転者の意志表示があったと見なすことができるため、メインスイッチ170がオン操作された状況下において、視界補助装置を自動的に起動させる起動制御を実施することとしている。
【0032】
ここで、中央制御装置100で実施する制御処理について図7の論理値表に沿って説明する。なお、図7の表は、各スイッチ操作等のそれぞれの入力条件に応じた視界補助装置の制御状態を示しており、表中、「−」は該当する入力状況を考慮しないことを示しいる。
【0033】
まず、入力条件Aは、イグニションスイッチ190がオフ状態の場合であり、この場合、視界補助装置が非作動状態となるように、起動制御回路150による指示の下、電源コントロール回路110によって赤外線カメラ306に対する電源供給がオフ状態に制御され、表示ドライバ回路120によって液晶ディスプレイ410の表示がオフ状態に、モータ制御回路130がシャッター420を閉状態とするように、それぞれ制御される。また、点灯制御回路140によってリレースイッチ230をオフ状態に制御してIRランプ200を消灯状態とすると共に、インジケータ制御回路600によって、メインスイッチインジケータ602、投射インジケータ604、作動状態インジケータ606を消灯させる。
【0034】
入力条件B、C、D、E、F、Gは、イグニションスイッチ190がオン操作された状況であり、入力条件Bは、さらにメインスイッチ190がオフ状態の場合である。この場合、メインスイッチ190がオフ状態であるため、運転者が視界補助装置を必要としていない状況であることが想定されるため、制御状態は、入力条件Aの場合と同様に、視界補助装置が非作動状態となるように制御されるため、説明は省略する。
【0035】
入力条件C、D、E、F、Gは、さらにメインスイッチ170がオン操作されて、視界補助を必要とするという運転者の使用意志が示されている場合を想定しており、さらに入力条件Cでは、ヘッドライトスイッチ182がTAIL位置に操作された状態が条件となっている。この視界補助装置では、車両周辺の環境について、運転者が主観的に暗いと感じているか否かの判定を、ヘッドライトスイッチ182等のスイッチ操作をもとに判定する手法を採用しており、運転者がヘッドライトスイッチ182をTAIL位置に操作して、テールランプ及びスモールランプを点灯させるような状況では、視界補助装置を必要とするほど周囲が暗い状況には無いと判断することとしている。この場合には、前述した入力条件A、Bと同様に、視界補助装置を非作動状態に制御する。ただしこの場合には、メインスイッチ170がオン操作されているため、メインスイッチインジケータ602を点灯させ、メインスイッチ170のオン操作を受け付けたが、視界補助装置を起動させる状況ではないと、システム上判断していることを表示する。なお、このようなメインスイッチインジケータ602を点灯させる制御は、後述する入力条件D、E、F、Gでも同様に実施される。また、この状況では、視界補助装置が待機状態であるため、作動状態インジケータ606は消灯状態である。
【0036】
入力条件Dでは、さらにヘッドライトスイッチ182がヘッドライトを点灯させるHEAD位置か、或いは、ライトコントロールシステム500によってヘッドライトを自動点灯させる制御を開始するようにライトコントロールスイッチ184がAUTO位置に操作された状態であることが、条件となっている。ヘッドライトスイッチ182がHEAD位置にある場合には、視界補助装置の制御システム上、車両の周辺環境が暗く運転者の目視では道路状況が見づらいと感じている状況であると見なしている。また、ライトコントロールスイッチ184がAUTO位置に操作された状態も、照度センサ510の検出結果をもとに運転者が暗いと感じる状況下で、運転者に代わってヘッドライトを自動的に点灯させる制御であるため、運転者によるヘッドライトの点灯操作と同様に取り扱うこととしている。従って、入力条件Dの場合には、さらに照度センサ510の検出結果を考慮し、照度センサ510の検出結果が所定のしきい値よりも暗い状態であることが、入力条件Dの判断条件に加わっている。そしてさらに入力条件Dでは、ディマースイッチ186がハイビーム状態であることも、判断条件としている。
【0037】
このような入力条件Dの判断条件が全て満たされた場合には、視界補助装置の起動制御をおこう。すなわち起動制御回路150による指示の下、電源コントロール回路110によって赤外線カメラ306に対する電源供給がオン状態に制御され、表示ドライバ回路120によって液晶ディスプレイ410の表示をオン状態に、モータ制御回路130がシャッター420を開状態とするように、それぞれ制御される。
【0038】
また、この場合、ヘッドライトのハイビームが点灯されており、ヘッドライトがハイビーム状態の場合には、IRランプ200の配光相当の近赤外光が、ヘッドライトのハイビームランプによって十分に照射されている。従ってこのような場合には、点灯制御回路140によってリレースイッチ230をオフ状態に制御してIRランプ200を消灯状態として消費電力を抑える。従って、インジケータ制御回路600によって、メインスイッチインジケータ602及び作動状態インジケータ606を点灯状態に、投射インジケータ604を消灯状態、にそれぞれ制御する。
【0039】
次に入力条件Eでは、イグニションスイッチ190がオン操作され、かつ、メインスイッチ170がオン操作された状況下であっても、照度センサ510の検出結果より、所定のしきい値よりも明るいという状況の場合には、車両周囲の環境として、視界補助が必要なほど客観的に暗い状況では無いと、制御システム上見なすこととしている。このような場合には、ヘッドライトスイッチ182などの操作状態を勘案することなく、入力条件Cの場合と同様に、視界補助装置が非作動状態(待機状態)となるように制御を行う。
【0040】
次に入力条件Fは、前述した入力条件Dと同様に、運転者の使用意志があること、運転者が主観的に暗いと感じている状況であること、及び、照度センサ510の検出結果より周囲環境が客観的に暗いこと、の全ての状況が満たされるため、制御状態としては、視界補助装置を作動状態とする起動制御を実施する。
【0041】
ただし、入力条件Fでは、ディマースイッチ186がロービーム状態であることを条件として判断している。このような条件では、IRランプ200を点灯させることで、より遠方の赤外線反射映像を得ることも想定されるが、この入力条件Fでは、さらに車速が6km/h未満の低車速状態の場合である状況を条件として判断している。これは、車両が低車速で走行する状態では、歩行者の目の網膜に赤外線が照射される時間が長くなる傾向となるためであり、歩行者保護の観点から、IRランプ200を消灯させることとしている。
【0042】
従って、入力条件Fの状況がすべて満たされた場合には、起動制御回路150による指示の下、電源コントロール回路110によって赤外線カメラ306に対する電源供給がオン状態に制御され、表示ドライバ回路120によって液晶ディスプレイ410の表示をオン状態に、モータ制御回路130がシャッター420を開状態とするように、それぞれ制御する。そしてさらに、点灯制御回路140によってリレースイッチ230をオフ状態に制御してIRランプ200を消灯状態とする。また、インジケータ制御回路600によって、メインスイッチインジケータ602及び作動状態インジケータ606を点灯状態に、投射インジケータ604を消灯状態、にそれぞれ制御する。
【0043】
次の入力条件Gは、車速に関する以外の入力状況について、前述した入力条件Fの場合と同様に条件で判断している。この車速については6km/以上であるということを条件としている。このようにある程度の車速がある場合には、歩行者の目の網膜に赤外線が照射される時間を短く抑えることができるため、このように車速が6km/以上の場合には、前述した入力条件Fの制御状態に加えて、さらに、点灯制御回路140によってリレースイッチ230をオン状態に制御してIRランプ200を点灯状態に制御する。これにより、より遠方の赤外線反射映像を得ることができる。また、インジケータ制御回路600によって、メインスイッチインジケータ602、投射インジケータ604、作動状態インジケータ606を点灯状態に制御する。
【0044】
以上説明した実施形態にかかる視界補助装置では、入力条件F、Gにおいて、車速判定のしきい値として6km/hを例示したが、この例に限定するものではなく、このほかの低車速を示すしきい値を採用することができる。
【0045】
また、入力条件Dの場合には、消費電力を抑制する観点から、ヘッドライトがハイビームの場合に、IRランプ200を消灯状態とする場合を例示したが、この例に限定するものではなく、IRランプ200とハイビームとを双方点灯させて、赤外線の反射映像を得てもよい。
【0046】
一実施形態に係る視界補助装置は、車両外部の赤外線映像を提供する視界補助装置であって、周辺環境の照度を検出する照度検出手段と、車外を照明する照明装置に対するスイッチ操作を検出するスイッチ操作検出手段と、この視界補助装置の起動制御を行う起動制御手段とを備えており、起動制御手段は、照度検出手段で検出された照度が所定レベルより暗く、かつ、スイッチ操作検出手段によって照明装置の点灯操作が検出された場合に、視界補助装置を起動させる起動制御を実施することを特徴とする。
【0047】
ヘッドライトなどの車外を照明する照明装置の点灯操作が検出された場合には、車両の周囲環境が暗いということを運転者が主観的に感じていることが想定される。そこで、起動制御手段では、このように運転者が主観的に暗いと感じている状況と、照度検出手段の検出結果より車両の周辺環境が客観的に暗いという状況の、2つの状況が揃った場合に視界補助装置を起動させるので、いずれか一方のみに基づいて視界補助装置を起動させる場合に比べて、視界補助装置の無駄な作動機会が低減され、より必要とされる場合に視界補助装置を起動させることができる。
【0048】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置が、さらに、視界補助装置の起動を許可する許可状態と、この視界補助装置の起動を禁止する禁止状態との少なくとも2つの状態に切り換え可能なメインスイッチを備えており、起動制御手段は、このメインスイッチが許可状態の場合に当該起動制御を実施する。
【0049】
このように起動制御手段では、メインスイッチの操作状態も考慮することにより、前述したように運転者が主観的に暗いと感じている状況と、車両の周辺環境が客観的に暗いという状況とに加えて、さらに視界補助を必要としているか否かの運転者の使用意志も判定されることとなり、より一層必要とされる状況下で視界補助装置を起動させることができる。
【0050】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置が、周囲環境の照度に応じて、照明装置を自動的に点灯、消灯させる照明制御手段をさらに備えており、起動制御手段及び照明制御手段は、周辺環境の照度を検出する手段として、照度検出手段を共用することを特徴とする。
【0051】
このように起動制御手段及び照明制御手段が、周辺環境の照度を検出する手段として、前述した照度検出手段を共用することで、搭載部品点数の増加や製造コストを抑制させることができる。
【0052】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置において、照明装置はヘッドライトであり、スイッチ操作検出手段はヘッドライトに対するスイッチ操作を検出する。
【0053】
運転者は、車両の周辺環境が暗いため、運転者の目視では道路状況が見づらいと感じた場合に、ヘッドライトを点灯させている。従って、このように車両の周辺環境が暗いために道路状況が見づらく、視界補助装置が必要であると感じている状況を、ヘッドライトのスイッチ操作として把握し、この検出結果を前述したような各起動制御に用いることで、視界補助装置を必要としている状況下で、好適に起動させることができる。
【0054】
一実施形態にかかる視界補助装置は、車両外部の赤外線映像を提供する視界補助装置であって、被写領域からの赤外線反射映像を得るべく、赤外線をこの被写領域に向けて投射する赤外線投射手段と、車外を照明する照明装置に対するスイッチ操作を検出するスイッチ操作検出手段と、赤外線投射手段の点灯制御を行う点灯制御手段とを備えており、点灯制御手段は、スイッチ操作検出手段によって、照明装置の投光状態がハイビーム状態にあると検出された場合には、赤外線投射手段を消灯状態に制御する。
【0055】
例えばヘッドライトなどの照明装置は、車両前方の比較的近傍を照明するロービーム状態と、車両前方の比較的遠方を照明するハイビーム状態との2種の投光状態を有しており、スイッチ操作に応じて切り換え可能な機構となっている。また、このような照明装置から照射される光には赤外線が含まれているため、遠方を照明するハイビームを利用して、遠方の被写領域からの赤外線反射光を得て、車両外部の赤外線映像を提供することも可能である。そこで、点灯制御手段は、照明装置の投光状態がハイビーム状態の場合には、赤外線投射手段を消灯状態に制御して、ハイビームの反射光に基づく赤外線映像を得ることで、電力消費を抑える。
【0056】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置が、周辺環境の照度を検出する照度検出手段と、視界補助装置の起動制御を行う起動制御手段とをさらに備えており、起動制御手段は、照度検出手段で検出された照度が所定レベルより暗く、かつ、スイッチ操作検出手段によって照明装置の点灯状態が検出された場合に、視界補助装置を起動させる起動制御を実施する。
【0057】
点灯制御手段によって、照明装置の投光状態がハイビーム状態の場合には、赤外線投射手段を消灯状態に制御して電力消費を抑え得る。また、起動制御手段では、このように運転者が主観的に暗いと感じている状況と、照度検出手段の検出結果より車両の周辺環境が客観的に暗いという状況の、2つの状況が揃った場合に視界補助装置を起動させるので、いずれか一方のみに基づいて視界補助装置を起動させる場合に比べて、視界補助装置の作動機会が低減され、より必要とされる場合に視界補助装置を起動させることができる。
【0058】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置が、視界補助装置の作動状態を表示する第1表示手段と、視界補助装置が作動している状況下において赤外線投射手段が点灯状態か消灯状態かを表示する第2表示手段とをさらに備える。
【0059】
このような第1表示手段及び第2表示手段を備えることで、請求項5又は6記載の視界補助装置のように、視界補助装置の作動時に赤外線投射手段が消灯状態であっても、赤外線投射手段が故障であると運転者が誤認する事態を防止できる。
【0060】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置が、撮像した車両外部の赤外線映像を運転者に対向する被投射面に対して投射する映像投射手段と、映像投射手段を遮蔽し得る可動遮蔽部材とをさらに備える。
【0061】
撮像した車両外部の赤外線映像を投射する映像投射手段に、長時間日光等が直接照射されると、投射機能にダメージを受ける場合も起こり得る。そこで、視界補助装置の非作動時に、可動遮蔽部材によって映像投射手段を遮蔽して覆うことで、映像投射手段を直射日光から保護する。
【0062】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置が、被投射面に向けて直接的に赤外線映像を投射することを特徴とする。
【0063】
直射日光を避けるように映像投射手段を配設することで、配置上、映像投射手段から被投射面に向けて直接的に赤外線映像を投射することができない場合があるが、このような場合には、例えば映像投射手段と被投射面との間に光路調整部材を設けるなどの構成が採用される。このような光路調整部材を介在させることなく、映像投射手段によって被投射面に向けて直接的に赤外線映像を投射する構成を採用することにより、部品点数を低減して装置構成の簡略化に寄与する。
【0064】
一実施形態にかかる視界補助装置は、車両外部の映像を提供する視界補助装置であって、撮像された車両外部の映像を、運転者に対向する被投射面に対して投射する映像投射手段と、映像投射手段を遮蔽し得る可動遮蔽部材とを備え、映像投射手段は被投射面に向けて直接的に映像を投射することを特徴とする。
【0065】
映像投射手段に長時間日光等が直接照射されると、映像投射機能がダメージを受ける場合も起こり得る。そこで、視界補助装置の非作動時に、可動遮蔽部材によって映像投射手段を遮蔽して覆うことで、映像投射手段を直射日光から保護する。また、映像投射手段によって被投射面に向けて直接的に映像を投射する構成を採用することにより、部品点数を低減して装置構成の簡略化に寄与する。
【0066】
一実施形態にかかる視界補助装置は、上述の視界補助装置において、被投射面は運転者前方のフロントガラスであり、映像投射手段はこの被投射面の下方に配置して構成する。
【0067】
被投射面を運転者前方のフロントガラスとし、映像投射手段はこの被投射面の下方に配置して構成することで、限られた設置スペースを有効に使うために搭載性に優れ、かつ、運転者による視認性にも優れる視界補助装置を提供できる。
【0068】
一実施形態にかかる視界補助装置によれば、照度検出手段で検出された照度が所定レベルより暗く、かつ、スイッチ操作検出手段によって照明装置の点灯操作が検出された場合に、視界補助装置を起動させる起動制御手段を供える構成を採用した。このように、運転者が主観的に暗いと感じている状況と、車両の周辺環境が客観的に暗いという状況の、2つの状況が揃った場合に視界補助装置を起動させるので、装置の無駄な作動機会を低減させ、より必要とされる状況において視界補助装置を確実に作動さることができる。この結果、消費電力を抑制できるばかりでなく、不必要な使用機会が減るため装置寿命の長期化にも寄与するものである。
【0069】
一実施形態にかかる視界補助装置によれば、照明装置の投光状態がハイビーム状態にあると検出された場合には、赤外線投射手段を消灯状態に制御する点灯制御手段を備える構成を採用した。このため、遠方を照明するハイビーム点灯時に照射される、赤外線投射手段の配光相当の赤外光を利用することで、このとき赤外線投射手段を点灯させた場合に比べて電力消費を抑えることができ、かつ、赤外線投射手段を点灯させた場合と同等の赤外線反射映像を得ることができる。
【0070】
一実施形態にかかる視界補助装置は、運転者に対向する被投射面に対して投射する映像投射手段と、映像投射手段を遮蔽し得る可動遮蔽部材とを備えるので、視界補助装置の非作動時に、可動遮蔽部材によって映像投射手段を遮蔽して覆うことで、映像投射手段を直射日光から保護することができる。また、このような可動遮蔽部材を設けることで、日光にさらされる位置にも映像投射手段を配置することが可能となり搭載自由度が向上する。さらに、可動遮蔽部材が映像投射手段を覆っているか否かの状態をもとに、視界補助装置が動作状態か非作動状態かを、報知させることができる。さらにまた、映像投射手段によって被投射面に向けて直接的に映像を投射する構成を採用したので、部品点数を低減して装置構成の簡略化に寄与することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
30…フロントガラス、100…中央制御装置、110…電源コントロール回路、120…表示ドライバ回路、130…モータ制御回路、
140…点灯制御回路(点灯制御手段)、150…起動制御回路(起動制御手段)、
170…メインスイッチ、190…イグニションスイッチ
180…コンビネーションスイッチ(スイッチ操作検出手段)、
200…赤外線投射ランプ(赤外線投射手段)、230…リレースイッチ、
300…撮像カメラASSY、400…表示装置(映像投射手段)、
410…液晶ディスプレイ、420…シャッター(可動遮蔽部材)、
470…駆動モータ、500…ライトコントロールシステム(照明制御手段)、
510…照度センサ(照度検出手段)、600…インジケータ制御回路、
602…メインスイッチインジケータ、
604…投射インジケータ(第2表示手段)、
606…作動状態インジケータ(第1表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像した車両外部の赤外線映像を、運転者に対向する被投射面に対して投射する映像投射手段と、
前記映像投射手段を遮蔽し得る可動遮蔽部材とを備える視界補助装置。
【請求項2】
周辺環境の照度を検出する照度検出手段を備えており、
照度が明るいと検知された場合、前記可動遮蔽部材は前記映像投射手段を遮蔽する請求項1記載の視界補助装置。
【請求項3】
周辺環境の照度を検出する照度検出手段を備えており、
照度が暗いと検知された場合、前記可動遮蔽部材は前記映像投射手段を表出させる請求項1記載の視界補助装置。
【請求項4】
前記被投射面は、フロントガラスである請求項1〜3のいずれか一項記載の視界補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−168042(P2010−168042A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33514(P2010−33514)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【分割の表示】特願2001−232297(P2001−232297)の分割
【原出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】