視覚欠損の抑制のための薬物送達インプラント
眼で使用するためのインプラントは、埋め込み可能な構造と治療薬とを含む。治療薬は、眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、構造から眼の中へ送達可能である。多くの実施形態では、眼の屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含んでよい。治療薬は、眼の屈折特性に治療的効果をもたらすもしくは安定化させるような組成物を含み得る。治療薬は散瞳薬もしくは調節麻痺剤のうちの少なくとも一つを含んでよい。例えば治療薬は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つを含む調節麻痺剤を含んでよい。多くの実施形態では、自然組織表面に沿って構造を保持するために保持部材が構造に付属し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は35 U.S.C. §109(e)の下に2007年12月26日出願の米国仮特許出願No. 60/871,867の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一つ以上の治療薬を放出するインプラントを用いる、眼の視覚欠損の処置に向けられる。
【0003】
視力を低下させる病的状態は、衰弱性である可能性がある。ものを見る力を妨げる眼の視覚欠損は、ほとんど知覚できない程度から失明に至るまで、様々な重症度である可能性がある。眼の視覚欠損の一般的な病型の一つは、眼の屈折異常であり、典型的な屈折異常は、近視(nearsightedness もしくは myopia)、遠視(farsightedness または hyperopia)、および乱視を含む。眼の屈折異常は一般的に、眼の眼組織の物理的特性における欠陥により、網膜上に形成される像が理想的ではなくなることに由来する。眼は前部角膜表面と中間水晶体を含み、その両方が光を屈折して網膜上に像を形成する。角膜もしくは水晶体のいずれかにおける欠陥は、眼の屈折異常をもたらす可能性がある。角膜と水晶体の相互に対する位置、および網膜に対する位置もまた、像の画質と屈折異常に影響し得る。例えば、水晶体から網膜までの距離が長過ぎる場合、患者は近視を患う可能性がある。現在の眼研究と処置は、球面収差やコマ収差といった、さらなる眼の屈折異常の診断と修正にも向けられている。
【0004】
眼の屈折異常は、眼鏡、眼内レンズ、コンタクトレンズ、およびレーザー手術を含む処置によって修正され得る。これらの処置は一般的に有用であるが、各処置法には制限があり、万人に適切ではないかもしれない。例えば、眼鏡とコンタクトレンズは永久的な形態の修正ではなく、身につけている間だけ有用である。従って、多くの人々はこれらのレンズを身につけていない時には視力の著しい低下に悩まされる。眼内レンズは侵襲性で手術を要するため、眼内レンズの使用は白内障の処置に限定されることが多い。レーザー眼手術は有用であるが、この待機手術は時に合併症を引き起こす可能性があるため、多くの人々は眼鏡および/またはコンタクトレンズの制限と共に不自由な生活をすることを選ぶ。上記の制限に加えて、これらの治療は一般的に、欠陥が発達してしまった後に眼の視覚欠損を修正しようと試みる。
【0005】
屈折異常の進行を制御するための提案がなされている。例えば、近視の進行を制御するため、アトロピン点眼薬を小児に投与することが示されている。しかしながら、アトロピンを含む液滴の投与は、副作用をもたらす可能性があり、長期間にわたって定期的に液滴を投与することを含み得る。加えて、点眼薬の形式は小児への注入が難しい場合があり、服薬遵守が治療における重要な問題となってしまう。従って、点眼療法での服薬遵守が所望の臨床転帰の決定要因となり得るので、投薬忘れはさらなる疾患の進行につながる可能性がある。
【0006】
上記をふまえて、上記のような現在の治療の欠点の少なくともいくつかを排除する、眼の視覚欠損のための処置が必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
本発明は治療薬を放出するインプラントを用いる眼の視覚欠損の治療に向けられる。
【0008】
第一の態様では、本発明は眼で使用するためのインプラントを提供する。インプラントは埋め込み可能な構造と治療薬を含む。眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、治療薬は構造から眼の中へ送達可能である。
【0009】
多くの実施形態では、眼の屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含んでよい。治療薬は、眼の強膜、硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に送達される際に、眼の屈折特性に治療的効果をもたらすもしくは安定させるような組成物を含み得る。治療薬は散瞳薬もしくは調節麻痺剤のうちの少なくとも一つを含んでよい。例えば治療薬は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つを含む調節麻痺剤を含んでよい。
【0010】
多くの実施形態では、眼もしくはそれに隣接した自然組織表面に沿って構造を保持するために、保持部材が構造に付属し得る。保持部材は、涙点管(punctal duct)、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つの中もしくはそれに隣接して構造を保持するために形作られ得る。構造は、涙点管、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つに隣接して構造を保持するために形作られ得る。構造は少なくとも一つの表面を持ち、涙液もしくは涙液膜に少なくとも一つの表面を晒してインプラントが埋め込まれる際に、少なくとも一週間の期間を通して眼の涙液もしくは涙液膜に治療量の治療薬を放出し得る。例えば、構造は眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療薬を治療量で放出するように構成され得る。また、構造は、容器、マトリクス、溶液、表面コーティング、もしくは生体浸食性(bioerodable)材料のうちの少なくとも一つを含んでよい。構造は、薬物芯と、薬物芯を覆って配置される層とを含んでよく、層を通しての治療薬の放出を抑制できる。層は開口部を通して薬物を放出するために、その中に形成される開口部を含んでよい。構造は治療薬の粒子を含んでよく、ほぼ一定の放出速度をもたらすために、構造が埋め込まれる際に、粒子はそこから独立して治療薬を放出してもよい。
【0011】
特定の実施形態では、構造の少なくとも一部分は生体浸食性であってよく、治療薬は構造が浸食される間に放出され得る。
【0012】
多くの実施形態は、治療薬の副作用を避けるための中和剤を含んでよく、中和剤は抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含んでよい。例えば、抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含んでよい。具体的な実施形態では、抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0013】
具体的な実施形態では、治療インプラントは、構造、涙点プラグ、および治療薬を含む。涙点プラグは眼に隣接して構造を保持する。治療薬は、眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、構造から眼の中へ送達可能なアトロピンを含んでよい。眼の屈折特性は、近視、乱視、もしくは遠視のうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0014】
別の態様では、治療薬で眼の視覚欠損を処置する方法が提供される。方法は、眼もしくはその付近の組織の中に構造を埋め込むことを含む。治療薬は、眼の屈折特性に効果をもたらすおよび/または安定化させるように、埋め込まれた構造から放出される。
【0015】
いくつかの実施形態では、眼の屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含む。治療薬は、構造が眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療量で放出され得る。例えば、期間は約6から12ヶ月であり得る。治療薬はその期間にわたって持続的に放出され得る。
【0016】
多くの実施形態では、構造は、眼の強膜、涙点、もしくは結膜のうちの少なくとも一つの中に埋め込まれ得る。例えば、構造体は涙点に固定されてもよく、眼の涙液もしくは涙液膜の中に治療薬を放出してもよい。それに加えて、もしくは組み合わせて、構造は強膜に固定されてもよく、眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に治療薬を放出してもよい。構造は結膜に固定されてもよく、眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に治療薬を放出してもよい。構造体は結膜によって覆われてもよく、眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に治療薬を放出してもよい。例えば、構造は結膜と強膜の間に配置される。
【0017】
多くの実施形態では、治療薬は眼の調節をもたらす。具体的な実施形態では、治療薬は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つのような調節麻酔剤を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、治療薬の副作用に対抗するために、埋め込まれた構造および/または別の構造から中和剤が放出され得る。中和剤は、抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含んでよい。具体的な実施形態では、抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、治療薬は、治療薬放出の反応次数(kinetic order)に対応するプロファイルで放出され得、次数は約0から約1の範囲内であり得る。具体的な実施形態では、範囲は約0から約0.5、例えば約0から約0.25である。治療薬は、治療薬放出の反応次数に対応するプロファイルで放出されてよく、構造の挿入後少なくとも約1ヶ月の間、次数は約0から約0.5の範囲内であり、例えば次数は、構造の挿入後少なくとも約3ヶ月の間、その範囲内であり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、眼の視覚欠損を処置する方法は、眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬の副作用を防ぐために、抗緑内障薬および/または縮瞳薬のうちの少なくとも一つで眼を処置することを含む。小児および/または青年が処置されてもよく、眼の視覚欠損は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含んでよい。抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含んでよい。具体的な実施形態では、抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含んでよい。多くの実施形態では、抗緑内障薬は縮瞳作用を有する。縮瞳薬は、エコチオファート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、フルオロリン酸ジイソプロピル、カルバコール、メタコリン、ベタネコール、エピネフリン、ジピベフリン、ネオスチグミン、ヨウ化エコチオパート、もしくは臭化デメカリウムのうちの少なくとも一つを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1−1】本発明の実施形態に従う、インプラントとの使用に適した眼の解剖学的組織構造を示す。
【図1−2】本発明の実施形態に従う、インプラントとの使用に適した眼の解剖学的組織構造を示す。
【図1A】本発明の一実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置するための徐放インプラントの上面断面図を示す。
【図1B】図1Aの徐放インプラントの側面断面図を示す。
【図1C】本発明の一実施形態に従う、コイル保持部材を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図1D】本発明の一実施形態に従う、支柱を含む保持部材を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図1E】本発明の一実施形態に従う、ケージ保持部材を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図1F】本発明の一実施形態に従う、芯と鞘を含む徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2A】本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2B】本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2C】本発明の一実施形態に従う、縮小暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2D】本発明の一実施形態に従う、縮小暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2E】本発明の一実施形態に従う、キャスタレーションを持つ拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2F】本発明の一実施形態に従う、冗長表面領域を持つ芯を含む徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2G】本発明の一実施形態に従う、内部多孔質表面を持つチャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2H】本発明の一実施形態に従う、薬物移行を増加させる多孔質チャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2I】本発明の一実施形態に従う、凸面の暴露薬物芯表面を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2J】本発明の一実施形態に従う、複数の軟質突起、巻きひげ状部材、繊毛型部材がそこからのびだしている暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図2K】本発明の一実施形態に従う、凸型暴露面と保持部材を含む薬物芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図3A】本発明の一実施形態に従う、容器を持つ涙点プラグの斜視図を示す。
【図3B】本発明の一実施形態に従う、容器内における薬剤の好ましい構成と、その外部の涙液の流れとの接触とをあらわす略図を示す。
【図4】本発明の一実施形態に従う、例えば涙点プラグを形成するために使用される管などの管を包含する保持部材、および、浸透性層で囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造を示す。
【図5】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、薬物に浸透性の材料で囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造とを示す。
【図6】本発明の実施形態に従う、治療薬を放出するための材料(例えばコーティングおよび/または生分解性ポリマー)を持つ涙点プラグを示す。
【図7】本発明の一実施形態に従う、ヒトの眼の涙小管の中に薬剤を完全に挿入するためのインプラントを示す。
【図8A】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグの代表的寸法を持つ平面図を示す。
【図8B】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグの代表的寸法を持つ平面図を示す。
【図9】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材、中空インプラントを包含する保持部材、および保持部材に適用されるコーティングを包含する、治療薬を放出するための構造を示す。
【図10A】本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図10B】本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図10C】本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図11】本発明の実施形態に従う、徐放治療薬インプラントと、眼もしくはその付近におけるインプラント位置を示す。
【図12A】眼の視覚欠損を処置するための治療薬を放出する徐放インプラントと、治療薬の副作用に対抗するための追加の徐放インプラントとを含む、眼の視覚欠損を処置するための装置を示す。
【図12B】本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置するための治療薬を放出し、治療薬の副作用に対抗する中和剤を放出する、徐放インプラントを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1−1と1−2は、本発明の実施形態に従うインプラントでの処置に適した眼2の解剖学的組織構造を示す。眼2は角膜4と虹彩6を含む。強膜8は角膜4と虹彩6を囲み、白く見える。結膜9はほぼ透明で強膜8を覆って配置される。水晶体5は眼の内部に位置する。網膜7は眼2の眼底付近に位置し、通常は感光性である。網膜7は高視力と色覚をもたらす中心窩7Fを含む。角膜4と水晶体5は光を屈折させて中心窩7Fと網膜7上に像を形成する。角膜4と水晶体5の屈折力が中心窩7Fと網膜7上の像の形成に寄与する。角膜4、水晶体5、および中心窩7Fの相対位置も像の画質にとって重要である。例えば、眼2の角膜4から網膜7Fまでの眼軸長が大きい場合、眼2は近視となり得る。また、調節中は、眼の近位にある対象物に対する良好な近見視力をもたらすために、水晶体5が角膜4の方へ動く。
【0023】
図1−1に示される解剖学的組織構造は涙器系も含み、これは上涙小管10および下涙小管12(合わせて涙小管(canaliculae))と、鼻涙管もしくは鼻涙嚢14を含む。上涙小管および下涙小管は上涙点11および下涙点13(涙点開口部(punctal apertures)とも称する)に終結する。涙点開口部は内眼角17付近の涙嚢部および毛様体の接合部15にある眼瞼縁の内側端の小隆起上にある。涙点開口部は組織の結合リングによって囲まれた円形もしくはわずかに卵形の開口部である。涙点開口部11、13の各々は、水平に曲がって涙嚢14の入口にある他の涙小管とつながる前に、それぞれの涙小管の垂直部分10a、12aに入る。涙小管は管状で、涙小管の拡張を可能にする弾性組織によって囲まれた重層扁平上皮によって内側が覆われている。
【0024】
眼は光学系であるため、眼の光学要素の相互関係は眼の屈折異常(例えば近視、遠視、および/または乱視)の一因となり得る。ある症例では、眼の眼軸長が長過ぎる場合、眼は近視となり得る。また、角膜および/または水晶体が眼軸長に対して過剰な屈折力を持つ場合も、眼は近視となり得る。角膜および/または水晶体が眼の幅に対して不十分な屈折力を持つ場合、遠視が起こり得る(すなわち、眼の眼軸長が眼の幅に対して短過ぎる)。眼の内部における水晶体の位置もまた、眼の屈折疾患の一因となり得る。
【0025】
小児期および青年期における眼の成長と発達は、眼の光学特性をもたらし得る。そして多くの人々は、小児期および青年期に眼の屈折異常の進行性悪化を経験する。例えば、近視の学齢児童は、眼が発達し成長するにつれて近視の進行性悪化を経験し得る。この近視の進行は、小児期と青年期における眼の発達に関連するため、発達性の近視と称され得る。また、中等度から重度の近視は乱視に関連し得るため、近視の進行性悪化の処置は、乱視の進行性悪化もまた処置し得る。
【0026】
好ましい実施形態では、眼の屈折異常の進行は、屈折異常の悪化を軽減する治療薬を用いて処置される。治療薬は、近視の進行を軽減するために使用される、例えばアトロピンなどの調節麻痺剤であり得る。そのような処置は眼の屈折異常を完全には排除しないかもしれないが、早期発見と治療介入により、屈折異常の重症度は制限され得る。
【0027】
図1Aは、本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置する徐放インプラント100の上面断面図を示す。インプラント100は薬物芯110を含む。薬物芯110は治療薬を保持する埋め込み可能な構造である。薬物芯110は治療薬の粒子160を含むマトリクス170を含む。粒子160は、濃縮された形の治療薬、例えば結晶形などの固体状および/または油状などの液体状の治療薬をしばしば含み、治療薬は時間と共に薬物芯110のマトリクス170に溶解し得る。マトリクス170はシリコンマトリクスなどを含み得る。
【0028】
薬物芯110は鞘体120によって囲まれる。鞘体120は治療薬に対してほぼ不浸透性であってよく、鞘体120で覆われていない薬物芯110の末端の暴露面からしばしば治療薬が放出されるようになっている。保持部材130は薬物芯110と鞘体120に結合する。保持部材130は、例えば上述の涙小管の涙点などの中空組織構造にインプラントを保持するために形作られる。
【0029】
閉塞部材140は保持部材130に接しておよびその周囲に配置される。閉塞部材140は涙液に対し不浸透性で、中空組織構造を閉塞し、より良性な組織の係合面を提供することによって保持部材130から組織構造の組織を保護する役目も果たす。鞘体120は、鞘体120と薬物芯110を保持するように保持部材130に接続する鞘体部分150を含む。鞘体部分150は、鞘体120と薬物芯110の運動を制限する止め具としても機能する。
【0030】
図1Bは図1Aの徐放インプラントの側面断面図を示す。薬物芯110は円筒形で、円形の断面で示される。鞘体120は薬物芯110に接して配置される環状部分を含む。保持部材130は複数の縦支柱131を含む。縦支柱131は保持部材の末端付近でつながれる。縦支柱を示してあるが、円周支柱もまた使用され得る。閉塞部材140は保持部材130の縦支柱131によって支持され、且つそれを覆って配置され、半径方向に拡張可能な膜などを含んでもよい。
【0031】
薬物芯は治療薬の徐放をもたらす材料と治療薬を含む。例えばアトロピンなどの治療薬は薬物芯から標的組織(例えば眼の毛様体筋)に移行する。治療薬がマトリクスに溶解して薬物芯110の表面から放出可能である際に、治療薬の放出の持続期間にわたって放出速度が“ゼロ次”になるように、治療薬は随意にマトリクスにわずかしか溶けないものであってよい。治療薬は芯の暴露面から涙液もしくは涙液膜に拡散するので、芯から涙液もしくは涙液膜への移行速度は、マトリクスに溶解する治療薬の濃度に関係する。いくつかの実施形態では、薬物芯に溶解する治療薬の濃度は、治療薬の所望の放出速度をもたらすように制御され得る。芯の中に含まれる治療薬は、液体、固体、固体ゲル、固体単結晶、固体非晶質、固体粒子、および/または溶存態の治療薬を含み得る。いくつかの実施形態では、薬物芯は治療薬を含むシリコンマトリクスを含む。治療薬の例は、シリコンマトリクスに分散される固体アトロピン粒子を含む。
【0032】
薬物芯は治療薬の徐放をもたらすことができる任意の生体適合性材料から作られ得る。薬物芯については、ほぼ非生分解性のシリコンマトリクスと、溶解する薬物の粒子がその中に存在するマトリクスを含む一実施形態に関して上述されるが、薬物芯は例えば生分解性マトリクス、多孔質薬物芯、液体薬物芯、および固体薬物芯など、治療薬の徐放をもたらす任意の構造を含み得る。構造は、眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療量の治療薬を放出するように構成され得る。治療薬を含むマトリクスは、生分解性ポリマーもしくは非生分解性ポリマーのいずれからも形成され得る。生分解性ポリマーの例は、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(L-グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリL-ラクチド、ポリD-ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸、ポリ乳酸-ポリエチレンオキサイド共重合体、改質セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリアンヒドライド(polyanhydride)、ポリリン酸エステル、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、コラーゲン基質およびそれらの組み合わせを含んでよい。本発明の装置は完全にもしくは部分的に生分解性もしくは非生分解性であってもよい。非生分解性材料の例は、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、アクリレート、ポリエチレン、ポリオレフィンを含むが限定はされない、様々な市販の生体適合性ポリマーであり、超高分子量ポリエチレン、発泡ポリテトラフロロエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、層状コラーゲン(sheathed collagen)を含む。いくつかの実施形態では、薬物芯は生分解性もしくは非生分解性のいずれかのヒドロゲルポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、治療薬は、MinnesotaはEden PrairieのSurmodicsおよびCanadaはBritish ColumbiaのAngiotech Pharmaceuticalsなどから市販されているものなど、コーティングとして使用される薬剤溶出物質の中に含まれ得る。
【0033】
治療薬は、例えば眼の光学特性に効果をもたらす薬剤など、任意の物質を含み得る。眼の光学特性に効果をもたらすために適切な薬剤は、例えばアトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、および/またはトロピカミドなどの調節麻痺剤を含んでよい。瞳孔拡張および/または眼の他の光学特性をもたらすために他の薬剤が使用されてもよく、ネオスチグミン、フェントラミン、ヨウ化ホスホリン、およびピロカルピンを含む。エコチオファート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、フルオロリン酸ジイソプロピル、カルバコール、メタコリン、ベタネコール、エピネフリン、ジピベフリン、ネオスチグミン、ヨウ化エコチオパート、および臭化デメカリウムを含む、縮瞳薬などの追加薬剤が使用され得る。他の適切な治療薬は、ヒドロキシアンフェタミン、エフェドリン、コカイン、トロピカミド、フェニレフリン、シクロペントラート、オキシフェノニウム、およびオイカトロピンなどの散瞳薬を含む。加えて、ピレンゼピンなどの抗コリン作用薬が利用されてもよい。適用可能な治療薬の例は、米国特許出願20060188576および20030096831に見られ、その全容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0034】
眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬に加えて、治療薬の起こり得る副作用に対抗するために、追加の治療薬が提供され得る。追加の中和性治療薬(群)は、眼の視覚欠損を処置する治療薬を放出する芯内に含まれてもよく、もしくは追加の中和性治療薬(群)を個別に放出するために追加の薬物芯が提供されてもよい。
【0035】
調節麻痺治療薬の起こり得る副作用の一つは瞳孔拡張であり、これは羞明につながる可能性がある。従って、いくつかの実施形態では、調節麻痺剤によって生じる瞳孔拡張に対抗するために、縮瞳治療薬が眼の中に放出される。
【0036】
調節麻痺治療薬の別の起こり得る副作用は、瞳孔の拡張に関連すると思われる緑内障である。従って、いくつかの実施形態では、眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬の、起こり得る緑内障誘導性副作用に対抗するために、抗緑内障治療薬(群)が放出され得る。適切な抗緑内障治療薬は以下を含む。アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリンなどの交感神経様作用薬、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピンなどの副交感神経様作用薬、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害薬、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロールなどのβ遮断薬、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストンなどのプロスタグランジンアナログ、およびダピプラゾール、グアネチジンなどの他の薬剤。好ましい実施形態では、小児の発達性近視を処置するための治療薬としてアトロピンが放出され、抗緑内障処置としてビマトプロストおよび/またはラタノプロストが放出される。
【0037】
一部の治療薬は、眼に対して複数種の影響を及ぼすことに注意すべきである。例えば、抗緑内障治療薬は、縮瞳をも引き起こす可能性がある。従っていくつかの実施形態では、眼の視覚欠損を修正するために放出される治療薬の複数種の副作用に対抗するために、さらなる治療薬が追加され得る。
【0038】
インプラント100が組織の中もしくは眼の付近に埋め込まれる際に、所望の処置反応を提供するため、治療薬は治療レベルで放出される。例えば、近視を処置するためにアトロピンが薬剤として使用される場合、アトロピンは最低有効量を送達する治療速度で薬物芯から放出される。薬剤は、例えばゼロ次速度過程に対応する速度など、一定速度で放出されることが好ましいが、薬剤は例えば一次など、他の反応次数に対応する速度で放出されてもよい。多くの実施形態では、反応次数は薬剤が放出されるにつれてゼロ次から一次へと変化する。従って、治療薬は約0から約1へと変化する反応次数の範囲に対応するプロファイルで放出される。理想的には、治療薬の均一な送達を提供するために、薬物芯は治療薬が放出される速度が著しく変化する前に除去される。一定速度の送達が望まれるため、反応次数が完全に一次に移行する前に薬物芯を除去および/または交換することが望まれ得る。他の実施形態では、一次もしくは高次の放出速度は、治療薬の放出プロファイルが安全かつ有効な範囲内にとどまる限り、処置の一部もしくは全ての最中において望ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、薬物芯は1週間から5年の期間にわたって、より具体的には3〜24ヶ月の範囲内で、有効速度で放出をなし得る。
【0039】
治療薬の放出速度は、薬物芯に溶解する治療薬の濃度に関係し得る。多くの実施形態では、薬物芯は、薬物芯中で治療薬の所望の溶解度をもたらすように選択される、非治療薬を含む。薬物芯の非治療薬は上述のポリマーと添加剤を含み得る。芯のポリマーは、マトリクス中で治療薬の所望の溶解度をもたらすように選択され得る。例えば、芯は親水性の治療薬の溶解度を促進し得るヒドロゲルを含み得る。いくつかの実施形態では、マトリクス中での治療薬の放出反応速度を調節するために、官能基をポリマーに加えてもよい。例えば、官能基をシリコンポリマーに結合させてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、薬物芯中での治療薬の溶解度を増加もしくは減少させることによって治療薬の濃度を制御するために、添加物が使用されてもよい。溶解度は、マトリクスに対する溶存態の治療薬の溶解度を増加および/または減少させる適切な分子および/または物質を提供することによって制御され得る。溶存態の治療薬の溶解度は、マトリクスと治療薬の疎水性および/または親水性の性質に関連し得る。放出反応速度を調節するために、例えば界面活性剤、塩および親水性ポリマーをマトリクスに加えてもよい。加えて、マトリクスの放出反応速度を調節するために、油および疎水性の分子をマトリクスに加えてもよい。
【0041】
マトリクスに溶解する治療薬の濃度に基づいて移行速度を制御する代わりに、もしくはそれに加えて、薬物芯の表面積も、芯から標的部位への所望の薬物移行速度を得るために制御され得る。例えば、芯の暴露表面積が大きければ、薬物芯から標的部位への治療薬の移行速度は増加し、薬物芯の暴露表面積が小さければ、薬物芯から標的部位への治療薬の移行速度は減少する。薬物芯の暴露表面積はあらゆる方法で増加され得る。例えば、暴露面を蛇行性もしくは多孔性にすることによって、芯の利用可能な表面積が増加され得る。
【0042】
鞘体は薬物芯からの治療薬の移行を制御するために適切な形状と材料から構成される。鞘体は芯を格納し、芯に対してぴったりと適合し得る。治療薬の移行速度が、鞘体によって覆われない薬物芯の暴露表面積によって十分に制御され得るように、鞘体は治療薬に対してほぼ不浸透性の材料で作られる。典型的には、鞘体を通る治療薬の移行は、薬物芯の暴露面を通る治療薬の移行の約1/10以下となり得、しばしば1/100以下となることがある。言い換えれば、鞘体を通る治療薬の移行は、薬物芯の暴露面を通る治療薬の移行よりも、少なくとも約一桁小さい。適切な鞘体材料は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(以下“PET”)を含む。鞘体は、芯に隣接した鞘表面から、芯から離れた反対の鞘表面までと規定される、約0.00025"から約0.0015"の厚さを持つ。芯全体にのびる鞘の総直径は、約0.2 mmから約1.2 mmの範囲である。芯は鞘材料の中に芯を浸漬被覆することによって形成され得る。あるいは鞘体は、液体として鞘の中に導入される、もしくは鞘体管の中にスライドされる管および芯であってもよい。
【0043】
鞘体はインプラントの臨床的な使用を容易にする追加の特徴を備え得る。例えば鞘体は、保持部材と鞘体が患者に埋め込まれたままで交換可能な薬物芯を交換式に受容してもよい。鞘体はしばしば上述のように保持部材に堅く取り付けられ、保持部材が鞘体を保持しながら芯を交換することができる。例えば鞘体は、圧迫される際に鞘体に力を加え、鞘体から芯を押し出す外部の突起を備えてもよい。その後別の薬物芯が鞘体に配置され得る。
【0044】
保持部材は、インプラントが所望の組織位置(例えば涙点もしくは涙小管)に容易に配置され得るようなサイズと形状の適切な材料から構成される。保持部材は機械的に配置可能で、通常は所望の断面形状に拡張し、例えば保持部材はNitinolTMなどの超弾性形状記憶合金から構成される。所望の拡張をもたらすために、NitinolTMに加え他の材料、例えば弾性金属もしくはポリマー、塑性的に変形可能な金属もしくはポリマー、形状記憶ポリマーなど、例えばバネステンレス鋼、EligloyR、タンタル、チタン、コバルトクロムが使用されてもよい。保持部材は、所望の処置時間、および患者が医師によるフォローアップを必要とするかどうかによって、生分解性であっても非生分解性であってもよい。この拡張能力は、例えば0.3 mmから1.2 mmの範囲の涙小管など、様々なサイズの中空組織構造にインプラントが適合することを可能にする(すなわちフリーサイズ)。直径0.3から1.2 mmの涙小管に適合するようにただ一つの保持部材が作られ得るが、必要に応じてこの範囲に適合するように、複数の代替的に選択可能な保持部材(例えば0.3から0.9 mmの涙小管用の第一の保持部材と、0.9から1.2 mmの涙小管用の第二の保持部材)が使用されてもよい。保持部材は、保持部材が結合する解剖学的構造に適切な長さを持ち、例えば涙小管の涙点付近に配置される保持部材は約3 mm以下の長さである。
【0045】
鞘体と薬物芯は上述のように保持部材の一端に取り付けられるが、多くの実施形態では保持部材の他方の末端は薬物芯と鞘体に取り付けられず、保持部材が拡張する間、鞘体と薬物芯の上をスライドし得るようになっている。保持部材が所望の断面幅をとるように幅を拡張させるにつれ、通常は保持部材の長さが収縮するので、この一端でのスライド能力は好ましい。加えて、装置の薬物芯は、鞘体を適所に保ったまま交換可能であり得る。あるいは、治療薬を装置に補給するため、薬物芯の交換に備えるべく、保持部材内で鞘体が交換可能であってもよい。
【0046】
閉塞部材は、インプラントが中空組織構造を通る流体の流れ(例えば涙小管を通る涙液)を少なくとも部分的に阻止、さらに遮断し得るようなサイズと形状の適切な材料から構成される。示される閉塞材料は、保持部材と共に拡張および収縮が可能な、例えばシリコンなどの生体適合性材料の薄壁膜である。閉塞部材は、保持部材の末端の上をスライドされ、上述のように保持部材の一端に固定される、材料の独立した薄管として形成される。あるいは閉塞部材は、例えばシリコンポリマーなどの生体適合性ポリマーに保持部材を浸漬被覆することによって形成され得る。閉塞部材の厚さは約0.03 mmから約0.15 mmの範囲であってよく、約0.05 mmから0.1 mmであることが多い。
【0047】
図1Cは、本発明の一実施形態に従う、コイル保持部材132を持つ徐放インプラント102の斜視図を示す。保持部材132はコイルを含み、薬物芯112を保持する。薬物芯112は部分的に覆われる。鞘体は薬物芯112の第一末端を覆う第一部材122Aと、薬物芯の第二末端を覆う第二部材122Bを含む。閉塞部材は保持部材を覆って配置され得るか、もしくは、保持部材が上述のように浸漬被覆され得る。
【0048】
図1Dは、本発明の一実施形態に従う、支柱を含む保持部材134を持つ徐放インプラント104の斜視図を示す。保持部材134は縦支柱を含み、薬物芯114を保持する。薬物芯114はその大部分を鞘体124で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体124は上述の通り薬物芯の大部分を覆って環状になっている。閉塞部材は保持部材を覆って配置され得るか、もしくは保持部材は上述の通り浸漬被覆され得る。
【0049】
図1Eは、本発明の一実施形態に従う、ケージ保持部材136を持つ徐放インプラント106の斜視図を示す。保持部材136は複数の連結した金属鎖(網目もしくは格子など、またはらせん構造)を含み、薬物芯116を保持する。薬物芯116はその大部分を鞘体126で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体126は上述の通り薬物芯の大部分を覆って環状になっている。閉塞部材は保持部材を覆って配置され得るか、もしくは保持部材は上述の通り浸漬被覆され得る。
【0050】
図1Fは、本発明の一実施形態に従う、芯と鞘を含む徐放インプラントの斜視図を示す。薬物芯118はその大部分を鞘体128で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体128は上述の通り薬物芯の大部分を覆って環状になっている。治療薬の放出速度は、暴露される薬物芯の表面積と、薬物芯118内に含まれる材料によって制御される。そのようなインプラントは眼組織の中に埋め込まれ、例えば図1Fに示すように眼の結膜組織層9の下か強膜組織層8の上のいずれか、あるいは強膜組織を貫通しないように強膜組織層内に部分的にのみ埋め込まれ得る。薬物芯118は本明細書に記載の保持部材と閉塞部材のいずれとも併用可能であることに注目すべきである。一実施形態では、薬物芯は強膜8と結膜9の間に鞘体128無しで埋め込まれる。鞘体無しのこの実施形態では、例えば本明細書に記載の通り薬物芯マトリクス中に溶解したアトロピンの濃度を減少させることにより、薬物芯の増加した暴露面を補うように薬物芯の物理的特性が調整され得る。
【0051】
本明細書に記載の芯と鞘体は、いくつかの方法で様々な組織に埋め込まれ得る。本明細書に記載の芯と鞘の多く、特に図2Aから2Jを参照して記載される構造は、涙点プラグとして単独で埋め込まれ得る。あるいは、本明細書に記載の芯と鞘の多くは、本明細書に記載の保持部材と閉塞部材と共に埋め込まれるように、薬物芯、鞘体、および/または同類のものを含み得る。
【0052】
図2Aは、本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラント200の断面図を示す。薬物芯210は鞘体220で覆われる。鞘体220は開口部220Aを含む。開口部220は薬物芯210の最大断面直径に近い直径を持つ。薬物芯210は、活性表面とも称する暴露面210Eを含む。暴露面210Eは、環状面210A、柱面210B、端面210Cという三つの表面を含む。環状面210Aは芯210の最大断面直径に近い外径と、柱面210Bの外径に近い内径を持つ。端面210Cは柱面210Bの直径に一致する直径を持つ。暴露面210Eの表面積は、環状面210A、柱面210B、端面210Cの面積の合計である。表面積は芯210の軸に沿って縦(長手)方向にのびる柱面210Bの表面積の大きさによって増加し得る。
【0053】
図2Bは、本発明の一実施形態に従う拡大暴露表面領域212Aを含む芯212を持つ徐放インプラント202の断面図を示す。鞘体222は芯212を覆って広がる。治療薬は上述の通り芯から放出され得る。暴露表面領域212Aはほぼ円錐形で、楕円形もしくは球形であってもよく、薬物芯212の暴露表面積を増加させるように鞘体から外側に広がる。
【0054】
図2Cと2Dは、本発明の一実施形態に従う、縮小暴露表面領域214Aを含む薬物芯214を持つ徐放インプラント204の斜視図と断面図をそれぞれ示す。薬物芯214は鞘体224内に封入される。鞘体22は、薬物芯214が貫通する開口部を画定する環状端部224Aを含む。薬物芯214は治療薬を放出する暴露面214Aを含む。暴露面214Aは、例えば薬物芯214を横切る最大直径などの最大寸法未満の直径214Dを有する。
【0055】
図2Eは、本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域216Aとそこからのびるキャスタレーション(castellation)を含む薬物芯216を持つ徐放インプラント206の断面図を示す。薬物芯216はくぼみ216Iを含む。キャスタレーションはくぼみからのびる複数の指部(finger)216Fを含む。芯216は鞘体226で覆われる。鞘体226は一端で開いており、薬物芯216上に暴露面216Aをもたらす。くぼみ216Iは逆円錐型の形状をとる。複数の指部216Fはくぼみ216Iから外側にのび、暴露面216Aの表面積の増加をもたらす。鞘体226もまた指部を含み、芯216に一致するキャスタレーションパターンを有する。
【0056】
図2Fは、本発明の一実施形態に従う、襞を持つ芯を含む徐放インプラント250の斜視図を示す。インプラント250は芯260と鞘体270を含む。芯260は、周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする暴露面260Aを芯の末端に持つ。芯260は襞260Fも含む。襞260Fは、インプラントの体積内で送達される薬物を含む薬物芯の表面積を増加させる。この暴露表面積の増加により、襞260Fは芯260から涙液もしくは涙液膜および標的処置部位への治療薬の移行を増加させる。襞260Fはチャネル260Cが芯260内に形成されるように形成される。チャネル260Cは芯の末端と暴露面260A中の開口部とに接続し、治療薬の移行をもたらす。従って、芯260の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面260A、ならびに、暴露面260Aおよび涙液もしくは涙液膜とのチャネル260Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される襞260Fの表面を含む。
【0057】
図2Gは、本発明の一実施形態に従う、中心軸からのびる一連の突起および/または空洞を持つチャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。インプラント252は芯262と鞘体272を含む。芯262はその末端に、周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする暴露面262Aを持つ。芯262はチャネル262Cも含む。チャネル262Cは、芯に対してチャネルの内側に形成される多孔質内面262Pでチャネルの表面積を増加させる。周囲の涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積は、チャネル262Cに暴露される芯262の内側を含み得る。この暴露表面積の増加により、芯262から涙液もしくは涙液膜および標的処置部位への治療薬の移行が増加し得る。従って、芯262の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面260A、ならびに、暴露面262Aおよび涙液もしくは涙液膜とのチャネル262Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される多孔質内面262Pを含み得る。
【0058】
図2Hは、本発明の一実施形態に従う、薬物移行を増加させるための多孔質チャネルを含む芯264を持つ徐放インプラント254の斜視図を示す。インプラント254は芯264と鞘体274を含む。暴露面264Aは芯264の末端に位置するが、暴露面は他の位置に位置付けられてもよい。暴露面264Aは周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする。芯264は多孔質チャネル264Cも含む。多孔質チャネル264Cは暴露面264にまでのびる。多孔質チャネル264Cは十分に大きいので、涙液もしくは涙液膜は多孔質チャネルに入ることができ、それによって涙液もしくは涙液膜に接触する芯264の表面積を増加させる。周囲の涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積は、チャネル264Cの内面を含む。この暴露表面積の増加により、多孔質チャネル264Cは芯264から涙液もしくは涙液膜および標的処置部位への治療薬の移行を増加させる。従って、芯264の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面264A、ならびに、暴露面264Aおよび涙液もしくは涙液膜との多孔質チャネル262Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される内面を含む。
【0059】
図2Iは、本発明の一実施形態に従う、凸型暴露面266Aを含む薬物芯266を持つ徐放インプラント256の斜視図を示す。薬物芯266は、凸型暴露面266Aを画定するように少なくとも部分的に薬物芯266を覆って広がる鞘体276で部分的に覆われる。鞘体276は軸部分276Sを含む。凸型暴露面266Aは鞘体の上に増加した暴露表面積をもたらす。凸型暴露面266Aの断面積は、鞘体276の軸部分276Sの断面積よりも大きい。大きな断面積に加えて、凸型暴露面266Aは芯から外側にのびる凸形状のために、より大きな表面積を持つ。鞘体276は、鞘体中で薬物芯266を支持し、鞘体276中で薬物芯266を適所に保つように薬物芯を支える、複数の指部276Fを含む。指部276Fは、指部の間で芯から涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にするように間隔があいている。突起276Pが鞘体276において外側に広がる。突起276Pは鞘体276から薬物芯266を押し出すように内側へ押され得る。薬物芯266は適当な時間の後、例えば薬物芯266が治療薬のほとんどを放出した後、別の薬物芯と交換され得る。
【0060】
図2Jは、本発明の一実施形態に従う、複数の軟質ブラシ状部材268Fを持つ暴露表面領域を含む芯268を持つ徐放インプラント258の側面図を示す。薬物芯268は、暴露面268Aを画定するように少なくとも部分的に薬物芯268を覆って広がる鞘体278で部分的に覆われる。鞘体278は軸部分278Sを含む。軟質ブラシ状部材268Fは薬物芯268から外側にのび、薬物芯268に増加した暴露表面積をもたらす。軟質ブラシ状部材268Fはまた、しなやかで弾力性があり、これらの部材が周辺組織に刺激をもたらさないように容易に偏向させられる。薬物芯268は上述の通り多くの材料で作られ得るが、軟質ブラシ状部材268Fを含む薬物芯268の製造に適切な材料はシリコンである。薬物芯268の暴露面268Aは、暴露面268Aの少なくとも一部分が凹面になるようにくぼみ268Iもまた含む。
【0061】
図2Kは、本発明の一実施形態に従う、凸型暴露面269Aを含む薬物芯269を持つ徐放インプラント259の側面図を示す。薬物芯269は、凸型暴露面269Aを画定するように少なくとも部分的に薬物芯269を覆って広がる鞘体279で部分的に覆われる。鞘体279は軸部分279Sを含む。凸型暴露面269は鞘体の上に増加した暴露表面積をもたらす。凸型暴露面269Aの断面積は、鞘体279の軸部分279Sの断面積よりも大きい。大きな断面積に加えて、凸型暴露面269Aは、芯において外側へ広がる凸形状のために、より大きな表面積を持つ。ワイヤーのコイルを含む保持部材289が鞘体279に取り付けられる。保持部材289を生体適合性にするために、保持部材289は浸漬被覆され得る。
【0062】
図3Aから図3Cは、本発明の実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、容器を包含する治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、2001年3月6日にCohanの名義で発行された米国特許No. 6,196,993、表題“Ophtalmic insert and method for sustained release of medication to the eye”に記載されており、この全開示は引用により本明細書に組み込まれる。容器は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなど、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。容器からの薬物の移行は拡散によって起こり得るが、他の移行機構も可能である。
【0063】
図3Aは、本発明の一実施形態に従う、容器を持つ涙点プラグの斜視図を示す。長期間にわたって持続的に眼の表面上に治療薬を貯蔵および放出するように設計された容器334を持つ、眼科用挿入物(ophthalmic insert)332が涙点閉塞器(occluder)の形で示される。眼科用挿入物332は、容器334を満たす治療薬に対して不浸透性の、シリコンなどの可撓性材料から成形されるかもしくは他の方法で形成され得る。容器334は、挿入物332の本体部分336の内側を通るチャネルによって形成される。本体部分336は可撓性であることが好ましく、治療薬で充填されるときに縦(長手)方向の拡張機能をもたらすために、さらに蛇腹型であってもよい。
【0064】
さらに図3Aを参照すると、カラレット(collarette)340が涙点の外側に挿入物332を固定し、容器334と流体連通する孔342を備えている。特定の治療薬の送達を制御するために、孔342の形状は、既に引用により本明細書に組み込まれている米国特許No. 6,196,993に説明されているようにカスタマイズされてもよい。孔342を通して、治療薬は容器334から涙湖の涙液中へ分散し、そこで治療薬は眼薬がするように涙液と混合し、意図した薬理作用を及ぼすために眼に浸透する。必要ではないが、図示のように、挿入物332を小管内に固定するのを助けるために、また、容器334にさらなる体積を提供するために、拡大した球状(bulb)部分238が提供されてもよい。
【0065】
図3Bは、本発明の一実施形態に従う、容器内における薬剤の好ましい構成と、その外部の涙液の流れとの接触とをあらわす略図を示す。容器334は、固体もしくは液体のいずれかの状態で、最も濃縮した形の薬剤を含む領域(a)を含む。薬剤は領域(a)から、薬剤の飽和溶液を含む、孔342に最も近い隣接領域(b)へ拡散する。律速孔342は、挿入物332の作成時に所望の寸法で形成され得る。もしくは孔342は、容器334に適合する適切な形状の開口キャップを挿入物332に据え付けることによって、適切なサイズにされ得る。別の実施形態では、孔342は、カラレット340の上に置かれた、薬剤の移動に対して透過的である無孔材料の形で提供され得る。
【0066】
図4は、本発明の一実施形態に従う、例えば涙点プラグを形成するために使用される管などの管を包含する保持部材、および、浸透性層で少なくとも部分的に囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造を示す。本発明との組み合わせに適切な構造は、2004年10月21日にAshtonの名義で公開された米国特許出願公開No. 2004/0208910、表題“Sustained release device and method for ocular delivery of adrenergic agents”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。容器は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなど、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。保持部材は、眼の付近の目的位置に薬物容器を保持するために使用される、'910公報に記載の構造のいずれかを含む。
【0067】
図4は、容器と浸透性プラグを持つ徐放薬物送達装置の拡大断面図を概略的に図示する。装置300は、浸透性外層310、ほぼ不浸透性の内管312、容器314、ほぼ不浸透性のキャップ316、および浸透性プラグ318を含む。ポート320は、ポート224とプラグ216に関して上述したように、装置の外部でプラグ318と連通する。内管312はとキャップ316は別々に形成されて一緒に組み立てられ得るか、もしくは内管とキャップは単一の完全な一体型部材として形成され得る。浸透性外層310を提供することにより、容器もしくは薬物芯314内の治療薬(群)が、ポート320に加えて外層を貫流することが可能になるので、全体の送達速度を上昇させるのに役立つ。外層310が形成される材料は、基底構造、すなわちキャップ316、管312、およびプラグ318に付着する能力、および構造全体を一つに保持する能力によって具体的に選ばれ得る。随意に、容器314からの治療薬(群)の流速を増加するために、一つもしくは複数の穴322が内管312を通して提供され得る。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、薬物に浸透性の材料で囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、2006年1月26日にPrescottの名義で公開された米国特許出願公開No. 2004/0020253、表題“Implantable device having controlled release of medication and method of manufacturing the same”、2006年1月26日にPrescottの名義で公開された米国特許出願公開No. 2006/0020248、表題“Lacrimal insert having reservoir with controlled release of medication and method of manufacturing the same”に記載され、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。容器は、例えば眼の視覚欠損を処置するための薬剤など、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。
【0069】
図5は、涙点への挿入用の涙点プラグ510の形状の涙点挿入物を概略的に図示する。涙点プラグ510は、容器514、首部516、張り出し部518、および先端522に終結するテーパ部520を画定する本体512を含む。非多孔質頭部524が本体512の首部516の上に提供され、これが容器を取り囲む。薬剤526は容器内に提供される。本発明の一態様を踏まえて、本体512と頭部524は異なる材料で形成され、本体512は、薬剤に対して比較的不浸透性である、生体適合性で、好ましくは軟質で可撓性の第一の材料から形成され、頭部524は、薬剤に対して浸透性である、生体適合性で、好ましくは軟質で可撓性の第二の材料から形成される。
【0070】
図6は、本発明の実施形態に従う、治療薬を放出するための材料(例えばコーティングおよび/または生分解性ポリマー)を持つ涙点プラグを示す。本発明との使用に適した構造は、2006年2月9日にLazarの名義で国際公開No. WO2006/014434として公開されたPCT/US2005/023848、表題“TREATMENT MEDIUM DELIVERY DEVICE AND METHODS FOR DELIVERY OF SUCH TREATMENT MEDIUMS TO THE EYE USING SUCH A DELIVERY DEVICE”に記載されている。生分解性ポリマーは、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなどの処置媒体など、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。
【0071】
図6は、本発明の一実施形態に従う処置媒体送達装置600を示す。処置媒体送達装置600は、第一本体部分610と第二本体部分620を含む。第二本体部分620は一般的に、調剤される治療薬もしくは処置媒体を含むように構成され配置される。
【0072】
第一本体部分610は、眼の中に備わっている開口部、より具体的には眼に近接した身体の部分に、取り外し可能なように挿入および固定されるようなサイズをとり、構成され、配置される。より具体的には、第一本体部分610は、第一本体部分が開口部内に挿入される際に、例えばまぶたの瞬きや、何か眼の弛緩といった、通常の予期される身体機能の結果、落下したり外に出てしまうことがないように、開口部内に固定されるようなサイズをとり、構成され、配置される。具体的な実施形態例では、眼の中の開口部は、哺乳類の体では涙小管に流体結合する眼の涙点であり、処置媒体送達装置は、通常の眼機能の最中に涙点および涙小管の部分内に固定されたままになるように構成され、配置される。
【0073】
第一本体部分610は、例えば固体部材、中に内腔もしくは通路が画定された部材、第一本体部分の一部分を貫通する通路を持つ部材、第一本体部分内に位置する開放区画(open compartment)、ステントの構造に対応する本体構造など、あらゆる方法で構成可能である。ステントは、概して円筒形もしくは中にステントが挿入される開口部と通路に適合する形状を形成するように配置され得る、足場様(scaffold like)構造を提供する。第一本体部分610はまた、ステンレス鋼、ニチノール(ニッケル‐チタン)などの金属、および目的の用途に適した強度と材料特性を持つプラスチックを含む、当業者に既知の多くの生体適合性材料のうちのいずれからも構成される。第一本体部分610のそのような材料はまた、非毒性かつ非感作性であると特徴付けられることが好ましい。
【0074】
より具体的な実施形態では、第一本体部分は、第一本体部分610の開口部への挿入を容易にするように、ならびに、第一本体部分がその中に挿入される際に開口部の組織に対する深刻な外傷および/または損傷を最小化するように構成される、末端612を含む。具体的な実施形態例では、第一本体部分末端612は弓形および/または概して半球形である。第一本体部分末端612は、目的の機能および用途に適した末端を示すように構成され得る。例えば末端612は、第一末端部分610の機能と用途が、第一末端部分が身体開口部内に挿入される際に組織もしくは膜を貫通することを含む場合、貫通機能を持つように構成可能である。
【0075】
本発明の一実施形態では、第二本体部分620は、接着剤など、当業者に既知の多くの技術のいずれかを用いて、第一本体部分の第二末端614に適用、固定、付着、もしくは接着される、部材、装置(例えば溶離装置、徐放装置、カプセル化装置)もしくはコーティングを含む。そのような第二本体部分620は、一つ以上の処置媒体を運ぶように構成され、所定の条件下でそこから媒体が放出され得るように、その中に一つ以上の処置媒体を放出可能なように保持するように構成される、マトリクスもしくは媒体などの送達媒体(delivery vehicle)もしくは構造を提供する。そのように放出可能なように保持することは、送達媒体もしくは構造を含む構造内の処置媒体(群)のカプセル化を含むが限定はされない。第二本体部分620は、例えばポリマーなど、形成、硬化、もしくは他の方法で適切に処理されて、そうした形成、硬化、重合もしくは処理の結果として、第一本体部分の第二末端614に接着するようになっている、媒体もしくは材料を含み得ることもまた考慮される。第二本体部分についてのさらなる説明はWO2006/014434に記載されている。
【0076】
図7は、本発明の一実施形態に従う、眼の涙小管へ完全に挿入するための伸長部材を含む保持部材と、保持部材上のコーティングを包含する治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、1991年10月1日にHerrickの名義で発行された米国特許No. 5,053,030、表題“Intracanalicular implant for horizontal canalicular blockade treatment of the eye”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。治療薬は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなどの処置媒体といった薬剤を含み得る。
【0077】
図7は、本発明の一実施形態に従う、ヒトの眼の涙小管の中に薬剤を完全に挿入するためのインプラントを示す。インプラントImpは二つの部分から構成され、第二部分Mは、インプラントImpに薬剤を装填するための、インプラントImpの鼻部Nに取り付けられるように予め選択された構成を持つ。図示された部分Mの構成は、部分Impの鼻部末端に相補的であるように画定される一端を持ち、そこで担持されるようになっており、また、反対側に鈍頭鼻部を持つ。これらの薬剤は、眼への持続放出投与のため、涙小管内インプラントImpに装填され得る。この放出は、眼の反射運動の結果としてはたらき、例えば眼の筋肉にアトロピンを分布させるために使用され得る。
【0078】
図8Aと8Bは、本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、涙点プラグの頭部を包含する治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、1976年4月13日にFreemanの名義で発行された米国特許No. 3,949,750、表題“Punctum plug and method for treating keratoconjuctivitis sicca and other ophthalmic aliments using same”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。頭部は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなど、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。
【0079】
眼からの涙液および/または薬剤液の排出を防止もしくは減少させることが望まれる眼病の処置においては、上眼瞼および下眼瞼のいずれかもしくは両方における涙点開口部が、取り外し可能なプラグ部材820によって閉塞される。この二つの各実施形態は図8Aと8Bに示される。最初に図8Aの実施形態を参照すると、涙点プラグ820は、突出先端もしくはとげ(barb)部分822、先端よりもやや小さな直径の中間首部分もしくは腰部分824、および比較的大きな直径の平滑円盤状頭部826を持つ。図8Bのプラグの実施形態820'は、最初に記載した実施形態と概して同様の寸法であり、やや鈍頭な先端もしくはとげ部分822'、ほぼ同じ寸法の円筒形中間部分824'、および図8Aの実施形態の同等物よりもやや小さな直径のドーム型頭部826'を持つ。両実施形態の頭部826、826'は、必要であれば鉗子で掴むことに代わる方法として、後述するように、挿入のために操作される際にプラグ上に取り外し可能なグリップを提供するため、挿入器具の突出先端を受けるように構成される中心孔開口部828、828'を備えてもよい。
【0080】
本発明の特定の実施形態では、プラグ820、820'、特に頭部828、828'は、HEMA親水性ポリマーなど、薬剤に対して堅固な(medication-impregnable)多孔質材料であってもよく、もしくは、涙液によって浸出される際に、点眼薬を眼に貯蔵し、ゆっくりと投薬するため、毛細管などのように他の方法で構成されてもよい。
【0081】
一実施形態では、本明細書に記載の治療薬は、米国特許出願公開No. 2005/0197614(その全開示は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されているような涙点プラグに組み込まれる。涙点プラグを形成するためにゲルが使用され得る。ゲルは第一の直径から第二の直径に膨張し得、第二の直径は第一の直径よりも約50%大きい。ゲルは、例えば中で薬剤が均一に分散する微孔構造内に活性治療薬を封入するために使用され得、ゲルは治療薬を患者の中へゆっくりと溶出し得る。様々な治療薬が米国仮特許出願No. 60/550,132、表題“Punctum Plugs, Materials, And Devices”(その全開示は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されており、本明細書に記載のゲルおよび装置と組み合わされ得る。
【0082】
図9は、本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材、中空インプラントを包含する保持部材、および保持部材に適用されるコーティングを包含する、治療薬を放出するための構造を示す。本発明との組み合わせに適した構造は、2005年10月20日にOdrichの名義で公開された米国特許出願公開No. 2005/0232972、表題“Drug delivery via punctual plug”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に記載される。
【0083】
図9は、眼924の涙点開口部920への挿入用の軸912を持ち、開口部と連通する涙小管922に沿った、概して910と示された涙点プラグを示す。プラグ910は、開口部920に対して着座させるため、および眼924の表面上への涙液の流れに対して涙小管922を密封するための、軸912の外側端に接続された大きなストッパー構造914を持つ。例えばそれぞれインプラント910aと910bを持つ上涙小管922aと下涙小管922bなど、機能的に同様の部分を示すために、同じもしくは同様の数字が使用される。インプラント910aはほぼ円筒形の固体コラーゲンプラグであり、涙液の流れを遮断するために上涙点もしくは涙管920aの中に挿入されており、一方、下インプラント910bは、涙液を通すためにストローのように中空である。インプラント910bは、下涙点920bで固定化された、張り出し開口端912bを持つ、先細になった柄もしくは軸912aを含む。キノコ型の内側ストッパー914aは、涙管内でインプラントの位置をさらに設定するために、軸912aの反対端に形成される。図示のインプラントは任意の所望の組み合わせで使用され得る。例えば、インプラント910aが下涙小管内に配置されてもよく、インプラント910bが上涙小管内に配置されてもよい。あるいは、各タイプのインプラント(例えば910b)が両方の涙小管内に配置されてもよい。
【0084】
例えば軸の内側端において、またはストッパーの外側端上、または図9のインプラントの表面の一部もしくは全体にわたって、または他の方法で、一つ以上のバンド状のポリマー材料の中に、例えば薬物もしくは薬剤などの活性剤が適用される。周辺組織への排出のために充分な薬剤が存在し利用可能であるように、薬剤に対して吸収性のポリマーが好ましい。あるいは多孔質もしくは吸収性の材料が、活性剤で飽和され得るプラグもしくはインプラント全体を構成するために使用され得る。
【0085】
涙遮断涙点プラグと異なり、中空インプラントは非常に異なる薬物投与方法、方式、および構造を提供する。図9の中空インプラント910bは、活性剤が適用され得る、あるいは他の方法でインプラントの内面もしくは内側で利用可能である点で特に有用であり、涙を通すことによって、涙液の流れによって制御されるやり方で涙の流れに活性剤を投与するように独自に構造化されている。従って涙が薬剤のキャリアとしてはたらく。
【0086】
図10Aから10Cは、本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。図10Aに示すように、配置器具1010が涙点1000Aを通って涙小管1000に挿入される。徐放インプラント1020は配置器具1010の先端に組み込まれる。図10Bに示すように、配置器具1010の外側の鞘が引き抜かれて、徐放インプラント1020の保持部材1030を暴露する。図10Cに示すように、配置器具1010は除去され、徐放インプラント1020が涙小管1000に埋め込まれる。薬物芯1040は保持部1030に取り付けられ、涙小管内に保持される。外側の鞘体1050は薬物芯1040の少なくとも一部分を覆い、薬物芯1040は治療薬を涙小管1000の涙点1000A付近で涙液もしくは涙液膜1060に放出する。
【0087】
図11は、本発明の実施形態に従う、徐放治療薬インプラントと、眼1100もしくはその付近におけるインプラント位置を示す。徐放インプラントは、LacrisertR、強膜プラグ、強膜内ディスク、上強膜インプラント、注射用ロッド、黄斑インプラント、強膜内ディスク、VitrasertR、RetisertR、OcusertR、および/またはProsertRのインプラントで使用される構造の多くを含み得る。同様の構造は、Yasukawaらによる出版物“Expert Opinion on Drug Delivery”第三巻第二号、2006年3月1日、pp. 261-273(13)、Informa Healthcare出版に示される。徐放インプラント1100は、NJはWhitehouse StationのMerck & CO.から利用可能な、眼の下盲嚢(inferior cul-de-sac)への投与用のLacrisertTMインプラントの多くの構造を含んでもよい。徐放インプラント1120は、眼の強膜および/または硝子体液への投与用の強膜プラグインプラントの多くの構造を含んでもよい。強膜プラグおよび/またはびょう(tack)は、米国特許No. 5,466,233に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。徐放インプラント1130は、強膜への投与用の強膜ディスクインプラントの多くの構造を含んでもよい。強膜内ディスクは強膜組織層へ挿入され得る。徐放インプラント1140は、強膜の表面付近に配置され得る上強膜ディスクインプラントの多くの構造を含んでもよく、経強膜(trans-scleral)薬物送達システムを提供し得る。徐放インプラント1150は、眼房水、強膜、および/または涙管への注入用の注射用ロッドの多くの構造を含んでもよい。徐放インプラント1160は、眼の黄斑組織付近への埋め込み用の黄斑インプラントの多くの構造を含んでもよい。徐放インプラント1170は、VitrasertRおよび/またはRetisertRインプラントの多くの構造を含んでもよい。VitrasertRおよびRetisertRインプラントは、New YorkはRochesterのBausch and Lombの子会社であるChiron Ophthalmicsから市販されている。OcusertRインプラントはNew JerseyはNew BrunswickのJohnson & Johnsonの子会社であるAlzaから市販されている。ProsertRインプラントはSwitzerlandはBaselのNovartisから市販されている。
【0088】
図12Aは、眼の視覚欠損を処置するために治療薬を放出する徐放インプラントと、治療薬の副作用に対抗するための追加の徐放インプラントとを含む、眼の視覚欠損を処置するための装置1200を示す。装置1200は上記の通り治療薬を放出する徐放インプラント1210を含む。装置1200は治療薬の第一の副作用に対抗する中和剤を放出する徐放インプラント1220を含む。治療薬は一つよりも多くの副作用を持つかもしれないので、装置1200は治療薬の第二の副作用に対抗する徐放インプラント1230を含んでもよい。徐放インプラントは、上述の通り眼もしくはその付近の位置の多くに同時に配置され得る。好ましい実施形態では、徐放インプラント1210はアトロピンを放出し得る。アトロピンの副作用の一つは瞳孔拡張であり、これは羞明に関連し得る。徐放インプラント1220は、治療薬によって引き起こされる瞳孔の拡張に対抗するための中和剤として縮瞳薬を放出してもよい。別の考えられるアトロピンの副作用は緑内障であり、徐放インプラント1230は緑内障を防ぐための中和剤として抗緑内障薬を放出してもよい。
【0089】
図12Bは、本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置するための治療薬を放出し、治療薬の副作用に対抗する中和剤を放出する、徐放インプラント1250を示す。徐放インプラント1250は、鞘体1260と薬物芯1270とを含み得る。徐放インプラント1250は、上述の通り眼もしくはその付近の位置の多くに配置され得る。薬物芯1270は眼の視覚欠損を処置するための治療薬1280を含む。薬物芯1270は治療薬1280の副作用に対抗するための中和剤1282を含んでもよい。好ましい実施形態では、徐放インプラント1250はアトロピンを放出し得る。治療薬1282は、治療薬によって引き起こされる瞳孔の拡張に対抗する中和剤として縮瞳薬を含んでもよい。別の考えられるアトロピンの副作用は緑内障であり、治療薬1284は緑内障を防ぐための中和剤として抗緑内障薬を放出してもよい。治療薬、縮瞳薬、および抗緑内障薬は、徐放インプラント1250から一緒に放出されてもよい。
【0090】
本発明は上述の具体的な実施形態によって記載されているが、本発明の範囲と趣旨の内にある、容易になされ得る様々な修正と変更が当業者にはわかるだろう。従って、本発明は以降の請求項とその均等物の全範囲によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は35 U.S.C. §109(e)の下に2007年12月26日出願の米国仮特許出願No. 60/871,867の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一つ以上の治療薬を放出するインプラントを用いる、眼の視覚欠損の処置に向けられる。
【0003】
視力を低下させる病的状態は、衰弱性である可能性がある。ものを見る力を妨げる眼の視覚欠損は、ほとんど知覚できない程度から失明に至るまで、様々な重症度である可能性がある。眼の視覚欠損の一般的な病型の一つは、眼の屈折異常であり、典型的な屈折異常は、近視(nearsightedness もしくは myopia)、遠視(farsightedness または hyperopia)、および乱視を含む。眼の屈折異常は一般的に、眼の眼組織の物理的特性における欠陥により、網膜上に形成される像が理想的ではなくなることに由来する。眼は前部角膜表面と中間水晶体を含み、その両方が光を屈折して網膜上に像を形成する。角膜もしくは水晶体のいずれかにおける欠陥は、眼の屈折異常をもたらす可能性がある。角膜と水晶体の相互に対する位置、および網膜に対する位置もまた、像の画質と屈折異常に影響し得る。例えば、水晶体から網膜までの距離が長過ぎる場合、患者は近視を患う可能性がある。現在の眼研究と処置は、球面収差やコマ収差といった、さらなる眼の屈折異常の診断と修正にも向けられている。
【0004】
眼の屈折異常は、眼鏡、眼内レンズ、コンタクトレンズ、およびレーザー手術を含む処置によって修正され得る。これらの処置は一般的に有用であるが、各処置法には制限があり、万人に適切ではないかもしれない。例えば、眼鏡とコンタクトレンズは永久的な形態の修正ではなく、身につけている間だけ有用である。従って、多くの人々はこれらのレンズを身につけていない時には視力の著しい低下に悩まされる。眼内レンズは侵襲性で手術を要するため、眼内レンズの使用は白内障の処置に限定されることが多い。レーザー眼手術は有用であるが、この待機手術は時に合併症を引き起こす可能性があるため、多くの人々は眼鏡および/またはコンタクトレンズの制限と共に不自由な生活をすることを選ぶ。上記の制限に加えて、これらの治療は一般的に、欠陥が発達してしまった後に眼の視覚欠損を修正しようと試みる。
【0005】
屈折異常の進行を制御するための提案がなされている。例えば、近視の進行を制御するため、アトロピン点眼薬を小児に投与することが示されている。しかしながら、アトロピンを含む液滴の投与は、副作用をもたらす可能性があり、長期間にわたって定期的に液滴を投与することを含み得る。加えて、点眼薬の形式は小児への注入が難しい場合があり、服薬遵守が治療における重要な問題となってしまう。従って、点眼療法での服薬遵守が所望の臨床転帰の決定要因となり得るので、投薬忘れはさらなる疾患の進行につながる可能性がある。
【0006】
上記をふまえて、上記のような現在の治療の欠点の少なくともいくつかを排除する、眼の視覚欠損のための処置が必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
本発明は治療薬を放出するインプラントを用いる眼の視覚欠損の治療に向けられる。
【0008】
第一の態様では、本発明は眼で使用するためのインプラントを提供する。インプラントは埋め込み可能な構造と治療薬を含む。眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、治療薬は構造から眼の中へ送達可能である。
【0009】
多くの実施形態では、眼の屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含んでよい。治療薬は、眼の強膜、硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に送達される際に、眼の屈折特性に治療的効果をもたらすもしくは安定させるような組成物を含み得る。治療薬は散瞳薬もしくは調節麻痺剤のうちの少なくとも一つを含んでよい。例えば治療薬は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つを含む調節麻痺剤を含んでよい。
【0010】
多くの実施形態では、眼もしくはそれに隣接した自然組織表面に沿って構造を保持するために、保持部材が構造に付属し得る。保持部材は、涙点管(punctal duct)、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つの中もしくはそれに隣接して構造を保持するために形作られ得る。構造は、涙点管、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つに隣接して構造を保持するために形作られ得る。構造は少なくとも一つの表面を持ち、涙液もしくは涙液膜に少なくとも一つの表面を晒してインプラントが埋め込まれる際に、少なくとも一週間の期間を通して眼の涙液もしくは涙液膜に治療量の治療薬を放出し得る。例えば、構造は眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療薬を治療量で放出するように構成され得る。また、構造は、容器、マトリクス、溶液、表面コーティング、もしくは生体浸食性(bioerodable)材料のうちの少なくとも一つを含んでよい。構造は、薬物芯と、薬物芯を覆って配置される層とを含んでよく、層を通しての治療薬の放出を抑制できる。層は開口部を通して薬物を放出するために、その中に形成される開口部を含んでよい。構造は治療薬の粒子を含んでよく、ほぼ一定の放出速度をもたらすために、構造が埋め込まれる際に、粒子はそこから独立して治療薬を放出してもよい。
【0011】
特定の実施形態では、構造の少なくとも一部分は生体浸食性であってよく、治療薬は構造が浸食される間に放出され得る。
【0012】
多くの実施形態は、治療薬の副作用を避けるための中和剤を含んでよく、中和剤は抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含んでよい。例えば、抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含んでよい。具体的な実施形態では、抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0013】
具体的な実施形態では、治療インプラントは、構造、涙点プラグ、および治療薬を含む。涙点プラグは眼に隣接して構造を保持する。治療薬は、眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、構造から眼の中へ送達可能なアトロピンを含んでよい。眼の屈折特性は、近視、乱視、もしくは遠視のうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0014】
別の態様では、治療薬で眼の視覚欠損を処置する方法が提供される。方法は、眼もしくはその付近の組織の中に構造を埋め込むことを含む。治療薬は、眼の屈折特性に効果をもたらすおよび/または安定化させるように、埋め込まれた構造から放出される。
【0015】
いくつかの実施形態では、眼の屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含む。治療薬は、構造が眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療量で放出され得る。例えば、期間は約6から12ヶ月であり得る。治療薬はその期間にわたって持続的に放出され得る。
【0016】
多くの実施形態では、構造は、眼の強膜、涙点、もしくは結膜のうちの少なくとも一つの中に埋め込まれ得る。例えば、構造体は涙点に固定されてもよく、眼の涙液もしくは涙液膜の中に治療薬を放出してもよい。それに加えて、もしくは組み合わせて、構造は強膜に固定されてもよく、眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に治療薬を放出してもよい。構造は結膜に固定されてもよく、眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に治療薬を放出してもよい。構造体は結膜によって覆われてもよく、眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に治療薬を放出してもよい。例えば、構造は結膜と強膜の間に配置される。
【0017】
多くの実施形態では、治療薬は眼の調節をもたらす。具体的な実施形態では、治療薬は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つのような調節麻酔剤を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、治療薬の副作用に対抗するために、埋め込まれた構造および/または別の構造から中和剤が放出され得る。中和剤は、抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含んでよい。具体的な実施形態では、抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、治療薬は、治療薬放出の反応次数(kinetic order)に対応するプロファイルで放出され得、次数は約0から約1の範囲内であり得る。具体的な実施形態では、範囲は約0から約0.5、例えば約0から約0.25である。治療薬は、治療薬放出の反応次数に対応するプロファイルで放出されてよく、構造の挿入後少なくとも約1ヶ月の間、次数は約0から約0.5の範囲内であり、例えば次数は、構造の挿入後少なくとも約3ヶ月の間、その範囲内であり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、眼の視覚欠損を処置する方法は、眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬の副作用を防ぐために、抗緑内障薬および/または縮瞳薬のうちの少なくとも一つで眼を処置することを含む。小児および/または青年が処置されてもよく、眼の視覚欠損は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含んでよい。抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含んでよい。具体的な実施形態では、抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含んでよい。多くの実施形態では、抗緑内障薬は縮瞳作用を有する。縮瞳薬は、エコチオファート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、フルオロリン酸ジイソプロピル、カルバコール、メタコリン、ベタネコール、エピネフリン、ジピベフリン、ネオスチグミン、ヨウ化エコチオパート、もしくは臭化デメカリウムのうちの少なくとも一つを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1−1】本発明の実施形態に従う、インプラントとの使用に適した眼の解剖学的組織構造を示す。
【図1−2】本発明の実施形態に従う、インプラントとの使用に適した眼の解剖学的組織構造を示す。
【図1A】本発明の一実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置するための徐放インプラントの上面断面図を示す。
【図1B】図1Aの徐放インプラントの側面断面図を示す。
【図1C】本発明の一実施形態に従う、コイル保持部材を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図1D】本発明の一実施形態に従う、支柱を含む保持部材を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図1E】本発明の一実施形態に従う、ケージ保持部材を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図1F】本発明の一実施形態に従う、芯と鞘を含む徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2A】本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2B】本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2C】本発明の一実施形態に従う、縮小暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2D】本発明の一実施形態に従う、縮小暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2E】本発明の一実施形態に従う、キャスタレーションを持つ拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの断面図を示す。
【図2F】本発明の一実施形態に従う、冗長表面領域を持つ芯を含む徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2G】本発明の一実施形態に従う、内部多孔質表面を持つチャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2H】本発明の一実施形態に従う、薬物移行を増加させる多孔質チャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2I】本発明の一実施形態に従う、凸面の暴露薬物芯表面を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。
【図2J】本発明の一実施形態に従う、複数の軟質突起、巻きひげ状部材、繊毛型部材がそこからのびだしている暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図2K】本発明の一実施形態に従う、凸型暴露面と保持部材を含む薬物芯を持つ徐放インプラントの側面図を示す。
【図3A】本発明の一実施形態に従う、容器を持つ涙点プラグの斜視図を示す。
【図3B】本発明の一実施形態に従う、容器内における薬剤の好ましい構成と、その外部の涙液の流れとの接触とをあらわす略図を示す。
【図4】本発明の一実施形態に従う、例えば涙点プラグを形成するために使用される管などの管を包含する保持部材、および、浸透性層で囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造を示す。
【図5】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、薬物に浸透性の材料で囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造とを示す。
【図6】本発明の実施形態に従う、治療薬を放出するための材料(例えばコーティングおよび/または生分解性ポリマー)を持つ涙点プラグを示す。
【図7】本発明の一実施形態に従う、ヒトの眼の涙小管の中に薬剤を完全に挿入するためのインプラントを示す。
【図8A】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグの代表的寸法を持つ平面図を示す。
【図8B】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグの代表的寸法を持つ平面図を示す。
【図9】本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材、中空インプラントを包含する保持部材、および保持部材に適用されるコーティングを包含する、治療薬を放出するための構造を示す。
【図10A】本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図10B】本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図10C】本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。
【図11】本発明の実施形態に従う、徐放治療薬インプラントと、眼もしくはその付近におけるインプラント位置を示す。
【図12A】眼の視覚欠損を処置するための治療薬を放出する徐放インプラントと、治療薬の副作用に対抗するための追加の徐放インプラントとを含む、眼の視覚欠損を処置するための装置を示す。
【図12B】本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置するための治療薬を放出し、治療薬の副作用に対抗する中和剤を放出する、徐放インプラントを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1−1と1−2は、本発明の実施形態に従うインプラントでの処置に適した眼2の解剖学的組織構造を示す。眼2は角膜4と虹彩6を含む。強膜8は角膜4と虹彩6を囲み、白く見える。結膜9はほぼ透明で強膜8を覆って配置される。水晶体5は眼の内部に位置する。網膜7は眼2の眼底付近に位置し、通常は感光性である。網膜7は高視力と色覚をもたらす中心窩7Fを含む。角膜4と水晶体5は光を屈折させて中心窩7Fと網膜7上に像を形成する。角膜4と水晶体5の屈折力が中心窩7Fと網膜7上の像の形成に寄与する。角膜4、水晶体5、および中心窩7Fの相対位置も像の画質にとって重要である。例えば、眼2の角膜4から網膜7Fまでの眼軸長が大きい場合、眼2は近視となり得る。また、調節中は、眼の近位にある対象物に対する良好な近見視力をもたらすために、水晶体5が角膜4の方へ動く。
【0023】
図1−1に示される解剖学的組織構造は涙器系も含み、これは上涙小管10および下涙小管12(合わせて涙小管(canaliculae))と、鼻涙管もしくは鼻涙嚢14を含む。上涙小管および下涙小管は上涙点11および下涙点13(涙点開口部(punctal apertures)とも称する)に終結する。涙点開口部は内眼角17付近の涙嚢部および毛様体の接合部15にある眼瞼縁の内側端の小隆起上にある。涙点開口部は組織の結合リングによって囲まれた円形もしくはわずかに卵形の開口部である。涙点開口部11、13の各々は、水平に曲がって涙嚢14の入口にある他の涙小管とつながる前に、それぞれの涙小管の垂直部分10a、12aに入る。涙小管は管状で、涙小管の拡張を可能にする弾性組織によって囲まれた重層扁平上皮によって内側が覆われている。
【0024】
眼は光学系であるため、眼の光学要素の相互関係は眼の屈折異常(例えば近視、遠視、および/または乱視)の一因となり得る。ある症例では、眼の眼軸長が長過ぎる場合、眼は近視となり得る。また、角膜および/または水晶体が眼軸長に対して過剰な屈折力を持つ場合も、眼は近視となり得る。角膜および/または水晶体が眼の幅に対して不十分な屈折力を持つ場合、遠視が起こり得る(すなわち、眼の眼軸長が眼の幅に対して短過ぎる)。眼の内部における水晶体の位置もまた、眼の屈折疾患の一因となり得る。
【0025】
小児期および青年期における眼の成長と発達は、眼の光学特性をもたらし得る。そして多くの人々は、小児期および青年期に眼の屈折異常の進行性悪化を経験する。例えば、近視の学齢児童は、眼が発達し成長するにつれて近視の進行性悪化を経験し得る。この近視の進行は、小児期と青年期における眼の発達に関連するため、発達性の近視と称され得る。また、中等度から重度の近視は乱視に関連し得るため、近視の進行性悪化の処置は、乱視の進行性悪化もまた処置し得る。
【0026】
好ましい実施形態では、眼の屈折異常の進行は、屈折異常の悪化を軽減する治療薬を用いて処置される。治療薬は、近視の進行を軽減するために使用される、例えばアトロピンなどの調節麻痺剤であり得る。そのような処置は眼の屈折異常を完全には排除しないかもしれないが、早期発見と治療介入により、屈折異常の重症度は制限され得る。
【0027】
図1Aは、本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置する徐放インプラント100の上面断面図を示す。インプラント100は薬物芯110を含む。薬物芯110は治療薬を保持する埋め込み可能な構造である。薬物芯110は治療薬の粒子160を含むマトリクス170を含む。粒子160は、濃縮された形の治療薬、例えば結晶形などの固体状および/または油状などの液体状の治療薬をしばしば含み、治療薬は時間と共に薬物芯110のマトリクス170に溶解し得る。マトリクス170はシリコンマトリクスなどを含み得る。
【0028】
薬物芯110は鞘体120によって囲まれる。鞘体120は治療薬に対してほぼ不浸透性であってよく、鞘体120で覆われていない薬物芯110の末端の暴露面からしばしば治療薬が放出されるようになっている。保持部材130は薬物芯110と鞘体120に結合する。保持部材130は、例えば上述の涙小管の涙点などの中空組織構造にインプラントを保持するために形作られる。
【0029】
閉塞部材140は保持部材130に接しておよびその周囲に配置される。閉塞部材140は涙液に対し不浸透性で、中空組織構造を閉塞し、より良性な組織の係合面を提供することによって保持部材130から組織構造の組織を保護する役目も果たす。鞘体120は、鞘体120と薬物芯110を保持するように保持部材130に接続する鞘体部分150を含む。鞘体部分150は、鞘体120と薬物芯110の運動を制限する止め具としても機能する。
【0030】
図1Bは図1Aの徐放インプラントの側面断面図を示す。薬物芯110は円筒形で、円形の断面で示される。鞘体120は薬物芯110に接して配置される環状部分を含む。保持部材130は複数の縦支柱131を含む。縦支柱131は保持部材の末端付近でつながれる。縦支柱を示してあるが、円周支柱もまた使用され得る。閉塞部材140は保持部材130の縦支柱131によって支持され、且つそれを覆って配置され、半径方向に拡張可能な膜などを含んでもよい。
【0031】
薬物芯は治療薬の徐放をもたらす材料と治療薬を含む。例えばアトロピンなどの治療薬は薬物芯から標的組織(例えば眼の毛様体筋)に移行する。治療薬がマトリクスに溶解して薬物芯110の表面から放出可能である際に、治療薬の放出の持続期間にわたって放出速度が“ゼロ次”になるように、治療薬は随意にマトリクスにわずかしか溶けないものであってよい。治療薬は芯の暴露面から涙液もしくは涙液膜に拡散するので、芯から涙液もしくは涙液膜への移行速度は、マトリクスに溶解する治療薬の濃度に関係する。いくつかの実施形態では、薬物芯に溶解する治療薬の濃度は、治療薬の所望の放出速度をもたらすように制御され得る。芯の中に含まれる治療薬は、液体、固体、固体ゲル、固体単結晶、固体非晶質、固体粒子、および/または溶存態の治療薬を含み得る。いくつかの実施形態では、薬物芯は治療薬を含むシリコンマトリクスを含む。治療薬の例は、シリコンマトリクスに分散される固体アトロピン粒子を含む。
【0032】
薬物芯は治療薬の徐放をもたらすことができる任意の生体適合性材料から作られ得る。薬物芯については、ほぼ非生分解性のシリコンマトリクスと、溶解する薬物の粒子がその中に存在するマトリクスを含む一実施形態に関して上述されるが、薬物芯は例えば生分解性マトリクス、多孔質薬物芯、液体薬物芯、および固体薬物芯など、治療薬の徐放をもたらす任意の構造を含み得る。構造は、眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療量の治療薬を放出するように構成され得る。治療薬を含むマトリクスは、生分解性ポリマーもしくは非生分解性ポリマーのいずれからも形成され得る。生分解性ポリマーの例は、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(L-グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリL-ラクチド、ポリD-ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸、ポリ乳酸-ポリエチレンオキサイド共重合体、改質セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリアンヒドライド(polyanhydride)、ポリリン酸エステル、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、コラーゲン基質およびそれらの組み合わせを含んでよい。本発明の装置は完全にもしくは部分的に生分解性もしくは非生分解性であってもよい。非生分解性材料の例は、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、アクリレート、ポリエチレン、ポリオレフィンを含むが限定はされない、様々な市販の生体適合性ポリマーであり、超高分子量ポリエチレン、発泡ポリテトラフロロエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、層状コラーゲン(sheathed collagen)を含む。いくつかの実施形態では、薬物芯は生分解性もしくは非生分解性のいずれかのヒドロゲルポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、治療薬は、MinnesotaはEden PrairieのSurmodicsおよびCanadaはBritish ColumbiaのAngiotech Pharmaceuticalsなどから市販されているものなど、コーティングとして使用される薬剤溶出物質の中に含まれ得る。
【0033】
治療薬は、例えば眼の光学特性に効果をもたらす薬剤など、任意の物質を含み得る。眼の光学特性に効果をもたらすために適切な薬剤は、例えばアトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、および/またはトロピカミドなどの調節麻痺剤を含んでよい。瞳孔拡張および/または眼の他の光学特性をもたらすために他の薬剤が使用されてもよく、ネオスチグミン、フェントラミン、ヨウ化ホスホリン、およびピロカルピンを含む。エコチオファート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、フルオロリン酸ジイソプロピル、カルバコール、メタコリン、ベタネコール、エピネフリン、ジピベフリン、ネオスチグミン、ヨウ化エコチオパート、および臭化デメカリウムを含む、縮瞳薬などの追加薬剤が使用され得る。他の適切な治療薬は、ヒドロキシアンフェタミン、エフェドリン、コカイン、トロピカミド、フェニレフリン、シクロペントラート、オキシフェノニウム、およびオイカトロピンなどの散瞳薬を含む。加えて、ピレンゼピンなどの抗コリン作用薬が利用されてもよい。適用可能な治療薬の例は、米国特許出願20060188576および20030096831に見られ、その全容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0034】
眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬に加えて、治療薬の起こり得る副作用に対抗するために、追加の治療薬が提供され得る。追加の中和性治療薬(群)は、眼の視覚欠損を処置する治療薬を放出する芯内に含まれてもよく、もしくは追加の中和性治療薬(群)を個別に放出するために追加の薬物芯が提供されてもよい。
【0035】
調節麻痺治療薬の起こり得る副作用の一つは瞳孔拡張であり、これは羞明につながる可能性がある。従って、いくつかの実施形態では、調節麻痺剤によって生じる瞳孔拡張に対抗するために、縮瞳治療薬が眼の中に放出される。
【0036】
調節麻痺治療薬の別の起こり得る副作用は、瞳孔の拡張に関連すると思われる緑内障である。従って、いくつかの実施形態では、眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬の、起こり得る緑内障誘導性副作用に対抗するために、抗緑内障治療薬(群)が放出され得る。適切な抗緑内障治療薬は以下を含む。アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリンなどの交感神経様作用薬、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピンなどの副交感神経様作用薬、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害薬、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロールなどのβ遮断薬、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストンなどのプロスタグランジンアナログ、およびダピプラゾール、グアネチジンなどの他の薬剤。好ましい実施形態では、小児の発達性近視を処置するための治療薬としてアトロピンが放出され、抗緑内障処置としてビマトプロストおよび/またはラタノプロストが放出される。
【0037】
一部の治療薬は、眼に対して複数種の影響を及ぼすことに注意すべきである。例えば、抗緑内障治療薬は、縮瞳をも引き起こす可能性がある。従っていくつかの実施形態では、眼の視覚欠損を修正するために放出される治療薬の複数種の副作用に対抗するために、さらなる治療薬が追加され得る。
【0038】
インプラント100が組織の中もしくは眼の付近に埋め込まれる際に、所望の処置反応を提供するため、治療薬は治療レベルで放出される。例えば、近視を処置するためにアトロピンが薬剤として使用される場合、アトロピンは最低有効量を送達する治療速度で薬物芯から放出される。薬剤は、例えばゼロ次速度過程に対応する速度など、一定速度で放出されることが好ましいが、薬剤は例えば一次など、他の反応次数に対応する速度で放出されてもよい。多くの実施形態では、反応次数は薬剤が放出されるにつれてゼロ次から一次へと変化する。従って、治療薬は約0から約1へと変化する反応次数の範囲に対応するプロファイルで放出される。理想的には、治療薬の均一な送達を提供するために、薬物芯は治療薬が放出される速度が著しく変化する前に除去される。一定速度の送達が望まれるため、反応次数が完全に一次に移行する前に薬物芯を除去および/または交換することが望まれ得る。他の実施形態では、一次もしくは高次の放出速度は、治療薬の放出プロファイルが安全かつ有効な範囲内にとどまる限り、処置の一部もしくは全ての最中において望ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、薬物芯は1週間から5年の期間にわたって、より具体的には3〜24ヶ月の範囲内で、有効速度で放出をなし得る。
【0039】
治療薬の放出速度は、薬物芯に溶解する治療薬の濃度に関係し得る。多くの実施形態では、薬物芯は、薬物芯中で治療薬の所望の溶解度をもたらすように選択される、非治療薬を含む。薬物芯の非治療薬は上述のポリマーと添加剤を含み得る。芯のポリマーは、マトリクス中で治療薬の所望の溶解度をもたらすように選択され得る。例えば、芯は親水性の治療薬の溶解度を促進し得るヒドロゲルを含み得る。いくつかの実施形態では、マトリクス中での治療薬の放出反応速度を調節するために、官能基をポリマーに加えてもよい。例えば、官能基をシリコンポリマーに結合させてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、薬物芯中での治療薬の溶解度を増加もしくは減少させることによって治療薬の濃度を制御するために、添加物が使用されてもよい。溶解度は、マトリクスに対する溶存態の治療薬の溶解度を増加および/または減少させる適切な分子および/または物質を提供することによって制御され得る。溶存態の治療薬の溶解度は、マトリクスと治療薬の疎水性および/または親水性の性質に関連し得る。放出反応速度を調節するために、例えば界面活性剤、塩および親水性ポリマーをマトリクスに加えてもよい。加えて、マトリクスの放出反応速度を調節するために、油および疎水性の分子をマトリクスに加えてもよい。
【0041】
マトリクスに溶解する治療薬の濃度に基づいて移行速度を制御する代わりに、もしくはそれに加えて、薬物芯の表面積も、芯から標的部位への所望の薬物移行速度を得るために制御され得る。例えば、芯の暴露表面積が大きければ、薬物芯から標的部位への治療薬の移行速度は増加し、薬物芯の暴露表面積が小さければ、薬物芯から標的部位への治療薬の移行速度は減少する。薬物芯の暴露表面積はあらゆる方法で増加され得る。例えば、暴露面を蛇行性もしくは多孔性にすることによって、芯の利用可能な表面積が増加され得る。
【0042】
鞘体は薬物芯からの治療薬の移行を制御するために適切な形状と材料から構成される。鞘体は芯を格納し、芯に対してぴったりと適合し得る。治療薬の移行速度が、鞘体によって覆われない薬物芯の暴露表面積によって十分に制御され得るように、鞘体は治療薬に対してほぼ不浸透性の材料で作られる。典型的には、鞘体を通る治療薬の移行は、薬物芯の暴露面を通る治療薬の移行の約1/10以下となり得、しばしば1/100以下となることがある。言い換えれば、鞘体を通る治療薬の移行は、薬物芯の暴露面を通る治療薬の移行よりも、少なくとも約一桁小さい。適切な鞘体材料は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(以下“PET”)を含む。鞘体は、芯に隣接した鞘表面から、芯から離れた反対の鞘表面までと規定される、約0.00025"から約0.0015"の厚さを持つ。芯全体にのびる鞘の総直径は、約0.2 mmから約1.2 mmの範囲である。芯は鞘材料の中に芯を浸漬被覆することによって形成され得る。あるいは鞘体は、液体として鞘の中に導入される、もしくは鞘体管の中にスライドされる管および芯であってもよい。
【0043】
鞘体はインプラントの臨床的な使用を容易にする追加の特徴を備え得る。例えば鞘体は、保持部材と鞘体が患者に埋め込まれたままで交換可能な薬物芯を交換式に受容してもよい。鞘体はしばしば上述のように保持部材に堅く取り付けられ、保持部材が鞘体を保持しながら芯を交換することができる。例えば鞘体は、圧迫される際に鞘体に力を加え、鞘体から芯を押し出す外部の突起を備えてもよい。その後別の薬物芯が鞘体に配置され得る。
【0044】
保持部材は、インプラントが所望の組織位置(例えば涙点もしくは涙小管)に容易に配置され得るようなサイズと形状の適切な材料から構成される。保持部材は機械的に配置可能で、通常は所望の断面形状に拡張し、例えば保持部材はNitinolTMなどの超弾性形状記憶合金から構成される。所望の拡張をもたらすために、NitinolTMに加え他の材料、例えば弾性金属もしくはポリマー、塑性的に変形可能な金属もしくはポリマー、形状記憶ポリマーなど、例えばバネステンレス鋼、EligloyR、タンタル、チタン、コバルトクロムが使用されてもよい。保持部材は、所望の処置時間、および患者が医師によるフォローアップを必要とするかどうかによって、生分解性であっても非生分解性であってもよい。この拡張能力は、例えば0.3 mmから1.2 mmの範囲の涙小管など、様々なサイズの中空組織構造にインプラントが適合することを可能にする(すなわちフリーサイズ)。直径0.3から1.2 mmの涙小管に適合するようにただ一つの保持部材が作られ得るが、必要に応じてこの範囲に適合するように、複数の代替的に選択可能な保持部材(例えば0.3から0.9 mmの涙小管用の第一の保持部材と、0.9から1.2 mmの涙小管用の第二の保持部材)が使用されてもよい。保持部材は、保持部材が結合する解剖学的構造に適切な長さを持ち、例えば涙小管の涙点付近に配置される保持部材は約3 mm以下の長さである。
【0045】
鞘体と薬物芯は上述のように保持部材の一端に取り付けられるが、多くの実施形態では保持部材の他方の末端は薬物芯と鞘体に取り付けられず、保持部材が拡張する間、鞘体と薬物芯の上をスライドし得るようになっている。保持部材が所望の断面幅をとるように幅を拡張させるにつれ、通常は保持部材の長さが収縮するので、この一端でのスライド能力は好ましい。加えて、装置の薬物芯は、鞘体を適所に保ったまま交換可能であり得る。あるいは、治療薬を装置に補給するため、薬物芯の交換に備えるべく、保持部材内で鞘体が交換可能であってもよい。
【0046】
閉塞部材は、インプラントが中空組織構造を通る流体の流れ(例えば涙小管を通る涙液)を少なくとも部分的に阻止、さらに遮断し得るようなサイズと形状の適切な材料から構成される。示される閉塞材料は、保持部材と共に拡張および収縮が可能な、例えばシリコンなどの生体適合性材料の薄壁膜である。閉塞部材は、保持部材の末端の上をスライドされ、上述のように保持部材の一端に固定される、材料の独立した薄管として形成される。あるいは閉塞部材は、例えばシリコンポリマーなどの生体適合性ポリマーに保持部材を浸漬被覆することによって形成され得る。閉塞部材の厚さは約0.03 mmから約0.15 mmの範囲であってよく、約0.05 mmから0.1 mmであることが多い。
【0047】
図1Cは、本発明の一実施形態に従う、コイル保持部材132を持つ徐放インプラント102の斜視図を示す。保持部材132はコイルを含み、薬物芯112を保持する。薬物芯112は部分的に覆われる。鞘体は薬物芯112の第一末端を覆う第一部材122Aと、薬物芯の第二末端を覆う第二部材122Bを含む。閉塞部材は保持部材を覆って配置され得るか、もしくは、保持部材が上述のように浸漬被覆され得る。
【0048】
図1Dは、本発明の一実施形態に従う、支柱を含む保持部材134を持つ徐放インプラント104の斜視図を示す。保持部材134は縦支柱を含み、薬物芯114を保持する。薬物芯114はその大部分を鞘体124で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体124は上述の通り薬物芯の大部分を覆って環状になっている。閉塞部材は保持部材を覆って配置され得るか、もしくは保持部材は上述の通り浸漬被覆され得る。
【0049】
図1Eは、本発明の一実施形態に従う、ケージ保持部材136を持つ徐放インプラント106の斜視図を示す。保持部材136は複数の連結した金属鎖(網目もしくは格子など、またはらせん構造)を含み、薬物芯116を保持する。薬物芯116はその大部分を鞘体126で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体126は上述の通り薬物芯の大部分を覆って環状になっている。閉塞部材は保持部材を覆って配置され得るか、もしくは保持部材は上述の通り浸漬被覆され得る。
【0050】
図1Fは、本発明の一実施形態に従う、芯と鞘を含む徐放インプラントの斜視図を示す。薬物芯118はその大部分を鞘体128で覆われる。薬物芯は暴露末端を通して治療薬を放出し、鞘体128は上述の通り薬物芯の大部分を覆って環状になっている。治療薬の放出速度は、暴露される薬物芯の表面積と、薬物芯118内に含まれる材料によって制御される。そのようなインプラントは眼組織の中に埋め込まれ、例えば図1Fに示すように眼の結膜組織層9の下か強膜組織層8の上のいずれか、あるいは強膜組織を貫通しないように強膜組織層内に部分的にのみ埋め込まれ得る。薬物芯118は本明細書に記載の保持部材と閉塞部材のいずれとも併用可能であることに注目すべきである。一実施形態では、薬物芯は強膜8と結膜9の間に鞘体128無しで埋め込まれる。鞘体無しのこの実施形態では、例えば本明細書に記載の通り薬物芯マトリクス中に溶解したアトロピンの濃度を減少させることにより、薬物芯の増加した暴露面を補うように薬物芯の物理的特性が調整され得る。
【0051】
本明細書に記載の芯と鞘体は、いくつかの方法で様々な組織に埋め込まれ得る。本明細書に記載の芯と鞘の多く、特に図2Aから2Jを参照して記載される構造は、涙点プラグとして単独で埋め込まれ得る。あるいは、本明細書に記載の芯と鞘の多くは、本明細書に記載の保持部材と閉塞部材と共に埋め込まれるように、薬物芯、鞘体、および/または同類のものを含み得る。
【0052】
図2Aは、本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域を含む芯を持つ徐放インプラント200の断面図を示す。薬物芯210は鞘体220で覆われる。鞘体220は開口部220Aを含む。開口部220は薬物芯210の最大断面直径に近い直径を持つ。薬物芯210は、活性表面とも称する暴露面210Eを含む。暴露面210Eは、環状面210A、柱面210B、端面210Cという三つの表面を含む。環状面210Aは芯210の最大断面直径に近い外径と、柱面210Bの外径に近い内径を持つ。端面210Cは柱面210Bの直径に一致する直径を持つ。暴露面210Eの表面積は、環状面210A、柱面210B、端面210Cの面積の合計である。表面積は芯210の軸に沿って縦(長手)方向にのびる柱面210Bの表面積の大きさによって増加し得る。
【0053】
図2Bは、本発明の一実施形態に従う拡大暴露表面領域212Aを含む芯212を持つ徐放インプラント202の断面図を示す。鞘体222は芯212を覆って広がる。治療薬は上述の通り芯から放出され得る。暴露表面領域212Aはほぼ円錐形で、楕円形もしくは球形であってもよく、薬物芯212の暴露表面積を増加させるように鞘体から外側に広がる。
【0054】
図2Cと2Dは、本発明の一実施形態に従う、縮小暴露表面領域214Aを含む薬物芯214を持つ徐放インプラント204の斜視図と断面図をそれぞれ示す。薬物芯214は鞘体224内に封入される。鞘体22は、薬物芯214が貫通する開口部を画定する環状端部224Aを含む。薬物芯214は治療薬を放出する暴露面214Aを含む。暴露面214Aは、例えば薬物芯214を横切る最大直径などの最大寸法未満の直径214Dを有する。
【0055】
図2Eは、本発明の一実施形態に従う、拡大暴露表面領域216Aとそこからのびるキャスタレーション(castellation)を含む薬物芯216を持つ徐放インプラント206の断面図を示す。薬物芯216はくぼみ216Iを含む。キャスタレーションはくぼみからのびる複数の指部(finger)216Fを含む。芯216は鞘体226で覆われる。鞘体226は一端で開いており、薬物芯216上に暴露面216Aをもたらす。くぼみ216Iは逆円錐型の形状をとる。複数の指部216Fはくぼみ216Iから外側にのび、暴露面216Aの表面積の増加をもたらす。鞘体226もまた指部を含み、芯216に一致するキャスタレーションパターンを有する。
【0056】
図2Fは、本発明の一実施形態に従う、襞を持つ芯を含む徐放インプラント250の斜視図を示す。インプラント250は芯260と鞘体270を含む。芯260は、周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする暴露面260Aを芯の末端に持つ。芯260は襞260Fも含む。襞260Fは、インプラントの体積内で送達される薬物を含む薬物芯の表面積を増加させる。この暴露表面積の増加により、襞260Fは芯260から涙液もしくは涙液膜および標的処置部位への治療薬の移行を増加させる。襞260Fはチャネル260Cが芯260内に形成されるように形成される。チャネル260Cは芯の末端と暴露面260A中の開口部とに接続し、治療薬の移行をもたらす。従って、芯260の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面260A、ならびに、暴露面260Aおよび涙液もしくは涙液膜とのチャネル260Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される襞260Fの表面を含む。
【0057】
図2Gは、本発明の一実施形態に従う、中心軸からのびる一連の突起および/または空洞を持つチャネルを含む芯を持つ徐放インプラントの斜視図を示す。インプラント252は芯262と鞘体272を含む。芯262はその末端に、周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする暴露面262Aを持つ。芯262はチャネル262Cも含む。チャネル262Cは、芯に対してチャネルの内側に形成される多孔質内面262Pでチャネルの表面積を増加させる。周囲の涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積は、チャネル262Cに暴露される芯262の内側を含み得る。この暴露表面積の増加により、芯262から涙液もしくは涙液膜および標的処置部位への治療薬の移行が増加し得る。従って、芯262の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面260A、ならびに、暴露面262Aおよび涙液もしくは涙液膜とのチャネル262Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される多孔質内面262Pを含み得る。
【0058】
図2Hは、本発明の一実施形態に従う、薬物移行を増加させるための多孔質チャネルを含む芯264を持つ徐放インプラント254の斜視図を示す。インプラント254は芯264と鞘体274を含む。暴露面264Aは芯264の末端に位置するが、暴露面は他の位置に位置付けられてもよい。暴露面264Aは周囲の涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にする。芯264は多孔質チャネル264Cも含む。多孔質チャネル264Cは暴露面264にまでのびる。多孔質チャネル264Cは十分に大きいので、涙液もしくは涙液膜は多孔質チャネルに入ることができ、それによって涙液もしくは涙液膜に接触する芯264の表面積を増加させる。周囲の涙液もしくは涙液膜に暴露される芯の表面積は、チャネル264Cの内面を含む。この暴露表面積の増加により、多孔質チャネル264Cは芯264から涙液もしくは涙液膜および標的処置部位への治療薬の移行を増加させる。従って、芯264の総暴露表面積は、涙液もしくは涙液膜に直接暴露される暴露面264A、ならびに、暴露面264Aおよび涙液もしくは涙液膜との多孔質チャネル262Cの接続を介して涙液もしくは涙液膜に暴露される内面を含む。
【0059】
図2Iは、本発明の一実施形態に従う、凸型暴露面266Aを含む薬物芯266を持つ徐放インプラント256の斜視図を示す。薬物芯266は、凸型暴露面266Aを画定するように少なくとも部分的に薬物芯266を覆って広がる鞘体276で部分的に覆われる。鞘体276は軸部分276Sを含む。凸型暴露面266Aは鞘体の上に増加した暴露表面積をもたらす。凸型暴露面266Aの断面積は、鞘体276の軸部分276Sの断面積よりも大きい。大きな断面積に加えて、凸型暴露面266Aは芯から外側にのびる凸形状のために、より大きな表面積を持つ。鞘体276は、鞘体中で薬物芯266を支持し、鞘体276中で薬物芯266を適所に保つように薬物芯を支える、複数の指部276Fを含む。指部276Fは、指部の間で芯から涙液もしくは涙液膜への薬物移行を可能にするように間隔があいている。突起276Pが鞘体276において外側に広がる。突起276Pは鞘体276から薬物芯266を押し出すように内側へ押され得る。薬物芯266は適当な時間の後、例えば薬物芯266が治療薬のほとんどを放出した後、別の薬物芯と交換され得る。
【0060】
図2Jは、本発明の一実施形態に従う、複数の軟質ブラシ状部材268Fを持つ暴露表面領域を含む芯268を持つ徐放インプラント258の側面図を示す。薬物芯268は、暴露面268Aを画定するように少なくとも部分的に薬物芯268を覆って広がる鞘体278で部分的に覆われる。鞘体278は軸部分278Sを含む。軟質ブラシ状部材268Fは薬物芯268から外側にのび、薬物芯268に増加した暴露表面積をもたらす。軟質ブラシ状部材268Fはまた、しなやかで弾力性があり、これらの部材が周辺組織に刺激をもたらさないように容易に偏向させられる。薬物芯268は上述の通り多くの材料で作られ得るが、軟質ブラシ状部材268Fを含む薬物芯268の製造に適切な材料はシリコンである。薬物芯268の暴露面268Aは、暴露面268Aの少なくとも一部分が凹面になるようにくぼみ268Iもまた含む。
【0061】
図2Kは、本発明の一実施形態に従う、凸型暴露面269Aを含む薬物芯269を持つ徐放インプラント259の側面図を示す。薬物芯269は、凸型暴露面269Aを画定するように少なくとも部分的に薬物芯269を覆って広がる鞘体279で部分的に覆われる。鞘体279は軸部分279Sを含む。凸型暴露面269は鞘体の上に増加した暴露表面積をもたらす。凸型暴露面269Aの断面積は、鞘体279の軸部分279Sの断面積よりも大きい。大きな断面積に加えて、凸型暴露面269Aは、芯において外側へ広がる凸形状のために、より大きな表面積を持つ。ワイヤーのコイルを含む保持部材289が鞘体279に取り付けられる。保持部材289を生体適合性にするために、保持部材289は浸漬被覆され得る。
【0062】
図3Aから図3Cは、本発明の実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、容器を包含する治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、2001年3月6日にCohanの名義で発行された米国特許No. 6,196,993、表題“Ophtalmic insert and method for sustained release of medication to the eye”に記載されており、この全開示は引用により本明細書に組み込まれる。容器は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなど、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。容器からの薬物の移行は拡散によって起こり得るが、他の移行機構も可能である。
【0063】
図3Aは、本発明の一実施形態に従う、容器を持つ涙点プラグの斜視図を示す。長期間にわたって持続的に眼の表面上に治療薬を貯蔵および放出するように設計された容器334を持つ、眼科用挿入物(ophthalmic insert)332が涙点閉塞器(occluder)の形で示される。眼科用挿入物332は、容器334を満たす治療薬に対して不浸透性の、シリコンなどの可撓性材料から成形されるかもしくは他の方法で形成され得る。容器334は、挿入物332の本体部分336の内側を通るチャネルによって形成される。本体部分336は可撓性であることが好ましく、治療薬で充填されるときに縦(長手)方向の拡張機能をもたらすために、さらに蛇腹型であってもよい。
【0064】
さらに図3Aを参照すると、カラレット(collarette)340が涙点の外側に挿入物332を固定し、容器334と流体連通する孔342を備えている。特定の治療薬の送達を制御するために、孔342の形状は、既に引用により本明細書に組み込まれている米国特許No. 6,196,993に説明されているようにカスタマイズされてもよい。孔342を通して、治療薬は容器334から涙湖の涙液中へ分散し、そこで治療薬は眼薬がするように涙液と混合し、意図した薬理作用を及ぼすために眼に浸透する。必要ではないが、図示のように、挿入物332を小管内に固定するのを助けるために、また、容器334にさらなる体積を提供するために、拡大した球状(bulb)部分238が提供されてもよい。
【0065】
図3Bは、本発明の一実施形態に従う、容器内における薬剤の好ましい構成と、その外部の涙液の流れとの接触とをあらわす略図を示す。容器334は、固体もしくは液体のいずれかの状態で、最も濃縮した形の薬剤を含む領域(a)を含む。薬剤は領域(a)から、薬剤の飽和溶液を含む、孔342に最も近い隣接領域(b)へ拡散する。律速孔342は、挿入物332の作成時に所望の寸法で形成され得る。もしくは孔342は、容器334に適合する適切な形状の開口キャップを挿入物332に据え付けることによって、適切なサイズにされ得る。別の実施形態では、孔342は、カラレット340の上に置かれた、薬剤の移動に対して透過的である無孔材料の形で提供され得る。
【0066】
図4は、本発明の一実施形態に従う、例えば涙点プラグを形成するために使用される管などの管を包含する保持部材、および、浸透性層で少なくとも部分的に囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造を示す。本発明との組み合わせに適切な構造は、2004年10月21日にAshtonの名義で公開された米国特許出願公開No. 2004/0208910、表題“Sustained release device and method for ocular delivery of adrenergic agents”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。容器は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなど、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。保持部材は、眼の付近の目的位置に薬物容器を保持するために使用される、'910公報に記載の構造のいずれかを含む。
【0067】
図4は、容器と浸透性プラグを持つ徐放薬物送達装置の拡大断面図を概略的に図示する。装置300は、浸透性外層310、ほぼ不浸透性の内管312、容器314、ほぼ不浸透性のキャップ316、および浸透性プラグ318を含む。ポート320は、ポート224とプラグ216に関して上述したように、装置の外部でプラグ318と連通する。内管312はとキャップ316は別々に形成されて一緒に組み立てられ得るか、もしくは内管とキャップは単一の完全な一体型部材として形成され得る。浸透性外層310を提供することにより、容器もしくは薬物芯314内の治療薬(群)が、ポート320に加えて外層を貫流することが可能になるので、全体の送達速度を上昇させるのに役立つ。外層310が形成される材料は、基底構造、すなわちキャップ316、管312、およびプラグ318に付着する能力、および構造全体を一つに保持する能力によって具体的に選ばれ得る。随意に、容器314からの治療薬(群)の流速を増加するために、一つもしくは複数の穴322が内管312を通して提供され得る。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、薬物に浸透性の材料で囲まれた薬物容器を包含する、治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、2006年1月26日にPrescottの名義で公開された米国特許出願公開No. 2004/0020253、表題“Implantable device having controlled release of medication and method of manufacturing the same”、2006年1月26日にPrescottの名義で公開された米国特許出願公開No. 2006/0020248、表題“Lacrimal insert having reservoir with controlled release of medication and method of manufacturing the same”に記載され、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。容器は、例えば眼の視覚欠損を処置するための薬剤など、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。
【0069】
図5は、涙点への挿入用の涙点プラグ510の形状の涙点挿入物を概略的に図示する。涙点プラグ510は、容器514、首部516、張り出し部518、および先端522に終結するテーパ部520を画定する本体512を含む。非多孔質頭部524が本体512の首部516の上に提供され、これが容器を取り囲む。薬剤526は容器内に提供される。本発明の一態様を踏まえて、本体512と頭部524は異なる材料で形成され、本体512は、薬剤に対して比較的不浸透性である、生体適合性で、好ましくは軟質で可撓性の第一の材料から形成され、頭部524は、薬剤に対して浸透性である、生体適合性で、好ましくは軟質で可撓性の第二の材料から形成される。
【0070】
図6は、本発明の実施形態に従う、治療薬を放出するための材料(例えばコーティングおよび/または生分解性ポリマー)を持つ涙点プラグを示す。本発明との使用に適した構造は、2006年2月9日にLazarの名義で国際公開No. WO2006/014434として公開されたPCT/US2005/023848、表題“TREATMENT MEDIUM DELIVERY DEVICE AND METHODS FOR DELIVERY OF SUCH TREATMENT MEDIUMS TO THE EYE USING SUCH A DELIVERY DEVICE”に記載されている。生分解性ポリマーは、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなどの処置媒体など、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。
【0071】
図6は、本発明の一実施形態に従う処置媒体送達装置600を示す。処置媒体送達装置600は、第一本体部分610と第二本体部分620を含む。第二本体部分620は一般的に、調剤される治療薬もしくは処置媒体を含むように構成され配置される。
【0072】
第一本体部分610は、眼の中に備わっている開口部、より具体的には眼に近接した身体の部分に、取り外し可能なように挿入および固定されるようなサイズをとり、構成され、配置される。より具体的には、第一本体部分610は、第一本体部分が開口部内に挿入される際に、例えばまぶたの瞬きや、何か眼の弛緩といった、通常の予期される身体機能の結果、落下したり外に出てしまうことがないように、開口部内に固定されるようなサイズをとり、構成され、配置される。具体的な実施形態例では、眼の中の開口部は、哺乳類の体では涙小管に流体結合する眼の涙点であり、処置媒体送達装置は、通常の眼機能の最中に涙点および涙小管の部分内に固定されたままになるように構成され、配置される。
【0073】
第一本体部分610は、例えば固体部材、中に内腔もしくは通路が画定された部材、第一本体部分の一部分を貫通する通路を持つ部材、第一本体部分内に位置する開放区画(open compartment)、ステントの構造に対応する本体構造など、あらゆる方法で構成可能である。ステントは、概して円筒形もしくは中にステントが挿入される開口部と通路に適合する形状を形成するように配置され得る、足場様(scaffold like)構造を提供する。第一本体部分610はまた、ステンレス鋼、ニチノール(ニッケル‐チタン)などの金属、および目的の用途に適した強度と材料特性を持つプラスチックを含む、当業者に既知の多くの生体適合性材料のうちのいずれからも構成される。第一本体部分610のそのような材料はまた、非毒性かつ非感作性であると特徴付けられることが好ましい。
【0074】
より具体的な実施形態では、第一本体部分は、第一本体部分610の開口部への挿入を容易にするように、ならびに、第一本体部分がその中に挿入される際に開口部の組織に対する深刻な外傷および/または損傷を最小化するように構成される、末端612を含む。具体的な実施形態例では、第一本体部分末端612は弓形および/または概して半球形である。第一本体部分末端612は、目的の機能および用途に適した末端を示すように構成され得る。例えば末端612は、第一末端部分610の機能と用途が、第一末端部分が身体開口部内に挿入される際に組織もしくは膜を貫通することを含む場合、貫通機能を持つように構成可能である。
【0075】
本発明の一実施形態では、第二本体部分620は、接着剤など、当業者に既知の多くの技術のいずれかを用いて、第一本体部分の第二末端614に適用、固定、付着、もしくは接着される、部材、装置(例えば溶離装置、徐放装置、カプセル化装置)もしくはコーティングを含む。そのような第二本体部分620は、一つ以上の処置媒体を運ぶように構成され、所定の条件下でそこから媒体が放出され得るように、その中に一つ以上の処置媒体を放出可能なように保持するように構成される、マトリクスもしくは媒体などの送達媒体(delivery vehicle)もしくは構造を提供する。そのように放出可能なように保持することは、送達媒体もしくは構造を含む構造内の処置媒体(群)のカプセル化を含むが限定はされない。第二本体部分620は、例えばポリマーなど、形成、硬化、もしくは他の方法で適切に処理されて、そうした形成、硬化、重合もしくは処理の結果として、第一本体部分の第二末端614に接着するようになっている、媒体もしくは材料を含み得ることもまた考慮される。第二本体部分についてのさらなる説明はWO2006/014434に記載されている。
【0076】
図7は、本発明の一実施形態に従う、眼の涙小管へ完全に挿入するための伸長部材を含む保持部材と、保持部材上のコーティングを包含する治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、1991年10月1日にHerrickの名義で発行された米国特許No. 5,053,030、表題“Intracanalicular implant for horizontal canalicular blockade treatment of the eye”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。治療薬は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなどの処置媒体といった薬剤を含み得る。
【0077】
図7は、本発明の一実施形態に従う、ヒトの眼の涙小管の中に薬剤を完全に挿入するためのインプラントを示す。インプラントImpは二つの部分から構成され、第二部分Mは、インプラントImpに薬剤を装填するための、インプラントImpの鼻部Nに取り付けられるように予め選択された構成を持つ。図示された部分Mの構成は、部分Impの鼻部末端に相補的であるように画定される一端を持ち、そこで担持されるようになっており、また、反対側に鈍頭鼻部を持つ。これらの薬剤は、眼への持続放出投与のため、涙小管内インプラントImpに装填され得る。この放出は、眼の反射運動の結果としてはたらき、例えば眼の筋肉にアトロピンを分布させるために使用され得る。
【0078】
図8Aと8Bは、本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材と、涙点プラグの頭部を包含する治療薬を放出するための構造とを示す。本発明との組み合わせに適した構造は、1976年4月13日にFreemanの名義で発行された米国特許No. 3,949,750、表題“Punctum plug and method for treating keratoconjuctivitis sicca and other ophthalmic aliments using same”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。頭部は、例えば眼の近視を処置するためのアトロピンなど、眼の視覚欠損を処置するための本明細書に記載の治療薬のいずれを含んでもよい。
【0079】
眼からの涙液および/または薬剤液の排出を防止もしくは減少させることが望まれる眼病の処置においては、上眼瞼および下眼瞼のいずれかもしくは両方における涙点開口部が、取り外し可能なプラグ部材820によって閉塞される。この二つの各実施形態は図8Aと8Bに示される。最初に図8Aの実施形態を参照すると、涙点プラグ820は、突出先端もしくはとげ(barb)部分822、先端よりもやや小さな直径の中間首部分もしくは腰部分824、および比較的大きな直径の平滑円盤状頭部826を持つ。図8Bのプラグの実施形態820'は、最初に記載した実施形態と概して同様の寸法であり、やや鈍頭な先端もしくはとげ部分822'、ほぼ同じ寸法の円筒形中間部分824'、および図8Aの実施形態の同等物よりもやや小さな直径のドーム型頭部826'を持つ。両実施形態の頭部826、826'は、必要であれば鉗子で掴むことに代わる方法として、後述するように、挿入のために操作される際にプラグ上に取り外し可能なグリップを提供するため、挿入器具の突出先端を受けるように構成される中心孔開口部828、828'を備えてもよい。
【0080】
本発明の特定の実施形態では、プラグ820、820'、特に頭部828、828'は、HEMA親水性ポリマーなど、薬剤に対して堅固な(medication-impregnable)多孔質材料であってもよく、もしくは、涙液によって浸出される際に、点眼薬を眼に貯蔵し、ゆっくりと投薬するため、毛細管などのように他の方法で構成されてもよい。
【0081】
一実施形態では、本明細書に記載の治療薬は、米国特許出願公開No. 2005/0197614(その全開示は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されているような涙点プラグに組み込まれる。涙点プラグを形成するためにゲルが使用され得る。ゲルは第一の直径から第二の直径に膨張し得、第二の直径は第一の直径よりも約50%大きい。ゲルは、例えば中で薬剤が均一に分散する微孔構造内に活性治療薬を封入するために使用され得、ゲルは治療薬を患者の中へゆっくりと溶出し得る。様々な治療薬が米国仮特許出願No. 60/550,132、表題“Punctum Plugs, Materials, And Devices”(その全開示は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されており、本明細書に記載のゲルおよび装置と組み合わされ得る。
【0082】
図9は、本発明の一実施形態に従う、涙点プラグを包含する保持部材、中空インプラントを包含する保持部材、および保持部材に適用されるコーティングを包含する、治療薬を放出するための構造を示す。本発明との組み合わせに適した構造は、2005年10月20日にOdrichの名義で公開された米国特許出願公開No. 2005/0232972、表題“Drug delivery via punctual plug”に記載されており、その全開示は引用により本明細書に記載される。
【0083】
図9は、眼924の涙点開口部920への挿入用の軸912を持ち、開口部と連通する涙小管922に沿った、概して910と示された涙点プラグを示す。プラグ910は、開口部920に対して着座させるため、および眼924の表面上への涙液の流れに対して涙小管922を密封するための、軸912の外側端に接続された大きなストッパー構造914を持つ。例えばそれぞれインプラント910aと910bを持つ上涙小管922aと下涙小管922bなど、機能的に同様の部分を示すために、同じもしくは同様の数字が使用される。インプラント910aはほぼ円筒形の固体コラーゲンプラグであり、涙液の流れを遮断するために上涙点もしくは涙管920aの中に挿入されており、一方、下インプラント910bは、涙液を通すためにストローのように中空である。インプラント910bは、下涙点920bで固定化された、張り出し開口端912bを持つ、先細になった柄もしくは軸912aを含む。キノコ型の内側ストッパー914aは、涙管内でインプラントの位置をさらに設定するために、軸912aの反対端に形成される。図示のインプラントは任意の所望の組み合わせで使用され得る。例えば、インプラント910aが下涙小管内に配置されてもよく、インプラント910bが上涙小管内に配置されてもよい。あるいは、各タイプのインプラント(例えば910b)が両方の涙小管内に配置されてもよい。
【0084】
例えば軸の内側端において、またはストッパーの外側端上、または図9のインプラントの表面の一部もしくは全体にわたって、または他の方法で、一つ以上のバンド状のポリマー材料の中に、例えば薬物もしくは薬剤などの活性剤が適用される。周辺組織への排出のために充分な薬剤が存在し利用可能であるように、薬剤に対して吸収性のポリマーが好ましい。あるいは多孔質もしくは吸収性の材料が、活性剤で飽和され得るプラグもしくはインプラント全体を構成するために使用され得る。
【0085】
涙遮断涙点プラグと異なり、中空インプラントは非常に異なる薬物投与方法、方式、および構造を提供する。図9の中空インプラント910bは、活性剤が適用され得る、あるいは他の方法でインプラントの内面もしくは内側で利用可能である点で特に有用であり、涙を通すことによって、涙液の流れによって制御されるやり方で涙の流れに活性剤を投与するように独自に構造化されている。従って涙が薬剤のキャリアとしてはたらく。
【0086】
図10Aから10Cは、本発明の一実施形態に従う、徐放インプラントの配置を示す。図10Aに示すように、配置器具1010が涙点1000Aを通って涙小管1000に挿入される。徐放インプラント1020は配置器具1010の先端に組み込まれる。図10Bに示すように、配置器具1010の外側の鞘が引き抜かれて、徐放インプラント1020の保持部材1030を暴露する。図10Cに示すように、配置器具1010は除去され、徐放インプラント1020が涙小管1000に埋め込まれる。薬物芯1040は保持部1030に取り付けられ、涙小管内に保持される。外側の鞘体1050は薬物芯1040の少なくとも一部分を覆い、薬物芯1040は治療薬を涙小管1000の涙点1000A付近で涙液もしくは涙液膜1060に放出する。
【0087】
図11は、本発明の実施形態に従う、徐放治療薬インプラントと、眼1100もしくはその付近におけるインプラント位置を示す。徐放インプラントは、LacrisertR、強膜プラグ、強膜内ディスク、上強膜インプラント、注射用ロッド、黄斑インプラント、強膜内ディスク、VitrasertR、RetisertR、OcusertR、および/またはProsertRのインプラントで使用される構造の多くを含み得る。同様の構造は、Yasukawaらによる出版物“Expert Opinion on Drug Delivery”第三巻第二号、2006年3月1日、pp. 261-273(13)、Informa Healthcare出版に示される。徐放インプラント1100は、NJはWhitehouse StationのMerck & CO.から利用可能な、眼の下盲嚢(inferior cul-de-sac)への投与用のLacrisertTMインプラントの多くの構造を含んでもよい。徐放インプラント1120は、眼の強膜および/または硝子体液への投与用の強膜プラグインプラントの多くの構造を含んでもよい。強膜プラグおよび/またはびょう(tack)は、米国特許No. 5,466,233に記載されており、その全開示は引用により本明細書に組み込まれる。徐放インプラント1130は、強膜への投与用の強膜ディスクインプラントの多くの構造を含んでもよい。強膜内ディスクは強膜組織層へ挿入され得る。徐放インプラント1140は、強膜の表面付近に配置され得る上強膜ディスクインプラントの多くの構造を含んでもよく、経強膜(trans-scleral)薬物送達システムを提供し得る。徐放インプラント1150は、眼房水、強膜、および/または涙管への注入用の注射用ロッドの多くの構造を含んでもよい。徐放インプラント1160は、眼の黄斑組織付近への埋め込み用の黄斑インプラントの多くの構造を含んでもよい。徐放インプラント1170は、VitrasertRおよび/またはRetisertRインプラントの多くの構造を含んでもよい。VitrasertRおよびRetisertRインプラントは、New YorkはRochesterのBausch and Lombの子会社であるChiron Ophthalmicsから市販されている。OcusertRインプラントはNew JerseyはNew BrunswickのJohnson & Johnsonの子会社であるAlzaから市販されている。ProsertRインプラントはSwitzerlandはBaselのNovartisから市販されている。
【0088】
図12Aは、眼の視覚欠損を処置するために治療薬を放出する徐放インプラントと、治療薬の副作用に対抗するための追加の徐放インプラントとを含む、眼の視覚欠損を処置するための装置1200を示す。装置1200は上記の通り治療薬を放出する徐放インプラント1210を含む。装置1200は治療薬の第一の副作用に対抗する中和剤を放出する徐放インプラント1220を含む。治療薬は一つよりも多くの副作用を持つかもしれないので、装置1200は治療薬の第二の副作用に対抗する徐放インプラント1230を含んでもよい。徐放インプラントは、上述の通り眼もしくはその付近の位置の多くに同時に配置され得る。好ましい実施形態では、徐放インプラント1210はアトロピンを放出し得る。アトロピンの副作用の一つは瞳孔拡張であり、これは羞明に関連し得る。徐放インプラント1220は、治療薬によって引き起こされる瞳孔の拡張に対抗するための中和剤として縮瞳薬を放出してもよい。別の考えられるアトロピンの副作用は緑内障であり、徐放インプラント1230は緑内障を防ぐための中和剤として抗緑内障薬を放出してもよい。
【0089】
図12Bは、本発明の実施形態に従う、眼の視覚欠損を処置するための治療薬を放出し、治療薬の副作用に対抗する中和剤を放出する、徐放インプラント1250を示す。徐放インプラント1250は、鞘体1260と薬物芯1270とを含み得る。徐放インプラント1250は、上述の通り眼もしくはその付近の位置の多くに配置され得る。薬物芯1270は眼の視覚欠損を処置するための治療薬1280を含む。薬物芯1270は治療薬1280の副作用に対抗するための中和剤1282を含んでもよい。好ましい実施形態では、徐放インプラント1250はアトロピンを放出し得る。治療薬1282は、治療薬によって引き起こされる瞳孔の拡張に対抗する中和剤として縮瞳薬を含んでもよい。別の考えられるアトロピンの副作用は緑内障であり、治療薬1284は緑内障を防ぐための中和剤として抗緑内障薬を放出してもよい。治療薬、縮瞳薬、および抗緑内障薬は、徐放インプラント1250から一緒に放出されてもよい。
【0090】
本発明は上述の具体的な実施形態によって記載されているが、本発明の範囲と趣旨の内にある、容易になされ得る様々な修正と変更が当業者にはわかるだろう。従って、本発明は以降の請求項とその均等物の全範囲によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み可能な構造と、
眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、前記構造から前記眼の中へ送達可能な治療薬と、
を含む、眼で使用するためのインプラント。
【請求項2】
前記眼の前記屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視の少なくとも一つを含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項3】
前記治療薬は、前記眼の強膜、硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に送達される際に、前記眼の前記屈折特性に治療的効果をもたらすもしくは安定化させるような組成物を含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項4】
前記治療薬は散瞳薬もしくは調節麻痺剤のうちの少なくとも一つを含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項5】
前記治療薬は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つを含む調節麻痺剤を含む、請求項4記載のインプラント。
【請求項6】
前記眼もしくはそれに隣接した自然組織表面に沿って前記構造を保持するために前記構造に付属した保持部材をさらに含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項7】
前記保持部材は、涙点管、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つの中もしくはそれに隣接して前記構造を保持するために形作られる、請求項6記載のインプラント。
【請求項8】
前記構造は、涙点管、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つに隣接して前記構造を保持するために形作られる、請求項1記載のインプラント。
【請求項9】
前記構造は少なくとも一つの表面を持ち、前記眼の涙液もしくは涙液膜に前記少なくとも一つの表面を晒して前記インプラントが埋め込まれた際に、少なくとも一週間の期間を通して前記涙液もしくは涙液膜に治療量の前記治療薬を放出する、請求項1記載のインプラント。
【請求項10】
前記構造は、前記構造が前記眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって前記治療薬を治療量で放出するように構成される、請求項1記載のインプラント。
【請求項11】
前記構造は、容器、マトリクス、溶液、表面コーティング、もしくは生体浸食性材料のうちの少なくとも一つを含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項12】
前記構造は、薬物芯と、前記薬物芯を覆って配置される層とを含み、前記層を通しての前記治療薬の放出が抑制される、請求項1記載のインプラント。
【請求項13】
前記層はその中に形成される開口部を含み、前記開口部を通して前記薬物を放出する、請求項12記載のインプラント。
【請求項14】
前記構造は前記治療薬の粒子を含み、前記構造が埋め込まれた際に、前記粒子は独立に前記治療薬を放出し、ほぼ一定の放出速度をもたらす、請求項1記載のインプラント。
【請求項15】
前記構造の少なくとも一部分は生体浸食性であり、前記治療薬は前記構造が浸食される間に放出される、請求項1記載のインプラント。
【請求項16】
前記治療薬の副作用を防ぐための中和剤をさらに含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項17】
前記中和剤は抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含む、請求項16記載のインプラント。
【請求項18】
前記抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含む、請求項17記載のインプラント。
【請求項19】
前記抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
構造と、
眼に隣接して前記構造を保持するための涙点プラグと、
前記眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、前記構造から前記眼の中へ送達可能なアトロピンを含む治療薬と、
を含む、治療インプラント。
【請求項21】
前記眼の前記屈折特性は、近視、乱視、もしくは遠視のうちの少なくとも一つを含む、請求項20記載のインプラント。
【請求項22】
眼もしくはその付近の組織の中に構造を埋め込むステップを含み、
治療薬が、前記眼の屈折特性に効果をもたらすおよび/または安定化させるように、前記埋め込まれた構造から治療薬が放出されることを特徴とする、
治療薬で眼の視覚欠損を処置する方法。
【請求項23】
前記眼の前記屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記治療薬は、前記構造が前記眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療量で放出される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記期間は約6から12ヶ月である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記治療薬は前記期間にわたって持続的に放出される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記構造は、前記眼の強膜、涙点、もしくは結膜のうちの少なくとも一つの中に埋め込まれる、請求項22記載の方法。
【請求項28】
前記構造は前記涙点に固定され、前記眼の涙液もしくは涙液膜の中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記構造は前記強膜に固定され、前記眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記構造は前記結膜に固定され、前記眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記構造は前記結膜によって覆われ、前記眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記構造は前記結膜と前記強膜の間に配置される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記治療薬は前記眼の調節をもたらす、請求項22記載の方法。
【請求項34】
前記治療薬は調節麻痺剤を含む、請求項22記載の方法。
【請求項35】
前記調節麻痺剤は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記治療薬はアトロピンおよび前記アトロピンを含む、請求項22記載の方法。
【請求項37】
前記治療薬の副作用に対抗するために、前記埋め込まれた構造および/または別の構造から中和剤が放出される、請求項22記載の方法。
【請求項38】
前記中和剤は、抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含む、請求項37記載のインプラント。
【請求項39】
前記抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含む、請求項38記載のインプラント。
【請求項40】
前記治療薬は、治療薬放出の反応次数に対応するプロファイルで放出され、前記次数は約0から約1の範囲内である、請求項22記載の方法。
【請求項41】
前記範囲は約0から約0.5である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記範囲は約0から約0.25である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記治療薬は、治療薬放出の反応次数に対応するプロファイルで放出され、前記構造の挿入後少なくとも約1ヶ月の間、前記次数は約0から約0.5の範囲内である、請求項22記載の方法。
【請求項44】
前記次数は、前記構造の挿入後少なくとも約3ヶ月の間、前記範囲内である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬の副作用を防ぐために、抗緑内障薬および/または縮瞳薬のうちの少なくとも一つで前記眼を処置するステップを含む、
眼の視覚欠損を処置する方法。
【請求項46】
小児および/または青年が処置される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記眼の前記視覚欠損は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含む、請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記抗緑内障薬は縮瞳作用を有する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記縮瞳薬は、エコチオファート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、フルオロリン酸ジイソプロピル、カルバコール、メタコリン、ベタネコール、エピネフリン、ジピベフリン、ネオスチグミン、ヨウ化エコチオパート、もしくは臭化デメカリウムのうちの少なくとも一つを含む、請求項45記載の方法。
【請求項1】
埋め込み可能な構造と、
眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、前記構造から前記眼の中へ送達可能な治療薬と、
を含む、眼で使用するためのインプラント。
【請求項2】
前記眼の前記屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視の少なくとも一つを含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項3】
前記治療薬は、前記眼の強膜、硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に送達される際に、前記眼の前記屈折特性に治療的効果をもたらすもしくは安定化させるような組成物を含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項4】
前記治療薬は散瞳薬もしくは調節麻痺剤のうちの少なくとも一つを含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項5】
前記治療薬は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つを含む調節麻痺剤を含む、請求項4記載のインプラント。
【請求項6】
前記眼もしくはそれに隣接した自然組織表面に沿って前記構造を保持するために前記構造に付属した保持部材をさらに含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項7】
前記保持部材は、涙点管、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つの中もしくはそれに隣接して前記構造を保持するために形作られる、請求項6記載のインプラント。
【請求項8】
前記構造は、涙点管、強膜組織、もしくは結膜組織のうちの少なくとも一つに隣接して前記構造を保持するために形作られる、請求項1記載のインプラント。
【請求項9】
前記構造は少なくとも一つの表面を持ち、前記眼の涙液もしくは涙液膜に前記少なくとも一つの表面を晒して前記インプラントが埋め込まれた際に、少なくとも一週間の期間を通して前記涙液もしくは涙液膜に治療量の前記治療薬を放出する、請求項1記載のインプラント。
【請求項10】
前記構造は、前記構造が前記眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって前記治療薬を治療量で放出するように構成される、請求項1記載のインプラント。
【請求項11】
前記構造は、容器、マトリクス、溶液、表面コーティング、もしくは生体浸食性材料のうちの少なくとも一つを含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項12】
前記構造は、薬物芯と、前記薬物芯を覆って配置される層とを含み、前記層を通しての前記治療薬の放出が抑制される、請求項1記載のインプラント。
【請求項13】
前記層はその中に形成される開口部を含み、前記開口部を通して前記薬物を放出する、請求項12記載のインプラント。
【請求項14】
前記構造は前記治療薬の粒子を含み、前記構造が埋め込まれた際に、前記粒子は独立に前記治療薬を放出し、ほぼ一定の放出速度をもたらす、請求項1記載のインプラント。
【請求項15】
前記構造の少なくとも一部分は生体浸食性であり、前記治療薬は前記構造が浸食される間に放出される、請求項1記載のインプラント。
【請求項16】
前記治療薬の副作用を防ぐための中和剤をさらに含む、請求項1記載のインプラント。
【請求項17】
前記中和剤は抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含む、請求項16記載のインプラント。
【請求項18】
前記抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含む、請求項17記載のインプラント。
【請求項19】
前記抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
構造と、
眼に隣接して前記構造を保持するための涙点プラグと、
前記眼の屈折特性に治療的効果をもたらすおよび/または安定化させるために、前記構造から前記眼の中へ送達可能なアトロピンを含む治療薬と、
を含む、治療インプラント。
【請求項21】
前記眼の前記屈折特性は、近視、乱視、もしくは遠視のうちの少なくとも一つを含む、請求項20記載のインプラント。
【請求項22】
眼もしくはその付近の組織の中に構造を埋め込むステップを含み、
治療薬が、前記眼の屈折特性に効果をもたらすおよび/または安定化させるように、前記埋め込まれた構造から治療薬が放出されることを特徴とする、
治療薬で眼の視覚欠損を処置する方法。
【請求項23】
前記眼の前記屈折特性は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記治療薬は、前記構造が前記眼の中に挿入された後、約1から12ヶ月の期間にわたって治療量で放出される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記期間は約6から12ヶ月である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記治療薬は前記期間にわたって持続的に放出される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記構造は、前記眼の強膜、涙点、もしくは結膜のうちの少なくとも一つの中に埋め込まれる、請求項22記載の方法。
【請求項28】
前記構造は前記涙点に固定され、前記眼の涙液もしくは涙液膜の中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記構造は前記強膜に固定され、前記眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記構造は前記結膜に固定され、前記眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記構造は前記結膜によって覆われ、前記眼の硝子体液、眼房水、もしくは毛様体筋のうちの少なくとも一つの中に前記治療薬を放出する、請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記構造は前記結膜と前記強膜の間に配置される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記治療薬は前記眼の調節をもたらす、請求項22記載の方法。
【請求項34】
前記治療薬は調節麻痺剤を含む、請求項22記載の方法。
【請求項35】
前記調節麻痺剤は、アトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、もしくはトロピカミドのうちの少なくとも一つを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記治療薬はアトロピンおよび前記アトロピンを含む、請求項22記載の方法。
【請求項37】
前記治療薬の副作用に対抗するために、前記埋め込まれた構造および/または別の構造から中和剤が放出される、請求項22記載の方法。
【請求項38】
前記中和剤は、抗緑内障薬もしくは縮瞳薬のうちの少なくとも一つを含む、請求項37記載のインプラント。
【請求項39】
前記抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含む、請求項38記載のインプラント。
【請求項40】
前記治療薬は、治療薬放出の反応次数に対応するプロファイルで放出され、前記次数は約0から約1の範囲内である、請求項22記載の方法。
【請求項41】
前記範囲は約0から約0.5である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記範囲は約0から約0.25である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記治療薬は、治療薬放出の反応次数に対応するプロファイルで放出され、前記構造の挿入後少なくとも約1ヶ月の間、前記次数は約0から約0.5の範囲内である、請求項22記載の方法。
【請求項44】
前記次数は、前記構造の挿入後少なくとも約3ヶ月の間、前記範囲内である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
眼の視覚欠損を処置するために使用される治療薬の副作用を防ぐために、抗緑内障薬および/または縮瞳薬のうちの少なくとも一つで前記眼を処置するステップを含む、
眼の視覚欠損を処置する方法。
【請求項46】
小児および/または青年が処置される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記眼の前記視覚欠損は、近視、遠視、もしくは乱視のうちの少なくとも一つを含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、もしくはプロスタグランジンアナログのうちの少なくとも一つを含む、請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記抗緑内障薬は、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、エピネフリン、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオファート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾスチグミン、ピロカルピン、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、メタゾラミド、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブロノール、メチプラノロール、チモロール、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストン、ダピプラゾール、もしくはグアネチジンのうちの少なくとも一つを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記抗緑内障薬は縮瞳作用を有する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記縮瞳薬は、エコチオファート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、フルオロリン酸ジイソプロピル、カルバコール、メタコリン、ベタネコール、エピネフリン、ジピベフリン、ネオスチグミン、ヨウ化エコチオパート、もしくは臭化デメカリウムのうちの少なくとも一つを含む、請求項45記載の方法。
【図1−1】
【図1−2】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図12A】
【図12B】
【図11】
【図1−2】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図12A】
【図12B】
【図11】
【公表番号】特表2010−514517(P2010−514517A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544237(P2009−544237)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/088701
【国際公開番号】WO2008/083118
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508291478)キューエルティー プラグ デリバリー,インク. (11)
【氏名又は名称原語表記】QLT PLUG DELIVERY,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/088701
【国際公開番号】WO2008/083118
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508291478)キューエルティー プラグ デリバリー,インク. (11)
【氏名又は名称原語表記】QLT PLUG DELIVERY,INC.
【Fターム(参考)】
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