説明

角度検出装置

【課題】駆動軸のズレやガタツキ、偏心にも拘わらず回転角度を高精度に検出することができる角度検出装置を得る。
【解決手段】駆動軸4と、回転センサ5と、駆動軸4と回転センサ5のロータ53との間に介在させた回転体3とからなる角度検出装置。回転体3は弾性部15を備えかつピボット軸部16を有し、回転軸Lを中心として回転する。弾性部15は、横断面中央部に貫通孔3bを有し、相互に直交する中実部3cの積み重ね構造となっている。ピボット軸部16はカバー部2bのピボット軸受け32に回転自在に支持され、軸受け部58によってロータ53を介して回転軸L上に位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度検出装置、特に、スロットルバルブ、スイベリングランプユニット、ステアリングユニット、回転型操作スイッチなどに用いられる、外部から伝達される回転角度を高精度に検出する角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の角度検出装置では、一般的に、抵抗体上を摺動する接片及び集電体上を摺動する接片が形成された摺動子を取り付けた回転体と駆動軸とを係合させ、駆動軸の回転により端子間の抵抗値が調整されるという構造を採用している。
【0003】
ここで、駆動軸は、部品精度や組み付け精度の不具合や耐久劣化により、ラジアル/スラスト方向にズレやガタツキ、偏心が発生し、摺動接片と抵抗体の位置ズレによって精度が悪化し、さらに、ロータの軸受け部に摺動摩耗粉が発生することによっても、角度検出に出力ノイズを起こすことがある。そこで、この問題点を解決するものとして、特許文献1に記載の回転型センサが知られている。この回転型センサは、回転体に設けられた係合溝部に駆動軸を挿入することにより、駆動軸のズレやガタツキ、偏心を係合溝部で吸収しようとするものである。
【0004】
しかしながら、この回転型センサにおいても、回転体と基板の位置関係を規制する構造になっていないため、センサの出力精度が悪いという問題点を有していた。
【特許文献1】特開2000−88510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、駆動軸のズレやガタツキ、偏心にも拘わらず回転角度を高精度に検出することができる角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、駆動軸の回転角度を回転センサにより検出する角度検出装置において、弾性部を備えた回転体を駆動軸と回転センサのロータ部との間に介在させ、かつ、該回転体が駆動軸と同軸に回転自在に保持されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る角度検出装置においては、弾性部を備えた回転体が駆動軸と回転センサのロータ部との間に介在されているため、駆動軸にズレやガタツキ、偏心が発生しても、回転体の回転軸位置がずれることはなく、回転センサのロータ部の回転位置変動が抑えられる。さらに、回転体の弾性部によって駆動軸の位置変動が吸収され、駆動軸のズレやガタツキ、偏心による回転センサのロータ部への荷重が軽減され、ロータ部の摺動磨耗が低減する。
【0008】
本発明に係る角度検出装置においては、回転体はその先端にピボット軸部を有し、該ピボット軸部は回転センサの軸受け部によってロータを介して駆動軸と同軸上に位置決めされていることが好ましい。また、回転体の弾性部は、貫通孔と、相互に直交する中実部の積み重ね構造とから構成することができる。
【0009】
また、駆動軸の略半円形状先端部を回転体に設けた略半円形状の穴に圧入すれば、駆動軸と回転体とが回転方向にガタツキなく係合する。
【0010】
さらに、回転体のピボット軸部を回転可能に支持するピボット軸受けを有する筐体を備え、回転センサの端子を筐体に埋設した端子に接合することにより、回転センサを筐体に搭載してもよい。これにより、実装プリント基板が不要となる。
【0011】
また、回転センサの裏面に設けた突部を筐体に設けた位置決め孔に嵌合させることにより、回転センサの回転方向の位置決め精度が向上する。また、回転センサに設けた円環状の突部を筐体のピボット軸受けの同心上に設けた位置決め孔に嵌合させることにより、回転体とピボット軸受けとの同心度が向上する。
【0012】
さらに、筐体のピボット軸受けに、フッ素オイルを基油としたグリスを充填することにより、ピボット軸受けの磨耗が低減されるとともに、フッ素オイルの回転センサ内部への浸入により回転センサの寿命が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動軸にズレやガタツキ、偏心が発生しても、駆動軸と回転センサのロータ部との間に介在させた回転体の回転軸位置が規制されているので、回転センサのロータ部の回転位置変動を抑制することができ、高精度で回転角度を検出することができる。しかも、回転体に弾性部を備えているので、駆動軸の位置変動を効果的に吸収し、駆動軸のズレやガタツキ、偏心によるロータ部の摺動磨耗を低減でき、ひいては回転センサの出力ノイズを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る角度検出装置の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は駆動軸の回転角度を回転センサにより検出する角度検出装置1の要部断面を示す。この角度検出装置1は、概略、筐体2、回転体3、駆動軸4及び可変抵抗型回転センサ5を備えている。
【0016】
筐体2は、PBT樹脂などからなり、箱形状の基台部2aと、この基台部2aの底部開口を塞ぐカバー部2bとで構成されている。基台部2aの上壁には、駆動軸4を挿通するための円形開口31が形成されている。カバー部2bの上面には、凹部からなる半球状又は円錐状のピボット軸受け32が形成されている。
【0017】
駆動軸4は、所定の回転角度範囲内で往復回転するように設定されており、横断面形状が円形の棒状体であり、先端部4aが略半円形状とされている(図4参照)。そして、先端部4aが回転体3の基部14に設けた略半円形状の穴3aに圧入されることにより、駆動軸4と回転体3が回転方向にガタツキなく係合し、回転センサ5の出力精度やヒステリシスを向上させることができる。こうして、駆動軸4の回転に伴って回転体3が回転する。
【0018】
回転体3は、POM樹脂などからなり、基台部2a内に回転自在に収納されている。この回転体3は、弾性部15を備えかつ下端にピボット軸部16を有し、回転軸Lを中心として回転自在であり、前述のごとく駆動軸4に対して一体的に回転可能に係合している。図2(A)は回転体3の平面、図2(B)は正面、図2(C)は底面をそれぞれ示している。
【0019】
回転体3の弾性部15は、図3に示す構造を有している。図3(A)は図2(B)のDD断面、図3(B)はEE断面、図3(C)はFF断面をそれぞれ示している。即ち、弾性部15は、横断面中央部に貫通孔3bを有し、相互に直交する中実部3cを積み重ねた構造となっている。
【0020】
ピボット軸部16の先端部は半球状に突出した状態に形成され、このピボット軸部16がカバー部2bのピボット軸受け32に回転自在に支持されている。さらに、ピボット軸部16は、回転センサ5のロータ53の貫通孔53aに嵌合し、ロータ53は軸受け部58によって回転軸L上で回転自在に支持されている。軸受け部58は、回転センサ5のカバー51と基板54とがロータ53と接する部分で構成されている。即ち、ピボット軸部16はその先端部がピボット軸受け32で回転自在に支持されているとともに、回転センサ5の軸受け部58によってロータ53を介して駆動軸4と同軸上に位置決めされている。
【0021】
さらに、ピボット軸受け32には、フッ素オイルを基油としたグリスが充填されており、ピボット軸部16とピボット軸受け32の摺動磨耗の低減を図っている。また、フッ素オイルが回転センサ5の内部に浸入することにより、回転センサ5の寿命が向上する。
【0022】
ピボット軸部16は回転センサ5のロータ53に嵌合されている。即ち、図5に示すように、ピボット軸部16のロータ53に嵌合される部分の横断面形状を略小判型にし、その片側に突起16aを設けている。一方、ロータ53には、ピボット軸部16及び突起16aに対応する貫通孔53aが形成されている。突起16aを設けることで、ピボット軸部16をロータ53の貫通孔53aへ180°反転して誤嵌合するのを防止できる。
【0023】
さらに、ロータ53にはバネ性を有する摺動子52(図1参照)が取り付けられている。摺動子52は、図示しない抵抗体や集電体のパターンと接触している。
【0024】
可変抵抗型回転センサ5は抵抗基板54及びカバー51を有し、抵抗基板54に設けられた端子55を、カバー部2bに埋設した端子25に抵抗溶接やはんだ付けなどで接合することにより、カバー部2bの上面に実装されている。これにより、実装プリント基板が不要となり、部品点数を低減することができる。
【0025】
抵抗基板54の上面には、円弧状の抵抗体や集電体のパターン(図示せず)が印刷などで形成され、これらのパターンは端子55に接続しており、かつ、摺動子52が弾性的に接触している。
【0026】
また、図6に示すように、回転センサ5の裏面に設けた円環状突部56を、カバー部2bのピボット軸受け32の同心円上に形成した位置決め孔26に嵌合させている。これにより、回転センサ5と回転軸Lの同心度を向上させることができる。さらに、回転センサ5の裏面に設けた位置決め突部57を、カバー部2bに形成した位置決め孔27に嵌合させている。この結果、回転センサ5の回転方向の位置決め精度を向上させることができる。
【0027】
以上の構成からなる角度検出装置1は、駆動軸4の回転が回転体3を介してロータ53に伝達される。このとき、回転体3の弾性部15で駆動軸4の位置変動を吸収し、ピボット軸受け32とロータ53の貫通孔53aと軸受け部58とでピボット軸部16を回転軸L上に位置決めすることにより、ロータ53の回転位置変動を抑制している。このため、駆動軸4にズレやガタツキ、偏心が発生しても高精度に回転角度検出をすることができる。
【0028】
また、回転体3の弾性部15が駆動軸4の位置変動を吸収するので、駆動軸4のズレやガタツキ、偏心によるロータ53への荷重を軽減でき、ロータ53とその軸受け部58の摺動磨耗を低減でき、出力ノイズの発生を抑制できる。
【0029】
そして、樹脂成形品である回転体3に弾性部15を内蔵させたため、別体の弾性部品が不要となり、部品点数が低減できる。さらに、弾性部15は、横断面中央部に貫通孔3bを有し、相互に直交する中実部3cの積み重ね構造となっているので、樹脂による一体成形が可能となり、安価に大量生産することができる。また、積み重ね数の増減などにより容易に弾性部15のバネ定数の設計ができる。
【0030】
なお、本発明に係る角度検出装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0031】
例えば、図7に示すように、回転センサ5を実装プリント基板61に搭載した角度検出装置であってもよい。また、回転センサは、駆動軸に回転体を介して連結したロータに設けた磁石を磁気抵抗素子で検出するタイプのものであってもよい。
【0032】
また、回転体の弾性部は、駆動軸の偏心などを吸収できる構造であれば種々の構造を採用することができる。さらに、ピボット軸受けに充填されるグリスは、前記フッ素オイルを基油としたものに限らず、種々のグリスを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る角度検出装置の一実施例を示す要部断面図。
【図2】図1に示した回転体を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図。
【図3】(A)は図2(B)のDD断面図、(B)はEE断面図、(C)はFF断面図。
【図4】図1のAA断面図。
【図5】図1のBB矢視図。
【図6】図5のCC断面図。
【図7】本発明に係る角度検出装置の他の実施例を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0034】
1…角度検出装置
2…筐体
3…回転体
3a…略半円形状穴
3b…貫通孔
3c…中実部
4…駆動軸
4a…先端部
5…回転センサ
14…基部
15…弾性部
16…ピボット軸部
25…端子
26,27…位置決め孔
32…ピボット軸受け
53…ロータ
53a…貫通孔
55…端子
56…円環状突部
57…位置決め突部
58…軸受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸の回転角度を回転センサにより検出する角度検出装置において、
弾性部を備えた回転体を前記駆動軸と前記回転センサのロータ部との間に介在させ、かつ、該回転体が駆動軸と同軸に回転自在に保持されていること、
を特徴とする角度検出装置。
【請求項2】
前記回転体はその先端にピボット軸部を有し、該ピボット軸部は前記回転センサの軸受け部によって前記ロータを介して前記駆動軸と同軸上に位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載の角度検出装置。
【請求項3】
前記回転体の弾性部は、貫通孔と、相互に直交する中実部の積み重ね構造とからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の角度検出装置。
【請求項4】
前記駆動軸の略半円形状先端部を前記回転体に設けた略半円形状の穴に圧入することにより、前記駆動軸と前記回転体とが係合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の角度検出装置。
【請求項5】
前記回転体のピボット軸部を回転可能に支持するピボット軸受けを有する筐体を備え、前記回転センサの端子を前記筐体に埋設した端子に接合することにより、前記回転センサを前記筐体に搭載したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の角度検出装置。
【請求項6】
前記回転センサの裏面に設けた突部が前記筐体に設けた位置決め孔に嵌合されていることを特徴とする請求項5に記載の角度検出装置。
【請求項7】
前記筐体のピボット軸受けに、フッ素オイルを基油としたグリスが充填されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−180499(P2009−180499A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75210(P2006−75210)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】