説明

記録再生装置

【課題】フラッシュメモリの劣化をより迅速に検出できる。
【解決手段】速度導出部180は、SSD136に対するデータの読み書き速度を導出する。速度保持部138は、速度導出部が導出した読み書き速度を保持する。劣化判定部182は、任意の時点のSSDに対するデータの読み書き速度の、速度保持部に保持されている任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出し、導出された変化率が所定の閾値以下となると、SSDが劣化していると判定する。報知部184は、劣化判定部が、SSDが劣化していると判定した場合、その旨報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュメモリに対してデータの読み書きを行う記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SDカード、SSD(Solid State Drive)等のフラッシュメモリは、HDD等の磁気記録装置と比べると、ディスク等の回転駆動機構を有さず、耐衝撃性が高く、また、低消費電力で転送速度も速い等の利点を有している。そのため、近年、映像等の比較的容量の大きなデータの記録媒体としても普及している。
【0003】
しかし、フラッシュメモリは書き換え寿命が1万〜10万回程度であり、書き換えに伴って内部のメモリセル(セクタ)にはダメージが蓄積され、メモリセルは蓄積されたダメージにより劣化する。劣化したメモリセルでは、データの読み書きの際にECC(Error Checking and Correction)エラーの生じる可能性が増え、データの読み書き速度も低下する。そして、フラッシュメモリ全体で劣化が進むと、やがて記録媒体として利用不能となる。
【0004】
そこで、フラッシュメモリへのデータ書き込み処理に際して行われる各メモリセルの消去時間を測定し、この消去時間とテーブルデータに予めに記録しておいた当該メモリセルの初期設定時の消去時間との時間差が一定時間以上になるときにフラッシュメモリの劣化として警告を行う技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−267761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の技術を用いる場合、警告を契機とし、そのフラッシュメモリのデータのバックアップを取って使用を中止すれば、ユーザはデータの損失を免れることができる。しかし、データ書き込み時における各メモリセルの既存データの消去時間に基づいて劣化が判定されているため、任意のデータ書き込み時に劣化が急激に進んだ場合、次のデータ書き込み時まで、メモリセルの劣化を検出することができないという問題が推察される。
【0007】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、フラッシュメモリの劣化をより迅速に検出することが可能な、記録再生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の記録再生装置(100)は、フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度を導出する速度導出部(180)と、前記速度導出部(180)が導出した読み書き速度を保持する速度保持部(138)と、任意の時点の前記フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度の、前記速度保持部(138)に保持されている、前記任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出し、導出された前記変化率が所定の閾値以下となると、前記フラッシュメモリ(136)が劣化していると判定する劣化判定部(182)と、前記劣化判定部(182)が、前記フラッシュメモリ(136)が劣化していると判定した場合、その旨報知する報知部(184)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の他の記録再生装置(100)は、データの記録が生じた場合にフラッシュメモリ(136)への書き込みを指示する書き込み制御部(186)と、フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度を導出する速度導出部(180)と、前記速度導出部(180)が導出した読み書き速度を保持する速度保持部(138)と、任意の時点の前記フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度の、前記速度保持部(138)に保持されている、前記任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出し、導出された前記変化率が所定の閾値以下となるとフラッシュメモリ(136)が劣化していると判定する劣化判定部(182)と、を備え、前記書き込み制御部(186)は、前記劣化判定部(182)が、前記フラッシュメモリ(136)が劣化していると判定した場合、前記フラッシュメモリ(136)以外の記録媒体(200)が記録可能な状態であれば、データの記録先を、前記フラッシュメモリ(136)以外の記録媒体(200)に切り換えることを特徴とする。
【0010】
前記書き込み制御部(186)が、データの記録先を、前記フラッシュメモリ(136)以外の記録媒体(200)に切り換えると、前記フラッシュメモリ(136)に記録されているデータを、前記フラッシュメモリ(136)以外の記録媒体(200)に記録させるバックアップ処理を行うバックアップ部(188)をさらに備えてもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の他の記録再生装置(100)は、フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度を導出する速度導出部(180)と、前記速度導出部(180)が導出した読み書き速度を保持する速度保持部(138)と、任意の時点の前記フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度の、前記速度保持部(138)に保持されている、前記任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出し、導出された前記変化率が所定の閾値以下となると前記フラッシュメモリ(136)が劣化していると判定する劣化判定部(182)と、前記劣化判定部(182)が、前記フラッシュメモリ(136)が劣化していると判定した場合に、前記フラッシュメモリ(136)以外の記録媒体(200)が記録可能な状態であれば、前記フラッシュメモリ(136)に記録されているデータを、前記フラッシュメモリ(136)以外の記録媒体(200)に記録させるバックアップ処理を行うバックアップ部(188)と、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記バックアップ処理の後、前記フラッシュメモリ(136)を初期化する初期化部(190)をさらに備えてもよい。
【0013】
前記任意の時点の前記フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度は、今回の読み書き速度であって、前記速度保持部(138)に保持されている前記任意の時点より前の読み書き速度は、前回の読み書き速度であってもよい。
【0014】
前記任意の時点の前記フラッシュメモリ(136)に対するデータの読み書き速度は、今回の読み書き速度であって、前記速度保持部(138)に保持されている前記任意の時点より前の読み書き速度は、出荷前の読み書き速度であってもよい。
【0015】
前記速度導出部(180)は、前記フラッシュメモリ(136)への読み書きの対象となるデータの大きさが所定量を超えている場合、前記読み書き速度を導出してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、フラッシュメモリの劣化をより迅速に検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】記録再生装置の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【図2】劣化判定処理を説明するための説明図である。
【図3】記録再生方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
フラッシュメモリは、映像等の比較的容量の大きなデータを記録する記録媒体としても普及している。このフラッシュメモリ内部に設けられたメモリセルには、すでにデータが記録されていると直接データの上書きができない。また、書き込みサイズはページ単位(2〜4kB程)で行われるのに対し、消去サイズはブロック単位(128〜512kB程)で行われ、まとまったデータに対して一括で消去処理が行われる。
【0020】
このフラッシュメモリのデータの消去処理は内部の破壊行為に相当するため、消去処理毎にメモリセルにはダメージが蓄積され、結果メモリセルは劣化する。ダメージが蓄積されすぎると、メモリセルはやがて使用できない不良セルとなる。そして、不良セル(不良ブロック)の増加に伴いECC(Error Checking and Correction)エラーが増え、データの読み書き速度(転送速度)も低下していく。データの転送速度が低下しないようにするため、データの消去処理が特定のブロックに集中しないようにするウェアレベリング、不良ブロックの使用を回避する処理等、フラッシュメモリの寿命を延ばす技術も採用されている。しかし、ウェアレベリングを用いてもいずれは不良セルが増加する。また、不良ブロックの使用を回避すると記録容量が低下してしまう。こうしてフラッシュメモリは劣化し、記録媒体として利用できなくなる。
【0021】
以下の実施形態では、このような不良セルの増加に伴うフラッシュメモリの劣化をより迅速に検出可能な記録再生装置について説明する。
【0022】
(記録再生装置100)
図1は、記録再生装置100の概略的な構成を示した機能ブロック図である。図1中、実線矢印はデータの流れを、破線矢印は制御信号の流れを示す。本実施形態では、記録再生装置100として、撮像部122を備える撮像装置を例に挙げるが、かかる場合に限定されず、記録再生装置として、フラッシュメモリを記録媒体として利用可能な、テレビジョン放送の録画装置、パーソナルコンピュータの記録装置等、フラッシュメモリを記録媒体として利用可能な様々な装置を適用可能である。
【0023】
記録再生装置100は、操作部120と、撮像部122と、データ処理部124と、表示部126と、圧縮伸長部128と、外部出力部130と、バッファ部132と、記録読取部134と、SSD136と、速度保持部138と、タイマー140と、中央制御部142とを含んで構成される。
【0024】
操作部120は、レリーズスイッチを含む操作キー、十字キー、ジョイスティック等で構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。また、後述する表示部126の表示面にタッチパネルを配し、操作部120としてもよい。
【0025】
撮像部122は、撮像レンズ150と、画角変更に用いられるズームレンズ152、焦点調整に用いられるフォーカスレンズ154と、露光調整に用いられるアイリス(絞り)156と、撮像レンズ150を通じて入射した光束を映像データに光電変換する撮像素子158と、中央制御部142の制御信号に応じて、ズームレンズ152、フォーカスレンズ154、およびアイリス156をそれぞれ駆動させる駆動部160とを含んで構成され、被写体を撮像して映像データを生成してデータ処理部124に出力する。
【0026】
データ処理部124は、撮像部122から出力された映像データに所定の処理を施し、処理後の映像データを圧縮伸長部128に出力する。表示部126は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成される。
【0027】
圧縮伸長部128は、データ処理部124から出力された映像データを所定の符号化方式で符号化し符号データを生成する。また、圧縮伸長部128は、記録読取部134がSSD136や着脱可能な記憶媒体、例えばSDカード200から読み取った符号データを復号して映像データを生成する。
【0028】
外部出力部130は、データ処理部124または圧縮伸長部128が生成した映像データを外部表示装置202に出力する。バッファ部132は、SRAM(Static Random Access Memory)等で構成される。
【0029】
記録読取部134は、後述する書き込み制御部186やバックアップ部188の制御指令に応じて、符号データをSSD136やSDカード200に書き込んだり、SSD136やSDカード200に記録された符号データを読み出してバッファ部132に保持させたりする。
【0030】
SSD136は、フラッシュメモリであり、符号データを保持する。速度保持部138は、EEPROM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、後述する速度導出部180が導出したSSD136に対する読み書き速度を保持する。タイマー140は、速度導出部180の制御指令に応じて、SSD136に対するデータの読み書きに要した時間を測定する。
【0031】
中央制御部142は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、記録再生装置100全体を管理および制御する。また、中央制御部142は、速度導出部180、劣化判定部182、報知部184、書き込み制御部186、バックアップ部188、初期化部190として機能する。
【0032】
速度導出部180は、SSD136またはSDカード200に対するデータの読み書き速度を導出する。劣化判定部182は、SSD136またはSDカード200が劣化しているか否かを判定する。報知部184は、劣化判定部182の制御指令に応じて、その判定結果を表示部126または外部表示装置202に報知(表示)させる。
【0033】
書き込み制御部186は、データの記録が生じた場合にSSD136への書き込みを指示する。バックアップ部188は、SSD136が劣化していると判定されると、SDカード200に記録されているデータを、SSD136に記録させるバックアップ処理を行う。初期化部190は、バックアップ処理が実行された場合に、そのバックアップ処理の後、SSD136を初期化する。
【0034】
続いて、記録再生装置100の各構成要素を用いた処理(速度測定処理、劣化判定処理、報知処理、記録先切換処理、バックアップ処理、初期化処理)について詳述する。以下では、説明の重複を防止するため、SSD136およびSDカード200のうち、SSD136への各種処理を主に説明する。
【0035】
(速度測定処理)
速度導出部180は、撮像部122が撮像処理を行って生成した映像データをSSD136に記録する場合、SSD136に記録されている映像データを読み出して表示部126または外部表示装置202に表示する場合、または、SDカード200に記録されている映像データをSSD136にダビングする場合等に、SSD136に対する読み書き速度を導出する。
【0036】
具体的に速度導出部180は、記録読取部134から、SSD136に対する読み書きの対象となったデータの大きさを取得する。また、速度導出部180は、記録読取部134に、SSD136対する読み書き処理を実行させると共に、その開始タイミングおよび終了タイミングに基づいて、タイマー140に、SSD136に対するデータの読み書きに要した時間を測定させる。そして、速度導出部180は、読み書きの対象となったデータの大きさを、測定された時間で除算し(データの大きさ/測定時間)、SSD136に対するデータの読み書き速度を導出する。
【0037】
上述したように、SSD136の劣化が進むと不良セルが増加し、それに伴いECCエラーが増え、読み書き速度も低下していく。本実施形態では、速度導出部180がこの読み書き速度を導出し、その読み書き速度をSSD136の劣化を判定する指標とする。
【0038】
本実施形態において、記録再生装置100は、バッファ部132を備えるため、速度導出部180は、例えば、SSD136に対するデータの書き込み処理において、所定量以上の大きさとなるデータがバッファ部132に一旦保持された後、バッファ部132に保持されたデータについて、そのデータの大きさと書き込み処理にかかった時間から書き込み速度を導出する。こうすることで、圧縮伸長部128の符号化処理が停滞した場合に、書き込み速度が遅く導出されてしまう事態を回避できる。
【0039】
また、速度導出部180は、読み書きに要した時間測定および読み書き速度の導出処理を、前回、SSD136に対するデータの読み書き速度を導出してから、所定期間を経過した後、または、所定回数のデータの読み書きが発生した後、次にデータの読み書きが発生した際に行うとしてもよい。
【0040】
例えば、徐々に読み書き速度が遅くなっている場合、劣化判定部182がSSD136の劣化を検出できない可能性がある。前回の導出から所定期間以上、または所定回数以上になるまで待って読み書き速度を導出する構成により、記録再生装置100は、SSD136の劣化を確実に検出することができる。
【0041】
ところで、小さすぎるデータの読み書き処理では、エラーの発生頻度のばらつきが大きい。そのため、読み書き速度もばらついてしまうため、SSD136の劣化を正しく検出できない。また、小さすぎるデータの書き込み処理では、メモリセル毎にデータの消去処理の発生頻度が偏るため、局所的なメモリセルの劣化の影響が大きくなり、SSD136全体の劣化を正しく評価できない。
【0042】
そこで、速度導出部180は、SSD136への読み書きの対象となるデータの大きさが所定量(所定長)を超えている場合、読み書き速度を導出する。
【0043】
このように、速度測定部180が読み書き速度を導出する対象を、所定量よりも大きなデータに限定する構成により、記録再生装置100は、SSD136の劣化を精度よく検出することができる。
【0044】
(劣化判定処理)
図2は、劣化判定処理を説明するための説明図である。図2(a)、(b)において、縦軸はSSD136に対するデータの読み書き速度、横軸はタイマー140が測定した時間の累積時間(SSD136に対するデータの読み書き処理に要した延べ時間)を示す。
【0045】
劣化判定部182は、任意の時点のSSD136に対するデータの読み書き速度の、速度保持部138に保持されている任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出する。導出された変化率が所定の閾値以下となると、劣化判定部182は、SSD136が劣化していると判定する。
【0046】
ここで、任意の時点のフラッシュメモリに対するデータの読み書き速度は、今回の読み書き速度であって、速度保持部138に保持されている任意の時点より前の読み書き速度は、前回の読み書き速度である。このとき、所定の閾値は、負の値である第1所定閾値であって、変化率が第1所定閾値以下となることは、すなわち、変化率の絶対値が第1所定閾値の絶対値以上に大きくなることを示す。
【0047】
例えば、劣化判定部182は、図2(a)のように、今回のSSD136に対するデータの読み書き速度Vnの、前回の読み書き速度Vn−1に対する変化率ΔV/Δtを導出する。ただし、ΔV=Vn−Vn−1、Δtは読み書き速度Vnが導出された際のデータの読み書きに要した時間とする。以下、変化率ΔV/Δtを下降率(下落率)と称す。
【0048】
そして、劣化判定部182は、図2(a)における読み書き速度Vn−1から読み書き速度Vnへの遷移のように、下降率が第1所定閾値α(図2(a)における傾きα)以下となると、SSD136が劣化していると判定する。
【0049】
このように、本実施形態の劣化判定部182は、例えば、前回の読み書き速度と今回の読み書き速度とを比較して下降率を導出し、その下降率に基づいてSSD136の劣化を判定する。そのため、SSD136に対するデータの書き込み処理に限らず、SSD136からのデータの読み出し処理においても、劣化判定処理が実行される。かかる構成により、記録再生装置100は、SSD136の劣化をより迅速に検出し、SSD136に記録されているデータを保護することが可能となる。
【0050】
また、劣化を検出する対象となるフラッシュメモリは、SSD136に限らず、着脱可能な外部記憶媒体(例えば、SDカード200等)であってもよい。
【0051】
さらに、速度保持部138に保持されている任意の時点より前の読み書き速度は、出荷前の読み書き速度であってもよい。この場合、劣化判定部182は、今回のSSD136に対するデータの読み書き速度の、SSD136に予め保持されている出荷前の読み書き速度に対する変化率を導出する。そして、導出された変化率が所定の閾値である第2所定閾値以下となると、劣化判定部182はSSD136が劣化していると判定する。
【0052】
例えば、劣化判定部182は、図2(b)に示す今回の読み書き速度Vnに対する、出荷前の読み書き速度V0の変化率Vn/V0を導出する。そして、変化率Vn/V0が第2所定閾値β以下となると、劣化判定部182はSSD136が劣化していると判定する。以下、変化率Vn/V0を劣化率と称す。
【0053】
図2(b)において、第2所定閾値βに対応する読み書き速度の閾値Vthを示す。ただし、Vth=β×V0とする。すなわち、劣化判定部182は、図2(b)に示すように、今回の読み書き速度Vnが読み書き速度の閾値Vth以下となると、SSD136が劣化していると判定するともいえる。
【0054】
このように、本実施形態の劣化判定部182は、例えば、出荷前の読み書き速度と今回の読み書き速度とを比較して劣化率を導出し、その劣化率に基づいてSSD136の劣化を判定する。そのため、SSD136に対するデータの書き込み処理に限らず、SSD136からのデータの読み出し処理においても、劣化判定処理が実行される。かかる構成により、記録再生装置100は、SSD136の劣化をより迅速に検出し、SSD136に記録されているデータの保護を推奨することが可能となる。
【0055】
また、劣化判定部182は、出荷前のまったく劣化していないSSD136の読み書き速度を比較対象として劣化判定処理を行えるため、精度よく劣化を検出できる。かかる出荷前の読み書き速度は、劣化が進む前のSSD136の読み書き速度であればよく、例えば、ユーザの初期設定を指示する操作に応じて、速度導出部180が導出した読み書き速度であってもよい。
【0056】
さらに、出荷前の読み書き速度は、SSD136に予め保持されているものとしたが、かかる場合に限定されず、例えば、速度保持部138に予め保持されていてもよい。
【0057】
また、劣化判定部182は、劣化率が所定の回数以上、第2所定閾値β以下となると、SSD136が劣化していると判定するとしてもよいし、劣化率の複数回の平均値が第2所定閾値β以下となると、SSD136が劣化していると判定するとしてもよい。かかる構成により、劣化判定部182は、SSD136の劣化をより精度よく検出できる。
【0058】
本実施形態の劣化判定部182は、下降率が第1所定閾値以下となった場合、または、劣化率が第2所定閾値以下となった場合、SSD136が劣化していると判定する。かかる構成により、劣化判定部182は、SSD136の劣化をより迅速に検出することが可能となる。
【0059】
(報知処理)
報知部184は、劣化判定部182の制御指令に応じて、その判定結果、すなわち、SSD136が劣化していて、読み書き速度が急激に低下したこと、近々使用できなくなること等を表示部126または外部表示装置202に報知(表示)させる。また、報知部184は、図示しないスピーカに判定結果を説明する音声を出力させて報知してもよい。
【0060】
報知部184がSSD136の劣化を報知する構成により、記録再生装置100は、ユーザに、SSD136に対するデータの記録処理等を回避させ、データが損なわれる事態を回避することができる。
【0061】
(記録先切換処理)
書き込み制御部186は、データの記録が生じた場合にSSD136への書き込みを指示する。そして、書き込み制御部186は、劣化判定部182が、SSD136が劣化していると判定した場合、SSD136以外の記録媒体(本実施形態において、SDカード200)が記録可能な状態であれば、報知部184に、データの記録先をSDカード200に切り換える旨報知させ、データの記録先をSDカード200に切り換える。
【0062】
書き込み制御部186がデータの記録先をSDカード200に切り換える構成により、それ以上、劣化したSSD136にデータが記録されることがなく、記録再生装置100は、データが損なわれる事態を回避することができる。
【0063】
また、SDカード200が、記録再生装置100に取り付けられていなかったり、空き容量がなかったりする等、記録可能な状態でなければ、書き込み制御部186は、報知部184を通じて、記録可能なSDカード200を記録再生装置100に取り付けるようにユーザに促す。
【0064】
(バックアップ処理)
バックアップ部188は、書き込み制御部186が、データの記録先を、SDカード200に切り換えると、報知部184を通じて、ユーザに、SSD136に記録されているデータをSDカード200にバックアップするよう促す。
【0065】
ユーザからバックアップ処理の実行を許可する操作入力があると、バックアップ部188は、SSD136に記録されているデータを、SDカード200に記録させるバックアップ処理を行う。報知部184は、例えば、ユーザからバックアップ処理の実行を許可する操作入力があるまで、バックアップを推奨する旨、表示画面の一部で報知しておく。
【0066】
劣化したSSD136では、データの記録時にもメモリセルによっては適切な電圧差が与えらない場合もあり、時間が経過すると自然放電でデータが損なわれ易い。バックアップ処理を行う構成により、バックアップ部188は、劣化したSSD136に記録されているデータをSDカード200に移して確実に保護することができる。
【0067】
また、バックアップ部188は、書き込み制御部186によるデータの記録先切換処理の実行の有無にかかわらず、SSD136に記録されているデータを、SDカード200に記録させるバックアップ処理を行うとしてもよい。この場合、バックアップ処理後も、SSD136に対するデータの書き込み処理は継続することとなるが、例えば、比較的重要度の低い映像を撮像した場合に、SSD136に記録するとよい。
【0068】
(初期化処理)
初期化部190は、バックアップ処理の後、報知部184を通じて、SSD136に対する初期化処理の実行を促す。初期化処理の実行を許可する操作入力があると、初期化部190は、SSD136を初期化する。
【0069】
また、初期化部190は、バックアップ処理が行われなかった場合も、報知部184を通じて、SSD136に対する初期化処理の実行を促す。初期化処理の実行を許可する操作入力があると、初期化部190は、SSD136を初期化する。
【0070】
初期化処理を行う構成により、例えば、記録再生装置100を修理に出して、SSD136を交換する場合等に、SSD136に記録されているデータを消し忘れてしまう事態を回避し、初期化部190は、ユーザのプライバシーを確実に保護することが可能となる。
【0071】
上述したように、本実施形態の劣化判定部182は、データの書き込みのみならず読み出しの速度までも用いてSSD136の劣化を判定する。そのため、ある時点の書き込み処理においてSSD136の劣化が著しく進んだものの、その時点では速度低下として検出できなかった場合であっても、その後のいずれかのタイミングの書き込みの速度や読み出しの速度を用いて、迅速に劣化を検出できる。
【0072】
(記録再生方法)
続いて、上述した映像記録装置100を用いた記録再生方法について説明する。図3は、記録再生方法の処理の流れを示すフローチャートである。かかる記録再生方法は、所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
図3に示すように、SSD136に所定量以上のデータの読み書きの指示があると(S300におけるYES)、速度導出部180は、その読み書き速度を導出する(S302)。そして、速度導出部180は、導出した読み書き速度を速度保持部138に保持させる(S304)。
【0074】
劣化判定部182は、速度保持部138に、速度導出部180が導出した前回の読み書き速度が保持されており、下降率が第1所定閾値以下であるか否かを判定する(S306)。
【0075】
速度保持部138に前回の読み書き速度が保持されていなかったり、下降率が第1所定閾値以下でなかったりした場合(S306におけるNO)、劣化判定部182は、劣化率を導出し、導出された劣化率が第2所定閾値以下であるか否かを判定する(S308)。劣化率が第2閾値以下でない場合(S308におけるNO)、読み書き判定ステップS300に戻る。
【0076】
下降率が第1所定閾値以下である場合(S306におけるYES)、および劣化率が第2閾値以下である場合(S308におけるYES)、劣化判定部182は、SSD136が劣化していると判定する。そして、報知部184は、その判定結果を表示部126または外部表示装置202に表示させる(S310)。
【0077】
書き込み制御部186は、SDカード200が記録可能な状態か否かを判定する(S312)。記録可能な状態でなければ(S312におけるNO)、報知部184はSDカード200の使用を推奨する旨、表示部126または外部表示装置202に表示させ(S316)、処理を終了する。
【0078】
SDカード200が記録可能な状態であれば(S312におけるYES)、書き込み制御部186はデータの記録先を、SDカード200に切り換える(S314)。続いて、報知部184は、バックアップ処理の可否を問う画像を、表示部126または外部表示装置202に表示させ、バックアップ部188は、バックアップ処理を許可する操作入力があるか否かを判定する(S318)。
【0079】
バックアップ処理を許可する操作入力があれば(S318におけるYES)、バックアップ部188は、SSD136に記録されているデータを、SDカード200に記録させるバックアップ処理を行う(S320)。
【0080】
バックアップ処理を許可する操作入力がなければ(S318におけるNO)、報知部184は、バックアップ処理を推奨する旨を、表示部126または外部表示装置202に表示させる(S322)。
【0081】
そして、報知部184は、SSD136の初期化の可否を問う画像を、表示部126または外部表示装置202に表示させ、初期化部190は、初期化処理を許可する操作入力があるか否かを判定する(S324)。初期化処理を許可する操作入力がなければ(S324におけるNO)、そのまま処理を終了する。初期化処理を許可する操作入力があれば(S324におけるYES)、初期化部190は、SSD136を初期化して(S326)、処理を終了する。
【0082】
上述したように、本実施形態の記録再生方法によれば、SSD136の劣化をより迅速に検出することが可能となる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
なお、本明細書の記録再生方法における各工程は、必ずしもシーケンス図として記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、フラッシュメモリに対してデータの読み書きを行う記録再生装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
100 …記録再生装置
136 …SSD(フラッシュメモリ)
138 …速度保持部
180 …速度導出部
182 …劣化判定部
184 …報知部
186 …書き込み制御部
188 …バックアップ部
190 …初期化部
200 …SDカード(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度を導出する速度導出部と、
前記速度導出部が導出した読み書き速度を保持する速度保持部と、
任意の時点の前記フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度の、前記速度保持部に保持されている、前記任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出し、導出された前記変化率が所定の閾値以下となると、前記フラッシュメモリが劣化していると判定する劣化判定部と、
前記劣化判定部が、前記フラッシュメモリが劣化していると判定した場合、その旨報知する報知部と、
を備えることを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
データの記録が生じた場合にフラッシュメモリへの書き込みを指示する書き込み制御部と、
フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度を導出する速度導出部と、
前記速度導出部が導出した読み書き速度を保持する速度保持部と、
任意の時点の前記フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度の、前記速度保持部に保持されている、前記任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出し、導出された前記変化率が所定の閾値以下となるとフラッシュメモリが劣化していると判定する劣化判定部と、
を備え、
前記書き込み制御部は、前記劣化判定部が、前記フラッシュメモリが劣化していると判定した場合、前記フラッシュメモリ以外の記録媒体が記録可能な状態であれば、データの記録先を、前記フラッシュメモリ以外の記録媒体に切り換えることを特徴とする記録再生装置。
【請求項3】
前記書き込み制御部が、データの記録先を、前記フラッシュメモリ以外の記録媒体に切り換えると、前記フラッシュメモリに記録されているデータを、前記フラッシュメモリ以外の記録媒体に記録させるバックアップ処理を行うバックアップ部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度を導出する速度導出部と、
前記速度導出部が導出した読み書き速度を保持する速度保持部と、
任意の時点の前記フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度の、前記速度保持部に保持されている、前記任意の時点より前の読み書き速度に対する変化率を導出し、導出された前記変化率が所定の閾値以下となると前記フラッシュメモリが劣化していると判定する劣化判定部と、
前記劣化判定部が、前記フラッシュメモリが劣化していると判定した場合に、前記フラッシュメモリ以外の記録媒体が記録可能な状態であれば、前記フラッシュメモリに記録されているデータを、前記フラッシュメモリ以外の記録媒体に記録させるバックアップ処理を行うバックアップ部と、
を備えることを特徴とする記録再生装置。
【請求項5】
前記バックアップ処理の後、前記フラッシュメモリを初期化する初期化部をさらに備えることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の記録再生装置。
【請求項6】
前記任意の時点の前記フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度は、今回の読み書き速度であって、前記速度保持部に保持されている前記任意の時点より前の読み書き速度は、前回の読み書き速度であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録再生装置。
【請求項7】
前記任意の時点の前記フラッシュメモリに対するデータの読み書き速度は、今回の読み書き速度であって、前記速度保持部に保持されている前記任意の時点より前の読み書き速度は、出荷前の読み書き速度であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録再生装置。
【請求項8】
前記速度導出部は、前記フラッシュメモリへの読み書きの対象となるデータの大きさが所定量を超えている場合、前記読み書き速度を導出することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−234321(P2012−234321A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101909(P2011−101909)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】