説明

記録装置、記録方法

【課題】位置案内子が形成された反射膜を有する基準面にサーボ制御を行うための第2の光ビームを照射し、上記基準面とは異なる深さ位置に第1の光ビームを照射して記録層にマーク形成を行う場合において、スレッド機構のガタや外乱等によるスポット位置ずれが発生した際にも、上記記録層にてセルフトラッキングによる記録が適正に行われるようにする。
【解決手段】記録層に対する最初の1周分のマーク記録時に第2の光ビームの照射スポットを記録方向側にシフトさせることで、1周目のマーク記録終了位置を記録方向側に待避させる。1周目の記録終了時の近傍でスライド機構のガタや外乱等に伴う比較的大きなスポット位置のずれが生じたとしても1周目と2周目のマーク列の重なりや交差の発生を防止できる。このような待避後は、逆方向オフセットの付与により記録方向とは逆側に寄せていくことで第3の光ビームを用いたセルフトラッキングの引き込みを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体についての記録を行う記録装置とその方法とに関するものであり、特に、マーク記録を行うための第1の光と、上記光記録媒体に形成された位置案内子に基づき位置制御を行うための第2の光とを共通の対物レンズを介して照射するように構成された記録装置に適用して好適なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−135144号公報
【特許文献2】特開2008−176902号公報
【特許文献3】特開2009−9635号公報
【特許文献4】特開2009−140568号公報
【特許文献5】特開2009−163811号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
【0004】
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型の光記録媒体を提案している。
【0005】
ここで、バルク記録とは、例えば図19に示すようにして少なくともカバー層101とバルク層(記録層)102とを有する光記録媒体(バルク型記録媒体100)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
【0006】
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
このマイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
【0007】
マイクロホログラム方式は、大別して、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式との2つに分かれる。
ポジ型マイクロホログラム方式は、対向する2つの光束(光束A、光束B)を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
【0008】
また、ネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。このネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、予めバルク層102に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行うことになる。具体的にこの初期化処理としては、平行光による光束を対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層102の全体に形成する。
そして、このように初期化処理により予め干渉縞を形成しておいた上で、消去マークの形成による情報記録を行う。すなわち、任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行うものである。
【0009】
また、本出願人は、マイクロホログラム方式とは異なるバルク記録の手法として、例えば特許文献2に開示されるようなボイド(空孔、空包)を記録マークとして形成する記録手法も提案している。
ボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層102に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、上記バルク層102内に空孔(ボイド)を記録する手法である。特許文献2に記載されるように、このように形成された空孔部分は、バルク層102内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
【0010】
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、ポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとできる。
また、ネガ型マイクロホログラム方式との比較では、初期化処理を不要にできるというメリットがある。
なお、特許文献2には、ボイド記録を行うにあたり記録前のプリキュア光の照射を行う例が示されているが、このようなプリキュア光の照射は省略してもボイドの記録は可能である。
【0011】
ところで、上記のような各種の記録手法が提案されているバルク記録型(単にバルク型とも称する)の光ディスク記録媒体であるが、このようなバルク型の光ディスク記録媒体の記録層(バルク層)は、例えば反射膜が複数形成されるという意味での明示的な多層構造を有するものではない。すなわち、バルク層102においては、通常の多層ディスクが備えているような記録層ごとの反射膜、及び案内溝は設けられていない。
従って、先の図19に示したバルク型記録媒体100の構造のままでは、マークが未形成である記録時において、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うことができないことになる。
【0012】
このため実際において、バルク型記録媒体100に対しては、次の図20に示すような案内溝を有する基準となる反射面(基準面)を設けるようにされている。
具体的には、カバー層101の下面側に例えばピットやグルーブの形成による案内溝(位置案内子)がスパイラル状又は同心円状に形成され、そこに選択反射膜103が成膜される。そして、このように選択反射膜103が成膜されたカバー層102の下層側に対し、図中の中間層104としての、例えばUV硬化樹脂などの接着材料を介してバルク層102が積層される。
ここで、上記のようなピットやグルーブ等による案内溝の形成により、例えば半径位置情報や回転角度情報などの絶対位置情報(アドレス情報)の記録が行われている。以下の説明では、このような案内溝が形成され絶対位置情報の記録が行われた面(この場合は上記選択反射膜103の形成面)のことを、「基準面Ref」と称する。
【0013】
また、上記のような媒体構造とした上で、バルク型記録媒体100に対しては、次の図21に示されるようにマークの記録(又は再生)のためのレーザ光(以下、録再用レーザ光、或いは単に録再光とも称する)とは別途に、位置制御用のレーザ光としてのサーボ用レーザ光(単にサーボ光とも称する)を照射するようにされる。
図示するようにこれら録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とは、共通の対物レンズを介してバルク型記録媒体100に照射される。
【0014】
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層102に到達してしまうと、当該バルク層102内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、従来よりバルク記録方式では、上記サーボ用レーザ光として、録再用レーザ光とは波長帯の異なるレーザ光を用いるものとした上で、基準面Refに形成される反射膜としては、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという波長選択性を有する選択反射膜103を設けるものとしている。
【0015】
以上の前提を踏まえた上で、図21を参照し、バルク型記録媒体100に対するマーク記録時の動作について説明する。
先ず、案内溝や反射膜の形成されていないバルク層102に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層102内の深さ方向においてマークを記録する層位置を何れの位置とするかを予め定めておくことになる。図中では、バルク層102内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)として、第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定された場合を例示している。図示するように第1情報記録層位置L1は、案内溝が形成された選択反射膜103(基準面Ref)からフォーカス方向(深さ方向)に第1オフセットof-L1分だけ離間した位置として設定される。また、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5は、それぞれ基準面Refから第2オフセットof-L2分、第3オフセットof-L3分、第4オフセットof-L4分、第5オフセットof-L5分だけ離間した位置として設定される。
【0016】
マークが未だ形成されていない記録時においては、録再用レーザ光の反射光に基づいてバルク層102内の各層位置を対象としたフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うことはできない。従って、記録時における対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御は、サーボ用レーザ光の反射光に基づき、当該サーボ用レーザ光のスポット位置が基準面Refにおいて案内溝に追従するようにして行うことになる。
【0017】
但し、上記録再用レーザ光は、マーク記録のために基準面Refよりも下層側に形成されたバルク層102に到達させる必要がある。このため、この場合の光学系には、対物レンズのフォーカス機構とは別途に、録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための録再光用フォーカス機構が設けられることになる。
【0018】
ここで、このような録再光用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための機構を含めた、バルク型記録媒体100の記録再生を行うための光学系の概要を図22に示しておく。
図22において、図21にも示した対物レンズは、図示するように2軸アクチュエータによりバルク型記録媒体100の半径方向(トラッキング方向)、及びバルク型記録媒体100に接離する方向(フォーカス方向)に変位可能とされている。
【0019】
この図22において、録再用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための機構は、図中のフォーカス機構(エキスパンダ)が該当する。具体的に、このエキスパンダとしてのフォーカス機構は、固定レンズと、レンズ駆動部により録再用レーザ光の光軸に平行な方向に変位可能に保持された可動レンズとを備えて構成されており、上記レンズ駆動部により上記可動レンズが駆動されることで、図中の対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、それにより録再用レーザ光の合焦位置がサーボ用レーザ光とは独立して調整されるようになっている。
【0020】
また、上述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯が異なるものとされているので、これに対応しこの場合の光学系では、図中のダイクロイックプリズムにより、録再用レーザ光、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体100からの反射光がそれぞれの系に分離されるように(つまりそれぞれの反射光検出を独立して行えるように)している。
また、往路光で考えた場合、上記ダイクロイックプリズムは、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とを同一軸上に合成して対物レンズに入射させる機能を有する。具体的にこの場合、録再用レーザ光は、図示するように上記エキスパンダを介しミラーで反射された後、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面で反射されて対物レンズに対して入射する。一方、サーボ用レーザ光は、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面を透過して対物レンズに対して入射する。
【0021】
図23は、バルク型記録媒体100の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
マーク記録が既に行われたバルク型記録媒体100について再生を行う際は、記録時のように対物レンズの位置をサーボ用レーザ光の反射光に基づいて制御する必要性はない。すなわち、再生時においては、再生対象とする情報記録層位置L(再生時については情報記録層Lとも称する)に形成されたマーク列を対象として、録再用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行えばよい。
【0022】
上記のようにしてバルク記録方式においては、バルク型記録媒体100に対し、マーク記録/再生を行うための録再用レーザ光と位置制御用光としてのサーボ光とを共通の対物レンズを介して(同一光軸上に合成して)照射するようにした上で、記録時においては、サーボ用レーザ光が基準面Refの位置案内子に追従するように対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行い且つ、録再光用フォーカス機構により録再用レーザ光の合焦位置を別途調整することによって、バルク層102内に位置案内子が形成されていなくとも、バルク層102内の所要の位置(深さ方向及びトラッキング方向)に対してマーク記録ができるように図られている。
また、再生時には、既に記録されたマーク列に録再用レーザ光の焦点位置が追従するようにして当該録再用レーザ光の反射光に基づく対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行うことで、バルク層102内に記録されたマークの再生を行うことができる。
【0023】
ここで、上記により説明してきたようなバルク記録方式を採用する場合には、いわゆるskew(チルト)の発生や、ディスク偏芯に伴う対物レンズのレンズシフトの発生に伴い、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とに、記録面内方向におけるスポット位置ずれが生じることが知られている。
【0024】
図24は、skewの発生に伴う録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とのスポット位置ずれを模式的に示している。
図24(a)に示すskew無しの状態では、サーボ用レーザ光と録再用レーザ光のスポット位置は記録面内方向において一致している。これに対し、図24(b)に示すようなskewの発生に応じては、サーボ用レーザ光と録再用レーザ光とに光軸のずれが生じ、図中に示すようなスポット位置ずれΔxが生じてしまう。
【0025】
また図25は、レンズシフトに伴う録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とのスポット位置ずれを模式的に示している。
図25(a)に示すレンズシフト無しの状態では、対物レンズが基準位置にあり、対物レンズの中心と該対物レンズに入射する各レーザ光の光軸cとが一致している。光学系は、このように対物レンズが基準位置にある状態において、各レーザ光の記録面内方向におけるスポット位置が一致するように設計されている。
【0026】
これに対し、トラッキングサーボ制御により図25(b)に示すようにディスク偏芯に追従するようにして対物レンズが基準位置からシフトしてしまった場合(この場合は紙面左方向へのシフトとしている)には、図中に示すようなスポット位置ずれΔxが生じる。
このようなレンズシフト起因のスポット位置ずれは、対物レンズに対するサーボ用レーザ光と録再用レーザ光の入射態様の差によって生じるものとなる。具体的には、サーボ用レーザ光は対物レンズに対して略平行光により入射するのに対し、録再用レーザ光は非平行光により入射することに起因するものである。
【0027】
このようなskewやレンズシフトに起因したサーボ用レーザ光と録再用レーザ光のスポット位置ずれが生じることによっては、バルク層102内における情報記録位置のずれが生じてしまう。つまり、先の説明からも理解されるように、記録時における録再用レーザ光のスポット位置は、サーボ用レーザ光の反射光に基づく対物レンズのトラッキングサーボ制御が行われることで制御されるので、上記のようなスポット位置ずれの発生に応じては、バルク層102内の意図した位置に記録を行うことができなくなってしまうものである。
【0028】
このとき、skew・偏芯の発生量やトラックピッチ(位置案内子の形成間隔)の設定によっては、隣接するトラック間で情報記録位置が重なってしまう虞がある。具体的にディスクの偏芯やskewは、スピンドルモータへのディスクのクランプのされかたなどにより、ディスクが装填されるごとに異なる態様で発生することがあるので、例えば或るディスクについてディスク付け替えを伴う追記を行ったとき、前回の記録時に生じていたskew・偏芯の態様と追記時に生じるskew・偏芯の態様とが異なることに起因して、既記録部分のマーク列と追記部分のマーク列とに重なりが生じたり、場合によっては交差してしまうという問題が生じるものである。
このようであると、正しく記録信号を再生することはできなくなる。
【0029】
このようなマーク列の重なりや交差の発生を防止するための一つの手法として、基準面Refにおけるトラックピッチを広めに設定しておくということを挙げることができる。
しかしながら、このように基準面Refのトラックピッチを広げた場合には、当然のことながらバルク層102における記録容量の縮小化を招くものとなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
ここで、上記のようなskewやレンズシフトに伴う記録マーク列の重なりや交差の発生を防止しつつ、バルク層102の記録容量の低下の防止を図るための手法の1つとしては、いわゆるセルフトラッキングの手法を挙げることができる。
セルフトラッキングとは、位置案内子の形成されていない記録層を対象として記録マーク列の重なりや交差を防止するための技術であり、記録を担う光ビームと共に、その内周側となる位置にサイドビームを生成・照射するものとした上で、1周目の記録後に、既記録マーク列に対し上記サイドビームでトラッキングサーボを開始して記録を継続することで、以降の周回において記録済みマーク列に対するマークの形成間隔が記録ビームスポットと上記サイドスポットとの間隔で保たれるようにして、マーク列の重なりや交差が発生しないように図るものである。
【0031】
図26は、このようなセルフトラッキングの手法をバルク記録に適用した場合の具体的な記録動作について説明するための図である。
なお図中において、柄入りの丸によるスポットS-sv&S-rpMは、サーボ用レーザ光のスポットS-svと録再用レーザ光のメインビームスポット(記録ビームスポット)S-rpMとを表している。前述のように、サーボ用レーザ光と録再用レーザ光(記録光)とは光軸が一致するように照射されるので、スポットS-svとスポットS-rpMは記録面内方向に平行な方向においては重なっているものとして示すことができる(skewやレンズシフトが生じていない場合)。
また、白丸で表すスポットS-rpSは、録再用レーザ光について例えばグレーティング等を用いて生成したサイドビームスポットとなる。
また、図中の破線は、基準面Refに形成されたトラック(案内溝)を表している。
【0032】
図26(a)は、最初の1周目を記録する際の様子を模式的に表している。
最初の1周目の記録は、基準面Refに形成されたトラックを対象としたサーボ用レーザ光のトラッキングサーボを行いつつ、メインビームスポットS-rpMによるマーク列の記録を行う。
なお、図中において基準面Refにおけるトラック(破線)と実際に記録されるマーク列(実線)とが一致していないのは、skewやレンズシフトに伴うスポット位置ずれが生じていることを表すためである。
【0033】
ここで、このようにトラック1周分の記録を行うと、図26(b)に示されるように、1周の終了位置付近にて、既記録のマーク列(1周目開始位置のマーク列)の近傍にサイドビームスポットS-rpSが位置することになる。
ディスクの反りや偏芯は、ディスク上の半径位置や回転角度位置が同等であれば、その発生量も同等となるので、この点のみからすれば、1周目の記録終了時には、上記のようにサイドビームスポットS-rpSが1周目の既記録マーク列近傍に位置することになる。
【0034】
そこで、1周目の記録終了付近にて、サイドビームスポットS-rpSで1周目記録済みマーク列に対するトラッキングサーボの引き込みを行い、これにより、対物レンズのトラッキングサーボを、それまでのサーボ用レーザ光のビームスポットS-svによるトラッキングサーボから、上記サイドビームスポットS-rpSを用いたトラッキングサーボに切り替える。
【0035】
これにより2周目以降のマーク列は、その内周側に形成された既記録マーク列に対してメインビームスポットS-rpMとサイドビームスポットS-rpSとの間隔だけ離れた位置に形成されていくものとなり、その結果、マーク列の重なりや交差の発生の防止を図ることができる。
【0036】
ここで、上記のようなセルフトラッキングの手法を採る場合には、1周目の記録を終了する際の情報記録層位置のずれ量が、1周目と2周目とでほぼ等しいということが重要となる。
前述の通り、ディスクの反りや偏芯は、ディスク上の半径位置や回転角度位置がほぼ同じであれば、その発生量もほぼ同等となるので、通常であれば、1周目の記録の終了時にて、1周目と2周目の情報記録位置のずれが大きくなることは考え難い。
【0037】
しかしながら、サーボ用レーザ光と録再用レーザ光との位置のずれは、実際には、偏芯やディスクの反りのみによって生じるものではなく、光学ピックアップ全体をスライド移動させるスライド機構のガタの発生や、外乱の発生等によっても生じることになる。
これらスライド機構のガタや外乱等による比較的大きなスポット位置のずれが、1周目の記録終了時点の近傍で生じた場合には、次の図27(a)に示されるように、1周目の記録完了時にて既記録マーク列に対して2周目の記録マーク列が外周側に大きくずれたり、或いは図27(b)に示すように逆に既記録マーク列に対する重なりが生じてしまうといった虞がある。
【0038】
これら図27(a)(b)の何れのケースにおいても、1周目の記録終了付近においては、サイドビームスポットS-rpSで1周目の既記録マーク列を対象としたトラッキングサーボの引き込みを行うことができず、その結果、セルフトラッキングによる記録への切り替えを行うことができなくなってしまう。
【0039】
本発明は上記のような問題点に鑑み為されたものであり、位置案内子が形成された反射膜を有する基準面と、上記基準面とは異なる深さ位置に形成され光照射に応じたマーク形成により情報記録が行われる記録層とを有する光ディスク記録媒体について、マーク記録のための第1の光ビームと上記位置案内子に従ったサーボ制御を行うための第2の光ビームとを共通の対物レンズを介して照射して記録を行う場合において、スレッド機構のガタや外乱等によるスポット位置のずれが発生した際にも、上記記録層にてセルフトラッキングによる記録が適正に行われるようにし、以てマーク列の重なりや交差の発生の防止と記録容量の低下の防止との両立が図られるようにすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
このため本発明では、記録装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の記録装置は、位置案内子が形成された反射膜を有する基準面と、上記基準面とは異なる深さ位置に設けられ光照射に応じたマーク形成により情報記録が行われる記録層とを有する光ディスク記録媒体について記録を行う記録装置であって、
上記記録層に対する情報記録を行うための第1の光ビームと、上記基準面に形成された上記位置案内子に基づく位置制御を行うための第2の光ビームと、第3の光ビームとを生成し且つ、上記第1、第2、及び第3の光ビームが入射される対物レンズを備えると共に、上記光ディスク記録媒体の半径方向において記録が進行する方向を記録方向としたとき、上記第1及び第2の光ビームの照射スポット位置に対して上記第3の光ビームの照射スポットが上記記録方向とは逆方向側に位置し且つ、上記第1の光ビームと上記第3の光ビームとが上記記録層に対して合焦し上記第2の光ビームが上記基準面に対して合焦するように上記第1、第2、及び第3の光ビームを照射するように構成された光生成・照射部を備える。
また、上記第1の光ビームについての発光駆動制御を行って上記記録層に対するマーク記録を行う記録部を備える。
また、上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構を備える。
また、上記第2の光ビームの上記基準面からの反射光を受光した結果に基づき第1のトラッキング誤差信号を生成する第1のトラッキング誤差信号生成部を備える。
また、上記第3の光ビームの上記記録層からの反射光を受光した結果に基づき第2のトラッキング誤差信号を生成する第2のトラッキング誤差信号生成部を備える。
また、上記第1又は上記第2のトラッキング誤差信号に基づいて上記トラッキング機構を駆動することで、上記対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボ制御部を備える。
そして、上記トラッキングサーボ制御部により上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御を実行させた状態で、上記記録部によるマーク記録を開始させ、さらに、上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボループに対して上記第2の光ビームの照射スポット位置を上記記録方向側に徐々にシフトさせるための順方向オフセットの付与を開始させると共に、
ディスク1周回分のマーク記録の終了位置近傍となるタイミングで、上記トラッキングサーボループに対して上記第2の光ビームの照射スポットを上記記録方向とは逆方向に徐々にシフトさせるための逆方向オフセットの付与を開始させ、当該逆方向オフセットが付与される下で上記第2のトラッキング誤差信号をモニタし、当該第2のトラッキング誤差信号において、上記第3の光ビームの照射スポットが1周目の記録済みマーク列の近傍に位置すること応じて現れる変化点が検出されたことに応じて、上記トラッキングサーボ制御部によるトラッキングサーボ制御が上記第2のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御に切り替えられるように制御する制御部を備えるものである。
【0041】
上記のように本発明では、記録層に対する最初の1周分のマーク記録時には、上記順方向オフセットの付与によって上記第2の光ビームの照射スポット(ひいては対物レンズ)を記録方向側にシフトさせることで、1周目のマーク記録終了位置が記録方向側に待避されるようにしている。このことで、1周目の記録終了時の近傍でスライド機構のガタや外乱等に伴う比較的大きなスポット位置のずれが生じたとしても、1周目と2周目のマーク列の重なりや交差の発生を防止することができる。
そして、このような待避後は、上記逆方向オフセットの付与により第2の光ビームの照射スポット(対物レンズ)を記録方向とは逆側に寄せていくものとしている。このように記録方向とは逆側に寄せていくと、第2のトラッキング誤差信号には、第3の光ビームの照射スポットが1周目の記録済みのマーク列の近傍に位置することに応じた変化点が観察される。このことに応じ本発明では、このような第2のトラッキング誤差信号の変化点が検出されたことに応じて、対物レンズのトラッキングサーボ制御を、第3のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御に切り替えるものとしている。
これにより以降、マーク記録は、第3の光による記録済みマーク列を対象としたトラッキングサーボの実行下で行われるものとなる。すなわち、いわゆるセルフトラッキングの下で行われることになる。このようなセルフトラッキングによる記録が行われることで、以降におけるマーク列の重なりや交差の発生の防止が図られる。また、セルフトラッキングであるので、記録層における記録容量の低下の防止が図られる。
【発明の効果】
【0042】
上記のように本発明によれば、位置案内子が形成された反射膜を有する基準面と、上記基準面とは異なる深さ位置に形成され光照射に応じたマーク形成により情報記録が行われる記録層とを有する光ディスク記録媒体について、マーク記録のための第1の光ビームと上記位置案内子に従ったサーボ制御を行うための第2の光ビームとを共通の対物レンズを介して照射して記録を行う場合において、スレッド機構のガタや外乱等によるスポット位置ずれが発生した際にも、上記記録層にてセルフトラッキングによる記録が適正に行われるようにすることができる。
このようにセルフトラッキングによるマーク記録を行うことができれば、記録層におけるマークの重なりや交差の発生の防止を図ることができる。なお且つセルフトラッキングによれば、記録層におけるマーク列の形成ピッチを詰められることにより、記録層における記録容量の低下を防止できる。
この結果、本発明によれば、マーク列の重なりや交差の発生の防止と、記録層における記録容量の低下の防止との両立が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態で記録/再生対象とする光ディスク記録媒体の断面構造図である。
【図2】実施の形態の記録装置が備える光学系の構成を主に示した図である。
【図3】録再光用受光部の内部構成を示した図である。
【図4】実施の形態の光ディスク記録媒体の基準面の表面を一部拡大して示した平面図である。
【図5】基準面全体におけるピットの形成態様について説明するための図である。
【図6】アドレス情報のフォーマットについて説明するための図である。
【図7】記録媒体の回転駆動に伴い基準面上をサーボ用レーザ光のスポットが移動する様子と、その際に得られるsum信号、sum微分信号、及びPP(プッシュプル)信号の波形との関係を模式的に示した図である。
【図8】クロックの生成にあたってsum微分信号とsum信号とに基づき生成されるタイミング信号について説明するための図である。
【図9】タイミング信号から生成されたクロックと、該クロックに基づき生成された各selector信号の波形と、基準面に形成された各ピット列(の一部)との関係を模式化して示した図である。
【図10】実施の形態の記録装置全体の内部構成を示したブロック図である。
【図11】selector信号生成・選択部の内部構成を示した図である。
【図12】クロック生成回路の内部構成を示した図である。
【図13】実施の形態としての記録手法について説明するための図である。
【図14】サーボ対象位置を外周側/内周側にシフトさせるための手法について説明するための図である。
【図15】サイドビームによるトラッキングサーボへの切り替え(引き込み)手法について説明するための図である。
【図16】実施の形態としての記録手法で記録されたマーク列の軌跡を示した図である。
【図17】実施の形態としての記録手法を実現するための実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図18】多層記録媒体の断面構造図である。
【図19】バルク記録方式について説明するための図である。
【図20】基準面を備える実際のバルク型記録媒体の断面構造を例示した図である。
【図21】バルク型記録媒体に対するマーク記録時の動作について説明するための図である。
【図22】バルク型記録媒体の記録再生を行うための光学系の概要を示した図である。
【図23】バルク型記録媒体の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
【図24】skewに伴う録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とのスポット位置ずれを模式的に示した図である。
【図25】レンズシフトに伴う録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とのスポット位置ずれを模式的に示した図である。
【図26】セルフトラッキングの手法をバルク記録に適用した場合の具体的な記録動作について説明するための図である。
【図27】セルフトラッキングの手法をバルク記録に適用した場合に生じる問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。

<1.記録媒体及び光学系>
[1-1.実施の形態で記録/再生対象とする光ディスク記録媒体の断面構造]
[1-2.光学系の構成]
<2.可変トラックピッチフォーマット>
[2-1.基準面の構造]
[2-2.アドレス情報について]
[2-3.トラッキングサーボの具体的な手法]
<3.記録装置の全体的な内部構成>
<4.実施の形態としての記録手法>
<5.処理手順>
<6.変形例>
【0045】
<1.記録媒体及び光学系>
[1-1.実施の形態で記録/再生対象とする光ディスク記録媒体の断面構造]

図1は、実施の形態で記録/再生対象とする光ディスク記録媒体の断面構造図を示している。
実施の形態で記録/再生対象とする光ディスク記録媒体は、いわゆるバルク記録型の光記録媒体とされ、以下、バルク型記録媒体1と称する。
バルク型記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体とされ、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
なお光記録媒体とは、光の照射により情報の記録/再生が行われる記録媒体を総称したものである。
【0046】
図1に示されるように、バルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての記録装置(後述する記録再生装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
【0047】
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記「上層側」の定義に従った上下方向と一致する方向(すなわち記録装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
【0048】
バルク型記録媒体1において、上記カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための位置案内子として後述するピット列が形成されていることで、凹凸の断面形状が与えられている。カバー層2は、後述するピット列が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
なお、本実施の形態としてのバルク型記録媒体1における上記ピット列の具体的な形成態様については後述する。
【0049】
また、上記ピット列が形成された上記カバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、前述もした通りバルク記録方式では、記録層としてのバルク層5に対してマーク記録/再生を行うための光(録再用レーザ光)とは別に、上記のようなピット列などの位置案内子に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るための光(サーボ用レーザ光)を別途に照射するものとされている。
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層5に到達してしまうと、当該バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという選択性を有する反射膜が必要とされている。
従来よりバルク記録方式では、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、上記選択反射膜3としては、サーボ用レーザ光と同一の波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
【0050】
上記選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が積層(接着)されている。
バルク層5の形成材料(記録材料)としては、例えば先に説明したポジ型マイクロホログラム方式やネガ型マイクロホログラム方式、ボイド記録方式など、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
なお、本発明で対象とする光ディスク記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるべきものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。以下の説明においては一例として、ボイド記録方式が採用される場合を例示する。
【0051】
ここで、上記のような断面構造を有するバルク型記録媒体1において、位置案内子が形成された選択反射膜3は、後述もするようにサーボ用レーザ光に基づく録再用レーザ光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、選択反射膜3が形成された面を以下、基準面Refと称する。
【0052】
先の図21においても説明したように、バルク型の光記録媒体においては、バルク層内に多層記録を行うために、予め情報記録を行うべき各層位置(情報記録層位置L)が設定される。バルク型記録媒体1においても、情報記録層位置Lについては、先の図21の場合と同様に、基準面Refからそれぞれ深さ方向に第1オフセットof-L1、第2オフセットof-L2、第3オフセットof-L3、第4オフセットof-L4、第5オフセットof-L5分だけ離間した第1情報記録層位置L、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5が設定されているとする。
基準面Refからの各層位置Lへのオフセットof-Lの情報は、後述する記録再生装置10におけるコントローラ40に対して設定される。
【0053】
なお、バルク層5において、各情報記録層位置Lにおける情報の記録方向としては、同じでも良いし異なるものでもよい。つまり、いわゆるオポジットトラックパスとして知られるように、層を跨ぐごとに交互に記録方向を変えるものであってもよいし、パラレルトラックパスのように各層における記録方向を同方向に揃えるものとしてもよい。
ここで、以下では説明の便宜上、記録方向に関してはパラレルトラックパスが採用されているものとする。
具体的に各層位置Lにおいて、記録方向は内周→外周で揃えられているものとする。
なお確認のため述べておくと、ここで言う「記録方向」とは、ディスク半径方向において記録が進行する方向を指すものである。
【0054】
[1-2.光学系の構成]

図2は、図1に示したような断面構造を有するバルク型記録媒体1に対する記録/再生を行う実施の形態としての記録装置(記録再生装置10と称する)が備える主に光学系の構成について説明するための図である。具体的には、実施の形態の記録再生装置10が備える光学ピックアップOPの内部構成を主に示している。
【0055】
図2において、記録再生装置10に装填されたバルク型記録媒体1は、当該記録再生装置10における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにしてセットされ、図示は省略したスピンドルモータによる回転駆動が可能な状態に保持される。
光学ピックアップOPは、上記スピンドルモータにより回転駆動されるバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光、サーボ用レーザ光、及び後述するセルフトラッキングを実現するために必要となるサイドビームを照射するために設けられる。
【0056】
光学ピックアップOP内には、マークによる情報記録、及びマークにより記録された情報の再生を行うための録再用レーザ光の光源である録再用レーザ11と、基準面Refに形成された位置案内子を利用した位置制御を行うための光であるサーボ用レーザ光の光源であるサーボ用レーザ24とが設けられる。
ここで、前述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長が異なる。本例の場合、録再用レーザ光の波長はおよそ405nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、サーボ用レーザ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされる。
【0057】
また、光学ピックアップOP内には、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1への出力端となる対物レンズ20が設けられる。
さらには、上記録再用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための録再光用受光部23と、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するためのサーボ光用受光部29とが設けられる。
【0058】
その上で、光学ピックアップOP内においては、上記録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光を上記対物レンズ20に導くと共に、上記対物レンズ20に入射した上記バルク型記録媒体1からの録再用レーザ光の反射光を上記録再光用受光部23に導くための光学系が形成される。
【0059】
先ず、上記録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光は、グレーティングGRを介しすることで、回折により複数ビームに分割される。
ここで、グレーティングGRの0次光成分についてはメインビーム、±1次光成分についてはサイドビームと称する。さらに、サイドビームについては、バルク型記録媒体1の上記メインビームの照射位置を基準としてその内周側に照射されることになるサイドビームを内周側サイドビームとし、逆に外周側に照射されるサイドビームを外周側サイドビームとする。
【0060】
グレーティングGRを介した録再用レーザ光は、コリメーションレンズ12を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。偏光ビームスプリッタ13は、このように録再用レーザ11側から入射した録再用レーザ光については透過するように構成されている。
【0061】
上記偏光ビームスプリッタ13を透過した録再用レーザ光は、固定レンズ14、可動レンズ15、及びレンズ駆動部16から成るエキスパンダに入射する。このエキスパンダは、光源である録再用レーザ11に近い側が固定レンズ14とされ、録再用レーザ11に遠い側に可動レンズ15が配置され、レンズ駆動部16によって上記可動レンズ15が録再用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、録再用レーザ光について独立したフォーカス制御を行う。このエキスパンダは、前述した録再光用フォーカス機構に相当するものである(図22を参照)。
後述もするように、当該録再光用フォーカス機構におけるレンズ駆動部16は、図10に示すコントローラ40によって、対象とする情報記録層位置Lに対応して設定されたオフセットof-Lの値に応じて駆動される。
【0062】
上記録再光用フォーカス機構を形成する固定レンズ14及び可動レンズ15を介した録再用レーザ光は、図のようにミラー17にて反射された後、1/4波長板18を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されている。従って上記のようにして入射した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19にて反射される。
【0063】
ダイクロイックプリズム19で反射された録再用レーザ光は、図示するようにして対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に対して照射される。
対物レンズ20に対しては、当該対物レンズ20をフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:バルク型記録媒体1の半径方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述する駆動信号FD、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
【0064】
ここで、再生時においては、上記のようにしてバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光が照射されることに応じて、バルク型記録媒体1(バルク層5内の再生対象の情報記録層Lに記録されたマーク列)より上記録再用レーザ光の反射光が得られる。このように得られた録再用レーザ光の反射光は、対物レンズ20を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、当該ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射された録再用レーザ光の反射光は、1/4波長板18→ミラー17→録再光用フォーカス機構(可動レンズ15→固定レンズ14)を介した後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。
【0065】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ13に入射する録再用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板18による作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、録再用レーザ光11側から偏光ビームスプリッタ13に入射した録再用レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、上記のようにして入射した録再用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ13にて反射される。
【0066】
このように偏光ビームスプリッタ13にて反射された録再用レーザ光の反射光は、集光レンズ22を介して録再光用受光部23の受光面上に集光する。
【0067】
ここで、図3は、図2に示す録再光用受光部23の内部構成を示している。
図3に示すように、録再光用受光部23には、メインビーム用ディテクタ23Mと、サイドビーム用ディテクタ23Sとが形成されている。
メインビーム用ディテクタ23Mは、メインビームの反射光を受光できる位置に設けられる。またサイドビーム用ディテクタ23Sは、本例の場合、前述した内周側サイドビームと外周側サイドビームのうち、内周側サイドビームの反射光を受光できる位置に設けられる。
また本例の場合、これらメインビーム用ディテクタ23Mとサイドビーム用ディテクタ23Sは、共に4分割ディテクタとされる。図示するようにメインビーム用ディテクタ23Mが備える4つの受光素子についてはそれぞれ受光素子AM、BM、CM、DMと表記し、サイドビーム用ディテクタ23Sが備える受光素子についてはそれぞれ受光素子AS、BS、CS、DSと表記する。
以下、メインビーム用ディテクタ23Mが備える受光素子AM、BM、CM、DMにより得られるそれぞれの受光信号を総称して受光信号DT-rpMとおく。同様に、サイドビーム用ディテクタ23Sが備える受光素子AS、BS、CS、DSにより得られる受光信号を総称して受光信号DT-rpSとおく。
【0068】
説明を図2に戻す。
光学ピックアップOP内には、上記により説明した録再用レーザ光についての光学系の構成に加えて、サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光を対物レンズ20に導き且つ、上記対物レンズ20に入射したバルク型記録媒体1からのサーボ用レーザ光の反射光をサーボ光用受光部29に導くための光学系が形成される。
図示するように上記サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光は、コリメーションレンズ25を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ26に入射する。偏光ビームスプリッタ26は、このようにサーボ用レーザ24側から入射したサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0069】
上記偏光ビームスプリッタ26を透過したサーボ用レーザ光は、1/4波長板27を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されているため、上記サーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム19を透過し、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射される。
【0070】
また、このようにバルク型記録媒体1にサーボ用レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該サーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20を介した後ダイクロイックプリズム19を透過し、1/4波長板27を介して偏光ビームスプリッタ26に入射する。
先の録再用レーザ光の場合と同様にして、このようにバルク型記録媒体1側から入射したサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板27の作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としてのサーボ用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ26にて反射される。
【0071】
偏光ビームスプリッタ26にて反射されたサーボ用レーザ光の反射光は、集光レンズ28を介してサーボ光用受光部29の受光面上に集光する。
【0072】
ここで、図示による説明は省略するが、実際において記録再生装置10には、上記により説明した光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
【0073】
<2.可変トラックピッチフォーマット>
[2-1.基準面の構造]

後述する本実施の形態としての記録手法では、録再用レーザ光による記録位置を徐々に外周側(記録方向側)又は内周側(記録方向とは逆方向側)にずらしていくという動作を行うことになる。
このように記録位置を徐々にずらしていくという動作は、サーボ用レーザ光による基準面Refの位置案内子に従った対物レンズ20のトラッキングサーボ制御が行われる下で、そのサーボループに対し時間経過と共にその値が上昇/低下するオフセットを与えることで実現することができる。
【0074】
しかしながら、単にサーボループにオフセットを付与する手法を採った場合には、オフセット量がトラックピッチの1/2を超えたときに、トラッキングサーボが外れてしまうという問題が生じる。トラッキングサーボが外れてしまった場合には、記録位置を正確にコントロールすることはできなくなるため、記録位置のオフセット量についてもこれを正確にコントロールすることはできなくなってしまう。
【0075】
このような問題点に鑑み、本例においては、バルク型記録媒体1の基準面Refの構造を以下で説明するような構造として、トラックピッチの1/2を超えるオフセットの付与を安定して行うことができるようにしている。
【0076】
図4は、バルク型記録媒体1における基準面Ref(選択反射膜3)の表面を一部拡大した平面図である。
この図4においては、紙面の左側から右側に向かう方向をピット列の形成方向、つまりはトラックの形成方向としている。この場合、サーボ用レーザ光のスポットは、バルク型記録媒体1の回転駆動に伴い、紙面の左側から右側に移動するものとする。
また、ピット列の形成方向と直交する方向(紙面の縦方向)は、バルク型記録媒体1の半径方向である。
【0077】
また図4において、図中の白丸で示すA〜Fは、ピットの形成可能位置を表す。すなわち、基準面Refにおいて、ピットは、当該ピットの形成可能位置においてのみ形成されるものであって、ピットの形成可能位置以外にはピットの形成が行われない。
また、図中のA〜Fの符号の別はピット列の別(半径方向において配列されるピット列の別)を表し、これらA〜Fの符号に付される数字はピット列上におけるピットの形成可能位置の別を表す。
【0078】
ここで、図中の黒太線で表す間隔は、従来のバルク型記録媒体1において実現可能な最小トラックピッチ(光学限界を超えないトラックピッチ:従来限界トラックピッチとも称する)を表している。このことからも理解されるように、本例のバルク型記録媒体1では、A〜Fの計6本のピット列が、半径方向において、従来限界の1トラック幅内に配列されていることになる。
【0079】
但し、従来限界の1トラック幅内にこれら複数のピット列を単純に配列したのみでは、ピット列形成方向においてピットの形成位置が重なってしまう虞があり、つまりはピット列形成方向におけるピットの間隔が光学限界を超えてしまう虞がある。
【0080】
そこで、本例においては、従来限界の1トラック幅内に配列される上記A〜Fの複数のピット列間で、ピット列形成方向におけるピット同士の間隔が光学限界を超えないようにするべく、以下のような条件を定めている。
すなわち、

1)A〜Fの各ピット列において、ピットの形成可能位置の間隔を所定の第1の間隔に制限する。
2)このようにピットの形成可能位置の間隔が制限されたA〜Fの各ピット列を、それぞれのピットの形成可能位置がピット列形成方向において所定の第2の間隔ずつずれたものとなるようにして配列する(つまり上記第2の間隔で各ピット列の位相をずらす)。

というものである。
【0081】
ここで、半径方向に配列されるA〜Fのピット列におけるそれぞれのピットの形成可能位置のピット列形成方向における間隔(上記第2の間隔)をnとおく。このとき、上記2)の条件が満たされるようにA〜Fの各ピット列が配列されることで、ピット列A−B、ピット列B−C、ピット列C−D、ピット列D−E、ピット列E−F、及びピット列F−Aの各ピット形成可能位置間の間隔は、図示するように全てnとなる。
また、A〜Fの各ピット列におけるピット形成可能位置の間隔(上記第1の間隔)は、この場合はA〜Fまでの計6つのピット列位相を実現するものとしているので、6nとなる。
【0082】
本実施の形態において、基準面Refにおけるサーボ用レーザ光による情報再生は、DVD(Digital Versatile Disc)の場合と同様の波長λ=650、開口数NA=0.65の条件で行うものとしている。このことに対応して本例では、各ピット形成可能位置の区間長はDVDにおける最短マークと同じ3T分の区間長とし、またピット列形成方向におけるA〜Fの各ピット形成可能位置のエッジ間の間隔も、同様の3T分の長さに設定している。換言すれば、n=6Tとしているものである。
この結果、上記1)2)の条件が満たされるものとなっている。
【0083】
ここで、基準面Ref全体におけるピットの形成態様について理解するために、次の図5を参照してより具体的なピット列の形成手法について説明する。
なお図5では、図示の都合上、ピット列の種類(位相)がA〜Cの3種のみとされた場合を例示している。
また図中において、黒丸はピット形成可能位置を表す。
【0084】
この図5を参照して分かるように、バルク型記録媒体1の基準面Refにおいては、それぞれ位相の異なる複数種のピット列(図5ではA〜Cの3種としているが実際にはA〜Fの6種となる)を1セットとし、該複数種のピット列の1セットがスパイラル状に形成されている。
このことで、上記複数種のピット列のうちの所要の1種のピット列を対象としたトラッキングサーボをかけ続けることで、スポット位置はスパイラル状の軌跡を描くことになる。
【0085】
また、基準面Refにおいて、ピットは、CAV(Constant Angular Velocity)方式により形成されたものとなる。このことから、図示するように複数種のピット列の個々は、半径方向において、そのピットの形成位置(ピットの形成可能位置)が同じ角度位置に揃えられるものとなる。
【0086】
ここで、上記のように基準面RefにてピットをCAV方式で記録するのは、ディスク上のどの領域においても図4に示したようなA〜Fの各ピット列の位相関係が保たれるようにするためである。
【0087】
[2-2.アドレス情報について]

続いて、図6により、基準面Refに記録されるアドレス情報のフォーマットの一例について説明する。
図6において、先ず図6(a)は、それぞれ異なるピット列位相を有するようにされた各ピット列(A〜F)のピット形成可能位置の関係を模式化して示している。なお図6(a)においては「*」マークによりピット形成可能位置を表している。
【0088】
ここで、後に説明するように、本実施の形態の記録再生装置10は、これらA〜Fのピット列のうちから1つのピット列を選択し、該選択した1つのピット列を対象としてトラッキングサーボをかけるようにされている。
但し、このとき問題となるのは、A〜Fの各ピット列は半径方向において従来の光学限界を超えた間隔で配列されているという点である。すなわち、この場合においてビームスポットがトラック上を移動(走査)して得られるトラッキングエラー信号としては、A〜Fの全てのピットを反映したものとなってしまうので、該トラッキングエラー信号に基づきトラッキングサーボをかけたとしても、選択した1つのピット列を追従することはできなくなる。
このために本実施の形態の記録再生装置10は、後述するように、選択したピット列におけるピット形成可能位置の区間のトラッキングエラー信号を抽出し、該抽出したトラッキングエラー信号に基づいて(いわば間欠的に)トラッキングサーボをかけるようにしている。
【0089】
そして、これと同様に、アドレス情報を読む場合にも、選択したピット列に記録される情報のみが選択的に読み出されるように、該選択したピット列のピット形成可能位置の区間の和信号(後述のsum信号)を抽出し、該抽出した和信号に基づきアドレス情報を検出するという手法が採られる。
【0090】
このような情報検出の手法に対応するために、本実施の形態では、ピット形成可能位置におけるピットの形成有無により、チャネルデータの「0」「1」を表現するフォーマットを採用するものとしている。すなわち、1つのピット形成可能位置が、1チャネルビット分の情報を担うものである。
【0091】
その上で本実施の形態では、このようなチャネルビットの複数個による「0」「1」のデータパターンにより、データビットの1ビットを表現するものとしている。
具体的に本例では、図6(b)に示されるように、チャネルビット4つ分でデータビットの「0」「1」を表現するものとし、例えば4チャネルビットのパターン「1011」がデータビット「0」、4チャネルビットのパターン「1101」がデータビット「1」を表すものとしている。
【0092】
このとき重要であるのは、チャネルビット「0」が連続しないという点である。つまり、チャネルビット「0」が連続してしまうということは、上述のようにトラッキングエラー信号を間欠的に用いてサーボを行うとしたときに、エラー信号が得られない期間が連続してしまうということ意味するので、これに伴い、トラッキングサーボの精度を確保することが非常に困難となってしまうためである。
このため本実施の形態では、例えば上記のようなデータビットの定義により、チャネルビット「0」が連続しないという条件が満たされるようにしている。すなわち上記のようなデータビットの定義により、トラッキングサーボの精度低下が最小限に抑えられるようにしているものである。
【0093】
図6(c)は、シンクパターンの一例を示している。
例えばシンクパターンについては、図示するように12チャネルビットで表現するものとし、前半の8ビットを上記データビットの定義に当てはまらないチャネルビットパターン「11111111」とし、その後の4チャネルビットのパターンでシンクの別(種類)を表すものとしている。具体的に、上記8ビットに続く4チャネルビットのパターンが「1011」であればSync1、「1101」であればSync2としている。
【0094】
本実施の形態のバルク型記録媒体1においては、アドレス情報が、上記のようなシンクの後に続けて記録されているものとする。
ここでアドレス情報としては、少なくとも絶対位置情報(半径位置の情報、及び回転角度位置の情報)を記録する。
なお確認のために述べておくと、本例では従来限界の1トラック幅内にA〜Fの複数本のピット列を配列するものとしているが、アドレス情報の記録は、各ピット列の半径位置が個別に表されるように(各ピット列の識別が可能となるように)、ピット列ごとに個別の情報が割り振られるようにして行う。すなわち、従来限界の1トラック幅内に配列されるA〜Fの各ピット列に対し同じアドレス情報を記録するものではない。
【0095】
[2-3.トラッキングサーボの具体的な手法]

上記のように従来の1トラック幅内に複数配列されるようにして形成されたピット列うちから、任意のピット例を対象としてトラッキングサーボをかけるための手法は、具体的には以下で説明するものとなる。
【0096】
図7は、バルク型記録媒体1の回転駆動に伴い基準面Ref上をサーボ用レーザ光のスポットが移動する様子と、その際に得られるsum信号、sum微分信号、及びプッシュプル信号PP(PP信号とも表記する)の波形との関係を模式的に示している。
上記sum信号は、図2に示したサーボ光用受光部29としての複数の受光素子で得られた受光信号DT-svの和信号であり、上記sum微分信号はsum信号を微分して得られる信号である。
ここで、この図では説明の便宜上、図中の各ピット形成可能位置の全てにピットが形成されているものとする。
【0097】
図示するようにして、バルク型記録媒体1の回転に伴いサーボ用レーザ光のビームスポットが移動することに伴っては、sum信号は、A〜Fの各ピットのピット列形成方向における配置間隔に応じた周期でその信号レベルがピークを迎えることになる。つまりこのsum信号は、A〜Fの各ピットのピット列形成方向における間隔(形成周期)を表していることになる。
【0098】
ここで、この図の例ではサーボ用レーザ光のスポットがピット列A上に沿って移動するものとしているので、上記sum信号は、ピット列形成方向におけるピットAの形成位置の通過時にピーク値が最大となり、またピットB〜ピットDの各形成位置にかけて徐々にピーク値が減少していく傾向となる。そしてその後、ピットEの形成位置→ピットFの形成位置の順でピーク値は上昇傾向に転じ、再びピットAの形成位置に至ることでピーク値が最大となる。すなわち、ピット列形成方向における上記ピットE、Fの形成位置においては、外周側に隣接するピット列E、Fにおけるピットの影響を受けるので、sum信号のピーク値はピットE、Fの形成位置ごとで順に上昇することになる。
【0099】
また、上記sum信号を微分して生成されるsum微分信号、及びトラッキング誤差信号としてのPP信号としては、それぞれ図示するような波形が得られる。
上記sum微分信号は、以下で説明するようにして各ピット列A〜Fのピット形成位置(厳密にはピット形成可能位置である)のピット列形成方向における間隔に応じたクロックCLKを生成するために用いられることになる。
【0100】
図8は、上記クロックCLKの生成にあたって上記sum微分信号と上記sum信号とに基づき生成されるタイミング信号について説明するための図である。
本実施の形態では、クロックCLKとして、各ピットのセンター位置(ピークポジション)に相当する位置(タイミング)を立ち上がり位置(タイミング)とする信号を生成するものとしている。具体的には、先の図7にも示した所定の閾値Th1でsum信号をスライスした信号と、同様に所定の閾値Th2でsum微分信号をスライスした信号とを生成し、これらのANDをとることで上記ピークポジションに相当する立ち上がりタイミングを有するタイミング信号を生成する。
【0101】
図9は、上記手順により生成したタイミング信号から生成されたクロックCLKと、該クロックCLKに基づき生成された各selector信号の波形と、基準面Refに形成された各ピット列(の一部)との関係を模式化して示している。
この図に示すように、クロックCLKとしては、各ピット(ピット形成可能位置)のピークポジションに対応したタイミングで立ち上がり、且つ各立ち上がり位置間の中間点が立ち下がり位置とされた信号となる。
このようなクロックCLKは、上記のように生成されたタイミング信号を入力信号(参照信号)としたPLL(Phase Locked Loop)処理を行って生成する。
【0102】
そして、本実施の形態では、このようにしてピットA〜Fの形成間隔に応じた周期を有するクロックCLKから、A〜Fの個々のピット形成可能位置のタイミングを表す6種のselector信号を生成する。具体的にこれらselector信号としては、それぞれ上記クロックCLKを1/6に分周して生成されたものとなっており、且つそれぞれの位相が1/6周期ずつずらされたものとなっている。換言すれば、これら各selector信号は、それぞれの立ち上がりタイミングが1/6周期ずつずれたものとなるように、クロックCLKをそれぞれのタイミングで1/6に分周して生成されるものである。
【0103】
これらselector信号は、それぞれ、A〜Fの対応するピット列のピット形成可能位置のタイミングを表す信号となる。
本実施の形態では、これらselector信号を生成した上で、任意のselector信号を選択し、該選択したselector信号が表す期間内におけるトラッキング誤差信号に従ってトラッキングサーボ制御を行うことで、A〜Fのピット列のうちの任意のピット列上にサーボ用レーザ光のビームスポットをトレースさせる。つまりこのようにすることで、サーボ用レーザ光のビームスポット位置をA〜Fのうちの任意のピット列上にトレースさせることができるものである。
【0104】
このようにA〜Fのピット列のうちの任意のピット列を対象としたトラッキングサーボ制御が可能となることで、トラックピッチ(従来限界のトラックピッチ)の1/2を超えたオフセットの付与を、安定して行うことができる。
つまりこの場合は、トラッキングサーボループに対してオフセットを付与して、ビームスポットの位置を例えば隣接するピット列上に位置させたとしても、トラッキングサーボが外れてしまうことはない。これは、この場合における隣接ピット列との間隔は、従来限界のトラックピッチの1/2よりも小さいためである。この性質を利用すれば、サーボループに対するオフセットの付与と、トラッキングサーボの対象とするピット列を順次隣接するピット列に切り替えていくという動作を同時並行して行っていくことで、トラッキングサーボがかけられた状態を維持しつつ、サーボ用レーザ光のスポット位置(ひいては録再用レーザ光のスポット位置)を徐々にオフセットさせていくことができる。スポット位置がどれだけオフセットされても、上記のようにトラッキングサーボの対象とするピット列の切り替えによってトラッキングサーボがかけれた状態が維持されるので、結果、従来限界トラックピッチの1/2を超える任意量のスポット位置のシフトを、安定して行うことができるものである。
なお、このようなサーボ対象とするピット列の順次の切り替えを伴うスポット位置のシフトの具体的な手法については後に改めて説明する。
【0105】
<3.記録装置の全体的な内部構成>

図10は、記録再生装置10の全体的な内部構成を示している。
なお図10において、光学ピックアップOPの内部構成については、先の図2に示した構成のうち録再用レーザ11、レンズ駆動部16、2軸アクチュエータ21のみを抽出して示している。
【0106】
図10において、記録再生装置10には、バルク層5を対象とした記録/再生や、記録マークの再生時における対物レンズ20のフォーカス/トラッキング制御(つまり録再用レーザ光の反射光に基づく位置制御)を行うための信号処理系の構成として、図中の記録処理部32、録再光用マトリクス回路33、再生処理部34が設けられている。
【0107】
記録処理部32には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部32は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、バルク型記録媒体1に実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部32は、このように生成した記録変調データ列に基づく記録パルスRCPにより、光学ピックアップOP内の録再用レーザ11の発光駆動を行う。
【0108】
録再光用マトリクス回路33は、図3に示した録再光用受光部23内のメインビーム用ディテクタ23Mからの受光信号DT-rpM(出力電流)に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、上述した記録変調データ列を再生した再生信号に相当する高周波信号(以降、再生信号RFと称する)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-rpM、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE-rpMを生成する。
なお、先の図23の説明からも理解されるように、バルク層5内のマーク列からの反射光に基づき得られる上記のフォーカスエラー信号FE-rpM、トラッキングエラー信号TE-rpMは、再生時において用いられるものである。
【0109】
録再光用マトリクス回路33にて生成された上記再生信号RFは、再生処理部34に供給される。
また、上記フォーカスエラー信号FE-rpM、上記トラッキングエラー信号TE-rpMは、録再光用サーボ回路35に対して供給される。
【0110】
再生処理部34は、上記再生信号RFについて、2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0111】
また、録再光用サーボ回路35は、マトリクス回路33から供給されるフォーカスエラー信号FE-rpM、トラッキングエラー信号TE-rpMに基づきフォーカスサーボ信号FS-rpM、トラッキングサーボ信号TS-rpMをそれぞれ生成すると共に、これらフォーカスサーボ信号FS-rpM、トラッキングサーボ信号TS-rpMに基づき、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルをそれぞれ駆動するためのフォーカス駆動信号FD-rpM、トラッキング駆動信号TD-rpMを生成・出力する。
図示するようにフォーカス駆動信号FD-rpMはセレクタSfに供給され、トラッキング駆動信号TD-rpMはセレクタStに供給される。
【0112】
また、記録再生装置10においては、サーボ用レーザ光の反射光についての信号処理系として、サーボ光用マトリクス回路36、アドレス検出回路37、サーボ光用サーボ回路38、selector信号生成・選択回路39、サンプルホールド回路SH1、サンプルホールド回路SH2、セレクタS1、セレクタS2、及び加算器41が設けられる。
【0113】
サーボ光用マトリクス回路36は、図2に示したサーボ光用受光部29における複数の受光素子からの受光信号DT-svに基づき、必要な信号を生成する。
具体的にこの場合のサーボ光用マトリクス回路36は、プッシュプル信号PP、sum信号(和信号)、及びフォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-svを生成する。
図示するようにプッシュプル信号PPはサンプルホールド回路SH1とサンプルホールド回路SH2とに供給される。またフォーカスエラー信号FE-svはサーボ光用サーボ回路38に対して供給される。
またsum信号はアドレス検出回路37及びselector信号生成・選択部39に対して供給される。
【0114】
アドレス検出回路37は、selector信号生成・選択部39が後述するようにして生成・選択出力した2つのselector信号のうち、セレクタS2により選択された1つのselector信号を入力し、該selector信号が表すピット形成可能位置のタイミング(この場合はselector信号がHレベルの区間)で上記サーボ光用マトリクス回路36からのsum信号の値をサンプリングした結果に基づき、基準面Refに記録されたアドレス情報(少なくとも半径位置情報や回転角度位置情報を含む絶対位置情報)を検出する。
ここで、先の図6を参照して説明したように、本実施の形態の場合、各ピット列のアドレス情報は、そのピット列におけるピット形成可能位置でのピット形成有無を1チャネルビットの情報として記録されるものである。これに応じアドレス検出回路37は、上記selector信号の立ち上がりタイミングでsum信号の値を識別することで、1チャネルビットの「0」「1」のデータ識別を行い、その結果に基づき、先の図6で説明したフォーマットに従ったアドレスデコード処理を行うことで、記録されたアドレス情報の検出(再生)を行う。
アドレス検出回路37で検出されたアドレス情報(つまりトラッキングサーボの対象とされているピット列のアドレス情報)は、コントローラ40に対して供給される。
【0115】
selector信号生成・選択部39は、sum信号に基づくクロックCLKの生成、クロックCLKに基づく各selector信号の生成、及び生成したselector信号の選択出力を行う。
【0116】
図11は、selector信号生成・選択部39の内部構成を示している。
図示するようにselector信号生成・選択部39には、クロック生成回路45、selector信号生成回路46、及びselector信号選択回路47が設けられる。
サーボ光用マトリクス回路36からのsum信号は、クロック生成回路45に対して入力される。クロック生成回路45は、先に説明した手順に従ってクロックCLKを生成する。
【0117】
ここで、クロック生成回路45の内部構成は、図12に示すものとなる。
図12において、クロック生成回路45内にはスライス回路45A、sum微分回路45B、スライス回路45C、ANDゲート回路45D、及びPLL回路45Eが設けられる。
sum信号は、図示するようにスライス回路45Aとsum微分回路45Aとに入力される。スライス回路45Aは、設定された閾値Th1に基づき上記sum信号をスライスし、その結果を上記ANDゲート回路45Dに出力する。
上記sum微分回路45Bは、sum信号を微分して先に説明したsum微分信号を生成する。上記スライス回路45Cは、設定された閾値Th2に基づき、上記sum微分回路45Bにより生成されたsum微分信号をスライスし、その結果を上記ANDゲート回路45Dに出力する。
ANDゲート回路45Dは、上記スライス回路45Aからの出力と上記スライス回路45Cからの出力とのANDをとり、これによって先に説明したタイミング信号を生成する。
PLL回路45Eは、このようにANDゲート回路45Dで得られたタイミング信号を入力信号としてPLL処理を行って、クロックCLKを生成する。
【0118】
図11に戻り、クロック生成回路45により生成された上記クロックCLKは、selector信号生成回路46に供給される。
selector信号生成回路46は、クロックCLKに基づき、A〜Fの各ピット列のそれぞれのピット形成可能位置のタイミングを表す6種のselector信号を生成する。具体的にselector信号生成回路46は、クロックCLKを1/6に分周した信号として、それぞれ位相が1/6周期ずつずれた信号を生成することで、上記6種のselector信号を得る。
これら6種のselector信号はselector信号選択回路47に対して供給される。
【0119】
selector信号選択回路47は、入力した6種のselector信号のうちから、コントローラ40より供給される選択信号SLCTにより指示された位相のselector信号と、該指示されたselector信号によりそのピットの形成可能位置が表されるピット列の外周側又は内周側に隣接するピット列についてのselector信号とを選択・出力する。
このとき、selector信号選択回路47は、上記選択信号SLCTにより指示されたselector信号と共に選択するselector信号として、外周側に隣接するピット列のselector信号を選択するか、内周側に隣接するピット列のselector信号を選択するかを、コントローラ40より供給される切替信号SCに応じて切り替えるようにされる。
なお、このようにselector信号選択回路47が選択信号SLCTにより指示されたselector信号と共に外周側又は内周側に隣接するピット列のselector信号を選択出力するのは、後述する実施の形態としての記録手法において、トラッキングサーボの対象とするピット列を外周側又は内周側に隣接するピット列に順次切り替えていくということを行うことに関連するが、この点については後に改めて説明する。
【0120】
説明を図10に戻す。
selector信号選択回路47より出力された2つのselector信号は、その一方がサンプルホールド回路SH1に、また他方がサンプルホールド回路SH2に供給される。
サンプルホールド回路SH1、サンプルホールド回路SH2は、それぞれA/D変換器を備え、サーボ光用マトリクス回路36から供給されるプッシュプル信号PPを、入力されるselector信号の立ち上がりエッジでそれぞれサンプルホールドする。
このようにしてサンプルホールド回路SH1、サンプルホールド回路SH2のそれぞれでプッシュプル信号PPをサンプルホールドして得られるトラッキング誤差信号については、それぞれトラッキングエラー信号TE1-sv、トラッキングエラー信号TE2-svと表記する。
【0121】
トラッキングエラー信号TE1-sv、トラッキングエラー信号TE2-svは、セレクタS1に対して供給される。
セレクタS1は、これらトラッキングエラー信号TE1-sv,TE2-svのうちコントローラ40により指示された方を選択出力する。
ここで、selector信号選択回路47より出力される2つのselector信号は、トラッキングサーボの対象とされているピット列についてのselector信号と、該ピット列に対して外周側又は内周側に隣接するピット列についてのselector信号となる。つまりこのことからも理解されるように、セレクタS1に入力される2つのトラッキングエラー信号TE1-sv、TE2-svは、トラッキングサーボの対象とされているピット列に対するトラッキング誤差を表す信号と、該ピット列の外周側又は内周側に隣接するピット列に対するトラッキング誤差を表す信号となる。
セレクタS1は、コントローラ40からの指示に基づき、これら2つのトラッキングエラー信号TE1-sv、TE2-svのうち、トラッキングサーボの対象とされるべきピット列に対するトラッキング誤差を表す方の信号を選択出力するようにされている。
以下、セレクタS1により選択出力されるトラッキングエラー信号、換言すれば、トラッキングサーボの対象とされるべきピット列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号を、トラッキングエラー信号TE-svと表記する。
トラッキングエラー信号TE-svは、加算器41を介してサーボ光用サーボ回路38に供給される。
【0122】
サーボ光用サーボ回路38は、フォーカスエラー信号FE-sv、及び加算器41を介したトラッキングエラー信号TE-svに基づき、それぞれフォーカスサーボ信号FS-sv、トラッキングサーボ信号TS-svを生成する。
そして、これらフォーカスサーボ信号FS-sv、トラッキングサーボ信号TS-svに基づき、フォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svを生成・出力する。
図示するようにフォーカス駆動信号FD-svは前述したセレクタSfに供給される。また、トラッキング駆動信号TD-svはセレクタStに対して供給される。
【0123】
また、サーボ光用サーボ回路38は、記録時に対応してコントローラ40から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作(ピット列間のジャンプ動作)を実現する。
【0124】
また、前述したselector信号生成・選択部39(selector信号選択回路47)より出力された2つのselector信号は、図示するようにセレクタS2に対しても入力される。
セレクタS2は、供給される2つのselector信号のうち、コントローラ40により指示された方のselector信号を選択し、前述したアドレス検出回路37に対して出力する。
ここで、前述のようにselector信号選択回路47より出力される2つのselector信号は、トラッキングサーボの対象とされるピット列についてのselector信号と、該ピット列に対して外周側又は内周側に隣接するピット列についてのselector信号となる。セレクタS2は、コントローラ40からの指示に基づき、トラッキングサーボの対象とされているピット列についてのselector信号がアドレス検出回路37に対して供給されるようにselector信号の選択を行うようにされる。つまりこのことで、アドレス検出回路37は、トラッキングサーボの対象とされるピット列に記録されているアドレス情報を検出するようにされることとなる。
【0125】
また、記録再生装置10には、前述した内周側サイドビームの反射光についての信号処理系として、エラー信号生成回路42、及びサイドビーム用サーボ回路43が設けられる。
エラー信号生成回路42は、先の図3に示したサイドビーム用ディテクタ23Sにおける複数の受光素子(AS、BS、CS、DS)からの受光信号DT-rpSを入力し、トラッキングエラー信号TE-rpSを生成する。
具体的に本例におけるエラー信号生成回路42では、内周側サイドビームの反射光に基づくトラッキングエラー信号TE-rpSとして、DPD(Differential Phase Detection)法によるトラッキング誤差信号を生成する。すなわち、先の図3に示したサイドビーム用ディテクタ23Sにおける受光素子AS,BSの組及び受光素子CS,DSの組がそれぞれディスクの半径方向に対応する方向に隣接する組であるとした場合、トラッキングエラー信号TE-rpSは、

TE-rpS=Ph(ASi+CSi)−Ph(BSi+DSi)

により計算されるものである。但し上式において、ASi,BSi,CSi,DSiはそれぞれ受光素子AS,BS,CS,DSの受光信号を表し、またPhは信号位相を表すものである。
【0126】
エラー信号生成回路42にて生成されたトラッキングエラー信号TE-rpSは、サイドビーム用サーボ回路43に対して供給されると共に、コントローラ40に対しても供給される。
【0127】
サイドビーム用サーボ回路43は、上記トラッキングエラー信号TE-rpSに基づきトラッキングサーボ信号TS-rpSを生成すると共に、該トラッキングサーボ信号TS-rpSに基づくトラッキング駆動信号TD-rpSを生成する。
図示するようにトラッキング駆動信号TD-rpSはセレクタStに対して供給される。
【0128】
コントローラ40は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置10の全体制御を行う。
例えばコントローラ40は、前述したように予め各層位置に対応して設定されたオフセットof-Lの値に基づいて、録再用レーザ光の合焦位置の制御(設定)を行う。具体的には、記録対象とする情報記録層位置Lに対応して設定されたオフセットof-Lの値に基づき、光学ピックアップOP内のレンズ駆動部16を駆動することで、深さ方向における記録位置の選択を行う。
【0129】
また、コントローラ40は、先の図21〜図23にて説明したような記録/再生時の対物レンズ20のサーボ制御切り替えを実現するための制御も行う。
具体的にコントローラ40は、記録時には、セレクタSfにサーボ光用サーボ回路38からのフォーカス駆動信号FD-svを選択させ、且つセレクタStにサーボ光用サーボ回路38からのトラッキング駆動信号TD-svを選択させることで、2軸アクチュエータ21におけるフォーカスコイル、トラッキングコイルにこれらフォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svが供給されるようにする。つまりこれにより記録時には、対物レンズ20のサーボ制御として、サーボ用レーザ光の基準面Refからの反射光に基づくサーボ制御が行われるものとなる。
なお、本例の場合、コントローラ40は、記録時においてセレクタStにサイドビーム用サーボ回路43からのトラッキング駆動信号TD-rpSを選択させることで、内周側サイドビームの反射光に基づく対物レンズ20のトラッキングサーボを実行させる制御も行うことになるが、これについては後述する。
【0130】
またコントローラ40は、再生時には、セレクタSfに録再光用サーボ回路35からのフォーカス駆動信号FD-rpMを選択させ、且つセレクタStに録再光用サーボ回路35からのトラッキング駆動信号TD-rpSを選択させることで、2軸アクチュエータ21におけるフォーカスコイル、トラッキングコイルにこれらフォーカス駆動信号FD-rpM、トラッキング駆動信号TD-rpMが供給されるようにする。つまり再生時に対応しては、メインビームによる記録済みマーク列からの反射光に基づく対物レンズ20のサーボ制御が実行されるようにするものである。
【0131】
またコントローラ40は、サーボ光用サーボ回路38に対するシーク動作制御も行う。すなわち、サーボ用レーザ光のスポット位置を基準面Ref上における所定の目標アドレスに移動させるようにサーボ回路38に対する指示、及びselector信号生成・選択部39(selector信号選択回路47)に対する選択信号SLCTによるselector信号の選択指示を行う。
【0132】
ここで、この場合におけるシーク動作制御は、大まかには例えば以下のような手順で行われることになる。

1)前述のスライド駆動部を利用した光学ピックアップOP全体の移動による目標アドレス付近への移動
2)サーボ用レーザ光のフォーカスサーボON
3)sum信号に基づくクロックCLKの生成&各selector信号の生成
4)任意に選択したselector信号に基づき、任意のピット列を対象としたトラッキングサーボ制御を実行
5)上記4)にてトラッキングサーボがかかることで、アドレス情報(ピット列を識別するための情報)が読めるので、そのアドレスから目標アドレスまでのピット列ジャンプを行う

コントローラ40は、上記1)2)の動作が実行されるように、サーボ回路38に対する指示を行う。またコントローラ40は、上記4)における任意のselector信号の選択のために、選択信号SLCTにより、selector信号生成・選択部39に対し予め定められた位相によるselector信号の選択指示を行う。
またコントローラ40は、上記5)の動作の実現のために、上記4)によるトラッキングサーボがかかることに応じてアドレス検出回路37により検出されるアドレス情報を入力し、該アドレス情報に基づき、目標アドレスまでに要するピット列のジャンプ本数を計算し、該ジャンプ本数分だけピット列ジャンプ動作を実行させるための指示をサーボ回路38に対して行う。
【0133】
またコントローラ40は、selector信号生成・選択部39に対する選択信号SLCT及び切替信号SCの供給や、セレクタS1の切替制御、セレクタStの切替制御、さらには加算器41へのオフセット値の付与などを行うことで、後述する実施の形態としての記録手法を実現するが、これについては後に改めて説明する。
【0134】
<4.実施の形態としての記録手法>

ここで、実施の形態の記録手法としても、その目的としては、バルク層5においてセルフトラッキングによる記録を実現することで、マーク列の重なりや交差の発生の防止と、記録層における記録容量の低下の防止との両立を図ることにある。
【0135】
しかしながら、先の図26、図27を参照して説明したように、セルフトラッキングの手法をバルク記録に適用しようとした場合には、スライド機構のガタの発生や外乱の発生等によりサーボ用レーザ光のスポット位置と録再光用レーザ光のスポット位置とに比較的大きなずれが生じたときに、サーボ用レーザ光の基準面Refからの反射光に基づくトラッキングサーボから、サイドビームの記録済みマーク列からの反射光に基づくトラッキングサーボへの切替に失敗するという問題があった。
【0136】
そこで本実施の形態では、上記のようなスライド機構のガタや外乱等によりサーボ用レーザ光のスポット位置に対し録再用レーザ光側のスポット位置が比較的大きくずれた場合であっても、セルフトラッキングへの切替が適正に行われるようにするために、以下のような手法を提案する。
【0137】
図13は、実施の形態としての記録手法について説明するための図である。
図13において、図中の破線は、基準面Refに形成されるA〜Fの6種のピット列のうち或る1種のピット列を対象としてトラッキングサーボをかけ続けた場合に描かれる軌跡を示している。換言すれば、この破線の半径方向におけるピッチは、従来限界のトラックピッチと等しいものである。
そして、実線は、実施の形態としての手法により記録を行った場合における記録マーク列の軌跡を表している。
また図13において、図中の柄付きの丸は、サーボ用レーザ光の照射スポットS-svとメインビームの照射スポットS-rpM(図中S-sv&S-rpM)を示し、白丸は内周側サイドビームの照射スポットS-rpSを表している。
なお図13では図示の都合上、skewやレンズシフト等に伴うサーボ用レーザ光に対する録再用レーザ光側のスポット位置ずれは生じておらず、記録面内方向に平行な方向において、スポットS-svとスポットS-rpMとが常に重なるものとして示している。
【0138】
先ず、図中の<1>として、サーボ用レーザ光で基準面Refの或るピット列を対象としたトラッキングサーボをかけた状態で、メインビームによるバルク層5に対する記録を開始する。
このようにサーボ用レーザ光で基準面Refの位置案内子を対象としてトラッキングサーボをかけた状態でバルク層5に対する記録を開始する点は、先の図26にて説明した手法と同様となる。
【0139】
本実施の形態では、このようにサーボ用レーザ光でトラッキングサーボをかけた状態でバルク層5に対する記録を開始した後、ディスク1周回分の記録を完了(終了)する図中の<2>までの間に、トラッキングサーボの対象とする位置を、本来の位置から外周側に徐々にずらしていくようにしている。
具体的にこの場合、ディスク1周分の記録完了までにサーボ対象位置をずらす量は、skewや偏芯、及びスライド機構のガタや外乱等に伴って生じるスポット位置ずれ量を考慮して見積もられる、スポット位置ずれ量の最大値に応じた量に設定する。
例えば、スポット位置ずれ量の最大値は、skewにより生じ得る最大のスポット位置ずれ量が±dskew、偏芯に伴い生じ得るスポット位置ずれ量が±dshift、スライド機構のガタの発生に伴い生じ得る最大のスポット位置ずれ量が±dslider、外乱に伴い生じ得る最大のスポット位置ずれ量が±ddisturbであるとしたとき、
|dskew|+|dshift|+|dslider|+|ddisturb
で表すことができる。
この図13の説明においては簡単のため、スポット位置ずれ量の最大値は、ちょうど1トラック分(従来限界トラックで1トラック分:同位相のピット列の半径方向ピッチ分)であるものとしている。
【0140】
ここで、1周目の記録終了位置近傍において、記録マークが既記録のマーク列に対して重なったり交差したりすることを防止するという点のみを考慮すれば、サーボ対象位置をずらす量は、少なくともスポット位置ずれ量の最大値より大とすればよい。すなわち、例えばスポット位置ずれの最大値が上述のように1トラック分である場合には、1トラック分よりも多く外周側にサーボ対象位置をシフトさせれば、スポット位置ずれが内周側に最大に生じる(つまりこの場合であれば内周側に1トラック分生じる)場合にも、1周目と2周目のマーク列が重なることがないようにできる。
【0141】
但し、このように1周目と2周目のマーク列の重なりを防止できたとしても、1周目と2周目のマーク列同士がマーク再生光の光学限界を超えるほどに近接してしまっていては、記録されたマーク列を正しく再生することができなくなってしまう。
従ってこの点を考慮すると、ディスク1周回でサーボ対象位置を外周側にシフトさせる量としては、少なくとも、
「基準面Refにおける1トラック幅」+「バルク層5側における最小トラックピッチ」
よりも大となるように設定する必要があることになる。
【0142】
なお、本例の場合、基準面Refにおける記録再生条件はレーザ光の波長λ=650nm、対物レンズ20の開口数NA(この場合は実効的な開口数となる)=0.65であるのに対し、バルク層5に対するマークの記録再生条件は波長λ=405nm、NA=0.85であり、バルク層5側の方がより狭いトラックピッチの設定が可能となるが、本例では、十分なマージンを確保する意図で、ディスク1周回でサーボ対象位置をずらす量は、基準面Ref側でのトラック2本分に設定するものとしている。
このようなシフト量の設定により、1周目記録終了位置近傍における1周目と2周目のマーク列の重なりや交差の発生を防止しつつ、1周目と2周目のマーク列の間隔がマーク再生光の光学限界を超えないようにして、後のマーク再生が適正に行われるようにすることができる。
【0143】
ここで、例えば上記のようにサーボ対象位置をディスク1周回かけてトラック1本分以上ずらすとしたときには、単にトラッキングサーボループに対してオフセットを付与したのみでは、実際にスポットがオフセットする量を安定してコントロールすることができな虞がある。
そこで本例では、基準面Refにおけるピット列の記録フォーマットとして、先の図4〜図6にて説明したようなフォーマット(以下、可変トラックピッチフォーマットとも称する)を採用するものとした上で、サーボ対象位置のシフトは、逐次サーボ対象とするピット列を切り替えていくという動作を伴うようにして行うことで、サーボ対象位置のシフト量をより正確にコントロールできるようにしている。
【0144】
図14は、このようなトラッキングサーボの対象とするピット列の切り替えを伴う、サーボ対象位置の具体的なシフト手法について説明するための図であり、サーボ対象位置のシフトを実現するためにトラッキングサーボループに対して与えるべきオフセット、サーボ対象として選択すべきピット列の別、スポットS-svの移動軌跡の関係を示している。
なおこの図14においては、記録開始位置から2度目のサーボ対象ピット列の切り替えが行われるまでの区間のみを抽出して示している。
【0145】
この図14からも明らかなように、サーボ対象位置を徐々に外周側にシフトさせていくにあたっては、サーボループに対して図のような鋸歯状波状のオフセットを付与しつつ、サーボ対象とするピット列を順次外周側に隣接するピット列に切り替えていく。
【0146】
先ず、上記鋸歯状波状のオフセットとしては、その傾きの方向として、サーボ用レーザ光のスポットS-svの位置を徐々に外周側(つまり記録方向側)にシフトさせる傾き方向が設定されたのものを用いる。例えば本例の場合、サーボ用レーザ光のトラッキングサーボ系は、正極性によるトラッキングエラー信号TE-svに応じては対物レンズ20が基準位置から外周側に駆動され、負極性によるトラッキングエラー信号TE-svに応じては対物レンズ20が基準位置から内周側に駆動されるように構成されており、これに対応してこの場合の鋸歯状波状のオフセットとしては、図のように時間経過に応じてその値が徐々に大となる方向の傾きを有するものを用いる。
【0147】
また、このような鋸歯状波状のオフセットの傾きの大きさ(角度)は、ディスク1周回分の記録を行ったときに、サーボ対象位置がずれる量を決定づけるものとなる。前述のように本例においてはディスク1周回でサーボ対象位置を外周側に2トラック分シフトさせるものとしているので、上記鋸歯状波状のオフセットの傾きの大きさは、このようなシフト量が実現されるようにして設定する。
【0148】
そして、このような鋸歯状波状のオフセットの付与を行いつつ、これと並行して、サーボ対象とするピット列を、順次、外周側に隣接するピット列に切り替えていく。換言すれば、サーボ対象とするピット列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE-svを得るためのselector信号が、順次、外周側に隣接するピット列に対応するselector信号に切り替えられていくようにするものである。
【0149】
ここで、このようにサーボ対象ピット列を順次切り替えていくという手法を採る場合には、当然のことながら、サーボ対象ピット列の切り換え位置(タイミング)を予め定めておく必要がある。
本実施の形態において、サーボ対象ピット列の切り替え位置は、隣接関係にあるサーボ対象ピット列間の中間点となる位置(半径方向における)に設定するものとしている。
【0150】
なお確認のために述べておくと、本実施の形態では、このようなサーボ対象ピット列の切り替えを行うことから、サーボ対象位置をシフトさせるにあたって付与すべきオフセットが、上述のような鋸歯状波状のオフセットとなる。つまり、サーボ対象とするピット列の切り替えタイミングにおいてその極性が反転する波形とされているものである。
図示するようにオフセットは、スポットS-svの位置が対象とするピット列上にあるときにはその値が「0」であり、その後、値が上昇してスポットS-svが外周側にシフトしていき外周側隣接するピット列との中間点に到達して切り替えタイミングを迎えたときに、その値が正から負の値に反転する。このとき、切り替え前後における絶対値は同じである。これは、切り替えタイミングが上述のように隣接関係にあるピット列間の中間点に設定されていることによる。
【0151】
上記のようにして、鋸歯状波状のオフセットをトラッキングサーボループに与えつつ、サーボ対象とするピット列を順次切り替えるということを繰り返すことで、トラッキングサーボがかかった状態を維持しつつ、スポットS-svの位置を外周側へと徐々にシフトさせることができる。
このような手法によれば、スポットS-svをトラック幅の1/2を超えてシフトさせるとした場合であっても、トラッキングサーボが外れてしまうといったことはなく、従ってシフト量は正確にコントロールできる。
【0152】
説明を図13に戻す。
上記のような手法によってディスク1周回をかけてサーボ対象位置を外周側に所定量だけシフトさせた後、換言すれば、ディスク1周回分の記録を完了した後は、サーボ対象位置を、逆に内周側に徐々に寄せていくということを行う(図中<2>〜<3>の間の軌跡を参照)。
このような内周側へのシフトとしても、図14にて説明した手法と同様の手法で行う。具体的には、外周側へのシフトの場合とは逆方向の傾きを有する鋸歯状波状のオフセットをサーボループに対して付与しつつ、サーボ対象とするピット列を順次内周側に隣接するピット列に切り替えていくようにすればよい。
【0153】
なおこの場合、サーボ対象位置を内周側に戻す速度は、外周側にシフトさせた速度と同一に設定する必要性はなく、本例の場合、より速い速度で戻すものとしている(例えばディスク1/4周程度)。
このため、この場合においてサーボループに付与する鋸歯状波状のオフセットの傾きの大きさは、外周側にシフトさせる際に用いた鋸歯状波状のオフセットの場合よりも大(絶対値として)に設定することになる。
【0154】
ここで、このようにサーボ対象位置を内周側に徐々に戻していったときには、図中の白丸で示す内周側サイドビームの照射スポットS-rpSとしても、徐々に内周側にシフトされていくこととなる。そして、このようにサーボ対象位置を内周側に徐々に戻していくという動作が継続されることによっては、上記スポットS-rpSが、1周目の記録済みマーク列の近傍に位置することになる(図中<3>の状態)。
【0155】
本実施の形態では、上記のように1周目の記録終了に応じてサーボ対象位置を内周側に徐々に戻す動作の開始後に、内周側サイドビームの反射光に基づき得られるトラッキングエラー信号TE-rpS(図10を参照)のモニタを開始する。
そして、当該トラッキングエラー信号TE-rpSに、上記のようにスポットS-rpSが1周目の記録済みマーク列近傍に位置したときに得られる変化点が検出されたことに応じて、対物レンズ20のトラッキングサーボ制御を、内周側サイドビームの反射光に基づくサーボ制御に切り替える。すなわち、当該内周側サイドビームを用いたセルフトラッキングへの切り替えを行うものである。
【0156】
図15は、このようなサイドビームによるトラッキングサーボへの切り替え(引き込み)手法の具体例について説明するための図である。
図15(a)は、サーボ対象位置を内周側に寄せ続けた際に観測されるトラッキングエラー信号TE-rpSの波形を模式的に示している。
このようにサーボ対象位置を内周側に寄せ続けていくと、それまでほぼ0レベルであったトラッキングエラー信号TE-rpSは、スポットS-rpSが1周目の記録済みマーク列中心に近づくにつれて徐々にそのレベルが上昇してピークを迎え、その後、スポットS-rpSが上記記録済みマーク列中心に一致するタイミングでゼロクロスする。さらにスポットS-rpSが内周側にシフトされて上記記録済みマーク列中心から遠ざかっていくと、トラッキングエラー信号TE-rpSは負のピークを迎えた後、上昇に転じ、その後はほぼ0レベルで推移するものとなる。
【0157】
このようにして得られるトラッキングエラー信号TE-rpSに関して、本例では、図15(b)に示すような手法により内周側サイドビームによるサーボ制御に切り替えを行うものしている。
先ずは予め、トラッキングエラー信号TE-rpSに関して、図のような2つの閾値th1及びth2を設定しておく。このとき、図のように閾値th1,th2は共に正の値であり、th1>th2とする。
この場合のサーボ制御切り替えは、前述のようにトラッキングエラー信号TE-rpSのモニタを開始した後、先ずは当該エラー信号TE-rpSの値が閾値th1を上回ったか否かを判別する。そして、エラー信号TE-rpSの値が閾値th1を上回った場合は、エラー信号TE-rpSの値が閾値th2を下回ったか否かを判別する。この判別により、エラー信号TE-rpSの値が閾値th2を下回ったとされたことに応じて、図10に示すサイドビーム用サーボ回路43にてサーボの引き込み動作を行うと共に、セレクタStにおいて、当該サイドビーム用サーボ回路43が出力するトラッキング駆動信号TD-rpSを選択する。
これにより、2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルが、上記トラッキング駆動信号TD-rpSにより駆動されるものとなり、従って対物レンズ20のトラッキングサーボ制御が、サイドビームの反射光に基づくサーボ制御に切り替えられるものとなる。つまりサイドビームを用いたセルフトラッキングに移行されるものである。
【0158】
上記による説明から理解されるように、本実施の形態では、1周分のマーク記録の終了時点において、サーボ対象位置が外周側(つまり記録方向とは逆方向)に所定量だけシフトされるようにしている。
このことで、1周目の記録終了位置近傍にて1周目と2周目とで記録マーク列の重なりや交差が生じないように、マーク記録位置を待避させることができる。つまり、このようにマーク記録位置を待避させることができることで、1周目の記録終了位置近傍でスライド機構のガタや外乱に伴う比較的大きなスポット位置ずれが生じた場合にも、1周目と2周目とで記録マーク列が重なったり交差したりといった事態の発生を防止することができる。
【0159】
そして、このように記録位置を待避させた後は、サーボ対象位置を記録方向とは逆方向に寄せていくと共に、その際に得られるトラッキングエラー信号TE-rpSをモニタし、当該トラッキングエラー信号TE-rpSに、スポットS-rpSが1周目の記録済みマーク列に近傍に位置したときに応じた変化点が検出されたことに応じて、対物レンズ20のトラッキングサーボ制御を、内周側サイドビームの反射光に基づくサーボ制御に切り替えるものとしている。
これにより、上記の記録位置の待避後に、セルフトラッキングによるマーク記録に適正に切り替えが行われるようにすることができる。
【0160】
このような実施の形態としての記録手法が採られることで、1周目の記録終了位置近傍でスライド機構のガタや外乱に伴う比較的大きなスポット位置ずれが生じた場合にも、サイドビームを利用したセルフトラッキングに適正に切り替えが行われるようにすることができ、このようなセルフトラッキングによるマーク記録の実現が可能となることで、バルク層5におけるマーク列の重なりや交差の発生の防止と記録容量の低下の防止との両立が図られるようにできる。
【0161】
図16は、上記により説明した実施の形態としての手法によりマーク記録が行われた際の記録マーク列の軌跡を示している。
この図16を参照して分かるように、本実施の形態の記録手法によると、マーク列の間隔が広がっているのは1周目から2周目の一部までのごく僅かな区間のみであり、ディスク全体として見れば、バルク層5内におけるマーク列の形成ピッチはほぼ一定であると見なすことができる。確認のため述べておくと、このときのマーク形成ピッチは、メインビームと内周側サイドビームとの配置間隔と一致するものである。
このように実施の形態としての記録手法によれば、記録容量はほとんど犠牲にならないことが理解できる。
【0162】
<5.処理手順>

続いて、図17のフローチャートを参照して、上記により説明した実施の形態としての記録手法を実現するために行われるべき具体的な処理の手順について説明する。
なお図17では、本実施の形態としての記録手法を実現するための具体的な処理の手順を、図10に示したコントローラ40が実行する処理の手順として示している。
コントローラ40は、自らが備える例えばROM等のメモリに格納されたプログラムに従ってこの図に示す手順に従った処理動作を実行することになる。
【0163】
先ず、ステップS101では、サーボ光用サーボ回路38にシーク指示を行う。
すなわち、サーボ光用サーボ回路38に対し、記録開始アドレスを目標アドレスとしたシーク動作制御を行うものである。なお、シーク動作制御の具体的な内容については既に説明済みであるので改めての説明は省略する。
また確認のため述べておくと、このステップS101の時点においては、コントローラ40は、図10に示すセレクタStにサーボ光用サーボ回路38からのトラッキング駆動信号FD-svを選択させていることになる。
【0164】
続くステップS102では、記録開始アドレスに到達するまで待機する。
そして、記録開始アドレスに到達した場合には、ステップS103において、マーク記録開始指示を行う。すなわち、記録処理部32によるマーク記録動作を開始させるものである。
【0165】
続くステップS104では、外周側シフト制御を開始する。
つまり、先の図14にて説明した、サーボ対象位置を外周側にシフトさせるための鋸歯状波状のオフセットの加算器41に対する付与を開始すると共に、サーボ対象とするピット列を順次切り替えるための処理を実行する。
先の説明からも理解されるように、サーボ対象とするピット列の切り替えは、selector信号生成・選択部39(selector信号選択回路47)に対する選択信号SLCT及び切替信号SCの供給、及びセレクタS1の選択切替制御により実現する。
具体的に、コントローラ40は、前述した隣接ピット列間の中間点となるタイミングで、選択信号SLCTにより、前回の選択信号SLCTで指示したピット列(selector信号)の外周側に隣接するピット列のselector信号の選択指示をselector信号選択回路47に対して行う。
先の図10にて説明したように、本例の場合、selector信号選択回路47は、選択信号SLCTにより指示された位相のselector信号と共に、切替信号SCにより指示される側(外周側/内周側)に隣接するピット列についてのselector信号を選択出力するようにされている。コントローラ40は、上記切替信号SCとして、初期状態では外周側に隣接するピット列の選択を指示する信号を与えるようにされている。従ってこの場合のselector信号選択回路47は、選択信号SLCTにより指示されたselector信号と共に、そのselector信号に対応するピット列の外周側に隣接するピット列についてのselector信号を出力するようにされている。
【0166】
ここで、前提として、先のステップS101によるシーク動作制御が行われることに伴っては、コントローラ40からselector信号選択回路47に対して、選択信号SLCTにより或る位相のselector信号の選択指示が為されていることになる。また、前述のように切替信号SCとしては、初期状態では外周側隣接のピット列の選択を指示する信号を与えるようにされているので、これらの点よりステップS101の処理の実行に伴っては、selector信号選択回路47は、上記或る位相のselector信号と、そのselector信号に対応するピット列の外周側に隣接するピット列のselector信号とを出力していることになる。
このとき、selector信号選択回路47は、このようなステップS101のシーク動作制御に伴うコントローラ40からの初回の指示に応じて出力する各selector信号については、選択信号SLCTにより指示された方のselector信号をサンプルホールド回路SH1に対して出力し、当該selector信号に対応するピット列の外周側に隣接するピット列のselector信号をサンプルホールド回路SH2に出力するように構成されている。
前述のようにセレクタS1は、コントローラ40からの指示に応じ、サンプルホールド回路SH1、SH2が出力するトラッキングエラー信号TE1-sv、TE2-svのうち、トラッキングサーボの対象とされるべきピット列についてのトラッキング誤差を表す方の信号を選択出力するように制御されるものである。換言すれば、コントローラ40は、ステップS101におけるシーク動作制御に伴うselector信号選択回路47に対する初回の選択信号SLCTによる選択指示を行ったときには、同時に、セレクタS1に対してサンプルホールド回路SH1からのトラッキングエラー信号TE1-svの選択出力を指示するようにされている。これにより、サーボ光用サーボ回路38側に対し、トラッキングサーボの対象とすべきピット列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE-svが供給されることになる。
【0167】
このように選択信号SLCTによる初回の選択指示が行われた際には、selector信号選択回路47が、サンプルホールド回路SH1に対して指示されたselector信号を出力し、サンプルホールド回路SH2に対して上記指示されたselector信号に対応するピット列の外周側に隣接するピット列のselector信号を出力する状態が得られ、これと共に、セレクタS1においてサンプルホールド回路SH1側の出力信号(TE1-sv)が選択される状態となることで、サーボ光用サーボ回路38に対して、トラッキングサーボの対象とすべきピット列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE-svが供給される。
このような初回状態から、新たな選択信号SLCTによりサーボ対象とするピット列を外周側に隣接するピット列に切り替えるべき状態となったときは、以下のような動作が行われる。
すなわち、selector信号選択回路47は、コントローラ40からの選択信号SLCTにより新たなselector信号(つまりこの場合は前回指示されたselector信号に対応するピット列の外周側に隣接するピット列のselector信号)の選択指示がなされた場合には、サンプルホールド回路SH2に供給していたselector信号をそのままサンプルホールド回路SH2に供給し続ける一方で、サンプルホールド回路SH1に供給するselector信号を、サンプルホールド回路SH2に供給しているselector信号に対応するピット列の外周側に隣接するピット列についてのselector信号に切り替える。
そしてこのとき、コントローラ40は、上記のように選択信号SLCTによる新たな選択指示を行うのと同時に、セレクタS1に対する選択切替指示により、サンプルホールド回路SH2からのトラッキングエラー信号TE2-svを選択出力させる。これにより、新たなにトラッキングサーボの対象とすべきとされたピット列についてのトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE-svを、サーボ光用サーボ回路38側に出力することができる。
【0168】
selector信号選択回路47は、以降、選択信号SLCTにより新たなselector信号の選択指示が行われるごとに、サンプルホールド回路SH1とサンプルホールド回路SH2のうち、前回selector信号を切り替えた方のサンプルホールド回路SHについては、そのまま前回のselector信号の供給状態を維持し、前回selector信号を切り替えずにそのまま供給し続けた方のサンプルホールド回路SHについては、供給するselector信号を、上記維持された方のサンプルホールド回路SHに供給されるselector信号に対応するピット列の外周側に隣接するピット列についてのselector信号に切り替える、という動作を繰り返す。
そしてこの一方でコントローラ40は、選択信号SLCTによりselector信号選択回路47に選択指示を行うごとに、セレクタS1の選択切替指示を行う。
これらの結果、サーボ光用サーボ回路38側には、常に、サーボ対象とすべきピット列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE-svが供給されるようになり、なお且つ、サンプルホールド回路SH1,SH2の何れかの一方が、サーボ対象ピット列に隣接するピット列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号を生成している状態が得られるようにできる。
【0169】
説明を戻す。
ステップS104において、コントローラ40は、selector信号選択回路47に対して選択信号SLCTにより順次外周側に隣接するピット列についてのselector信号の選択指示を行いつつ、該選択指示ごとに上記のようなセレクタS1に対する選択切替指示を行うことで、サーボ対象とするピット列を外周側隣接するピット列に徐々に切り替えていく動作を実現させる。
【0170】
ステップS104により外周側シフト制御を開始した後は、ステップS105において、1周分の記録が完了するまで待機する。1周分の記録が完了したか否かの判別は、図10に示したアドレス検出回路37からのアドレス情報(特に回転角度情報)に基づき行う。
【0171】
ステップS105において、1周分の記録が完了したとされたことに応じては、ステップS106において、内周側シフト制御を開始する。すなわち、トラッキングサーボの対象位置を、徐々に内周側にシフトさせていくための処理を開始するものである。当該内周側シフト制御としては、selector信号選択回路47に供給する切替信号SCを、内周側に隣接するピット列についてのselector信号を選択する旨を指示する信号に切り替えた上で、ステップS104にて説明した外周側シフト制御と同様の処理を行うものとすればよい。
【0172】
但しこの場合、selector信号選択回路47としては、次に説明する点を考慮して、以下に説明するような動作を行うように構成しておく。
ここで、ステップS106における内周側シフト制御が開始される時点の直前に選択信号SLCTによる選択指示が行われた時点を想定しみると、この時点でselector信号選択回路47がselector信号を切り替えずに維持した方のサンプルホールド回路SHには、サーボ対象ピット列についてのselector信号が与えられており、また他方(つまりselector信号を切り替えた方)のサンプルホールド回路SHには、サーボ対象ピット列のさらに外周側に隣接するピット列についてのselector信号が供給されていることになる。そしてこのとき、セレクタS1においては、前者のサンプルホールド回路SH(サーボ対象ピット列のselector信号が供給されている方)からの出力が選択されていることになる。
このように内周側シフト制御が開始される直前の時点では、サンプルホールド回路SH1、SH2の何れに対してもサーボ対象ピット列の内周側に隣接するピット列についてのselector信号が供給されていないので、内周側隣接ピット列への初回の切替指示に応じて、サンプルホールド回路SH1とSH2にそれぞれサーボ対象ピット列についてのselector信号とその内周側に隣接するピット列についてのselector信号とが供給される状態が得られるようにすることが必要となる。
そのために、この場合のselector信号選択回路47としては、上述した切替信号SCの指示内容の切替(つまり内周側シフト制御への切替)があったときには、その後に行われた新たな選択信号SLCTによる選択指示に応じて、以下のような動作を行うように構成しておく。すなわち、selector信号選択回路47は、上記切替信号SCによる指示内容の切替後、新たな選択信号SLCTによる選択指示が為されたときには、当該新たな選択信号SLCTの直前の選択信号SLCTによる選択指示が行われたときに供給selector信号を切り替えた方のサンプルホールド回路SHに対して、上記新たな選択信号SLCTにより指示されたselector信号(つまりサーボ対象ピット列の内周側に隣接するピット列のselector信号)を出力し、もう一方のサンプルホールド回路SHに対して、上記新たな選択信号SLCTで指示されたselector信号に対応するピット列のさらに内周側に隣接するピット列についてのselector信号を出力する。
この状態において、コントローラ40が、上記新たな選択信号SLCTによる選択指示を行うのと同時に、セレクタS1の選択切替指示を行うことで、サーボ光用サーボ回路38側に対して新たにサーボ対象とすべきピット列に対するトラッキング誤差を表すトラッキングエラー信号TE-svが供給されるようにできる。なお且つ、サーボ対象とすべきピット列の内周側に隣接するピット列のトラッキングエラー信号が並行して生成される状態が得られるようにできる。
【0173】
なお確認のために述べておくと、本例において、ディスク1周分でサーボ対象位置を外周側にシフトさせる量はトラック2本分であり、従って1周記録完了時には、スポットS-svが或るピット列上に位置した状態となる。このため、ステップS106の内周側シフト制御にあたり加算器41に与える鋸歯状波状オフセットとしては、0レベルから開始することになる。
【0174】
上記のようにステップS106において内周側シフト制御を開始した後は、ステップS107において、トラッキングエラー信号TE-rpSのモニタを開始する。
そして、ステップS108において、先ずはトラッキングエラー信号TE-rpSのレベルが閾値th1を超えるまで待機する(つまり閾値th1を超えたか否かの判別を、閾値th1を超えるまで繰り返し実行する)。
【0175】
ステップS108において、トラッキングエラー信号TE-rpSのレベルが閾値th1を超えたとした場合は、ステップS109において、トラッキングエラー信号TE-rpSのレベルが閾値th2を下回るまで待機する。
【0176】
ステップS109において、トラッキングエラー信号TE-rpSのレベルが閾値th2を下回ったとした場合は、ステップS110において、サイドビームによるトラッキングサーボに切り替えるための処理を実行する。
すなわち、サイドビーム用サーボ回路43に対し、トラッキングサーボの引き込み指示を行うと共に、セレクタStに対し、サイドビーム用サーボ回路43からのトラッキング駆動信号TD-rpSを選択出力する旨の指示を行うことで、対物レンズ20についてトラッキングサーボ制御が、内周側サイドビームの反射光に基づくトラッキングサーボ制御に切り替えられるようにするものである。
このステップS110の処理が実行されることで、以降、バルク層5に対するマーク記録がセルフトラッキング下で行われることになる。
【0177】
ステップS110の処理を実行した後は、この図に示す一連の処理は終了となる。
【0178】
<6.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、記録位置の待避のためにサーボ対象位置を所定のシフト量だけ記録方向側にシフトさせるにあたり、ディスク1周をかけて徐々にシフトさせるものとしたが、待避のためのサーボ対象位置のシフトは、1周の終了位置で所定量だけ行われていればよく、必ずしも1周をかけて徐々にシフトさせていく必要性はない。例えば1/2周時点で設定された量のシフトを行い、その後、1周の完了までそのシフト量を維持させるといったこともできる。
【0179】
またこれまでの説明では、サーボ対象位置のシフトの際に、サーボ対象ピット列についてのトラッキングエラー信号とその隣接ピット列についてのトラッキングエラー信号とを同時並行して得るようにしたため、サンプルホールド回路SHを2つ設けるものとしたが、サンプルホールド回路SHを1つとして、該サンプルホールド回路SHに与えるselector信号を瞬時に切り替えることで、サーボ対象とするピット列の切り替えが実現されるように構成することもできる。
なおこの場合、セレクタS1及びセレクタS2は不要である点は言うまでもない。
【0180】
またこれまでの説明では、多層記録に関してパラレルトラックパスによる記録を行う場合を例示したが、オポジットトラックパスを採用することもできる。
オポジットトラックパスの場合、隣接する層位置L間で記録方向がそれぞれ異なる。従って、各層位置Lにて適正にセルフトラッキングを実現するためには、サイドビームとしては、内周側サイドビームと外周側サイドビームとを隣接する層位置L間で交互に使い分ける必要がある。
具体的に、オポジットトラックパスに対応する場合の構成としては、内周側サイドビームの反射光を受光するための内周側受光部(実施の形態ではサイドビーム用ディテクタ23Sが相当)と共に、外周側サイドビームの反射光を受光するための受光部とを設けるようにしておき、記録方向が内周→外周である層位置Lにおいては、上記内周側受光部からの受光信号に基づき生成したトラッキングエラー信号に基づき、セルフトラッキングを行うようにする。逆に、記録方向が外周→内周である層位置Lにおいては、上記外周側受光部による受光信号から生成したトラッキングエラー信号に基づき、セルフトラッキングを行うようにする。
なお、記録方向が外周→内周である層位置Lにおいては、記録位置の待避は、内周側に対して行うことは言うまでもない。すなわち、記録位置の待避は、記録方向の順方向に対して行えばよいものである。
【0181】
また、これまでの説明では、マークの記録を担う記録光を得るための光源と、セルフトラッキングを行うためのサイドビームとしての光を得るための光源とを共通とする場合を例示したが、もちろんそれらを別光源とすることもできる。
但しこのとき注意すべきは、セルフトラッキングによる記録を実現するためには、マーク記録光とサイドビームとが同じ層位置Lに合焦させる必要があるという点である。従ってマーク記録光とサイドビームの光源を別々とした場合であっても、マーク記録光とサイドビームとが共にエキスパンダ(固定レンズ14、可動レンズ15、レンズ駆動部16)によりその合焦位置が調整されるように構成するなど、マーク記録光とサイドビームとが同じ層位置Lに合焦できるように構成することは必要となる。
【0182】
またこれまでの説明では、サーボ対象位置を記録方向側にシフトさせた後、記録方向とは逆側に戻し始めるタイミングを、ディスク1周回分の記録終了タイミングとする場合を例示したが、サーボ対象位置を記録方向の逆方向側に戻し始めるタイミングは、ディスク1周回分の記録終了位置の近傍となるタイミングであればよく、必ずしも1周分の記録終了タイミングと厳密に一致させる必要性は無い。
【0183】
またこれまでの説明では、サイドビームによる1周目記録済みマーク列へのサーボ引き込み動作に関して、閾値th1と閾値th2とを用いたタイミング判定による引き込みを行う場合を例示したが、引き込みのタイミングは、サイドビームの反射光に基づくトラッキング誤差信号のゼロクロス近傍となるタイミングで行えばよく、その具体的な手法については特に限定されるべきものではない。
【0184】
また、これまでの説明では、サイドビームの反射光に基づくトラッキング誤差信号をDPD法により生成する場合を例示したが、当該トラッキング誤差信号の生成手法はこれに限定されるべきものではなく、例えばDPP(Differential Push-Pull)法など他の手法により生成することもできる。
【0185】
またこれまでの説明では、ディスク1周分の記録が完了したか否かの判別を、光ディスク記録媒体から読み出したアドレス情報に基づき行う場合を例示したが、例えば光ディスク記録媒体を回転駆動するスピンドルモータの回転角度を検出する回転角度検出部を設け、該回転角度検出部により検出される回転角度情報に基づいてディスク1周分の記録が完了したか否かを判別することもできる。
【0186】
また、これまでの説明では、バルク型記録媒体1を対象として情報記録を行う場合に本発明を適用する場合を例示したが、本発明は、図18に示されるような多層記録媒体50に対する記録を行う場合にも好適に適用することができる。
図18において、多層記録媒体50は、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、及び中間層4が形成される点は図1に示したバルク型記録媒体1と同様となるが、この場合はバルク層5に代えて、図のように半透明記録膜51と中間層4とが所定回数繰り返し積層された層構造を有する記録層が積層される。図のように最下層に形成された半透明記録膜51は、基板52上に積層されている。なお、最下層に形成される記録膜については全反射記録膜を用いることができる。
ここで、注意すべきは、上記半透明記録膜51には、ピット列やグルーブなどによる位置案内子が形成されていないという点である。つまりこの多層記録媒体50としても、先の図4や図5に示したような位置案内子は基準面Refとしての1つの層位置に対してのみ形成されているものである。
【0187】
なお、このような多層記録媒体50の記録層においては、反射膜として機能する半透明記録膜51が形成されているため、記録時においても録再用レーザ光の反射光を用いたフォーカス制御を行うことができる。
すなわち、この場合の記録時において、録再用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御は、当該録再光用レーザ光の反射光に基づいてレンズ駆動部16を駆動することで、記録対象とする半透明記録膜51に合焦させるようにして行うことになる。
【0188】
確認のため述べておくと、このような多層記録媒体50を対象とした記録を行う場合も、記録手法自体はこれまでで説明したものと同様でよいものとなる。
【0189】
またこれまでの説明では、基準面Refが記録層よりも上層側に形成される場合を例示したが、基準面Refが記録層よりも下層側に形成される場合にも本発明は好適に適用できる。
【0190】
また、これまでの説明では、基準面Refにおいて、それぞれが異なるピット列位相を有する複数のピット列としてA〜Fの計6つを設定するものとし、半径方向においてはこれら6つのパターン(ピット列位相)によるピット列が繰り返し形成されるものとしたが、上記複数のピット列の数は6つに限定されるべきものではなく、より多くの本数、或いはより少ない本数とすることもできる。
【0191】
また、これまでの説明では、ピット列における各ピット形成可能位置の区間長は3T分の区間長とし、またピット列形成方向における各ピット形成可能位置のエッジ間の間隔も同様の3T分の長さに設定する場合を例示したが、これらはあくまで一例を示したものに過ぎない。これら各ピット形成可能位置の区間長、及びピット列形成方向における各ピット形成可能位置のエッジ間の間隔については、先に挙げた1)2)の条件が満たされるようにして設定されればよいものである。
【0192】
またこれまでの説明では、それぞれが異なるピット列位相を有する複数のピット列に関して、外周側ほどピット列位相が進み内周側ほどピット列位相が遅れるようにピット列を配列したが、例えば逆に内周側ほどピット列位相が進み外周側ほどピット列位相が遅れるようにピット列を配列するなど、上記複数のピット列の配列パターンは、ピット列形成方向において光学限界を超えないという条件の下で様々なパターンの設定が可能である。
【0193】
また、これまでの説明では、ピット列がスパイラル状に形成される場合を例示したが、ピット列を同心円状に形成することもできる。
【0194】
またこれまでの説明では、基準面Refにおいて図4や図5に示したような可変トラックピッチフォーマットを採用し、記録位置の待避やセルフトラッキングへの移行時におけるサーボ対象位置のシフトを、鋸歯状波状のオフセットのサーボループへの付与とサーボ対象ピット列の切り替えとを行って実現する場合を例示したが、基準面Refには従来限界トラックピッチ以上の所定のトラックピッチによるピット列やグルーブを形成しておくものとし、サーボ対象位置のシフトは、サーボループに対するオフセットの付与のみで行うということもできる。
【0195】
また、これまでの説明では、skewや対物レンズ20のレンズシフトに伴うサーボ用レーザ光に対する録再用レーザ光のスポット位置ずれを補正するための手段については特に設けないものとしたが、もちろん、そのような補正手段を設けることもできる。具体的には、skewを検出するskew検出部と、対物レンズ20のレンズシフト量を検出するレンズシフト検出部とを設け、それらの検出信号からskew、レンズシフトに伴うスポット位置ずれ量を算出し、該算出したずれ量に応じて例えば録再用レーザ光の光軸を補正するなどとった構成を追加するものである。
【0196】
またこれまでの説明では、本発明が光ディスク記録媒体に対する記録及び再生の双方を行う記録再生装置に適用される場合を例示したが、本発明は光ディスク記録媒体に対する記録のみが可能とされた記録専用装置(記録装置)にも好適に適用できる。
【符号の説明】
【0197】
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、Ref 基準面、4 中間層、5 バルク層、L マーク形成層位置(情報記録層位置)、10 記録再生装置、11 録再用レーザ、GR グレーティング、12,25 コリメーションレンズ、13,26 偏光ビームスプリッタ、14 固定レンズ、15 可動レンズ、16 レンズ駆動部、17 ミラー、18,27 1/4波長板、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、21 2軸アクチュエータ、22,28 集光レンズ、23 録再光用受光部、23M メインビーム用ディテクタ、23S サイドビーム用ディテクタ、24 サーボ用レーザ、29 サーボ光用受光部、32 記録処理部、33 録再光用マトリクス回路、34 再生処理部、35 録再光用サーボ回路、36 サーボ光用マトリクス回路、37 アドレス検出回路、38 サーボ光用サーボ回路、39 selector信号生成・選択部、40 コントローラ、41 加算器、42 エラー信号生成回路、43 サイドビーム用サーボ回路、SH1,SH2 サンプルホールド回路、45 クロック生成回路、45A,45C スライス回路、45B sum微分回路、45D ANDゲート回路、45E PLL回路、46 selector信号生成回路、47 selector信号選択回路、50 多層記録媒体、51 半透明記録膜、52 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置案内子が形成された反射膜を有する基準面と、上記基準面とは異なる深さ位置に設けられ光照射に応じたマーク形成により情報記録が行われる記録層とを有する光ディスク記録媒体について記録を行う記録装置であって、
上記記録層に対する情報記録を行うための第1の光ビームと、上記基準面に形成された上記位置案内子に基づく位置制御を行うための第2の光ビームと、第3の光ビームとを生成し且つ、上記第1、第2、及び第3の光ビームが入射される対物レンズを備えると共に、上記光ディスク記録媒体の半径方向において記録が進行する方向を記録方向としたとき、上記第1及び第2の光ビームの照射スポット位置に対して上記第3の光ビームの照射スポットが上記記録方向とは逆方向側に位置し且つ、上記第1の光ビームと上記第3の光ビームとが上記記録層に対して合焦し上記第2の光ビームが上記基準面に対して合焦するように上記第1、第2、及び第3の光ビームを照射するように構成された光生成・照射部と、
上記第1の光ビームについての発光駆動制御を行って上記記録層に対するマーク記録を行う記録部と、
上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構と、
上記第2の光ビームの上記基準面からの反射光を受光した結果に基づき第1のトラッキング誤差信号を生成する第1のトラッキング誤差信号生成部と、
上記第3の光ビームの上記記録層からの反射光を受光した結果に基づき第2のトラッキング誤差信号を生成する第2のトラッキング誤差信号生成部と、
上記第1又は上記第2のトラッキング誤差信号に基づいて上記トラッキング機構を駆動することで、上記対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボ制御部と、
制御部とを備えると共に、
上記制御部は、
上記トラッキングサーボ制御部により上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御を実行させた状態で、上記記録部によるマーク記録を開始させ、さらに、上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボループに対して上記第2の光ビームの照射スポット位置を上記記録方向側に徐々にシフトさせるための順方向オフセットの付与を開始させると共に、
ディスク1周回分のマーク記録の終了位置近傍となるタイミングで、上記トラッキングサーボループに対して上記第2の光ビームの照射スポットを上記記録方向とは逆方向に徐々にシフトさせるための逆方向オフセットの付与を開始させ、当該逆方向オフセットが付与される下で上記第2のトラッキング誤差信号をモニタし、当該第2のトラッキング誤差信号において、上記第3の光ビームの照射スポットが1周目の記録済みマーク列の近傍に位置すること応じて現れる変化点が検出されたことに応じて、上記トラッキングサーボ制御部によるトラッキングサーボ制御が上記第2のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御に切り替えられるように制御する
記録装置。
【請求項2】
上記制御部は、
上記第2のトラッキング誤差信号が第1の閾値を超えた後に第2の閾値を下回ったことに応じて、上記トラッキングサーボ制御部によるトラッキングサーボ制御が上記第2のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御に切り替えられるように制御する
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
上記光生成・照射部は、
上記対物レンズに入射する上記第1及び第3の光ビームのコリメーションを変化させて上記第1及び第3の光ビームの合焦位置を上記第2の光ビームとは独立して変化させる合焦位置調整部を備え、該合焦位置調整部により上記第1の光ビームと上記第3の光ビームとを上記記録層に合焦させる
請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
上記基準面は、
1周回におけるピットの形成可能位置の間隔が第1の間隔に制限されたピット列がスパイラル状又は同心円状に形成され、半径方向に配列されるピット列において、上記ピットの形成可能位置のピット列形成方向における間隔が所定の第2の間隔ずつずれた位置に設定されて、複数のピット列位相を有するようにされており、
上記基準面からの上記第2の光ビームの反射光を受光して得られる受光信号に基づき、上記ピットの形成間隔に応じたクロックを生成するクロック生成部と、
上記クロック生成部により生成された上記クロックに基づき、上記基準面に形成されたそれぞれ異なるピット列位相を有する複数のピット列ごとにそのピットの形成可能位置のタイミングをそれぞれ表す複数のタイミング選択信号を生成するタイミング選択信号生成部と、
上記タイミング選択信号生成部により生成された上記複数のタイミング選択信号のうちから指示されたタイミング選択信号を選択するタイミング選択信号選択部と、
を備えると共に、
上記第1のトラッキング誤差信号生成部は、
上記タイミング選択信号選択部により選択されたタイミング選択信号が表す上記ピットの形成可能位置のタイミングで、上記第2の光ビームの反射光を受光して得られる信号をサンプリングすることで、上記第1のトラッキング誤差信号として、上記複数のピット列のうち上記選択されたタイミング選択信号によりそのピットの形成可能位置のタイミングが示されるピット列に対するトラッキング誤差を表す信号を生成し、
上記制御部は、
上記順方向オフセットとして、その傾きが上記記録方向へのシフトを実現するように設定された鋸歯状波状のオフセットが与えられるようにしつつ、上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボの対象となるピット列が上記記録方向側に隣接するピット列に順次切り替えられるように上記タイミング選択信号選択部に選択させるタイミング選択信号を指示することで、上記第2の光ビームの照射スポットを上記記録方向側に徐々にシフトさせていくと共に、
上記逆方向オフセットとして、その傾きが上記記録方向とは逆方向へのシフトを実現するように設定された鋸歯状波状のオフセットが与えられようにしつつ、上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボの対象となるピット列が上記記録方向とは逆方向に隣接するピット列に順次切り替えられるように上記タイミング選択信号選択部に選択させるタイミング選択信号を指示することで、上記第2の光ビームの照射スポットを上記記録方向とは逆方向に徐々にシフトさせていく
請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
上記基準面には、
個々の上記ピット列上の上記ピットの形成可能位置におけるピットの形成有無のパターンにより、上記個々のピット列ごとにディスク上での位置情報が記録されており、
上記タイミング選択信号選択部によって選択されたタイミング選択信号が表す上記ピットの形成可能位置のタイミングで、上記受光信号に基づき得られる再生信号のチャネルデータ値を判定し、その結果に基づき上記位置情報を検出する位置情報検出部を備え、
上記制御部は、
上記位置情報検出部により検出された上記位置情報に基づき、上記ディスク1周回分のマーク記録の終了タイミングを検出する
請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
位置案内子が形成された反射膜を有する基準面と、上記基準面とは異なる深さ位置に設けられ光照射に応じたマーク形成により情報記録が行われる記録層とを有する光ディスク記録媒体について記録を行う記録方法であって、
上記記録層に対する情報記録を行うための第1の光ビームと、上記基準面に形成された上記位置案内子に基づく位置制御を行うための第2の光ビームと、第3の光ビームとを生成すると共に、上記光ディスク記録媒体の半径方向において記録が進行する方向を記録方向としたとき、上記第1及び第2の光ビームの照射スポット位置に対して上記第3の光ビームの照射スポットが上記記録方向とは逆方向側に位置し且つ、上記第1の光ビームと上記第3の光ビームとが上記記録層に対して合焦し上記第2の光ビームが上記基準面に対して合焦するようにして、上記第1、第2、及び第3の光ビームを共通の対物レンズを介して照射する光生成・照射手順と、
上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に駆動するトラッキング機構を、上記第2の光ビームの上記基準面からの反射光を受光した結果に基づき生成される第1のトラッキング誤差信号、又は上記第3の光ビームの上記記録層からの反射光を受光した結果に基づき生成される第2のトラッキング誤差信号に基づいて駆動することで、上記対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボ制御部に、上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御を実行させた状態で、上記記録層に対し上記第1の光ビームによるマーク記録を開始させ、さらに、上記第1のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボループに対して上記第2の光ビームの照射スポット位置を上記記録方向側に徐々にシフトさせるための順方向オフセットの付与を開始すると共に、
ディスク1周回分のマーク記録の終了位置近傍となるタイミングで、上記トラッキングサーボループに対して上記第2の光ビームの照射スポットを上記記録方向とは逆方向に徐々にシフトさせるための逆方向オフセットの付与を開始し、当該逆方向オフセットが付与される下で上記第2のトラッキング誤差信号をモニタし、当該第2のトラッキング誤差信号において、上記第3の光ビームの照射スポットが1周目の記録済みマーク列の近傍に位置すること応じて現れる変化点が検出されたことに応じて、上記トラッキングサーボ制御部によるトラッキングサーボ制御が上記第2のトラッキング誤差信号に基づくトラッキングサーボ制御に切り替えられるように制御する制御手順と
を有する記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−258272(P2011−258272A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132208(P2010−132208)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】