説明

診療支援システム、診療支援装置及び診療支援プログラム

【課題】脳内に存在する物質と脳神経や身体の機能との関連を把握することが可能な技術を提供する。
【解決手段】診療支援システム1は、被検体の脳機能画像の画像データ12aを生成するfMRI装置3と、この被検体の脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報12bを取得する分子イメージング装置2と、表示デバイス20と、fMRI装置3により生成された画像データ12aに基づく脳機能画像G1と、分子イメージング装置2により取得された物質分布情報12bに基づく物質分布画像G2とを重畳した重畳表示画像Gを表示デバイス20に表示させる制御装置10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、診療支援システム、診療支援装置及び診療支援プログラムに関し、特に、脳神経疾患の診療に用いられる診療支援システム、診療支援装置及び診療支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における高度高齢化社会の進行に伴い、アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳神経疾患の患者数も増加の一途を辿っている。脳神経疾患の原因解明や早期診断や治療法確立に向けて世界的な努力が続けられているが、脳自体に対する理解が十分に深まっていないこともあり、未だ黎明期にあるとさえ言える。
【0003】
脳神経疾患の診療や研究における有力な手段のひとつとして、MRI(Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴イメージング)装置や、核医学診断装置(PET(Positron Emission Computed Tomography);陽電子放出コンピュータ断層撮影装置:SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography);単光子放出コンピュータ断層撮影装置)などのモダリティによる画像評価が用いられてきた。
【0004】
MRI装置などの軟部組織の弁別能力が高いモダリティは、脳の形態的な萎縮などの観察に応用されている。また、fMRI(functional MRI;機能的磁気共鳴イメージング)装置や核医学診断装置などの機能的画像を撮影可能なモダリティは、脳の活動状態の観察に応用されている。
【0005】
また、近年、分子イメージング(Molecular Imaging)と呼ばれる分野が進展を見せている。この分子イメージングは、大きく2つの手法に分類される。第1の手法は、光やX線を利用してナノ・オーダーの分子自体を画像化する、文字通りの「分子画像化」である。この手法の例としては、蛍光顕微鏡やX線顕微鏡などが挙げられる。この手法は、画像化を行うためのエネルギーの組織深達度や放射線被曝の問題により実験室内での利用が中心となっている。
【0006】
一方、分子イメージングの第2の手法は、特定の分子、細胞、組織に対する特異的標識薬剤(リガンド、ligand)の集積を利用し、リガンドにRI(Radio Isotope、放射性同位元素)等の造影剤を付与して信号を増幅することにより、微少量の分子の存在や挙動を画像化する分子機能・存在画像化である。この手法の例としては、RI標識薬剤を投与して行う核医学検査(PETやSPECTを用いた検査)や、SPIO(Super−Paramagnetic Iron Oxide、超磁性酸化鉄)等のナノ磁性材料にリガンドを付加して分子特異性を向上させた薬剤を用いたMRI分子イメージングなどが挙げられる。
【0007】
この手法は、画像の分解能は低いが、生体内における分子の存在や機能を画像化できることから、臨床への応用が期待されるようになってきている。特に最近では、PET−CTのように、機能的画像(PET画像)の分解能の低さを、形態分解能の高い画像(CT画像)と組み合わせて補うことにより、高詳細の形態画像に機能的な情報を重畳表示させる技術が注目を集めている。
【0008】
このような画像化によるアプローチが進められる一方、物質的な観点からの検討も進展を見せている。脳神経疾患は、高齢化に伴う老廃物の蓄積による機能障害や代謝異常が原因であることも多い。そこで、この老廃物を研究することによって脳神経疾患の原因解明や治療法を見出そうとの試みが成果を出し始めている。
【0009】
この成果の一つとして最近特に注目を浴びているものに、アルツハイマー病の原因物質の一つとされるベータ・アミロイド(Aβ:ベータ・アミロイド・プラーク、アミロイド・ベータ、アミロイド・ベータ・蛋白などとも呼ばれる。)がある。Aβは、脳内に結晶として析出し、その析出とともに認知障害が進行することが知られてきている。
【0010】
そこで、このAβをターゲット分子(検出対象の分子)とし、これに特異的に集積するリガンドに造影用の薬剤を付加することによって、形態的には検出が困難な早期段階における脳内でのAβの蓄積を検出でき、アルツハイマー病の診断を超早期に実施できることから、症状の進行を抑えるための対策を早期に開始することが可能になる。また、パーキンソン病とドーパミンの異常分泌との関連も従来からよく知られている。このような物質的なアプローチに関する従来の技術は、たとえば特許文献1、2、3、4などに開示されている。
【0011】
他方、治療の分野においては、MIT(Minimally Invasive Treatment;最小侵襲治療)と呼ばれる手法が注目を集めてきている。この手法の一例としては、衝撃波結石破砕療法、サイバーナイフ、強度変調放射線治療(IMRT;Intensity Modulated Radiation Therapy)などがある。
【0012】
衝撃波結石破砕療法は、強力な超音波等の衝撃波を体外から照射して体内の結石を破砕する治療法である(たとえば特許文献5参照)。また、サイバーナイフやIMRTは、放射線治療において、3次元的な治療計画に基づいて放射線を多方向から照射することにより、照射経路の被曝を低減しつつ局所的な癌に対する高い治療効果を実現するものである(たとえば特許文献6参照)。
【0013】
また、脳神経組織に影響を与えない程度の弱い超音波エネルギーの照射により、アルツハイマー病の原因物質のAβを溶解させようとの研究が進められている。更には、脳内の対象部位に薬剤を輸送して治療を行うドラッグデリバリシステム(Drug Delivery System)についても研究が進められている(たとえば特許文献7、8参照)。
【0014】
【特許文献1】特開2001−352991号公報
【特許文献2】特開2004−157124号公報
【特許文献3】特開2004−261172号公報
【特許文献4】特開2003−199460号公報
【特許文献5】特開2005−261599号公報
【特許文献6】特開2002−267754号公報
【特許文献7】特開2003−96093号公報
【特許文献8】特開2000−504697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の技術では、脳内に存在する老廃物等の物質が、脳神経の機能にどのような影響を与えているか、更には身体機能にどのような影響を与えているかを、具体的に対応付けて把握することができなかった。また、その物質の蓄積が進んでいったときに、脳神経や身体の機能にどのような影響が将来及ぼされるかを予測することができなかった。それにより、脳神経疾患の早期診断や病態の進行状態の予測を高い精度で行うことは困難であった。
【0016】
また、前述のような脳神経疾患の治療を行う場合において、Aβ等の物質が脳内の複数の部位に析出していることがあるが、その場合には、各部位に対応する脳神経機能ないし身体機能の重要度や各部位における物質の析出量などを勘案して治療のタイミングや順序の最適化を図ることが望ましい。しかし、従来の技術では、脳の部位に対応する脳神経機能や身体機能と、脳内に存在する物質との関係を把握することができなかったので、脳神経疾患の安全性や治療効果の更なる向上を図ることは困難であった。
【0017】
この発明は、このような問題を解決するためになされたもので、脳内に存在する物質と脳神経や身体の機能との関連を把握することが可能な診療支援システム、診療支援装置及び診療支援プログラムを提供することを目的とする。
【0018】
また、この発明は、脳神経疾患の治療の安全性や治療効果の向上を図ることが可能な診療支援システム、診療支援装置及び診療支援プログラムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被検体の脳機能画像の画像データを記憶する画像データ記憶手段と、前記被検体の脳内からの信号を検出し、当該検出された信号に基づいて前記脳内の各部位における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報を取得する物質分布情報取得手段と、表示手段と、前記脳機能画像と、前記取得された前記物質分布情報に基づく画像情報とを前記表示手段に表示させる制御手段と、を備えることを特徴とする診療支援システムである。
【0020】
また、請求項21に記載の発明は、被検体の脳機能画像の画像データと、前記被検体の脳内の各部位における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報とを記憶する記憶手段と、表示手段と、前記記憶された画像データに基づく脳機能画像と前記物質分布情報に基づく画像情報とを前記表示手段に表示させる制御手段と、を備えることを特徴とする診療支援装置である。
【0021】
また、請求項22に記載の発明は、被検体の脳機能画像の画像データと、前記被検体の脳内の各部位における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報とを記憶する記憶手段と、表示手段と、を有するコンピュータを、前記記憶された画像データに基づく脳機能画像と前記物質分布情報に基づく画像情報とを前記表示手段に表示させる制御手段として機能させる、ことを特徴とする診療支援プログラムである。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、被検体の脳機能画像と、脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報に基づく画像情報とを表示手段に表示させるように作用する。したがって、脳機能画像に基づいて脳神経や身体の機能について把握することができ、物質分布情報に基づく画像情報に基づいて脳内に存在する物質について把握することができる。また、双方の画像を比較することにより、脳神経や身体の機能と脳内に存在する物質との関連を把握することができる。
【0023】
また、この発明によれば、脳神経や身体の機能と脳内に存在する物質との関連を把握できることから、脳内の各部位に対応する脳神経機能や身体機能の重要度や各部位における物質の蓄積量などを勘案して、治療のタイミングや順序などの治療計画を決定することができる。それにより、脳神経疾患の治療の安全性や治療効果の向上を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明に係る診療支援システム、診療支援装置及び診療支援プログラムは、被検体の脳機能画像と、脳内における特定の体内生成物質の存在量を表す物質分布情報に基づく画像情報とを重畳表示させたり並列表示させたりすることにより、アルツハイマー病等の脳神経疾患の診断や治療を支援するものである。以下、この発明の好適な実施の形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
[システム構成]
図1は、この発明に係る診療支援システムの全体構成の一例を表している。同図に示す診療支援システム1は、このシステムの中枢をなす制御装置10とともに、分子イメージング装置2、fMRI装置3、医用画像データベース4、治療装置5、表示デバイス20及び操作デバイス30を含んで構成されている。
【0026】
制御装置10、分子イメージング装置2、fMRI装置3、医用画像データベース4及び治療装置5は、LAN(Local Area Network)等のネットワークNを介して通信可能に接続されている。また、表示デバイス20と操作デバイス30は、それぞれ制御装置10に接続されている。以下、これらの構成部分についてそれぞれ説明する。
【0027】
〔分子イメージング装置〕
分子イメージング装置2は、被検体(図示せず)の脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す情報(「物質分布情報」と呼ぶことにする。)を取得する装置である。この物質分布情報は、制御装置10に送られて記憶部12に記憶されることになる(後述)。なお、この分子イメージング装置2は、この発明の「物質分布情報取得手段」の一例に相当するものである。
【0028】
ここで言う「分子イメージング」は、背景技術において説明した「分子イメージングの第2の手法」に相当する。すなわち、この分子イメージング装置2は、たとえば核医学診断装置やMRI装置によって構成されており、その検査方法としては、特定の分子や細胞や組織(特定の分子等と呼ぶことがある。)に対して特異的に集積するリガンドに造影剤を付与して被検体に投与するとともに、造影剤により増幅された脳内からの信号を検出して特定の分子等の存在や挙動を画像化するものである。
【0029】
分子イメージング装置2として核医学診断装置を用いる場合、たとえば、RI標識薬剤を投与して行う核医学検査によって物質分布情報を取得することができる。
【0030】
また、分子イメージング装置2としてMRI装置を用いる場合には、たとえば、SPIO等のナノ磁性材料にリガンドを付加して行うMRI分子イメージング検査がこの検査に相当する。なお、特定の体内生成物質としてAβを検出する場合、たとえば、Aβに特異的に結合するスチリルベンゼンと、核磁気共鳴に適用可能なフッ素とを結合させた「FSB」と呼ばれる物質を用いることができる(たとえば、インターネットホームページ、http://mycasty.jp/anotu/html/2005−03/03−14−45658.htmlを参照)。分子イメージング装置2としてMRI装置を用いる場合には、分子イメージング装置2とfMRI装置3とを同一の装置として運用するようにしてもよい。
【0031】
分子イメージング装置2の検査対象となる「特定の体内生成物質」は、被検体の体内において生成される任意の物質であり、特に被検体に悪影響を与える物質である。この「特定の体内生成物質」の例としては、アルツハイマー病の原因物質であるAβ、パーキンソン病に関連するドーパミン、脳機能障害の原因や進行に関連する活性酸素などがある。また、この「特定の体内生成物質」には、脳機能障害の原因や進行に関連する脳細胞、たとえばアポトーシスにより死んだ脳細胞なども含まれるものとする。以下、Aβを特定の体内生成物質とするケースについて特に詳細に説明し、その他のケースについては後述の変形例において説明する。
【0032】
〔fMRI装置〕
fMRI装置3は、被検体の脳内の所定部位の活動状態を表す画像(「脳機能画像」と呼ぶことにする。)の画像データを生成する装置である。fMRI装置3は、たとえば、脳内の活動部位における酸化ヘモグロビンの増加に対応するMR信号(磁気共鳴信号)の増加に基づいて、脳内の活動状態を表す脳機能画像の画像データを生成するようになっている(いわゆる「BOLD(Blood Oxygenation Level Dependent)法」)。生成された脳機能画像の画像データは、制御装置10に送られて記憶部12に記憶されることになる(後述)。
【0033】
このfMRI装置3は、この発明の「脳機能画像生成手段」の一例に相当するものである。この脳機能画像生成手段としては、PET等を用いることも可能である。また、近赤外光の大脳皮質での反射光を解析することにより脳機能画像を形成する光トポグラフィなどの手法を適用することも可能であるが、脳の深部領域の活動状態を把握できることや、画像の精度を考慮するとfMRI装置の方が有効であると考えられる。また、脳機能の時間的な変化を同時に取得したい場合には、脳波測定法や脳磁図測定法等を同時に適用することが可能である(multi modality measurements)。
【0034】
〔医用画像データベース〕
医用画像データベース4は、たとえばHIS(Hospital Information System;病院情報システム)や、PACS(Picture Archiving and Communication System;医用画像保管通信システム)などのシステム、又は、そのシステムに設けられたデータベースによって構成される。医用画像データベース4は、この発明の「画像データ記憶手段」の一例である。なお、画像データ記憶手段は、制御装置10の内部に設けられていてもよい。
【0035】
医用画像データベース4は、たとえば大容量のハードディスクドライブ等の記憶装置と、この記憶装置に保管される画像データ等のデータを管理するソフトウェアとを含んでいる。医用画像データベース4は、患者ID等の患者識別情報などに基づき、たとえば各患者のファイルを作成するなどして、各患者ごとにデータ管理を行っている。
【0036】
この医用画像データベース4は、医用画像の画像データ及びその付帯情報(DICOM付帯情報等)を管理するデータベースであってもよいし、これらのデータを含む電子カルテを管理するデータベースであってもよい。いずれにしても、制御装置10に対して医用画像の画像データを提供可能に構成されたデータベースであればよい。なお、「DICOM」とは、デジタル医用画像に関する通信規格である「Digital Imaging and Communications in Medicine」の略語である。
【0037】
〔治療装置〕
治療装置5は、たとえば最小侵襲治療(MIT)を実施するための装置であり、超音波等の衝撃波や放射線などのエネルギー波を照射することにより、脳内の特定の体内生成物質を除去したり無害化したりする治療法(衝撃波結石破砕療法、サイバーナイフ、IMRT等)に用いられるものである。
【0038】
また、治療装置5は、脳内の対象部位に向けて薬剤を輸送することにより、対象部位にある特定の体内生成物質を除去したり無害化したりするドラッグデリバリシステムに用いられる装置であってもよい。
【0039】
また、特定の体内生成物質がAβである場合、治療装置5は、脳神経組織に影響を与えない程度の弱い超音波エネルギーを照射してAβを溶解させる治療法に用いられる装置であってもよい。
【0040】
〔表示デバイス〕
表示デバイス20は、たとえばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや、LCD(Liquid Crystal Display)などの任意の表示装置により構成される。この表示デバイス20は、制御装置10の制御に基づいて各種の画像や画面を表示するようになっている。この表示デバイス20は、この発明の「表示手段」の一例に相当するものである。
【0041】
〔操作デバイス〕
操作デバイス30は、たとえばマウス、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、コントロールパネルなどの任意の操作デバイスや入力デバイスによって構成される。この操作デバイス30は、ユーザによって操作されると、その操作内容に応じた操作信号を制御装置10に送信する。制御装置10は、この操作信号に基づいて、その操作内容に応じた動作を実行する。この操作デバイス30は、この発明の「操作手段」の一例に相当するものである。
【0042】
なお、表示デバイス20と操作デバイス30は、一体的に構成されていてもよい。その一例としては、タッチパネル方式のディスプレイやペンタブレットなどがある。
【0043】
〔制御装置〕
制御装置10は、診療支援システム1の制御の中枢を担うとともに、各種の演算処理を実行するもので、この発明の「制御手段」の一例に相当する。この制御装置10には、図示は省略するが、CPU等のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信装置(ネットワークアダプタ等)、などが設けられている。
【0044】
制御装置10は、システム制御部11、記憶部12、物質量変化情報生成部13、予測値演算部14、グラフ情報生成部15、差分演算部16、機能障害特定部17、治療優先順位決定部18及び表示制御部19を含んで構成される。以下、これらの構成部分についてそれぞれ説明する。
【0045】
(システム制御部)
システム制御部11は、制御装置10の全体制御を行うとともに、診療支援システム1の全体制御を行うものである。このシステム制御部11は、マイクロプロセッサ等を含んで構成される。システム制御部11の具体的な動作については、以下において随時に説明する。
【0046】
(記憶部)
記憶部12は、各種のデータを記憶するこの発明の「記憶手段」の一例として作用する。この記憶部12は、ハードディスクドライブ等の記憶装置により構成される。なお、この実施形態においては、制御装置10の内部に記憶手段を設けているが、制御装置10の外部に記憶手段を設けることも可能である。たとえば、ネットワークN上の記憶装置を記憶手段として用いることができる。
【0047】
記憶部12には、診療支援プログラムPとともに、脳機能画像(の画像データ)12a、物質分布情報12b、関連情報12c、治療情報12d及び優先順位情報12eが記憶される。
【0048】
診療支援プログラムPは、診療支援システム1の制御、特に制御装置10の動作制御を行うためのコンピュータプログラムである。制御装置10の各部は、この診療支援プログラムPをマイクロプロセッサが実行することにより機能するようになっている。
【0049】
脳機能画像の画像データ12aは、前述のように脳内の所定部位の活動状態を表す画像の画像データであり、fMRI装置3によって生成されたデータである。この脳機能画像の画像データ12aは、fMRI装置3から制御装置10に入力され、システム制御部11によって記憶部12に格納される。或いは、医用画像データベース4に保管されている脳機能画像の画像データ12aが、システム制御部11により読み出されて記憶部12に格納される。
【0050】
脳機能画像の画像データ12aは、一又は二以上のスライス位置における脳の断層画像の画像データであってもよいし、3次元的なボクセルデータ(ボリュームデータ)であってもよい。なお、ボリュームデータである場合、制御装置10(たとえばシステム制御部11)は、任意のスライス位置における断層画像の画像データを生成するためのMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を、必要に応じて実行する。また、脳機能画像の画像データ12aは、各画素の座標情報と輝度情報(カラーの場合にはRGBの階調情報)とを含む情報である。
【0051】
脳機能画像の画像データ12aには、被検体(患者)を識別する患者識別情報(患者ID等)や、この画像データの生成日時(年、月、日、時刻など)を含む検査日時情報や、スライス位置を表す座標を含むスライス位置情報などの付帯情報が付されている。
【0052】
物質分布情報12bは、前述のように脳内におけるAβ等の特定の体内生成物質の存在量の分布を表す情報であり、分子イメージング装置2によって生成されたデータである。この物質分布情報12bは、分子イメージング装置2から制御装置10に入力され、システム制御部11によって記憶部12に格納される。或いは、医用画像データベース4に保管されている物質分布情報12bが、システム制御部11により読み出されて記憶部12に格納される。
【0053】
物質分布情報12bは、脳内におけるAβ等の特定の体内生成物質の存在量の分布を表す画像の画像データである。この物質分布情報12bは、各画素についての座標情報と、特定の体内生成物質の存在量に対応する輝度情報(カラーの場合にはRGBの階調情報)とを含む情報である。この物質分布情報12bは、たとえば、脳の或る断面位置における特定の体内生成物質の存在量の2次元的な分布を表す断層画像の画像データや、脳の全体又は一部における特定の体内生成物質の存在量の3次元的な分布を表す画像の画像データ(ボリュームデータや、ボリュームデータをレンダリングして得られる擬似的な3次元画像の画像データなど)とされる。
【0054】
なお、物質分布情報12bは、脳内の部位の位置情報(座標情報)と、その部位における特定の体内生成物質の存在量とを関連付けた情報(たとえばテーブル情報など)であってもよい。
【0055】
この物質分布情報12bには、脳機能画像の画像データ12aと同様に、患者識別情報や検査日時情報やスライス位置情報などの付帯情報が付されている。
【0056】
関連情報12cは、脳内の部位と、その部位により制御される身体の部位や機能とを関連付ける情報である。たとえば、脳の部位としての「運動野において手の運動に相当する部位」には、身体の部位としての「手」が関連付けられる。また、脳の部位としての「視覚連合野」には、身体の機能としての「視覚」が関連付けられる。関連情報12cには、脳内の複数の部位と身体の複数の部位や機能とに関するこのような関連付けがなされている。この関連情報12cは、記憶部12にあらかじめ(つまり診療支援システム1を実際に運用する前に)記憶される。
【0057】
治療情報12dは、関連情報12cに示す身体の部位や機能のそれぞれについて、その身体の部位や機能の障害に対する治療内容に関する情報を含んでいる。この治療情報12dには、たとえば、脳の代行機能(身体の部位や機能を本来制御している部位以外の脳内の部位が、その制御を行うようになること。)を促進する、リハビリテーションなどの治療に関する治療内容が記録されている。この治療情報12dは、記憶部12にあらかじめ記憶される。
【0058】
優先順位情報12eは、脳内の部位に対し、その部位により制御される身体の部位や機能に基づく優先順位を対応付ける情報である。この優先順位は、たとえば、身体の部位や機能の重要度に応じてあらかじめ決定される。この優先順位の一例としては、「視機能」を第1の優先順位に対応付け、「言語機能」を第2の優先順位に対応付け、「手(特に利き手)」を第3の優先順位に対応付け、・・・・、となっている。この優先順位情報12eは、記憶部12にあらかじめ記憶される。
【0059】
(物質量変化情報生成部)
物質量変化情報生成部13は、分子イメージング装置2により複数の日時に取得された物質分布情報12bに基づいて、特定の体内生成物質の存在量の分布の時系列に沿った変化を表す情報(「物質量変化情報」と呼ぶことにする。)を生成する。この物質量変化情報生成部13は、この発明の「物質量変化情報生成手段」の一例に相当するものであり、マイクロプロセッサ等を含んで構成される。
【0060】
物質量変化情報の生成処理について、より具体的に説明する。物質分布情報12bは、前述のように、脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す画像の画像データ(或いはテーブル情報)である。脳神経疾患の診療においては、病態の変化や治療の効果を把握するために、たとえば数ヶ月おきや数年おきに特定の体内生成物質の存在量の検査を実施する。各回の検査により得られた物質分布情報12bは、患者識別情報や検査日時情報を付加されて医用画像データベース4(或いは記憶部12等の記憶装置)に保管される。
【0061】
物質量変化情報生成部13は、当該被検者について保管されている複数の物質分布情報12b(検査日時が異なるもの)に基づいて物質量変化情報を生成する。物質分布情報12bが画像データである場合、この物質分布情報12bは、各画素についての座標情報と、特定の体内生成物質の存在量に対応する輝度情報(又はRGBの階調値;以下同様)とを含む情報である。物質量変化情報生成部13は、複数の物質分布情報12bについて、同じ座標(画素)に対応付けられた輝度情報(すなわち脳内の同一部位に対応する輝度情報)を参照して、各画素ごとに、特定の体内生成物質の存在量について複数の情報を取得する(前述のように、輝度の値は存在量に対応している。)。この複数の情報は、複数回実施した検査により得られた情報、すなわち時系列に沿った情報であり、脳内の或る部位における特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すものである。このように、物質量変化情報は、脳内の各部位(座標)における特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す情報である。なお、複数の物質分布情報12bの画像位置がずれている場合には、最初に、たとえば画像中の特徴点の位置を合わせることにより、複数の物質分布情報12bの画像位置を合わせておく。
【0062】
一方、物質分布情報12bがテーブル情報である場合、この物質分布情報12bは、脳内の部位の位置情報(座標情報)と、その部位における特定の体内生成物質の存在量とを関連付けた情報となっている。物質量変化情報生成部13は、脳内の各部位について、複数の物質分布情報12bから存在量の情報を抽出することにより、当該部位における特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す情報を生成する。
【0063】
(予測値演算部)
予測値演算部14は、物質量変化情報生成部13により生成された物質量変化情報に基づいて、脳内における特定の体内生成物質の存在量の予測値を演算する。この予測値演算部14は、この発明の「予測値演算手段」の一例に相当するもので、マイクロプロセッサ等を含んで構成される。
【0064】
記憶部12には、特定の体内生成物質の存在量の典型的な変化状態を表す情報(「物質量変化予測情報」と呼ぶことにする。)があらかじめ記憶されている。この物質量変化予測情報は、たとえば臨床データから作成された情報である。物質量変化予測情報は、たとえば治療情報12dに含まれて記憶されている。
【0065】
この物質量変化予測情報は、たとえば、治療情報12dに示す治療内容(リハビリテーション等)を実施した場合における特定の体内生成物質の存在量の変化状態を示すもの(治療実施予測情報)と、実施しなかった場合における変化状態を示すもの(治療不実施予測情報)との一方或いは双方を含んでいる。
【0066】
また、患者の年齢や性別等の患者についての条件ごとに物質量変化予測情報を作成するようにしてもよい。また、特定の体内生成物質が存在する脳内の部位ごとに物質量変化予測情報を作成するようにしてもよい。
【0067】
予測値演算部14は、物質量変化情報に示す特定の体内生成物質の存在量や脳内の部位の情報とともに、当該被検体の年齢や性別等の情報に基づいて、物質量変化予測情報に示す存在量の典型的な変化状態を参照して、特定の体内生成物質の存在量の予測値を演算する。この予測値は、脳内の或る部位における特定の体内生成物質の将来的な変化を表すものである。予測値演算部14は、たとえば数ヶ月単位や数年単位で複数の予測値を演算する。
【0068】
(グラフ情報生成部)
グラフ情報生成部15は、予測値演算部14により演算された予測値と、物質量変化情報とに基づいて、脳内の所定の部位における特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を生成する。このグラフ情報は、たとえば、時間を横軸に取り、特定の体内生成物質の存在量を縦軸に取るとともに、物質量変化情報に示す過去の検査日時における特定の体内生成物質の存在量と、予測値に示す未来の日時における特定の体内生成物質の存在量とをプロットすることにより得られるグラフである(後述する)。このグラフ情報は、たとえば画像データである。グラフ情報生成部15は、マイクロプロセッサ等を含んで構成されている。
【0069】
(差分演算部)
差分演算部16は、所定期間を介して分子イメージング装置2により取得された2つの物質分布情報12bの差分を演算する。この差分演算部16は、この発明の「差分演算手段」の一例に相当するもので、マイクロプロセッサ等を含んで構成される。
【0070】
記憶部12には、異なる検査日時に取得された複数の物質分布情報12bが記憶されている。各物質分布情報12bが画像データである場合、差分演算部16は、2つの物質分布情報12b(画像データ)の差分画像の画像データを求める。この差分画像は、2つの物質分布情報12bの取得間隔(上記の所定期間に相当する。)における特定の体内生成物質の存在量の分布の変化を表す画像である(「物質量変化画像」と呼ぶことにする。)
【0071】
一方、各物質分布情報12bがテーブル情報である場合、差分演算部16は、脳内の各部位(各座標)について、2つの物質分布情報12bに示す特定の体内生成物質の存在量の差分を演算する。なお、各物質分布情報12bがテーブル情報である場合に、2つの物質分布情報12bのそれぞれについて、脳内の部位の位置情報(座標情報)と特定の体内生成物質の存在量との関連付けに基づいて画像データを生成し、その2つの画像データの差分画像(物質量変化画像)の画像データを求めるようにしてもよい。
【0072】
(機能障害特定部)
機能障害特定部17は、脳機能画像の画像データ12aと、物質分布情報12bと、関連情報12cとに基づいて、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を特定する。この機能障害特定部17は、この発明の「機能障害特定手段」の一例に相当するもので、マイクロプロセッサ等を含んで構成される。
【0073】
関連情報12cは、前述のように、脳内の部位と、その部位により制御される身体の部位や機能とを関連付ける情報である。また、脳機能画像の画像データ12aにおける座標(画素)と、物質分布情報12bにおける座標とは、一致されているものとする。なお、一致されていない場合には、公知の画像位置合わせ方法を用いて互いの座標を一致させておく。
【0074】
機能障害特定部17は、脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bとに基づいて、脳内のどの部位(座標)に特定の体内生成物質がどれだけ存在するかを求めるとともに、関連情報12cを参照して、脳内の各部位と身体の部位や機能とを対応付ける。それにより、身体の部位や機能と、その部位等に対応する脳内の部位における特定の体内生成物質の存在量とが対応付けられる。
【0075】
更に、機能障害特定部17は、特定の体内生成物質の存在量が多い脳内の部位に対応する、身体の部位や機能を特定する。それにより、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能が特定される。このとき、たとえば、特定の体内生成物質の存在量が所定量よりも多い部位に対応する身体の部位等を特定するようにしてもよいし、特定の体内生成物質の存在量が多いものから順位付けを行うようにしてもよい。また、脳内の部位ごと(身体の部位や機能ごと)に、臨床的に得られた障害の発生し易さに基づく重み付けを行って、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能するように構成することもできる。
【0076】
(治療優先順位決定部)
治療優先順位決定部18は、脳機能画像の画像データ12aと、物質分布情報12bと、優先順位情報12eとに基づいて、脳内の複数の部位に対して治療装置5による治療を実施するときの優先順位を決定する。この治療優先順位決定部18は、この発明の「治療優先順位決定手段」の一例に相当するものであり、マイクロプロセッサ等を含んで構成される。
【0077】
優先順位情報12eは、脳内の部位に対して、その部位により制御される身体の部位や機能に基づく優先順位とを対応付ける情報である。治療優先順位決定部18は、脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bとに基づいて、脳内のどの部位(座標)に特定の体内生成物質がどれだけ存在するかを求めるとともに、優先順位情報12eを参照して、特定の体内生成物質が存在する各部位に優先順位を対応付ける。それにより、特定の体内生成物質が存在する(複数の)部位を治療するときに治療を行う優先順位が決定される。
【0078】
このとき、各部位における特定の体内生成物質の存在量を考慮して優先順位を決定するようにしてもよい。その場合、優先順位情報12eは、脳内の部位及び特定の体内生成物質の存在量に対して優先順位を対応付ける情報となる。たとえば、「視機能」と「言語機能」について、「言語機能」に対応する部位における特定の体内生成物質の存在量が「視機能」に対応する部位における存在量の2倍以上である場合には、「言語機能」、「視機能」をそれぞれ第1、第2の優先順位に対応付け、それ以外の場合には、「視機能」、「言語機能」をそれぞれ第1、第2の優先順位に対応付ける優先順位情報12eを用いることができる。
【0079】
(表示制御部)
表示制御部19は、表示デバイス20に各種の画像や画面を表示させるための制御を行う。たとえば、表示制御部19は、2つの画像データに基づいて、2つの画像を重畳して表示させたり、2つの画像を並列して表示させたりする。このとき、2つの画像データに基づく画像を個別に表示させるようにしてもよいし、2つの画像データを融合した画像データ(フュージョン画像の画像データ)を生成してフュージョン画像を表示させるようにしてもよい。この表示制御部19は、マイクロプロセッサ等を含んで構成される。
【0080】
[動作]
以上のような構成を具備する診療支援システム1の動作を説明する。以下、この診療支援システム1の4つの動作について説明する。
【0081】
第1の動作においては、脳機能画像と、脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す画像(「物質分布画像」と呼ぶことにする。)とを、表示デバイス20に表示させるための診療支援システム1の動作を説明する。
【0082】
第2の動作においては、脳機能画像と、所定期間における特定の体内生成物質の存在量の分布の変化を表す画像(前述の物質量変化画像)とを、表示デバイス20に表示させるための診療支援システム1の動作を説明する。
【0083】
第3の動作においては、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を表示デバイス20に表示させるための診療支援システム1の動作を説明する。
【0084】
第4の動作においては、治療装置5による治療を実施するときに、脳内の複数の部位に対して治療を行う優先順位を表示デバイス20に表示させるための診療支援システム1の動作を説明する。
【0085】
〔第1の動作〕
図2に示すフローチャートは、脳機能画像と物質分布画像とを表示デバイス20に表示させるときに診療支援システム1が行う動作の一例を表している。
【0086】
最初に、分子イメージング装置2を用いて、被検体の脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報を取得するとともに(S1)、fMRI装置3を用いて、この被検体の脳内の所定部位の活動状態を表す脳機能画像の画像データを取得する(S2)。なお、物質分布情報の取得と脳機能画像の画像データの取得とは、どちらを先に実施してもよい。
【0087】
取得された物質分布情報と脳機能画像の画像データは、それぞれ医用画像データベース4に送られて保管される(S3)。ここで、医用画像データベース4は、物質分布情報及び脳機能画像の画像データに付された付帯情報を参照し、この物質分布情報と脳機能画像の画像データを当該被検体(患者)のファイルに保管する。
【0088】
制御装置10のシステム制御部11は、たとえばユーザの要求に応じて、医用画像データベース4から脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bを読み出し、記憶部12に記憶させる(S4)。このとき、複数の検査日時における複数の脳機能画像の画像データ12aや物質分布情報12bが読み出されたものとする。
【0089】
このステップS4の処理を具体的に説明すると、たとえばユーザが操作デバイスを操作して患者識別情報を入力したことに対応し、システム制御部11は、入力された患者識別情報とデータの送信要求とを医用画像データベース4に送信する。医用画像データベース4は、この患者識別情報に対応するファイルを特定し、脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bを制御装置10に送信する。システム制御部11は、この脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bを記憶部12に記憶させる。
【0090】
なお、医用画像データベース4からのデータの読み出しは、この段階で全てのデータを読み出さなくてもよい。たとえば、以下の処理において必要なデータを必要なタイミングで逐次に読み出すように構成することができる。
【0091】
さて、記憶部12に脳機能画像の画像データ12a及び物質分布情報12bが記憶されると、システム制御部11は、たとえばユーザが所定の操作を行ったことに対応し、同じ検査日時の脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bを選択する。このとき、物質分布情報12bがテーブル情報である場合には、システム制御部11がこのテーブル情報から画像データを生成する。システム制御部11は、選択した脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12b(画像データ)とを表示制御部19に送る。表示制御部19は、この2つの画像データ12a、12bに基づいて、脳機能画像と物質分布画像とを重畳して表示デバイス20に表示させる(S5)。
【0092】
図3は、脳機能画像と物質分布画像とを重畳した画像(重畳表示画像)の一例を表している。これらの画像は、所定の診療用画面100の画像表示領域110に表示される。
【0093】
図3(A)に示す脳機能画像G1は、脳機能画像の画像データ12aに基づいて表示される画像の一例を表す。この脳機能画像G1は、脳の所定の断面位置における断層画像上に、身体の右手に対応する脳内の部位を示す活動領域画像g1が明示された画像である。
【0094】
図3(B)に示す物質分布画像G2は、物質分布情報12bに基づいて表示される画像の一例を表す。この物質分布画像G2は、脳機能画像G1と同じ脳の断面位置上に、特定の体内生成物質(Aβ)の存在を表す物質画像g2が分布された画像である。なお、物質分布画像G2の当該断面位置には、脳機能画像G1と同じ断層画像を表示するようにしてもよいし、単に断面位置を示す画像を表示するようにしてもよい。
【0095】
図3(C)に示す重畳表示画像Gは、脳機能画像G1と物質分布画像G2とを重畳して表示させたときの画像の一例を表す。この重畳表示画像Gは、脳内の部位(座標)を互いに対応させるようにして脳機能画像G1と物質分布画像G2とを重畳表示させた画像である。重畳表示画像Gを表示させるときには、図3(C)の画像表示領域110の下方に示すように、活動領域画像g1に対応する身体の部位や機能を示す情報「fMRI 右手動作機能」(モダリティ名も含まれている。)や、物質画像g2の分布を示す情報「Aβ分布」が表示されるようになっている。
【0096】
次に、ユーザが、操作デバイス30のマウスを操作して、図4に示すように、活動領域画像g1(若しくは物質画像g2)にマウスポインタ30aを合わせてクリックを行うと(S6)、システム制御部11は、複数の物質分布情報12bを記憶部12から読み出し、物質量変化情報生成部13に送る。物質量変化情報生成部13は、この複数の物質分布情報12bに基づいて、クリックされた活動領域画像g1に対応する脳内の部位における、特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す物質量変化情報を生成する(S7)。
【0097】
続いて、予測値演算部14は、生成された物質量変化情報に基づいて、クリックされた活動領域画像に対応する部位における特定の体内生成物質の存在量の予測値を演算する(S8)。演算された予測値は、物質量変化情報とともにグラフ情報生成部15に送られる。
【0098】
更に、グラフ情報生成部15は、物質量変化情報と、演算された予測値とに基づいて、クリックされた活動領域画像g1に対応する部位における、特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報の画像データを生成する(S9)。生成されたグラフ情報の画像データは表示制御部19に送られる。
【0099】
表示制御部19は、この画像データに基づいて、クリックされた活動領域画像g1に対応する部位における、特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を診療用画面100のグラフ情報表示領域120に表示させる(S10)。なお、グラフ情報を表示したウィンドウをポップアップさせることにより、このグラフ情報を表示させるようにしてもよい。
【0100】
このグラフ情報の表示態様の一例を図5に示す。同図に示すグラフ情報は、時間(Time)を横軸に取り、特定の体内生成物質(Aβ)の蓄積量(存在量)を縦軸に取ったグラフとして表される。横軸上の「Now」は、現在を表している。横軸において「Now」よりも左側は過去であり、右側は未来である。したがって、このグラフ情報の「Now」よりも左側に対応する部分は、物質量変化情報に基づいて生成されたグラフであり、「Now」よりも右側に対応する部分は、予測値に基づいて生成されたグラフである。このグラフ情報は、Aβの蓄積量の変化を現在から10年後まで予測したものである。
【0101】
「Now」よりも右側の部分には、上方に向かうグラフと、下方に向かうグラフとが示されている。上方に向かうグラフは、リハビリテーション等の治療を行わなかった場合におけるAβの蓄積量の変化(増加)の予測を表している(前述の治療不実施予測情報に基づくグラフである)。また、下方に向かうグラフは、治療を行った場合におけるAβの蓄積量の変化(減少)の予測を表している(前述の治療実施予測情報に基づくグラフである)。
【0102】
また、グラフ情報表示領域120中に横軸と平行に表示されている点線は、アルツハイマー病の症候が現れるAβの蓄積レベルを示している。
【0103】
〔第2の動作〕
図6に示すフローチャートは、脳機能画像と物質量変化画像とを表示デバイス20に表示させるときに診療支援システム1が行う動作の一例を表している。なお、分子イメージング装置2による物質分布情報の取得(S1)、fMRI装置3による脳機能画像の画像データの取得(S2)、物質分布情報と脳機能画像の画像データの医用画像データベース4への保管(S3)、制御装置10のシステム制御部11による脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bの読み出し及び記憶部12への記憶(S4)は、既になされているものとする。
【0104】
システム制御部11は、たとえばユーザが所定の操作(差分演算に供する物質分布情報の検査日時の指定操作など)を行ったことに対応して、検査日時の異なる2つの物質分布情報12bを記憶部12から読み出す(S11)。読み出された2つの物質分布情報12bは、差分演算部16に送られる。
【0105】
差分演算部16は、この2つの物質分布情報12bの差分を演算して、この2つの物質分布情報12bの差分画像(物質量変化画像)の画像データを生成する(S12)。生成された物質量変化画像の画像データは、表示制御部19に送られる。
【0106】
また、システム制御部11は、たとえばステップS11で読み出された2つの物質分布情報12bのいずれかと同じ検査日時に取得された脳機能画像の画像データ12aを記憶部12から読み出して、表示制御部19に送る(S13)。
【0107】
表示制御部19は、差分演算部16からの画像データと、システム制御部11からの画像データ12aとに基づいて、物質量変化画像と脳機能画像とを重畳して表示デバイス20に表示させる(S14)。このときに表示される画像は、図3(C)に示した重畳表示画像Gと同様に、脳内の部位(座標)を互いに対応させるようにして物質量変化画像と脳機能画像とを重畳表示させた画像である(すなわち、図3における物質分布画像を物質量変化画像に置き換えて表示するだけである。)。
【0108】
次に、ユーザが、図2のステップS6と同様に、活動領域画像g1をクリックすると(S15)、物質量変化情報生成部13が、システム制御部11から送られる複数の物質分布情報12bに基づいて、クリックされた活動領域画像g1に対応する脳内の部位における物質量変化情報を生成し(S16)、予測値演算部14が、この物質量変化情報に基づいて、当該部位における特定の体内生成物質の存在量の予測値を演算し(S17)、グラフ情報生成部15が、物質量変化情報と予測値とに基づいて、当該部位におけるグラフ情報の画像データを生成する(S18)。
【0109】
表示制御部19は、この画像データに基づいて、クリックされた活動領域画像g1に対応する部位における、特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を診療用画面100のグラフ情報表示領域120に表示させる(S19)。このグラフ情報の表示態様は、図5に示したものと同様である。なお、物質量変化画像(差分画像)の作成の基になった2つの物質分布情報12bの検査日時を横軸上に明示するなど、適宜に変形を施すことが可能である。
【0110】
〔第3の動作〕
図7に示すフローチャートは、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を表示デバイス20に表示させるときに診療支援システム1が行う動作の一例を表している。なお、〔第2の動作〕の場合と同様に、分子イメージング装置2による物質分布情報の取得(S1)、fMRI装置3による脳機能画像の画像データの取得(S2)、物質分布情報と脳機能画像の画像データの医用画像データベース4への保管(S3)、制御装置10のシステム制御部11による脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bの読み出し及び記憶部12への記憶(S4)は、既になされているものとする。
【0111】
システム制御部11は、たとえばユーザが所定の操作を行ったことに対応し、脳機能画像の画像データ12a、物質分布情報12b、関連情報12c及び治療情報12dを記憶部12から読み出す(S21)。ここで読み出される脳機能画像の画像データ12a及び物質分布情報12bは、たとえば最新の検査日時に取得されたものである。読み出されたデータのうち脳機能画像の画像データ12a、物質分布情報12b及び関連情報12cは、機能障害特定部17に送られる。
【0112】
機能障害特定部17は、システム制御部11からの脳機能画像の画像データ12a、物質分布情報12b及び関連情報12cに基づいて、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を特定する(S22)。特定された身体の部位又は機能の情報は、表示制御部19に送られる。また、特定された身体の部位又は機能の情報は、システム制御部11にも送られる。
【0113】
システム制御部11は、ステップS22で特定された身体の部位又は機能に対応する治療内容を治療情報12dから選択する(S23)。選択された治療内容の情報は、表示制御部19に送られる。
【0114】
表示制御部19は、機能障害特定部17から送られた情報に基づいて、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を示す文字情報や画像情報を表示デバイス20に表示させる(S24)とともに、システム制御部11から送られた情報に基づいて、当該身体の部位又は機能に対する治療内容を示す文字情報や画像情報を表示デバイス20に表示させる(S25)。これらの文字情報や画像情報は、たとえば診療用画面100の所定の表示領域(図示は省略する。)に表示される。
【0115】
機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を示す文字情報としては、たとえば「3年後に右手に機能障害が発生することが予想されます。」等のメッセージを表示させることができる。また、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を示す画像情報としては、たとえば、身体を模式的に表した身体画像を表示させ、機能障害が発生しうる部位や機能に相当する身体画像の部位を明示(異なる色や階調で表示するなど)した画像を表示させることができる。
【0116】
また、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能に対する治療内容を示す文字情報としては、たとえば「右手のリハビリテーションの実施をお勧めします。」等のメッセージを表示させることができる。このとき、リハビリテーション等の治療の具体的な方法、開始時期、要する期間、効果(脳の代行機能の促進等)などの情報を併せて表示させるようにしてもよい。また、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能に対する治療内容を示す画像情報としては、たとえば、この治療内容(リハビリテーション)を実施している患者を撮影した画像(静止画像、動画像)、イラスト、アニメーションなどを表示させることができる。
【0117】
次に、たとえばユーザが操作デバイス30により所定の操作を行ったことに対応し、システム制御部11は、複数の物質分布情報12bを記憶部12から読み出して、物質量変化情報生成部13に送る(S26)。物質量変化情報生成部13は、この複数の物質分布情報12bに基づいて、ステップS24で特定された身体の部位又は機能に対応する脳内の部位における、特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す物質量変化情報を生成する(S27)。
【0118】
続いて、予測値演算部14は、生成された物質量変化情報に基づいて、当該脳内の部位における特定の体内生成物質の存在量の予測値を演算する(S28)。演算された予測値は、物質量変化情報とともにグラフ情報生成部15に送られる。
【0119】
グラフ情報生成部15は、物質量変化情報と、演算された予測値とに基づいて、当該脳内の部位における特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報の画像データを生成する(S29)。生成されたグラフ情報の画像データは表示制御部19に送られる。
【0120】
表示制御部19は、この画像データに基づいて、当該脳内の部位における特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を、たとえば診療用画面100のグラフ情報表示領域120に表示させる(S30)。ここで表示されるグラフ情報は、たとえば図5に示したものと同様に、リハビリテーション等の治療を行わなかった場合における特定の体内生成物質の蓄積量の変化状態を表すグラフと、治療を行った場合における特定の体内生成物質の蓄積量の変化状態を表すグラフとを含んでいる。
【0121】
それにより、診療用画面100には、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を示す情報と、当該身体の部位又は機能に対する治療内容を示す情報と、その治療に係る治療を実施しなかった場合における特定の体内生成物質の蓄積量の変化状態を表すグラフと、治療を実施した場合における特定の体内生成物質の蓄積量の変化状態を表すグラフとが表示されることになる。
【0122】
〔第4の動作〕
図8に示すフローチャートは、治療装置5を用いた治療において、脳内の複数の部位に対して治療を行う優先順位を表示デバイス20に表示させるときに診療支援システム1が行う動作の一例を表している。なお、〔第2の動作〕の場合と同様に、分子イメージング装置2による物質分布情報の取得(S1)、fMRI装置3による脳機能画像の画像データの取得(S2)、物質分布情報と脳機能画像の画像データの医用画像データベース4への保管(S3)、制御装置10のシステム制御部11による脳機能画像の画像データ12aと物質分布情報12bの読み出し及び記憶部12への記憶(S4)は、既になされているものとする。
【0123】
システム制御部11は、たとえばユーザが所定の操作を行ったことに対応し、脳機能画像の画像データ12a、物質分布情報12b及び優先順位情報12eを記憶部12から読み出す(S31)。ここで読み出される脳機能画像の画像データ12a及び物質分布情報12bは、たとえば最新の検査日時に取得されたものである。読み出されたデータは、治療優先順位決定部18に送られる。
【0124】
治療優先順位決定部18は、システム制御部11からの脳機能画像の画像データ12a、物質分布情報12b及び優先順位情報12eに基づいて、治療装置5を用いて脳内の複数の部位の治療を行うときの優先順位を決定する(S32)。決定された脳内の複数の部位の優先順位の情報は、表示制御部19に送られる。
【0125】
表示制御部19は、治療優先順位決定部18からの情報に基づいて、治療装置5を用いて脳内の複数の部位の治療を行うときの優先順位の情報を表示デバイス20に表示させる(S33)。この情報の表示態様としては、たとえば、脳内の複数の部位を優先順位に対応する順序で配列表示させることができる。また、各部位に対する治療の緊急度(特定の体内生成物質の存在量と臨床データとを基に生成される。)などの情報を併せて表示させることも可能である。
【0126】
ここで、表示デバイス20とは異なる部屋に治療装置5が表示されているときなど、治療を行う場所と表示デバイス20の設置場所とが異なるときには、表示デバイスを備える構成の治療装置5を用いたり、治療装置5の近傍位置に表示デバイスを設置したりすることが望ましい。この表示デバイスを符号20′で表すことにする(図示は省略する。)。治療装置5(又はその近傍位置)には、この表示デバイス20′に画像や画面を表示させる制御装置(コンピュータ)が設けられている。
【0127】
この場合において、制御装置10は、以上のステップS31〜S33に加えて(又は、ステップS33に代えて)、以下のような処理を実行する。
【0128】
システム制御部11は、ステップS32において治療優先順位決定部18が決定した脳内の複数の部位の優先順位の情報を受け、ネットワークNを通じて治療装置5に送信する(S34)。治療装置5は、受信した情報に基づいて、脳内の複数の部位の優先順位の情報を表示デバイス20′に表示させる(S35)。
【0129】
なお、表示デバイス20′に対する優先順位の情報の表示は、制御装置10が優先順位を決定したときに行う必要はなく、たとえば次のようなプロセスで表示デバイス20′に対する表示を実行することができる。
【0130】
まず、優先順位の決定(S32)までの処理を事前に実行し、その優先順位の情報を患者識別情報に関連付けて記憶部12に記憶しておく。
【0131】
治療装置5による治療を実施するとき、ユーザは、患者識別情報を治療装置5(又は、その近傍のコンピュータ;以下同様)に入力する。治療装置5は、入力された患者識別情報を制御装置10に送信する。システム制御部11は、受信した患者識別情報に関連付けられた優先順位の情報を記憶部12から検索して治療装置5に送信する。治療装置5は、受信した優先順位の情報を表示デバイス20′に表示させる。
【0132】
[作用・効果]
以上のように動作する診療支援システム1によれば、次のような作用及び効果を奏することができる。
【0133】
この診療支援システム1は、次のように作用する。まず、fMRI装置3が、被検体の脳内の所定部位の活動状態を表す脳機能画像の画像データ12aを生成し、分子イメージング装置2が、被検体の脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報12bを取得する。そして、制御装置10が、fMRI装置3により生成された画像データ12aに基づく脳機能画像と、分子イメージング装置2により取得された物質分布情報12bに基づく画像情報とを表示デバイス20に表示させる。
【0134】
このように作用する診療支援システム1によれば、表示された脳機能画像に基づいて脳神経や身体の機能について把握することができ、物質分布情報12bに基づく画像情報に基づいて脳内に存在する物質について把握することができるとともに、これらの双方を比較することにより、脳神経や身体の機能と脳内に存在する物質との関連を把握することが可能となる。
【0135】
また、脳神経や身体の機能と脳内に存在する物質との関連を把握できることから、脳内の各部位に対応する脳神経機能や身体機能の重要度や各部位における物質の蓄積量などを勘案して、治療のタイミングや順序(治療計画)を決定することができる。それにより、脳神経疾患の治療の安全性や治療効果の向上を図ることが可能である。
【0136】
また、治療開始後や治療後における特定の体内生成物質の存在量を検査して、その存在量の減少を患者に呈示することができる。また、治療開始後や治療後に脳機能画像を取得することにより、治療によって脳の機能が回復したり機能代行が進んでいることを患者に呈示することができる。このように、この診療支援システム1によれば、治療効果に関する適切なフォローを行うことが可能である。
【0137】
以上のような効果を得るために、診療支援システム1は、次のような画像情報を脳機能画像とともに表示させるようになっている。
【0138】
まず、診療支援システム1は、〔第1の動作〕で説明したように、脳内における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布画像(図3(B)参照)と、脳機能画像(図3(A)参照)とを重畳して表示させるように作用する(図3(C)の重畳表示画像Gを参照)。
【0139】
ユーザは、この重畳表示画像Gを観察することにより、脳内のどの部位(身体の部位や機能に対応している。)にどの程度の量のAβ(特定の体内生成物質)が存在するかを知ることができるので、脳内に蓄積したAβが、身体のどの部位や機能に対して影響を与えているかを容易に把握することが可能である。また、この重畳表示画像Gを患者に見せることにより、疾患の進行状況に関するインフォームドコンセントの容易化や明確化を図ることができる。
【0140】
更に、〔第1の動作〕で説明したように、この診療支援システム1は、ユーザが重畳表示画像G上の領域を指定すると、その領域に対応する脳内の部位における特定の体内生成物質の存在量のグラフ情報(画像情報)を、重畳表示画像Gに並列表示させるように作用する。
【0141】
それにより、現在までにおける特定の体内生成物質の蓄積状況を脳内の部位ごとに(したがって、身体の部位や機能ごとに)把握できるとともに、その蓄積がこのまま進んでいったときに、脳神経や身体の機能にどのような影響が将来及ぼされるかを予測することができるので、脳神経疾患の早期診断や病態の進行状態の予測を高い精度で行うことが可能となる。また、このグラフ情報を患者に見せることにより、疾患の進行状況や進行予測に関するインフォームドコンセントの容易化や明確化を図ることができる。
【0142】
また、以上のような〔第1の動作〕を行う診療支援システム1によれば、脳内の複数の部位における特定の体内生成物質の存在量を把握できるので、脳内の部位に対応する脳神経機能ないし身体機能の重要度や、特定の体内生成物質の存在量などを勘案して治療のタイミングや順序の最適化を図ることができる。
【0143】
また、診療支援システム1は、〔第2の動作〕で説明したように、検査日時の異なる2つの物質分布情報12bの差分により得られる物質量変化画像と、脳機能画像とを重畳して表示させるように作用する。
【0144】
ユーザは、この重畳表示画像を観察することにより、所定期間(2つの物質分布情報12bが取得された間隔)において、脳内のどの部位(身体の部位や機能に対応している。)にどの程度のAβ(特定の体内生成物質)の量の変化があったかを容易に把握することができる。また、この重畳表示画像を患者に見せることにより、疾患の進行状況に関するインフォームドコンセントの容易化や明確化を図ることができる。
【0145】
更に、〔第2の動作〕で説明したように、この診療支援システム1は、脳内の特定部位における特定の体内生成物質の存在量のグラフ情報(画像情報)を、物質量変化画像と脳機能画像との重畳表示画像に並列表示させるように作用する。
【0146】
それにより、所定期間における特定の体内生成物質の蓄積状況を脳内の部位ごとに(したがって、身体の部位や機能ごとに)把握できるとともに、その蓄積がこのまま進んでいったときに、脳神経や身体の機能にどのような影響が将来及ぼされるかを予測することができるので、脳神経疾患の早期診断や病態の進行状態の予測を高い精度で行うことが可能となる。また、このグラフ情報を患者に見せることにより、疾患の進行状況や進行予測に関するインフォームドコンセントの容易化や明確化を図ることができる。
【0147】
また、診療支援システム1は、〔第3の動作〕で説明したように、脳機能画像の画像データ12aと、物質分布情報12bと、関連情報12cとに基づいて、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を特定して表示させるように作用する。
【0148】
ユーザは、この情報を参照することにより、特定の体内生成物質の存在に起因して将来発生しうる身体の機能障害について容易に把握することができる。また、この情報を患者に見せることにより、将来発生しうる機能障害に関するインフォームドコンセントの容易化や明確化を図ることができる。
【0149】
また、以上のような〔第2の動作〕を行う診療支援システム1によれば、脳内の複数の部位における特定の体内生成物質の存在量の変化を把握できるので、脳内の部位に対応する脳神経機能ないし身体機能の重要度や特定の体内生成物質の存在量などを勘案して、治療のタイミングや順序の最適化を図ることができる。
【0150】
更に、〔第3の動作〕で説明したように、この診療支援システム1は、機能障害が発生しうるものとして特定された身体の部位又は機能について、その身体の部位や機能に対応する治療内容を表示させるように作用する。
【0151】
それにより、ユーザは、その患者に対して実施すべき治療内容を容易に把握することができる。また、この情報を患者に見せることにより、治療方針に関するインフォームドコンセントの容易化や明確化を図ることができる。
【0152】
ここで、表示される治療内容は、特に、脳の機能代行を促進させるためのリハビリテーション等の治療内容を含んでいる。したがって、当該治療内容がどのようなメカニズムで疾患を改善させるかをインフォームドコンセントするときなどに、この表示情報を利用することが可能である。
【0153】
更にまた、〔第3の動作〕で説明したように、この診療支援システム1は、当該治療内容が実施されたとき及び実施されなかったときの特定の体内生成物質の存在量の予測値をそれぞれ演算し、それぞれの予測値に基づくグラフ情報を画像情報として表示させるように作用する。
【0154】
それにより、その治療内容の予測される効果を容易に把握できるとともに、その治療を行わなかったときの病態の悪化の度合いを容易に把握することができる。また、その治療を行ったときのグラフと行わなかったときのグラフとを患者に見せることにより、治療効果に関するインフォームドコンセントの容易化や明確化を図ることができる。このような効果は、〔第1の動作〕や〔第2の動作〕においても同様である。
【0155】
なお、この実施形態では、当該治療内容が実施されたときと実施されなかったときの双方の予測値を演算してグラフを表示させるようになっているが、それらのうちの一方の予測値のみを演算してグラフ表示させるように構成することも可能である。
【0156】
また、以上のような〔第3の動作〕を行う診療支援システム1によれば、機能障害が発生しうるものとして複数の身体の部位又は機能が特定された場合に、特定された各部位や機能に対応する脳内の部位におけるグラフ情報を比較検討することにより、脳神経機能ないし身体機能の重要度や特定の体内生成物質の存在量などを勘案して、治療のタイミングや順序の最適化を図ることができる。
【0157】
また、診療支援システム1は、〔第4の動作〕で説明したように、脳機能画像の画像データ12aと、物質分布情報12bと、優先順位情報12eとに基づいて、脳内の複数の部位に対して治療装置5による治療を実施するときの優先順位を決定して表示させるように作用する。
【0158】
表示された優先順位の情報は、脳内の複数の部位の治療をどの順序で行うべきかについての客観的な資料であり、脳神経疾患の治療の安全性や治療効果の向上に寄与するものである。また、この優先順位の情報は、治療の順序を最終決定するための資料として有効に利用することができる。更に、治療の順序について患者に説明するときの資料として用いることも可能である。
【0159】
[変形例]
以上に詳述した診療支援システム1の構成は、この発明を好適に実施するための一具体例に過ぎないものである。したがって、この構成に対して任意の変形を適宜に施すことが可能である。以下、この発明に包含される各種の変形例について説明する。
【0160】
上記の実施形態では、重畳表示画像(図3(C)等を参照)上の領域をユーザが指定したことに対応してグラフ情報を表示させるようになっているが(〔第1の動作〕、〔第2の動作〕)、グラフ情報の表示タイミングは、これに限定されるものではない。
【0161】
たとえば、脳内の部位(又は身体の部位や機能)を指定するソフトキー等を設け、このソフトキーが操作(たとえばクリック)されたことに対応して、指定された部位における物質量変化情報を生成し、予測値を演算し、グラフ情報の画像データを生成し、このグラフ情報を表示デバイス20(たとえば診療用画面100のグラフ情報表示領域120)に表示させるように構成することができる。
【0162】
この変形例の具体例を図9〜図11に示す。図9に示す診療用画面100には、上記実施形態と同様の画像表示領域110とともに、全脳ボタン130とROI(region of interest:関心領域)ボタン140が設けられている。全脳ボタン130は、脳全体を解析対象として指定するために操作(クリック)される。ROIボタン140は、ユーザが入力した関心領域を解析対象として指定するために操作される。
【0163】
画像表示領域110には、脳全体に相当する重畳表示画像Gが表示される。また、重畳表示画像Gの代わりに、脳機能画像G1や物質分布画像G2のみを表示させてもよい。画像表示領域110に表示される画像は、脳全体を表す3次元画像であってもよいし断層画像であってもよい。
【0164】
全脳ボタン130が操作されると、脳全体に存在する特定の体内生成物質(Aβ等)の総量が算出されて表示される。また、図10に示すように、脳全体における特定の体内生成物質の総量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報をグラフ情報表示領域120に表示させることも可能である。
【0165】
このように脳全体における総存在量やグラフ情報を表示させることにより、脳全体における特定の体内生成物質の総量を容易に把握することができる。また、脳全体における特定の体内生成物質の総量の時間的な変化を容易に把握することができる。
【0166】
ROIボタン140を用いる場合について説明する。まず、ユーザは、操作デバイス30を操作(たとえばマウスのドラッグ操作)して、重畳表示画像GにROIを入力する。次に、ユーザは、ROIボタン140をクリックする。そうすると、このROI内に存在する特定の体内生成物質の総量が算出されて表示される。また、図11に示すように、ROI内における特定の体内生成物質の総量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報をグラフ情報表示領域120に表示させることも可能である。
【0167】
このようにROI内における総存在量やグラフ情報を表示させることにより、脳内の所望の領域における特定の体内生成物質の総量を容易に把握することができる。また、脳内の所望の領域における特定の体内生成物質の総量の時間的な変化を容易に把握することができる。
【0168】
なお、脳全体を指定することは、脳全体をROIとして指定することと同義であるので、全脳ボタン130のように脳全体を指定するための手段を設ける必要はない。また、ROIの指定を行わず、常に脳全体を観察したいような場合には、ROIボタン140を設ける必要はない。
【0169】
また、グラフ情報を表示させる脳内の部位を自動的に決定することも可能である。そのために、たとえば次のような構成を適用することができる。まず、検査日時の異なる複数の脳機能画像の画像データ12aに基づいて、時間の経過に伴って活動状態が低下している脳内の部位を抽出する。より具体的には、検査日時の異なる2つの脳機能画像の画像データ12aの差分を求めて活動状態が低下した部位を抽出することもできるし、画像データ12aの各画素における輝度値(階調値)の変化を時系列に沿って追跡することにより、活動状態が低下した部位を抽出することもできる。
【0170】
次に、たとえば最新の検査日時の物質分布情報12b(画像データ)において、特定の体内生成物質が存在している脳内の部位(画素)を検出する。
【0171】
続いて、時間の経過に伴って活動状態が低下しているものとして抽出された脳内の部位(画素の座標)と、特定の体内生成物質が(たとえば所定量以上)存在しているものとして検出された脳内の部位(画素の座標)とを比較して、互いに同じ座標に位置する部位を抽出する。すなわち、活動状態が低下しており、かつ、特定の体内生成物質が存在している脳内の部位を抽出する。
【0172】
そして、抽出された脳内の部位のうち、たとえば特定の体内生成物質の存在量が最大になっている部位を、グラフ情報を表示させる部位として決定する。なお、脳内の部位ごとに、その機能に応じた重み付けをしておき、その重みと特定の体内生成物質の存在量とに基づいて、グラフ情報を表示させる部位を決定してもよい。
【0173】
上記の実施形態には、特定の体内生成物質の存在量の予測値を演算する予測値演算部14が設けられているが、これを設けない構成を採用することも可能である。この場合には、最新の検査日時までの特定の体内生成物質の存在量の変化を表すグラフ情報が表示されることになる。
【0174】
上記の実施形態では、分子イメージング装置2による検出対象をAβとする場合について説明したが、たとえば活性酸素の存在量や、アポトーシスで死んだ細胞の存在量などを分子イメージング装置2の検出対象とすることができる。活性酸素を検出する場合、たとえば国際公開番号WO99/59642などに開示された医薬を適用することができる。また、アポトーシスで死んだ細胞を検出対象とする場合には、たとえば特表2005−523945号公報、特表2004−535375号公報、特表2004−529922号公報などに開示された方法を適用することができる。
【0175】
上記の実施形態では、脳内の部位と身体の部位や機能とを対応付けているが、脳内の神経束の走行形態を検出することにより、特定の体内生成物質が存在する部位に対し、この部位と神経束で接続された他の部位を関連付けることができる。それにより、特定の体内生成物質が存在する部位とは直接には関係の無い他の部位に対応する身体の部位や機能の障害の発生を把握することができる。なお、脳内の神経束の走行形態を検出する方法としては、たとえばMRI装置によるファイバトラッキングの手法を適用することができる(たとえば、インターネットホームページ、http://www.shouwa.or.jp/tomo/ota02_05/tomo/iryo/gaku2.htm、特表2003−528676号公報を参照)。
【0176】
上記の実施形態では、fMRI装置3等の医用画像診断装置を用いて脳機能画像の画像データを実際に生成しているが、この発明はこれに限定されるものではない。たとえば、従来の研究において、脳内における標準的な機能分布は既に知られている。このような分布は脳地図などと呼ばれている。脳地図の具体例としては、ブロードマン(Brodmann)の脳地図や、ペンフィールド(Penfield)の脳地図などが知られている。
【0177】
この変形例では、医用画像診断装置により実際に取得された画像データに代えて、記憶部12や医用画像データベース4等の任意の画像データ記憶手段に脳地図の画像データを予め記憶しておく。そして、この脳地図を物質分布画像G2とともに表示させる。その表示態様は、上記実施形態と同様の重畳表示であってもよいし、他の表示態様であってもよい。
【0178】
このように、脳地図を脳機能画像として表示させることにより、当該被検体の脳機能画像を実際に取得しなくても、脳神経や身体の機能、及び脳内に存在する物質の双方を把握することができる。また、双方を比較することにより、脳神経や身体の機能と脳内に存在する物質との関連を把握できる。
【0179】
なお、この変形例では標準的な脳地図を用いているため、上記実施形態と比較して診断の精度が低下することは否めない。たとえば、脳の機能代行が生じている場合には、当該被検者の脳内の状態を正確に把握することは難しい。しかしながら、概略的にではあっても、脳神経や身体の機能と脳内に存在する物質の状態の双方を比較的手軽に把握できる点において利点を有する。特に、fMRI装置等が設置されていない医療機関などにおいても利用可能な点は大きなアドバンテージである。
【0180】
上記変形例の不利な点を考慮して、次のような変形例を適用することも可能である。この変形例では、少なくとも一度は実際に被検者の脳機能画像の画像データを取得する。そして、この脳機能画像の画像データを記憶しておき、この脳機能画像を適宜に読み出して、新たに取得される物質分布画像とともに表示させる。また、この脳機能画像の画像データに基づいて、当該被検者の脳内における機能分布画像(標準的な脳地図に類似の画像)の画像データを生成するようにしてもよい。
【0181】
この処理は、たとえば、実際に生成された脳機能画像の画像データに基づいて、脳内の部位と身体機能(或いは身体部位)との対応付けを行い、その結果を画像化することにより行う。この処理は、たとえば制御装置10のマイクロプロセッサ(機能分布生成手段)により実行される。機能分布画像は、たとえば、脳内における身体機能の分布を表示色や文字列情報を用いて表現した画像である。
【0182】
この変形例によれば、当該被検者の脳内の機能分布を把握することができるので、標準的な脳地図を用いる場合と比較して診断精度の向上が期待される。
【0183】
なお、被検者の脳に機能代行の兆候が見られた場合などには、新たな脳機能画像の画像データを実際に取得し、この新たな脳機能画像と新たな物質分布画像とを表示させることが望ましい。このように脳機能画像を適宜に更新することにより、被検者の脳内における機能分布の変化に対処することが可能になる。
【0184】
上記の実施形態のように脳機能画像と物質分布画像とを表示出力する代わりに(又は表示出力とともに)、脳機能画像と物質分布画像とを任意の態様で出力することが可能である。たとえば、脳機能画像と物質分布画像とを記録紙に印刷出力することができる。また、これら画像データを記憶媒体に記憶させたり外部装置に送信させることも可能である。
【0185】
この発明に係る診療支援装置は、たとえば、図1に示す制御装置10(制御手段)と表示デバイス20(表示装置)とを含んで構成される。この図1では、記憶手段(記憶部12)は、制御装置10(制御手段)内に設けられているが、この記憶手段は、一般に、制御手段の内部又は外部の任意の位置に設けることが可能である。
【0186】
この発明に係る診療支援プログラムは、たとえば、図1に示す診療支援プログラムPにより構成される。この診療支援プログラムPは、制御装置10と表示デバイス20とを有するコンピュータを、脳機能画像と物質分布情報に基づく画像情報(前述)とを表示デバイス20に表示させる制御手段として機能させるものである。
【0187】
上記の実施形態では、診療支援プログラムPを、制御装置10のハードディスクドライブに記憶させるようにした。この他にもコンピュータが読み取り可能な任意の記憶媒体に診療支援プログラムPを記憶させることができる。この記憶媒体としては、例えば、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを、代表例として挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の全体構成の一例を表す概略ブロック図である。
【図2】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の動作の一例を表すフローチャートである。
【図3】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態による画像の表示態様の一例を表す概略図である。
【図4】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態による画像の表示態様の一例を表す概略図である。
【図5】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態による画像の表示態様の一例を表す概略図である。
【図6】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の動作の一例を表すフローチャートである。
【図7】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の動作の一例を表すフローチャートである。
【図8】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の動作の一例を表すフローチャートである。
【図9】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の変形例による表示態様の一例を表す概略図である。
【図10】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の変形例による表示態様の一例を表す概略図である。
【図11】この発明に係る診療支援システムの好適な実施の形態の変形例による表示態様の一例を表す概略図である。
【符号の説明】
【0189】
1 診療支援システム
2 分子イメージング装置
3 fMRI装置
4 医用画像データベース
10 制御装置
11 システム制御部
12 記憶部
12a 脳機能画像(の画像データ)
12b 物質分布情報
12c 関連情報
12d 治療情報
12e 優先順位情報
P 診療支援プログラム
13 物質量変化情報生成部
14 予測値演算部
15 グラフ情報生成部
16 差分演算部
17 機能障害特定部
18 治療優先順位決定部
19 表示制御部
20 表示デバイス
30 操作デバイス
30a マウスポインタ
100 診療用画面
110 画像表示領域
120 グラフ情報表示領域
G1 脳機能画像
g1 活動領域画像
G2 物質分布画像
g2 物質画像
G 重畳表示画像
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の脳機能画像の画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記被検体の脳内からの信号を検出し、当該検出された信号に基づいて前記脳内の各部位における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報を取得する物質分布情報取得手段と、
表示手段と、
前記脳機能画像と、前記取得された前記物質分布情報に基づく画像情報とを前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする診療支援システム。
【請求項2】
被検体の脳内からの信号を検出し、当該検出された信号に基づいて前記脳内の所定部位の活動状態を表す画像データを生成する脳機能画像生成手段を更に備え、
前記画像データ記憶手段は、前記生成された画像データを前記脳機能画像の画像データとして記憶する、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項3】
被検体の脳内からの信号を検出し、当該検出された信号に基づいて前記脳内の所定部位の活動状態を表す画像データを生成する脳機能画像生成手段と、
前記生成された画像データに基づいて、前記被検体の脳内における機能分布を表す画像データを生成する機能分布生成手段と、
を更に備え、
前記画像データ記憶手段は、前記生成された機能分布を表す画像データを前記脳機能画像の画像データとして記憶する、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項4】
前記画像データ記憶手段は、脳内における標準的な機能分布を表す脳地図の画像データを前記脳機能画像の画像データとして予め記憶する、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記物質分布情報取得手段により取得された物質分布情報に基づく前記脳内における前記特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布画像と、前記脳機能画像とを、前記脳内の部位を互いに対応させて重畳して表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項6】
操作手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記物質分布情報取得手段により複数の日時にそれぞれ取得された複数の前記物質分布情報に基づいて、前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す物質量変化情報を生成する物質量変化情報生成手段を含み、
前記重畳して表示された画像上において前記操作手段により指定された部位について前記生成された物質量変化情報に基づいて、当該部位における前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を、前記前記脳機能画像と並列に表示させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の診療支援システム。
【請求項7】
前記制御手段は、
所定期間を介して前記物質分布情報取得手段により取得された2つの前記物質分布情報の差分を演算する差分演算手段を含み、
前記演算された前記2つの物質分布情報の差分に基づいて、前記所定期間における前記特定の体内生成物質の存在量の分布の変化を表す物質量変化画像と、前記脳機能画像とを、前記脳内の部位を互いに対応させて重畳して表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項8】
操作手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記物質分布情報取得手段により複数の日時にそれぞれ取得された複数の前記物質分布情報に基づいて、前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す物質量変化情報を生成する物質量変化情報生成手段を更に含み、
前記重畳して表示された画像上において前記操作手段により指定された部位について前記生成された物質量変化情報に基づいて、当該部位における前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を前記脳機能画像と並列に表示させる、
ことを特徴とする請求項7に記載の診療支援システム。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記物質分布情報取得手段により複数の日時にそれぞれ取得された複数の前記物質分布情報に基づいて、前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す物質量変化情報を生成する物質量変化情報生成手段を含み、
前記生成された物質量変化情報に基づいて、前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を前記脳機能画像と並列に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項10】
前記制御手段は、
前記物質量変化情報生成手段により生成された物質量変化情報に基づいて、前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化の予測値を演算する予測値演算手段を更に含み、
前記演算された予測値を反映させた前記グラフ情報を前記脳機能画像に並列表示させる、
ことを特徴とする請求項6、請求項8又は請求項9に記載の診療支援システム。
【請求項11】
脳内の部位と、当該部位により制御される身体の部位又は機能とを関連付ける関連情報をあらかじめ記憶する記憶手段を更に備え、
制御手段は、
前記画像データ記憶手段に記憶された脳機能画像の画像データと、前記物質分布情報取得手段により取得された物質分布情報と、前記記憶された関連情報とに基づいて、機能障害が発生しうる身体の部位又は機能を特定する機能障害特定手段を含み、
前記特定された身体の部位又は機能を前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項12】
前記記憶手段は、前記関連情報により脳内の部位に関連付けられる身体の部位又は機能のそれぞれについて、当該身体の部位又は機能の障害に対する治療内容を含む治療情報をあらかじめ記憶し、
前記制御手段は、前記治療情報に基づいて、前記機能障害特定手段により特定された身体の部位又は機能に対応する前記治療内容を前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項11に記載の診療支援システム。
【請求項13】
前記制御手段は、
前記物質分布情報取得手段により複数の日時にそれぞれ取得された複数の前記物質分布情報に基づいて、前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表す物質量変化情報を生成する物質量変化情報生成手段と、
前記生成された物質量変化情報及び前記記憶された治療情報に基づいて、前記治療情報に示す治療内容が実施されたとしたときの前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化の予測値、及び/又は、前記治療内容が実施されなかったとしたときの前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化の予測値を演算する予測値演算手段と、
を更に含み、
前記生成された物質量変化情報及び前記演算された前記予測値に基づいて、前記特定の体内生成物質の存在量の時系列に沿った変化を表すグラフ情報を、前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項12に記載の診療支援システム。
【請求項14】
前記治療情報の前記治療内容は、前記被検者の脳の機能代行を促進させるための治療内容を含む、
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の診療支援システム。
【請求項15】
脳内の部位に対し、当該部位により制御される身体の部位又は機能に基づく治療の優先順位を対応付ける優先順位情報をあらかじめ記憶する記憶手段を更に備え、
制御手段は、
前記画像データ記憶手段に記憶された脳機能画像の画像データと、前記物質分布情報取得手段により取得された物質分布情報と、前記記憶された優先順位情報とに基づいて、前記脳内の複数の部位に対して治療を実施するときの優先順位を決定する治療優先順位決定手段を含み、
前記決定された前記脳内の部位の優先順位を前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項16】
前記治療は、前記脳内の前記特定の体内生成物質に向けてエネルギー波を照射して前記特定の体内生成物質を除去又は無害化する装置によって実施される、
ことを特徴とする請求項15に記載の診療支援システム。
【請求項17】
前記治療は、前記脳内の前記特定の体内生成物質に向けて前記特定の体内生成物質を除去又は無害化する薬剤を輸送するドラッグデリバリシステムにて用いられる装置により実施される、
ことを特徴とする請求項15に記載の診療支援システム。
【請求項18】
前記脳機能画像生成手段は、前記被検体の脳内における神経活動に伴う血行状態に基づいて前記脳機能画像の画像データを生成するfMRI装置を含む、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の診療支援システム。
【請求項19】
前記物質分布情報取得手段は、前記特定の体内生成物質に集積するリガンドと造影剤とが投与された前記被検体の脳内における前記特定の体内生成物質の存在量の分布を示す画像の画像データを、前記物質分布情報として取得する分子イメージング装置を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項20】
前記特定の体内生成物質は、前記被検体の脳内に析出するベータ・アミロイド、前記被検体の脳内に存在する活性酸素、前記被検体の脳内に存在するドーパミン、及び前記被検体の脳内の細胞のうちアポトーシスによって死んだ細胞のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項21】
被検体の脳機能画像の画像データと、前記被検体の脳内の各部位における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報とを記憶する記憶手段と、
表示手段と、
前記記憶された画像データに基づく脳機能画像と前記物質分布情報に基づく画像情報とを前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする診療支援装置。
【請求項22】
被検体の脳機能画像の画像データと、前記被検体の脳内の各部位における特定の体内生成物質の存在量の分布を表す物質分布情報とを記憶する記憶手段と、
表示手段と、
を有するコンピュータを、
前記記憶された画像データに基づく脳機能画像と前記物質分布情報に基づく画像情報とを前記表示手段に表示させる制御手段として機能させる、
ことを特徴とする診療支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−206969(P2008−206969A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3229(P2008−3229)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】