説明

誘導案内方法およびシステム

【課題】具体的な名称や所在地が不明な目的地への誘導案内を可能にした誘導案内方法およびシステムを提供する。
【解決手段】ユーザが目的地に所在した時刻を当該目的地の属性情報と共に各ユーザの無線端末MNに記録する。その後、この目的地への案内を要求するユーザの要求端末MN(Req)から案内要求メッセージが送信されると、目的地への訪問履歴を有する無線端末MNが応答端末MN(Rep)として動作し、自身の現在位置P0と経過時間Δtとを案内応答メッセージに記述して返信する。要求端末MN(Req)は、多数の案内応答メッセージから現在位置P0および経過時間Δtを抽出して、重み付き分布密度を作成し、これに基づいて目的地を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末を利用した誘導案内方法およびシステムに係り、特に、目的地への誘導案内を要求するユーザの無線端末が、当該目的地への訪問履歴を有する複数の無線端末から現在位置およびその鮮度情報を取得して目的地への案内情報を生成する誘導案内方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPSおよび地図アプリケーションの実装された携帯電話やPDAにおいて、目的地の名称や位置情報を入力すると現在位置および目的地を推定し、端末ディスプレイに現在位置から目的地までの方向や順路を表示して端末ユーザを目的地まで誘導する誘導案内システムが、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2002−286496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の誘導案内システムでは、端末ユーザが所望の目的地までの誘導案内を要求する場合、データベースに未登録の目的地や住所が不明の目的地に関しては案内を受けられなかった。また、例えば観光地を訪れた際も、正確な名称が未知の観光スポットや、具体的な名称がない口コミ情報で知られた観光スポットや写真の撮影スポットに関しては、正確な誘導案内を受けることができなかった。
【0004】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、具体的な名称や所在地が不明な目的地への誘導案内を可能にした誘導案内方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、目的地への誘導案内を要求する無線端末が、当該目的地への訪問履歴を有する複数の無線端末から現在位置を取得して目的地への案内情報を生成する誘導案内システムにおいて、以下のような手段を講じた点に特徴がある。
【0006】
(1)各無線端末に、誘導案内を要求する要求端末機能部および誘導案内に応答する応答端末機能部の少なくとも一方を設けた。
【0007】
前記応答端末機能部には、自端末の現在位置を検知する手段と、所定のイベントを検知する手段と、検知されたイベントの属性情報およびイベント時刻を記録する手段と、検索条件の記述された案内要求を受信する手段と、検索条件を満足する属性情報のイベント時刻に基づいて現在位置の鮮度を代表する鮮度情報を算出する手段と、現在位置およびその鮮度情報の記述された案内応答を返信する手段とを設ける。
【0008】
前記要求端末機能部には、検索条件の記述された案内要求を送信する手段と、検索条件を満足する無線端末の現在位置およびその鮮度情報が記述された案内応答を受信する手段と、受信した各無線端末の現在位置をその鮮度情報に基づいて重み付けする手段と、重み付けされた各無線端末の現在位置に基づいて検索条件を満足する無線端末の分布密度を求める手段と、分布密度に基づいて案内情報を生成する手段とを設ける。。
【0009】
(2)前記応答端末機能部にさらに、検知されたイベントごとに、そのイベント時刻から所定の追跡周期ごとに現在位置および経過時間を移動履歴として検知する履歴生成手段と、移動履歴を記憶する手段とを設け、前記鮮度情報を算出する手段さらに、検索条件を満足する属性情報の移動履歴に基づいて当時の現在位置の鮮度情報を算出し、前記案内応答を返信する手段がさらに、移動履歴として記録された当時の現在位置およびその鮮度情報を案内応答に記述するようにした。さらに、前記要求端末機能部において、前記重み付けする手段がさらに、前記当時の現在位置をその鮮度情報に基づいて重み付けするようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1)ある目的地までの誘導案内を要求するユーザが、当該目的地の属性情報が記述された検索要求を送信すると、前記目的地で電子決済、カメラ撮影、入出金、改札通過等のイベントを実施したユーザから現在位置およびその鮮度情報が返信され、当該ユーザ群の分布密度を認識できるので、分布密度の高い位置を目的地と推定する誘導案内が可能になる。
(2)誘導案内を要求するユーザからの案内要求に応答して、目的地でイベントを実施したユーザの移動履歴およびその鮮度情報も併せて返信されるようにすれば、一人のユーザから複数の現在位置およびその鮮度情報を取得できるので、ユーザが少ない場合でも正確な誘導案内が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の誘導案内システムが適用される無線ネットワークの構成を示した図であり、携帯電話やPDAなどの複数の無線端末MNがアドホックネットワークを構成し、誘導案内のための情報をマルチホップ通信により相互に交換する。本実施形態では、一つの無線端末MNが目的地までの誘導案内を要求する要求端末MN(req)として動作するとき、他の無線端末MNは、この要求に応答して誘導案内のための情報を提供する応答端末MN(rep)として動作する。
【0012】
図2は、本発明の基本的な概念を説明するための図である。ある目的地を訪れたユーザのその後の移動履歴を観察すると、目的地と各ユーザとの距離は時間経過と共に長くなる傾向にある。したがって、丸印(○)で示した各ユーザと目的地との相対的な位置関係は、典型的には図2に一例を示した通りとなり、目的地に近いほどユーザの分布密度が高くなる。したがって、目的地への訪問履歴を有するユーザの分布密度を計測できれば、分布密度の高い位置またはその近傍に目的地が存在すると推定できる。
【0013】
一方、目的地を訪れるユーザ数が少なかったり、目的地周辺の移動経路が制限されていたり、あるいはユーザの移動速度がまちまちであったりすると、ユーザの分布密度のみで目的地を推定することが難しくなる場合がある。しかしながら、このような場合であっても、各ユーザが目的地を出発してからの経過時間Δtを測定し、この経過時間Δtに基づいて各ユーザに重み付けを行えば、分布密度の高い位置またはその近傍に目的地が存在すると同様に推定できる。
【0014】
図3は、ユーザの重み付き分布密度に基づいて目的地を推定する方法を示した図であり、同図(a)のように、ユーザの現在位置が均等に分散していると、分布密度のみでは目的地を推定できない。しかしながら、各ユーザに前記経過時間Δtが短いほど大きな重み付けを行い、同図(b)に示したように、例えば重み値が大きいユーザほど丸印の濃度を高くしてみると、目的地の近傍がより高い分布密度を示すことが判る。
【0015】
そこで、本発明では各ユーザが目的地に所在した時刻を当該目的地の属性情報と共に各ユーザの無線端末MNに記録する。その後、この目的地への案内を要求するユーザの要求端末MN(Req)から案内要求メッセージが送信されると、目的地への訪問履歴を有する無線端末MNが応答端末MN(Rep)として動作し、自身の現在位置P0と共に、前記経過時間Δtから算出される重み付けの指標(後述する鮮度情報F)を案内応答メッセージに記述して返信する。要求端末MN(Req)は、多数の案内応答メッセージから現在位置P0および重み付けの指標を抽出して、前記同図(b)に一例を示したような重み付き分布密度を作成し、これに基づいて目的地を推定する。
【0016】
例えば、目的地がファーストフード店であれば、各端末ユーザが自身の無線端末MNに実装された電子決済システムを利用して購入物品を決済すると、各無線端末MNのイベントテーブルに、当該ファーストフード店の属性情報および決済日時が登録される。前記属性情報には、ファーストフード店の名称や住所などが含まれる。
【0017】
その後、このファーストフード店への誘導案内を希望するユーザが、自身の無線端末MN(Req)から前記ファーストフード店の属性情報の記述された案内要求メッセージを送信すると、自身のイベントテーブルに当該属性情報の登録されている応答端末MN(Rep)が、自身の現在位置P0およびその鮮度情報Fの記述された案内応答を返信する。
【0018】
前記鮮度情報Fとは、イベントの発生時刻Tevt(ここでは、ファーストフード店での電子決済日時)から現在時刻t0までの経過時間Δtに基づいて現在位置P0の新鮮さを代表する情報であり、図4に一例を示したように、経過時間Δtが長くなるほど鮮度が低下するように、次式(1)の鮮度関数に基づいて算出できる。
【0019】
F=1/Δt … (1)
【0020】
要求端末MN(Req)は、受信した案内応答メッセージから各応答端末MN(Rep)の現在位置P0およびその鮮度情報Fを抽出し、現在位置P0をその鮮度情報Fで重み付けする。そして、重み付けされた各応答端末MN(Rep)の現在位置に基づいて分布密度を算出し、分布密度の高い位置を目的地と推定して案内情報を生成し、出力する。
【0021】
図5は、各無線端末MNの構成を示したブロック図であり、無線端末MNとしての動作を制御する無線端末機能部1に加えて、誘導案内の要求端末MN(Req)として動作するための要求端末機能部3、および誘導案内の応答端末MN(Rep)として動作するための応答端末機能部2を備えている。前記無線端末機能部1は、端末ユーザの入力操作を受け付ける入力操作部、ディスプレイ、マイクおよびスピーカ等のマン/マシンインターフェースを備えている。
[第1実施形態]
【0022】
次いで、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図6は、前記応答端末機能部2の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。
【0023】
イベント検知部201は、電子マネーによる決済や内蔵デジタルカメラ(図示せず)による撮影などのイベントを検知して、その属性情報をイベントの発生時刻(イベント時刻Tevt)と共にイベントテーブル202へ記録する。案内要求受信部203は、要求端末MN(Req)から送信された案内要求メッセージを受信する。検索部204は、案内要求メッセージから検索条件を抽出し、当該検索条件を満足する属性情報を前記イベントテーブル202から検索する。
【0024】
鮮度情報生成部205は、検索条件を満足する属性情報のイベント時刻Tevtから現在時刻t0までの経過時間Δtに基づいて、当該経過時間Δtが短いほど新鮮度の高くなる鮮度情報Fを生成する。測位部206は、例えばGPS信号を受信して無線端末MNの現在位置P0を検知する。案内応答生成部207は、現在位置P0およびその鮮度情報Fが記述された案内応答メッセージを生成する。案内応答返信部208は、前記案内応答メッセージを要求端末MN(Req)へ返信する。案内要求中継部209は、受信した案内要求メッセージを他の無線端末MNへ中継する。
【0025】
図7は、前記要求端末機能部3の構成を示した機能ブロック図であり、ここでも、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。
【0026】
属性情報入力部301からは、目的地を特定する検索条件が端末ユーザにより入力される。案内要求生成部302は、前記検索条件の記述された案内要求メッセージを生成する。案内要求送信部303は、前記案内要求メッセージをブロードキャストで送信する。案内応答受信部304は、前記案内要求に対して各応答端末MN(Rep)から返信される案内応答メッセージを受信して、現在位置P0およびその鮮度情報Fを抽出する。
【0027】
重み付け部305は、抽出された位置情報P0に対して、その鮮度情報Fに基づいて重み付けを行う。分布密度算出部306は、重み付けされた複数の位置情報P0に基づいて、検索条件を満足する応答端末MN(Rep)の分布密度を算出する。案内情報出力部307は、前記分布密度に基づいて目的地を推定し、端末ユーザを目的地へ誘導する案内情報を出力する。
【0028】
次いで、図8,9のフローチャートおよび図10のシーケンスフローを参照して本発明の第1実施形態の動作を詳細に説明する。図8は、応答端末MN(Rep)の動作を示したフローチャートであり、図9は、要求端末MN(Req)の動作を示したフローチャートである。ここでは、本発明をファーストフード店Mへの誘導案内を例にして説明する。
【0029】
応答端末MN(Rep)では、端末ユーザがファーストフード店Mで電子決済により物品を購入すると、これが図8のステップS1で前記イベント検知部201により検知されてステップS2へ進む。ステップS2では、ファーストフード店Mの属性情報として、例えば業種「飲食店」、所在地「東京都新宿区…」、名称「M」および備考等がイベント時刻(現在時刻)Tevtと共にイベントテーブル202に記憶される。なお、検知されるイベントは電子決済に限定されず、例えば端末ユーザが応答端末MN(Rep)に内蔵されたデジタルカメラで撮影を行ったような場合も、これがステップS1でイベント検知部201により検知されてステップS2へ進み、属性情報として撮影画像が静止画および動画のいずれであるか等の情報がイベント時刻(撮影時刻)Tevtと共にイベントテーブル202に記憶される。
【0030】
その後、案内要求端末MN(Req)のユーザが案内要求の操作を行うと、これが図9のステップS31で検知されてステップS32へ進み、端末ユーザにより入力される目的地の属性情報が前記属性情報入力部301で受け付けられる。ここでは、目的地の属性情報として「ファーストフード店M」が入力される。ステップS33では、属性情報としての「ファーストフードM」およびTTL(Time To Live)としての制限ホップ数の記述された案内要求メッセージが前記案内要求生成部302で生成され、ステップS34で前記案内要求送信部303からブロードキャストで送信される。
【0031】
図8へ戻り、応答端末MN(Rep)は、ステップS3で前記案内要求メッセージが案内要求受信部203により受信されるとステップS4へ進む。ステップS4では、当該メッセージに記述されているTTLが参照され、ゼロ以外であればステップS5へ進み、当該TTLが更新(例えば、TTL=TTL−1)される。ステップS6では、TTLの更新された案内要求メッセージが案内要求中継部209によりブロードキャストで送信(中継)される。
【0032】
ステップS7では、前記受信した案内要求メッセージから目的地の属性情報が抽出される。本実施形態では、目的地の名称「ファーストフード店M」が抽出される。ステップS8では、「ファーストフード店M」が前記イベントテーブル202に属性情報として登録されているか否かが前記検索部204により判定され、ここでは既登録と判定されるのでステップS9へ進む。ステップS9では、前記イベントテーブル202から対応するイベント時刻Tevtが抽出される。
【0033】
ステップS10では、鮮度情報生成部205において、イベント時刻Tevtから現在時刻t0までの経過時間Δtが算出され、これが上式(1)の鮮度関数に適応されて鮮度情報Fが算出される。ステップS11では、自端末の現在位置P0が測位部206により検知される。ステップS12では、属性情報「ファーストフード店M」、現在位置P0およびその鮮度情報Fの記述された案内応答メッセージが案内応答生成部207により生成される。ステップS13では、前記案内応答メッセージが案内応答返信部208により要求端末MN(Req)を宛先として返信される。この案内応答メッセージも、案内要求端末MN(Req)へ直接または他の無線端末MNを中継して到着する。
【0034】
図9へ進み、案内要求端末MN(Req)は、前記案内応答メッセージがステップS35で案内応答受信部304により受信されるとステップS36へ進む。ステップS36では、各応答端末MN(Rep)の現在位置P0およびその鮮度情報Fが抽出される。この案内応答メッセージの受信、ならびに現在位置P0およびその鮮度情報Fの抽出は、ステップS37で所定の受信期間が完了したと判定されるまで継続される。
【0035】
ステップS38では、重み付け部305において各応答端末MN(Rep)の現在位置P0に、その鮮度情報Fに基づいて重み付けが行われる。ステップS39では、各応答端末MN(Rep)の重み付けされた現在位置P0に基づいて分布密度が生成される。ステップS40では、前記分布密度に基づいて、要求端末MN(Req)のユーザを目的地まで案内する案内情報が出力される。
【0036】
図11は、案内情報の一例を示した図であり、要求端末MN(Req)の現在位置と分布密度から推定された目的地との相対的な位置関係が方位記号と共に表示されている。また、地図情報と組み合わせれば、図12に一例を示したように、地図上に要求端末MN(Req)の現在位置および目的地を表示することもできる。
【0037】
なお、本実施形態ではファーストフード店での電子決済をイベントとして検知し、当該ファーストフード店への誘導案内を行うものとして説明したが、無線端末MNに内蔵されたデジタルカメラによる撮影をイベントとして検知し、属性情報としてデジタルカメラによる撮影を連想させる「デジカメ」、「画像」、「撮影」等を登録しておけば、撮影スポットを探索しているユーザが要求端末MN(Req)において「デジカメ」や「画像」等を検索条件として指定したときに、多数の無線端末MNにおいて撮影スポットとなった絶景場所、名所などに要求端末MN(Req)のユーザを案内できるようになる。さらには、銀行における入出金や駅改札の通過等をイベントとして検知するようにしても良い。
【0038】
また、要求端末MN(Req)のユーザが検索条件として、上記のような店舗の固有名称ではなく、例えば「飲食店」や「食品店」といったより抽象的な条件を設定すれば、複数の位置が目的地となって、その地点の分布密度がそれぞれ高くなる。
[第2実施形態]
【0039】
次いで、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。上記の第1実施形態では、応答端末MN(Rep)が案内要求メッセージを受信した時点での現在位置P0およびその鮮度情報Fに基づいて目的地が推定されるものとして説明した。しかしながら、応答端末MN(Rep)が極端に少なく、図13(a)に示したような分布密度しか得られない場合、破線枠で示した実際の目的地に対して、実線枠で示した誤った位置が目的地と判定されてしまう場合がある。そこで、本発明の第2実施形態では、各応答端末MN(Rep)に移動履歴を記憶させ、移動履歴およびその鮮度情報Fも考慮して目的地を推定するようにしている。
【0040】
図13(b)は、第2実施形態の作用効果を説明するための図である。本実施形態では、応答端末MN(Rep)においてイベント時刻Tevtから所定の追跡周期Δtcで現在位置P0が測位され、その時刻と共に記憶される。その後、要求端末MN(Req)からの案内要求が受信されると、その時点での現在位置P0およびその鮮度情報Fのみならず、各履歴情報についても当時の現在位置P0およびその鮮度情報Fが算出され、検索応答メッセージに記述されて返信される。
【0041】
要求端末MN(Req)では、一つの応答端末MN(Rep)から現在位置P0およびその鮮度情報Fのペア[P0,F]を複数取得できる。そして、各履歴情報に基づいて算出される鮮度情報Fは、イベント時刻Tevtに近いほど新鮮となるので、各現在位置P0を鮮度情報Fで重み付けすれば、図13(b)に示したように、目的地の近傍ほど分布密度を高くできる。
【0042】
図14は、本発明の第2実施形態に係る無線端末MNの応答端末機能部2の主要部の構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表しているので、その説明は省略する。
【0043】
履歴生成部210は、イベントテーブル202に記憶されているイベント情報を参照し、イベント時刻Tevtからの経過時間が所定の追跡周期Δtcを経過するごとに現在位置P0を測位部206から取得し、これを属性情報およびイベント時刻Tevtからの経過時間Δtと対応付けて履歴テーブル211に記憶する。図15は、前記履歴テーブル211の一例を模式的に示した図である。
【0044】
図16は、本実施形態における応答端末MN(Rep)の動作を示したフローチャートであり、前記と同一の符号を付したステップでは同一または同等の処理が実行される。
【0045】
ステップS21では、イベントテーブル202に記憶されているイベント情報が前記履歴生成部210により参照され、イベント時刻Tevtからの経過時間Δtが所定の追跡周期Δtcであるエントリの有無が判定される。該当するエントリが存在すればステップS22へ進み、測位部206から現在位置P0が取得される。ステップS23では、当該エントリの属性情報、現在位置P0およびイベント時刻Tevtからの経過時間Δtが対応付けられて履歴テーブル211に記憶される。
【0046】
その後、要求端末MN(req)から送信された案内要求メッセージがステップS3で案内要求受信部203において受信されるとステップS4へ進む。ステップS4では、当該メッセージに記述されているTTLが参照され、ゼロ以外であればステップS5へ進み、当該TTLが更新される。ステップS6では、TTLの更新された案内要求メッセージが案内要求中継部209によりブロードキャストで送信(中継)される。
【0047】
ステップS7では、前記受信した案内要求メッセージから目的地の属性情報が抽出される。本実施形態では、目的地の名称「ファーストフード店M」が抽出される。ステップS8では、「ファーストフード店M」が前記イベントテーブル202に属性情報として登録されているか否かが前記検索部204により判定され、ここでは既登録と判定されるのでステップS9へ進む。ステップS9では、前記イベントテーブル202から対応するイベント時刻Tevtが抽出される。ステップS10では、鮮度情報生成部205において、イベント時刻Tevtから現在時刻t0までの経過時間Δtが算出され、これが上式(1)の鮮度関数に適応されて鮮度情報Fが算出される。ステップS11では、現在位置P0が測位部206により測位され、現在位置P0およびその鮮度情報Fのペア[P0,F]が生成される。
【0048】
ステップS12では、前記属性情報と対応付けられている履歴情報が履歴テーブル211か
ら抽出される。ステップS13では、各履歴情報の経過時間Δtが鮮度関数に適応されて鮮度情報Fが算出され、当時の現在位置P0およびその鮮度情報Fのペア[P0,F]が履歴情報ごとに生成される。ステップS14では、前記各ペア[P0,F]の記述された案内応答メッセージが案内応答生成部207により生成される。ステップS15では、前記案内応答メッセージが案内応答返信部208により要求端末MN(Req)へ返信される。
【0049】
この案内応答メッセージを受信した要求端末MN(req)では、全てのペア[P0,F]が抽出され、鮮度情報Fに基づいて重み付けされた現在位置P0の分布密度が算出される。さらに、この分布密度に基づいて目的地が推定され、要求端末MN(Req)のユーザを目的地まで案内する案内情報が出力される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の誘導案内システムが適用されるアドホックネットワークの構成を示した図である。
【図2】本発明の基本的な概念を説明するための図である。
【図3】ユーザの重み付き分布密度に基づいて目的地を推定する方法を示した図である。
【図4】鮮度情報Fと経過時間Δtとの関係を示した図である。
【図5】無線端末MNの構成を示したブロック図である。
【図6】応答端末機能部の構成を示した機能ブロック図である。
【図7】要求端末機能部の構成を示した機能ブロック図である。
【図8】応答端末MN(Rep)の動作を示したフローチャートである。
【図9】要求端末MN(Req)の動作を示したフローチャートである。
【図10】第1実施形態の動作を示したシーケンスフローである。
【図11】案内情報の一例を示した図である。
【図12】地図情報と組み合わせた案内情報の一例を示した図である。
【図13】第2実施形態の作用効果を第1実施形態と比較して説明するための図である。
【図14】第2実施形態に係る無線端末MNの応答端末機能部の構成を示したブロック図である。
【図15】履歴テーブルの一例を模式的に示した図である。
【図16】第2実施形態における応答端末MN(Rep)の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1…無線端末機能部,2…応答端末機能部,3…要求端末機能部,201…イベント検知部,202…イベントテーブル,203…案内要求受信部,204…検索部,205…鮮度情報生成部,206…測位部,207…案内応答生成部,208…案内応答返信部,209…案内要求中継部,210…履歴生成部,211…履歴テーブル,301…属性情報入力部,302…案内要求生成部,303…案内要求送信部,304…案内応答受信部,305…重み付け部,306…分布密度算出部,307…案内情報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地への誘導案内を要求する無線端末が、当該目的地への訪問履歴を有する複数の無線端末から現在位置を取得して目的地への案内情報を生成する誘導案内システムにおいて、
各無線端末が、誘導案内を要求する要求端末機能部および誘導案内に応答する応答端末機能部の少なくとも一方を具備し、
前記応答端末機能部が、
自端末の現在位置を検知する手段と、
所定のイベントを検知する手段と、
検知されたイベントの属性情報およびイベント時刻を記録する手段と、
検索条件の記述された案内要求を受信する手段と、
検索条件を満足する属性情報のイベント時刻に基づいて現在位置の鮮度を代表する鮮度情報を算出する手段と、
前記現在位置およびその鮮度情報の記述された案内応答を返信する手段とを具備し、
前記要求端末機能部が、
検索条件の記述された案内要求を送信する手段と、
検索条件を満足する無線端末の現在位置およびその鮮度情報が記述された案内応答を受信する手段と、
受信した各無線端末の現在位置をその鮮度情報に基づいて重み付けする手段と、
重み付けされた各無線端末の現在位置に基づいて、検索条件を満足する無線端末の分布密度を求める手段と、
前記分布密度に基づいて案内情報を生成する手段とを具備したことを特徴とする誘導案内システム。
【請求項2】
前記応答端末機能部がさらに、
検知されたイベントごとに、そのイベント時刻から所定の追跡周期ごとに現在位置および経過時間を移動履歴として検知する履歴生成手段と、
前記移動履歴を記憶する手段とを具備し、
前記鮮度情報を算出する手段がさらに、検索条件を満足する属性情報に関する移動履歴に基づいて当時の現在位置の鮮度情報を算出し、
前記案内応答を返信する手段がさらに、移動履歴として記録された当時の現在位置およびその鮮度情報を案内応答に記述することを特徴とする請求項1に記載の誘導案内システム。
【請求項3】
前記要求端末機能部において、前記重み付けする手段がさらに、前記当時の現在位置をその鮮度情報に基づいて重み付けすることを特徴とする請求項2に記載の誘導案内システム。
【請求項4】
前記鮮度情報は、イベント時刻からの経過時間が短いほど現在位置の鮮度を高く見積もる情報であり、
前記重み付けする手段は、鮮度のより高い現在位置をより高く重み付けすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の誘導案内システム。
【請求項5】
前記イベントを検知する手段は、無線端末を利用した電子決済を検知することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の誘導案内システム。
【請求項6】
前記イベントを検知する手段は、内蔵カメラによる撮影、入出金、改札通過の少なくとも一つを検知することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の誘導案内システム。
【請求項7】
目的地への誘導案内を要求する無線端末が、当該目的地への訪問履歴を有する複数の無線端末から現在位置を取得して目的地への案内情報を生成する誘導案内方法において、
所定のイベントを検知する手順と、
検知されたイベントの属性情報およびイベント時刻を記録する手順とを含み、
誘導案内を要求する無線端末がさらに、
検索条件の記述された案内要求を送信する手順を含み、
誘導案内に応答する無線端末がさらに、
検索条件の記述された案内要求を受信する手順と、
自端末の現在位置を検知する手順とを含み、
検索条件を満足する属性情報のイベント時刻に基づいて現在位置の鮮度を代表する鮮度情報を算出する手順と、
前記現在位置およびその鮮度情報の記述された案内応答を返信する手順とを含み、
誘導案内を要求する無線端末がさらに、
検索条件を満足する無線端末の現在位置およびその鮮度情報が記述された案内応答を受信する手順と、
受信した各無線端末の現在位置をその鮮度情報に基づいて重み付けする手順と、
重み付けされた各無線端末の現在位置に基づいて検索条件を満足する無線端末の分布密度を求める手順と、
前記分布密度に基づいて案内情報を生成する手順とを含むことを特徴とする誘導案内方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−156552(P2010−156552A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333469(P2008−333469)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「ユビキタスサービスプラットフォーム技術に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】