説明

誘電体磁器組成物及び磁器コンデンサ並びにこれらの製造方法

【課題】 還元雰囲気中1200℃以下で焼成でき、比誘電率が2,400以上で、X5R特性を満たし、加速寿命も長い誘電体磁器組成物及び磁器コンデンサを提供する。
【解決手段】 本発明に係る誘電体磁器組成物は、主成分としてBa、Ca、及びTiの酸化物を、副成分としてCr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、前記主成分は、組成式(Ba1−xCa)TiO(x:0.005〜0.10、(Ba1−xCa)/Ti比:1.003〜1.030)で表される化合物であり、この化合物100mol部に対し、Cr酸化物をCr換算にて0.03〜1.5mol部、Mg酸化物をMg換算にて0.1〜3.0mol部、Mn酸化物をMn換算にて0.01〜1.0mol部、の割合で含み、さらに前記化合物100重量部に対する焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁器コンデンサの誘電体材料として好適な耐還元性を備えるとともに、低温焼成でも高い比誘電率をもつことが可能な誘電体磁器組成物とその製造方法、及びこの誘電体磁器組成物を誘電体層とした磁器コンデンサとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の小型化、高密度化にともない、磁器コンデンサの小型大容量化が強く求められている。このような磁器コンデンサの一例としては、図2にその模式的な断面図を示すような、積層磁器コンデンサが挙げられる。図2に示すように、この磁器コンデンサAは、誘電体磁器組成物からなる誘電体層11と内部電極12とを交互に重ねてなる積層体、及び、前記内部電極12の特定のものに電気的に接続され、前記積層体の外側面に配される外部電極13、14により構成される。このような磁器コンデンサは現在,製造コストを抑えるため内部電極を構成する材料として、高価な貴金属であるパラジウム(Pd)やパラジウム合金などに代えて、比抵抗が小さく高融点で低価格という点から、Niなどの卑金属が採用される方向にある。
【0003】
一方、磁器コンデンサの小型大容量化の要求に応えるには、誘電体層の薄層化と多層化する必要がある。しかしながら, 誘電体層を薄層化すると誘電体材料により多くの高電圧が印加され、従来の誘電体材料を用いると誘電率の低下や、静電容量の温度依存性の増加、そのた安定性の悪化をもたらす虞がある。例えば、誘電体層の厚さを5μm以下まで薄層化すると、内部電極間に存在するセラミック粒子の数が10個以下に減少するため、安定した特性が得られにくくなる傾向にある。
【0004】
従来、磁器コンデンサの誘電体層を構成する誘電体磁器組成物としては、チタン酸バリウム(barium titanate) が広く利用されてきた(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、チタン酸バリウムを還元雰囲気において焼成すると焼成中に半導体化して絶縁抵抗を失ってしまい、耐還元性質を有するシェル(shell) 成分をキャパシター内の全粒子に均一に形成できねば製品の絶縁抵抗が低下し寿命が激減する傾向があった。また、たとえ絶縁抵抗が大きいシェルを形成したとしても、厚さが極めて薄い場合には、粒子内のチタン酸バリウムが半導体化し、製品の絶縁抵抗を低下させ、寿命を激減させる虞があった。このような理由から、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体磁器組成物を用いた磁器コンデンサを製造する場合には、組成物の均一化を図るために多大な処理時間や製造コストを要していた。
【0005】
これを解決するため、従来のチタン酸バリウムに比べて耐還元性に優れるチタン酸バリウムカルシウム(barium calcium titanate) を含む誘電体磁器組成物からなる誘電体層を用い、この誘電体層間にNiからなる内部電極を備えた磁器コンデンサが開発された(特許文献2参照)。
チタン酸バリウムカルシウムは、Baの位置を置換するCaにより生成される格子欠陥が耐還元性をもたらすので、還元雰囲気において焼成中にシェルが形成されず、誘電体層の薄膜化を図った場合でも高い絶縁抵抗を保てるという長所を備えている。特許文献2には、このようなチタン酸バリウムカルシウムを含む出発原料(主成分)に、酸化物ガラスを副成分として添加した誘電体磁器組成物を用いることにより、誘電率の低下が少なく、静電容量の温度特性がEIA規格に定められたX7R特性を満たす、Niを内部電極とする積層磁器コンデンサが記載されている。また、特許文献2は、チタン酸バリウムカルシウムにRe成分、即ち稀土類成分(但し、ReはY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択される少なくとも一種以上の元素)を添加することにより、焼成時にRe成分が拡散し、粒子境界近傍及び粒子境界にRe成分が存在するコア-シェル(core-shell)構造が得られることも開示している。
【0006】
しかしながら, 特許文献2の積層磁器コンデンサはその誘電体層の副成分としてガラス成分を用いることにより絶縁抵抗は高いが、誘電率の低いシェルを形成する組成物がコアに拡散する速度の制御が容易でなく、このような誘電体組成物を用いた積層磁器コンデンサの誘電特性がむしろ低くなる虞があった。
これに対し、耐還元性の優れたチタン酸バリウムカルシウムを用いてなる誘電体磁器組成物において、拡散速度制御をより有利にすることにより、X7R特性を満足しながら誘電特性も優れる誘電体磁器組成物が開発された(特許文献3参照)。
特許文献12には、チタン酸バリウムカルシウムBaCaTiO(0.001≦x≦0.02)100モルあたり、MgO:0.5〜4モル、MnO:0.01〜0.5モル、BaO:0.1〜2モル、CaO:0.1〜2モル、及びSiO:1〜4モルを含み、これにY、Dy、Ho、及びErから成るグループの中から選んだ少なくとも1種以上の成分を0.1〜3モル含む誘電体セラミック組成物(以下、誘電体磁器組成物とも呼ぶ)とともに、この誘電体セラミック組成物を含んだ誘電体層、前記誘電体層の間に形成し誘電体層と交代で積層した内部電極層、及び前記内部誘電体層に電気的に接続し誘電体層の両端に形成する外部電極を含む積層セラミックキャパシター(以下、磁器コンデンサとも呼ぶ)が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3に係る誘電体磁器組成物にあっては、誘電率が2000以上という優れた誘電特性をもつためには、1250〜1350の温度とした還元雰囲気下で焼成する必要があった。誘電体磁器組成物がチタン酸バリウムカルシウムを主体とするものであっても、還元雰囲気での焼成により、主成分であるTiの価数が4価から3価に還元され半導体化するとともに、酸素空位が増加することによる平均寿命(以下、加速寿命または絶縁劣化時間とも呼ぶ)の低下をもたらすことに変わりはない。ゆえに、より低い1200℃以下の焼成温度であっても、比誘電率を2,400以上とすることの可能な、チタン酸バリウムカルシウムを主体とする誘電体磁器組成物の開発が期待されていた。
【特許文献1】米国特許第5,335,139号公報
【特許文献2】大韓民国特許公開2000−17250号公報
【特許文献3】日本国特開2002−29836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、耐還元性に優れたチタン酸バリウムカルシウムを含む出発原料(主成分)を用いながら、還元雰囲気中1200℃以下の低温で焼成可能であり、比誘電率が2,400以上で、EIA規格で規定するX5R特性を満たす容量変化率を備え、さらに加速寿命も長い、誘電体磁器組成物及び磁器コンデンサ並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、
請求項1に係る発明は、主成分として、Ba、Ca、及びTiの酸化物を、副成分として、Cr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、前記主成分は、組成式(Ba1−xCa)TiO(ただし、xは0.005〜0.10、(Ba1−xCa)/Ti比は1.003〜1.030)で表される化合物であり、この化合物100mol部に対して、前記副成分をなすCrの酸化物をCrに換算して0.03〜1.5mol部、Mgの酸化物をMgに換算して0.1〜3.0mol部、Mnの酸化物をMnに換算して0.01〜1.0mol部、の割合でそれぞれ含み、さらに前記化合物100重量部に対して、焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させたことを特徴とする誘電体磁器組成物である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記焼結助剤が、Siの酸化物またはSiを主成分とする酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物である。
【0011】
請求項3に係る発明は、さらに、前記化合物100mol部に対して、前記副成分として、Re(ReはY、Dy、Yb及びHoからなる群から選択される少なくとも1種以上の希土類元素)の酸化物をReに換算して0.3〜2.0mol部の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物である。
【0012】
請求項4に係る発明は、主成分の原料として、主成分の原料として、Ba、Ca、及びTiの化合物を混合して仮焼結体を形成し、該仮焼結体に、副成分の原料として、Cr、Mg、及びMnのの化合物を添加し、次いで、これを、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成することを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法である。
【0013】
請求項5に係る発明は、誘電体層と内部電極とを交互に重ねてなる積層体、及び、前記内部電極の特定のものに電気的に接続され、前記積層体の外表面に配される外部電極を備え、前記誘電体層は、請求項1乃至3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物からなることを特徴とする磁器コンデンサである。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記内部電極は、Ni又はNiを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項5に記載の磁器コンデンサである。
【0015】
請求項7に係る発明は、誘電体層をなすグリーンシートを、請求項1乃至3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物を用いて形成する工程と、前記グリーンシートの片面に内部電極をなす導電層を形成する工程と、前記導電層を介するように前記グリーンシートを複数枚、その厚み方向に重ね合わせ、加圧して積層体を形成する工程と、前記積層体を、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成する工程と、前記積層体の外表面に、前記内部電極の特定のものに電気的に接続される外部電極を形成する工程と、を少なくとも具備したことを特徴とする磁器コンデンサの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐還元性に優れたチタン酸バリウムカルシウムを出発原料(主成分)として用いながら、還元雰囲気中1200℃以下の低温で焼成することが可能であり、比誘電率が2,400以上で、EIA規格で規定するX5R特性を満たす容量変化率を備え、さらに加速寿命も長い、誘電体磁器組成物、及び該誘電体磁器組成物を成形してなる磁器コンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[誘電体磁器組成物]
本発明の誘電体磁器組成物は、主成分として、Ba、Ca、及びTiの酸化物を、副成分として、Cr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、前記主成分は、組成式(Ba1−xCa)TiO(ただし、xは0.005〜0.10、(Ba1−xCa)/Ti比は1.003〜1.030) で表される化合物であり、この化合物100mol部に対して、前記副成分をなすCrの酸化物をCrに換算して0.03〜1.5mol部、Mgの酸化物をMgに換算して0.1〜3.0mol部、Mnの酸化物をMnに換算して0.01〜1.0mol部、の割合でそれぞれ含み、さらに前記化合物100重量部に対して焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させたものである。
【0018】
本発明における主成分は、Ba、Ca、及びTiの酸化物である。これは、ペロブスカイト型結晶構造のBaTiO(またはBaO・TiO)の組成式において、Baの一部をCaに置換してなる、組成式(Ba1−xCa)TiOで表されるものである。ここで、xは0.005〜0.10、(Ba1−xCa)/Ti比は1.003〜1.030である。xが0の場合、またはxが0.10より大きい場合には、誘電体磁器組成物の比誘電率(以下、εとも呼ぶ)が所望の値(2,400)より低くなる。
また、(Ba1−xCa)/Ti比が1.003より少ないとX5R特性を満足せず、1.030より多くなると焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。ゆえに、xを0.005〜0.10、(Ba1−xCa)/Ti比を1.003〜1.030の範囲にそれぞれ限定することにより、比誘電率(ε)と誘電損失(以下、tanδとも呼ぶ)を所望の値にするとともに、焼結性が向上し、緻密な焼結体を作製することができる。
【0019】
本発明における副成分は、Cr、Mg、及びMnの酸化物である。ここで、本発明の誘電体磁器組成物は、上記主成分からなる化合物100mol部に対して、Crの酸化物を、Crに換算して0.03〜1.5mol部含有する。0mol部の場合は所望の比抵抗や所望の加速寿命が得られなくなり、1.5mol部より多いとX5R規格を満足せず、加速寿命も低下した。ゆえに、Crの酸化物をCrに換算して0.03〜1.5mol部とすることにより、所望の比抵抗や所望の加速寿命が得られるとともに、X5R規格を満たすことも可能となる。
【0020】
また、本発明の誘電体磁器組成物は、上記主成分からなる化合物100mol部に対して、Mgの酸化物を、Mgに換算して0.1〜3.0mol部含有する。0mol部の場合はX5R規格を満足せず、3.0mol部より多いと焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。ゆえに、Mgの酸化物をMgに換算して0.1〜3.0mol部とすることにより、X5R規格を満たすとともに、焼結性が向上し、緻密な焼結体を作製することができる。
【0021】
さらに、本発明の誘電体磁器組成物は、上記主成分からなる化合物100mol部に対して、Mnの酸化物を、Mnに換算して0.01〜1.0mol部含有する。1.0mol部より多いと誘電体磁器組成物の比誘電率が所望の値(2,400)より低くなる。ゆえに、Mnの酸化物をMnに換算して0.01〜1.0mol部とすることにより、比抵抗と比誘電率を所望の値にすることができる。
【0022】
上記副成分であるCr、Mg、及びMnの酸化物に加え、前記組成式(Ba1−xCa)TiOで表記される化合物100重量部に対して焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させると、0.2重量部より少ないと未焼結になり、1.2重量部より多いとX5R規格を満足せず、加速寿命も低下した。ゆえに、焼結助剤を0.2〜1.2重量部とすることにより、焼結性が確保され、X5R規格を満たすとともに、所望の加速寿命も得られるので好ましい。
【0023】
また、本発明の誘電体磁器組成物は、上記主成分からなる化合物100mol部に対して、Re(Y、Dy、Yb及びHoからなる群から選択される少なくとも1種以上の希土類元素)の酸化物を、Reに換算して0.3〜2.0mol部の範囲で含有させてもよい。0.3molとした場合には加速寿命がさらに改善される。2.0mol部より多いとX5R規格を満足しない。ゆえに、Reの酸化物をReに換算して0.3〜2.0mol部とすることにより、X5R規格を満たしつつ、加速寿命の改善が図れる。
【0024】
なお、本発明における比誘電率(ε)、誘電損失(tanδ)、比抵抗、容量変化率(X5R特性の適合性判断)、及び加速寿命は、外径寸法を縦5.7mm、横5.0mmとした積層磁器コンデンサ(本発明の誘電体磁器組成物からなる誘電体層の厚さ:2.0μm、有効誘電体層の数:5)を用いて測定した数値である。
【0025】
(1)比誘電率:ε
温度25℃、1kHz、1Vrmsの条件でLCRメーターを用いて静電容量を測定した。この測定によって得られた静電容量、誘電体層の厚さ、及び電極面積から比誘電率を算出した。
【0026】
(2)誘電損失(dielectric dissipation factor)(D.F.%):tanδ
誘電損失tanδは、LCRメーターを用い、上記した比誘電率(ε)と同一の条件下(または、25℃の条件下)で測定した。
【0027】
(3)比抵抗:ρ(Ω・cm)
25℃の条件下で、磁器コンデンサに直流20Vの電圧を2分間印加して絶縁抵抗Rを測定し、この絶縁抵抗、誘電体層の厚さ、及び電極面積から比抵抗ρを算出した。
【0028】
(4)容量変化率
磁器コンデンサを恒温槽に入れ、−55℃から85℃の各温度において、周波数1kHz、電圧1Vrmsの条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、25℃の静電容量に対する静電容量の変化率を算出した。この静電容量の変化率から、X5R特性の適合性を判断した。
【0029】
(5)加速寿命
150℃の条件下で、磁器コンデンサに直流20Vの電圧を印加して、その経時変化を測定し、各試料の絶縁抵抗値が1×10Ω・cm以下に到達するまでの時間である。
【0030】
本発明に係る誘電体磁器組成物は、上述した構成からなる磁器コンデンサの誘電体層に用いたとき、比誘電率が2400以上、誘電損失が3.0%以下、−55℃から85℃の容量変化率が±15%以内(25℃基準)、比抵抗が1×1011Ω・cm以上、加速寿命が50時間以上、という電気特性を満たすもの(本発明でいう「所望の値」を意味する)である。なお、−55℃から85℃の容量変化率が±15%(25℃基準)とは、EIA規格で規定するX5R特性である。
【0031】
なお、上述した焼結助剤としては、Siの酸化物またはSiを主成分とする酸化物が好適である。Siの酸化物またはSiを主成分とする酸化物からなる焼結助剤は、焼結性を向上させることから好ましい。また、Siに混在させる元素としては、例えばBa、CaまたはBが挙げられる。
【0032】
本発明に係る誘電体磁器組成物は、主成分の原料として、Ba、Ca、及びTiの化合物を混合して仮焼結体を形成し、該仮焼結体に、副成分の原料をなすCr、Mg、及びMnの化合物と、焼結助剤とを添加し、次いで、これを、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成して製造する。
【0033】
図1は、本発明の誘電体磁器組成物及び該誘電体磁器組成物を成形してなる磁器コンデンサの製造方法の一例を示す工程図である。以下では、図1に基づき、誘電体磁器組成物の製法について説明する。
【0034】
具体的には、図1の工程(a)に示すように、主成分の原料である、Ba、Ca、及びTiの化合物を、各々秤量する。Ba、Ca、及びTiの化合物としては、酸化物、炭酸化物、水酸化物が挙げられるが、そのなかでも、BaCO、CaCO、TiOが好ましい。各原料を、組成式(Ba1−xCa)TiOのxが0〜0.12、(Ba1−xCa)/Ti比が1.000〜1.035の範囲内となるように計算して秤量し、調合する。
【0035】
次いで、これら主成分の原料をボールミルに入れ、水を加え湿式で約20時間混合・粉砕を行い、スラリーとする(工程(b))。
【0036】
得られたスラリーを脱水・乾燥し(工程(c))し、1000〜1200℃、好ましくは1100℃にて2時間仮焼する(工程(d))。その後、これを粉砕・整粒して、比表面積が3〜10m/g、 平均粒子径0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下の仮焼結体を形成する(工程(e))。
【0037】
次いで、副成分の原料である、Cr、Mg、及びMnの化合物をそれぞれ、Crに換算して0.03〜1.5mol部、Mgに換算して0.1〜3.0mol部、Mnに換算して0.01〜1.0mol部の範囲内になるように計算して秤量し調合するとともに、さらに前記化合物100重量部に対して焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させた(工程(f))。Cr、Mg、及びMnの化合物としては、酸化物、炭酸化物、水酸化物が挙げられるが、その中でも、Cr、MgO、MnOが好ましく、焼結助剤としてはSiの酸化物またはSiを主成分とする酸化物が望ましい。これらの化合物を主成分原料、副成分原料及び焼結助剤とすることにより、低温で還元雰囲気中で焼成することが可能となる。その際、さらに副成分原料として、Re(ReはY、Dy、Yb、及びHoからなる群から選択される少なくとも1種類以上の希土類元素)の化合物を加えても構わない。
【0038】
仮焼結体に、これら副成分原料と焼結助剤を添加し、水を加え湿式で約5時間混合・粉砕を行い、スラリーとする(工程(g))。このスラリーを脱水し、120℃で6時間加熱し、乾燥させる(不図示)。
【0039】
次いで、これに、トルエン−エタノール混合溶剤、ポリビニルブチラール系バインダ、及び可塑剤を加えて、適度な粘度になるまで混合する。この混合物を1100〜1200℃の温度として、N、H及びHO からなる混合ガスの還元雰囲気で焼成し、本発明における誘電体磁器組成物を製造する。その際、焼成温度は1100〜1200℃の範囲が好適である。上記温度範囲のような低温で焼成することにより、上述した所望の電気特性を有する誘電体磁器組成物が得られる。なお、焼成する際の還元雰囲気としては、N、H及びHO からなる混合ガスの還元雰囲気が好ましく、例えば、窒素(N)ガスは95.00〜99.95%、水素(H)ガスは0.05〜5.0%、N−H混合ガスに湿度が40〜80%とすればよい。この焼成を還元雰囲気下で行うことにより、Niのような卑金属電極と共に焼成しても、電極の酸化を防止することができるので、Niのような卑金属電極を内部電極として利用可能となる。
【0040】
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法によれば、まず主成分の原料として、Ba、Ca、及びTiの化合物を混合して仮焼結体を形成し、該仮焼結体に、副成分の原料を添加して1100〜1200℃の温度とし、還元雰囲気で焼成することにより、電気特性が所望の値を満たす磁器コンデンサの誘電体磁器組成物が得られる。
【0041】
[磁器コンデンサ]
本発明に係る磁器コンデンサは、上述した誘電体磁器組成物を成形してなるシート(以下、誘電体層とも呼ぶ)と、該シートの片面に形成した内部電極とを複数積層してなる構成を示す一例(以下、磁器コンデンサAと呼ぶ)であり、図2はその一実施形態を示す模式的な断面図である。
図2に示すように、磁器コンデンサAは、上述した誘電体磁器組成物を成形してなるシート(誘電体層)11と、内部電極12とを交互に重ねてなる積層体、及び、内部電極12の特定のものに電気的に接続され、前記積層体の外側面に配される外部電極13、14を備えている。換言すると、この磁器コンデンサAは、符号11、11・・・で示す本発明に係る誘電体磁器組成物を成形してなるシートと、このシート11、11・・・の片面に形成した薄厚の内部電極12、12・・・と、内部電極12、12・・・と垂直方向のシート11端面に設けられた外部電極13、14とから概略構成されている。
【0042】
内部電極12や外部電極13、14としては、Cu、Ni、W、Mo等の金属若しくはこれらの合金、In−Ga、Ag、Ag−10Pd合金等、または、カーボン、グラファイト、カーボンとグラファイトの混合物等を用いることができる。その中でも、誘電体磁器組成物の焼成温度を1100〜1200℃とする観点から、内部電極12としては、NiまたはNiを主体とする合金が好ましい。
この内部電極12は、例えば上記の主たる材料からなる粉末に、有機バインダ、分散剤、有機溶剤、必要に応じて還元剤等を所定量加えた後に混練し、所定の粘度とした導電ペーストを、誘電体磁器組成物を成形してなるシートの片面に、所定のパターンとなるように印刷し、還元雰囲気中で、焼成することにより形成される。
一方、外部電極13、14としては、低抵抗で安価であることからCuが好ましい。この外部電極13、14は、内部電極12を有するシートを複数枚重ねてなる積層体に対して、その外側面に塗布法などを用いて形成される。
【0043】
上述した磁器コンデンサAは、誘電体層をなすシートを、本発明に係る誘電体磁器組成物を用いて形成する工程A1と、前記シートの片面に内部電極をなす導電層を形成する工程A2と、前記導電層を介するように前記シートを複数枚、その厚み方向に重ね合わせ、加圧して積層体を形成する工程A3と、前記積層体を、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成する工程A4と、前記積層体の外側面に、前記内部電極の特定のものに電気的に接続される外部電極を形成する工程A5と、を少なくとも具備する磁器コンデンサの製造方法により得られる。
以下では、図1に示した、本発明に係る誘電体磁器組成物、及び該誘電体磁器組成物を成型してなる磁器コンデンサの製造方法の一例を示す工程図を用い、具体的に説明する。
【0044】
本発明の誘電体磁器組成物を製造するまでの工程(a)〜(g)と同様にして、スラリーを製造する。このスラリーを脱水し、120℃で6時間加熱し、乾燥して粉体とする。
【0045】
次いで、この粉体に、トルエン−エタノール混合溶剤、ポリビニルブチラール系バインダ、及び可塑剤を加えて、適度な粘度になるまで混合し、ドクターブレード法によりペットフィルムに塗布し、焼成後に所定の厚さ(例えば、2.0μm)となるようにシート(誘電体磁器組成物シート、あるいはグリーンシートとも呼ぶ)を成形する(工程(h)→上記工程A1に相当)。
【0046】
このシートの片面に、内部電極12をなすニッケルペーストを印刷により成形する(工程(i)→上記工程A2に相当)。次いで、これを複数枚(例えば5層)厚み方向に重ね合わせ、加圧(例えば、150℃で熱圧着)して積層体とする(工程(j)→上記工程A3に相当)。その後、得られた積層体を所望の面積をもつように切断する(不図示)。
【0047】
この積層体を空気中で加熱(例えば、300℃、10時間)して有機バインダを除去する(工程(k))。次いで、1100〜1200℃の温度として、例えばN、H及びHO からなる混合ガスを用いてなる還元雰囲気で焼成(例えば、2時間)した後、窒素ガス雰囲気中で再酸化処理(例えば、1000℃、1時間)する(工程(l)→前段の焼成処理が上記工程A4に相当)。
【0048】
その後、この焼成・再酸化処理を施した積層体の外側面に、前記内部電極の特定のものに電気的に接続されるように、例えばCu、Ag等を塗布し外部電極13、14を形成する(工程(m)→上記工程A5に相当)。
以上の工程により、本発明に係る磁器コンデンサAを製造することができる。
【0049】
本発明によれば、上述した構成からなる磁器コンデンサAのシート(誘電体層、グリーンシート)に、本発明に係る誘電体磁器組成物を用いたことにより、比誘電率が2400以上、誘電損失が3.0%以下、−55℃から85℃の容量変化率が±15%以内(25℃基準)、比抵抗が1×1011Ω・cm以上、加速寿命が50時間以上、という電気特性を満足する磁器コンデンサを得ることができる。ここで、−55℃から85℃の容量変化率が±15%(25℃基準)とは、EIA規格で規定するX5R特性を意味する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。
【0051】
まず、主成分(基本成分)の原料として、比表面積が10〜30m/gのBaCO、20〜40m/gのCaCO、40〜60m/gのTiOをそれぞれ秤量した。各原料は、組成式(Ba1−xCa)TiOのx、(Ba1−xCa)/Ti比が表1の値となるように計算して秤量した。
次に、これら主成分の原料をボールミルに入れ、水を加えて湿式で約20時間混合・粉砕し、スラリーとした。このスラリーを脱水・乾燥し、1000℃以上で仮焼した後、粉砕して。仮焼結体の平均粒子径が0.2μm以下となるように整粒した。なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いて粉末を観察し、100個の粒子の粒子径を測長して求めた数値である。
【0052】
次いで、この仮焼結体に、副成分(添加成分)をなす酢酸クロム、MgO、Mn、SiO、Reの粉末と、表1に示す焼結助剤とを、表2に示すmol部または重量部となるように各々秤量し、添加した。これらをボールミルに入れ、水を加え、湿式で約5時間混合してスラリーとした。このスラリーを脱水し、120℃で6時間加熱し、乾燥させて粉体とした。その際、焼結助剤a〜cとしては表3に示すものを使用した。
【0053】
【表1】

【0054】
次に、この粉体にトルエン−エタノール混合溶剤、ポリビニルブチラール系バインダ、及び可塑剤を加えて、適度な粘度になるまで混合し、ドクターブレード法によりペットフィルムに塗布し、焼成後に厚さ2.0μmとなるシート(誘電体磁器組成物シート、グリーンシートとも呼ぶ)を成形した。原料の組成割合を、表2に各々示す。
【0055】
【表2】

【0056】
得られたシートに内部電極であるニッケルペーストを印刷により成形した。これを5層に積層し、150℃で熱圧着することにより積層体を得た。次いで、この積層体を、上面および下面が縦5.7mm×横5.0の長方形をなすように角板状に加工した。次に、これを大気中にて、300℃で10時間加熱して有機バインダ(樹脂成分)を焼却した。その後、1150℃とした、N、H及びHO からなる混合ガスの還元雰囲気中で2時間焼成し焼結させた。次に、窒素ガス雰囲気中で1000℃で2時間再酸化処理を施した。その後、焼結させた積層体の外側面(対向する位置にある切断面)にCuからなる導電性ペーストを塗布し、N雰囲気中で650℃の温度で焼き付け、図2に示すように内部電極と電気的に接続された外部電極を形成し、磁器コンデンサを作製した。誘電体層一層あたりの厚さは約2μmで、有効誘電体層は5層とした。
【0057】
この磁器コンデンサについて、前述した比誘電率(ε)、誘電損失tanδ、比抵抗ρ(Ω・cm)、容量変化率、加速寿命を評価した。
【0058】
これらの評価結果を、表3に各々示す。なお、表2及び表3中、所望の値(特性)が得られない試料番号には、*を付して表す。また、比較検討した試料ごとに、グループ番号(表中のG欄に記載した番号)を付した。
【0059】
【表3】

【0060】
表1及び表3の結果から、以下の点が明らかとなった。
<グループ1(G1)>
G1は、組成式(Ba1−xCa)TiOのxの値をx=0.02として、Cr添加量の依存性を検討した試料(試料番号1〜7)のグループである。
Cr添加量が0.03[mol部]の場合(試料番号2)は所望の特性になるが、Crを添加しない試料(試料番号1)は、容量温度変化のX5R特性を満足せず、加速寿命も極めて短く観測不能であった。また、Cr添加量が1.50[mol部]の場合(試料番号6)は所望の特性になるが、Cr添加量を1.70[mol部]とした試料(試料番号7)では、容量温度変化のX5R特性を満足しない。したがって、Cr添加量は、0.03〜1.50[mol部]の範囲が好ましい。
【0061】
<グループ2(G2)>
G2は、組成式(Ba1−xCa)TiOのxの依存性を検討した試料(試料番号8〜13)のグループである。
xを0.005〜0.10の範囲とした場合(試料番号9〜12)は所望の特性になるが、xを0とした場合(試料番号8)には比誘電率が2400より低下する。また、xを0.12とした場合(試料番号13)にも比誘電率が2400より低下する。したがって、xの値は、0.005〜0.10の範囲が好ましい。
【0062】
<グループ3(G3)>
G3は、組成式(Ba1−xCa)TiOのxの値をx=0.02として、(Ba1−xCa)/Ti比の依存性を検討した試料(試料番号14〜19)のグループである。
(Ba1−xCa)/Ti比が1.003の場合(試料番号15)は所望の特性になるが、1.000の場合(試料番号14)には、容量温度変化のX5R特性を満足せず、加速寿命も極めて短く観測不能であった。また、(Ba1−xCa)/Ti比が1.030の場合(試料番号18)は所望の特性になるが、1.035の場合(試料番号19)には、焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。したがって、(Ba1−xCa)/Ti比は、1.003〜1.030の範囲が好ましい。
【0063】
<グループ4(G4)及びグループ5(G5)>
G4は、前記組成式(Ba1−xCa)TiOで表記される化合物100重量部に対する焼結助剤aの割合[重量部]を検討した試料(試料番号20〜25)のグループであり、G5は、焼結助剤の依存性を検討した試料(試料番号26、27)のグループである。試料番号26は焼結助剤bを、試料番号27は焼結助剤cを使用した場合であり、試料番号22が、焼結助剤をa(Siの酸化物)とした場合に相当する。a〜cの各焼結助剤の構成は表1に示すものとした。
G4の結果より、焼結助剤aの割合が0.2[重量部]の場合(試料番号21)は所望の特性になるが、焼結助剤aの割合が0.1[重量部]の場合(試料番号20)には、焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。また、焼結助剤aの割合が1.2[重量部]の場合(試料番号24)は所望の特性になるが、1.4[重量部]の場合(試料番号25)には、容量温度変化のX5R特性を満足しない。したがって、焼結助剤aの割合は、0.2〜1.2重量部の範囲が好ましい。
【0064】
<グループ6(G6)>
G6は、組成式(Ba1−xCa)TiOのxの値をx=0.02として、Mg添加量の依存性を検討した試料(試料番号28〜33)のグループである。
Mg添加量が0.1[mol部]の場合(試料番号29)は所望の特性になるが、Mgを添加しない場合(試料番号28)には、容量温度変化のX5R特性が不適合になってしまう。また、Mg添加量が3.0[mol部]の場合(試料番号32)は所望の特性になるが、Mg添加量が3.2[mol部]の場合(試料番号33)には、焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。したがって、Mg添加量は、0.1〜3.0[mol部]の範囲が好ましい。
【0065】
<グループ7(G7)>
G7は、組成式(Ba1−xCa)TiOのxの値をx=0.02として、Mn添加量の依存性を検討した試料(試料番号34〜38)のグループである。
G7の結果より、Mn添加量が0.01[mol部]の場合(試料番号35)は所望の特性になるが、Mnを添加しない場合(試料番号34)には所望の比抵抗が得られない。また、Mn添加量が1.0[mol部]の場合(試料番号37)は所望の特性になるが、Mn添加量が1.2[mol部]の場合(試料番号38)には、比誘電率が2400より低下し、所望の比抵抗も得られない。したがって、Mn添加量は、0.01〜1.0[mol部]の範囲が好ましい。
【0066】
<グループ8(G8)及びグループ9(G9)>
G8は、組成式(Ba1−xCa)TiOのxの値をx=0.02として、一定量のCr、Mg及びMnを添加し、Reに属するY添加量の依存性を検討した試料(試料番号39〜42)のグループである。
また、G9は、Yに代えて、Dyを添加した試料(試料番号43)、Ybを添加した試料(試料番号44)、及びHoを添加した試料(試料番号45)のグループである。
G8の結果より、Y添加量が0.3〜2.0[mol部]の場合(試料番号39〜41)には、Y添加量の増加にともない、所望の特性が得られるとともに、加速寿命を延ばすことができる。しかし、Y添加量が2.2[mol部]の場合(試料番号42)には、容量温度変化のX5R特性が不適合になってしまう。したがって、Y添加量は、0.3〜2.0[mol部]の範囲が好ましい。
上述したY添加量として適正な範囲内にある添加量であれば、Dy、Yb、Hoも所望の特性が得られる。したがって、Reとしては、Yの他にDy、Yb、Hoも有効である。
【0067】
以上の結果から、上記範囲を満足する誘電体磁器組成物は、耐還元性に優れたチタン酸バリウムカルシウムを含む出発原料(主成分)を用いながら、還元雰囲気中1200℃以下の低温で焼成可能であり、比誘電率が2,400以上で、EIA規格で規定するX5R特性を満たす容量変化率を備え、さらに加速寿命も長い、磁器コンデンサの提供に寄与することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の誘電体磁器組成物及び該誘電体磁器組成物を成形してなる磁器コンデンサの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明に係る磁器コンデンサAの一実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0069】
A 磁器コンデンサ、11 誘電体磁器組成物を成形してなるシート、12 内部電極、13、14 外部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として、Ba、Ca、及びTiの酸化物を、
副成分として、Cr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、
前記主成分は、組成式(Ba1−xCa)TiO(ただし、xは0.005〜0.10、(Ba1−xCa)/Ti比は1.003〜1.030)で表される化合物であり、この化合物100mol部に対して、
前記副成分をなすCrの酸化物をCrに換算して0.03〜1.5mol部、Mgの酸化物をMgに換算して0.1〜3.0mol部、Mnの酸化物をMnに換算して0.01〜1.0mol部、の割合でそれぞれ含み、さらに前記化合物100重量部に対して焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させたことを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記焼結助剤は、Siの酸化物またはSiを主成分とする酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
さらに、前記化合物100mol部に対して、前記副成分として、Re(ReはY、Dy、Yb及びHoからなる群から選択される少なくとも1種以上の希土類元素)の酸化物をReに換算して0.3〜2.0mol部の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項4】
主成分の原料として、主成分の原料として、Ba、Ca、及びTiの化合物を混合して仮焼結体を形成し、該仮焼結体に、副成分の原料として、Cr、Mg、及びMnのの化合物を添加し、次いで、これを、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成することを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項5】
誘電体層と内部電極とを交互に重ねてなる積層体、及び
前記内部電極の特定のものに電気的に接続され、前記積層体の外表面に配される外部電極を備え、
前記誘電体層は、請求項1乃至3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物からなることを特徴とする磁器コンデンサ。
【請求項6】
前記内部電極は、Ni又はNiを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項5に記載の磁器コンデンサ。
【請求項7】
誘電体層をなすグリーンシートを、請求項1乃至3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物を用いて形成する工程と、
前記グリーンシートの片面に内部電極をなす導電層を形成する工程と、
前記導電層を介するように前記グリーンシートを複数枚、その厚み方向に重ね合わせ、加圧して積層体を形成する工程と、
前記積層体を、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成する工程と、
前記積層体の外表面に、前記内部電極の特定のものに電気的に接続される外部電極を形成する工程と、
を少なくとも具備したことを特徴とする磁器コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169051(P2006−169051A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364691(P2004−364691)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】