説明

調理器具

【課題】 調理容器内で加熱する調理物の温度を正確に検出し、外部にその温度を正確に
送信する調理器具を提供すること
【解決手段】 調理容器10内の調理物と直接接触する調理器具200であって、調理物
と接触する接触部201と、この接触部201を支持する支持部11とを有し、前記接触
部201に調理物の温度を検出する温度検出手段203を設け、前記支持部11に前記温
度検出手段203が検出した温度情報を送信する送信手段99と、この送信手段99に電
源を供給する電源供給手段21を設けることを特徴とする調理器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度情報を送信する送信手段を備え、調理容器内の調理物に直接接触して調
理物の攪拌等が行える調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように温度情報を送信する調理器具については、温度センサーと複数の赤外線送
信器を設け、複数の赤外線受信器を備える加熱調理器に調理鍋の温度情報を送信すること
で、調理鍋の取手をどのような位置においても赤外線送信器から送信される調理鍋の温度
情報が途絶えることがないようにしたものが提案されている。
【特許文献1】特開2005−209373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような調理鍋においては、調理容器の壁面の外側の温度を検知して、その検知し
た温度情報を送信するように構成されている。
そのため、この検知する温度情報は内容物である調理物の温度を調理容器の壁面を通じ
て検知したものであり、壁面の熱伝導の影響で温度検知に対し温度追従性に問題があった

また容器内で加熱されている調理物が中で偏ったりすると、その調理物と壁面表面の温
度との乖離が大きくなり、正確な温度を送信することができないという問題も有していた

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、調理容器内で加熱する調
理物の温度を正確に検出し、外部にその温度を正確に送信する調理器具を提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の調理器具によれば、調理容器内の調理物と直接接触する調理器具であって、調
理物と接触する接触部と、この接触部を支持する支持部とを有し、前記接触部に調理物の
温度を検出する温度検出手段を設け、前記支持部に前記温度検出手段が検出した温度情報
を送信する送信手段と、この送信手段に電源を供給する電源供給手段を設けることを主た
る特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
調理物と直接接触する接触部に温度検出手段を設け、その温度を外部に送信するように
したから調理物の正確な温度を送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(第1実施例)
システムキッチン1に挿入されて加熱調理器100は、図1に示すようにこのキャビネ
ット2とトッププレート3と併せて加熱調理器100を構成しており、そのうちシステム
キッチン1の内部にキャビネット2が固定されている。そしてこのキャビネット2の上面
には支持手段に相当する耐熱ガラス製のトッププレート3が固定されており、トッププレ
ート3はシステムキッチン1の上面から露出している。
このトッププレート3は、赤外線を投光する材質で形成されており、有色不透明に着色
されているものであり、キャビネット2の内部はトッププレート3を通して視覚的に認識
不能にされている。このキャビネット2の前面には操作パネル4が固定されており、操作
パネル4には自動湯沸しキー5・火力調整ダイアル6・煮物キー7が装着されている。こ
れら自動湯沸しキー5〜煮物キー7は調理条件の入力設定手段50に相当するものであり
、前方から操作可能にされている。
【0007】
トッププレート3には円形状の加熱マーク8が左右二つ形成されている。この加熱マー
ク8は残余部分と異なる色彩に着色されたものであり、調理鍋9を載置する載置領域を使
用者に表示する目印として機能する。調理鍋9は磁性材製の鍋からなるものであり、図2
に示すように、調理物が投入される円筒状の容器部10(調理容器に相当)により構成さ
れている。
そしてこの容器部10の中には、調理物をかき混ぜたり、すくい上げたりするための道
具であるお玉200が入っている。このお玉200が本実施例による調理器具に当たる。
【0008】
また、トッププレート3には、図1に示すように、加熱マーク8の周囲4箇所に位置して
窓部12が形成されている。この窓部12の下方には後述する赤外線受信器41(赤外線
受信手段に相当)がそれぞれ設置されている。
キャビネット2の内部には、図2に示すように、加熱マーク8の下方に位置して円環状
のコイルベース13が収納されており、コイルベース13の上面には加熱手段に相当する
円環状のIHコイル14(加熱コイルに相当)が固定されている。このIHコイル14が
左右に二つ設けられおり、マーク8a、8bの下方に右IHコイル14aと左IHコイル
14bが配置されている。
【0009】
そしてキャビネット2の内部には、図3に示すように、IHコイル14に高周波電流を
供給するための電気的回路が構成されていて、以下この回路について説明をする。
なおこの図3では、一方の右IHコイル14aを駆動させるための構成のみを示してい
るが、実際には、2個のIHコイル14a,14bを駆動させるための回路が構成された
ものである。
直流電源回路128は、全波整流回路129の交流入力端子を商用交流電源130に接
続し、直流出力端子をリアクタ131を介して平滑コンデンサ132の両端子間に接続し
た構成となっている。
平滑コンデンサ132の両端子間には直流母線133a,133bを介して正側および
負側のIGBT134aおよび134bからなるアームが接続されており、ハーフブリッ
ジ型のインバータ回路135を構成している。各IGBT134a,134bにはフリー
ホールダイオード136a,136bがそれぞれ並列に接続されている。このインバータ
回路135の出力端子には、IHコイル14aの一端が接続され、そのIHコイル14a
の他端子は、共振コンデンサ137を介して直流母線133bに接続され、IHコイル1
4aおよび共振コンデンサ137により共振回路138が構成されている。インバータ回
路135の各IGBT134a,134bは、駆動部139からゲートに駆動信号が与え
られるようになっている。
【0010】
インバータ回路135を駆動制御する主体としてのインバータ制御部140(インバー
タ制御手段に相当)は、マイクロコンピュータを主体に構成されたものであり、内部に制
御マイコン35を含むROM、RAMなどを備えた構成をしている。インバータ制御部1
40は、入力設定手段50からの火力信号に基づいてインバータの駆動部139に駆動周
波数の制御命令を出力する周波数可変回路144や、実際にIHコイル14aを流れる高
周波の周波数を検知する周波数検出回路145(駆動周波数検知手段に相当)とにより構
成されている。
【0011】
そして入力設定手段50は自動湯沸しキー5・火力調整ダイアル6・煮物キー7等の調
理情報の入力手段を称するものであり、この調理条件の設定結果に基いてインバータ制御
部140が駆動信号を生成するように制御マイコン35のROMに制御方法が記憶されてい
る。
具体的には、入力設定手段50に基づくIHコイル14aの設定火力と、この火力と調
理鍋の材質、大きさ等に基づくIGBT134a,134bの駆動周波数の制御方法との
対応テーブルが予め記憶されており、駆動周波数は、共振回路138が、誘導性のインピ
ーダンスになるように所定の範囲内で可変可能に設定されている。
そして制御マイコン35は、このテーブルを基に、調理鍋に応じて設定火力に対応した
駆動周波数とするべく、周波数可変回路144を介して駆動部139に駆動周波数に対応
した周波数信号を与えてインバータ回路135のIGBT134a,134bをスイッチ
ング制御する。
またこのインバータ回路135の各IGBT134a,134bが駆動部139から与
えられる駆動信号により交互にオンオフ制御されることで共振回路138に高周波電力が
供給され、IHコイル14aに対応する位置に載置された被加熱物である調理鍋9が誘導
加熱される。
そしてこの高周波電力の高周波周波数を検知するために周波数検出回路145が設けら
れており、IHコイル14aの高周波電流を検知することで駆動周波数を検知して、イン
バータ制御部140にフィードバックしている。
【0012】
なお、インバータ制御部140には、後述する赤外線を受信する赤外線受信器41から
の出力信号が入力されるように構成されており、その他報知手段に相当する表示部42が
電気的に接続されている。この表示部42は、図1に示すように、加熱情報等を使用者に
認識させるべく操作パネル4に固定されたものである。
【0013】
次に上記した加熱調理器100に載置する調理鍋9内に置かれるお玉200について説
明する。
お玉200は、調理物をかき混ぜたりすくったりして調理物と直接接触する椀部201
(接触部に相当)と、その椀部201から垂直に接続され椀部201を支持する柄部20
2(支持部に相当)と、この柄部202に接続され、使用者が持って椀部201を操作す
る取手部11(支持部に相当)とにより構成される。
【0014】
そしてこの取手部11には、椀部201とは反対側に下方にL字状に形成される取付け
部204(係合手段)が備えられており、この取付け部204は、容器部10の壁に係合
できるようにバネ等の付勢手段により、容器部10の壁面を挟持して密着するように構成
されている。
そしてこのお玉200には、調理物の温度を測定し、この温度を赤外線により加熱調理
器100に送信する機能が備わっている。
【0015】
まず、椀部201の内側側面には、調理物の温度を測定する内部温度センサー203(
温度検出手段に相当)が設置されており、内部温度センサー203の感温部は、調理物と
直接接触するように露出しており、椀部201の壁面と面一に配置されている。この内部
温度センサー203は、調理物の直接温度T0を直接的に検出するサーミスタから構成さ
れている。
【0016】
そして取付け部204のL字状の下端の内側側面には、容器部10の外周面に位置して
外部温度センサー20(第2の温度検出手段に相当)が機械的に固定されている。この外
部温度センサー20は取付け部204を容器部10に挟んで係合した時に、容器部10の
周囲側面に配置されるようにしたものであり、外部温度センサー20の感温部は容器部1
0の外周面に密着するようになっている。この外部温度センサー20も、調理鍋9の表面
温度T1を直接的に検出するサーミスタから構成されている。
【0017】
そして使用者が持つ取手部11には電源21が機械的に固定されている。この電源21
は9Vの一次電池から構成されたものであり、電源21には電源スイッチ22を介して温
度データ送信部23が電気的に接続されている。この電源スイッチ22は取手部11に固
定された自己保持形のスライドスイッチからなるものであり、プランジャ24のスライド
操作に基いて給電路を閉成するオン状態および給電路を開放するオフ状態に機械的に保持
される。即ち、電源スイッチ22がオン操作されたときには電源21から温度データ送信
部23に9Vの主電源Vinが与えられ、電源スイッチ22がオフ操作されたときには主
電源Vinが遮断される。
【0018】
温度データ送信部23は調理鍋9の取手部11に機械的に固定されたものであり、電源
21から主電源Vinが与えられることに基いて起動し、主電源Vinが遮断されること
に基いて停止する。この温度データ送信部23には内部温度センサー203および外部温
度センサー20がリード線25を介して電気的に接続されており、温度データ送信部23
は内部温度センサー203および外部温度センサー20からの温度信号をリード線25を
介して検出し、温度信号の検出結果に応じた調理情報を赤外線で送信する。即ち、温度デ
ータ送信部23からの調理情報の送信は使用者が電源スイッチ22をオン操作することに
基いて自動的に開始され、使用者が電源スイッチ22をオフ操作することに基いて自動的
に停止する。
【0019】
温度データ送信部23は、図4に示すように、電源回路26と電圧検出回路27と発振
回路28と温度検出回路29とLED駆動回路30と赤外線LED31と制御回路32と
を赤外線送信可能な完成形態に電気的に相互接続することから構成されたものである。こ
の温度データ送信部23は物理的に独立したユニットとして取扱うことが可能な赤外線送
信モジュールに相当するものであり、電源回路26は電源21からの主電源Vinを降圧
することに基いて5Vの安定化電源Voを生成する。この電源回路26はシリーズレギュ
レータから構成されたものであり、温度データ送信部23は電源回路26が生成する安定
化電源Voを電源として駆動する。
【0020】
電圧検出回路27は主電源Vinのレベルに応じた電圧信号を生成するものであり、電
圧信号は制御回路32に与えられる。温度検出回路29は温度センサーの抵抗変化に応じ
たレベルの電圧信号を生成するものであり、電圧信号は制御回路32に与えられる。この
制御回路32は発振回路28からの8MHzのパルス信号を動作周波数とするマイクロコ
ンピュータからなるものであり、CPU・ROM・RAM・I/Oを有している。尚、電
圧検出回路27は出力検出部に相当するものである。
【0021】
制御回路32のROMには制御プログラムが記録されている。この制御プログラムは制
御回路32のタイマ回路からINT信号が出力されることに基いて起動するものであり、
1)電圧検出処理・2)温度検出処理・3)データ送信処理を有している。
このINT信号の出力は設定時間(設定周期)毎(具体的には1sec毎)に行われる
ものであり、制御回路32は制御プログラムを設定時間毎に起動することに基いて1)電
圧検出処理〜3)データ送信処理を設定時間毎に実行する。この設定時間毎に送信処理す
る周期が、周期的に赤外線を送信する送信周期に該当する。以下、1)電圧検出処理〜3
)データ送信処理について説明する。
【0022】
1)電圧検出処理
制御回路32のCPUは電圧検出回路27からの電圧信号をA/D変換する。この電圧
信号のA/D変換結果に基いて主電源Vinの電圧レベルを検出し、電圧レベルの検出結
果をROMに予め記録された判定値と比較する。そして、電圧レベルの検出結果が判定値
を上回ることを検出したときには主電源Vinが正常レベルにあると判断し、電圧レベル
の検出結果が判定値を下回ることを検出したときには主電源Vinが異常レベルにあると
判断する。この異常レベルとは制御回路32が正常に処理動作を行うことができなくなる
手前の電圧レベルを称するものであり、電圧検出処理とは電源21の消耗の有無を設定期
間毎に判定するものである。
【0023】
2)温度検出処理
制御回路32のROMには、図5に示すように、温度検出回路29からの電圧信号(V
)と温度(°C)との関係が記録されており、制御回路32のCPUは温度検出回路29
からの電圧信号をA/D変換し、電圧信号のA/D変換結果に応じた温度To、T1をR
OMの記録データから取得することに基いて調理物の直接的な温度Toと調理鍋9の壁面
温度T1を検出する。例えば電圧信号のA/D変換結果が「4.1V」であるときには温
度Tとして「75°C」を検出する。即ち、温度検出処理とは温度To、T1を設定期間
毎に検出するものである。
【0024】
3)データ送信処理
制御回路32には、図4に示すように、LED駆動回路30を介して赤外線素子に相当
する赤外線LED31が電気的に接続されており、制御回路32のCPUは1)電源電圧
Vinの検出結果および2)温度To、T1の検出結果に基いて駆動信号を生成する。そ
して、LED駆動回路30を駆動信号に基いて駆動制御することで赤外線LED31を発
光制御し、赤外線LED31から1)電源電圧Vinの検出結果および2)温度To、T
1の検出結果を含む調理情報を赤外線で送信する。この駆動信号は設定周波数fc1(具
体的には「31.25kHz」)および設定デューティ比のキャリア信号を変調すること
で行われるものであり、キャリア信号の変調はオンオフ期間を変更することで行われる。
即ち、データ送信処理とは赤外線LED31の駆動信号を生成し、赤外線LED31を駆
動信号に基いて発光制御することで調理情報を前述した制御回路32に記憶されている設
定周波数(以降、キャリア周波数と称す)で赤外線送信するものであり、1)電圧検出処
理および2)温度検出処理に連動して周期的に行われる。
そしてこの赤外線は、図8に示すように、周期的に送信されるように制御されており、
一定時間温度情報を送信し続け、その後送信しない時間を経て再び送信する制御を繰り返
している。
【0025】
図6の(a)および(b)は制御回路32が生成する駆動信号Sを示すものであり、駆
動信号SはヘッダS1と温度データS2とストップビットS3とから構成されている。ヘ
ッダS1は駆動信号の送信開始を確定するものであり、キャリア信号を5msecオンお
よび3msecオフすることで生成される。ストップビットS3は駆動信号の送信終了を
確定するものであり、キャリア信号を1msecオンおよび3msec以上オフすること
で生成される。温度データS2はビット「0」およびビット「1」の組合せでデータの内
容を特定するものであり、ビット「0」はキャリア信号を1msecオンおよび1mse
cオフすることで生成され、ビット「1」はキャリア信号を1msecオンおよび2ms
ecオフすることで生成される。
【0026】
温度データS2は調理物の温度Toを特定する8ビットデータからなるものであり、制
御回路32のCPUは、温度検出処理の検出結果Toを直後のデータ送信処理で温度デー
タS2に設定する。例えば、温度検出処理の検出結果Toが「75°C」であるときには
温度データS4として「11010010」が設定される。本実施例では、この温度デー
タS2を1バイトのデータで送信しているので8ビットデータになるが、より高精度に調
理物の情報等を伝える場合は、このビット数を増加させることで対応すればよい。
【0027】
またお玉200には、図2に示すように、取手カバー33が固定されている。この取手
カバー33は温度センサー・電源21・操作スイッチ22・温度データ送信部23・リー
ド線25をプランジャ24を除いて覆うものであり、断熱材でかつさらに水で洗浄できる
ように機密性の高いプラスチック製のもので形成され、隙間にシリコンシール材を貼付す
るなどして防水加工を施している。
またこの取手カバー33には電池交換口が形成されており、電池交換口には電池カバーが
開閉可能に装着されている。この電池交換口は電源21を交換するための開口部を称する
ものであり、電池カバーを操作することに基いて開閉される。なおこの電池には、小型で
かつ高寿命な例えばボタン型リチウムイオン電池が望ましい。
【0028】
ここで加熱調理器100の赤外線の受信手段について図7を用いて説明する。
この赤外線受信手段である赤外線受信器41はフォトダイオードなどの赤外線センサー
および信号出力回路をモジュール化してなるものであり、トッププレート3のマーク8a
の周囲の4つの窓部12の下方にのみそれぞれ配置されている。
すなわち右IHコイル14aで誘導加熱する場合のみ、そのマーク8aに載置される赤
外線送信可能なお玉200と受信可能な加熱調理器100との間で赤外線の送受信をする
加熱調理システムが可能となる。
またこの赤外線受信器41をマーク41aの周囲に4つ配置することで使用者がお玉2
00の取手部11がどのような向きに位置されても、加熱調理器100は赤外線を受信す
ることができるように構成されている。
【0029】
赤外線受信器41は、図7に示すようにまずフォトダイオード41aが赤外線を受信し
、その信号をアンプ41bで増幅する。フォトダイオード41aはある波長に対して感度
を上げており、その波長以外の光は受信しないように構成されており、照明などからの光
は受信されない。
そして増幅した信号について所定範囲の周波数の信号のみを通過させるバンドパスフィ
ルタ41c(周波数フィルタ手段に相当)に通し、検波回路41dを通し波形整形をして
平滑化して出力する。
【0030】
このバンドパスフィルタ41cは、お玉200の赤外線送信器99に記憶されているキ
ャリア周波数fc1の信号が通過できるようにそのfc1を含む所定の周波数帯Δfc(
以降フィルタリング周波数帯と称す)が設定されており、この周波数帯Δfc以外の信号
はフィルタリングされて通過できないようにして出力されないように構成されている。
このようにこの赤外線受信器41は赤外線送信器99からの温度情報を窓部12を通し
て受光することに基いて温度データを生成するものであり、温度データは、図6の(c)
に示すように、調理情報の受光結果を包絡検波することで設定される。
【0031】
この出力を図4の制御マイコンの35の割り込み端子でリードし、制御マイコン35は
フォーマットを解析して温度データの情報を取り出す。
すなわち制御マイコン35は、制御マイコン35に入力された信号が決められた条件(
フォーマット)に合致する信号であれば、入力信号を正常の信号として認めるように構成
しているもので、例えば図9を用いて説明すると(a)に示す波形整形されて平滑化され
た信号が所定の時間内に決まった矩形波形状で入力された場合はフォーマットに合致した
信号と見なし、(b)のように所定時間内に矩形波信号以外のノイズが入力されている場
合はフォーマットに合致していない信号と見なすことで正常の信号の適否を見分けている

そして制御マイコン35は、赤外線受信器が4つ設けられているため、それぞれの割り
込み端子に接続してそれぞれのフォーマットを解析し、正常に受信できている温度情報の
みを使用する構成をしている。
したがって照明から出る赤外線成分やIHコイルが発する電磁波のノイズなどがバンド
パスフィルタ41cが通過可能とする所定周波数帯内の周波数の信号であった場合で、赤
外線受信器41から制御マイコン35に出力されたときはその信号は図9(b)のように
なり制御マイコンのフォーマットに合わないので破棄される。
そのため制御マイコン35は、赤外線受信器41がフィルタリング周波数帯Δfc内の
値であるキャリア周波数の赤外線がノイズと共に受信されない場合のみ、その赤外線の受
信信号は正しいと判断する。
そして制御マイコンは、この受信信号に基づく温度情報を使用することで周波数可変回
路44に命令をし、駆動周波数を可変制御することでIHコイル14の火力を制御し、自
動湯沸しキー5、煮物キー7等で設定された自動調理を行うように構成されている。
【0032】
次に、この構成の加熱調理システムの動作について煮物調理を図10を参照して説明す
る。
制御マイコン35のROMには煮物調理用のメインプログラムが記録されており、制御
マイコン35のCPUは煮物キー7のオン操作を検出したときには煮物調理用のメインプ
ログラムを起動し、メインプログラムに基いて調理内容を制御する。以下、煮物調理用の
メインプログラムについて説明する。
【0033】
調理物が収納されている調理鍋9を加熱マーク8a上にセットし、温度情報を送信する
お玉200を調理鍋の中に調理物と接触するように挿入して、取付け部204が、容器部
の壁面に挟持して係合するようにしてセットする。そしてお玉200の電源スイッチ22
および操作パネル4の煮物キー7をオン操作する。
制御マイコン35は煮物キー7のオン操作を検出すると、目標温度を設定し、この目標
温度に到達すべく火力を制御する。この火力はIHコイル14の前述したようにインバー
タ回路135に出力する高周波電力の駆動周波数を可変制御することに基づいて調整され
るものである。
そしてお玉200の椀部201に接触している調理物の温度T0を内部温度センサー2
03が検知して、この温度を上記赤外線の送信方法に基づいて送信し、加熱調理器100
は、この赤外線情報に基づいて調理物の直接の温度を検出しその温度情報に基づいて、制
御マイコン35は周波数可変回路144に駆動周波数制御命令をする。
そして受信する調理物の温度情報に基づき目標温度の設定と火力制御を繰り返し、受信
温度が最終的な目標温度に近づいてくると、IHコイルに流れる高周波電流の駆動周波数
を徐々に小さく制御していくことで、火力を徐々に下げていき最終的には容器部10を一
定の煮込み温度に保持する状態にする制御をする。
【0034】
同時に外部温度センサー20により、検知した容器部10の温度も赤外線送信器99か
ら送信され、この容器部10の温度も赤外線受信器41が受信して、制御マイコン35に
フィードバックしている。
そして容器部10内の内容物が蒸発するなどして空焚きになってしまった場合に、容器
部10が赤熱し外部温度センサー20の温度情報が非常に高温となり、内部温度センサー
203との温度差が乖離したことを検知して、加熱を停止するように制御している。
【0035】
このような煮込み調理中においては、使用者は調理器具であるお玉200を取付け部2
04を外して動かすことで所望の場所の温度を測定することができる。即ち煮込み調理に
おいて、例えばじゃがいもの周辺の温度を主として制御したいと所望する場合は、このお
玉200をじゃがいものそばに動かしてその温度を加熱調理器100に赤外線送信をさせ
ると、使用者はそのじゃがいもを最適な温度により煮込み調理することができる。
すなわち従来のように調理鍋9の壁面温度を測定していると、壁面の熱伝導の影響で温
度検知に対し温度追従性に問題があったが、本実施例では直接内容物の温度を測定してい
るため、加熱調理器100はより正確な温度に基づいて加熱制御することができる。
また容器部10内で加熱されている調理物が偏ったりしても、お玉200で修正したり
しながらその調理物の温度も測定し得るので、操作性に優れる。
さらには、調理鍋9のように大きな体積を有するものに温度検出手段を設けず、お玉2
00のような調理物に直接触れる小型の調理器具により、温度検出手段、赤外線送信手段
を設けたため、保管場所も困らず使用者にとって利便性が高い。
【0036】
また内部温度センサー203と外部温度センサー20を設け、両方の温度を測定し、赤
外線送信するようにしたため、加熱調理器100は精密な温度制御をすることができ、空
焚きのような場合に、緊急停止することができるなど、安全性において効果的である。
またお玉200に取付け部204を設けたことで、お玉200全体が調理物内に落下し
て赤外線が送信されないといった可能性も回避できるようにした。
【0037】
なお、電源スイッチ22はどこに設けても良い。例えば、取付け部204を上方スライ
ド可能な構成にしてこの取り付け部がスライドされることに基づいて電源が駆動するよう
な構成としてもよい。
すなわちこのような構成にすると容器部10に係合させた時に取付け部204が上方に
スライドするため、容器部10に係合した瞬間に電源がオンされるような仕組みが構成で
きる。このようにすることで、使用者は電源を意識することなく、お玉200を使用する
ときに自動的に電源がオンさせることができる。また使用時のみ電源がオンされるので省
電力化も図れる。
また同様に取付け部204が容器部10の壁面の上部に載置される位置に押下式の電源
スイッチ22を下向きに設けても良い。これによれば、載置した瞬間に電源スイッチ22
が容器部10の壁面の上部により押下され電源がオンされるようになる。
【0038】
また加熱調理器100に赤外線受信器41を4つ設けるようにした。これによって、お
玉200が調理鍋9のどの部分に取り付けられても、赤外線を受信できるようになるため
、温度情報が受信できないといったことが回避できる。さらに赤外線により送信するよう
にしたから他の無線手段に比して低価格、低消費電力で構成でき、基板も小型化できる。
【0039】
また赤外線送信器99は、一定間隔を置いて赤外線を送信するようにした。このように
することで送信回数の間引きすることができ省電力化が図れる。
なお、赤外線送信器に例えば、加熱調理器100の最大調理時間(例えば5時間)を記
憶させ、お玉200の電源が最大調理時間以上オンされていることを検知した時に、自動
的に電源をオフするようにしても良い。このようにしても省電力化が図れる。
【0040】
なお、本実施例によれば、赤外線で温度情報を送信するようにしたが、勿論他の送信手
段をしようしてもよい。例えば、電波送信により設定周波数が数百MHzの微弱無線方式
を利用することも可能である。この場合、電波の通信有効範囲が広い為、送信情報に受信
するべき加熱調理器100の情報を載せておくことが好ましい。すなわち加熱調理器はそ
の情報を取得することで温度情報の適否を判断し加熱制御するようにできるから他の電波
による誤動作をなくすことができる。
【0041】
(第2実施例)
次に、本発明に係る調理器具の第2の実施形態を、図11を参照して説明する。
第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下異なると
ころについて説明する。
上記第1の実施形態と異なるところは、お玉200の柄部202に可動部210を設け
ている点である。
本実施例においては、取付け部204を有しておらず、可動部210を曲げることによ
り、容器部10を挟持してお玉200が安定して位置させることができるようにしている

【0042】
すなわち椀部201と取手部11の間である柄部202に折り曲がり変形可能な可動部
210が設けられており、柄部202が自由に変形可能なように機能している。
そして取手部11には、電源スイッチ22の反対側に外部温度センサー220が設けら
れており、この外部温度センサー220に隣接して磁石部221が設置されている。
【0043】
これによれば、使用者は、お玉200を調理鍋9にセットする場合に、この可動部21
0を曲げて、取手部11を容器部10の外側に出るように位置させる。そしてこの取手部
11が容器部10の外壁に接触するように可動部210を曲げると、磁石部221が鍋に
接触するようになる。そして外部温度センサー220が容器部の外壁に密着しその温度を
正確に測定できるようになる。
このようにすることで内部温度センサー203と外部温度センサー220とにより二つ
の温度を正確に測定できる。
【0044】
そして自由にお玉200の形状を変えることができるためどのような調理鍋9にも対応
して取り付けることができる。また外部温度センサー220を外壁に密着させることがで
きる。
さらに磁石部221を配置したことにより、お玉200を使用しないときは、調理鍋9
の外壁に磁石を介して取り付けることができるため、使用者にとって利便性が高まる。
また本実施例のお玉以外の調理器具として、マドラーや、箸などでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施例を示す図(加熱調理器の外観を示す斜視図)
【図2】調理鍋と調理器具をトッププレートにセットした状態を示す図
【図3】インバータ回路およびインバータ制御部の電気的構成を示す図
【図4】赤外線送信器の電気的構成を示すブロック図
【図5】制御回路の検出電圧と認識温度との関係を示す図
【図6】(a)は赤外線LEDの駆動信号を示す図、(b)は赤外線LEDから投光される調理情報の内容を示す図、(c)は赤外線受信器から出力される調理情報の検波信号を示す図
【図7】赤外線受信器の電気構成図。
【図8】(a)赤外線送信器の赤外線送信状態の図
【図9】赤外線のキャリア周波数fcの出力波形の図
【図10】煮物の調理フローチャート
【図11】第2の実施例の図2相当図
【符号の説明】
【0046】
9は調理鍋、10容器部(調理容器)、11は取手部(支持部)、14はIHコイル(
加熱コイル)、20は外部温度センサー(第2の温度検出手段)、21は電源(電源供給
手段)35は制御マイコン、41は赤外線受信器(赤外線受信手段)、41cはバンドパ
スフィルタ(周波数フィルタ手段)、99は赤外線送信器(送信手段)、135はインバ
ータ回路、140はインバータ制御部(インバータ制御手段)、200はお玉、201は
椀部(接触部)、202は柄部(支持部)、203は内部温度センサー(温度検出手段)
、204は取付け部(係合手段)、210は可動部(可動手段)、221は磁石部と示す


【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器内の調理物と直接接触する調理器具であって、
調理物と接触する接触部と、
この接触部を支持する支持部とを有し、
前記接触部に調理物の温度を検出する温度検出手段を設け、
前記支持部に前記温度検出手段が検出した温度情報を送信する送信手段と、
この送信手段に電源を供給する電源供給手段を設けることを特徴とする調理器具。
【請求項2】
支持手段に第2の温度検出手段を設けることを特徴とする請求項1記載の調理器具。
【請求項3】
支持手段に、調理容器の壁面に係合する係合手段を設け、
第2の温度検出手段は、前記係合手段の調理容器の壁面と接触する位置に設けることを特
徴とする請求項2記載の調理器具。
【請求項4】
前記係合手段は、電源供給手段の電源を入力するスイッチを兼ねることを特徴とする請
求項3記載の調理器具。
【請求項5】
前記支持手段は、可動手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4記載のいず
れかに記載の調理器具。
【請求項6】
前記支持手段には、磁石が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5記載
のいずれかに記載の調理器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−93804(P2009−93804A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260277(P2007−260277)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】